(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-08
(45)【発行日】2022-04-18
(54)【発明の名称】磁気共鳴イメージング装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20220411BHJP
G01N 24/08 20060101ALI20220411BHJP
【FI】
A61B5/055 311
G01N24/08 520Y
(21)【出願番号】P 2017124487
(22)【出願日】2017-06-26
【審査請求日】2020-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【氏名又は名称】鵜飼 健
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 佳奈子
(72)【発明者】
【氏名】武口 智行
【審査官】永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-046354(JP,A)
【文献】特表2013-521955(JP,A)
【文献】国際公開第2016/058876(WO,A2)
【文献】特開2010-131421(JP,A)
【文献】国際公開第2011/090089(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
G01N 24/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
k空間における複数のラジアル方向に沿った複数のスポーク各々において、磁気共鳴信号を収集する収集部を具備し、
前記収集部は、前記複数のスポークの総数より少ないN(前記Nは2以上の自然数)本のスポーク各々において磁気共鳴信号を収集した後、前記N本のスポークにおいて隣接するスポーク間の角度を維持して前記N本のスポークを回転させた回転後の前記N本のスポーク各々において磁気共鳴信号を収集する、
磁気共鳴イメージング装置
であって、
前記k空間において前記角度が等間隔になるように前記N本のスポークを設定する設定部をさらに備え、
前記設定部は、前記Nのべき乗で前記等間隔となる再帰的な分割を360°に対して実行することにより、前記k空間において前記N本のスポークの回転角度を設定し、
前記総数と前記Nとに基づいて、前記再帰的な分割として、バランス木であって前記Nの多分木である木構造を生成し、
前記木構造における最下層の葉ノードの各々に対して、互いに異なる自然数と、前記k空間において互いに異なるスポークの前記角度とを割り当てる、
磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
k空間における複数のラジアル方向に沿った複数のスポーク各々において、磁気共鳴信号を収集する収集部を具備し、
前記収集部は、前記複数のスポークの総数より少ないN(前記Nは2以上の自然数)本のスポーク各々において磁気共鳴信号を収集した後、前記N本のスポークにおいて隣接するスポーク間の角度を維持して前記N本のスポークを回転させた回転後の前記N本のスポーク各々において磁気共鳴信号を収集する、
磁気共鳴イメージング装置
であって、
前記収集部は、前記N本のスポークをランダムに回転させる、
磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
k空間におけるラジアル方向に沿った複数のスポークを設定する設定部であって、前記複数のスポークの総数と前記総数よりも少ないN(前記Nは2以上の自然数)とに基づくN分木の再帰木構造に従い前記複数のスポーク各々の角度を等間隔で割り当てる、設定部と、
前記複数のスポーク各々において、磁気共鳴信号を収集する収集部を具備し、
前記収集部は、前記
N本のスポーク各々において磁気共鳴信号を収集した後、前記N本のスポークにおいて隣接するスポーク間の角度を維持して前記N本のスポークを回転させた回転後の前記N本のスポーク各々において磁気共鳴信号を収集する、
磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
前記Nは、前記2以上の自然数のうち、奇数である、
請求項
1乃至3の何れか一項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
前記Nは、3である、
請求項
4に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
前記設定部は、前記Nのべき乗で前記等間隔となる再帰的な分割を360°に対して実行することにより、前記k空間において前記N本のスポークの回転角度を設定する、
請求項
3に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
前記収集部は、前記葉ノードに割り当てられた前記自然数をスキャン順序として、前記葉ノードに割り当てられた前記角度に対応するスポークにおいて、前記磁気共鳴信号を収集する、
請求項
1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
