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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-08
(45)【発行日】2022-04-18
(54)【発明の名称】磁気軸受制御装置
(51)【国際特許分類】
   F16C 32/04 20060101AFI20220411BHJP
【FI】
F16C32/04 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2016221260
(22)【出願日】2016-11-14
(65)【公開番号】P2018080712
(43)【公開日】2018-05-24
【審査請求日】2019-07-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000176730
【氏名又は名称】三菱プレシジョン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100135976
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】橋本 樹明
(72)【発明者】
【氏名】井澤 克彦
(72)【発明者】
【氏名】神澤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 典夫
【審査官】倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-258266(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 32/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータを電磁力によって浮上させる複数の電磁石からなる磁気軸受の、ラジアル方向をX軸及びY軸、ロータ回転軸をZ軸とする固定座標系において、上記ロータの幾何中心位置がX軸方向及びY軸方向に並進運動するラジアル方向並進変位、並びに上記ロータの幾何中心位置がZ軸方向に並進運動するアキシャル方向並進変位の3自由度並進変位と、上記ロータの幾何中心軸がX軸回り及びY軸回りで回動するラジアル方向回転変位の2自由度回転変位からなる5自由度ロータ変位に関する情報を検出する変位検出手段と、
該変位検出手段の出力を5自由度ロータ変位に変換するロータ変位演算器と、
該ロータ変位演算器の出力に基づいて、上記ロータの3自由度並進変位を所定値に制御するための軸受力となるラジアル方向及びアキシャル方向軸受力指令、並びに上記ロータの2自由度回転変位を上記磁気軸受の所定値に制御するための軸受モーメントとなるラジアル方向軸受モーメント指令を出力する制御指令演算器と、
上記ロータ変位演算器の出力に基づいて、上記電磁石各々と上記ロータとのギャップ長を出力するギャップ長演算器と、
上記制御指令演算器の出力及び上記ギャップ長演算器の出力に基づいて、上記電磁石各々に供給するべき電流指令を出力する電流指令演算器と、
を有する軸受制御系と、
ラジアル方向擾乱力が生じている、上記磁気軸受の外部の位置におけるX軸方向及びY軸方向擾乱力を計測するラジアル方向擾乱力計測器と、
該ラジアル方向擾乱力計測器の出力を、固定座標系をZ軸回りに、上位制御装置から入力した回転速度又は外部機器が発生する振動が有する所定の周波数に対応する回転速度で回転させた回転座標系表現に変換する回転座標変換器と、
該回転座標変換器の出力から低周波成分を抽出する低域通過フィルタと、
該低域通過フィルタの出力を符号反転させた後に積分した信号を、ラジアル方向並進変位指令の回転座標系表現として出力する積分器と、
該積分器の出力に対して所定の進相量を重畳したうえで固定座標系表現に変換した信号を、上記軸受制御系に対するラジアル方向並進変位指令として出力する固定座標変換器と、
を有するラジアル方向並進変位指令制御系と、
上記低域通過フィルタの出力に基づいて、該低域通過フィルタの出力の偏角回転角速度を出力する回転角速度変換器と、
該回転角速度変換器の出力に対して所定の重み付けゲインで積分した信号を、上記固定座標変換器に対して上記所定の進相量として出力する重み付き積分器と、
を有する最適進相量推定器と、
を備える磁気軸受制御装置。
【請求項2】
ロータを電磁力によって浮上させる複数の電磁石からなる磁気軸受の、ラジアル方向をX軸及びY軸、ロータ回転軸をZ軸とする固定座標系において、上記ロータの幾何中心位置がX軸方向及びY軸方向に並進運動するラジアル方向並進変位、並びに上記ロータの幾何中心位置がZ軸方向に並進運動するアキシャル方向並進変位の3自由度並進変位と、上記ロータの幾何中心軸がX軸回り及びY軸回りで回動するラジアル方向回転変位の2自由度回転変位からなる5自由度ロータ変位に関する情報を検出する変位検出手段と、
該変位検出手段の出力を5自由度ロータ変位に変換するロータ変位演算器と、
該ロータ変位演算器の出力に基づいて、上記ロータの3自由度並進変位を所定値に制御するための軸受力となるラジアル方向及びアキシャル方向軸受力指令、並びに上記ロータの2自由度回転変位を上記磁気軸受の所定値に制御するための軸受モーメントとなるラジアル方向軸受モーメント指令を出力する制御指令演算器と、
上記ロータ変位演算器の出力に基づいて、上記電磁石各々と上記ロータとのギャップ長を出力するギャップ長演算器と、
上記制御指令演算器の出力及び上記ギャップ長演算器の出力に基づいて、上記電磁石各々に供給するべき電流指令を出力する電流指令演算器と、
を有する軸受制御系と、
ラジアル方向擾乱モーメントが生じている、上記磁気軸受の外部の位置におけるX軸方向及びY軸方向擾乱モーメントを計測するラジアル方向擾乱モーメント計測器と、
該ラジアル方向擾乱モーメント計測器の出力を、固定座標系をZ軸回りに、上位制御装置から入力した回転速度又は外部機器が発生する振動が有する所定の周波数に対応する回転速度で回転させた回転座標系表現に変換する回転座標変換器と、
該回転座標変換器の出力から低周波成分を抽出する低域通過フィルタと、
該低域通過フィルタの出力を、上記ロータのラジアル方向慣性モーメントがアキシャル方向慣性モーメントに比して大きい場合には符号反転させた後に積分し、上記ロータのアキシャル方向慣性モーメントがラジアル方向慣性モーメントに比して大きい場合には符号反転せずに積分した信号を、ラジアル方向回転変位指令の回転座標系表現として出力する積分器と、
該積分器の出力を、所定の進相量を重畳したうえで固定座標系表現に変換した信号を、上記軸受制御系に対するラジアル方向回転変位指令として出力する固定座標変換器と、
を有するラジアル方向回転変位指令制御系と、
上記低域通過フィルタの出力に基づいて、該低域通過フィルタの出力の偏角回転角速度を出力する回転角速度変換器と、
該回転角速度変換器の出力に対して所定の重み付けゲインで積分した信号を、上記固定座標変換器に対して上記所定の進相量として出力する重み付き積分器と、
を有する最適進相量推定器と、
を備えることを特徴とする磁気軸受制御装置。
【請求項3】
上記最適進相量推定器の上記重み付き積分器において、
上記所定の重み付けゲインを、上記低域通過フィルタの出力の絶対値の2乗としたことを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気軸受制御装置。
【請求項4】
上記最適進相量推定器は、
上記低域通過フィルタの出力に基づいて、低域通過フィルタの出力の偏角回転角速度を出力する上記回転角速度変換器と、
上記回転角速度変換器の出力に対して所定値のリミッタ処理をおこなう振幅制限器と、
該振幅制限器の出力に対して所定の重み付けゲインで積分した信号を、上記固定座標変換器に対して上記所定の進相量として出力する上記重み付き積分器とを有することを特徴とする請求項1から請求項の何れか一項に記載の磁気軸受制御装置。
【請求項5】
上記最適進相量推定器の上記重み付き積分器において、
該重み付き積分器が出力する上記所定の進相量に対して、上記回転座標変換器における回転座標系の回転速度に応じて所定の初期値を与えたことを特徴とする請求項1から請求項の何れか一項に記載の磁気軸受制御装置。
【請求項6】
上記ラジアル方向擾乱力計測器は、
上記磁気軸受又は振動を発生する上記外部機器の近傍に配置されたことを特徴とする請求項1に記載の磁気軸受制御装置。
【請求項7】
上記ラジアル方向擾乱モーメント計測器は、
上記磁気軸受又は振動を発生する上記外部機器の近傍に配置されたことを特徴とする請求項に記載の磁気軸受制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転体を非接触で支持する磁気軸受が発生する擾乱を、磁気軸受のサーボ共振周波数を含めた全周波数領域において低減する磁気軸受制御装置に関するものである。また、本発明は、所定位置における振動に対して、その振動を相殺するような制振力を与えるアクティブ制振機能を有する磁気軸受制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の磁気軸受制御装置として、例えば、特許文献1に記載された磁気軸受制御装置がある。
