IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ピュリディファイ リミテッドの特許一覧

特許7055538ポリマーナノファイバーを含む官能化クロマトグラフィー媒体及びそれを製造する方法
<>
  • 特許-ポリマーナノファイバーを含む官能化クロマトグラフィー媒体及びそれを製造する方法 図1
  • 特許-ポリマーナノファイバーを含む官能化クロマトグラフィー媒体及びそれを製造する方法 図2
  • 特許-ポリマーナノファイバーを含む官能化クロマトグラフィー媒体及びそれを製造する方法 図3
  • 特許-ポリマーナノファイバーを含む官能化クロマトグラフィー媒体及びそれを製造する方法 図4
  • 特許-ポリマーナノファイバーを含む官能化クロマトグラフィー媒体及びそれを製造する方法 図5
  • 特許-ポリマーナノファイバーを含む官能化クロマトグラフィー媒体及びそれを製造する方法 図6
  • 特許-ポリマーナノファイバーを含む官能化クロマトグラフィー媒体及びそれを製造する方法 図7
  • 特許-ポリマーナノファイバーを含む官能化クロマトグラフィー媒体及びそれを製造する方法 図8
  • 特許-ポリマーナノファイバーを含む官能化クロマトグラフィー媒体及びそれを製造する方法 図9
  • 特許-ポリマーナノファイバーを含む官能化クロマトグラフィー媒体及びそれを製造する方法 図10
  • 特許-ポリマーナノファイバーを含む官能化クロマトグラフィー媒体及びそれを製造する方法 図11
  • 特許-ポリマーナノファイバーを含む官能化クロマトグラフィー媒体及びそれを製造する方法 図12
  • 特許-ポリマーナノファイバーを含む官能化クロマトグラフィー媒体及びそれを製造する方法 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-08
(45)【発行日】2022-04-18
(54)【発明の名称】ポリマーナノファイバーを含む官能化クロマトグラフィー媒体及びそれを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/24 20060101AFI20220411BHJP
   B01J 20/29 20060101ALI20220411BHJP
   B01J 20/281 20060101ALI20220411BHJP
   B01J 20/285 20060101ALI20220411BHJP
   G01N 30/88 20060101ALI20220411BHJP
   B01D 15/36 20060101ALI20220411BHJP
   B01D 15/38 20060101ALI20220411BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20220411BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20220411BHJP
   C07K 1/16 20060101ALI20220411BHJP
   C07K 16/00 20060101ALI20220411BHJP
【FI】
B01J20/24 C
B01J20/29
B01J20/281 X
B01J20/285 T
B01J20/281 R
G01N30/88 J
B01J20/281 G
B01D15/36
B01D15/38
B01J20/28 Z
B01J20/30
C07K1/16
C07K16/00
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019501721
(86)(22)【出願日】2017-07-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-03
(86)【国際出願番号】 GB2017052085
(87)【国際公開番号】W WO2018011600
(87)【国際公開日】2018-01-18
【審査請求日】2020-07-08
(31)【優先権主張番号】1612249.1
(32)【優先日】2016-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1612252.5
(32)【優先日】2016-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1709996.1
(32)【優先日】2017-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】516106689
【氏名又は名称】ピュリディファイ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 允辰
(74)【代理人】
【識別番号】100207158
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 研二
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】ハマーソーン,マーク
(72)【発明者】
【氏名】ウォリス,ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】ルルー,フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】ロウ,ウィリアム
【審査官】瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/018524(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/052465(WO,A1)
【文献】国際公開第2004/003542(WO,A1)
【文献】特表2016-507234(JP,A)
【文献】特表2015-527596(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/20-20/34
B01D 15/00-15/42
C07K 1/00-19/00
G01N 30/00-30/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
官能化された高分子クロマトグラフィー媒体を作製する方法であって、
(i)1以上のポリマーナノファイバーから形成された基体を提供すること、
(ii)基体から1以上の中性のポリマー鎖をグラフト化すること、及び
(iii)前記グラフト化生成物と、クロマトグラフィー媒体として前記工程(ii)の生成物を官能化する試薬とを接触させることを含み、
ここで、工程(ii)は、複数の、式
【化1】
の化合物及び/又はそのエナンチオマー、及び/又は式(I)のその誘導体及び/又はそのエナンチオマー及び/又はジアステレオマー:
【化2】
と、前記ナノファイバー基体上に存在する1以上の官能基と反応させることを含み、
式中、R、R、R、R及びRは同一又は異なってもよく、H、ハロゲン、C~Cアルキル又はC~Cアルコキシから選択され、但しR、R、R、R又はRの少なくとも1つは水素ではなく、
任意に、前記工程(ii)が、複数の、式
【化3】
の化合物、及び/又はそのエナンチオマーを、前記ナノファイバー基体上に存在する1つ以上の官能基と反応させることを含む、
官能化された高分子クロマトグラフィー媒体を作製する方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって:
a)前記ポリマーナノファイバーが、セルロース、酢酸セルロース、ポリスルホン、ポリアミド、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリエチレンオキシド及びその混合物からなる群から選択されるポリマーを含み、好ましくは前記ポリマーが、セルロース、酢酸セルロース及びその混合物からなる群から選択され;
b)前記ナノファイバー基体上に存在する1つ以上の官能基がヒドロキシル基を含み;
c)前記ポリマー鎖の1つ以上が分岐鎖であり;
d)前記基体がメンブレンの形態であり;及び/又は
e)前記ナノファイバーが10nm~1000nmの平均径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記グラフト化生成物を試薬と接触させる工程が、グラフト化生成物への1つ以上のリガンド基を導入し、それがクロマトグラフィー媒体としての使用に適した1つ以上のリガンド基を含む官能化生成物を与える、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記工程(iii)の生成物における前記リガンド基の密度が、クロマトグラフィー媒体の100μmol/g~2,500μmol/gである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
a)液相を毎分1メンブレン体積~640メンブレン体積の流量で0.05mm~10mmの厚さの媒体を通過させる場合、官能化された高分子クロマトグラフィー媒体に対する圧力低下が2MPa未満であり;
b)前記官能化された高分子クロマトグラフィー媒体の生産性が50mg/mL/分~75,000mg/mL/分であり;
c)前記グラフト化工程(ii)が、官能化された高分子クロマトグラフィー媒体の動的結合容量(DBC)を増加させる効果を有し;及び/又は
d)工程(ii)で導入された前記ポリマーの量が、グラフト化生成物の500μmol/g~60,000μmol/gである、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記基体が、工程(i)~工程(ii)の間に処理されて1つ以上の官能基が導入される、又は前記基体が工程(i)~工程(ii)の間に処理されて前記基体上の任意の官能基が脱保護若しくは活性化される、又は前記基体が工程(i)~(ii)の間に処理されて、前記基体上の前記官能基の数/密度が増加される、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記グラフト化工程(ii)が、更に同じ工程において、1つ以上の官能基を導入する、又は前記基体上の任意の官能基を脱保護若しくは活性化する、又は前記基体上の官能基の数/密度を増加させる条件下で実行され、任意に、前記グラフト化工程(ii)が、水又は水:エタノール中、好ましくは水中で、水性アルカリ、好ましくはNaOH又はKOHの存在下で達成される、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
官能化工程(iii)において、官能化試薬が、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド(GMAC)、1,4-ブタンスルホン、クロロ酢酸ナトリウム、NaIOに続いてプロテインA、アリルグリシジルエーテルに続いて第1にハロヒドリン形成試薬、好ましくはN-ブロモスクシンアミド、その後プロテインA、アリルグリシジルエーテルに続いて第1にエポキシド形成試薬、その後プロテインA、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
工程(iii)において、前記試薬が、結果として生じる官能化されたクロマトグラフィー媒体が、イオン交換、親和性捕捉、疎水的相互作用及びミックスモード法からなる群から選択されるクロマトグラフィー法における使用に適したものとなるように、前記グラフト化生成物を官能化する、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
工程(iii)において、前記試薬が、1つ以上のプロテインA分子によって前記グラフト化生成物を官能化する、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
工程(iii)が、クロマトグラフィー媒体として、工程(ii)の生成物を共に官能化する複数の工程を含み、任意に、工程(iii)において:
(a)前記グラフト化生成物を、ジビニルスルホン、アリルグリシジルエーテル及びそれらの組み合わせから選択される群から選択される試薬と接触させ;
(b)前記工程(a)の生成物を、ハロヒドリン形成試薬によって任意に処理し;及び
(c)前記工程(b)の生成物をプロテインAと接触させる、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動相から生体分子を単離するのに適した、官能化されたクロマトグラフィー媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオテクノロジー市場は、2012年に全ての市場販売の20%(1530億ドル)を占める世界製薬市場内のうち最も急成長している分野である。2002年のマーケットシェアの10%からのこの成長は、2012年~2018年の間に1530億ドルから2150億ドルと41%の上昇を示す。現在、市場には約200のモノクローナル抗体(MAb)製品が存在し、1000を超える製品が臨床試験中であり、この領域の技術的な進歩のニーズは明らかである。最近の数十年間以上に亘って、工業環境における生体分子の典型的な発酵力価は0.5g/L~約3g/Lから成長し、分子生物学の活発化された進歩に基づいて、近い将来、10g/L以内のレベルで達成可能であると考えられる。さらに、下流の精製工程もまた、幾つかの研究開発を受けているが、この領域における改善は上流のものと一致していない。
【0003】
治療用タンパク質の製造は、投与されるタンパク質に有害汚染物質が実質的に存在しないように、高い純度が処理の間に達成されることを必要とする。現在、工業規模では、クロマトグラフィーは高純度タンパク質を達成するために用いられる主要な方法論である。極度にクロマトグラフィーのユニット依存する操作は、経済的な観点から、MAb等の生体分子の下流の処理における発達の手掛かりである。クロマトグラフィーは、生物学的製剤の処理のうち最大60%を占める(Re-use of Protein A Resin:Fouling and Economics,Mar 01,2015 BioPharm International,Volume 28,Issue 3,Anurag S.Rathore,Mili Pathak,Guijun Ma,Daniel G.Bracewell)。
【0004】
かかるクロマトグラフィーの分離は、標的分子及び不純物を含む液相を固相と接触させる際のi)標的分子、及び/又は、ii)1つ以上の不純物の固相への結合を含む。標的分子/不純物と固相の間の相互作用は、電荷、疎水性、親和性又はそれらの組み合わせに基づく場合がある。
【0005】
歴史的に、多孔質ビーズを使用する従来の充填層クロマトグラフィーは非常に強力な分離手段であった。これらのビーズの多孔性は、標的又は不純物のいずれかを結合するため高い表面積をもたらす。これは、容量の高い材料をもたらし、少量の吸着材料が使用され得ることを意味する。また、高い容量は、充填される懸濁液の相対濃度と比較して、より多くの標的が吸着剤1単位体積当たりに結合され得ることから、分離の間に達成される濃縮効果を増加する。これらの態様は、液体体積が最大20000Lに達し得る1つのバッチ当たり数キログラムの材料を精製する必要がある、工業規模の処理に重要である。多孔質ビーズに対する典型的な結合容量は、固相の官能価又は結合した種に応じて35mg/mL~120mg/mLの領域にある。
【0006】
多孔質ビーズ系システムでは、標的分子/不純物と固相との間の結合事象は、多孔質ビーズ中への拡散に依存する。したがって、多孔質ビーズ系システムにおける滞留時間と流量の間に強い相関がある。したがって、結合容量は滞留時間の減少と共に減少する。これは、2分未満の時間が多孔性ビーズ系システムで使用される場合、次いで容量の急速な減少が付随する。また、多リットルのビーズ懸濁液をカラムに詰める場合、短い滞留時間に必要とされる高い流量は、特に製造規模で、多孔質ビーズと適合性ではない可能性がある。ここで、多孔質ビーズの機械的不安定は、圧縮又は崩壊の事象に結びつく場合があり、ひいては不均質なカラム床を生じる。
【0007】
滞留時間に影響を与える流量により、単位時間当たりの固相に結合され得る標的の量を最大限にすることは極めて重要である。また、これは、より少量の吸着剤を使用すること及び/又はより短時間で分離が行われることのいずれかを可能とする。この測定基準は、単位体積当たり、単位時間当たりの結合されるグラム(mg/mL/分)として定義され得る。上で検討される多孔質ビーズに対する典型的な結合容量及び滞留時間は、およそ10mg/mL/分~120mg/mL/分の単一カラムの多孔質ビーズシステムに対する全体的な生産性をもたらす。
【0008】
多孔質ビーズ系システムの代わりに、モノリス又はメンブレンを使用してもよい。かかる材料によるフローは拡散ではなく滞留性であり、したがってそれらの結合容量は多孔質ビーズ系システムよりもフローに対してはるかに感受性が低い。典型的な滞留時間が約0.2分~0.5分である場合、これらの材料は多孔質ビーズ系材料よりはるかに高い流量で実行され得る。
【0009】
しかしながら、動的フロー下のモノリス(10mg/mL~20mg/mL)及びメンブレン(7.5mg/mL~29mg/mL)に対する標的の10%ブレイクスルーにおける典型的な結合容量は、多孔質ビーズより低い(Gottschalk,U.(2008).Biotechnol Prog,24(3),496-503.doi:10.1021/bp070452g)。モノリス及びメンブレンの材料の(多孔質ビーズ系材料と比較して)劣った結合容量は、より高い流量を利用することによりある程度まで相殺することができる。
【0010】
上で検討されたモノリス及びメンブレンに対する典型的な結合容量及び滞留時間は、およそ10mg/mL/分~145mg/mL/分のモノリス及びメンブレンシステムに対する結合事象の全体的な生産性をもたらす。
【0011】
モノリス/メンブレン材料で達成可能な、多孔質ビーズ系材料及びより高い流量と関連する高い結合容量を共有する、クロマトグラフィー材料に対するニーズが存在する。最大の生産性(mg/mL/分)を達成するため、かかる材料は高い流量において高い容量を提供し得る。
【0012】
本発明者らは、驚いたことに、官能化工程がグラフト化工程と無関係に行われる2段階の方法によってもたらされたナノファイバー材料がかかる有利な特性を示すことを見出した。この方法によって製造された材料は、グラフト化されていない材料と比較して、著しく増加した結合容量を有する。本発明の生成物によって示される容量は、多孔質ビーズのみを使用して通常達成可能なものに匹敵する又はそれを超え、現在市販されているメンブレン及びモノリスの技術で達成可能なものより数倍高い。さらに、これらの容量は、1秒未満の滞留時間で達成され得、従来の商業的に入手可能な材料よりも10~100倍、更には1000倍大きい生産性の値をもたらす。
【0013】
本発明に従って製造される材料は、多くの驚くべき技術革新に依拠する。はじめに、リガンド基、すなわち、選択的に標的生体分子に結合するクロマトグラフィー媒体に結合した基の設定された密度に対して、グラフト化の量の増加は、クロマトグラフィー材料の結合容量を増加し得ることが本発明者らによって見出された。帯電した基で官能化されたクロマトグラフィー媒体に関して、以前は、それらの帯電した基の量の増加が、材料の電荷密度及び材料の結合容量を増加させると理解されていた。したがって、材料の結合容量を最大にすることに対する先のアプローチは、電荷密度を最大にすることに注目した。しかしながら、本発明者は、グラフト化を増加させることによって、結合容量が材料の電荷密度と無関係に増加され得ることを初めて示した。
【0014】
他の場合では、官能化工程の変更が電荷密度に影響をほとんど及ぼすことができないが、グラフト化工程と組み合わせた場合、結合容量の著しい増加が、同じ程度の官能化について達成され得ることがわかった。
【0015】
したがって、クロマトグラフィー材料の電荷密度及び結合容量は、高度に最適化された材料を与えるため、官能化の程度とグラフト率の両方を変化させることによって制御され得ることがわかった。グラフト化工程と後の官能化工程のこの関係は、高い流量で非常に高い結合容量を有する材料を製造するため、本発明者らによって研究され開発された。電荷密度と動的結合容量の関係は、以前に評価されたよりもはるかに微妙とわかった。したがって、同じ電荷密度を有する材料については、グラフト率の制御によって動的結合容量を変えることができるかもしれないことがわかった。これは予期されていない、非常に有利な結果であった。
【0016】
クロマトグラフィーの材料の容量を増加させる先の試みが、もっぱら材料上のリガンド基の密度を増加させることに注目していたため、これは非常に意義深い。したがって、上記先の試みは、分離された工程としてグラフト化及び官能化の条件を独立して変えることにより、どのように材料の容量を制御し増加することができるかに対処することができない。多くの既知の修飾処理において、クロマトグラフィー材料が帯電したポリマーで改変された、すなわちグラフト化及び官能化の工程は同時に行われたことから、この制御の程度は単純には可能でなかった。
【0017】
重要なことには、材料の結合容量を増加させることと並んで、グラフト化及び官能化もまた材料の流れ抵抗を調節する効果があり、クロマトグラフィー材料の生産性に不利益な影響を及ぼす。これは、Menkhausら(Menkhaus,T.J.,Varadaraju,H.,Zhang,L.,Schneiderman,S.,Bjustrom,S.,Liu,L.,&Fong,H.(2010).Chemical Communications,46(21),3720-3722.doi:10.1039/C001802C)において検討され、グラフト化を増加することは、伝達性の媒体における流れ抵抗及び物質移動の拡散面の増加と関連し得ることを報告する。これは、クロマトグラフィー材料を修飾する既知の方法が、典型的には、材料の表面から帯電したポリマー鎖をグラフトするためかもしれない。したがって、グラフト率を増加させることもまた、材料の結合容量及び流れ特性を最適化するために、これらを独立して制御する方法のない材料の電荷密度を増加させる。
【0018】
これらの欠点は、材料を官能化する工程からグラフト化工程を分離することにより、本発明において克服された。グラフト率を増加させることは、それ自体では、材料を通る流れ抵抗を増加させないこともわかった。流れ抵抗が影響を受けるのは、グラフト化された材料が官能化された時だけである。
【0019】
さらに、本発明者らは、グリシドール及びその誘導体がグラフト化工程で使用するのに特に好ましいモノマー単位であることを発見した。驚いたことに、グラフト化工程がグリシドール重合を使用する場合、結果として生じたクロマトグラフィー媒体は、原子移動ラジカル重合(ATRP)等の他のグラフト化法によって製造されたクロマトグラフィー媒体よりも改善された特性(例えば、それらはより高い容量及びより高い生産性から利益を得る)を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【文献】国際公開第2014/120387号
【発明の概要】
【0021】
したがって、本発明は、官能化された高分子クロマトグラフィー媒体を作製する方法を提供する。上記の方法は:
(i)1つ以上のポリマーナノファイバーから作製された基体を提供すること、
(ii)前記基体から1つ以上の中性ポリマー鎖をグラフト化すること、及び
(iii)前記グラフト化生成物を、クロマトグラフィー媒体として工程(ii)の生成物を官能化する試薬と接触させることを含み、
ここで、工程(ii)が、複数の式
【0022】
【化1】
の化合物、及び/又はそのエナンチオマー、及び/又は式(I)のその誘導体及び/又はエナンチオマー及び/又はジアステレオマーを:
【0023】
【化2】
ナノファイバー基体上に存在する1つ以上の官能基と反応させることを含み、
式中、R、R、R、R及びRは同一又は異なってもよく、H、ハロ、C~Cアルキル又はC~Cアルコキシから選択され、但しR、R、R、R又はRの少なくとも1つは水素ではない。
【0024】
また、本発明は以下を提供する:
-本発明のプロセスによって入手可能な官能化されたクロマトグラフィー媒体。
【0025】
-クロマトグラフィーカートリッジを作製する方法であって、本発明の方法を実施すること、及びそのようにして得られた生成物をカートリッジに組み込むことを含む、方法。