前記設定部は、1つの磁気共鳴画像の再構成に用いられる前記スポークの本数と、前記葉ノードに属する前記自然数と前記角度とに基づいて、前記再構成に用いられる複数のスポークを特定し、
前記収集された磁気共鳴信号のうち前記特定されたスポークに対応する磁気共鳴信号を用いて、フレームごとに磁気共鳴画像を再構成する再構成部をさらに具備する、
請求項
1又は7記載の磁気共鳴イメージング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁気共鳴イメージング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁気共鳴イメージング装置における磁気共鳴信号の収集において、k空間におけるラジアルサンプリングに関するスポークを、黄金角(golden-angle)で変化させる収集方法がある。このとき、フィボナッチ数で連続したスポークを抽出すると、k空間において、スポークの偏りが少なくなる。
【0003】
しかしながら、上記収集方法では、隣接するスポークの間の角度は、均等になることはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2015/0077112号明細書
【非特許文献】
【0005】
【文献】S.Winkelmann et al., “An optimal radial profile order based on the golden ratio for time-resolved MRI,” IEEE Trans. Medical Imaging 26:68-76 (2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発明が解決しようとする課題は、磁気共鳴画像の画質を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置は、k空間における複数のラジアル方向に沿った複数のスポーク各々において、磁気共鳴信号を収集する収集部を有する。前記収集部は、前記複数のスポークの総数より少ないN(Nは2以上の自然数)本のスポーク各々において磁気共鳴信号を収集した後、前記N本のスポークにおいて隣接するスポーク間の角度を維持して前記N本のスポークを回転させた回転後の前記N本のスポーク各々において磁気共鳴信号を収集する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施形態に係るMRI装置の構成を示す図である。
【
図2】
図2は、本実施形態において、Nが3であって、スポークの総数が9本である場合の再帰木を示す図である。
【
図3】
図3は、本実施形態において、Nが3であって、スポークの総数が27本である場合の再帰木を示す図である。
【
図4】
図4は、本実施形態において、
図2における再帰木を用いたスキャン順序の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、本実施形態における動作の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、本実施形態において、k空間上における45本の全スポークの一例を示す図である。
【
図7】
図7は、本実施形態において、フレームごとに特定された再構成スポークの一例を示す図である。
【
図8】
図8は、本実施形態の変形例において、1フレームあたりのスポークの本数が9本である場合において、初期スポーク位置をフレームごとに回転させた一例を示す図である。
【
図9】
図9は、本実施形態の変形例において、ランダムに初期スポーク位置を回転させてラジアルスキャンを実行する一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を用いて、本実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置を詳細に説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0010】
図1を用いて、本実施形態に係る磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging:以下、MRIと呼ぶ)装置の構成について説明する。
図1は、本実施形態に係るMRI装置100の構成を示す図である。同図に示すように、本実施形態に係るMRI装置100は、静磁場磁石101と、傾斜磁場コイル103と、傾斜磁場電源105と、寝台107と、寝台制御回路109と、送信回路(送信部)113と、送信コイル115と、受信コイル117と、受信回路(受信部)119と、シーケンス制御回路(収集部)121と、バス123と、インタフェース回路(入力部)125と、ディスプレイ(表示部)127と、記憶装置(記憶部)129と、処理回路(処理部)131とを備える。なお、MRI装置100は、静磁場磁石101と傾斜磁場コイル103との間において中空の円筒形状のシムコイルを有していてもよい。
【0011】