【0003】
この磁気軸受制御装置は、ロータを電磁力によって浮上させる複数の電磁石からなる磁気軸受の、ロータ変位に関する情報を検出する変位検出手段と、変位検出手段の出力をロータ変位に変換するロータ変位演算器と、ロータ変位演算器の出力に基づいて、ロータ変位を磁気軸受の所定の位置に制御するための軸受力および軸受モーメントを算出する制御指令演算器と、ロータ変位演算器の出力に基づいて、各電磁石とロータとのギャップ長を算出するギャップ長演算器と、制御指令演算器の出力およびギャップ長演算器の出力に基づいて、各電磁石に供給するべき電流指令を算出する電流指令演算器を備えた通常の磁気軸受制御装置に対して、
磁気軸受が発生するラジアル方向擾乱力を計測するラジアル方向擾乱力計測器と、ラジアル方向擾乱力計測器の出力を、所定の回転速度で回転する回転座標系表現に変換する回転座標変換器と、回転座標変換器の出力から低周波成分を抽出する低域通過フィルタと、低域通過フィルタの出力を符号反転して積分する積分器と、積分器の出力に対して、ロータの回転速度に応じて所定の進相量を重畳して固定座標系表現に変換する固定座標変換器を配置した構成としており、
固定座標変換器の出力を磁気軸受制御装置におけるロータのラジアル方向並進変位指令とすることで、磁気軸受のサーボ共振周波数を含めた全周波数領域において、回転座標系と同一方向に同一速度で回転するラジアル方向擾乱力を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-258266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の磁気軸受制御装置は以上のように構成され、磁気軸受の機械加工精度、電磁石及び変位検出手段の取付誤差、並びに軸受制御系のモデル化誤差の影響を受けずに、磁気軸受のサーボ共振周波数を含めた全周波数領域で回転座標変換器における回転座標系と同一方向に同一速度で回転するラジアル方向擾乱力を低減することができる。
【0006】
しかしながら、従来の磁気軸受制御装置では固定座標変換器において重畳する進相量が常に最適値となるように、低減させる擾乱周波数に応じた事前調整が必要になるという課題があった。
【0007】
加えて、磁気軸受装置の機械特性のみならず、磁気軸受装置を設置する設置筐体の機械特性、並びに設置筐体への磁気軸受装置の取付剛性によって上記最適進相量が変化するため、磁気軸受装置を筐体へ設置する度に進相量調整を実施しなければならないという課題もあった。
【0008】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、磁気軸受制御装置の内部変数に基づいて、固定座標変換器において重畳する進相量の最適値を自動的に導出することで、磁気軸受装置及び設置筐体の機械特性、並びに設置筐体への磁気軸受装置の取付剛性によらず、従来必要となった進相量の事前調整作業の一切を不要とする磁気軸受制御装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る磁気軸受制御装置は、従来の軸受制御系に加えて、
ラジアル方向擾乱力が生じている位置におけるX軸方向及びY軸方向擾乱力を計測するラジアル方向擾乱力計測器と、
該ラジアル方向擾乱力計測器の出力を、固定座標系をZ軸回りに所定の回転速度で回転させた回転座標系表現に変換する回転座標変換器と、
該回転座標変換器の出力から低周波成分を抽出する低域通過フィルタと、
該低域通過フィルタの出力を符号反転させた後に積分した信号を、ラジアル方向並進変位指令の回転座標系表現として出力する積分器と、
該積分器の出力に対して所定の進相量を重畳したうえで固定座標系表現に変換した信号を、上記軸受制御系に対するラジアル方向並進変位指令として出力する固定座標変換器と、
を有するラジアル方向並進変位指令制御系と、
上記低域通過フィルタの出力に基づいて、該低域通過フィルタの出力の偏角回転角速度を出力する回転角速度変換器と、
該回転角速度変換器の出力に対して所定の重み付けゲインで積分した信号を、上記固定座標変換器に対して上記所定の進相量として出力する重み付き積分器と、
を有する最適進相量推定器と、
を備える。
【0010】
また、この発明に係る磁気軸受制御装置は、従来の軸受制御系に加えて、
アキシャル方向擾乱力が生じている位置におけるZ軸方向擾乱力を計測するアキシャル方向擾乱力計測器と、
該アキシャル方向擾乱力計測器の出力をX軸方向成分、零値をY軸方向成分として、固定座標系をZ軸回りに所定の回転速度で回転させた回転座標系表現に変換する回転座標変換器と、
該回転座標変換器の出力から低周波成分を抽出する低域通過フィルタと、
該低域通過フィルタの出力を符号反転させた後に積分した信号を、アキシャル方向並進変位指令の回転座標系表現として出力する積分器と、
該積分器の出力を、所定の進相量を重畳したうえで固定座標系表現に変換した信号のX軸方向成分を、上記軸受制御系に対するアキシャル方向並進変位指令として出力する固定座標変換器と、
を備えたアキシャル方向並進変位指令制御系と、
上記低域通過フィルタの出力に基づいて、該低域通過フィルタの出力の偏角回転角速度を出力する回転角速度変換器と、
該回転角速度変換器の出力に対して所定の重み付けゲインで積分した信号を、上記固定座標変換器に対して上記所定の進相量として出力する重み付き積分器と、
を有する最適進相量推定器と、
を備える。
【0011】
更に、この発明に係る磁気軸受制御装置は、従来の軸受制御系に加えて、
ラジアル方向擾乱モーメントが生じている位置におけるX軸方向及びY軸方向擾乱モーメントを計測するラジアル方向擾乱モーメント計測器と、
該ラジアル方向擾乱モーメント計測器の出力を、固定座標系をZ軸回りに所定の回転速度で回転させた回転座標系表現に変換する回転座標変換器と、
該回転座標変換器の出力から低周波成分を抽出する低域通過フィルタと、
該低域通過フィルタの出力を、上記ロータのラジアル方向慣性モーメントがアキシャル方向慣性モーメントに比して大きい場合には符号反転させた後に積分し、上記ロータのアキシャル方向慣性モーメントがラジアル方向慣性モーメントに比して大きい場合には符号反転させずに積分した信号を、ラジアル方向回転変位指令の回転座標系表現として出力する積分器と、
該積分器の出力を、所定の進相量を重畳したうえで固定座標系表現に変換した信号を、上記軸受制御系に対するラジアル方向回転変位指令として出力する固定座標変換器と、
を有するラジアル方向回転変位指令制御系と、
上記低域通過フィルタの出力に基づいて、該低域通過フィルタの出力の偏角回転角速度を出力する回転角速度変換器と、
該回転角速度変換器の出力に対して所定の重み付けゲインで積分した信号を、上記固定座標変換器に対して上記所定の進相量として出力する重み付き積分器と、
を有する最適進相量推定器と、
を備える。
【発明の効果】
【0012】
この発明により、磁気軸受制御装置の内部変数に基づいて、固定座標変換器において重畳する進相量の最適値が自動的に導出されるので、磁気軸受装置及び設置筐体の機械特性、並びに設置筐体への磁気軸受装置の取付剛性によらず、従来のラジアル方向並進変位指令制御系、アキシャル方向並進変位指令制御系及びラジアル方向回転変位指令制御系において必要となった進相量の事前調整作業の一切を不要とすることができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】磁気軸受手段の構成要素であるロータ、電磁石及び変位検出手段の配置例を示す構成図である。
図2】磁気軸受手段の構成要素であるロータ、電磁石及び変位検出手段の別の配置例を示す構成図である。
図3】この発明の実施の形態1~3による磁気軸受制御装置における軸受制御系の構成を示すブロック図である。
図4】この発明の実施の形態1による磁気軸受制御装置におけるラジアル方向並進変位指令制御系及び最適進相量推定器の構成を示すブロック図である。
図5】この発明の実施の形態1による磁気軸受制御装置における機器配置を示す構成図である。
図6】この発明の実施の形態2による磁気軸受制御装置におけるラジアル方向並進変位指令制御系、アキシャル方向並進変位指令制御系、並びに最適進相量推定器の構成を示すブロック図である。
図7】この発明の実施の形態2~3による磁気軸受制御装置において、重み付き積分器で与える初期値の構成を示すグラフである。
図8】この発明の実施の形態2による磁気軸受制御装置における機器配置を示す構成図である。
図9】この発明の実施の形態3による磁気軸受制御装置におけるラジアル方向回転変位指令制御系及び最適進相量推定器の構成を示すブロック図である。
図10】この発明の実施の形態3による磁気軸受制御装置における機器配置を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施の形態1)
【0015】
図1は、磁気軸受手段の構成要素であるロータ(円柱状ロータ)、電磁石及び変位検出手段の配置例を示す構成図であり、図1(a)は上面図、図1(b)は側面図である。
【0016】