【0026】
-(a)上記方法によって入手可能である、又は(b)本発明の1つ以上の官能化されたクロマトグラフィークロマトグラフィー媒体を含む、クロマトグラフィーカートリッジ。
【0027】
-クロマトグラフィーにおける本発明の官能化されたクロマトグラフィー媒体又は本発明のクロマトグラフィーカートリッジの使用。
【0028】
-移動相から1つ以上の生体分子を単離する方法であって、移動相中の1つ以上の生体分子を、本発明の官能化されたクロマトグラフィー媒体又は本発明のクロマトグラフィーカートリッジと接触させることを含む、方法。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】多くの商業的に入手可能な多孔質ビーズ系システムに対する滞留時間の関数として動的結合容量(DBC)を示す。
図2】グラフト化工程がない状態でのトリメチルアンモニウム官能化された材料の電荷密度に対する官能化物質の量を増加することの効果を示す。
図3】グラフト化工程がない状態でのトリメチルアンモニウム官能化された材料の動的結合容量(DBC)に対する電荷密度を増加することの効果を示す。
図4】本発明に従って作製された多くの材料に関する、電荷密度に対するポリマーグラフト化の程度及びトリメチルアンモニウム官能化物質の量を増加することの効果を示す。
図5図4に表示される値の平均を示す。
図6】本発明に従って作製された多くのトリメチルアンモニウム官能化材料に関する、設定された電荷密度での動的結合容量(DBC)に対するポリマーグラフト化を増加することの効果を示す。
図7】フラグト化されていない材料と比較して、本発明に従って作製された多くの材料に関する、設定されたポリマーグラフトでの動的結合容量(DBC)に対する電荷密度を増加することの効果を示す。
図8】グリシドール/スルホン酸官能化材料に関する、電荷密度に対するポリマーグラフト化の程度及び官能化反応時間を増加すること効果を示す。
図9】本発明によるグリシドール/スルホン酸官能化材料の動的結合容量に対する独立したグラフト化工程の影響を示す。
図10】本発明によるグリシドール/カルボキシメチル官能化材料の動的結合容量(DBC)に対するグラフト化の影響を示す。
図11】本発明に従って作製された多くの材料に関する、流れ抵抗に対する電荷密度及びポリマーグラフト化の程度を増加することの効果を示す。
図12】多くの非荷電材料における流れ抵抗に対するポリマーグラフト化の程度を増加することの効果を示す。
図13】グラフト化生成物中の-OH基の密度に対するグリシドール試薬量を増加することの効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は、ポリマーナノファイバー基体から官能化された高分子クロマトグラフィー媒体を作製する二段階法を含む。2段階とは、ポリマーグラフト化工程、及び官能化工程である。
【0031】
ポリマーナノファイバー
本発明の官能化された高分子クロマトグラフィー媒体は、ポリマーナノファイバー基体から形成される。各基体は、1つ以上のポリマーナノファイバーから形成される。
【0032】
ポリマーナノファイバーは、典型的には電界紡糸ポリマーナノファイバーである。かかる電界紡糸ポリマーナノファイバーは、当業者によく知られており、それらの産生に対する最適化された条件は、例えば、O.Hardick,et al.,J.Mater.Sci.46(2011)3890に見られ、その全体が参照することにより本明細書の一部をなす。本発明の方法は、典型的には1つ以上のポリマーナノファイバーを生産するため、ポリマーを電界紡糸する最初の工程を含む。これは、それぞれ1つ以上のポリマーナノファイバーを含む、1つ以上の不織布のシートを生産するための電界紡糸を含む。
【0033】
本発明で使用されるポリマーナノファイバーは、典型的には10nm~1000nmの平均径を有する。幾つかの適用に対して、200nm~800nmの平均径を有するポリマーナノファイバーが適している。200nm~400nmの平均径を有するポリマーナノファイバーは、特定の適用に適している場合がある。
【0034】
本発明で使用されるポリマーナノファイバーの長さは特に制限されない。したがって、従来の電界紡糸方法は、数百メートル、更には数キロメートルの長さのポリマーナノファイバーを生産することができる。しかしながら、典型的には、1つ以上のポリマーナノファイバーは、最長10km、好ましくは10m~10kmの長さを有する。
【0035】
典型的には、1つ以上のポリマーナノファイバーは、それぞれ1つ以上のポリマーナノファイバーを含む1つ以上の不織布のシートの形態で提供される。したがって、基体は、典型的には、それぞれ1つ以上のポリマーナノファイバーを含む1つ以上の不織布のシートから形成される。1つ以上のポリマーナノファイバーを含む不織布のシートは、本質的に無作為に配向された各ナノファイバーを有する上記1つ以上のポリマーナノファイバーのマットであり、すなわち、ナノファイバー又はナノファイバーが特定パターンを取り入れるように製造されていない。ポリマーナノファイバーを含む不織布のシートは、典型的には、O.Hardick,et al.,J.Mater.Sci.46(2011)3890等の既知の方法によって提供される。不織布のシートは、特定の状況では、単独のポリマーナノファイバーからなってもよい。代替的には、不織布のシートは2種以上のポリマーナノファイバー、例えば2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種、9種又は10種のポリマーナノファイバーを含み得る。
【0036】
不織布のシートは、典型的には、1~40g/m、好ましくは5~25g/m、幾つかの状況では1~20g又は5~15g/mの面密度を有する。
【0037】
不織布のシートは、典型的には、5μm~120μm、好ましくは10μm~100μm、幾つか状況では50μm~90μm、他の状況では5μm~40μm、10μm~30μm又は15μm~25μmの厚さを有する。
【0038】
ナノファイバーを生産するため本発明の方法で使用されるポリマーは、ポリマーがクロマトグラフィーの適用における使用に適しているかぎり、特に限定されない。したがって、典型的には、ポリマーは、クロマトグラフィー法においてクロマトグラフィー媒体、すなわち吸着剤としての使用に適しているポリマーである。好適なポリマーとして、ナイロン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリスルホン、例えばポリエーテルスルフォン(PES)、ポリカプロラクトン、コラーゲン、キトサン、ポリエチレンオキシド、アガロース、酢酸アガロース、セルロース、酢酸セルロース、及びそれらの組み合わせ等のポリアミドが挙げられる。ポリエーテルスルフォン(PES)、セルロース、酢酸セルロース及びそれらの組み合わせが好ましい。幾つかの場合には、セルロース、酢酸セルロース及びそれらの組み合わせが好ましい。
【0039】
幾つかの実施形態では、基体が、種々のポリマーから形成された1つ以上のポリマーナノファイバーから形成された1つ以上のナノファイバーを含む。したがって、この実施形態では、基体は1つ以上の種々のポリマーを含む。典型的なポリマーは、上に定義される通りである。
【0040】
典型的には、本発明の方法は、官能化されたセルロースクロマトグラフィー媒体の作製に対するものであり、その方法は1つ以上の酢酸セルロースナノファイバーから形成された基体を提供することを含む。好ましくは、上記方法は、それぞれ1つ以上の酢酸セルロースナノファイバーを含む、1つ以上の不織布のシートで形成された基体を提供することを含む。酢酸セルロースは、容易に電界紡糸され、電界紡糸後に容易にセルロースに変換され得る。したがって、好ましくは、上記方法は、それぞれが1つ以上の電界紡糸された酢酸セルロースナノファイバーを含む、1つ以上の不織布のシートから形成された基体を提供することを含む。
【0041】
1つ以上のポリマーナノファイバーから形成された基体、典型的には上で検討されるような1つ以上の不織布のシートの形態で、1つ以上のポリマーナノファイバーを含む。特定の実施形態では、1つ以上のポリマーナノファイバー又は1つ以上の不織布のシートは、グラフト化工程前にいかなる物理的な処理工程に供されない。
【0042】
ナノファイバーの物理的修飾
しかしながら、本発明の特定の好ましい実施形態では、基体の提供は、グラフト化工程に先立って、任意に不織布シート中のポリマーナノファイバーの物理的な修飾を含む。具体的には、物理的な修飾は、ポリマーナノファイバー/不織布シートを加熱及び/又は加圧すること、好ましくはポリマーナノファイバー/不織布シートを加熱及び加圧することを含み得る。これらの工程は、材料の構造安定性を改善する。また、加圧及び加熱の条件は、得られる材料の厚さ及び/又は空隙率を変更するため変化され得る。
【0043】
ポリマーナノファイバーの複数の不織布シートの使用は、(グラフト化され、官能化されると)吸着に対するより大きな特性を有する、より厚い材料を作製することを可能とする。したがって、基体の提供は、典型的には、一方の上に他方が積層され、上記シートのそれぞれが1つ以上のポリマーナノファイバーを含む2つ以上の不織布シートを提供すること、及びシートの積層物を同時に加熱及び加圧して、隣接するシートのナノファイバー間の接点を融合すること、を含む。
【0044】
セルロースクロマトグラフィー媒体の場合、基体の提供は、典型的には、一方の上に他方が積層され、上記シートのそれぞれが1つ以上の酢酸セルロースナノファイバーを含む2つ以上の不織布シートを提供すること、及びシートの積層物を同時に加熱及び加圧して隣接するシートのナノファイバー間の接点を融合することを含む。
【0045】
ポリマーナノファイバー/不織布シートの加圧及び加熱に対する好ましい処理条件は、国際特許出願公開第2015/052460号パンフレット及び国際特許出願公開第2015/052465号パンフレットに見られ、それらの全体が参照することにより本明細書の一部をなす。
【0046】
ナノファイバー基体のグラフト化
本発明の方法は、工程(i)出提供された基体から1つ以上の中性ポリマー鎖をグラフト化することを含むグラフト化工程(工程(ii))を含む。
【0047】
基体からの1つ以上の中性ポリマー鎖をグラフト化することは、典型的には、任意に1つ以上の触媒の存在下で、基体上に存在する1つ以上の官能基から1つ以上のポリマー鎖を成長させることを含む。したがって、典型的には、基体は、1つ以上の官能基、好ましくはポリマー鎖を成長し得る1つ以上の官能基を含む。1つ以上の官能基からポリマー鎖を成長させるとは、個々のモノマーの基本単位から1つ以上の官能基においてポリマーを構築することを意味する。
【0048】
したがって、グラフト化工程は、基体に対してポリマー鎖を予備成形した結合ではなく、典型的には基体からポリマー鎖を直接成長させることを含む。したがって、重合が進行するにつれて、個々のモノマーが、基体に対して遠位に固着されるポリマー鎖を成長させる端部に付加される。
【0049】
基体からの直接のポリマー鎖の成長は、特に重合戦略を使用して、ポリマーコーティングの構造物に対する制御を可能にし、それによってポリマーは全て均一な速度で同時に成長する。これは、密集した境界の明確なポリマーコーティング層の形成を可能にする。
【0050】
本発明では、グラフト化工程は、式
【0051】
【化3】
の複数の化合物、及び/又はそのエナンチオマー、及び/又は式(I)のその誘導体及び/又はそのエナンチオマー及び/又はジアステレオマーを:
【0052】
【化4】
ナノファイバー基体上に存在する1つ以上の官能基と反応させることを含み、
ここで、R、R、R、R及びRは、同一又は異なってもよく、H、ハロ、C~Cアルキル又はC~Cアルコキシから選択され、但しR、R、R、R又はRの少なくとも1つは水素ではない。したがって、典型的には、1種類のみのポリマーが基体にグラフト化される。しかしながら、他の実施形態では、2種類以上のポリマーが基体にグラフト化されてもよい。
【0053】
典型的には、R、R、R、R及びRは、同一又は異なってもよく、フルオロ、クロロ、ブロモ、メチル又はエチルから選択される。
【0054】
したがって、式(I)の化合物において:
は、H、ハロ、C~Cアルキル又はC~Cアルコキシ、好ましくはH、フルオロ、クロロ、ブロモ、メチル又はエチルである;
は、H、ハロ、C~Cアルキル又はC~Cアルコキシ、好ましくはH、フルオロ、クロロ、ブロモ、メチル又はエチルである;
は、H、ハロ、C~Cアルキル又はC~Cアルコキシ、好ましくはH、フルオロ、クロロ、ブロモ、メチル又はエチルである;
は、H、ハロ、C~Cアルキル又はC~Cアルコキシ、好ましくはH、フルオロ、クロロ、ブロモ、メチル又はエチルである;及び
は、H、ハロ、C~Cアルキル又はC~Cアルコキシ、好ましくはH、フルオロ、クロロ、ブロモ、メチル又はエチルである。
【0055】
典型的には、グラフト化工程(ii)が、そこからポリマーが成長され得る1つ以上の官能基を有する基体を、式(I)の複数の化合物及び/又はそのエナンチオマーと反応させることを含む場合、R、R、R、R及びRの少なくとも1つは水素である。この場合、好ましくは、R、R、R、R及びRのうち少なくとも2つは、水素である。より好ましくは、R、R、R、R及びRのうち少なくとも3つは、水素である。更により好ましくは、R、R、R、R及びRのうち4つは、水素である。好ましくは、Rは水素であり、R及びRの少なくとも1つは水素である。代替的には、R及びRは水素である。更により好ましくは、R、R及びRは水素である。
【0056】
より好ましくは、グラフト化工程(ii)は、そこからポリマーが成長され得る1つ以上の官能基を有する基体を、式
【0057】
【化5】
の複数の化合物及び/又はそのエナンチオマーと反応させることを含む。
【0058】
基体が種々のポリマーから形成されたナノファイバーから形成される実施形態では、異なる種類のポリマーナノファイバーのそれぞれがグラフト化工程において、異なるポリマーでグラフト化されてもよい。それは、例えば、種々のポリマーナノファイバー上に存在する種々の官能基に起因し得る。代替的には、同じポリマーが、基体中の異なる種類のポリマーナノファイバーの各々にグラフト化され得る。
【0059】
典型的な官能基としては、ヒドロキシル基、アミノ基及びカルボキシル基が挙げられる。基体が1つ以上のセルロース又は酢酸セルロースナノファイバーで形成される場合、官能基は典型的にはヒドロキシル基である。
【0060】
典型的には、上記基体を工程(i)と工程(ii)の間に処理して、1つ以上の官能基を誘導する、又は上記基体を工程(i)と工程(ii)の間に処理して、基体上の任意の官能基を脱保護若しくは活性化する、又は上記基体を工程(i)と工程(ii)の間に処理して、基体上の官能基の数/密度を増加させる。好ましくは、上記基体を工程(i)と工程(ii)の間に処理して、1つ以上の官能基を導入する、又は基体上の任意の官能基を脱保護若しくは活性化する。より好ましくは、上記基体を工程(i)と工程(ii)の間に処理して、基体上の任意の官能基を脱保護若しくは活性化する。更に好ましくは、上記基体を工程(i)と工程(ii)の間に処理して、基体上の任意の官能基を脱保護する。
【0061】
しかしながら、代替的な実施形態では、工程(i)と工程(ii)の間に追加の処理工程は存在しない。これらの実施形態では、典型的には、グラフト化工程(ii)は、さらに、同じ工程で1つ以上の官能基を誘導する、又は基体上の任意の官能基を脱保護若しくは活性化する、又は基体上の任意の官能基の数/密度を増加させる条件下で行われる。好ましくは、グラフト化工程(ii)は、さらに、同じ工程で1つ以上の官能基を誘導する、又は基体上の任意の官能基を脱保護若しくは活性化する条件下で行われる。より好ましくは、グラフト化工程(ii)は、さらに、同じ工程で、基体上の任意の官能基を脱保護若しくは活性化する条件下で行われる。更により好ましくは、グラフト化工程(ii)は、さらに、同じ工程で、基体上の任意の官能基を脱保護する条件下で行われる。
【0062】
特定の好ましい実施形態では、官能基はヒドロキシル基である。この特定の好ましい実施形態では、グラフト化工程(ii)は、典型的には、更に同じ工程において基体上のヒドロキシル基を脱保護する条件下で行われる。
【0063】
官能基の脱保護は、典型的には、官能化がそれらからの1つ以上のポリマー鎖を有し得るように達成される。
【0064】
例えば、クロマトグラフィー媒体がセルロースクロマトグラフィー媒体である場合、典型的には酢酸セルロース基体が提供され、グラフト化工程に先立って、酢酸セルロースを処理してセルロースへと変換させる。これは、ヒドロキシル基を与えるためのアセチル化ヒドロキシル基の脱保護を含む。酢酸セルロースのセルロースへの変換は、典型的には、12時間超、例えば12時間~36時間の間、水性アルカリ、好ましくは水:エタノール、より好ましくは水:エタノール2:1中のNaOHを使用して達成される。
【0065】
代替的には、クロマトグラフィー媒体がセルロースクロマトグラフィー媒体である場合、両方の酢酸セルロースがセルロースへと変換される条件下でグラフト化工程(ii)において、酢酸セルロース基体が提供及び処理され、セルロースが、その後、式
【0066】
【化6】
の複数の化合物、及び/又はそのエナンチオマー、及び/又は式(I)のその誘導体及び/又はそのエナンチオマー及び/又は、ジアステレオマーと反応して、グラフト化ポリマー鎖を生成する。かかる実施形態では、グラフト化工程(ii)は、典型的には、4時間~6時間の間、水又は水:エタノール中、好ましくは水中の水性アルカリ、好ましくはNaOH又はKOH、より好ましくはKOHの存在下で達成される。
【0067】
クロマトグラフィー媒体がセルロースクロマトグラフィー媒体である場合、本発明は、典型的には、官能化されたセルロースクロマトグラフィー媒体を作製する方法を提供し、該方法は、
(i)1つ以上の酢酸セルロースファイバーで形成された基体を提供し、酢酸セルロースを処理してセルロースへと変換すること、
(ii)得られたセルロース基体から1つ以上の中性ポリマー鎖をグラフト化すること、及び
(iii)上記グラフト化生成物を、クロマトグラフィー媒体として工程(ii)の上記生成物を官能化する試薬と接触させること、を含む。
【0068】
クロマトグラフィー媒体がセルロースクロマトグラフィー媒体である場合、本発明は、代替的には、官能化されたセルロースクロマトグラフィー媒体を作製する方法を提供し、該方法は、
(i)1つ以上の酢酸セルロースナノファイバーで形成された基体を提供すること、
(ii)上記基体を、両方の酢酸セルロースがセルロースに変換される条件に供すること、その後、1つ以上の中性ポリマー鎖を得られたセルロース基体にグラフト化すること、及び
(iii)上記グラフト化生成物を、クロマトグラフィー媒体として工程(ii)の上記生成物を官能化する試薬と接触させること、を含む。
【0069】
特許請求の範囲に記載される方法の工程(iii)に関して、官能基の活性化を以下で検討する。その検討は、特許請求の範囲に記載される方法の工程(ii)に対する官能基の活性化にも同様に当てはまる。
【0070】
基体上の官能基の数及び/又は密度を増加させる方法は、当業者に知られているであろう。
【0071】
1つ以上の官能基を基体に導入する場合、基体は、基体上の官能基を修飾する更なる工程(i-a)において工程(i)と工程(ii)の間に処理して官能基を導入し、その官能基から1つ以上のポリマー鎖が成長され得、その後、そのように修飾された基体からポリマー鎖を成長させる工程(ii)が続く。工程(i-a)は、基体上に存在する官能基を、それから1つ以上のポリマー鎖を成長させ得る官能基へと共に修飾する単一の工程又は複数の工程を含み得る。
【0072】
グリシドール重合を含む実施形態では、典型的には、上記基体を工程(i)~工程(ii)の間に処理して、基体上に存在する任意の官能基を脱保護する。
【0073】
また、本明細書には、ATRP又はRAFTの重合を含む相対的な方法も記載される。これらの方法では、典型的には上記基体を工程(i)~工程(ii)の間に処理して、基体上に存在する官能基を、それから1つ以上のポリマー鎖を成長させ得る官能基へと修飾する。またこの工程に先立って、基体を処理して、基体上の任意の官能基を脱保護する。
【0074】
ATRP重合を含む方法では、典型的には、基体上のヒドロキシル基は修飾されて、ハロゲン化アルキル基又はハロゲン化アリール基を導入する。典型的には、ハロゲン化アルキルは、フッ化アルキル、塩化アルキル、臭化アルキル又はヨウ化アルキルである。臭化アルキルが好ましい。ターシャリーハロゲン化アルキルがより好しい。ターシャリー臭化アルキルが更に好ましい。
【0075】
基体にグラフト化された1つ以上のポリマー鎖は、中性である。ポリマー鎖は、当業者によって帯電した基と見なされる任意の基、例えば以下で検討される種類の帯電した基を含まない。典型的には、工程(ii)で基体にグラフト化されるポリマー鎖は、本明細書で定義されるいかなる帯電した基も含まない。
【0076】
ポリマーの中性は、そのポリマーが、本質的に中性のpH、例えばpH6~8、典型的にはpH6.5~7.5、通常pH6.75~7.25、又は約pH7においてイオン化可能となり得る、すなわちプロトン化又は脱プロトン化され得る任意の基を含むかどうかによって評価され得る。典型的には、中性ポリマーは、酸性か塩基性の中心を実質的に含まず、すなわち、pH6~8、典型的にはpH6.5~7.5、通常pH6.75~7.25、又は約pH7において、プロトン化又は脱プロトン化される官能基が実質的に存在しない。これは、当該技術分野で典型的なアッセイによって当業者によって特定され得る。酸性及び塩基性の評価に対する典型的な手順は、その理論上の側面と共に、“Acidity and basicity of solids:Theory,assessment and utility”Editors J.Fraisard and L.Petrakis,NATO ASI Series C,volume 444,Kluwer Academic Publishers,Dordrecht,Boston and London,1994,especially pp.513において検討され、その全体が参照することにより本明細書の一部をなす。本明細書で使用されるように、実質的には、1モル%未満、好ましくは0.1モル%未満、更に好ましくは0.01モル%未満、又は更には0.001モル%未満を意味する
上に言及されるように、グラフト化工程(ii)は、グリシドール重合として既知の重合の方法を使用して、そこからポリマーを成長させ得る、1つ以上の官能基を有する基体を、式
【0077】
【化7】
の複数の化合物、及び/又はそのエナンチオマー、及び/又は式(I)のその誘導体及び/又はそのエナンチオマー及び/又はジアステレオマーと反応させることを含み、
【0078】
【化8】
ここで、R、R、R、R及びRは、同一又は異なってもよく、H、ハロ、C~Cアルキル又はC~Cアルコキシから選択され、
但し、R、R、R、R又はRの少なくとも1つは水素ではない。したがって、ポリマー鎖の成長は、グリシドール重合を使用して実行される。
【0079】
典型的には、R、R、R、R及びRは、同一又は異なってもよく、フルオロ、クロロ、ブロモ、メチル又はエチルから選択される。
【0080】
したがって、式(I)の化合物において:
は、H、ハロ、C~Cアルキル又はC~Cアルコキシ、好ましくはH、フルオロ、クロロ、ブロモ、メチル又はエチルである;
は、H、ハロ、C~Cアルキル又はC~Cアルコキシ、好ましくはH、フルオロ、クロロ、ブロモ、メチル又はエチルである;
は、H、ハロ、C~Cアルキル又はC~Cアルコキシ、好ましくはH、フルオロ、クロロ、ブロモ、メチル又はエチルである;
は、H、ハロ、C~Cアルキル又はC~Cアルコキシ、好ましくはH、フルオロ、クロロ、ブロモ、メチル又はエチルである;及び
は、H、ハロ、C~Cアルキル又はC~Cアルコキシ、好ましくはH、フルオロ、クロロ、ブロモ、メチル又はエチルである。
【0081】
典型的には、グラフト化工程(ii)が、そこからポリマーが成長され得る1つ以上の官能基を有する基体を、式(I)の複数の化合物及び/又はそのエナンチオマーと反応させることを含む場合、R、R、R、R及びRの少なくとも1つは水素である。この場合、好ましくは、R、R、R、R及びRのうち少なくとも2つは、水素である。より好ましくは、R、R、R、R及びRのうち少なくとも3つは、水素である。更により好ましくは、R、R、R、R及びRのうち4つは、水素である。好ましくは、Rは水素であり、R及びRの少なくとも1つは水素である。代替的には、R及びRは水素である。更により好ましくは、R、R及びRは水素である。
