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特許7055522ダイカスト装置のガス抜き装置及びガス抜き方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-08
(45)【発行日】2022-04-18
(54)【発明の名称】ダイカスト装置のガス抜き装置及びガス抜き方法
(51)【国際特許分類】
   B22D 17/14 20060101AFI20220411BHJP
   B22C 9/06 20060101ALI20220411BHJP
【FI】
B22D17/14
B22C9/06 T
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021504674
(86)(22)【出願日】2019-03-12
(86)【国際出願番号】 JP2019009940
(87)【国際公開番号】W WO2020183604
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2021-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】500442674
【氏名又は名称】株式会社ダイエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100090206
【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 信道
(72)【発明者】
【氏名】森川 巖
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-117741(JP,A)
【文献】実開昭63-157458(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第105414515(CN,A)
【文献】国際公開第2018/110024(WO,A1)
【文献】特開昭57-072766(JP,A)
【文献】特開平08-294763(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 17/00-17/32
B22C 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項2】
溶湯をキャビティに注入する第1の経路と、前記キャビティからガスを抜く第2の経路と、前記キャビティの真空度を計測する第3の経路を有するダイカスト用の金型から、ガスを抜くガス抜き装置であって、
前記第1の経路は、真空装置からスリーブに設けたスリーブ真空吸引口への経路に配されたスリーブ真空吸引配管からの真空吸引によってランナー及びゲートを経由して前記キャビティからガスを抜くものであり、
前記第2の経路は、金型に形成されたガス抜きゲートとガス抜き溝を経由して前記キャビティからガスを抜くものであり、
前記第3の経路は、前記キャビティに直結する真空度測定溝を介して負圧用圧力計によって前記キャビティの真空度を計測するものであり、
前記ガス抜き装置は、前記第1の経路と真空装置を接続する第1の経路開閉装置と、前記第2の経路と真空装置を接続する第2の経路開閉装置を有し、
前記第1の経路開閉装置と、前記第2の経路開閉装置の作動タイミングに作動タイミング時間差を設けることができる制御部を有し、
前記制御部は、前記第1の経路開閉装置を作動させたときに前記第3の経路から前記キャビティの真空度を測定して得られた、前記第1の経路開閉装置の作動開始タイミングをスタートとして、前記負圧用圧力計が作動し始めるまでの時間である第1の真空到達時間と、前記第2の開閉装置を作動させたときに前記第3の経路から前記キャビティの真空度を測定して得られた、前記第2の経路開閉装置の作動開始タイミングをスタートとして、前記負圧用圧力計が作動し始めるまでの時間である第2の真空到達時間との差分を、前記作動タイミング時間差とする、
ガス抜き装置。
【請求項5】
溶湯をキャビティに注入する第1の経路と、前記キャビティからガスを抜く第2の経路と、前記キャビティの真空度を計測する第3の経路を有するダイカスト用の金型からガスを抜く方法であって、
前記第1の経路は、真空装置からスリーブに設けたスリーブ真空吸引口への経路に配されたスリーブ真空吸引配管からの真空吸引によってランナー及びゲートを経由して前記キャビティからガスを抜くものであり、
前記第2の経路は、金型に形成されたガス抜きゲートとガス抜き溝を経由して前記キャビティからガスを抜くものであり、
前記第3の経路は、前記キャビティに直結する真空度測定溝を介して負圧用圧力計によって前記キャビティの真空度を計測するものであり、