図1に示すように、磁気軸受手段は、ロータ1、ロータ1を電磁力によって所定位置に浮上させる電磁石2、及びロータ1の磁気軸受中心からの変位を検出する変位検出手段3を備えている。X軸、Y軸、及びZ軸は磁気軸受のステータ(図示せず)に対して固定された固定座標系の座標軸であり、Z軸はロータ回転軸(アキシャル軸)、X軸及びY軸はZ軸に垂直で互いに直交するラジアル軸であり、固定座標系原点は磁気軸受の幾何中心位置となっている。
【0017】
ロータ1には、ロータ1の幾何中心位置が固定座標系原点からX軸方向、及びY軸方向に並進運動するラジアル方向並進変位X、Y、及びロータ1の幾何中心位置が固定座標系原点からZ軸方向に並進運動するアキシャル方向並進変位Zの3自由度並進変位、並びにロータ1の幾何中心軸がX軸回りで回転するラジアル方向回転変位θx、Y軸回りで回転するラジアル方向回転変位θyの2自由度回転変位からなる5自由度ロータ変位が生じる。
【0018】
図1に示す構成の磁気軸受手段では、変位検出手段3a~3hから出力されるロータ変位情報によって、ロータ1のラジアル方向並進変位X、Y、及びラジアル方向回転変位θx、θyを算出することができ、変位検出手段3i~3jから出力されるロータ変位情報によって、ロータ1のアキシャル方向並進変位Zを算出することができる。
【0019】
また、電磁石2a~2hが発生する電磁力によって、ロータ1に作用するラジアル方向軸受力、及びラジアル方向軸受モーメントを制御することができ、電磁石2i~2jが発生する電磁力によって、ロータ1に作用するアキシャル方向軸受力を制御することができる。図2は、磁気軸受手段の構成要素であるロータ(円板状ロータ)、電磁石及び変位検出手段の別の配置例を示す構成図であり、図2(a)は上面図、図2(b)は図2(a)のA-A断面図である。
【0020】
図2に示すように、傾斜磁極リング状ロータ1の周囲に6個の電磁石2a~2f、及び6個の変位検出手段3a~3fを配置した磁気軸受手段の構成でも、変位検出手段3a~3fから出力されるロータ変位情報によって5自由度ロータ変位X、Y、Z、θx、θyを算出することができ、また、電磁石2a~2fが発生する電磁力によってロータに作用するラジアル方向軸受力、アキシャル方向軸受力、及びラジアル方向軸受モーメントを制御することができる。
【0021】
図3は、この発明の実施の形態1による磁気軸受制御装置における軸受制御系の構成を示すブロック図である。
【0022】
図3に示すように、軸受制御系10は磁気軸受手段11、ロータ変位演算器12、制御指令演算器13、ギャップ長演算器14、電流指令演算器15を備えており、ロータ1のラジアル方向並進変位指令Xc、Yc、アキシャル方向並進変位指令Zc、及びラジアル方向回転変位指令θxc、θycを受けて、その各々に対してロータ1の5自由度ロータ変位X、Y、Z、θx、θyを追従させるように制御する。
【0023】
軸受制御系10は、図示しない上位制御装置から、ロータ1のラジアル方向並進変位指令Xc、Yc、アキシャル方向並進変位指令Zc、及びラジアル方向回転変位指令θxc、θycを入力する。また、ロータ1は、図示しない上位制御装置により、アキシャル方向回転速度ωdで回転するように制御される。
【0024】
磁気軸受手段11は、ロータ1、ロータ1を電磁力によって浮上させる複数の電磁石2、及びロータ1の変位を検出する変位検出手段3から構成されており、n個の変位検出手段3からロータ変位情報S1、S2、…、Snを出力する。
【0025】
ロータ変位演算器12は、磁気軸受手段11におけるn個の変位検出手段3から出力されるロータ変位情報S1、S2、…、Snに基づいて、ロータ1の5自由度ロータ変位X、Y、Z、θx、θyを算出して出力する。
【0026】
制御指令演算器13は、ラジアル方向並進変位指令Xc、Yc、アキシャル方向並進変位指令Zc、及びラジアル方向回転変位指令θxc、θycと、ロータ変位演算器12から出力される5自由度ロータ変位X、Y、Z、θx、θyとの偏差に基づいて、当該偏差を零とするようなラジアル方向軸受力指令Fx、Fy、アキシャル方向軸受力指令Fz、及びラジアル方向軸受モーメント指令Nx、Nyを算出して出力する。
【0027】
ギャップ長演算器14は、ロータ変位演算器12から出力される5自由度ロータ変位X、Y、Z、θx、θyに基づいて、磁気軸受手段11を構成するn個の電磁石2の各々におけるロータ1とのギャップ長G1、G2、…、Gnを算出して出力する。
【0028】
電流指令演算器15は、制御指令演算器13の出力であるラジアル方向軸受力指令Fx、Fy、アキシャル方向軸受力指令Fz、及びラジアル方向軸受モーメント指令Nx、Nyと、ギャップ長演算器14の出力であるギャップ長G1、G2、…、Gnに基づいて、各々の電磁石2に供給するべき電流指令I1、I2、…、Inを算出して出力する。そして、電流指令演算器15からの電流指令I1、I2、…、Inに応じて、磁気軸受手段11における各々の電磁石2が付勢されることにより、ロータ1の5自由度ロータ変位が制御される。
【0029】
図4は、この発明の実施の形態1による磁気軸受制御装置におけるラジアル方向並進変位指令制御系及び最適進相量推定器の構成を示すブロック図である。
【0030】
図4に示すように、ラジアル方向並進変位指令制御系20はラジアル方向擾乱力計測器21、回転座標変換器22、低域通過フィルタ23、積分器24、固定座標変換器25を備えており、ラジアル方向擾乱力Fdx、Fdyから、当該擾乱力におけるロータ1のアキシャル方向回転速度ωdと同一回転速度で回転する成分を低減するラジアル方向並進変位指令Xc、Ycを算出して軸受制御系10に対して出力する。
【0031】
また、最適進相量推定器50は回転角速度変換器51、重み付き積分器52を備えており、低域通過フィルタ23の出力Flpfx、Flpfyに基づいて、固定座標変換器25において重畳する進相量αを算出して出力する。
【0032】
ラジアル方向並進変位指令制御系20のラジアル方向擾乱力計測器21は、ラジアル方向擾乱力が生じている位置におけるX軸方向擾乱力Fdx、Y軸方向擾乱力Fdyを計測して出力する。
【0033】
ラジアル方向擾乱力計測器21は、例えば、力センサ、加速度計等の公知の技術を用いて形成される。
【0034】
回転座標変換器22は、ロータ1のアキシャル方向回転速度ωdに基づいて、ラジアル方向擾乱力計測器21から出力されるラジアル方向擾乱力Fdx、Fdyを、固定座標系をZ軸回りにωdの回転速度で回転する回転座標系表現Fdxr、Fdyrに変換して出力する。回転座標変換器22は、図示しない上位制御装置から、回転速度ωdを入力する。
【0035】
回転座標系は、回転速度ωdで回転するロータ1の回転と同一方向に同一速度で回転する。
【0036】
低域通過フィルタ23は、通過周波数帯域を大略0.1~1Hz程度とすることで、ラジアル方向擾乱力Fdx、Fdyの回転座標系表現Fdxr、Fdyrから、低周波成分Flpfx、Flpfyを抽出する。なお、当該出力Flpfx、Flpfyは、固定座標系表現におけるラジアル方向擾乱力Fdx、Fdyのωd成分に対応する。
【0037】
積分器24は、低域通過フィルタ23の出力Flpfx、Flpfyを符号反転させた後に積分した信号を、ラジアル方向並進変位指令の回転座標系表現Xcr、Ycrとして出力する。
【0038】
固定座標変換器25は、ロータ1のアキシャル方向回転速度ωdに基づいて、積分器24の出力であるラジアル方向並進変位指令の回転座標系表現Xcr、Ycrを、進相量αを重畳したうえで固定座標系表現に変換して、軸受制御系10に対するラジアル方向並進変位指令Xc、Ycとして出力する。固定座標変換器25は、図示しない上位制御装置から、回転速度ωdを入力する。
【0039】
回転座標変換器22及び固定座標変換器25が入力する回転速度ωdとして、ロータ1の回転速度を測定し、測定された回転速度を、回転座標変換器22及び固定座標変換器25に入力するようにしてもよい。
【0040】
なお実施の形態1では、軸受制御系10に対するアキシャル方向並進変位指令Zc、及びラジアル方向回転変位指令θxc、θycを、常に零値としている。
【0041】
最適進相量推定器50の回転角速度変換器51は、低域通過フィルタ23の出力Flpfx、Flpfyに基づいて、当該出力Flpfx、Flpfyの偏角回転角速度d∠Flpf/dtを算出して出力する。
【0042】
重み付き積分器52は、低域通過フィルタ出力Flpfx、Flpfyの絶対値の2乗で重み付けしたゲインによって、回転角速度変換器51の出力である偏角回転角速度d∠Flpf/dtを積分した信号を、固定座標変換器25において重畳する進相量αとして出力する。
【0043】
図5は、この発明の実施の形態1による磁気軸受制御装置における機器配置を示す構成図である。
【0044】
図5に示すように、磁気軸受手段11は、設置筐体60に対して所定の取付剛性で固定されており、ラジアル方向擾乱力計測器21は、設置筐体60に対して磁気軸受手段11の近傍に配置されている。なお設置筐体60には、一般に他の設置機器61も固定されている。
【0045】
磁気軸受手段11は、通常、ロータの幾何学的中心と、ロータ重心とは一致していない。そのため、ロータの幾何学的中心が、固定座標系原点に位置するように制御されても、ロータの回転速度と同期して、ラジアル方向擾乱力が発生し得る。