【0082】
より好ましくは、グラフト化工程(ii)は、そこからポリマーが成長され得る1つ以上の官能基を有する基体を、式
【0083】
【化9】
の複数の化合物及び/又はそのエナンチオマーと反応させることを含む。
【0084】
グリシドール重合は、当業者に知られている手法である。グリシドール重合は、典型的には触媒の存在を必要としない。しかしながら、重合は、任意に1つ以上の適切な触媒の存在下で行われ得る。かかる実施形態では、典型的には、化学的又は生物学的な触媒が使用される。グリシドール重合は、典型的には水性環境で実行される。典型的には、グリシドール重合は室温で行われる。
【0085】
典型的には、グリシドール重合は穏やかなアルカリ性条件下で行われる。典型的には、グリシドール重合は、約5時間超、好ましくは約10時間超、より好ましくは約15時間超、例えば約16時間に亘って行われる。グリシドール重合の後、典型的には、グラフト化生成物を水に続いて緩酸で洗浄する。
【0086】
グリシドール重合は、本明細書に定義される1つ以上の官能基からグリシドール及び/又は式(I)のグリシドール誘導体を重合することを含む。典型的には、それらの官能基はヒドロキシル基である。したがって、典型的には、特許請求の範囲に記載される方法の工程(ii)は、式
【0087】
【化10】
の複数の化合物、及びそのエナンチオマー、及び/又は式(I)のその誘導体及び/又はそのエナンチオマー及び/又はジアステレオマーを、ナノファイバー基体上に存在する1つ以上のヒドロキシル基と反応させることを含む。好ましくは、特許請求の範囲に記載される方法の工程(ii)は、式
【0088】
【化11】
の複数の化合物、及びそのエナンチオマーを、ナノファイバー基体上に存在する1つ以上のヒドロキシル基と反応させることを含む。
【0089】
グリシドール重合は、典型的には1つ以上のポリグリセロール鎖をもたらす。
【0090】
したがって、或る実施形態では、本発明は、官能化高分子クロマトグラフィー媒体を作製する方法を提供し、該方法は、
(i)1つ以上のポリマーナノファイバーで形成された基体を提供すること、
(ii)基体から1つ以上の中性ポリマー鎖をグラフト化すること、及び
(iii)グラフト化生成物を、クロマトグラフィー媒体として工程(ii)の生成物を官能化する試薬と接触させること、を含み、
ここで、ポリマー鎖を成長させることは、グリシドール及び/又は式(I)のグリシドール誘導体、好ましくはグリシドールを、基体上に存在する1つ以上の官能基から重合することを含む。
【0091】
したがって、或る実施形態では、本発明はまた、官能化高分子クロマトグラフィー媒体を作製する方法を提供し、該方法は、
(i)1つ以上のポリマーナノファイバーで形成された基体を提供すること、
(ii)基体から1つ以上の中性ポリマー鎖をグラフト化すること、及び
(iii)グラフト化生成物を、クロマトグラフィー媒体として工程(ii)の生成物を官能化する試薬と接触させること、を含み、
ここで、1つ以上のポリマー鎖は、1つ以上のポリグリセロール鎖である。
【0092】
グリシドール重合は、必然的にポリマー鎖の分岐をもたらし、「ブッシュ」構造を生じる。したがって、典型的には、1つ以上のポリマー鎖は分岐鎖である。
【0093】
当業者によく知られている別の重合法は、制御ラジカル重合(CRP)である。制御ラジカル重合は当業者によく知られている用語であり、典型的には、モノマーのフリーラジカル付加重合を指し、時間に対して成長するポリマーの分子量の制御の程度が存在する。CRPの例としては、原子移動ラジカル重合(ATRP)、電子移動による原子生成(AGET)、ATRP、及び可逆的付加-開裂連鎖移動(RAFT)を含んでいる。重合方法論は排他的にCRPとして定義されないが、しかし、フリーラジカル重合(FRP)及び開環メタセシス重合(ROMP)を含み得る。
【0094】
ATRPは、水性環境、又は任意に水と、例えば、メタノール、DMSO、THF、DMF又はNMPであり得る別の溶媒との混合物中で行われてもよい。ATRP重合は、好ましくは実質的に酸素を含まない条件下で行われる。典型的には、ATRPを室温で行う。典型的には、ATRPを行った後、結果として生じる物質を水で洗浄する。
【0095】
ATRP重合で使用される触媒は、典型的には、1つ以上のリガンドと複合体化された遷移金属又は遷移金属塩である。本明細書で使用されるように、リガンドは、金属イオン(通常、遷移金属イオン)に配位する化合物である。好適な遷移金属として、銅、コバルト、モリブデン、ロジウム、オスミウム、ルテニウム、パラジウム、ニッケル及びレニウムが挙げられる。銅が好ましい。銅配位触媒に適したリガンドの例として、2,2’-ビピリジン(bpy)、4,4’-ジ(5-ノニル)-2,2-ビピリジン(dNbpy)、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、N-プロピル(2-ピリジル)メタンイミン(NPrPMI)、2,2’,6’,2”-テルピリジン(tpy)4’,4,4”-トリ(5-ノニル)-2,2’:6’,2”-テルピリジン(tNtpy)、N,N,N’,N”,N”-ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)、N,N-ビス(2-ピリミジルメチル)オクチルアミン(BPMOA)、1,1,4,7,10,10-ヘキサメチルトリエチレンテトラアミン(HMTETA)、トリス[2-(ジメチルアミノ)エチル]アミン(Me6TREN)、トリス[(2-ピリジル)メチル]アミン(TPMA)、及び1,4,8,11-テトラアザ-1,4,8,11-テトラメチルシクロテトラデカン(Me4CYCLAM)が挙げられる。
【0096】
適切なモノマーの使用、また適用可能な場合、連鎖移動剤は、ポリマー鎖の成長末端においてCRP法において誘導されるポリマーの分岐を可能とし、ブッシュ型構造の可能性を与える。他の場合、分岐はそれほど好ましいものではなく、本質的に非分岐の「ブッシュ」ポリマー構造が形成され得る。
【0097】
ATRP重合は、本質的に直鎖のポリマー鎖を与えるように、又はある程度の分岐を与えるように制御され得る。実質的には、非分岐ポリマーは、ポリマー「ブラシ」構造をもたらす。
【0098】
ATRP重合は、1つ以上の異なる種類のモノマーを採用してもよく、ここで、モノマーはポリマーを形成するため使用される任意の個々の単位である。単量体は、それぞれ1つ以上の重合性基を含み、典型的には、単官能性モノマー及び二官能性モノマーから選択される。重合性基は、典型的にはC=C二重結合を含む。
【0099】
好適な単官能性モノマーの例は、メタクリレート及びメタクリルアミド、例えばN-[3-(ジメチルアミノプロピル]メタクリルアミドである。他の典型的なメタクリレート及びメタクリルアミドとして、2-ヒドロキシプロピルメタクリルアミド(HPMA)及びヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)が挙げられる。
【0100】
二官能性モノマー、例えばジメタクリレート又はジビニルスルホンを使用して、ATRP重合において分岐及び/又は架橋を導入することができる。
【0101】
グラフト化生成物の官能化
本発明の方法は、例えば、1つ以上のリガンドをグラフト化生成物に導入することによって、クロマトグラフィー媒体としてその生成物を官能化する、グラフト化生成物の官能化工程(工程(iii))を含む。この工程は、グラフト化生成物を、1つ以上のリガンドをグラフト化生成物に導入することによってクロマトグラフィー媒体としてグラフト化生成物を官能化する試薬と接触させることを含む。
【0102】
疑義を避けるため、工程(iii)は、クロマトグラフィー媒体として工程(ii)の生成物を共に官能化する単一工程又は複数の工程を含み得る。
【0103】
試薬は、典型的には、1つ以上のリガンド基を含む官能化生成物をクロマトグラフィー媒体としての使用に適したものとする1つ以上のリガンド基を導入することによってクロマトグラフィー媒体を官能化する。導入される1つ以上のリガンド基は、媒体が使用される特定のクロマトグラフィー手法に依存する。リガンド基は、クロマトグラフィー媒体としての使用に適したものとする、グラフト化生成物に導入される基である。好適なリガンド基及び試薬を以下で更に検討する。
【0104】
幾つかの実施形態では、グラフト化生成物は、1種のみのリガンド基によって官能化される。他の実施形態では、グラフト化生成物は、2種以上のリガンド基によって官能化される。したがって、特許請求の範囲に記載される方法の工程(iii)は、グラフト化生成物を、同一又は異なってもよい1つ以上のリガンド基をグラフト化生成物に導入することによって、クロマトグラフィー媒体として工程(ii)の生成物を官能化する試薬と接触させることを含む。
【0105】
基体が異なるポリマーから形成された1つ以上のポリマーナノファイバーを含む実施形態では、異なる種類のポリマーナノファイバーは、それぞれ同一又は異なってもよい1つ以上のリガンド基で官能化(グラフト化の後)され得る。
【0106】
2種以上のポリマーが基体にグラフト化され得る実施形態では、各ポリマーグラフトは、同一又は異なってもよい1つ以上のリガンド基で官能化され得る。
【0107】
本発明は試薬による単一の処理のみを含む方法を意図するが、複数の官能化工程を含む方法も使用され得る。かかる実施形態は、グラフト化生成物を、バッチ方式で2回以上試薬と接触させることによる官能化を含む。バッチ式官能化は、グラフト化生成物を試薬と反応させてそれを官能化し、その反応をその後停止して、得られた(部分的に)官能化された材料を別々のバッチの試薬と反応させることを意味する。バッチ方式での反応は、例えば、単に反応容器に、より多い試薬を添加することを指すものではない。
【0108】
バッチ式官能化は、典型的には、2回~10回、すなわち、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回又は10回行われる。
【0109】
バッチ式官能化に好ましい処理条件は、国際特許出願公開第2015/052460号パンフレット及び国際特許出願公開第2015/052465号に見ることができ、それらの全体が参照することにより本明細書の一部をなす。
【0110】
特定の状況では、試薬との接触は、グラフト化生成物をホルダに入れること、及び試薬フローがグラフト化生成物と接触し、それがクロマトグラフィー媒体としてグラフト化生成物を官能化するように、ホルダを通して試薬を流すことを含み得る。この方式で材料を官能化することは、特定の状況では、単にグラフト化生成物を例えばフラスコ又はビーカーにおいて試薬と接触させるよりも効率的となり得る。
【0111】
フロー官能化に対する好ましい処理条件は、国際特許出願公開第2015/052460号パンフレット及び国際特許出願公開第2015/052465号パンフレットに見ることができ、それらの全体が参照することにより本明細書の一部をなす。
【0112】
試薬は、グラフト化生成物を官能化して、クロマトグラフィー媒体、具体的には官能化されたクロマトグラフィー媒体をもたらす。典型的には、試薬は、イオン交換、親和性捕捉又は疎水性のクロマトグラフィー法における使用に適するように、グラフト化生成物を官能化する。したがって、試薬との接触は、1つ以上のリガンド基すなわち、負に帯電した1つ以上の部分、正に帯電した1つ以上の部分、1つ以上のタンパク質、タンパク質リガンド、ペプチド、抗体又はそのフラグメント、色素、ヒスチジン、金属陽イオンを含有する基、又は疎水性基を模倣する模倣若しくは合成のリガンドによって官能化されるクロマトグラフィー媒体をもたらす。特に官能化されたクロマトグラフィー媒体が陰イオン交換クロマトグラフィー法における使用に対する場合、2-クロロ-N,N-ジエチルアミンヒドロクロリド(DEACH)及びグリシジルトリメチルアンモニウムは試薬として好ましい。他の好ましい試薬は、特に官能化されたクロマトグラフィー媒体が陽イオン交換クロマトグラフィー法における使用に対する場合、1,4-ブタンスルホン、クロロ酢酸ナトリウム、TEMPOに続いて過塩素酸ナトリウム、又はアリルグリシジルエーテルに続いて二亜硫酸ナトリウムである。別の好ましい試薬は、特に官能化されたクロマトグラフィー媒体が親和性クロマトグラフィー法における使用に対する場合、NaIO、ジビニルスルホンに続いてプロテインA、アリルグリシジルエーテルに続いて第1にハロヒドリン形成試薬(例えばN-ブロモスクシンアミド)その後プロテインA、又はアリルグリシジルエーテルに続いて第1にエポキシド形成試薬その後プロテインAである。別の好ましい試薬は、特に、官能化されたクロマトグラフィー媒体が疎水性クロマトグラフィー法における使用に対する場合、スチレンオキシドである。
【0113】
典型的には、試薬は、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド、1,4-ブタンスルホン、クロロ酢酸ナトリウム、NaIOに続いてプロテインA、ジビニルスルホンに続いてプロテインA、アリルグリシジルエーテルに続いて第1にハロヒドリン形成試薬(例えばN-ブロモスクシンアミド)その後プロテインA、アリルグリシジルエーテルに続いて第1にエポキシド形成試薬その後プロテインAである。好ましくは、試薬は、ジビニルスルホンに続いてプロテインA、アリルグリシジルエーテルに続いて第1にハロヒドリン形成試薬(例えばN-ブロモスクシンアミド)その後プロテインAである。
【0114】
したがって、好ましい実施形態では、本発明は、官能化された高分子クロマトグラフィー媒体を作製する方法を提供し、官能化工程(iii)は、クロマトグラフィー媒体として工程(ii)の生成物を共に官能化する複数の工程を含む。
【0115】
特定の好ましい実施形態では、本発明は、官能化された高分子クロマトグラフィー媒体を作製する方法を提供し、官能化工程(iii)では:
(a)グラフト化生成物を、最初に、ジビニルスルホン、アリルグリシジルエーテル及びそれらの組み合わせからなる群から選択される試薬と接触させ;
(b)工程(a)の生成物を、任意に、ハロヒドリン形成試薬又はエポキシド形成試薬、好ましくはハロヒドリン形成試薬で処理し;
(c)工程(b)の生成物をプロテインAと接触させる。
【0116】
この特定の好ましい実施形態では、グラフト化生成物を工程(a)において最初にジビニルスルホンと接触させ、工程(a)の生成物を、典型的には、ハロヒドリン形成試薬又はエポキシド形成試薬で処理しない。したがって、幾つかの実施形態では、官能化工程(iii)において、グラフト化生成物を最初にジビニルスルホンと接触させ、この工程の生成物を、その後、プロテインAと接触させる。この特定の好ましい実施形態では、グラフト化生成物を工程(a)において最初にアリルグリシジルエーテルと接触させる場合、工程(a)の生成物を、工程(b)において、その後、ハロヒドリン形成試薬又はエポキシド形成試薬、好ましくはハロヒドリン形成試薬で処理する。したがって、幾つかの実施形態では、官能化工程(iii)において、グラフト化生成物を最初にアリルグリシジルエーテルと接触させ、この工程の生成物をハロヒドリン形成試薬で処理し、次いで、この工程の生成物を、その後、プロテインAと接触させる。
【0117】
別の特定の好ましい実施形態では、本発明は、官能化された高分子クロマトグラフィー媒体を作製する方法を提供し、官能化工程(iii)では、
(a)グラフト化生成物を、ジビニルスルホン、アリルグリシジルエーテル及びそれらの組み合わせからなる群から選択される試薬と接触させ;
(b)工程(a)の生成物を、任意にハロヒドリン形成試薬又はエポキシド形成試薬、好ましくはハロヒドリン形成試薬で処理し;及び
(c)工程(b)の生成物をプロテインAと接触させる。
【0118】
この特定の好ましい実施形態では、グラフト化生成物を工程(a)において最初にジビニルスルホンと接触させ、工程(a)の生成物を、典型的には、ハロヒドリン形成試薬又はエポキシド形成試薬で処理しない。したがって、幾つかの実施形態では、官能化工程(iii)において、グラフト化生成物を最初にジビニルスルホンと接触させ、この工程の生成物を、その後、プロテインAと接触させる。この特定の好ましい実施形態では、グラフト化生成物を工程(a)において最初にアリルグリシジルエーテルと接触させる場合、工程(a)の生成物を、工程(b)において、その後、ハロヒドリン形成試薬又はエポキシド形成試薬、好ましくはハロヒドリン形成試薬で処理する。したがって、幾つかの実施形態では、官能化工程(iii)において、グラフト化生成物をアリルグリシジルエーテルと接触させ、この工程の生成物をハロヒドリン形成試薬で処理し、次いで、この工程の生成物を、プロテインAとその後接触させる。
【0119】
クロマトグラフィー媒体及び方法
本発明の方法の生成物は、官能化されたクロマトグラフィー媒体、すなわち、それからグラフト化され、その後官能化されて、グラフト化生成物上に1つ以上のリガンド基を導入することによって1つ以上のクロマトグラフィー法における使用に対して適したものとする、ポリマーを有するクロマトグラフィー媒体である。
【0120】
具体的な化学的な官能化を、以下により詳細に検討する。大まかには、かかる化学的官能化は、1つ以上の帯電した基を導入することによって官能化されたクロマトグラフィー媒体の化学的及び/又は物理的な特性を変化する。これは、次に、どのようにして官能化されたクロマトグラフィー媒体が、クロマトグラフィー法で使用された場合に作用するかに影響する。修飾は、例えば、その官能化されていない形態と比較した、官能化されたクロマトグラフィー媒体の極性、疎水性又は生物学的結合特性の変化であってもよい。修飾は、特定の状況では、その官能化されていない形態と比較して、官能化されたクロマトグラフィー媒体の極性、疎水性及び生物学的結合特性の2つ以上を変更し得る。或る一つの実施形態では、修飾は、その官能化されていない形態と比較して、官能化されたクロマトグラフィー媒体の極性及び疎水性を変更する。
【0121】
官能化されたクロマトグラフィー媒体は、典型的には、メンブレンの形態である。かかるメンブレンは、メンブレンクロマトグラフィー法における使用に適している。メンブレンクロマトグラフィー法は、当業者によく知られており、“Membrane Processes in Biotechnologies and Pharmaceutics”ed.Catherine Charcosset,Elsevier,2012において考察され、その全体が参照することにより本明細書の一部をなす。
【0122】
典型的には、官能化された高分子クロマトグラフィー媒体は、イオン交換クロマトグラフィー、親和性捕捉クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー及びミックスモードクロマトグラフィーから選択されるクロマトグラフィー法における使用に適している。特定の状況では、クロマトグラフィー法は「ミックスモード」、すなわち2つ以上の相互作用の形態、すなわちイオン交換、親和性捕捉及び疎水性相互作用を利用して作用する。典型的には、かかる「ミックスモード」クロマトグラフィーは、イオン交換(イオン性)及び疎水性の相互作用を含む。好ましくは、官能化された高分子クロマトグラフィー媒体は、イオン交換クロマトグラフィー、親和性捕捉クロマトグラフィー及び疎水性クロマトグラフィー、好ましくはイオン交換クロマトグラフィー及び親和性捕捉クロマトグラフィーから選択されるクロマトグラフィー法における使用に適している。操作では、かかるクロマトグラフィー法は、吸着相、ここでは官能化されたクロマトグラフィー媒体に所望の分子を含む移動相を通過させることを含む。典型的には、所望の分子が、同様に移動相中に存在する他の成分に優先して、吸着相上に保持されるように、吸着相を選択する。
【0123】
典型的には、高分子クロマトグラフィー媒体は、DEAE、Q、SP、CM、プロテインA、フェニル又はMEPの基、例えばDEAE、Q、SP、CM又はプロテインAの基で官能化される。一般的には、ポリマーはセルロースであり、クロマトグラフィー媒体は、DEAE、Q、SP、CM、プロテインA、フェニル又はMEPの基、例えばDEAE、Q、SP、CM又はプロテインAの基で官能化される。したがって、官能化されたクロマトグラフィー媒体は、DEAE、Q、SP、CM、プロテインA、フェニル又はMEPの基、例えばDEAE、Q、SP、CM又はプロテインAの基で誘導体化され得る。
【0124】
好ましい実施形態では、高分子クロマトグラフィー媒体はプロテインAで官能化される。
【0125】
イオン交換クロマトグラフィーは、典型的には、それらのイオン電荷に基づいて、分子、イオン又は極性分子を分離する手法である。したがって、かかる方法における使用に対して官能化されたクロマトグラフィー媒体は、正又は負に帯電している1つ以上の部分を含む。官能化されたクロマトグラフィー媒体における正及び/又は負の電荷は、通常、1つ以上の対イオンによって平衡化される。イオン交換クロマトグラフィーは、1つ以上の陽イオン交換クロマトグラフィー及び陰イオン交換クロマトグラフィーを含む。
【0126】
陽イオン交換クロマトグラフィーにおける使用に対する官能化されたクロマトグラフィー媒体は、負に帯電されている1つ以上の部分を含む。典型的な負に帯電した部分として、カルボキシレート基、スルホネート基若しくはホスホネート基、又はそれらの混合物の1つ以上が挙げられ、すなわち、部分は、典型的には1つ以上の-COO基、-SO 基、又は-P(OH)基、又はそれらの混合物を含む。陽イオン交換クロマトグラフィーにおける使用に対する典型的な官能化されたクロマトグラフィー媒体は、1つ以上の-O-CHCOO、-CHCOO、-SO 、-CHCHCHSO 、-CHCHSO 、又は-P(OH)の部分を含む。
【0127】
陰イオン交換クロマトグラフィーにおける使用に対する官能化されたクロマトグラフィー媒体は、正に帯電している1つ以上の部分を含む。典型的な正に帯電した部分は、1つ以上の第四級アミン基を含む。陰イオン交換クロマトグラフィーにおける使用に対する典型的な官能化されたクロマトグラフィー媒体は、1つ以上の-N(CH、-N(C)H、-CHCH(C)H、-CHCH(C(CHCH(OH)CH)、-O-CHCH-N(CH、-CHCH(CH、又は-CHCH(CHHの部分を含む。
【0128】
疑義を避けるため、「帯電した基」は、正又は負の電荷を持つようにイオン化される部分を含む基を意味し、すなわち「帯電した基」は陰イオン又は陽イオンの部分を含む。帯電した基は、リガンド基の特定の例である。
【0129】
典型的には、1つ以上の帯電した基は、1つ以上のカルボキシレート(-COO)基、スルホネート(-SO )基若しくはホスホネート(-P(OH))基、又は第四級アミン基、又はそれらの混合物を含む。典型的には、1つ以上の帯電した基は、全てのアニオン基又は全てのカチオン基を含むが、特定の状況では、アニオン基とカチオン基の混合物が意図される。典型的には、1種類のみのアニオン基が使用されるが、混合物も使用され得る。典型的には、1種類のみのカチオン基が使用されるが、混合物も使用され得る。
【0130】
代表的な帯電した基として、-O-CHCOO、-CHCOO、-SO 、-CHCHCHSO 、-CHCHSO 、-P(OH)、-N(CH、-N(C)H、-CHCH(C)H、-CHCH(C(CHCH(OH)CH)、-O-CHCH-N(CH、-CHCH(CH、及び-CHCH(CHHの部分が挙げられる。
【0131】
典型的な帯電した基として、DEAE、Q、SP及びCMの基が挙げられる。典型的には、官能化された高分子クロマトグラフィー媒体は、DEAE、Q、SP又はCMの基で官能化される。したがって、官能化されたクロマトグラフィー媒体は、DEAE、Q、SP又はCMの基で誘導体化されたセルロースであってもよい。
【0132】
親和性捕捉クロマトグラフィーは、通常は生物学的リガンドであるが、そうでない場合もある、特定のリガンドに対するそれらの親和性に基づいて分子を分離するための手法である。この方法は、例えば、抗体と抗原又は酵素と基質の間の引力に依存する。親和性捕捉クロマトグラフィーにおける使用に対する官能化されたクロマトグラフィー媒体は、典型的には、1つ以上のタンパク質、ペプチド、抗体若しくはそのフラグメント、色素、ヒスチジン、又は金属陽イオンを含む基から選択される1つ以上の部分を含む。したがって、1つ以上のリガンド基は、1つ以上のかかる部分を含んでもよい。代替的には、親和性捕捉クロマトグラフィーにおける使用に対する官能化されたクロマトグラフィー媒体は、タンパク質リガンドの作用を模倣する模倣リガンド又は合成リガンドを含んでもよい。