ガス抜き装置の、前記第1の経路と真空装置を接続する第1の経路開閉装置を作動させたときに前記キャビティの真空度を測定して得られた、前記第1の経路開閉装置の作動開始タイミングをスタートとして、前記負圧用圧力計が作動し始めるまでの時間である第1の真空到達時間と、前記第2の経路と真空装置を接続する第2の経路開閉装置を作動させたときに前記キャビティの真空度を測定して得られた、前記第2の経路開閉装置の作動開始タイミングをスタートとして、前記負圧用圧力計が作動し始めるまでの時間である第2の真空到達時間とを比較し、その差分を作動タイミング時間差とする前工程と、
前記第1の真空到達時間と前記第2の真空到達時間のうち、真空到達時間の長い前記第1又は第2の経路開閉装置を先に作動し、前記作動タイミング時間差経過後に真空到達時間の短い前記第2又は第1の経路開閉装置を作動する、ガス抜き工程を有する、
ガス抜き方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイカスト装置のガス抜き装置及びガス抜き方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイカストの製品を鋳造するときに、製品を金型から離れやすくするために金型に離型剤を塗布する。また、金型を移動するために金型に潤滑剤を塗布する。この離型剤及び潤滑剤が高温の溶湯に接触すると、燃焼してガスが発生する。このガスによって、ダイカスト製品に引け巣などが生じ、ダイカスト製品の品質を劣化させることが知られている。そのため、金型内部から空気を吸い出して、ダイカスト製品の品質を向上させる方法がとられている。この、金型からガスを抜くための装置が、ダイカスト装置のガス抜き装置である。
【0003】
例えば、特許文献1には、ダイカスト装置の金型のキャビティに供給する溶湯のガスの巻き込みを防止する装置、及びガスを抜く方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-91159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された方法は、金型の内部に供給する前の溶湯近傍からガスを抜くものである。そのため、キャビティの内部にある空気を抜くことは困難である。従って、ダイカスト製品の品質を十分に向上させるものとは考えにくい。
【0006】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたものであり、キャビティから確実に空気を抜くことで、ダイカスト製品の品質を向上させる、ダイカスト装置のガス抜き装置及びダイカスト装置のガスを抜く方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係るガス抜き装置は、溶湯をキャビティに注入する第1の経路と、前記キャビティからガスを抜く第2の経路と、前記キャビティの真空度を計測する第3の経路を有するダイカスト用の金型から、ガスを抜くガス抜き装置であって、前記第1の経路は、真空装置からスリーブに設けたスリーブ真空吸引口への経路に配されたスリーブ真空吸引配管からの真空吸引によってランナー及びゲートを経由して前記キャビティからガスを抜くものであり、前記第2の経路は、金型に形成されたガス抜きゲートとガス抜き溝を経由して前記キャビティからガスを抜くものであり、前記第3の経路は、前記キャビティに直結する真空度測定溝を介して負圧用圧力計によって前記キャビティの真空度を計測するものであり、前記ガス抜き装置は、前記第1の経路と真空装置を接続する第1の経路開閉装置と、前記第2の経路と真空装置を接続する第2の経路開閉装置を有し、前記第1の経路開閉装置と、前記第2の経路開閉装置の作動タイミングに作動タイミング時間差を設けることができる制御部を有する。
【0008】
例えば、本発明に係るガス抜き装置は、前記制御部は、前記第1の経路開閉装置を作動させたときに前記第3の経路から前記キャビティの真空度を測定して得られた、前記第1の経路開閉装置の作動開始タイミングをスタートとして、前記負圧用圧力計が作動し始めるまでの時間である第1の真空到達時間と、前記第2の開閉装置を作動させたときに前記第3の経路から前記キャビティの真空度を測定して得られた、前記第2の経路開閉装置の作動開始タイミングをスタートとして、前記負圧用圧力計が作動し始めるまでの時間である第2の真空到達時間との差分を、前記作動タイミング時間差とする。
【0009】
例えば、本発明に係るガス抜き装置は、前記第1の経路であって、溶湯を前記金型に注入するスリーブ内部からガスを抜くスリーブ真空吸引口の、前記スリーブ内部に真空吸引溝を設け、前記真空吸引溝の長さは前記スリーブ内部の溶湯を押し込むチップの摺動面の長さよりも短く、前記真空吸引溝の幅は前記スリーブの内径の1/3以下である。
【0010】