【0046】
ラジアル方向擾乱力計測器21は、磁気軸受手段11が発生するラジアル方向擾乱力を計測する観点から、磁気軸受手段11に近接して配置されることが好ましい。例えば、ラジアル方向擾乱力計測器21は、磁気軸受手段11に対して、30cm以内、特に、10cm以内に配置されることが、上述した観点から好ましい。回転座標変換器22は、ラジアル方向擾乱力計測器21の出力を、固定座標系をZ軸回りに、磁気軸受手段11が発生する振動が有するあらゆる周波数に対応する回転速度で回転させた回転座標系表現に変換することが好ましい。
【0047】
次に、磁気軸受制御装置の動作について説明する。
【0048】
図3に示す軸受制御系10において、磁気軸受手段11におけるn個の変位検出手段3から出力されるロータ変位情報S1、S2、…、Snは、ロータ変位演算器12によってロータ1の3自由度並進変位X、Y、Z、及びラジアル方向2自由度回転変位θx、θyからなる5自由度ロータ変位に変換される。
【0049】
この5自由度ロータ変位X、Y、Z、θx、θyはフィードバックされ、固定座標変換器25から出力されるラジアル方向並進変位指令Xc、Yc、アキシャル方向並進変位指令Zcの零値、及びラジアル方向回転変位指令θxc、θycの零値との偏差信号が制御指令演算器13に入力される。
【0050】
制御指令演算器13では、入力された偏差信号に基づいて、当該偏差が零となるようなラジアル方向軸受力指令Fx、Fy、アキシャル方向軸受力指令Fz、及びラジアル方向軸受モーメント指令Nx、Nyを算出して出力する。
【0051】
また、ギャップ長演算器14では、5自由度ロータ変位X、Y、Z、θx、θyに基づいて、磁気軸受手段11を構成するn個の電磁石2の各々におけるロータ1とのギャップ長G1、G2、…、Gnを算出する。
【0052】
電流指令演算器15では、当該ギャップ長G1、G2、…、Gnにおいてラジアル方向軸受力指令Fx、Fy、アキシャル方向軸受力指令Fz、及びラジアル方向軸受モーメント指令Nx、Nyを実現するために電磁石2の各々に供給するべき電流指令I1、I2、…、Inを算出して出力する。この電流指令I1、I2、…、Inに応じて電磁石2の各々が付勢されることにより、5自由度ロータ変位X、Y、Z、θx、θyがラジアル方向並進変位指令Xc、Yc、アキシャル方向並進変位指令Zc、及びラジアル方向回転変位指令θxc、θycと一致するように制御することが可能となる。
【0053】
このような軸受制御系10に対して、この実施の形態1の磁気軸受制御装置では、ラジアル方向並進変位指令制御系20を設け、ラジアル方向擾乱力計測器21が計測するラジアル方向擾乱力Fdx、Fdyから、当該擾乱力におけるロータ1のアキシャル方向回転速度ωdと同一回転速度で回転する成分を低減するようなラジアル方向並進変位指令Xc、Ycを生成している。
【0054】
ラジアル方向並進変位指令制御系20では、ラジアル方向擾乱力計測器21によって、ラジアル方向擾乱力が生じている位置におけるX軸方向擾乱力Fdx、Y軸方向擾乱力Fdyを計測する。当該擾乱力は回転座標変換器22に入力され、ラジアル方向擾乱力Fdx、Fdyを、次の式(1)によって固定座標系をZ軸回りにωdの回転速度で回転させた回転座標系表現Fdxr、Fdyrに変換される。
【0055】
Fdxr=Fdx・cos(ωd・t)+Fdy・sin(ωd・t) (1-1)
Fdyr=-Fdx・sin(ωd・t)+Fdy・cos(ωd・t) (1-2)
【0056】
ここで、tは時間を表す。
【0057】
このラジアル方向擾乱力の回転座標系表現Fdxr、Fdyrは、通過周波数帯域を大略0.1~1Hz程度に設定した低域通過フィルタ23に入力され、低周波成分Flpfx、Flpfyが抽出される。なお、当該出力Flpfx、Flpfyは、固定座標系表現におけるラジアル方向擾乱力Fdx、Fdyのロータ1のアキシャル方向回転速度ωdと同一回転速度で回転する成分に対応する。
【0058】
この低域通過フィルタ出力Flpfx、Flpfyは、積分器24において符号反転した後に積分され、ラジアル方向並進変位指令の回転座標系表現Xcr、Ycrとして出力される。
【0059】
この積分器出力Xcr、Ycrは固定座標変換器25に入力され、次の式(2)に示すように進相量αを重畳したうえで固定座標系表現に変換され、軸受制御系10に対するラジアル方向並進変位指令Xc、Ycとして出力される。
【0060】
Xc=Xcr・cos(ωd・t+α)-Ycr・sin(ωd・t+α) (2-1)
Yc=Xcr・sin(ωd・t+α)+Ycr・cos(ωd・t+α) (2-2)
【0061】
このとき、擾乱周波数ωdが軸受制御系10の位置制御帯域内にあり、周波数ωdにおける軸受制御系10の位置制御系閉ループ位相特性がほぼ零と見なせる理想的な場合においては、進相量αを零とすることができる。
【0062】
擾乱周波数ωdは、回転座標系の回転速度(ロータ1のアキシャル方向回転速度)ωdを、周波数表示したものである。
【0063】
一方、周波数ωdの上昇に伴い、軸受制御系10の位置制御系閉ループ位相特性が遅れを持つ場合は、固定座標変換器25において当該位相遅れを補償する進相量αを重畳しなければ、磁気軸受制御装置が不安定化することが知られている。
【0064】
また、周波数ωdを磁気軸受装置または設置筐体60における共振周波数の近傍とした場合、進相量αの最適値が大きく変動し、加えて設置筐体60に対する磁気軸受装置の取付剛性によっても進相量αの最適値が変化するため、従来は磁気軸受装置を筐体へ設置する度に、擾乱周波数ωdに応じた進相量αの最適調整を行う必要があった。
【0065】
ここで、進相量αと低域通過フィルタ出力Flpfx、Flpfyが回転座標系上で描くリサージュ波形との関係として、
・進相量α<最適値 → リサージュ波形は回転座標系上を回転座標系と同一方向に回転
・進相量α=最適値 → リサージュ波形は回転座標系上を回転せずに零値に収束
・進相量α>最適値 → リサージュ波形は回転座標系上を回転座標系と反対方向に回転となることが知られており、上記進相量αの最適調整においては、任意の擾乱周波数ωdにおいて、低域通過フィルタ出力Flpfx、Flpfyが回転座標系上で描くリサージュ波形が回転せずに零値に収束するような値に設定することにより、サーボ共振周波数を含めた全周波数域におけるラジアル方向擾乱力Fdx、Fdyの低減が可能となる。
【0066】
しかしながら、一般に上記進相量αの最適調整には多くの時間を必要とするため、この実施の形態1の磁気軸受制御装置では、更に最適進相量推定器50を設け、低域通過フィルタ23の出力Flpfx、Flpfyに基づいて、進相量αの最適値を自動的に導出するようにしている。
【0067】
最適進相量推定器50では、次の式(3)で与えられる低域通過フィルタ出力Flpfx、Flpfyの複素表現Flpfに対して、回転角速度変換器51において、その偏角回転角速度d∠Flpf/dtを算出する。
【0068】
Flpf=Flpfx+j・Flpfy (3)
【0069】
この偏角回転角速度d∠Flpf/dtは重み付き積分器52に入力され、低域通過フィルタ出力Flpfの絶対値の2乗|Flpf|で重み付けしたゲインで積分した信号を、固定座標変換器25において重畳する進相量αとして出力する。このとき、重み付き積分器52の伝達関数は、所定の積分ゲインをKIとして次の式(4)で与えられる。
【0070】
|Flpf|KI/s (4)
【0071】
上記構成により、進相量αが最適値より小さく、低域通過フィルタ出力Flpfx、Flpfyのリサージュ波形が回転座標系と同一方向に回転する場合は、偏角回転角速度がd∠Flpf/dt>0となるために進相量αが増加し、進相量αが最適値より大きく、低域通過フィルタ出力Flpfx、Flpfyのリサージュ波形が回転座標系と反対方向に回転する場合は、偏角回転角速度がd∠Flpf/dt<0となるために進相量αが減少する。
【0072】
また、進相量αが最適値と等しく、低域通過フィルタ出力Flpfx、Flpfyのリサージュ波形が回転せずに零値に収束する場合は、偏角回転角速度がd∠Flpf/dt=0となって進相量αが一定となるため、結果として重み付き積分器52から出力される進相量αは自動的に最適値に収束する。
【0073】
ここで、重み付き積分器52では、積分ゲインを低域通過フィルタ出力Flpfの絶対値の2乗|Flpf|で重み付けしているため、ラジアル方向擾乱力Fdx、Fdyにおける周波数ωd成分の低減によって、低域通過フィルタ出力の絶対値|Flpf|が減少した場合には、式(4)における積分ゲインが低下し、重み付き積分器52が出力する進相量αの変動が抑制されて、磁気軸受制御装置としてより安定な動作が可能となる。
【0074】
一方、図5に示すように、この実施の形態1の磁気軸受制御装置では、ラジアル方向擾乱力計測器21を磁気軸受手段11の近傍に配置している。このとき、ラジアル方向擾乱力計測器21の出力は、磁気軸受が発生するラジアル方向擾乱力に対応するため、この実施の形態1の磁気軸受制御装置では、磁気軸受が発生するラジアル方向擾乱力の周波数ωd成分を低減する。