【0133】
親和性捕捉クロマトグラフィーにおける使用に対する典型的なタンパク質は、当業者によく知られており、プロテインA、プロテインG及びプロテインLが挙げられる。プロテインAが好ましい。
【0134】
プロテインAは、当業者によく知られたタンパク質である。本明細書で使用されるように、「プロテインA」に対する参照は、組み換えプロテインA(スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)に見られるプロテインAと比較して変更された配列を有し得る)、及びタグ付けされたプロテインA(欧州特許第0873353号及び米国特許第6399750号に記載され、それらの全体が参照することにより本明細書の一部をなす)を包含する。プロテインAは、プロテインAの改変変異体、例えば、プロテインAのシステイン改変変異体であってもよい。
【0135】
親和性捕捉クロマトグラフィーにおける使用に対する典型的な抗体及びそのフラグメントは、当業者によく知られており、IgGを含む。
【0136】
親和性捕捉クロマトグラフィーにおける使用に対する典型的な色素は、当業者によく知られており、黄HE-4R、赤HE-3B及びシバクロンブルーF3Gを含む。
【0137】
親和性捕捉クロマトグラフィーにおける使用に対する典型的な金属陽イオンを含む基は、当業者によく知られている。かかる基は、典型的には、金属陽イオンを固定化するためのキレート剤を含む。金属陽イオンは、典型的には、銅、ニッケル、亜鉛及びコバルトの陽イオン、好ましくはCu2+、Ni2+、Zn2+及びCo2+から選択される。
【0138】
疎水性相互作用クロマトグラフィーは、それらの疎水性に基づいて分子を分離する手法である。したがって、かかる方法における使用に対する官能化されたクロマトグラフィー媒体は、1つ以上の疎水性基を含む1つ以上の部分を含む。典型的な疎水性基として、プロピル基、ブチル基、フェニル基及びオクチル基が挙げられる。
【0139】
ミックスモード(又はマルチモーダル)クロマトグラフィー媒体は、2つ以上の特性、典型的には疎水性及びイオン電荷に基づいて分子を分離する手法である。これは、疎水性と陰イオンの特性の組み合わせ、又は疎水性とカチオンの特性の組み合わせを含んでもよい。したがって、かかる方法における使用に対する官能化されたクロマトグラフィー媒体は、典型的には上に定義される正又は負に帯電した1つ以上の部分、及び典型的には上に定義される1つ以上の疎水性基を含む。官能化されたクロマトグラフィー媒体における正及び/又は負の電荷は、通常、1つ以上の対イオンによって平衡化される。また、かかる方法における使用に対する官能化されたクロマトグラフィー媒体は、いわゆる疎水性電荷誘導クロマトグラフィー(HCIC)における使用に対して、イオン化可能な1つ以上の疎水性基を含んでもよい。したがって、或る一つの実施形態では、ミックスモードクロマトグラフィーは、疎水性電荷誘導クロマトグラフィーである。かかる方法における使用に適した基は、4-メルカプトエチルピリジン(MEP)基及びオクチルアミン基である。
【0140】
疎水性と陰イオンの相互作用の組み合わせを含むミックスモードクロマトグラフィー法における使用に対する官能化されたクロマトグラフィー媒体は、典型的には上に定義される正に帯電した1つ以上の部分、及び典型的には上に定義される1つ以上の疎水性基を含む。かかる方法における使用に適した基は、N-ベンジルメチルエタノールアミン基及びN-ベンゾイル-ホモシステイン基である。疎水性と陽イオンの相互作用の組み合わせを含むミックスモードクロマトグラフィー法における使用に対する官能化されたクロマトグラフィー媒体は、典型的には上に定義される負に帯電した1つ以上の部分、及び典型的には上に定義される1つ以上の疎水性基を含む。かかる方法における使用に適した基は、N-ベンゾイル-ホモシステイン基である。
【0141】
官能化されたクロマトグラフィー媒体を作製する本発明において特許請求の範囲に記載される方法は、工程(iii)において、1つ以上のリガンド基を含む得られる官能化生成物が、クロマトグラフィー法におけるクロマトグラフィーとしての使用に適するものとなるように、1つ以上のリガンド基をグラフト化生成物に導入することを含む。典型的な部分、媒体、試薬及び方法は上に定義される通りである。1つ以上のリガンド基は、好適な試薬と、グラフト化生成物に含まれる1つ以上の官能基を反応させることによって導入される。典型的な官能基として、ヒドロキシル基、アミノ基、ハロゲン基及びカルボキシル基が挙げられる。上記方法の工程(ii)がグリシドール重合を含むことから、官能基は、典型的にはヒドロキシル基である。1つ以上のリガンド基を導入するのに適した試薬が、他で検討される。
【0142】
1つ以上の官能基は、試薬との反応に先立って活性化され得る。当該技術分野で知られている従来の活性化方法が利用され得る。したがって、官能基がヒドロキシル基である場合、かかる基は、カルボニルジイミダゾール(CDI)、ビスオキサリン(bisoxiranes)、シアヌル酸、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(NHS)、2-フルオロ-1-メチルピリジニウムトルエン-4スルホネート(FMP)、NaIO、ジビニルスルホン又はアリルグリシジルエーテルで処理することによって活性化され得る。官能基がアミノ基である場合、かかる基は、エピクロロヒドリン、グルタルアルデヒド又はエポキシドで処理することによって活性化され得る。官能基がカルボキシル基である場合、かかる基は、CDI又は1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)で処理することによって活性化され得る。官能基がハロゲン原子である場合、かかる基は、ジビニルスルホンで処理することによって活性化され得る。
【0143】
当業者は、例えば、それらのポリマーに含まれる所望のリガンド基及び部分、並びに官能基に基づいて、特定のポリマーに特定の基及び部分を導入するのに適した試薬を選択することができる。典型的な試薬として、2-クロロ-N,N-ジエチルアミンヒドロクロリド(DEACH)、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド(GMAC)、1,4-ブタンスルホン、クロロ酢酸ナトリウム、NaIOに続いてプロテインA、ジビニルスルホンに続いてプロテインA、アリルグリシジルエーテルに続いて第1にハロヒドリン形成試薬、その後プロテインA、アリルグリシジルエーテルに続いて第1にエポキシド形成試薬、その後プロテインAが挙げられる。
【0144】
典型的なハロヒドリン形成試薬はハロゲンの求電子源及びヒドロキシルの求核源を含む。したがって、典型的なハロヒドリン形成試薬として、水中の二原子ハロゲン(典型的には、Cl、Br又はI)、N-クロロスクシンアミド、N-ブロモスクシンアミド又はN-ヨードスクシンアミドが挙げられる。典型的には、ハロヒドリン形成試薬は、アルケンからハロヒドリン種を生成する。ハロヒドリン形成試薬は、ポリマー鎖の末端炭素原子にハロゲン原子が結合されるハロヒドリン生成物を主に生じるように位置選択的であってもよく、ポリマー鎖の末端炭素原子にヒドロキシル基が結合されるハロヒドリン生成物を主に生じるように位置選択的であってもよく、又は低位置選択性であってもよい。好ましくは、ハロヒドリン形成反応は、ポリマー鎖の末端炭素原子にハロゲン原子が結合されるハロヒドリン生成物を主に生じる位置選択性であってもよい。
【0145】
典型的なエポキシ形成試薬として、ペルオキシ酸(メタ-クロロペルオキシ安息香酸(mcpba)等)、NaOH又はHOの存在下での過酸化水素、バナジルアセチルアセトネートの存在下でのtert-ブチルヒドロペルオキシド、Ti(OPr)及び酒石酸ジエチルの存在下のtert-ブチルヒドロペルオキシド、Ti(OPr)及びジイソプロピルタルトレートの存在下でのtert-ブチルヒドロペルオキシド、又はフルクトース由来触媒及び塩基の存在下でのオキソンが挙げられる。
【0146】
典型的には、
-クロマトグラフィー法は陽イオン交換法であり、試薬は、1つ以上のカルボキシレート、スルホネート又はホスホネートの部分を含む1つ以上の帯電した基でクロマトグラフィー媒体を官能化する;又は
-クロマトグラフィー法は陽イオン交換法であり、試薬は、1つ以上の第四級アミノ又はジエチルアミンの部分を含む1つ以上の帯電した基でクロマトグラフィー媒体を官能化する;
-クロマトグラフィー法は親和性捕捉クロマトグラフィー法であり、試薬は、1つ以上のタンパク質、ペプチド、抗体若しくはそのフラグメント、色素、ヒスチジン基又は金属陽イオンを含む基でクロマトグラフィー媒体を官能化する;
-クロマトグラフィー法は疎水性相互作用クロマトグラフィー法であり、試薬は、1つ以上のプロピル基、ブチル基、フェニル基又はオクチル基でクロマトグラフィー媒体を官能化する;又は
-クロマトグラフィー法はミックスモードクロマトグラフィー法であり、試薬は、1つ以上のMEP基、オクチルアミン基、N-ベンジルメチルエタノールアミン基又はN-ベンゾイルホモシステイン基でクロマトグラフィー媒体を官能化する。
【0147】
本発明の特定の実施形態
上で検討されるように、本発明は、ポリマーナノファイバー基体から官能化された高分子クロマトグラフィー媒体を作製する二段階法を提供し、二段階は(i)ポリマーグラフト化工程、及び(ii)官能化工程である。
【0148】
ポリマーグラフト化工程は、典型的には、基体に500μmol/g~60,000μmol/g、好ましくは1000μmol/g~60,000μmol/gのポリマーを導入する。幾つかの実施形態では、グラフト化工程は1000μmol/g~2000μmol/gを導入する。他の実施形態では、グラフト化工程は5000μmol/g~10,000μmol/gを導入する。更に他の実施形態では、グラフト化工程は30,000μmol/g~60,000μmol/gを導入する。この量は、典型的には、例えばグラフト化法によって基体に付加される特定の官能基、例えばヒドロキシル基の量を測定するアッセイ方法によって決定され得る。当業者は、グラフト化材料の所与の試料中に存在する特定の官能基の量を特定するため使用する好適な方法を知っているであろう。
【0149】
ポリマー密度の増加は、量を増加した若しくはより高濃度の重合試薬を使用することによって、又はより高い温度で若しくはより長い時間に亘って反応を行うことによって得ることができる。
【0150】
グリシドール重合に関して、グラフト化工程は、典型的には、グラフト化生成物の-OH密度によって特定される、500μmol/g~60,000μmol/gのグリシドールをグラフト化生成物に導入する。グラフト化生成物の-OH密度は、滴定法、典型的にはテトラブチルアンモニウムヒドロキシドを用いる滴定によって特定され得る。
【0151】
-OH密度の増加は、増加した量のグリシドール又は式(I)を有するグリシドール誘導体を使用することによって得ることができる。
【0152】
好ましくは、特定のポリマーの試料の-OH含有量は、以下のアッセイによって決定される:
1)グラフト化された材料の試料を湿らせた濾紙に入れ、ブフナー濾過用漏斗に置き、水が試料を通って洗浄することを確実にするため真空を印加しながら超純水で洗浄すること:
2)試料を60℃のオーブンで一定質量まで乾燥させ、試料の質量を特定すること。
【0153】
3)試料を細かく裂き、10mlのp-トルエンスルホニルイソシアネート溶液(アセトニトリル500ml中のp-トルエンスルホニルイソシアネート20mL)を含む50mLの遠心管に懸濁すること;
4)上記管を密閉し、水浴で1時間に亘って加熱しながら(60℃)混合物を撹拌すること;
5)上記管とその内容物を室温まで冷却し、混合物を滴定カップに移し、イソ-プロピルアルコールで80mLにする前に10mLの超純水HOで注意深くクエンチすること;
6)混合物を室温にて30分間撹拌した後、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(メタノール中0.481M溶液)で滴定して存在するヒドロキシル基の絶対濃度を特定すること。
【0154】
特定のポリマーの試料の-OH濃度(モル/g)は、上のアッセイによる上記試料中のヒドロキシル基の絶対濃度を決定し、アッセイの工程(2)で得られる乾燥試料の総質量で割ることによって決定され得る。
【0155】
工程(ii)及び(iii)に続いて、本発明の方法の工程(iii)で導入されるリガンド基の密度は、典型的には100μmol/g~2,000μmol/gの官能化されたクロマトグラフィー媒体である。密度は、好ましくは300μmol/g~1,500μmol/g、より好ましくは500μmol/g~1200μmol/gである。幾つかの実施形態では、密度は100μmol/g~500μmol/gである。他の実施形態では、密度は1200μmol/g~2000μmol/gである。2000μmol/gよりはるかに大きな官能化されたクロマトグラフィー媒体の密度は、クロマトグラフィー媒体として使用するのが難しい材料をもたらす場合がある。
【0156】
密度は、典型的には、官能化された材料中の部分の数を特定する滴定法によって特定される。当業者は、官能化された材料中の所与の試料に存在する特定の部分の量を決定するため、使用するのに好適な方法を知っているであろう。
【0157】
トリメチルアンモニウムクロリドによる官能化に関して、密度は、以下のアッセイによって特定され得るトリメチルアンモニウムクロリドの密度として特定され得る:
1)ブフナー濾過用漏斗上で50mgの材料を100mLの0.1M HCl溶液で洗浄した後、更に100mLの0.01M HCl溶液で洗浄すること;
2)小さく裂く前に一定質量まで75℃のオーブンで材料を乾燥させ、小さなマグネチックスターラーバーを備える50mLの遠心管に入れること;
3)15mLの脱イオン水を、およそ1mL(乳頭ピペットによって添加される)の混合物を黄色に変色させるクロム酸カリウム溶液と共に添加すること;
4)0.1Mの硝酸銀で滴定する前に、混合物を20分間激しく撹拌し)、滴定のエンドポイントを透明な黄色から褐色がかった色に変色することによって識別すること;
5)トリメチルアンモニウムクロリド含有量(μmol/g)エンドポイント/滴定で使用されるナノファイバー材料のグラム数に達するように添加された硝酸銀のマイクロモル数として計算すること。
【0158】
スルホン酸(S)基による官能化に関して、密度は、以下のアッセイによって特定され得るスルホン酸密度として決定することができる:
1)官能化された材料の乾燥試料を0.1M HCL及び0.01M HClで洗浄すること;
2)オーブンで材料を乾燥し、計量すること:
3)pH7に達するように添加されなければならないNaOHの量によって、材料のモル濃度を決定すること;
4)pH7に達するように添加されたNaOHのマイクロモルの数/滴定で使用されるナノファイバー材料グラム数として、スルホン酸(S)含有量(μmol/g)を計算すること。
【0159】
本発明の二段階法は、上記材料の試料に対する圧力低下に対して高い制御の程度を可能とする。これは、クロマトグラフィー材料に対する絶対圧力低下が工業規模における要因を制限することから、有利である。具体的には、ほとんどの市販のポンプの正常な操作パラメーターは、2MPaの圧力低下が最大の許容可能な圧力低下であるようになっている。本発明者らは、驚いたことに、2MPaの圧力低下において、本発明によって生産された材料により、高い流量の材料が可能であることを見出した。したがって、典型的には、官能化された高分子クロマトグラフィー媒体に対する圧力低下は、液相を0.05mm~10mmの厚さの媒体を毎分1メンブレン体積~640メンブレン体積の流量で通過させる場合に、2MPa未満である。これは、標準的な手段、例えばAKTAタンパク質精製システムを使用して特定され得る。これは、材料の流れ抵抗の尺度である。
【0160】
典型的には、圧力低下は、1MPa未満であり、好ましくは0.5MPa未満である。
【0161】
典型的には、媒体を通る流量は、毎分1メンブレン体積~60メンブレン体積、好ましくは5メンブレン体積~40メンブレン体積である。
【0162】
媒体を通る液相は、特に重要ではない。典型的な液相として、標準的なバッファー、例えばトリスバッファー、好ましくは10mM Trisが挙げられる。
【0163】
典型的な液相は、0.1mm~5mmの厚さの材料に通される。
【0164】
好ましくは、官能化された高分子クロマトグラフィー媒体に対する圧力低下は、Trisバッファーを毎分1メンブレン体積~60メンブレン体積の流量で、0.1mm~5mmの厚さの材料に通す場合に1MPa未満である
より好ましくは、官能化された高分子クロマトグラフィー媒体に対する圧力低下は、10mMのTrisを毎分5メンブレン体積~40メンブレン体積の流量で、0.1mm~5mmの厚さの材料に通す場合に0.5MPa未満である。
【0165】
グラフト化工程と官能化工程の組み合わせは、高い動的結合容量(DBC)を有する材料が達成されるのを可能とする。したがって、典型的には、官能化されたクロマトグラフィー材料は、10mg/mL~210mg/mL(10%ブレイクスルー)、好ましくは20mg/mL~195mg/mL(10%ブレイクスルー)、30mg/mL~180mg/mL(10%ブレイクスルー)、40mg/mL~165mg/mL(10%ブレイクスルー)、又は50mg/mL~150mg/mL(10%ブレイクスルー)のDBCを有する。材料について、工程(ii)がグリシドール重合を含む場合、典型的には、官能化されたクロマトグラフィー材料は、50mg/mL~150mg/mL(10%ブレイクスルー)のDBCを有する。
【0166】
10%ブレイクスルーに対するDBCは、標準的な手段に従って、例えばAKTA Pureシステムを使用して特定され得る。
【0167】
10%ブレイクスルーに対するDBCは、典型的には、以下のアッセイ法に従って決定される:
1)充填材料を(陰イオン交換物質に対して、充填材料はpH8まで10mM Tris中の1mg/mLのBSAであった。陽イオン交換材料に対して、充填材料は、酢酸ナトリウムpH4.7 10mM中の1mg/mLリゾチームであった)AKTA Pureシステム(GE Healthcare)のホルダ内に含まれる、官能化された材料に通す。
【0168】
2)材料を、ホルダアウトレットがUVフローセルによって特定されるその充填材料の10%を超えた後の濃度まで、毎分流量(mV/分)当たりの所定のメンブレン体積の下で充填する。
【0169】
3)システム及びホルダ装置におけるデッドボリュームを考慮して、10%ブレイクスルーでディスクに充填されたタンパク質の総量を、Unicornソフトウェア(GE Healthcare)におけるクロマトグラムの分析によって決定した。
【0170】
本発明の官能化された材料の高い動的結合容量、及びそれを通過し得る高い流量は、有利に高い生産性が達成されることを可能とする。したがって、典型的には、官能化された高分子クロマトグラフィー媒体の生産性は、50mg/mL/分~75000mg/mL/分である。好ましくは、生産性は600mg/ml/分以上である。より好ましくは、生産性は1200mg/ml/分以上である。更により好ましくは、生産性は2400mg/ml/分以上である。生産性は、10000mg/ml/分以上、又は更には15000mg/ml/分以上、又は20000mg/ml/分以上であってもよい。10000mg/ml/分、15000mg/ml/分又は20000mg/ml/分以上の生産性は、典型的には、グリシドール重合を使用して達成可能である。
【0171】
本明細書で使用されるように、材料の生産性は、単位時間当たり、材料の単位体積当たり、吸着材料にどれだけの材料を充填することができるかによって決定される。実際上、これは、ホルダにおいて充填材料の滞留時間で割ったDBC(10%ブレイクスルー)として決定される。滞留時間は、順に、ホルダを通り抜ける材料の流量から特定され得る、
上で検討されるように、本発明者らは、グラフト化工程(ii)と官能化工程(iii)の関係を徹底的に調査したところ、互いからこれらの工程を分離することによって高度に最適化された材料が生産され得ることを見出した。
【0172】
したがって、特定の実施形態では、グラフト化工程は官能化高分子クロマトグラフィー媒体の動的結合容量(DBC)を増加させる効果を有することがわかった。したがって、所与の密度のリガンド基の2つの材料に対して、グラフト化の程度がより高い材料は、典型的にはより高いDBCを有することがわかった。これは、特に正に帯電した基で官能化された材料、すなわち、官能化されたクロマトグラフィー材料が陰イオン交換クロマトグラフィー法における使用に適している場合にはなおさらである。
【0173】
したがって、或る一つの実施形態では本発明は、官能化された高分子クロマトグラフィー媒体を作製する方法を提供し、該方法は、
(i)本明細書に定義されるように、1つ以上のポリマーナノファイバーで形成された基体を提供すること、
(ii)本明細書に定義されるように、1つ以上の中性ポリマー鎖を基体からグラフト化すること、及び
(iii)本明細書に定義されるように、グラフト化生成物を、工程(ii)の生成物を、本明細書に定義されるように、クロマトグラフィー媒体として官能化する試薬と接触させること、を含み、
ここで、グラフト化工程(ii)が、式
【0174】
【化12】
の複数の化合物、及び/又はそのエナンチオマー、及び/又は式(I)のその誘導体及び/又はそのエナンチオマー及び/又はジアステレオマーを:
【0175】
【化13】
ナノファイバー基体上に存在する1つ以上の官能基と反応させることを含み、
式中、R、R、R、R及びRは、同一又は異なってもよく、
H、ハロ、C~Cアルキル又はC~Cアルコキシから選択され、
但し、R、R、R、R又はRの少なくとも1つは水素ではなく、
官能化されたポリマークロマトグラフィー材料のDBCを増加させる効果を有する。
【0176】
他の実施形態では、通常、負に帯電した基で官能化された材料、すなわち、官能化されたクロマトグラフィー材料が陽イオンクロマトグラフィー法における使用に適している場合、特許請求の範囲に記載される方法の工程(iii)に使用される官能化試薬の量を変化させることは、電荷密度に対してわずかな影響しか及ぼさないが、グラフト化工程と組み合わせた場合、同じ程度の官能化に対して、結合容量の著しい増加が達成され得ることがわかった。したがって、ここでも、肯定的にDBCに影響を与えるのは、グラフト化工程と官能化工程の組み合わせであることが明らかである。
【0177】
典型的には、官能化されたクロマトグラフィー媒体は官能化されたセルロースクロマトグラフィー媒体であり、基体は1つ以上の酢酸セルロースナノファイバーで形成され、工程(i)と工程(ii)の間に、酢酸セルロースを処理してセルロースへと変換し、基体上から1つ以上の中性ポリマー鎖をグラフト化する工程はグリシドール重合を含み、グラフト化生成物は、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド(GMAC)、1,4-ブタンスルホン、クロロ酢酸ナトリウム、NaIOに続いてプロテインA、ジビニルスルホンに続いてプロテインA、アリルグリシジルエーテルに続いて第1にハロヒドリン形成試薬(例えばN-ブロモスクシンアミド)、その後プロテインA、又はアリルグリシジルエーテルに続いて第1にエポキシド形成試薬、その後プロテインAから選択される試薬と接触される。
【0178】
代替的には、官能化されたクロマトグラフィー媒体は官能化されたセルロースクロマトグラフィー媒体であり、基体は1つ以上の酢酸セルロースナノファイバーで形成され、グラフト化工程は酢酸セルロースのセルロースへの変換とグリシドール重合によって得られたセルロース基体上に1つ以上の中性ポリマー鎖をグラフト化することの両方を含み、グラフト化生成物はグリシジルトリメチルアンモニウムクロリド(GMAC)、1,4-ブタンスルホン、クロロ酢酸ナトリウム、NaIOに続いてプロテインA、ジビニルスルホンに続いてプロテインA、アリルグリシジルエーテルに続いて第1にハロヒドリン形成試薬(例えばN-ブロモスクシンアミド)、その後プロテインA、又はアリルグリシジルエーテルに続いて第1にエポキシド形成試薬、その後プロテインAから選択される試薬と接触される。
【0179】