例えば、前記キャビティと前記第2の経路開閉装置との間に、さらに真空吸引経路閉鎖装置を有し、前記スリーブ真空吸引口の断面積は、前記真空吸引経路閉鎖装置の経路の最小断面積の1.5~2.0倍であり、前記真空吸引溝の断面積は、前記スリーブ真空吸引口の断面積の1.1~1.2倍である。
【0011】
上記目的を達成するため、本発明に係るガス抜き方法は、溶湯をキャビティに注入する第1の経路と、前記キャビティからガスを抜く第2の経路と、前記キャビティの真空度を計測する第3の経路を有するダイカスト用の金型からガスを抜く方法であって、前記第1の経路は、真空装置からスリーブに設けたスリーブ真空吸引口への経路に配されたスリーブ真空吸引配管からの真空吸引によってランナー及びゲートを経由して前記キャビティからガスを抜くものであり、前記第2の経路は、金型に形成されたガス抜きゲートとガス抜き溝を経由して前記キャビティからガスを抜くものであり、前記第3の経路は、前記キャビティに直結する真空度測定溝を介して負圧用圧力計によって前記キャビティの真空度を計測するものであり、ガス抜き装置の、前記第1の経路と真空装置を接続する第1の経路開閉装置を作動させたときに前記キャビティの真空度を測定して得られた、前記第1の経路開閉装置の作動開始タイミングをスタートとして、前記負圧用圧力計が作動し始めるまでの時間である第1の真空到達時間と、前記第2の経路と真空装置を接続する第2の経路開閉装置を作動させたときに前記キャビティの真空度を測定して得られた、前記第2の経路開閉装置の作動開始タイミングをスタートとして、前記負圧用圧力計が作動し始めるまでの時間である第2の真空到達時間とを比較し、その差分を作動タイミング時間差とする前工程と、前記第1の真空到達時間と前記第2の真空到達時間のうち、真空到達時間の長い前記第1又は第2の経路開閉装置を先に作動し、前記作動タイミング時間差経過後に真空到達時間の短い前記第2又は第1の経路開閉装置を作動する、ガス抜き工程を有する。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、キャビティから確実に空気を抜くことで、ダイカスト製品の品質を向上させることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態1に係るガス抜き装置と金型とスリーブの断面図
図2】実施の形態1に係るガス抜き装置に用いる固定金型のキャビティ面を示す正面図
図3】実施の形態1に係るガス抜き装置に用いる可動金型のキャビティ面を示す正面図
図4】実施の形態1に係るガス抜き装置に用いるスリーブの断面図
図5】実施の形態1に係るガス抜き装置に用いるスリーブのA-A断面(図4参照)
図6】実施の形態1に係るガス抜き装置に用いるスリーブの断面図
図7】実施の形態1に係るガス抜き装置に用いるスリーブに使用するチップの側面図
図8】実施の形態1に係るガス抜き装置の、真空吸引経路閉鎖装置の断面図
図9】実施の形態1に係るガス抜き装置の、真空制御装置の概略図
図10】実施の形態1に係るガス抜き装置の、真空度測定結果を示す図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態に係るダイカスト装置のガス抜き装置と、ダイカスト装置のガスを抜く方法について説明する。
【0015】
(実施の形態1) 本発明の実施の形態1に係るダイカスト装置のガス抜き装置14を、図1に示す。ガス抜き装置14は、金型13のキャビティ9及びスリーブ3の内部からガスを抜くものである。ガス抜き装置14は、金型13及びスリーブ3に接続されている。また、図9に示す、真空度測定装置18は、キャビティ9の真空度を測定するものである。真空度測定装置18は、金型13に接続されている。
【0016】
金型13は、固定金型13Aと、可動金型13Bとを組み合わせて使用される。固定金型13Aの、キャビティ9を形成する面を図2に示す。可動金型13Bの、キャビティ9を形成する面を図3に示す。固定金型13Aと、可動金型13Bとを組み合わせることで、それぞれの金型の表面に形成された溝等の凹部が組み合わされて、金型13の内部に、図1に示す、キャビティ9と、第1の経路の例として、ランナー7及び湯口ゲート8が形成される。さらに、第2の経路の例として、ガス抜きゲート10、ガス抜き溝11が形成される。さらに、図9に示す、第3の経路の例として、真空度測定溝16が形成されている。
【0017】
真空吸引経路閉鎖装置12は、図1に示すように、ガス抜き溝11に連なって、金型13の内部に配されている。真空度測定経路閉鎖装置17は、図9に示すように、真空度測定溝16に連結されて、金型13の内部に配されている。
【0018】
真空吸引経路閉鎖装置12は、図8に示すように、固定金型13Aに配された固定真空吸引経路閉鎖装置12Aと、可動金型13Bに配された可動真空吸引経路閉鎖装置12Bと、真空吸引経路閉鎖弁12Cとを有する。真空吸引経路閉鎖弁12Cは、固定真空吸引経路閉鎖装置12Aの内部に配置され、自身が空気圧によって軸方向に移動することで、ガス抜き溝11とキャビティ真空吸引配管の間の経路を開閉する。