【0075】
以上のように、この実施の形態1の磁気軸受制御装置によれば、磁気軸受制御装置の内部変数、具体的には低域通過フィルタ23の出力に基づいて、固定座標変換器25において重畳する進相量αの最適値が自動的に導出されるので、磁気軸受装置及び設置筐体の機械特性、並びに設置筐体への磁気軸受装置の取付剛性によらず、従来の磁気軸受装置で必要となったラジアル方向並進変位指令制御系20における進相量αの事前調整作業の一切を不要とすることができるという効果が得られる。
【0076】
また、この実施の形態1の磁気軸受制御装置によれば、低域通過フィルタ23における出力の絶対値の2乗で重み付けしたゲインによって、回転角速度変換器51の出力を積分しているので、所望の擾乱成分の低減に伴って重み付き積分器52における積分ゲインが低下し、重み付き積分器52が出力する進相量αの変動を抑制することができるため、磁気軸受制御装置の動作をより安定化することができるという効果が得られる。
【0077】
更に、この実施の形態1の磁気軸受制御装置によれば、ラジアル方向擾乱力計測器21を磁気軸受手段11の近傍に配置しているため、磁気軸受が発生するラジアル方向擾乱力の所定成分、具体的には回転座標変換器22における回転座標系回転速度ωdと同一回転速度で回転する成分を低減することができるという効果が得られる。
【0078】
次に、上述した磁気軸受制御装置の実施の形態2及び3を、図面を参照しながら以下に説明する。他の実施形態について特に説明しない点については、上述の実施の形態1に関して詳述した説明が適宜適用される。
【0079】
(実施の形態2)
【0080】
図6は、この発明の実施の形態2による磁気軸受制御装置におけるラジアル方向並進変位指令制御系、アキシャル方向並進変位指令制御系、並びに最適進相量推定器の構成を示すブロック図である。
【0081】
図6に示すように、ラジアル方向並進変位指令制御系20はラジアル方向擾乱力計測器21、回転座標変換器22、低域通過フィルタ23、積分器24、固定座標変換器25を備えており、ラジアル方向擾乱力Fdx、Fdyから、当該擾乱力における所定の回転速度ωdと同一回転速度で回転する成分を低減するラジアル方向並進変位指令Xc、Ycを算出して軸受制御系10に対して出力する。
【0082】
アキシャル方向並進変位指令制御系30はアキシャル方向擾乱力計測器31、回転座標変換器32、低域通過フィルタ33、積分器34、固定座標変換器35を備えており、アキシャル方向擾乱力Fdzから、当該擾乱力における回転速度ωdと同一回転速度で回転する成分を低減するアキシャル方向並進変位指令Zcを算出して軸受制御系10に対して出力する。
【0083】
また、最適進相量推定器50は回転角速度変換器51、重み付き積分器52を備えており、低域通過フィルタ23の出力Flpfx、Flpfy、及び低域通過フィルタ33の出力Flpfzx、Flpfzyに基づいて、固定座標変換器25において重畳する進相量α、及び固定座標変換器35において重畳する進相量βを算出して出力する。
【0084】
ラジアル方向並進変位指令制御系20のラジアル方向擾乱力計測器21は、ラジアル方向擾乱力が生じる位置におけるX軸方向擾乱力Fdx、Y軸方向擾乱力Fdyを計測して出力する。
【0085】
回転座標変換器22は、回転速度ωdに基づいて、ラジアル方向擾乱力計測器21から出力されるラジアル方向擾乱力Fdx、Fdyを、固定座標系をZ軸回りにωdの回転速度で回転する回転座標系表現Fdxr、Fdyrに変換して出力する。回転座標変換器22は、図示しない上位制御装置から、回転速度ωdを入力する。
【0086】
低域通過フィルタ23は、通過周波数帯域を大略0.1~1Hz程度とすることで、ラジアル方向擾乱力Fdx、Fdyの回転座標系表現Fdxr、Fdyrから、低周波成分Flpfx、Flpfyを抽出する。なお、当該出力Flpfx、Flpfyは、固定座標系表現におけるラジアル方向擾乱力Fdx、Fdyにおける所定の回転速度ωdと同一回転速度で回転する成分に対応する。
【0087】
積分器24は、低域通過フィルタ23の出力Flpfx、Flpfyを符号反転させた後に積分した信号を、ラジアル方向並進変位指令の回転座標系表現Xcr、Ycrとして出力する。
【0088】
固定座標変換器25は、回転速度ωdに基づいて、積分器24の出力であるラジアル方向並進変位指令の回転座標系表現Xcr、Ycrを、進相量αを重畳したうえで固定座標系表現に変換して、軸受制御系10に対するラジアル方向並進変位指令Xc、Ycとして出力する。固定座標変換器25は、図示しない上位制御装置から、回転速度ωdを入力する。
【0089】
アキシャル方向並進変位指令制御系30のアキシャル方向擾乱力計測器31は、アキシャル方向擾乱力が生じる位置におけるZ軸方向擾乱力Fdzを計測して出力する。
【0090】
アキシャル方向擾乱力計測器31は、例えば、力センサ、加速度計等の公知の技術を用いて形成される。
【0091】
回転座標変換器32は、回転速度ωdに基づいて、アキシャル方向擾乱力計測器31から出力されるアキシャル方向擾乱力FdzをX軸方向成分とし、零値をY軸方向成分として、固定座標系をZ軸回りにωdの回転速度で回転する回転座標系表現Fdzxr、Fdzyrに変換して出力する。回転座標変換器32は、図示しない上位制御装置から、回転速度ωdを入力する。
【0092】
低域通過フィルタ33は、通過周波数帯域を大略0.1~1Hz程度とすることで、アキシャル方向擾乱力Fdzの回転座標系表現Fdzxr、Fdzyrから、低周波成分Flpfzx、Flpfzyを抽出する。なお、当該出力Flpfzxは、固定座標系表現におけるアキシャル方向擾乱力Fdzにおける所定の回転速度ωdと同一回転速度で回転する成分に対応する。
【0093】
積分器34は、低域通過フィルタ33の出力Flpfzx、Flpfzyを符号反転させた後に積分した信号を、アキシャル方向並進変位指令の回転座標系表現Zxcr、Zycrとして出力する。
【0094】
固定座標変換器35は、回転速度ωdに基づいて、積分器34の出力であるアキシャル方向並進変位指令の回転座標系表現Zxcr、Zycrを、進相量βを重畳したうえで固定座標系表現に変換し、当該変換信号のX軸方向成分を、軸受制御系10に対するアキシャル方向並進変位指令Zcとして出力する。固定座標変換器35は、図示しない上位制御装置から、回転速度ωdを入力する。
【0095】
なお実施の形態2では、軸受制御系10に対するラジアル方向回転変位指令θxc、θycを、常に零値としている。
【0096】
回転角速度変換器51は、低域通過フィルタ23の出力Flpfx、Flpfy、及び低域通過フィルタ33の出力Flpfzx、Flpfzyに基づいて、当該出力の偏角回転角速度d∠Flpf/dt、及びd∠Flpfz/dtを算出して出力する。
【0097】
重み付き積分器52は、それぞれ低域通過フィルタ23の出力Flpfx、Flpfy、及び低域通過フィルタ33の出力Flpfzx、Flpfzyの絶対値の2乗で重み付けしたゲインによって、回転角速度変換器51の出力である偏角回転角速度d∠Flpf/dt、及びd∠Flpfz/dtを積分した信号を、固定座標変換器25において重畳する進相量α、及び固定座標変換器35において重畳する進相量βとして出力する。
【0098】
図6に示す例では、ラジアル方向並進変位指令制御系20及びアキシャル方向並進変位指令制御系30に対して、共通の最適進相量推定器50が配置されているが、ラジアル方向並進変位指令制御系20及びアキシャル方向並進変位指令制御系30それぞれに対して、個別に最適進相量推定器を配置してもよい。
【0099】
図7は、この発明の実施の形態2による磁気軸受制御装置において、重み付き積分器で与える初期値の構成を示すグラフである。
【0100】
図7に示すように、この発明の実施の形態2による磁気軸受制御装置では、重み付き積分器52で算出する進相量α、及び進相量βに対して、回転座標変換器22、および回転座標変換器32における回転座標系の回転速度ωdに応じて変化する所定の初期値α、及びβを与えている。
【0101】
図8は、この発明の実施の形態2による磁気軸受制御装置における機器配置を示す構成図である。
【0102】
図8に示すように、磁気軸受手段11は、設置筐体60に対して所定の取付剛性で固定されている。一方、設置筐体60には、回転速度ωd成分を有する振動を発生する他の設置機器61も固定されており、ラジアル方向擾乱力計測器21、およびアキシャル方向擾乱力計測器31は、設置筐体60に対して設置機器61の近傍に配置されている。
【0103】
ラジアル方向擾乱力計測器21及びアキシャル方向擾乱力計測器31は、回転速度ωd成分を有する振動を発生する他の設置機器61が発生するラジアル方向擾乱力又はアキシャル方向擾乱力を計測する観点から、他の設置機器61に近接して配置されることが好ましい。例えば、ラジアル方向擾乱力計測器21及びアキシャル方向擾乱力計測器31は、他の設置機器61に対して、30cm以内、特に、10cm以内に配置されることが、上述した観点から好ましい。回転座標変換器22は、ラジアル方向擾乱力計測器21の出力を、固定座標系をZ軸回りに、他の設置機器61が発生する振動が有するあらゆる周波数に対応する回転速度で回転させた回転座標系表現に変換することが好ましい。また、回転座標変換器32は、アキシャル方向擾乱力計測器31の出力を、固定座標系をZ軸回りに、他の設置機器61が発生する振動が有するあらゆる周波数に対応する回転速度で回転させた回転座標系表現に変換することが好ましい。