好ましい実施形態では、本発明は、官能化されたセルロースクロマトグラフィー媒体を作製する方法を提供し、該方法は、
(i)1つ以上の酢酸セルロースナノファイバーで形成された基体を提供し、酢酸セルロースを処理してセルロースに変換すること、
(ii)本明細書に定義されるように、得られたセルロース基体から1つ以上の中性ポリマー鎖をグラフト化すること、及び
(iii)本明細書に定義されるように、グラフト化生成物を、本明細書に定義されるように、クロマトグラフィー媒体として工程(ii)の生成物を官能化する試薬と接触させることを含み、
ここで、グラフト化工程(ii)は、式
【0180】
【化14】
の複数の化合物、及び/又はそのエナンチオマーを、ナノファイバー基体上に存在する1つ以上の官能基と反応させることを含む。
【0181】
典型的には、この好ましい実施形態では、工程(i)は、それぞれが1つ以上の酢酸セルロースナノファイバーを含む、1つ以上の不織布シートで形成された基体を提供することを含む。
【0182】
好ましくは、この好ましい実施態様では、工程(i)は、一方の上に他方が積層された2つ以上の不織布シートを提供することを含み、上記シートのそれぞれが1つ以上の酢酸セルロースナノファイバーを含み、シートの積層物を同時に加熱及び加圧して隣接するシートのナノファイバー間の接触点を融合することを含む。
【0183】
代替的な好ましい実施形態では、本発明は官能化されたセルロースクロマトグラフィー媒体を作製する方法を提供し、該方法は、
(i)1つ以上の酢酸セルロースナノファイバーで形成された基体を提供すること、
(ii)上記基体を、両方の酢酸セルロースがセルロースに変換される条件に供すること、その後、1つ以上の中性ポリマー鎖を得られたセルロース基体にグラフト化すること、並びに
(iii)本明細書に定義されるように、グラフト化生成物を、本明細書に定義されるように、クロマトグラフィー媒体として工程(ii)の生成物を官能化する試薬と接触させることを含み、
ここで、グラフト化工程(ii)は、式
【0184】
【化15】
の複数の化合物、及び/又はそのエナンチオマーを、ナノファイバー基体上に存在する1つ以上の官能基と反応させることを含む。
【0185】
典型的には、この代替的な好ましい実施形態では、工程(i)は、それぞれが1つ以上の酢酸セルロースナノファイバーを含む、1つ以上の不織布で形成された基体を提供することを含む。
【0186】
好ましくは、この代替的な好ましい実施形態では、工程(i)は、一方の上に他方が積層された2つ以上の不織布シートを提供することを含み、上記シートのそれぞれが1つ以上の酢酸セルロースナノファイバーを含み、シートの積層物を同時に加熱及び加圧して隣接するシートのナノファイバー間の接触点を融合することを含む。
【0187】
より好ましい実施形態では、本発明は官能化されたセルロースクロマトグラフィー媒体を作製する方法を提供し、該方法は、
(i)1つ以上の酢酸セルロースナノファイバーで形成された基体を提供し、酢酸セルロースを処理してセルロースに変換すること、
(ii)式
【0188】
【化16】
の複数の化合物、及び/又はそのエナンチオマーを、基体上に存在する1つ以上のヒドロキシル基と反応させることによって、得られたセルロース基体から1つ以上のポリマー鎖をグラフト化すること、並びに
(iii)本明細書に定義されるように、グラフト化生成物を、工程(ii)の生成物を、本明細書に定義されるように、クロマトグラフィー媒体として官能化する試薬と接触させること、
を含む。
【0189】
典型的には、このより好ましい実施形態では、工程(i)は、それぞれが1つ以上の酢酸セルロースナノファイバーを含む、1つ以上の不織布シートで形成された基体を提供することを含む。
【0190】
好ましくは、このより好ましい実施形態では、工程(i)は、一方の上に他方が積層された2つ以上の不織布シートを提供することを含み、上記シートのそれぞれが1つ以上の酢酸セルロースナノファイバーを含み、シートの積層物を同時に加熱及び加圧して隣接するシートのナノファイバー間の接触点を融合することを含む。
【0191】
代替的なより好ましい実施形態では、本発明は官能化されたセルロースクロマトグラフィー媒体を作製する方法を提供し、該方法は、
(i)1つ以上の酢酸セルロースナノファイバーで形成された基体を提供すること、
(ii)上記基体を、両方の酢酸セルロースがセルロースに変換される条件に供すること、その後、式
【0192】
【化17】
の複数の化合物、及び/又はそのエナンチオマーを、基体上に存在する1つ以上のヒドロキシル基と反応させることによって、1つ以上の中性ポリマー鎖を得られたセルロース基体にグラフト化すること、並びに
(iii)グラフト化生成物を、クロマトグラフィー媒体として工程(ii)の生成物を官能化する、本明細書に定義される試薬と接触させること、を含む。
【0193】
典型的には、この代替的なより好ましい実施形態では、工程(i)は、それぞれが1つ以上の酢酸セルロースナノファイバーを含む、1つ以上の不織布で形成された基体を提供することを含む。
【0194】
好ましくは、この代替的なより好ましい実施形態では、工程(i)は、一方の上に他方が積層された2つ以上の不織布シートを提供することを含み、上記シートのそれぞれが1つ以上の酢酸セルロースナノファイバーを含み、シートの積層物を同時に加熱及び加圧して隣接するシートのナノファイバー間の接触点を融合することを含む。
【0195】
更により好ましい実施形態では、本発明は、官能化されたセルロースクロマトグラフィー媒体を作製する方法を提供し、該方法は、
(i)1つ以上の酢酸セルロースナノファイバーで形成された基体を提供し、酢酸セルロースを処理してそれをセルロースに変換することを含み、
(ii)式
【0196】
【化18】
の複数の化合物、及び/又はそのエナンチオマーを、基体上に存在する1つ以上のヒドロキシル基と反応させることによって、得られたセルロース基体から1つ以上のポリマー鎖をグラフト化すること、並びに
(iii)グラフト化生成物を、イオン交換又は親和性クロマトグラフィー法における使用に適したクロマトグラフィー媒体として、工程(ii)の生成物を官能化する試薬と接触させること、を含む。
【0197】
典型的には、この更により好ましい実施形態では、工程(i)は、それぞれが1つ以上の酢酸セルロースナノファイバーを含む、1つ以上の不織布で形成された基体を提供することを含む。
【0198】
好ましくは、この更により好ましい実施形態では、工程(i)は、一方の上に他方が積層された2つ以上の不織布シートを提供することを含み、上記シートのそれぞれが1つ以上の酢酸セルロースナノファイバーを含み、シートの積層物を同時に加熱及び加圧して隣接するシートのナノファイバー間の接触点を融合することを含む。
【0199】
代替的な更により好ましい実施形態では、本発明は、官能化されたセルロースクロマトグラフィー媒体を作製する方法を提供し、該方法は、
(i)1つ以上の酢酸セルロースナノファイバーで形成された基体を提供すること、
(ii)基体を、両方の酢酸セルロースがセルロースに変換され、その後に、式
【0200】
【化19】
の複数の化合物、及び/又はそのエナンチオマーを、基体上に存在する1つ以上のヒドロキシル基と反応させることによって、得られたセルロース基体に1つ以上の中性ポリマー鎖がグラフト化される、水性アルカリ条件に供すること、並びに
(iii)グラフト化生成物を、イオン交換又は親和性クロマトグラフィー法における使用に適したクロマトグラフィー媒体として、工程(ii)の生成物を官能化する試薬と接触させること、を含む。
【0201】
典型的には、この代替的な更により好ましい実施形態では、工程(i)は、それぞれが1つ以上の酢酸セルロースナノファイバーを含む、1つ以上の不織布で形成された基体を提供することを含む。
【0202】
好ましくは、この代替的なより一層好ましい実施形態では、工程(i)は、一方の上に他方が積層された2つ以上の不織布シートを提供することを含み、上記シートのそれぞれが1つ以上の酢酸セルロースナノファイバーを含み、シートの積層物を同時に加熱及び加圧して隣接するシートのナノファイバー間の接触点を融合することを含む。
【0203】
更により好ましい実施形態では、本発明は、官能化されたセルロースクロマトグラフィー媒体を作製する方法を提供し、該方法は、
(i)1つ以上の酢酸セルロースナノファイバーで形成された基体を提供し、酢酸セルロースを処理してそれをセルロースに変換すること、
(ii)式
【0204】
【化20】
の複数の化合物、及びそのエナンチオマーを基体上に存在する1つ以上のヒドロキシル基と反応させることにより、得られたセルロース基体から1つ以上のポリマー鎖をグラフト化すること、並びに
(iii)グラフト化生成物を、イオン交換又は親和性クロマトグラフィー法における使用に適したクロマトグラフィー媒体として工程(ii)の生成物を官能化する試薬と接触させること、を含み、試薬は、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド(GMAC)、1,4-ブタンスルホン、クロロ酢酸ナトリウム、NaIOに続いてプロテインA、ジビニルスルホンに続いてプロテインA、アリルグリシジルエーテルに続いて第1にハロヒドリン形成試薬(例えばN-ブロモスクシンアミド)、その後プロテインA、又はアリルグリシジルエーテルに続いて第1にエポキシド形成試薬、その後プロテインAである。
【0205】
典型的には、この更に好ましい実施形態では、工程(i)は、それぞれ1つ以上の酢酸セルロースナノファイバーを含む1つ以上の不織布シートで形成された基体を提供することを含む。
【0206】
好ましくは、この更により好ましい実施形態では、工程(i)は、一方の上に他方が積層された2つ以上の不織布シートを含み、上記シートのそれぞれが1つ以上の酢酸セルロースナノファイバーを含み、シートの積層物を同時に加熱及び加圧して隣接するシートのナノファイバー間の接触点を融合することを含む。
【0207】
代替的な更により好ましい実施形態では、本発明は、官能化されたセルロースクロマトグラフィー媒体を作製する方法を提供し、該方法は、
(i)1つ以上の酢酸セルロースナノファイバーで形成された基体を提供すること、
(ii)基体を、両方の酢酸セルロースがセルロースに変換され、その後に、式
【0208】
【化21】
の複数の化合物、及び/又はそのエナンチオマーを、基体上に存在する1つ以上のヒドロキシル基と反応させることによって、得られたセルロース基体に1つ以上の中性ポリマー鎖がグラフト化される、水性アルカリ条件に供すること、並びに
(iii)グラフト化生成物を、イオン交換又は親和性クロマトグラフィー法における使用に適したクロマトグラフィー媒体として、工程(ii)の生成物を官能化する試薬と接触させること、を含み、
試薬は、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド(GMAC)、1,4-ブタンスルホン、クロロ酢酸ナトリウム、NaIOに続いてプロテインA、ジビニルスルホンに続いてプロテインA、アリルグリシジルエーテルに続いて第1にハロヒドリン形成試薬(例えばN-ブロモスクシンアミド)、その後プロテインA、又はアリルグリシジルエーテルに続いて第1にエポキシド形成試薬、その後プロテインAである。
【0209】
典型的には、この代替的な更により好ましい実施形態では、工程(i)は、それぞれが1つ以上の酢酸セルロースナノファイバーを含む、1つ以上の不織布シートで形成された基体を提供することを含む。
【0210】
好ましくは、この代替的な更により好ましい実施形態では、工程(i)は、一方の上に他方が積層された2つ以上の不織布シートを提供することを含み、上記シートのそれぞれが1つ以上の酢酸セルロースナノファイバーを含み、シートの積層物を同時に加熱及び加圧して隣接するシートのナノファイバー間の接触点を融合することを含む。
【0211】
更により一層好ましい実施形態では、本発明は、官能化されたセルロースクロマトグラフィー媒体を作製する方法を提供し、該方法は、
(i)1つ以上の酢酸セルロースナノファイバーで形成された基体を提供し、酢酸セルロースを処理してそれをセルロースに変換すること、
(ii)式
【0212】
【化22】
の複数の化合物、及びそのエナンチオマーを基体上に存在する1つ以上のヒドロキシル基と反応させることにより、得られたセルロース基体から1つ以上のポリマー鎖をグラフト化すること、並びに
(iii)グラフト化生成物を、イオン交換又は親和性クロマトグラフィー法における使用に適したクロマトグラフィー媒体として工程(ii)の生成物を官能化する試薬と接触させること、を含み、
試薬は、ジビニルスルホンに続いてプロテインA、アリルグリシジルエーテルに続いて第1にハロヒドリン形成試薬(例えばN-ブロモスクシンアミド)、その後プロテインA、又はアリルグリシジルエーテルに続いて第1にエポキシド形成試薬、その後プロテインAである。
【0213】
典型的には、この更により一層好ましい実施形態では、工程(i)は、それぞれが1つ以上の酢酸セルロースナノファイバーを含む、1つ以上の不織布シートで形成された基体を提供することを含む。
【0214】
好ましくは、この更により一層好ましい実施形態では、工程(i)は、一方の上に他方が積層された2つ以上の不織布シートを提供することを含み、上記シートのそれぞれが1つ以上の酢酸セルロースナノファイバーを含み、シートの積層物を同時に加熱及び加圧して隣接するシートのナノファイバー間の接触点を融合することを含む。
【0215】
代替的な更により一層好ましい実施形態では、本発明は、官能化されたセルロースクロマトグラフィー媒体を作製する方法を提供し、該方法は、
(i)1つ以上の酢酸セルロースナノファイバーで形成された基体を提供すること、
(ii)基体を、両方の酢酸セルロースがセルロースに変換され、その後に、式
【0216】
【化23】
の複数の化合物、及び/又はそのエナンチオマーを、基体上に存在する1つ以上のヒドロキシル基と反応させることによって、得られたセルロース基体に1つ以上の中性ポリマー鎖がグラフト化される、水性アルカリ条件に供すること、並びに
(iii)グラフト化生成物を、イオン交換又は親和性クロマトグラフィー法における使用に適したクロマトグラフィー媒体として工程(ii)の生成物を官能化する試薬と接触させること、を含み、
試薬は、ジビニルスルホンに続いてプロテインA、アリルグリシジルエーテルに続いて第1にハロヒドリン形成試薬(例えばN-ブロモスクシンアミド)、その後プロテインA、又はアリルグリシジルエーテルに続いて第1にエポキシド形成試薬、その後プロテインAである。
【0217】
典型的には、この代替的な更により一層好ましい実施形態では、工程(i)は、それぞれが1つ以上の酢酸セルロースナノファイバーを含む、1つ以上の不織布シートで形成された基体を提供することを含む。
【0218】
好ましくは、この代替的な更により一層好ましい実施形態では、工程(i)は、一方の上に他方が積層された2つ以上の不織布シートを提供することを含み、上記シートのそれぞれが1つ以上の酢酸セルロースナノファイバーを含み、シートの積層物を同時に加熱及び加圧して隣接するシートのナノファイバー間の接触点を融合することを含む。
【0219】
本発明のクロマトグラフィーカートリッジ
また、本発明は、クロマトグラフィーカートリッジを提供する。本発明のクロマトグラフィーカートリッジは、本発明の1つ以上の官能化されたクロマトグラフィー媒体を含む。代替的には、本発明のクロマトグラフィーカートリッジは、本発明の方法を行って、そのようにして得られた生成物をカートリッジに組み込むことにより取得可能である。
【0220】
また、本発明の方法を行い、そのようにして得られた生成物をカートリッジに組み込むことを含む、クロマトグラフィーカートリッジを作製する方法が提供される。
【0221】
クロマトグラフィーカートリッジは、クロマトグラフィー、典型的には、本明細書に定義されるクロマトグラフィー法における使用に適している。
【0222】
本発明のクロマトグラフィーカートリッジは、典型的には、ホルダ、例えば上に定義されるホルダ内に本発明の1つ以上の官能化されたクロマトグラフィー媒体を含む。ホルダは、典型的には円筒状である。
【0223】
典型的には、クロマトグラフィーカートリッジは、円筒状のホルダの内部に積層された本発明の1つ以上の官能化されたクロマトグラフィー媒体を含む。
【0224】
典型的には、クロマトグラフィーカートリッジは、本発明の2つ以上の官能化されたクロマトグラフィー媒体を含む。典型的には、クロマトグラフィーカートリッジは、最大20の本発明の官能化されたクロマトグラフィー媒体を含む。
【0225】
また、典型的には、クロマトグラフィーカートリッジは、典型的には円筒状のホルダ内に1つ以上のフリットを備える。フリットは当業者によく知られており、堅い多孔質構造、典型的には堅い金属の重合体か又はセラミック、好ましくは堅い金属又はセラミックの多孔質構造を指す。フリットは、典型的には、カートリッジを通るフロー分布を改善するため、及び/又は本発明の1つ以上の官能化されたクロマトグラフィー媒体を支持するため、クロマトグラフィーカートリッジに典型的に備えられる。典型的なフリットにおける孔は、1μm~1000μm、好ましくは5μm~500μm、より好ましくは10μm~150μmの直径を有する。他の好適なフリット孔は、1μm~20μm、好ましくは5μm~10μm、より好ましくは3μm~7μmを含む。
【0226】
典型的には、カートリッジは、本発明の2つ以上の官能化されたクロマトグラフィー媒体と、1つ以上のフリットを含み、フリットは官能化されたクロマトグラフィー媒体の間に配置される。
【0227】
幾つかの実施形態では、カートリッジはフリットを備えていない。
【0228】
カートリッジは、フリットに代えて、又はそれに加えて、代替的なスペーサー材料を備えてもよい。典型的な代替スペーサー材料として、不織布及び織布の材料が挙げられる。
【0229】
不織布ポリマー材料は、当業者に知られている。かかる不織布材料は多孔質であり、すなわち、典型的には著しい圧力低下を伴わずに液体の通行を可能とする。典型的には、不織布ポリマー材料は、ポリプロピレンである。典型的には、不織布材料は、45gsm~150gsmの面密度を有する。
【0230】
幾つかの実施形態では、カートリッジは、本発明の2つ以上の官能化されたクロマトグラフィー媒体と、上に定義される1つ以上の不織布ポリマー材料を含み、1つ以上の不織布ポリマー材料層は、官能化されたクロマトグラフィー媒体の間に配置される。
【0231】
織布材料は、当業者に知られている。かかる織布材料は多孔質であり、すなわち、典型的には著しい圧力低下を伴わずに液体の通行を可能とする。典型的には、織布材料は、織られたポリマー材料、織られたポリプロピレンである。典型的には、織布材料は、1mm未満の厚さを有する。
【0232】
また典型的には、クロマトグラフィーカートリッジは、1つ以上のインレット流体供給手段、及び/又はアウトレット流体収集手段を備えてもよい。かかる手段は、当業者によく知られている。
【0233】
本発明のクロマトグラフィー法
また、本発明は、クロマトグラフィー、特に本明細書に定義されるクロマトグラフィー法における本発明の官能化されたクロマトグラフィー媒体、又は本発明のクロマトグラフィーカートリッジの使用を提供する。
【0234】
また、本発明は、1つ以上の生体分子を移動相から単離する方法を提供し、該方法は、移動相中の1つ以上の生体分子を、本発明の官能化されたクロマトグラフィー媒体又は本発明のクロマトグラフィーカートリッジと接触させることを含む。クロマトグラフィー媒体又はクロマトグラフィーカートリッジは、移動相中の1つ以上の生体分子に優先的に結合し、典型的には、移動相中に存在する他の成分(例えば、他の生体分子)に対しても結合しやすい。これは、かかるクロマトグラフィー法の結合相に対して知られている従来の方法に従って行われ得る。
【0235】
したがって、典型的には、このクロマトグラフィー処理は、イオン(陰イオン又は陽イオン)交換、親和性捕捉、疎水性相互作用、又はミックスモードのクロマトグラフィー処理である。
【0236】
好ましくは、クロマトグラフィーの処理は陰イオン交換クロマトグラフィー処理であり、クロマトグラフィー媒体はDEAE又はQで官能化されている;クロマトグラフィー処理は陽イオン交換クロマトグラフィー処理であり、クロマトグラフィー媒体はSP又はCMで官能化されている;クロマトグラフィー処理は親和性捕捉クロマトグラフィー処理であり、クロマトグラフィー媒体はプロテインAで官能化されている;又は、クロマトグラフィー処理は疎水性相互作用クロマトグラフィー処理であり、クロマトグラフィー媒体はフェニル基で官能化されている。
【0237】
したがって、本発明は、上の工程を含むクロマトグラフィー方法を提供する。典型的には、クロマトグラフィー方法は、上に定義されるクロマトグラフィー法に従って行われる。
【0238】
本発明の有利な知見の1つは、本発明の方法によって生産された官能化されたクロマトグラフィー材料が、高い結合容量を有し、高い流量で操作され得ることである。したがって、典型的には、本発明のクロマトグラフィー方法では、移動相中の1つ以上の生体分子を、1分以下、好ましくは50秒以下、より好ましくは40秒以下、より一層好ましくは30秒以下、更に好ましくは20秒以下、更には15秒以下、12秒以下、10秒以下、8秒以下、6秒以下、4秒以下、2秒以下、1.5秒以下、更には1秒以下の時間に亘って官能化されたクロマトグラフィー媒体と接触させる。
【0239】
クロマトグラフィー方法は、典型的には、官能化されたクロマトグラフィー媒体又はクロマトグラフィーカートリッジから1つ以上の生体分子を回収する更なる工程を含む。この工程は、典型的には、1つ以上の生体分子が吸着される、官能化されたクロマトグラフィー媒体又はクロマトグラフィーカートリッジを、溶離バッファーと接触させることによって達成され得る。これは、かかるクロマトグラフィー法の溶離相について知られている従来の方法に従って行われ得る。したがって、上記方法は、典型的には結合-溶離クロマトグラフ法である。
【0240】
結合工程と溶離工程の間に、上記方法は、1つ以上の生体分子が吸着される本発明の官能化されたクロマトグラフィー媒体又はクロマトグラフィーカートリッジを洗浄する工程を更に含み得る。この洗浄工程は、官能化されたクロマトグラフィー媒体又はクロマトグラフィーカートリッジに結合されていない任意の成分を除去するために行われる。これは、かかるクロマトグラフィー法の洗浄相について知られている従来の方法に従って行われ得る。
【0241】
溶離工程の後、上記方法は、本発明の官能化されたクロマトグラフィー媒体又はクロマトグラフィーカートリッジを再生する工程を更に含み得る。典型的には、これは、1つ以上の生体分子が溶離された官能化されたクロマトグラフィー媒体又はクロマトグラフィーカートリッジを、バッファーと接触させることによって達成される。これは、かかるクロマトグラフ法の再生相について知られている従来の方法に従って行われ得る。
【0242】
典型的には、1つ以上の生体分子は、例えば、組み換えタンパク質、モノクローナル抗体、ウイルスワクチン剤、ウイルスベクター、RNA、エクソソーム、細胞及びプラスミドDNAを含む、細胞、タンパク質、ポリペプチド、抗体、アミノ酸、ウイルス及び核酸から選択される。
【0243】
モノクローナル抗体は、多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)又はドメイン欠失抗体であってもよい。好ましくは、モノクローナル抗体はヒト化抗体又はヒト抗体である。モノクローナル抗体の抗原結合フラグメントを使用してもよい。抗体フラグメントの例として、Fab、Fab’、F(ab’)及びFvフラグメント、二重特異性抗体及び単鎖抗体が挙げられる。
【0244】
典型的には、1つ以上の生体分子は、1つ以上のモノクローナル抗体、又はプロテインA結合に対して親和性を有する部位を示すように操作されたタンパク質であり、カートリッジに任意に含まれる官能化されたクロマトグラフィー媒体は、少なくとも1つのプロテインAリガンド基を持つ。
【0245】
典型的には、クロマトグラフィー方法は、疑似又は真の移動床システムを採用する。したがって、典型的には、上記方法は、移動相中の1つ以上の生体分子を、複数の連結されたクロマトグラフィーカラムを有する1つ以上の疑似又は真の移動床クロマトグラフィー装置に導入することを含み、そのクロマトグラフィーカラムは、吸着剤として、本発明の官能化されたクロマトグラフィー媒体を含む。
【0246】