【0019】
真空度測定経路閉鎖装置17は、図9に示すように、固定金型13Aに配された固定真空度測定経路閉鎖装置17Aと、可動金型13Bに配された可動真空度測定経路閉鎖装置17Bと、真空度測定経路閉鎖弁17Cとを有する。真空度測定経路閉鎖弁17Cは、固定真空度測定経路閉鎖装置17Aの内部に配置され、自身が空気圧によって軸方向に移動することで、真空度測定溝16と負圧用圧力計18Aの間の経路を開閉する。
【0020】
スリーブ3は、図1に示すように、鍔付きの円筒形状である。スリーブ3の鍔を基準として、短い方の円筒部の外周は、固定金型13Aに開けられた穴に、軸方向が水平になるように、嵌合されている。スリーブ3の内部は、当該穴から連結されているランナー7及び湯口ゲート8を通じて、キャビティ9に連結されている。スリーブ3の長い方の円筒部は、金型13から突出している。スリーブ3の金型13から突出した円筒部の端部近傍に、溶湯4Aをスリーブ3の内部に投入するための、溶湯給湯口2が開けられている。スリーブ3の突出部側から、スリーブ3の内部に、スリーブ3に投入された溶湯4Aを、金型13に押し込むための、チップ1が挿入されている。チップ1が、ダイカスト装置によってスリーブ3の円筒内部に押し込まれると、円筒内部の溶湯4Aは、金型13のキャビティ9へ移動する。スリーブ3の上部であって、溶湯給湯口2よりも金型13側の近傍に、スリーブ3の内部からガスを抜くために、スリーブ真空吸引口5が開けられている。スリーブ真空吸引口5の、円筒内部の開口部近傍に、溝が形成されている。当該溝の、幅方向長さは、図5に示すように、スリーブ真空吸引溝幅L3であり、スリーブ3の軸方向の長さは、図6に示すように、スリーブ真空吸引溝長さL1である。チップ1の、摺動面の長さは、図7に示すように、チップ摺動面長さL2である。
【0021】
本実施の形態では、スリーブ真空吸引溝長さL1は、図7に示す、チップ1のチップ摺動面1A部分の長さL2よりも小さい。スリーブ真空吸引溝幅L3は、図4に示す、チップ1のチップ径Dの1/3以下である。
【0022】
本実施の形態では、スリーブ真空吸引口5の断面積は、真空吸引経路閉鎖装置12の経路の最小断面積の、1.5~2倍である。これによって、キャビティ9からガスを抜く時間が安定することを、実験により確認している。また、スリーブ真空吸引溝6の断面積は、スリーブ真空吸引口5の断面積の1.1~1.2倍である。これによって、スリーブ真空吸引口5からと、スリーブ真空吸引溝6からのガス吸引レベルが同等となり、ガスを抜く効率が良いことを、実験により確認している。
【0023】
ガス抜き装置14は、図1に示すように、真空装置の例としての真空タンク14Aと、第1の経路に接続する、真空タンク14Aの直近に配される第1の経路開閉装置の例としてのスリーブ真空吸引ソレノイド14Bと、スリーブ真空吸引ソレノイド14Bの直後に配されるスリーブ真空吸引配管14Cと、スリーブ真空吸引配管14Cの直後に配されるスリーブ真空吸引フィルター14Dと、スリーブ真空吸引フィルター14Dからスリーブ3のスリーブ真空吸引口5への経路に配されるスリーブ真空吸引配管14Eとを有する。さらに、ガス抜き装置14は、第2の経路に接続する、第2の経路開閉装置の例としての真空タンク14Aの直近に配されるキャビティ真空吸引ソレノイド14Fと、キャビティ真空吸引ソレノイド14Fの直後に配されるキャビティ真空吸引配管14Gと、キャビティ真空吸引配管14Gの直後に配されるキャビティ真空吸引フィルター14Hと、キャビティ真空吸引フィルター14Hから真空吸引経路閉鎖装置12への経路に配されるキャビティ真空吸引配管14Iとを有する。
【0024】
さらに、ガス抜き装置14は、スリーブ真空吸引フィルター14D及びスリーブ真空吸引配管14Eを清掃するために作動するスリーブ真空配管清掃ソレノイド14Jと、キャビティ真空吸引フィルター14H及びキャビティ真空吸引配管14Iを清掃するために作動するキャビティ真空配管清掃ソレノイド14Mとを有する。
【0025】
さらに、ガス抜き装置14は、真空吸引経路閉鎖装置12を作動させるために、真空吸引経路閉鎖弁12Cをガス抜き溝11からの経路を閉じる方向に作動させる、真空吸引閉ソレノイド12Dを有する。さらに、真空吸引経路閉鎖弁12Cをガス抜き溝11からの経路を開く方向に作動させる、真空吸引開ソレノイド12Eを有する。
【0026】
真空度測定装置18は、図9に示すように、第3の経路に接続する、負圧用圧力計18Aと、負圧用圧力計18Aからの信号を受ける、制御部である真空制御装置18Bと、真空度測定経路の清掃をするために作動する、真空度測定経路清掃ソレノイド18Cとを有する。
【0027】