【0104】
ラジアル方向擾乱力計測器21及びアキシャル方向擾乱力計測器31は、磁気軸受手段11の近傍に配置されてもよい。この場合、回転座標変換器22は、ラジアル方向擾乱力計測器21の出力を、固定座標系をZ軸回りに、磁気軸受手段11が発生する振動が有するあらゆる周波数に対応する回転速度で回転させた回転座標系表現に変換することが好ましい。また、回転座標変換器32は、アキシャル方向擾乱力計測器31の出力を、固定座標系をZ軸回りに、磁気軸受手段11が発生する振動が有するあらゆる周波数に対応する回転速度で回転させた回転座標系表現に変換することが好ましい。
【0105】
なお、この発明の実施の形態2による磁気軸受制御装置における軸受制御系10の構成は、実施の形態1の図3と同一である。
【0106】
次に、磁気軸受制御装置の動作について説明する。
【0107】
この実施の形態2の磁気軸受制御装置では、図3に示す軸受制御系10に対して、図6に示すようにラジアル方向並進変位指令制御系20、及びアキシャル方向並進変位指令制御系30を設け、ラジアル方向擾乱力計測器21が計測するラジアル方向擾乱力Fdx、Fdy、およびアキシャル方向擾乱力計測器31が計測するアキシャル方向擾乱力Fdzから、当該擾乱力における回転速度ωdと同一回転速度で回転する成分を低減するようなラジアル方向並進変位指令Xc、Yc、及びアキシャル方向並進変位指令Zcを生成している。
【0108】
ラジアル方向並進変位指令制御系20の動作は実施の形態1と同一である。
【0109】
アキシャル方向並進変位指令制御系30では、アキシャル方向擾乱力計測器31によって、アキシャル方向擾乱力が生じている位置におけるZ軸方向擾乱力Fdzを計測する。当該擾乱力は回転座標変換器32に入力され、アキシャル方向擾乱力FdzをX軸方向成分とし、零値をY軸方向成分として、次の式(5)によって固定座標系をZ軸回りにωdの回転速度で回転させた回転座標系表現Fdzxr、Fdzyrに変換する。
【0110】
Fdzxr=Fdz・cos(ωd・t)+0・sin(ωd・t) (5-1)
Fdzyr=-Fdz・sin(ωd・t)+0・cos(ωd・t) (5-2)
【0111】
ここで、tは時間を表す。
【0112】
このアキシャル方向擾乱力の回転座標系表現Fdzxr、Fdzyrは、通過周波数帯域を大略0.1~1Hz程度に設定した低域通過フィルタ33に入力され、低周波成分Flpfzx、Flpfzyが抽出される。なお、当該出力Flpfzxは、固定座標系表現におけるアキシャル方向擾乱力Fdzのωd成分に対応する。
【0113】
この低域通過フィルタ出力Flpfzx、Flpfzyは、積分器34において符号反転した後に積分され、アキシャル方向並進変位指令の回転座標系表現Zxcr、Zycrとして出力される。
【0114】
この積分器出力Zxcr、Zycrは固定座標変換器35に入力され、次の式(6)に示すように進相量βを重畳したうえで固定座標系表現に変換して、当該変換信号のX軸方向成分Zxcを、軸受制御系10に対するアキシャル方向並進変位指令Zcとして出力する。
【0115】
Zxc=Zxcr・cos(ωd・t+β)-Zycr・sin(ωd・t+β) (6-1)
Zyc=Zxcr・sin(ωd・t+β)+Zycr・cos(ωd・t+β) (6-2)
【0116】
実施の形態1と同様、擾乱周波数ωdにおいて、軸受制御系10の位置制御系閉ループ位相特性が遅れを持つ場合は、固定座標変換器25、及び固定座標変換器35において、それぞれ当該位相遅れを補償する進相量α、および進相量βを重畳しなければならない。また、実施の形態1と同様、擾乱周波数ωdを磁気軸受装置または設置筐体60における共振周波数の近傍とした場合、進相量α、及び進相量βの最適値が大きく変動し、加えて設置筐体60に対する磁気軸受装置の取付剛性によっても進相量α、及び進相量βの最適値が変化するため、従来は磁気軸受装置を筐体へ設置する度に、擾乱周波数に応じた進相量α、及び進相量βの最適調整を行う必要があった。
【0117】
ここで、進相量αと低域通過フィルタ出力Flpfx、Flpfyが回転座標系上で描くリサージュ波形との関係、及び進相量βと低域通過フィルタ出力Flpfzx、Flpfzyが回転座標系上で描くリサージュ波形との関係は実施の形態1と同様であり、上記進相量α、及び進相量βの最適調整においては、任意の擾乱周波数ωdにおいて、低域通過フィルタFlpfx、Flpfy、及び低域通過フィルタFlpfzx、Flpfzyのリサージュ波形が回転せずに零値に収束するような値に設定することにより、サーボ共振周波数を含めた全周波数域におけるラジアル方向擾乱力Fdx、Fdy、及びアキシャル方向擾乱力Fdzの低減が可能となる。
【0118】
しかしながら、一般に上記進相量α、及び進相量βの最適調整には多くの時間を必要とするため、この実施の形態2の磁気軸受制御装置では、更に最適進相量推定器50を設け、それぞれ低域通過フィルタ23の出力Flpfx、Flpfy、及び低域通過フィルタ33の出力Flpfzx、Flpfzyに基づいて、進相量α、及び進相量βの最適値を自動的に導出するようにしている。
【0119】
最適進相量推定器50では、式(3)で与えられる低域通過フィルタ出力Flpfx、Flpfyの複素表現Flpf、及び次の式(7)で与えられる低域通過フィルタ出力Flpfzx、Flpfxyの複素表現Flpfzに対して、回転角速度変換器51において、その偏角回転角速度d∠Flpf/dt、及びd∠Flpfz/dtを算出する。
【0120】
Flpfz=Flpfzx+j・Flpfzy (7)
【0121】
この偏角回転角速度d∠Flpf/dtは重み付き積分器52に入力され、低域通過フィルタ出力Flpfの絶対値の2乗|Flpf|で重み付けしたゲインで積分した信号を、固定座標変換器25において重畳する進相量αとして出力する。このとき、重み付き積分器52の伝達関数は式(4)で与えられる。
【0122】
一方、偏角回転角速度d∠Flpfz/dtは重み付き積分器52に入力され、低域通過フィルタ出力Flpfzの絶対値の2乗|Flpfz|で重み付けしたゲインで積分した信号を、固定座標変換器35において重畳する進相量βとして出力する。このとき、重み付き積分器52の伝達関数は、次の式(8)で与えられる。
【0123】
|Flpfz|KI/s (8)
【0124】
上記構成により、進相量α、及びβが最適値より小さく、低域通過フィルタ出力Flpf、及びFlpfzが回転座標系と同一方向に回転する場合は、偏角回転角速度が正値となるために進相量α、及びβが増加し、進相量α、及びβが最適値より大きく、低域通過フィルタ出力Flpf、及びFlpfzが回転座標系と反対方向に回転する場合は、偏角回転角速度が負値となるために進相量α、及びβが減少する。
【0125】
また、進相量α、及びβが最適値と等しく、低域通過フィルタ出力Flpf、及びFlpfzが回転せずに零値に収束する場合は、偏角回転角速度が零値となって進相量α、及びβが一定となるため、結果として重み付き積分器52から出力される進相量は自動的に最適値に収束する。
【0126】
ここで、重み付き積分器52では、それぞれ積分ゲインを低域通過フィルタ出力Flpfの絶対値の2乗|Flpf|、及び低域通過フィルタ出力Flpfzの絶対値の2乗|Flpfz|で重み付けしているため、ラジアル方向擾乱力Fdx、Fdy、及びアキシャル方向擾乱力Fdzにおける周波数ωd成分の低減によって、それぞれ低域通過フィルタ出力の絶対値|Flpf|、及び|Flpfz|が減少した場合には、式(4)及び式(8)における積分ゲインが低下し、重み付き積分器52が出力する進相量α、及びβの変動が抑制されて、磁気軸受制御装置としてより安定な動作が可能となる。
【0127】
一方、図7に示すように、この実施の形態2の磁気軸受制御装置では、重み付き積分器52で算出する進相量α、及び進相量βに対して、擾乱周波数ωdに応じて変化する所定の初期値α、及びβを与えている。これにより、重み付き積分器52が出力する進相量α、及び進相量βの収束時間を短縮することができ、磁気軸受制御装置としてより安定な動作が可能となる。
【0128】
また図8に示すように、この実施の形態2の磁気軸受制御装置では、ラジアル方向擾乱力計測器21、及びアキシャル方向擾乱力計測器31を、他の設置機器61の近傍に配置している。このとき、ラジアル方向擾乱力計測器21、及びアキシャル方向擾乱力計測器31の出力は、(振動を低減したい)設置機器61が生じるラジアル方向擾乱力、及びアキシャル方向擾乱力に対応するため、当該振動の周波数ωd成分を相殺するような制振力を与えるアクティブ制振装置として、磁気軸受制御装置を機能させることができる。
【0129】