任意の既知の疑似又は真の移動床装置を使用して、クロマトグラフィー方法を行ってもよいが、吸着剤として本発明の官能化されたクロマトグラフィー媒体を含む。
【0247】
疑似又は真の移動床クロマトグラフィーは、既知の手法であり、当業者によく知られている。動作原理は、液体の溶離相及び固体の吸着相の向流の動きを含んでいる。この操作は、溶媒の使用を最小にして、上記方法を経済的に実行可能とする。かかる分離技術は、メンブレン吸着剤を使用する生体分子の精製を含む、多様な領域での適応を見出した。
【0248】
疑似移動床システムは、共に直列に接続される吸着剤を含む、幾つかの個別のカラムからなる。溶離液を、第1の方向でカラムに通過させる。上記システムのフィードストック及び溶離液の射出ポイント、並びに分離された成分の収集ポイントは、一連のバルブによって定期的にシフトされる。全体的な効果は、固体の吸着剤の移動床を含む単一カラムの操作を擬態することである。したがって、疑似移動床システムは、従来の固定床システムと同様に、溶離液を通過させる固体吸着剤の固定床を含むカラムからなるが、疑似移動床システムでは、操作は、連続向流移動床を擬態するものである。
【0249】
真の移動床システムは、操作の点では疑似移動床システムに類似する。しかしながら、バルブのシステムによって、フィード混合物及び溶離液の注入ポイント、並びに分離された成分の収集ポイントをシフトさせるのではなく、代わりに一連の吸着ユニット(すなわちカラム)をフィード及び排出のポイントに対して物理的に移動される。ここでも、操作は、連続向流移動床を擬態するものである。
【0250】
また、本発明の材料は、固定化された酵素生体触媒、金属捕集及び水処理の方法における使用に適している。したがって、本発明は、本発明の官能化されたクロマトグラフィーの材料を含む、酵素生体触媒作用の方法を提供する。また、本発明は、本発明の官能化されたクロマトグラフ材料を含む、金属捕集方法を提供する。また、本発明は、本発明の官能化されたクロマトグラフ材料を含む、水の処理方法を提供する。生成物をこれらの方法における使用に適するものとするように、特定の小さな修飾が本発明の方法及び生成物に必要とされる場合があることが認識される。
【0251】
実施例
以下の実施例は本発明を説明する。
【0252】
材料及び装置
別段の指示がないかぎり、全ての化学物質をFisher Scientific、Sigma-Aldrich、FluoroChem、Repligen及びVWR等の会社から得た、又はそれらから入手可能である。
【0253】
洗浄プロトコル
洗浄プロトコルA
反応媒体を、等体積脱イオン水で置き換え、1時間循環させた。すすぎの手順をもう一度繰り返した。最後に、材料を反応槽から取り出す前に、等体積の水性エタノール(2:1-HO:EtOH)で処理した。
【0254】
洗浄プロトコルB
反応媒体を、等体積の脱イオン水で置き換え、1時間循環させた。この時間の後、洗浄媒体を0.01M HClで置き換え、1時間循環させ、その上、0.001M HClで置き換え、1時間循環させた。最後に、上記媒体をHO:EtOHの2:1混合物で置き換え、1時間循環させた。次いで、誘導体化されたナノファイバーを反応容器から取り出した。
【0255】
洗浄プロトコルC
反応媒体を、等体積の温かい(60℃)脱イオン水:アセトンの1:1混合物で置き換え、30分間循環させた。洗浄手順を更に2回繰り返した。最後に、上記媒体をHO:EtOHの2:1混合物で置き換え、1時間循環させた。次いで、誘導体化されたナノファイバーを反応容器から取り出した。
【0256】
洗浄プロトコルD
2Lの超純水を、ナノファイバー材料を通してくみ出した。
【0257】
洗浄プロトコルE
反応媒体を、等体積の1:1-脱イオン水:EtOHで置き換え、1時間循環させた。洗浄手順を更に2回繰り返した。最後に、上記媒体をHO:EtOHの2:1混合物で置き換え、1時間循環させた。次いで、誘導体化されたナノファイバーを反応容器から取り出した。最後に、上記媒体をHO:EtOHの2:1混合物で置き換え、1時間循環させた。次いで、誘導体化されたナノファイバーを反応容器から取り出した。
【0258】
洗浄プロトコルF
反応媒体を超純度の脱イオン水で置き換えたナノファイバー材料を、30分間清潔な水中で穏やかに撹拌した。この時間の後、洗浄媒体を置き換え、洗浄サイクルを繰り返した。
【0259】
洗浄プロトコルG
反応媒体を注ぎ出し、流出液のpHが中性又は弱酸性になるまでビーカーに水を補充した。
【0260】
洗浄プロトコルH(ハロヒドリンナノファイバーに対する)
反応媒体を等体積の脱イオン水:アセトンの1:1混合物で置き換え、それを1時間循環させた。この時間の後、洗浄溶液をリフレッシュさせ、勢いよく撹拌しながら更に1時間、ファイバーを洗浄した。この処理を、脱イオン水で更に1時間洗浄する前に、更に3回繰り返した。次いで、誘導体化されたハロヒドリンナノファイバーを反応槽から取り出したところ、次の工程で使える状態であった。
【0261】
I材料の調製
調製例1
相対分子質量29,000g/molを有する酢酸セルロースの溶液を、300nm~600nmの範囲の直径を有するファイバーをもたらす電界紡糸に先立って、一般的な溶媒に溶解した。ナノファイバー製造に対する最適化された条件は、例えば、O.Hardick,et al,J.Mater.Sci.46(2011)3890に見ることができ、その全体が参照することにより本明細書の一部をなす。およそ20g/mの材料のシートを積層し、加熱と加圧を組み合わせた処理に供した。
【0262】
実施例1-グリシドール/トリメチルアンモニウムクロリドの官能化
ナノファイバー材料を以下に概説されるスキームに従って誘導体化した:
【0263】
【化24】
工程(i):再生セルロース(RC)への酢酸セルロース(CA)のけん化
【0264】
【化25】
調製例1の方法に従って得られた酢酸セルロースシート(44×32mm×150mm)を、2:1-水:エタノール中の0.075M水酸化ナトリウム溶液5Lを含む大きなビーカーに入れた。反応混合物を48時間室温で撹拌した。次いで、上記材料を洗浄プロトコルAに従って洗浄した。
【0265】
工程(ii):グリシドール重合
【0266】
【化26】
(i)からの材料を1Lの0.5M NaOHに懸濁した。異なる量の1回分のグリシドール(15mL、30mL、60mL、120mL、180mL)を注意深く添加する前に、反応媒体を15分間循環させた。反応媒体を室温で16時間循環させ、材料を洗浄プロトコルBに従ってその後洗浄した。
【0267】
工程(iii):グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド誘導体化
【0268】
【化27】
工程(ii)で得られた材料を、典型的には1リットルの0.5M NaOHに懸濁した。1回分のグリシジルトリメチルアンモニウムクロリド(25mL、50mL、100mL及び200mL)の添加に先立って、反応媒体を15分間循環させた。反応媒体を室温で更に16時間循環させた。次いで、材料を洗浄プロトコルCに従って洗浄した。
【0269】
トリメチルアンモニウムクロリド含有量を以下の方法によって特定した。50mgの材料をブフナーフィルター漏斗上で0.1M HCl溶液100mLで洗浄し、次いで、更に100mLの0.01M HCl溶液で洗浄した。次いで、材料を75℃の乾燥オーブンに入れ、小片に裂く前に一定質量まで乾燥し、次いで50mLの遠心分離管に入れた。小さなマグネチックスターラーバー及び15mLの脱イオン化水を、混合物を黄色に変色させるおよそ1mLのクロム酸カリウム溶液(乳首ピペットによって添加した)と共に添加した。混合物を0.1M硝酸銀で滴定する前に、20分間勢いよく撹拌した。滴定のエンドポイントは、透明な黄色から褐色がかった色への変色によって識別される。
【0270】
滴定で使用したナノファイバー材料のエンドポイント/グラム数に達するように添加された硝酸銀のマイクロモル数として、トリメチルアンモニウムクロリド含有量(μmol/g)を計算した。
【0271】
実施例2-グリシドール/S官能化
ナノファイバー材料を以下に概説されるスキームに従って誘導体化した:
【0272】
【化28】
工程(i):再生セルロース(RC)への酢酸セルロース(CA)のけん化
【0273】
【化29】
調製例1の方法に従って得られた酢酸セルロースシート((44×32mm×150mm)を、2:1-水:エタノール中の0.075M水酸化ナトリウム溶液5Lを含む大きなビーカーに入れた。反応混合物を室温で48時間循環させた。次いで、上記材料を洗浄プロトコルAに従って洗浄した。
【0274】
工程(ii):グリシドールの誘導体化
【0275】
【化30】
(i)からの材料を1Lの0.5M NaOHに懸濁した。異なる量の1回分のグリシドール(15mL、30mL、120mL、180mL)を注意深く添加する前に、反応媒体を15分間循環させた。反応媒体を室温で16時間循環させ、材料を洗浄プロトコルBに従ってその後洗浄した。
【0276】
工程(iii):1,4-ブタンスルホンの誘導体化
【0277】
【化31】
1M NaOH(水性)150mlからなる反応媒体を53℃まで加熱した。これに工程(ii)で得られたグリシドール官能化材料を、1,4-ブタンスルホン(6ml、53℃、58.6mmol)と共に懸濁した。反応媒体を60℃で15分、30分及び60分間撹拌した。次いで、材料を洗浄プロトコルBに従って洗浄した。
【0278】
上記材料のスルホン酸(S)含有量(μmol/g)を、滴定によって計算した。(iii)からの乾燥された材料を、0.1M HCL及び0.01M HClで洗浄した。次いで、上記材料をオーブンで乾燥し、計量する。洗浄後、pH7に達するように添加されたNaOHの量から材料のモル濃度を特定する。
【0279】
実施例3-グリシドール/カルボキシメチル(CM)官能化
ナノファイバー材料を以下に概説されるスキームに従って誘導体化した:
【0280】
【化32】
工程(i):再生セルロース(RC)への酢酸セルロース(CA)のけん化
【0281】
【化33】
調製例1の方法に従って得られた酢酸セルロースシート(44×32mm×150mm)を、2:1-水:エタノール中の0.075M水酸化ナトリウム溶液5Lを含む大きなビーカーに入れた。反応混合物を48時間室温で撹拌した。次いで、上記材料を洗浄プロトコルAに従って洗浄した。
【0282】
工程(ii):グリシドール重合
【0283】
【化34】
(i)からの材料を1Lの0.5M NaOHに懸濁した。異なる量の1回分のグリシドール(15mL、30mL、60mL、120mL、180mL)を注意深く添加する前に、反応媒体を15分間循環させた。反応媒体を室温で16時間循環させ、材料を洗浄プロトコルBに従ってその後洗浄した。
【0284】
工程(iii):カルボキシメチル(CM)の誘導体化
【0285】
【化35】
(ii)からの材料を62℃の水(66mL)に懸濁した。水(27.5mL)中のクロロ酢酸ナトリウム(12.8g)溶液を新たに調製した。水(27.5mL)中のKOH(6.2g)溶液も新たに調製した。両方の溶液を、温度を62℃に維持しながら、13.75mL/時間の速度で上記反応物に添加した。反応物を合計で4時間に亘り62℃で勢いよく撹拌した。62℃で4時間後、反応媒体を除去し、流出物のpHが中性になるまで、ナノファイバー材料を水の連続フローで洗浄した。次いで、2~3の安定したpHに到達するまで、ビーカーを0.01M塩酸水溶液中で撹拌した。
【0286】
参照例1-ジメチルアミノ誘導体化ナノファイバー材料を提供するATRP官能化
ナノファイバー材料を以下に概説されるスキームに従って誘導体化した:
【0287】
【化36】
工程(i):再生セルロース(RC)への酢酸セルロース(CA)のけん化
【0288】
【化37】
調製例1の方法に従って得られた酢酸セルロースシート(44×32mm×150mm)を、2:1-水:エタノール中の0.075M水酸化ナトリウム溶液5Lを含む大きなビーカーに入れた。反応混合物を48時間室温で撹拌した。次いで、上記材料を洗浄プロトコルAに従って洗浄した。
【0289】
工程(ii):ジビニルスルホン誘導体化
【0290】
【化38】
工程(i)で得られた材料を、KCO(24.4g、275mLのHO中、176.54mmolのKCO)及びアセトニトリル(75mL)の溶液に懸濁した。その混合物を、ジビニルスルホン(50mL、498.1mmol)の滴下の15分前に、2.5時間に亘って撹拌した。ジビニルスルホンの添加の完了に際して、上記反応物を更に1.5時間撹拌した。この時間の後、ナノファイバー材料を洗浄プロトコルCに従って洗浄した。
【0291】
工程(iii)
【0292】
【化39】
工程(ii)で得られた材料を、エチレンジアミン(125mL、1870mmol)又は2-メルカプトエチルアミンヒドロクロリド(37.5g、167mmol)のいずれかを含む375mLのHOに懸濁した。その混合物を室温で一晩撹拌した。この時間の後、誘導体化されたナノファイバー材料を洗浄プロトコルAに従って洗浄した。
【0293】
工程(iv):α-ブロモイソブチリル臭化物の誘導体化:
【0294】
【化40】
工程(iii)で得られた乾燥材料を遠心分離管に入れ、2mLのアセトニトリル及び0.4mL(3.24mmol)のα-ブロモイソブチリル臭化物を添加した。遠心管を室温で5分間に亘り、オービタルシェーカー上で穏やかに振盪させ、その際、トリエチルアミン(0.4ml、2.86mmol)を滴下した。反応混合物を1時間振盪させた。この時間の後、誘導体化されたナノファイバー材料を洗浄プロトコルAに従って洗浄した。
【0295】
工程(v):ATRP
【0296】
【化41】
典型的には、工程(iv)で得られた誘導体化されたナノファイバー材料を反応容器に入れ、そこに飽和アスコルビン酸2.5mL、触媒溶液A0.33ml及びN-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミド(1.66mL、9.2mmol)を添加した。反応混合物を室温で4時間に亘り、オービタルシェーカーで穏やかに振盪した。この時間の後、誘導体化されたナノファイバー材料を洗浄プロトコルAに従って洗浄した。
【0297】
触媒溶液A
10mlのHO及び0.45mL(1.650mmol)の1,1,4,7,10,10-ヘキサメチルトリエチルテトラアミンに溶解させた、CuBr(0.3g、1.343mmol)。
【0298】
実施例4-グリシドールグラフト化、アルデヒド官能化、プロテインA連結材料
ナノファイバー材料を以下に概説されるスキームに従って誘導体化した:
【0299】
【化42】
工程(i):再生セルロース(RC)への酢酸セルロース(CA)のけん化
【0300】
【化43】
調製例1の方法に従って得られた酢酸セルロースシート(44×32mm×150mm)を、2:1-水:エタノール中の0.075M水酸化ナトリウム溶液5Lを含む大きなビーカーに入れた。反応混合物を48時間室温で撹拌した。次いで、上記材料を洗浄プロトコルAに従って洗浄した。
【0301】
工程(ii):グリシドール重合
【0302】
【化44】
(i)からの材料を1Lの0.5M NaOHに懸濁した。反応媒体を、1回分のグリシドール180mLの注意深い添加に先立って、15分間循環させた。反応媒体を室温で16時間循環させ、材料を洗浄プロトコルBに従ってその後洗浄した。
【0303】
工程(iii):アルデヒドへの酸化
【0304】
【化45】
(ii)からの材料をpH5.5に修正された17.5Lの0.05M NaOAcバッファーに懸濁した。NaIOの添加に先立って、反応媒体を30分間循環させた(200g、0.94モル、2Lの反応媒体に溶解させた)。反応媒体を更に30分間循環させた。次いで、材料を洗浄プロトコルCに従って洗浄し、アルデヒド官能化材料を提供した。
【0305】
工程(iv):プロテインAのカップリング
工程(iii)からの材料を6ウェルプレートに添加した。各ウェルに、プロテインA溶液(rSPA、脱イオン水中、プロテインA50mg/ml)を2mL添加した。そのプレートを、1時間に亘りオービタルシェーカーで穏やかに振盪させた。この時間の後、上清液を除去し、還元緩衝液Aで置き換え(1ウェル当たり2.5ml、0.0603gのNaCO(0.569mmol)及び0.337gのNaHCO(4.012mmol)を100mLの脱イオン水に添加して作製される炭酸バッファー10mLに0.0762gのNaCNBHを添加して作製した)、更に15分間振盪させた。この時間の後、プロテインAがカップリングされた材料をプロトコルDに従って洗浄した。
【0306】
実施例5-グリシドールグラフト化、DVS官能化、プロテインA連結材料
ナノファイバー材料を以下に概説されるスキームに従って誘導体化した:
【0307】
【化46】
工程(i):再生セルロース(RC)への酢酸セルロース(CA)のけん化
【0308】
【化47】
調製例1の方法に従って得られた酢酸セルロースシート(44×32mm×150mm)を、2:1-水:エタノール中の0.075M水酸化ナトリウム溶液5Lを含む大きなビーカーに入れた。反応混合物を48時間室温で撹拌した。次いで、上記材料を洗浄プロトコルAに従って洗浄した。
【0309】
工程(ii):グリシドール重合
【0310】
【化48】
(i)からの材料を1Lの1M NaOHに懸濁した。反応媒体を、1回分のグリシドール180mLの添加に先立って、15分間循環させた。反応媒体を室温で16時間循環させ、材料を洗浄プロトコルBに従ってその後洗浄した。
【0311】
工程(iii):ジビニルスルホン誘導体化
【0312】
【化49】
(ii)からの材料を、KCO(48.8g、0.35モル)が溶解された550mLのHO及び150mLのアセトニトリルからなる溶液に懸濁した。ジビニルスルホン(100ml、0.86モル)の滴下に先立って、反応媒体を15分間循環させ、その後、反応媒体を更に1.5時間循環させた。次いで、材料を洗浄プロトコルCに従って洗浄した。
【0313】
工程(iv):タンパク質-Aカップリング:
【0314】
【化50】
工程(iii)からの材料を、プロテインA溶液70mL(50mg/mLのプロテインA懸濁液であって、これに668mg(NaCO)及び58mgのNaHCO、並びにpH11.1に達するようにNaOHを添加する)に懸濁した。上記溶液を16時間循環させた。次いで、材料を洗浄プロトコルDに従って洗浄した。
【0315】
参照例2-ATRPグラフト化されたプロテインAカップリングされた材料
ナノファイバー材料を以下に概説されるスキームに従って誘導体化した:
【0316】
【化51】
工程(i):再生セルロース(RC)への酢酸セルロース(CA)のけん化
【0317】
【化52】
酢酸セルロースシート(5×65cm×100cm)を、17.5Lリットルの2:1-HO:EtOH中の0.075M NaOHに懸濁した。反応媒体を室温で48時間撹拌した。次いで、上記材料を洗浄プロトコルAに従って洗浄した。
【0318】
工程(ii):α-ブロモアセチル化
【0319】
【化53】
(i)からの乾燥材料を、そこに溶解されたα-ブロモイソブチリル臭化物(6.24mL、50.4mmol)を含むテトラヒドロフラン(THF)240mlに懸濁した。反応混合物を0℃に冷却し、次いで、トリエチルアミン(7.2mL、51.6mmol)を滴下した。上記混合物を室温に温める前に、0℃で2時間撹拌した。上記混合物を、室温で更に16時間撹拌した。この時間の後、誘導体化されたナノファイバー材料を洗浄プロトコルAに従って洗浄した。
【0320】
工程(iii):ATRP重合
【0321】
【化54】
容器をアセトン5mL、飽和アスコルビン酸5mL、CuBr(30mg、0.134mmol)及び11,4,7,10,10-ヘキサメチルトリエチレンテトラアミン(45μL、0.165mmol)で満たした。(ii)からの材料を、ジビニルスルホン(2.5mL、24.9mmol)と共に反応混合物に懸濁した。反応混合物を室温で1時間に亘り、オービタルシェーカーで穏やかに振盪した。この時間の後、ナノファイバー材料を洗浄プロトコルAに従って洗浄した。
【0322】
工程(iv):プロテインAの誘導体化
【0323】
【化55】
工程(iii)からの材料の26mmディスクを6ウェルプレートに入れた。各ディスクに、炭酸緩衝溶液(上に定義される)1mLと共に、プロテインA溶液(上に定義される50mg/mL溶液)1mLを添加した。上記ディスクを、16時間穏やかに振盪した。この時間の後、洗浄プロトコルDを使用して上記ディスクを洗浄した。
【0324】
参照例3-トリメチルアンモニウムクロリド官能化
ナノファイバー材料を以下に概説されるスキームに従って誘導体化した:
工程(i):再生セルロース(RC)への酢酸セルロース(CA)のけん化
【0325】
【化56】
調製例1の方法に従って得られた酢酸セルロースシート(44×32mm×150mm)を、2:1-水:エタノール中の0.075M水酸化ナトリウム溶液5Lを含む大きなビーカーに入れた。反応混合物を室温で48時間循環させた。次いで、上記材料を洗浄プロトコルAに従って洗浄した。
【0326】
工程(ii):グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド誘導体化
【0327】
【化57】
工程(i)で得られた材料を、1Lの0.5M NaOHに懸濁した。1回分のグリシジルトリメチルアンモニウムクロリド(25mL、50mL、100mL)の添加に先立って、反応媒体を15分間循環させた。反応媒体を室温で更に16時間循環させた。次いで、材料を洗浄プロトコルBに従って洗浄した。
【0328】
トリメチルアンモニウムクロリド含有量を以下の方法によって特定した。50mgの材料をブフナーフィルター漏斗上で0.1M HCl溶液100mLで洗浄し、次いで、更に100mLの0.01M HCl溶液で洗浄した。次いで、材料を75℃の乾燥オーブンに入れ、小片に裂く前に一定質量まで乾燥し、次いで50mLの遠心分離管に入れた。小さなマグネチックスターラーバー及び15mLの脱イオン化水を、混合物を黄色に変色させるおよそ1mLのクロム酸カリウム溶液(乳首ピペットによって添加した)と共に添加した。混合物を0.1M硝酸銀で滴定する前に、20分間勢いよく撹拌した。滴定のエンドポイントは、透明な黄色から褐色がかった色への変色によって識別される。
【0329】
滴定で使用したナノファイバー材料のエンドポイント/グラム数に達するように添加された硝酸銀のマイクロモル数として、トリメチルアンモニウムクロリド含有量(μmol/g)を計算した。
【0330】
参照例4-グリシドールグラフト化
工程(i):再生セルロース(RC)への酢酸セルロース(CA)のけん化
【0331】
【化58】
調製例1の方法に従って得られた酢酸セルロースシート(44×32mm×150mm)を、2:1-水:エタノール中の0.075M水酸化ナトリウム溶液5Lを含む大きなビーカーに入れた。反応混合物を48時間室温で撹拌した。次いで、上記材料を洗浄プロトコルAに従って洗浄した。
【0332】
工程(ii):グリシドール重合
【0333】
【化59】
(i)からの材料を1Lの0.5M NaOHに懸濁した。異なる量の1回分のグリシドール(15mL、30mL、60mL、120mL、180mL)を注意深く添加する前に、反応媒体を15分間循環させた。反応媒体を室温で16時間循環させ、その材料を洗浄プロトコルGに従ってその後洗浄した。
【0334】
実施例6-グリシドールグラフト化、DVS官能化、プロテインA連結材料に対する代替プロトコル
ナノファイバー材料を以下に概説されるスキームに従って誘導体化した:
【0335】
【化60】
工程(i):グリシドールの重合及びけん化
CAナノファイバー材料(11×80mm×50mm)を取得し、それを1Lの脱イオン水に懸濁することによって、CAナノファイバー材料のグリシドールの重合及びけん化を達成した。更に1Lの脱イオン水でリフレッシュする前に、溶媒を3時間循環させた。この処理を4回繰り返した後に、ナノファイバー材料を350mLの1M KOHに懸濁した。変動する量のグリシドール(100mL)を注意深く添加する前に反応媒体を60分間循環させ、ここでは1回分として25%のグリシドールを添加し、残部を90分間に亘って滴下した。反応媒体を室温で4時間循環させ、材料を洗浄プロトコルBに従ってその後洗浄した。
【0336】
工程(ii):ジビニルスルホンの誘導体化
【0337】
【化61】
(i)からの材料を、KCO(48.8g、0.35モル)が溶解された550mLのHO及び150mLのアセトニトリルからなる溶液に懸濁した。ジビニルスルホン(100ml、0.86モル)の滴下に先立って、反応媒体を15分間循環させ、その後、反応媒体を更に1.5時間循環させた。次いで、材料を洗浄プロトコルCに従って洗浄した。