さらに、真空度測定装置18は、真空度測定経路閉鎖装置17を作動させるために、真空度測定経路閉鎖弁17Cを真空度測定溝16からの経路を閉じる方向に作動させる、真空度測定経路閉ソレノイド17Dを有する。さらに、真空度測定経路閉鎖弁17Cを真空度測定溝16からの経路を開く方向に作動させる、真空度測定経路開ソレノイド17Eを有する。
【0028】
次に、本発明の実施の形態に係るガス抜き装置14を用いて、金型13のキャビティ9及びスリーブ3からガスを抜く方法を説明する。まずは、準備段階として、金型13の特性を計測する、前工程の説明である。
【0029】
ガス抜き装置14は、金型13のガス抜き溝11側からガスを抜く経路と、スリーブ3側からガスを抜く経路の、二つの経路を有する。このとき、真空タンク14Aから、キャビティ9へのそれぞれの経路は、配管容量や流路抵抗が異なる。そのため、スリーブ真空吸引ソレノイド14Bと、キャビティ真空吸引ソレノイド14Fを同時に開いたとしても、実際にキャビティ9からガスを抜き始める時間が異なる。本実施の形態では、スリーブ3側からガスを抜く経路の配管容量が大きいため、キャビティ9からガスを抜くタイミングは、ガス抜き溝11側からガスを抜くタイミングより遅れる。つまり、キャビティ9からは、まずガス抜き溝11からガスを抜き、その後所定の時間を経過してから、ランナー7からガスを抜くことになる。そのため、キャビティ9に存在したガスは、一旦ガス抜きゲート10からガス抜き溝11の方向へ移動した後、再度キャビティ9へ戻って、湯口ゲート8からランナー7の方向へ移動する、という動きをする。その結果、キャビティ9からガスを抜く時間が遅れてしまう。そして、キャビティ9からガスを抜くことが、ダイカストの鋳造サイクルに間に合わず、ガス抜きが不十分なまま鋳造をしてしまうことになる。それによって、引け巣などの鋳造不良を引き起こし、ダイカスト製品の品質が向上しない。
【0030】
そこで、キャビティ9から、二つの経路からガスを抜くタイミングが同じになるようにする。それによって、キャビティ9から充分にガスが抜かれ、引け巣などの鋳造不良を防止して、ダイカスト製品の品質を向上する。
【0031】
そのために、スリーブ真空吸引ソレノイド14Bと、キャビティ真空吸引ソレノイド14Fを同時に作動した場合に、ガス抜き溝11からガスを抜く経路と、スリーブ3からガスを抜く経路との間で、キャビティ9からガスを抜き始めるタイミングに、どの程度時間差が生じているのか測定する。その時間差に応じて、スリーブ真空吸引ソレノイド14Bと、キャビティ真空吸引ソレノイド14Fの作動タイミングに差を設けることによって、キャビティ9からガスを抜くタイミングを同じにするのである。
【0032】
それでは、スリーブ真空吸引ソレノイド14Bと、キャビティ真空吸引ソレノイド14Fを同時に開いた場合に、ガス抜き溝11からガスを抜く経路と、スリーブ3からガスを抜く経路の間で、どの程度時間差が生じているのか測定する方法について説明する。
【0033】
図示しないダイカスト装置によって、スリーブ3の内部に挿入されたチップ1が押し込まれ、チップ1が、ポジション信号Aを発する位置、すなわち、チップ1が溶湯給湯口2を塞ぐ位置に到達する。そこで、スリーブ真空吸引ソレノイド14Bを作動させる。その結果、真空タンク14Aとキャビティ9の経路がつながり、スリーブ3の内部、ランナー7及びキャビティ9からガスが抜かれる。キャビティ9には、真空度測定装置18が連結されている。真空度測定経路開ソレノイド17Eが作動して、キャビティ9と負圧用圧力計18Aは連結されている。スリーブ真空吸引ソレノイド14BをONするタイミングをスタートとして、負圧用圧力計18Aが作動し始めるまでの第1の真空到達時間を計測する。そして、その時間をT1とする。
【0034】
次に、ガス抜き溝11側からガスを抜く時間を計測する。チップ1はポジション信号Aを発する位置のままで、キャビティ真空吸引ソレノイド14Fを作動させる。さらに、真空吸引開ソレノイド12Eを作動させて、真空吸引経路閉鎖弁12Cを移動する。その結果、真空タンク14Aとキャビティ9の経路がつながり、ガス抜き溝11及びキャビティ9からガスが抜かれる。キャビティ9には、真空度測定装置18が連結されている。真空度測定経路開ソレノイド17Eが作動して、キャビティ9と負圧用圧力計18Aは連結されている。キャビティ真空吸引ソレノイド14FをONするタイミングをスタートとして、負圧用圧力計18Aが作動し始めるまでの第2の真空到達時間を計測する。そして、その時間をT2とする。
【0035】
本実施の形態では、前述の通りT1はT2よりも大きい。そこで、その差分であるT1-T2の値を、作動タイミング時間差Tとして設定する。つまり、スリーブ真空吸引ソレノイド14Bを作動さてから、作動タイミング時間差T時間後に、キャビティ真空吸引ソレノイド14Fを作動させる。そうすると、キャビティ9からガスを抜くタイミングが、ガス抜き溝11側からガスを抜く経路と、スリーブ3側からガスを抜く経路とで同じになる。その結果、キャビティ9のガスが余分な移動をする事がなくなり、キャビティ9から充分にガスが抜かれ、キャビティ9の真空度が向上する。