以上のように、この実施の形態2の磁気軸受制御装置によれば、磁気軸受制御装置の内部変数、具体的には低域通過フィルタ23、及び低域通過フィルタ33の出力に基づいて、固定座標変換器25において重畳する進相量α、及び固定座標変換器35において重畳する進相量βの最適値が自動的に導出されるので、磁気軸受装置及び設置筐体の機械特性、並びに設置筐体への磁気軸受装置の取付剛性によらず、従来の磁気軸受装置で必要となったラジアル方向並進変位指令制御系20における進相量α、及びアキシャル方向並進変位指令制御系30における進相量βの事前調整作業の一切を不要とすることができるという効果が得られる。
【0130】
また、この実施の形態2の磁気軸受制御装置によれば、低域通過フィルタ23、及び低域通過フィルタ33における出力の絶対値の2乗で重み付けしたゲインによって、回転角速度変換器51の各出力を積分しているので、所望の擾乱成分の低減に伴って重み付き積分器52における積分ゲインが低下し、重み付き積分器52が出力する進相量α、及び進相量βの変動を抑制することができるため、磁気軸受制御装置の動作をより安定化することができるという効果が得られる。
【0131】
更に、この実施の形態2の磁気軸受制御装置によれば、重み付き積分器52で算出する進相量α、及び進相量βに対して、擾乱周波数ωdに応じて変化する所定の初期値α、及びβを与えているため、進相量α、及び進相量βのフィードバック制御による収束時間を短縮することができ、磁気軸受制御装置の動作をより安定化することができるという効果が得られる。
【0132】
加えて、この実施の形態2の磁気軸受制御装置によれば、ラジアル方向擾乱力計測器21、及びアキシャル方向擾乱力計測器31を他の設置機器61の近傍に配置しているため、設置機器61が生じるラジアル方向擾乱力、及びアキシャル方向擾乱力の所定成分、具体的には回転座標変換器22、及び回転座標変換器32における回転座標系回転速度ωdに対応する成分を相殺するような制振力を与えるアクティブ制振装置として、磁気軸受制御装置を機能させることができるという効果が得られる。
【0133】
以上が、実施の形態2の説明である。
【0134】
(実施の形態3)
【0135】
図9は、この発明の実施の形態3による磁気軸受制御装置におけるラジアル方向回転変位指令制御系及び最適進相量推定器の構成を示すブロック図である。
【0136】
図9に示すように、ラジアル方向回転変位指令制御系40はラジアル方向擾乱モーメント計測器41、回転座標変換器42、低域通過フィルタ43、積分器44、固定座標変換器45を備えており、ラジアル方向擾乱モーメントNdx、Ndyから、当該擾乱におけるロータ1のアキシャル方向回転速度ωdと同一回転速度で回転する成分を低減するラジアル方向回転変位指令θxc、θycを算出して軸受制御系10に対して出力する。
【0137】
また、最適進相量推定器50は回転角速度変換器51、振幅制限器53、重み付き積分器52を備えており、低域通過フィルタ43の出力Nlpfx、Nlpfyに基づいて、固定座標変換器45において重畳する進相量γを算出して出力する。
【0138】
ラジアル方向回転変位指令制御系40のラジアル方向擾乱モーメント計測器41は、ラジアル方向擾乱モーメントが生じる位置におけるX軸方向擾乱モーメントNdx、Y軸方向擾乱モーメントNdyを計測して出力する。
【0139】
ラジアル方向擾乱モーメント計測器41は、例えば、トルクセンサ、角加速度計等の公知の技術を用いて形成される。
【0140】
回転座標変換器42は、ロータ1のアキシャル方向回転速度ωdに基づいて、ラジアル方向擾乱モーメント計測器41から出力されるラジアル方向擾乱モーメントNdx、Ndyを、固定座標系をZ軸回りにωdの回転速度で回転する回転座標系表現Ndxr、Ndyrに変換して出力する。回転座標変換器42は、図示しない上位制御装置から、回転速度ωdを入力する。
【0141】
低域通過フィルタ43は、通過周波数帯域を大略0.1~1Hz程度とすることで、ラジアル方向擾乱モーメントNdx、Ndyの回転座標系表現Ndxr、Ndyrから、低周波成分Nlpfx、Nlpfyを抽出する。なお、当該出力Nlpfx、Nlpfyは、固定座標系表現におけるラジアル方向擾乱モーメントNdx、Ndyにおけるロータ1のアキシャル方向回転速度ωdと同一回転速度で回転する成分に対応する。
【0142】
積分器44は、低域通過フィルタ43の出力Nlpfx、Nlpfyを、ロータ1のラジアル方向慣性モーメントがアキシャル方向慣性モーメントに比して大きい場合には符号反転させた後に積分し、ロータ1のアキシャル方向慣性モーメントがラジアル方向慣性モーメントに比して大きい場合には符号反転せずに積分した信号を、ラジアル方向回転変位指令の回転座標系表現θxcr、θycrとして出力する。ここで、ラジアル方向慣性モーメント及びアキシャル方向慣性モーメントは、予め定められたロータ1の物理的パラメータである。
【0143】
固定座標変換器45は、ロータ1のアキシャル方向回転速度ωdに基づいて、積分器44の出力であるラジアル方向回転変位指令の回転座標系表現θxcr、θycrを、進相量γを重畳したうえで固定座標系表現に変換して、軸受制御系10に対するラジアル方向回転変位指令θxc、θycとして出力する。固定座標変換器45は、図示しない上位制御装置から、回転速度ωdを入力する。
【0144】
なお実施の形態3では、軸受制御系10に対するラジアル方向並進変位指令Xc、Yc、及びアキシャル方向並進変位指令Zcを、常に零値としている。
【0145】
最適進相量推定器50の回転角速度変換器51は、低域通過フィルタ43の出力Nlpfx、Nlpfyに基づいて、当該出力の偏角回転角速度d∠Nlpf/dtを算出して出力する。
【0146】
振幅制限器53は、回転角速度変換器51の出力である偏角回転角速度d∠Nlpf/dtが所定値以内となるようにリミッタ処理を行って出力する。
【0147】
重み付き積分器52は、低域通過フィルタ43の出力Nlpfx、Nlpfyの絶対値の2乗で重み付けしたゲインによって、振幅制限器53の出力を積分した信号を、固定座標変換器45において重畳する進相量γとして出力する。
【0148】
図7は、この発明の実施の形態3による磁気軸受制御装置において、重み付き積分器で与える初期値の構成を示すグラフである。
【0149】
図7に示すように、この発明の実施の形態3による磁気軸受制御装置では、重み付き積分器52で算出する進相量γに対して、回転座標変換器42における回転座標系の回転速度ωdに応じて変化する所定の初期値γを与えている。
【0150】
図10は、この発明の実施の形態3による磁気軸受制御装置における機器配置を示す構成図である。
【0151】
図10に示すように、磁気軸受手段11は、設置筐体60に対して所定の取付剛性で固定されており、ラジアル方向擾乱モーメント計測器41は、設置筐体60に対して磁気軸受手段11の近傍に配置されている。なお設置筐体60には、一般に他の設置機器61も固定されている。
【0152】
ラジアル方向擾乱モーメント計測器41は、振動を発生する磁気軸受手段11が発生するラジアル方向擾乱力を計測する観点から、磁気軸受手段11に近接して配置されることが好ましい。例えば、ラジアル方向擾乱モーメント計測器41は、磁気軸受手段11に対して、30cm以内、特に、10cm以内に配置されることが、上述した観点から好ましい。回転座標変換器42は、ラジアル方向擾乱モーメント計測器41の出力を、固定座標系をZ軸回りに、磁気軸受手段11が発生する振動が有するあらゆる周波数に対応する回転速度で回転させた回転座標系表現に変換することが好ましい。
【0153】
ラジアル方向擾乱モーメント計測器41は、振動を発生する他の設置機器61の近傍に配置されてもよい。回転座標変換器42は、ラジアル方向擾乱モーメント計測器41の出力を、固定座標系をZ軸回りに、他の設置機器61が発生する振動が有するあらゆる周波数に対応する回転速度で回転させた回転座標系表現に変換することが好ましい。
【0154】
なお、この発明の実施の形態3による磁気軸受制御装置における軸受制御系10の構成は、実施の形態1の図3と同一である。
【0155】
次に、磁気軸受制御装置の動作について説明する。
【0156】
この実施の形態3の磁気軸受制御装置では、図3に示す軸受制御系10に対して、図9に示すようにラジアル方向回転変位指令制御系40を設け、ラジアル方向擾乱モーメント計測器41が計測するラジアル方向擾乱モーメントNdx、Ndyから、当該擾乱モーメントにおけるロータ1のアキシャル方向回転速度ωdと同一回転速度で回転する成分を低減するようなラジアル方向回転変位指令θxc、θycを生成している。
【0157】
ラジアル方向回転変位指令制御系40では、ラジアル方向擾乱モーメント計測器41によって、ラジアル方向擾乱力が生じている位置におけるX軸方向擾乱モーメントNdx、Y軸方向擾乱モーメントNdyを計測する。当該擾乱モーメントは回転座標変換器42に入力され、ラジアル方向擾乱モーメントNdx、Ndyを、次の式(9)によって固定座標系をZ軸回りにωdの回転速度で回転させた回転座標系表現Ndxr、Ndyrに変換する。
【0158】
Ndxr=Ndx・cos(ωd・t)+Ndy・sin(ωd・t) (9-1)
Ndyr=-Ndx・sin(ωd・t)+Ndy・cos(ωd・t) (9-2)
【0159】