【0338】
工程(iii):プロテインAカップリング:
【0339】
【化62】
工程(ii)からの材料を、プロテインA溶液70mL(50mg/mLのプロテインA懸濁液であって、これに668mg(NaCO)及び58mgのNaHCO、並びにpH11.1に達するようにNaOHを添加する)に懸濁した。上記溶液を16時間循環させた。次いで、材料を洗浄プロトコルDに従って洗浄した。
【0340】
実施例7-ハロヒドリンの形成及び誘導体化
ナノファイバー材料を以下に概説されるスキームに従って誘導体化した:
【0341】
【化63】
工程(i):再生セルロース(RC)への酢酸セルロース(CA)のけん化
【0342】
【化64】
調製例1の方法に従って得られた酢酸セルロースシート(11×80mm×50mm)を、2:1-水:エタノール中の0.075Mの水酸化ナトリウム溶液5Lを含む大きなビーカーに入れた。反応混合物を48時間室温で撹拌した。次いで、上記材料を洗浄プロトコルAに従って洗浄した。
【0343】
工程(ii):グリシドール重合
【0344】
【化65】
(i)からの材料を、350の1M KOHに懸濁した。変動する量のグリシドール(60mL)を注意深く添加する前に、反応媒体を60分間循環させ、ここでは1回分として25%のグリシドールを添加し、残部を90分間に亘って滴下した。反応媒体を室温で4時間循環させ、材料を洗浄プロトコルBに従ってその後洗浄した。
【0345】
工程(iii)アリルグリシジルエーテル誘導体化
【0346】
【化66】
(ii)からの材料を1Lの1M KOHに懸濁した。25%のアリルグリシジルエーテルを最初に添加し、続いて90分間に亘って残部を滴下することにより、異なる量(20mL、30mL、40mL、50mL、60mL、70mL、80mL、90mL、100mL)のアリルグリシジルエーテルを添加した。室温で4時間撹拌することにより上記反応を維持した。この時間の後、上記材料を洗浄プロトコルBに従ってその後洗浄した。
【0347】
工程(iv):ハロヒドリン形成
【0348】
【化67】
(iii)からの材料を、25gのN-ブロモスクシンイミドが溶解された1Lの3:1-HO:MeCNに懸濁した。反応媒体を4時間に亘って上記材料を通して循環させた。この時間の後、反応媒体を洗浄プロトコルHに従って除去し、残りの物質を洗浄した。
【0349】
工程(v):タンパク質の固定化
【0350】
【化68】
工程(iv)からの単一ストリップの材料をポリエチレンパウチに入れた。次いで、このパウチにプロテインA溶液25mL(50mg/mLのプロテインA懸濁液であって、これに668mg(NaCO)及び58mgのNaHCO、並びにpH11.1に達するようにNaOHを添加する)を添加した。パウチを密閉し、得られた混合物を16時間に亘ってオービタルシェーカーでゆっくりと振盪させた。この時間後、誘導体化された材料をパウチから取り出し、洗浄プロトコルHに従って洗浄した。
【0351】
実施例8-ハロヒドリンの形成及び誘導体化の代替法
ナノファイバー材料を以下に概説されるスキームに従って誘導体化した:
【0352】
【化69】
工程(i):グリシドールの重合及びけん化
【0353】
【化70】
CAナノファイバー材料(6×120mm×90mm)を取得し、それを1Lの脱イオン水に懸濁することによって、CAナノファイバー材料のグリシドールの重合及びけん化を達成した。更に1Lの脱イオン水でリフレッシュする前に、溶媒を3時間循環させた。この処理を4回繰り返した後に、ナノファイバー材料を350mLの1M KOHに懸濁した。グリシドール100mLを注意深く添加する前に反応媒体を5分間循環させ、ここでは1回分として25%のグリシドールを添加し、残部を90分間に亘って滴下した。反応媒体を室温で4時間循環させ、材料を洗浄プロトコルBに従ってその後洗浄した。
【0354】
工程(ii)アリルグリシジルエーテル誘導体化
【0355】
【化71】
(i)からの材料を350Lの1M KOHに懸濁した。25%アリルグリシジルエーテルを最初に添加し、続いて90分間に亘って残部を滴下することにより、異なる量(20mL、30mL、40mL、50mL、60mL、70mL、80mL、90mL、100mL)のアリルグリシジルエーテルを添加した。室温で6時間撹拌することにより上記反応を維持した。この時間の後、上記材料を洗浄プロトコルBに従ってその後洗浄した。
【0356】
より少ない量のアリルグリシジルエーテルの使用は、特に有益な流れ特性を有する材料をもたらした。より多い量のアリルグリシジルエーテルの使用は、より高い結合容量を有する材料をもたらした。
【0357】
工程(iii):ハロヒドリン形成
【0358】
【化72】
(ii)からの材料を、25gのN-ブロモスクシンイミドが溶解された1Lの3:1-HO:MeCNに懸濁した。反応媒体を4時間に亘って上記材料を通して循環させた。この時間の後、反応媒体を洗浄プロトコルHに従って除去し、残りの物質を洗浄した。
【0359】
工程(iv):タンパク質の固定化
【0360】
【化73】
工程(iii)からの単一ストリップの材料をポリエチレンパウチに入れた。次いで、このパウチにプロテインA溶液25mL(50mg/mLのプロテインA懸濁液であって、これに668mg(NaCO)及び58mgのNaHCO、並びに1M NaOH(pH11.1に達するように)を添加する)を添加した。パウチを密閉し、得られた混合物を16時間に亘ってオービタルシェーカーでゆっくりと振盪させた。この時間後、誘導体化された材料をパウチから取り出し、洗浄プロトコルHに従って洗浄した。
【0361】
II分析法
実施例9-動的結合容量の決定
充填材料を、AKTA Pureシステム(GE Healthcare)のホルダ内に含まれる、選択され官能化されたナノファイバーディスクに通した。上記材料を、ホルダアウトレットがUVフローセルによって特定されるその充填材料の10%を超えた後の濃度まで、毎分流量(mV/分)当たりの所定のメンブレン体積の下で充填した。システム及びホルダ装置におけるデッドボリュームを考慮して、10%ブレイクスルーでディスクに充填されたタンパク質の総量を、Unicornソフトウェア(GE Healthcare)におけるクロマトグラムの分析によって決定した。
【0362】
陰イオン交換物質については、充填剤は、pH8までの10mMのTris中の1mg/mLのBSAであった。陽イオン交換材料については、充填材料は、酢酸ナトリウムpH4.7 10mM中の1mg/mLのリゾチームであった。
【0363】
実施例10-流れ抵抗の決定
選択され官能化されたナノファイバー材料に対する圧力低下(ΔP)を、AKTA Pureシステム(GE Healthcare)を使用して決定した。10mM Tris(pH8)のバッファーをホルダに含まれる官能化されたナノファイバーディスクに通した。デルタカラム圧力(ΔP)が0.5MPaと等しい流量を記録した。
【0364】
III特定材料の分析及び比較
実施例11-本発明による別々のグラフト化工程の追加による電荷密度とトリメチルアンモニウム官能化の関係
材料が陰イオン交換体として作用することを可能にするトリメチルアンモニウム官能性をもたらすため、参照例3に従って材料を製造し、試験した。これらを、実施例1に従ってもたらされ分析された、本発明のグラフト化材料と比較した。
【0365】
トリメチルアンモニウム官能化材料に対して得られた電荷密度を、図4に示す。図4中の測定点のそれぞれに対する平均値を、図5にプロットする。
【0366】
設定された量の官能化試薬GMACを使用する場合、グラフト量を増加させることは電荷密度に著しい影響を及ぼさないことが図4及び図5から明らかである。
【0367】
参照例5-電荷密度とトリメチルアンモニウム官能化の関係
材料が陰イオン交換体として作用することを可能にするトリメチルアンモニウム官能性をもたらすため、参照例3に従って材料を製造し、試験した。結果を図2に示す。
【0368】
グラフト化工程がなかった場合、官能化物質(グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド)の量を増加させることによって電荷密度を増加させることが、図2からわかる。
【0369】
実施例12-本発明による別々のグラフト化工程の追加による動的結合容量(DBC)とトリメチルアンモニウム官能化の関係
実施例11で分析したのと同じ材料に対する動的結合容量(DBC)を、実施例9の方法を使用して決定した。
【0370】
実施例1に従って製造された本発明の材料のDBCプロットを、図6に示す。これらの材料のDBCを、図7において本発明(すなわち参照例3の材料)の2段階グラフト化処理を経ていないものと比較する。
【0371】
本発明に従ってもたらされたグラフト化された材料の結合容量は、グラフト化が使用されていない場合のものの4倍超高いことがわかる。グラフト化されていない材料について参照例6(下記)で見られるものとは対照的に、電荷密度が一定に保持されるであるグラフト化された材料について、グラフト量を増加させることは材料の結合容量の増加を生じさせることが明らかである。
【0372】
参照例6-トリメチルアンモニウムクロリド材料に対する、電荷密度と動的結合容量(DBC)の関係
材料が陰イオン交換体として作用することを可能にするトリメチルアンモニウム官能性をもたらすため、参照例3に従って材料を製造し、試験した。これらの材料の動的結合容量を実施例9に従って決定した。
【0373】
結果を図3に示す。
【0374】
当業者によって予想されたように、グラフト化工程がなかった場合、官能化物質の量を増加させることにより、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリドが結合容量を増加させることが図3からわかる。
【0375】
実施例13-本発明による別々のグラフト化工程の追加による電荷密度とスルホン酸(S)官能化の関係
材料が陽イオン交換材料として作用することを可能とするため、本発明の材料にS官能性を与え、実施例2に従って分析した。
【0376】
実施例2で述べられるように、材料のスルホン酸含有量を特定した。結果を図8に示す。材料の電荷密度により大きな影響を及ぼすのは、官能化工程よりもグラフト化工程であることを観察することができる。
【0377】
実施例14-本発明による別々のグラフト化工程の追加による動的結合容量(DBC)とスルホン酸(S)官能化の関係
実施例2に従って製造された材料に対する動的結合容量(DBC)を、実施例9の方法を使用して決定した。結果を図9に示す。
【0378】
また、実施例13に見られるように、グラフト化工程と官能化工程の間に相互依存があることが図9からわかる。本発明に従って作製されたこれらの材料は、160メンブレン体積(mV)/分の流量で47mg/mL~207mg/mLの結合容量をもたらした。
【0379】
実施例15-本発明による別々のグラフト化工程の追加による動的結合容量(DBC)とカルボキシメチル(CM)官能化の関係
材料が実施例3に従って陽イオン交換材料として作用することを可能とするため、本発明の材料にカルボキシメチル(CM)官能性を与えた。本発明に関連するこれらの材料に対する動的結合容量(DBC)を、実施例9の方法を使用して決定した。結果を図10に示す。
【0380】
本発明に従って製造される材料は、160mV/分の流量で20mg/mL~149mg/mLの結合容量に達し得ることが図10からわかる。
【0381】
参照例7-ATRPグラフト化を使用するジメチルアミノ-誘導体化材料の結合容量
材料が参照例1に従って陰イオン交換メンブレンとして作用することを可能とするため、本発明による材料にジメチルアミノ基官能性を与えた。本発明のこれらの材料に対する動的結合容量(DBC)を、実施例9の方法を使用して決定した。
【0382】
実施例16-ポリマーグラフト化の程度と設定された電荷密度での流れ抵抗の関係
実施例11において分析されたのと同じ材料の流れ抵抗を、実施例10の方法を使用して決定した。
【0383】
このアッセイによる結果を図11に示す。これは、電荷-官能化材料に対する、ポリマーグラフト化の程度と流れ抵抗の明らかな関係を示す。また、電荷密度及び流れ抵抗の明らかな関係を見ることができる。
【0384】
参照例8-グラフト化後のOH密度の特定
参照例4に従って産生された材料の試料を取り除き、豊富な量の水(ブフナー漏斗を使用して)で洗浄した後、一定質量まで乾燥した。次いで、試料を50mL遠心分離管に計量し、断片化した。10mLちょうどのp-トルエンスルホニルイソシアネート(アセトニトリル500mL中、p-トルエンスルホニルイソシアネート20mL)をチューブに添加した。遠心分離管に小さな撹拌棒を追加し、次いで、密閉して60℃の水浴に入れ、60分間撹拌した。この時間の後、試料を20mlのHOで希釈し、更に10分間撹拌した。次いで、40mLのイソプロパノールを添加し、自動滴定装置(CA OH滴定の方法を使用する)で0.481M BuNOHを使用して滴定する前に、更に10分間試料を撹拌した。
【0385】
滴定曲線において2つの変曲点が観察される。1つ目はおよそpH5.5(VEP1)で生じ、2つ目はおよそpH9.5(VEP2)で生じる。試料中に存在する遊離OHの量を以下に従って計算した:
OHV=((VEP2-VEP1*f*c(TBAH)*MA))/ms
OHV:KOH/g試料中の試料のヒドロキシ価
VEP1:mL単位の第1の当量点までの滴定液消費量
VEP2:mL単位の第2の当量点までの滴定液消費量
C(TBOAH):mol/L単位のテトラブチルアンモニウムクロリドの濃度
F:単位のない補正係数(滴定濃度)
Ma:KOHの分子量;ここでは56.11g/mol
Ms:g単位の試料サイズ
参照例5に従って産生された材料の分析は、この特定の基体及びグラフト化方法について、グリシドール試薬の量を変動させることにより、6000μmol/g余りの-OH基密度を有する材料をもたらすことを示す。これを図13に示す。
【0386】
参照例9-帯電していない材料に対する流れ抵抗に対するポリマーグラフト化を増加することの効果
材料を参照例4に従って異なる量のグリシドールで処理し、各材料(及びグラフト化されていないRC材料に対して)の流れ抵抗を実施例10で述べられるアッセイを使用して測定した。結果を図12に示す。
【0387】
種々のグラフト率を有する帯電していない材料に対するフローに関して圧力低下に認識可能な増加はないことが、図12からわかる。したがって、グラフト率の増加を伴う材料では、認識可能な閉塞している孔がないと結論付けることができる。一旦、材料が帯電した基で官能化されると、実施例16(上記)及び図11で報告されるように、グラフト化量と流れ抵抗の関係が見られることを明確に観察することができる。
【0388】
実施例17-本発明の材料の生産性
本発明の多くの材料に対する、容量(DBC)及び生産性の値を特定した。得られた結果を表1に示す。
【0389】
表1:本発明において特許請求の範囲に記載される材料の容量及び生産性
【0390】
【表1】
比較例1
様々な商業的に入手可能な多孔質ビーズ材料に対する結合容量、滞留時間及び生産性の値を、製造業者から得た。得られた結果を表2に示す。
【0391】
表2:多孔質ビーズの結合容量及び生産性の例
【0392】
【表2】
比較例2
A)Capto Q及びウシ血清アルブミン(BSA)、及びB)Q Sepharose Fast Flowに対して、滞留時間の関数として動的結合容量を決定した。得られた結果を図1に示す。これは、2分未満の滞留時間は、これらの大規模多孔質ビーズカラムおいて可能ではないことを示す。
【0393】

2016年3月30日にアクセス:
https://www.gelifesciences.com/gehcls_images/GELS/Related%20Content/Files/1335359522418/litdoc11002576_20120514181545.PDF
50mMTris-HClバッファーpH8.0中、ベッド高さ10cmのTricorn5/100カラムにおいて600cm/時、滞留時間1分で測定される10%ブレイクスルーにおける動的結合容
2016年3月30日にアクセス:
https://www.gelifesciences.com/gehcls_images/GELS/Related%20Content/Files/1335359522418/litdoc11002576_20120514181545.PDF
30mM、pH6.8のリン酸ナトリウムバッファー中、ベッド高さ10cmのTricorn(商標)5/100カラムにおいて600cm/時、滞留時間1分で測定される10%ブレイクスルーにおける動的結合容量
2016年3月30日にアクセス:http://www.gelifesciences.com/webapp/wcs/stores/servlet/catalog/en/GELifeSciences-uk/products/AlternativeProductStructure_17372/17543801
ベッド高さ20cmのカラムにおける500cm/時の移動相速度における前端分析による10%ブレイクスルーでの判定。
2016年3月30日にアクセス:http://www.gelifesciences.com/webapp/wcs/stores/servlet/catalog/en/GELifeSciences-uk/products/AlternativeProductStructure_17372/17547401
ベッド高さ10cmのカラムにおける100cm/時の移動相速度における前端分析による10%ブレイクスルーでの判定。
2016年3月30日にアクセス
https://www.gelifesciences.com/gehcls_images/GELS/Related%20Content/Files/1335359522418/litdoc11002576_20120514181545.PDF

比較例3
結合容量、滞留時間及び生産性の値を、様々な商業的に入手可能なメンブレン及びモノリス材料について、製造業者のデータから特定した。得られた結果を表3に示す。
【0394】
表3:メンブレン及びモノリスの容量及び生産性の例
【0395】
【表3】

10 2016年3月30日にアクセス::https://www.sartorius.co.uk/fileadmin/fm-dam/sartorius_media/Bioprocess-Solutions/Purification_Technologies/Membrane_Chromatography/Data_Sheets/Data_Sartobind-75-plus-150ml_SL-2086-e.pdf
11 厚さ8mmの150mLメンブレンを通る0.75L/分の推奨流量
12 2016年3月30日にアクセス
https://www.gelifesciences.com/gehcls_images/GELS/Related%20Content/Files/1335359522418/litdoc11002576_20120514181545.PDF
13 厚さ8mmの150mLメンブレンを通る0.75L/分の推奨流量
14 2016年3月30日にアクセス:https://www.sartorius.co.uk/en/product/product-detail/93prap06hb-12-a/
15 2mLのベッドボリューム、10mg/単位~15mg/単位
16 5ml/分~10ml/分、ベッドボリューム2mL
17 ベッドボリューム8mL、容量が16mL/分を示した流量
18 2016年3月30日にアクセス http://www.biaseparations.com/interactions/category/30-ion-exchange/product/download/file_id-2008
19 2016年3月30日にアクセス http://www.biaseparations.com/interactions/category/30-ion-exchange/product/download/file_id-2024
20 ベッドボリューム8mL、容量が16mL/分を示した流量
21 2016年3月30日にアクセス http://www.biaseparations.com/interactions/category/29-affinity/product/download/file_id-1970
22 ベッドボリューム8mL、容量が8mL/分を示した流量

本発明の更に一般的な態様
1.官能化された高分子クロマトグラフィー媒体を作製する方法であって、
(i)1つ以上のポリマーナノファイバーから形成された基体を提供すること、
(ii)上記基体から1つ以上の中性のポリマー鎖をグラフト化すること、及び
(iii)1つ以上の帯電した基を前記グラフト化生成物に導入することによって、上記グラフト化生成物を、クロマトグラフィー媒体として上記工程(ii)の生成物を官能化する試薬と接触させることを含む、官能化された高分子クロマトグラフィー媒体を作製する方法。
【0396】
2.工程(ii)で導入される上記ポリマーの量が、グラフト化生成物の500μmol/g~60,000μmol/gである、態様1に記載の方法。
【0397】
3.上記工程(iii)の生成物の帯電密度が、クロマトグラフィー媒体の100μmol/g~2,000μmol/gである、態様1又は態様2に記載の方法。
【0398】
4.上記官能化された高分子クロマトグラフィー媒体に対する圧力低下が、液相を0.05mm~10mmの厚さの媒体に毎分1メンブレン体積~640メンブレン体積の流量で通過させる場合、2MPa未満である、態様1乃至態様3のいずれか一つに記載の方法。
【0399】
5.上記官能化された高分子クロマトグラフィー媒体の生産性が、50mg/mL/分~75000mg/mL/分である、態様1乃至態様4のいずれか一つに記載の方法。
【0400】
6.上記官能化された高分子クロマトグラフィー媒体の生産性が、200mg/ml/分超である、態様1乃至態様5のいずれか一つに記載の方法。
【0401】
7.上記グラフト化工程(ii)が、上記官能化された高分子クロマトグラフィー媒体の動的結合容量(DBC)を増加させる効果を有する、態様1乃至態様6のいずれか一つに記載の方法。
【0402】
8.上記基体からの1つ以上の中性ポリマー鎖のグラフト化が、任意に1つ以上の触媒の存在下で、上記基体上に存在する1つ以上の官能基から1つ以上のポリマー鎖を成長させることを含む、態様1乃至態様7のいずれか一つに記載の方法。
【0403】
9.上記基体が、工程(i)~工程(ii)の間に処理されて上記1つ以上の官能基が導入される、又は上記基体が工程(i)~工程(ii)の間に処理されて上記基体上任意の官能基が脱保護若しくは活性化される、又は上記基体が工程(i)~(ii)の間に処理されて、上記基体上の上記官能基の数/密度が増加される、態様8に記載の方法。
【0404】
10.上記官能基がヒドロキシル基、アミノ基又はカルボン酸基である、態様8又は態様9に記載の方法。
【0405】
11.1つ以上のポリマー鎖を成長させることが、任意に、1つ以上の触媒の存在下で、上記基体上に存在する1つ以上の官能基から複数のモノマーを重合することを含む、態様8乃至態様10のいずれか一つに記載の方法。
【0406】
12.上記1つ以上のポリマー鎖が、分岐鎖である、態様8乃至態様11のいずれか一つに記載の方法。
【0407】
13.ポリマー鎖を成長させることが、上記基体上に存在する1つ以上の官能基からグリシドールを重合することを含む、態様8乃至態様12のいずれか一つに記載の方法。
【0408】
14.上記1つ以上のポリマー鎖が1つ以上のポリグリセロール鎖である、態様1乃至態様13のいずれか一つに記載の方法。
【0409】
15.工程(ii)が、式
【0410】
【化74】
の複数の化合物、及びそのエナンチオマーを、上記ナノファイバー基体上に存在する1つ以上のヒドロキシル基と反応させることを含む、態様1乃至態様14のいずれか一つに記載の方法。
【0411】
16.工程(iii)において、上記試薬が、上記得られた官能化クロマトグラフィー媒体が陰イオン交換クロマトグラフィー法における使用に対して適するように、上記グラフト化生成物を官能化する、態様1乃至態様15のいずれか一つに記載の方法。
【0412】
17.態様16に記載の方法であって、