【0036】
キャビティ9からガスを抜くタイミングに時間差がある場合と、時間差が無い場合について、キャビティ9の真空度がどのように変化したかを、図10に示す。横軸のTIMEは時間経過を表し、縦軸は真空度を表す。キャビティ9からガスを抜くタイミングに時間差がある場合が、NOT PROPER VACUUM LINEであり、キャビティ9からガスを抜くタイミングに時間差が無い場合が、PROPER VACUUM LINEである。キャビティ9からガスを抜くタイミングの差が、真空遅延であるDELAYである。ダイカスト装置の鋳造工程サイクルにおいて、高速射出であるHIGH SPEED INJECTIONが始まってから充填完了であるCOMPLETE INJECTIONまでの時間は変わらないので、真空遅延であるDELAYが存在する場合は、NOT PROPER VACUUM LINEに表すように、到達する真空度が不十分である。その結果、キャビティ9のガス抜きが不十分で、引け巣などの鋳造不良を引き起こし、ダイカスト製品の品質が向上しない。
【0037】
次に、前述した準備段階で得られた作動タイミング時間差Tを用いて、ダイカスト装置で鋳造する工程を説明する。
【0038】
(初期位置)
ダイカスト装置の初期位置を表す状態を図1とする。このとき、鋳造に適切な量の溶湯4Aが、溶湯給湯口2から、スリーブ3の内部に投入されている。
【0039】
(第1の位置)
次に、チップ1がスリーブ3の内部に押し込まれ、図4に示す、ポジション信号Aを発する位置へ到達する。その時、溶湯給湯口2はチップ1によって塞がれて、溶湯給湯口2から空気は漏れない状態になっている。溶湯4Aはチップ1に押されることで、水位が上昇している。その時、スリーブ3の内部であって、溶湯4Aが存在しない空間を、スリーブ空間3Aとする。ポジション信号Aが発せられると、真空制御装置18Bは、スリーブ真空吸引ソレノイド14Bを作動させて、スリーブ3の内部からガスを抜く。作動タイミング時間差T時間経過後、真空制御装置18Bは、キャビティ真空吸引ソレノイド14Fと、真空吸引開ソレノイド12Eを作動させて、ガス抜き溝11側からガスを抜く。この後、チップ1は比較的低速で、スリーブ3の内部に押し込まれていく。
【0040】
(第2の位置)
チップ1がさらにスリーブ3の内部に押し込まれ、図6に示す、ポジション信号Bを発する位置へ到達する。その時、スリーブ真空吸引口5はチップ1によって塞がれて、スリーブ真空吸引口5から空気は漏れない状態になっている。溶湯4Aはチップ1に、さらに押されることで、水位が上昇して溶湯4Bの状態になっている。その時、スリーブ3の内部であって、溶湯4Bが存在しない空間を、スリーブ空間3Bとする。ポジション信号Bが発せられると、真空制御装置18Bは、スリーブ真空吸引ソレノイド14Bを作動させて、スリーブ3からガスを抜くことを止める。さらに、真空制御装置18Bは、キャビティ真空吸引ソレノイド14Fと、真空吸引開ソレノイド12Eを作動させて、ガス抜き溝11側からガスを抜くことを止める。このとき、溶湯4Bが、ランナー7に到達する前に、ガスを抜くことを止めることになっている。キャビティ9は、内部からガスが抜かれて、真空になっている。その後、チップ1は比較的高速で、さらにスリーブ3の内部に押し込まれる。
【0041】
(第3の位置)
チップ1がスリーブ3の奥まで押し込まれると、スリーブ3の内部にある溶湯4Bが、真空になっているキャビティ9に送り込まれ、その後金型13の内部で冷却されて固まる。以上がダイカスト装置による鋳造の1サイクルである。
【0042】
本実施の形態では、ガス抜き溝11側からキャビティ9のガスを抜くタイミングと、スリーブ3側からキャビティ9のガスを抜くタイミングとを、それぞれの経路を真空タンク14Aに接続するスリーブ真空吸引ソレノイド14Bと、キャビティ真空吸引ソレノイド14Fの作動タイミングに、作動タイミング時間差Tを設けることで、キャビティ9から同時にガスを抜くようにして、キャビティ9に溶湯が到達する前に、キャビティ9の真空度を高め、引け巣などの鋳造不良を防止して、ダイカスト製品の品質を向上するものである。 実験の結果、特許文献1に開示された発明のように、スリーブからのみガスを抜く方法に比べて、キャビティ9の真空度は2倍以上高くなることを確認した。その結果、鋳造不良の発現率が1/2以下になることを確認した。
【0043】
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。つまり、本発明の範囲は、実施形態ではなく、請求の範囲によって示される。そして、請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。
【符号の説明】
【0044】
1 チップ