ここで、tは時間を表す。
【0160】
このラジアル方向擾乱モーメントの回転座標系表現Ndxr、Ndyrは、通過周波数帯域を大略0.1~1Hz程度に設定した低域通過フィルタ43に入力され、低周波成分Nlpfx、Nlpfyが抽出される。なお、当該出力Nlpfx、Nlpfyは、固定座標系表現におけるラジアル方向擾乱モーメントNdx、Ndyのωd成分に対応する。この低域通過フィルタ出力Nlpfx、Nlpfyは、積分器44においてロータ1のラジアル方向慣性モーメントがアキシャル方向慣性モーメントに比して大きい場合には符号反転させた後に積分し、ロータ1のアキシャル方向慣性モーメントがラジアル方向慣性モーメントに比して大きい場合には符号反転せずに積分され、ラジアル方向回転変位指令の回転座標系表現θxcr、θycrとして出力される。
【0161】
この積分器出力θxcr、θycrは固定座標変換器45に入力され、次の式(10)に示すように進相量γを重畳したうえで固定座標系表現に変換され、軸受制御系10に対するラジアル方向回転変位指令θxc、θycとして出力される。
【0162】
θxc=θxcr・cos(ωd・t+γ)-θycr・sin(ωd・t+γ) (10-1)
θyc=θxcr・sin(ωd・t+γ)+θycr・cos(ωd・t+γ) (10-2)
【0163】
実施の形態1と同様、擾乱周波数ωdにおいて、軸受制御系10の位置制御系閉ループ位相特性が遅れを持つ場合は、固定座標変換器45において、当該位相遅れを補償する進相量γを重畳しなければならない。
【0164】
また、実施の形態1と同様、擾乱周波数ωdを磁気軸受装置または設置筐体60における共振周波数の近傍とした場合、進相量γの最適値が大きく変動し、加えて設置筐体60に対する磁気軸受装置の取付剛性によっても進相量γの最適値が変化するため、従来は磁気軸受装置を筐体へ設置する度に、擾乱周波数に応じた進相量γの最適調整を行う必要があった。
【0165】
ここで、進相量γと低域通過フィルタNlpfx、Nlpfyが回転座標系上で描くリサージュ波形との関係は実施の形態1と同様であり、上記進相量γの最適調整においては、任意の擾乱周波数ωdにおいて、低域通過フィルタ出力Nlpfx、Nlpfyのリサージュ波形が回転せずに零値に収束するような値に設定することにより、サーボ共振周波数を含めた全周波数域におけるラジアル方向擾乱モーメントNdx、Ndyの低減が可能となる。
【0166】
しかしながら、一般に上記進相量γの最適調整には多くの時間を必要とするため、この実施の形態3の磁気軸受制御装置では、更に最適進相量推定器50を設け、低域通過フィルタ43の出力Nlpfx、Nlpfyに基づいて、進相量γの最適値を自動的に導出するようにしている。
【0167】
最適進相量推定器50では、次の式(11)で与えられる低域通過フィルタ出力Nlpfx、Nlpfyの複素表現Nlpfに対して、回転角速度変換器51において、その偏角回転角速度d∠Nlpf/dtを算出する。
【0168】
Nlpf=Nlpfx+j・Nlpfy (11)
【0169】
この偏角回転角速度d∠Nlpf/dtは振幅制限器53に入力され、当該回転角速度が所定値以内となるようにリミッタ処理を行って出力する。
【0170】
振幅制限器53の出力は、重み付き積分器52に入力され、低域通過フィルタ出力Nlpfの絶対値の2乗|Nlpf|で重み付けしたゲインで積分した信号を、固定座標変換器45において重畳する進相量γとして出力する。このとき、重み付き積分器52の伝達関数は、次の式(12)で与えられる。
【0171】
|Nlpf|KI/s (12)
【0172】
上記構成により、進相量γが最適値より小さく、低域通過フィルタ出力Nlpfが回転座標系と同一方向に回転する場合は、偏角回転角速度がd∠Nlpf/dt>0となるために進相量γが増加し、進相量γが最適値より大きく、低域通過フィルタ出力Nlpfが回転座標系と反対方向に回転する場合は、偏角回転角速度がd∠Nlpf/dt<0となるために進相量γが減少する。
【0173】
また、進相量γが最適値と等しく、低域通過フィルタ出力Nlpfが回転せずに零値に収束する場合は、偏角回転角速度がd∠Nlpf/dt=0となって進相量γが一定となるため、結果として重み付き積分器52から出力される進相量γは自動的に最適値に収束する。
【0174】
ここで、重み付き積分器52では、積分ゲインを低域通過フィルタ出力Nlpfの絶対値の2乗|Nlpf|で重み付けしているため、ラジアル方向擾乱モーメントNdx、Ndyにおける周波数ωd成分の低減によって、低域通過フィルタ出力の絶対値|Nlpf|が減少した場合には、式(12)における積分ゲインが低下し、重み付き積分器52が出力する進相量γの変動が抑制されて、磁気軸受制御装置としてより安定な動作が可能となる。
【0175】
一方、図7に示すように、この実施の形態3の磁気軸受制御装置では、重み付き積分器52で算出する進相量γに対して、擾乱周波数ωdに応じて変化する所定の初期値γ0を与えている。これにより、重み付き積分器52が出力する進相量γのフィードバック制御による収束時間を短縮することができ、磁気軸受制御装置としてより安定な動作が可能となる。
【0176】
また図10に示すように、この実施の形態3の磁気軸受制御装置では、ラジアル方向擾乱モーメント計測器41を磁気軸受手段11の近傍に配置している。このとき、ラジアル方向擾乱モーメント計測器41の出力は、磁気軸受が発生するラジアル方向擾乱モーメントに対応するため、この実施の形態3の磁気軸受制御装置では、磁気軸受が発生するラジアル方向擾乱モーメントの周波数ωd成分を低減する。
【0177】
以上のように、この実施の形態3の磁気軸受制御装置によれば、磁気軸受制御装置の内部変数、具体的には低域通過フィルタ43の出力に基づいて、固定座標変換器45において重畳する進相量γの最適値が自動的に導出されるので、磁気軸受装置及び設置筐体の機械特性、並びに設置筐体への磁気軸受装置の取付剛性によらず、従来の磁気軸受装置で必要となったラジアル方向回転変位指令制御系40における進相量γの事前調整作業の一切を不要とすることができるという効果が得られる。
【0178】
また、この実施の形態3の磁気軸受制御装置によれば、低域通過フィルタ43における出力の絶対値の2乗で重み付けしたゲインによって、回転角速度変換器51の出力を積分しているので、所望の擾乱成分の低減に伴って重み付き積分器52における積分ゲインが低下し、重み付き積分器52が出力する進相量γの変動を抑制することができるため、磁気軸受制御装置の動作をより安定化することができるという効果が得られる。
【0179】
更に、この実施の形態3の磁気軸受制御装置によれば、重み付き積分器52で算出する進相量γに対して、擾乱周波数ωdに応じて変化する所定の初期値γを与えているため、進相量γの収束時間を短縮することができ、磁気軸受制御装置の動作をより安定化することができるという効果が得られる。
【0180】
また、この実施の形態3の磁気軸受制御装置によれば、重み付き積分器52に入力する偏角回転角速度d∠Nlpf/dtが所定値以内となるように、振幅制限器53によってリミッタ処理を行っており、低域通過フィルタ出力Nlpfが大きく変動し、したがって偏角回転角速度d∠Nlpf/dtが大きく変動した場合でも、重み付き積分器52が出力する進相量γの変動を抑制することができるため、磁気軸受制御装置の動作をより安定化することができるという効果が得られる。
【0181】
加えて、この実施の形態3の磁気軸受制御装置によれば、ラジアル方向擾乱モーメント計測器41を磁気軸受手段11の近傍に配置しているため、磁気軸受が発生するラジアル方向擾乱モーメントの所定成分、具体的には回転座標変換器42における回転座標系回転速度ωdと同一回転速度で回転する成分を低減することができるという効果が得られる。
【0182】
本発明では、上述した実施の形態の磁気軸受制御装置は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更が可能である。また、一の実施の形態が有する構成要件は、他の実施の形態にも適宜適用することができる。
【符号の説明】
【0183】
1 ロータ、2 電磁石、3 変位検出手段、
10 軸受制御系、11 磁気軸受手段、12 ロータ変位演算器、
13 制御指令演算器、14 ギャップ長演算器、15 電流指令演算器、
20 ラジアル方向並進変位指令制御系、21 ラジアル方向擾乱力計測器、
22 回転座標変換器、23 低域通過フィルタ、24 積分器、
25 固定座標変換器、
30 アキシャル方向並進変位指令制御系、31 アキシャル方向擾乱力計測器、
32 回転座標変換器、33 低域通過フィルタ、34 積分器、
35 固定座標変換器、
40 ラジアル方向回転変位指令制御系、41 ラジアル方向擾乱モーメント計測器、
42 回転座標変換器、43 低域通過フィルタ、44 積分器、
45 固定座標変換器、
50 最適進相量推定器、51 回転角速度変換器、52 重み付き積分器、
53 振幅制限器、
60 設置筐体、61 設置機器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10