-上記クロマトグラフィー法が陽イオン交換法であり、前記試薬が1つ以上のカルボキシレート、スルホネート若しくはホスホネートの部分を含む1つ以上の帯電した基によって上記クロマトグラフィー媒体を官能化する;又は
-上記クロマトグラフィー法が陰イオン交換法であり、上記試薬が1つ以上の第四級アミノ若しくはジエチルアミンの部分を含む1つ以上の帯電した基によって上記クロマトグラフィー媒体を官能化する、態様16に記載の方法。
【0413】
18.上記基体がメンブレンの形態である、態様1乃至態様17のいずれか一つに記載の方法。
【0414】
19.上記ポリマーが、セルロース、酢酸セルロース、ポリスルホン、ポリアミド、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリエチレンオキシド及びそれらの混合物からなる群から選択される、態様1乃至態様18のいずれか一つに記載の方法。
【0415】
20.上記ナノファイバーが10nm~1000nmの平均径を有する、態様1乃至態様19のいずれか一つに記載の方法。
【0416】
21.態様1乃至態様20のいずれか一つに記載の方法であって、
(i)1つ以上のセルロースナノファイバーで形成された基体を提供すること、
(ii)式
【0417】
【化75】
の複数の化合物、及びそのエナンチオマーを、基体上に存在する1つ以上のヒドロキシル基と反応させることによって、上記基体から1つ以上のポリグリセロールポリマー鎖をグラフト化すること、及び
(iii)上記グラフト化生成物を、イオン交換クロマトグラフィー法における使用に対して適したクロマトグラフィー媒体として上記工程(ii)の生成物を官能化する試薬と接触させること、を含む、態様1乃至態様20のいずれか一つに記載の方法。
【0418】
22.態様1乃至態様21のいずれか一つに記載の方法によって入手可能な、官能化されたクロマトグラフィー媒体。
【0419】
23.クロマトグラフィーカートリッジを作製する方法であって、態様1乃至態様21のいずれか一つに記載の方法を行うこと、そのようにして得られた生成物をカートリッジに組み込むこと、を含むクロマトグラフィーカートリッジを作製する方法。
【0420】
24.(a)態様23の方法によって入手可能である、又は(b)態様22に記載の1つ以上の官能化されたクロマトグラフィー媒体を含む、クロマトグラフィーカートリッジ。
【0421】
25.クロマトグラフィーにおける、態様22に記載の官能化されたクロマトグラフィー媒体又は態様24に記載のクロマトグラフィーカートリッジの使用。
【0422】
26.移動相から1つ以上の生体分子を単離する方法であって、移動相中の1つ以上の生体分子を、態様22に記載の官能化されたクロマトグラフィー媒体又は態様24に記載のクロマトグラフィーカートリッジと接触させることを含む、移動相から1つ以上の生体分子を単離する方法
27.移動相中の上記1つ以上の生体分子を、1分以下の時間に亘って上記官能化されたクロマトグラフィー媒体と接触させる、態様26に記載の方法。
【0423】
28.官能化された高分子クロマトグラフィー媒体を作製する方法であって、
(i)1つ以上のポリマーナノファイバーで形成された基体を提供すること、
(ii)上記基体から1つ以上の中性ポリマー鎖をグラフト化すること、及び
(iii)上記グラフト化生成物を、クロマトグラフィー媒体として上記工程(ii)の生成物を官能化する試薬と接触させること、を含む官能化された高分子クロマトグラフィー媒体を作製する方法。
【0424】
29.工程(ii)で導入される上記ポリマーの量が、上記グラフト化生成物の500μmol/g~60,000μmol/gである、態様28に記載の方法。
【0425】
30.上記グラフト化生成物を試薬と接触させる工程が、クロマトグラフィー媒体としての使用に適した1つ以上のリガンド基を含む上記官能化生成物を与える1つ以上のリガンド基を、上記グラフト化生成物に導入する、態様28又は態様29に記載の方法。
【0426】
31.上記工程(iii)の生成物における上記リガンド基の密度が、クロマトグラフィー媒体の100μmol/g~2,500μmol/gである、態様30に記載の方法。
【0427】
32.上記官能化された高分子クロマトグラフィー媒体に対する圧力低下が、液相を0.05mm~10mmの厚さの媒体に毎分1メンブレン体積~640メンブレン体積の流量で通過させる場合、2MPa未満である、態様28乃至態様31のいずれか一つに記載の方法。
【0428】
33.上記官能化された高分子クロマトグラフィー媒体の生産性が、50mg/mL/分~75000mg/mL/分である、態様28乃至態様32のいずれか一つに記載の方法。
【0429】
34.上記官能化された高分子クロマトグラフィー媒体の生産性が、200mg/ml/分超である、態様28乃至態様33のいずれか一つに記載の方法。
【0430】
35.上記グラフト化工程(ii)が、上記官能化された高分子クロマトグラフィー媒体の動的結合容量(DBC)を増加させる効果を有する、態様28乃至態様34のいずれか一つに記載の方法。
【0431】
36.上記基体から1つ以上の中性ポリマー鎖をグラフト化することが、任意に、1つ以上の触媒の存在下で、上記基体上に存在する1つ以上の官能基から1つ以上のポリマー鎖を成長させることを含む、態様28乃至態様35のいずれか一つに記載の方法。
【0432】
37.上記基体が、工程(i)~工程(ii)の間に処理されて上記1つ以上の官能基が導入される、又は上記基体が工程(i)~工程(ii)の間に処理されて上記基体上任意の官能基が脱保護若しくは活性化される、又は上記基体が工程(i)~(ii)の間に処理されて、上記基体上の上記官能基の数/密度が増加される、態様36に記載の方法。
【0433】
38.上記官能基がヒドロキシル基、アミノ基又はカルボン酸基である、態様36又は態様37に記載の方法。
【0434】
39.1つ以上のポリマー鎖を成長させることが、任意に、1つ以上の触媒の存在下で、上記基体上に存在する1つ以上の官能基から複数のモノマーを重合することを含む、態様36乃至態様38のいずれか一つに記載の方法。
【0435】
40.上記1つ以上のポリマー鎖が分岐鎖である、態様36乃至態様39のいずれか一つに記載の方法。
【0436】
41.成長しているポリマー鎖が、基体上に存在する1つ以上の官能基からグリシドールを重合することを含む、態様36乃至態様40のいずれか一つに記載の方法。
【0437】
42.上記1つ以上のポリマー鎖が1つ以上のポリグリセロール鎖である、態様28乃至態様41のいずれか一つに記載の方法。
【0438】
43.工程(ii)が、式
【0439】
【化76】
の複数の化合物、及びそのエナンチオマーを、ナノファイバー基体上に存在する1つ以上のヒドロキシル基と反応させることを含む、態様28乃至態様42のいずれか一つに記載の方法。
【0440】
44.工程(iii)において、上記試薬が、上記得られた官能化クロマトグラフィー媒体がイオン交換、親和性捕捉、疎水的相互作用及びミックスモード法からなる群から選択されるクロマトグラフィー法における使用に適するように、上記生成物を官能化する、態様28乃至態様43のいずれか一つに記載の方法。
【0441】
45.-上記クロマトグラフィー法が陽イオン交換法であり、上記試薬が1つ以上のカルボキシレート、スルホネート若しくはホスホネートの部分を含む1つ以上の帯電した基によって上記クロマトグラフィー媒体を官能化する;
-上記クロマトグラフィー法が陰イオン交換法であり、上記試薬が1つ以上の第四級アミノ若しくはジエチルアミンの部分を含む1つ以上の帯電した基によって上記クロマトグラフィー媒体を官能化する;
-上記クロマトグラフィー法が親和性捕捉クロマトグラフィー法であり、上記試薬がタンパク質、ペプチド、抗体若しくはそのフラグメント、色素、ヒスチジン基若しくは金属陽イオンを含む基の1つ以上によって上記クロマトグラフィー媒体を官能化する;
-上記クロマトグラフィー法が疎水性相互作用クロマトグラフィー法であり、上記試薬がプロピル基、ブチル基、フェニル基若しくはオクチル基の1つ以上によって上記クロマトグラフィー媒体を官能化する;
又は
-上記クロマトグラフィー法がミックスモードクロマトグラフィー法であり、上記試薬がMEP、オクチルアミン基、N-ベンジルメチルエタノールアミン基若しくはN-ベンゾイルホモシステイン基の1つ以上によって、上記クロマトグラフィー媒体を官能化する、態様44に記載の方法。
【0442】
46.工程(iii)において、上記試薬が1つ以上のプロテインA分子によって上記グラフト化生成物を官能化する、態様28乃至態様45のいずれか一つに記載の方法。
【0443】
47.上記基体がメンブレンの形態である、態様28乃至態様46のいずれか一つに記載の方法。
【0444】
48.上記ポリマーが、セルロース、酢酸セルロース、ポリスルホン、ポリアミド、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリエチレンオキシド及びそれらの混合物からなる群から選択される、態様28乃至態様47のいずれか一つに記載の方法。
【0445】
49.上記ナノファイバーが10nm~1000nmの平均径を有する、態様28乃至態様48のいずれか一つに記載の方法。
【0446】
50.態様28乃至態様49のいずれか一つに記載の方法であって、
(i)1つ以上のセルロースナノファイバーで形成された基体を提供すること、
(ii)式
【0447】
【化77】
の複数の化合物、及びそのエナンチオマーを、上記基体上に存在する1つ以上のヒドロキシル基と反応させることによって、上記基体から1つ以上のポリグリセロールポリマー鎖をグラフト化すること、並びに
(iii)上記グラフト化生成物を、イオン交換、親和性捕捉、疎水的相互作用及びミックスモード法からなる群から選択されるクロマトグラフィー法における使用に適したクロマトグラフィー媒体として、上記工程(ii)の生成物を官能化する試薬と接触させること、を含む、態様28乃至態様49のいずれか一つに記載の方法。
【0448】
51.態様28乃至態様50のいずれか一つに記載の方法によって入手可能な官能化クロマトグラフィー媒体。
【0449】
52.クロマトグラフィーカートリッジを作製する方法であって、態様28乃至態様50のいずれか一つに記載の方法を行うこと、及びそのようにして得られた生成物をカートリッジに組み込むこと、を含む、クロマトグラフィーカートリッジを作製する方法。
【0450】
53.(a)態様52に記載の方法によって入手可能である、又は(b)態様51に記載される1つ以上の官能化クロマトグラフィー媒体を含む、クロマトグラフィーカートリッジ。
【0451】
54.クロマトグラフィーにおける、態様51に記載される官能化クロマトグラフィー媒体、又は態様53に記載のクロマトグラフィーカートリッジの使用。
【0452】
55.移動相から1つ以上の生体分子を単離する方法であって、移動相中の1つ以上の生体分子を、態様51に記載の官能化クロマトグラフィー媒体、又は態様53に記載のクロマトグラフィーカートリッジと接触させることを含む、移動相から1つ以上の生体分子を単離する方法。
【0453】
56.移動相中の上記1つ以上の生体分子を、1分以下の時間に亘って官能化クロマトグラフィー媒体と接触させる、態様55に記載の方法。
【0454】
57.上記1つ以上の生体分子が1つ以上のモノクローナル抗体であるか、又はプロテインAの結合に対する親和性を有する部位を示すように操作されたタンパク質であり、上記官能化クロマトグラフィー媒体が少なくとも1つのプロテインAリガンド基を持つ、態様55又は態様56に記載の方法。
【0455】
58.上記方法の工程(iii)が、上記グラフト化生成物を、アリルグリシジルエーテル及びハロヒドリン形成試薬と接触させることを含む、態様28乃至態様50のいずれか一つに記載の方法。
【0456】
59.工程(iii)において、
(a)上記グラフト化生成物をアリルグリシジルエーテルと接触させる;
(b)上記工程(a)の生成物を、ハロヒドリン形成試薬で処理する;及び
(c)前記工程(b)の生成物をプロテインAと接触させる、態様28から態様50のいずれか一つに記載の方法。
【0457】
60.工程(iii)が、上記グラフト化生成物を、クロマトグラフィー媒体として、工程(ii)の生成物を共に官能化する複数の試薬と接触させることを含み、上記複数の試薬がハロヒドリン形成試薬を含む、態様28乃至態様50のいずれか一つに記載の方法。
【0458】
61.上記グラフト化生成物を、複数の試薬と連続して接触させる、態様60に記載の方法。
[実施態様1]
官能化された高分子クロマトグラフィー媒体を作製する方法であって、
(i)1以上のポリマーナノファイバーから形成された基体を提供すること、
(ii)基体から1以上の中性のポリマー鎖をグラフト化すること、及び
(iii)前記グラフト化生成物と、クロマトグラフィー媒体として前記工程(ii)の生成物を官能化する試薬とを接触させることを含み、
ここで、工程(ii)は、式
【0459】
【化78】
の化合物の複数、及び/又はそのエナンチオマー、及び/又は式(I)のその誘導体及び/又はそのエナンチオマー及び/又はジアステレオマーと:
【0460】
【化79】
前記ナノファイバー基体上に存在する1以上の官能基と反応させることを含み、
式中、R、R、R、R及びRは同一又は異なってもよく、H、ハロ、C~Cアルキル又はC~Cアルコキシから選択され、但しR、R、R、R又はRの少なくとも1つは水素ではない、
官能化された高分子クロマトグラフィー媒体を作製する方法。
[実施態様2]
前記工程(ii)が、式
【0461】
【化80】
の化合物、及び/又はそのエナンチオマーの複数を、前記ナノファイバー基体上に存在する1つ以上の官能基と反応させることを含む、実施態様1に記載の方法。
[実施態様3]
前記ポリマーナノファイバーが、セルロース、酢酸セルロース、ポリスルホン、ポリアミド、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリエチレンオキシド及びそれらの混合物、好ましくは前記ポリマーがセルロース、酢酸セルロース及びそれらの混合物からなる群から選択される、実施態様1又は2に記載の方法。
[実施態様4]
工程(ii)で導入される前記ポリマーの量が、グラフト化生成物の500μmol/g~60,000μmol/gである、実施態様1乃至3のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様5]
前記グラフト化生成物を試薬と接触させる工程が、グラフト化生成物への1つ以上のリガンド基を導入し、それがクロマトグラフィー媒体としての使用に適した1つ以上のリガンド基を含む前記官能化生成物を与える、実施態様1乃至4のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様6]
前記工程(iii)の生成物における前記リガンド基の密度が、クロマトグラフィー媒体の100μmol/g~2,500μmol/gである、実施態様5に記載の方法。
[実施態様7]
前記官能化された高分子クロマトグラフィー媒体上の圧力低下が、液相を0.05mm~10mmの厚さの媒体に毎分1メンブレン体積~640メンブレン体積の流量で通過させる場合、2MPa未満である、実施態様1乃至6のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様8]
前記官能化された高分子クロマトグラフィー媒体の生産性が、50mg/mL/分~75000mg/mL/分である、実施態様1乃至7のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様9]
前記官能化された高分子クロマトグラフィー媒体の生産性が、200mg/ml/分超である、実施態様1乃至8のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様10]
前記グラフト化工程(ii)が、前記官能化された高分子クロマトグラフィー媒体の動的結合容量(DBC)を増加させる効果を有する、実施態様1乃至9のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様11]
前記基体が、工程(i)~工程(ii)の間に処理されて1つ以上の官能基が導入される、又は前記基体が工程(i)~工程(ii)の間に処理されて前記基体上任意の官能基が脱保護若しくは活性化される、又は前記基体が工程(i)~(ii)の間に処理されて、前記基体上の前記官能基の数/密度が増加される、実施態様1乃至10のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様12]
前記グラフト化工程(ii)が、更に同じ工程において、1つ以上の官能基を導入する、又は前記基体上の任意の官能基を脱保護若しくは活性化する、又は前記基体上の官能基の数/密度を増加させる条件下で実行される、実施態様1乃至10のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様13]
前記グラフト化工程(ii)が、水又は水:エタノール中、好ましくは水中で、水性アルカリ、好ましくはNaOH又はKOHの存在下で達成される、実施態様12に記載の方法。
[実施態様14]
前記1つ以上の官能基が、ナノファイバー基体上に存在するヒドロキシル基を含む、実施態様1乃至13のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様15]
官能化工程(iii)において、官能化試薬が、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド(GMAC)、1,4-ブタンスルホン、クロロ酢酸ナトリウム、NaIOに続いてプロテインA、ジビニルスルホンに続いてプロテインA、アリルグリシジルエーテルに続いて第1にハロヒドリン形成試薬、好ましくはN-ブロモスクシンアミド、その後プロテインA、アリルグリシジルエーテルに続いて第1にエポキシド形成試薬、その後プロテインA、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、実施態様1乃至14のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様16]
前記ポリマーの1つ以上が分岐鎖である、実施態様10乃至15のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様17]
工程(iii)において、前記試薬が、結果として生じる官能化されたクロマトグラフィー媒体が、イオン交換、親和性捕捉、疎水的相互作用及びミックスモード法からなる群から選択されるクロマトグラフィー法における使用に適したものとなるように、前記グラフト化生成物を官能化する、実施態様1乃至16のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様18]
実施態様17に記載の方法であって、
-前記クロマトグラフィー法がカチオン交換法であり、前記試薬が1つ以上のカルボキシレート、スルホネート若しくはホスホネートの部分を含む1つ以上の帯電した基によって前記クロマトグラフィー媒体を官能化する;
-前記クロマトグラフィー法が陰イオン交換法であり、前記試薬が1つ以上の第四級アミノ若しくはジエチルアミンの部分を含む1つ以上の帯電した基によってクロマトグラフィー媒体を官能化する;
-前記クロマトグラフィー法が親和性捕捉クロマトグラフィー法であり、前記試薬がタンパク質、ペプチド、抗体若しくはそのフラグメント、色素、ヒスチジン基若しくは金属陽イオンを含む基の1つ以上によってクロマトグラフィー媒体を官能化する;
-前記クロマトグラフィー法が疎水性相互作用クロマトグラフィー法であり、前記試薬がプロピル基、ブチル基、フェニル基若しくはオクチル基の1つ以上によってクロマトグラフィー媒体を官能化する;又は
-前記クロマトグラフィー法がミックスモードクロマトグラフィー法であり、前記試薬がMEP、オクチルアミン基、N-ベンジルメチルエタノールアミン基若しくはN-ベンゾイルホモシステイン基の1つ以上によってクロマトグラフィー媒体を官能化する、実施態様17に記載の方法。
[実施態様19]
工程(iii)において、前記試薬が、1つ以上のプロテインA分子によって前記グラフト化生成物を官能化する、実施態様1乃至18のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様20]
工程(iii)が、クロマトグラフィー媒体として、工程(ii)の生成物を共に官能化する複数の工程を含む、実施態様1乃至19のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様21]
工程(iii)において:
(a)前記グラフト化生成物を、ジビニルスルホン、アリルグリシジルエーテル及びそれらの組み合わせから選択される群から選択される試薬と接触させ;
(b)前記工程(a)の生成物を、ハロヒドリン形成試薬によって任意に処理し;及び
(c)前記工程(b)の生成物をプロテインAと接触させる、実施態様20に記載の方法。
[実施態様22]
前記基体が、メンブレンの形態である、実施態様1乃至21のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様23]
前記ナノファイバーが10nm~1000nmの平均径を有する、実施態様1乃至22のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様24]
(i)1つ以上のセルロースナノファイバーで形成された基体を提供すること、
(ii)式
【0462】
【化81】
の複数の化合物、及び/又はそのエナンチオマー、及び/又は式(I)のその誘導体及び/又はそのエナンチオマー及び/又はジアステレオマーを:
【0463】
【化82】
基体上に存在する1つ以上のヒドロキシル基と反応させることによって、前記基体から1つ以上のポリグリセロールポリマー鎖をグラフト化すること、
(iii)前記グラフト化生成物を、イオン交換、親和性捕捉、疎水的相互作用及びミックスモード法からなる群から選択されるクロマトグラフィー法における使用に適したクロマトグラフィー媒体として、工程(ii)の前記生成物を官能化する試薬と接触させることを含み、
式中、R、R、R、R及びRは同一又は異なってもよく、H、ハロ、C~Cアルキル又はC~Cアルコキシから選選択され、但し、R、R、R、R又はRの少なくとも1つが水素ではない、
実施態様1乃至23のいずれか1項に記載の方法。
[実施態様25]
工程(ii)が、式
【0464】
【化83】
の複数の化合物、及び/又はそのエナンチオマーと、基体上に存在する1つ以上のヒドロキシル基と反応させることにより、前記基体から1つ以上のポリグリセロールポリマー鎖をグラフトすることを含む、実施態様24に記載の方法。
[実施態様26]
実施態様1乃至25のいずれか1項に記載の方法によって入手可能な、官能化されたクロマトグラフィー媒体。
[実施態様27]
クロマトグラフィーカートリッジを作製する方法であって、実施態様1乃至25のいずれか1項に記載の方法を実施すること、及びそのようにしてられた生成物をカートリッジに組み込むこと、を含むクロマトグラフィーカートリッジを作製する方法。
[実施態様28]
(a)実施態様27に記載の方法によって入手可能である、又は(b)実施態様26による1つ以上の官能化されたクロマトグラフィー媒体を含む、クロマトグラフィーカートリッジ。
[実施態様29]
クロマトグラフィーにおける、実施態様26に記載の官能化されたクロマトグラフィー媒体又は実施態様28に記載のクロマトグラフィーカートリッジの使用。
[実施態様30]
移動相から1つ以上の生体分子を単離する方法であって、移動相中の1つ以上の生体分子と、実施態様26に記載の官能化されたクロマトグラフィー媒体又は実施態様28に記載のクロマトグラフィーカートリッジとを接触させることを含む、移動相から1つ以上の生体分子を単離する方法。
[実施態様31]
移動相中の1つ以上の前記生体分子が、1分以下の時間に亘って、前記官能化されたクロマトグラフィー媒体と接触される、実施態様30に記載の方法。
[実施態様32]
前記1つ以上の生体分子が、1つ以上のモノクローナル抗体、又はプロテインA結合に対する親和性を有する部位を示すように操作されたタンパク質であり、前記官能化されたクロマトグラフィー媒体が少なくとも1つのプロテインAリガンド基を持つ、実施態様30又は31に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13