1A チップ摺動面

1B チップ裏面

2 溶湯給湯口

3 スリーブ

3A、3B、3C スリーブ空間

4A、4B 溶湯

5 スリーブ真空吸引口

6 スリーブ真空吸引溝

7 ランナー

8 湯口ゲート

9 キャビティ

10 ガス抜きゲート

11 ガス抜き溝

12 真空吸引経路閉鎖装置

12A 固定真空吸引経路閉鎖装置

12B 可動真空吸引経路閉鎖装置

12C 真空吸引経路閉鎖弁

12D 真空吸引閉ソレノイド

12E 真空吸引開ソレノイド

13 金型

13A 固定金型

13B 可動金型

14 ガス抜き装置

14A 真空タンク

14B スリーブ真空吸引ソレノイド

14C スリーブ真空吸引ソレノイド

14D スリーブ真空吸引フィルター

14E スリーブ真空吸引配管

14F キャビティ真空吸引ソレノイド

14G キャビティ真空吸引配管

14H キャビティ真空吸引フィルター

14I キャビティ真空吸引配管

14J スリーブ真空配管清掃ソレノイド

16 真空度測定溝

17 真空度測定経路閉鎖装置

17A 固定真空度測定経路閉鎖装置

17B 可動真空度測定経路閉鎖装置

17C 真空度測定経路閉鎖弁

17D 真空度測定経路閉ソレノイド

17E 真空度測定経路開ソレノイド

18 真空度測定装置

18A 負圧用圧力計

18B 真空制御装置

18C 真空度測定経路清掃ソレノイド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10