静磁場磁石101は、中空の略円筒形状に形成された磁石である。なお、静磁場磁石101は、略円筒形状に限らず、開放型の形状で構成されてもよい。静磁場磁石101は、内部の空間に一様な静磁場を発生する。この静磁場磁石101としては、例えば、超伝導磁石等が使用される。
【0012】
傾斜磁場コイル103は、中空の円筒形状に形成されたコイルである。傾斜磁場コイル103は、静磁場磁石101の内側に配置される。傾斜磁場コイル103は、互いに直交するX、Y、Zの各軸に対応する3つのコイルが組み合わされて形成される。Z軸方向は、静磁場の方向と同方向であるとする。また、Y軸方向は、鉛直方向とし、X軸方向は、Z軸及びY軸に垂直な方向とする。傾斜磁場コイル103における3つのコイルは、傾斜磁場電源105から個別に電流供給を受けて、X、Y、Zの各軸に沿って磁場強度が変化する傾斜磁場を発生させる。
【0013】
傾斜磁場コイル103によって発生するX、Y、Z各軸の傾斜磁場は、例えば、スライス選択用傾斜磁場、位相エンコード用傾斜磁場および周波数エンコード用傾斜磁場(リードアウト傾斜磁場ともいう)にそれぞれ対応している。スライス選択用傾斜磁場は、任意に撮像断面を決めるために利用される。位相エンコード用傾斜磁場は、空間的位置に応じて磁気共鳴(Magnetic Resonance:以下、MRと呼ぶ)信号の位相を変化させるために利用される。周波数エンコード用傾斜磁場は、空間的位置に応じてMR信号の周波数を変化させるために利用される。
【0014】
傾斜磁場電源105は、シーケンス制御回路121の制御により、傾斜磁場コイル103に電流を供給する電源装置である。
【0015】
寝台107は、被検体Pが載置される天板1071を備えた装置である。寝台107は、寝台制御回路109による制御のもと、被検体Pが載置された天板1071を、ボア111内へ挿入する。通常、寝台107は、長手方向が静磁場磁石101の中心軸と平行になるように、本MRI装置100が設置された検査室内に設置される。
【0016】
寝台制御回路109は、寝台107を制御する回路であり、例えばプロセッサにより実現される。寝台制御回路109は、インタフェース回路125を介した操作者の指示により寝台107を駆動し、天板1071を長手方向および上下方向へ移動させる。
【0017】
送信回路113は、シーケンス制御回路121の制御により、ラーモア周波数に対応する高周波パルスを送信コイル115に供給する。
【0018】
送信コイル115は、傾斜磁場コイル103の内側に配置されたRF(Radio Frequency)コイルである。送信コイル115は、送信回路113から高周波パルス(RFパルス)の供給を受けて、高周波磁場に相当する送信RF波を発生する。送信コイルは、例えば、全身用コイル(whole body coil:WBコイル)である。WBコイルは、送受信コイルとして使用されてもよい。
【0019】
受信コイル117は、傾斜磁場コイル103の内側に配置されたRFコイルである。受信コイル117は、高周波磁場によって被検体Pから放射されるMR信号を受信する。受信コイル117は、受信したMR信号を受信回路119へ出力する。受信コイル117は、例えば、1以上、典型的には複数のコイルエレメントを有するコイルアレイである。なお、
図1において送信コイル115と受信コイル117とは別個のRFコイルとして記載されているが、送信コイル115と受信コイル117とは、一体化された送受信コイルとして実施されてもよい。送受信コイルは、例えば、被検体Pの撮像対象に対応し、頭部コイルのような局所的な送受信RFコイルである。
【0020】
受信回路119は、シーケンス制御回路121の制御により、受信コイル117から出力されたMR信号に基づいて、デジタル化されたMR信号を生成する。具体的には、受信回路119は、受信コイル117から出力されたMR信号に対して各種信号処理を施した後、各種信号処理が施されたデータに対してアナログ/デジタル(A/D(Analog to Digital))変換を実行する。受信回路は119は、AD変換されたデータに対して標本化(サンプリング)を実行する。これにより、受信回路119は、デジタルのMR信号(以下、MRデータと呼ぶ)を、シーケンス制御回路121に出力する。
【0021】
シーケンス制御回路121は、処理回路131から出力された撮像プロトコルに従って、傾斜磁場電源105、送信回路113及び受信回路119等を制御し、被検体Pに対する撮像を行う。撮像プロトコルは、検査に応じた各種パルスシーケンスを有する。撮像プロトコルには、傾斜磁場電源105により傾斜磁場コイル103に供給される電流の大きさ、傾斜磁場電源105により電流が傾斜磁場コイル103に供給されるタイミング、送信回路113により送信コイル115に供給されるRFパルスの大きさ、送信回路113により送信コイル115にRFパルスが供給されるタイミング、受信コイル117によりMR信号が受信されるタイミング等が定義されている。傾斜磁場電源105により傾斜磁場コイル103に供給される電流の大きさは、パルスシーケンスに応じたリードアウト傾斜磁場の波形に対応する。
【0022】
例えば、k空間における複数のラジアル方向に沿った複数のスポーク各々においてMR信号が収集されるパルスシーケンスによるラジアルスキャンが実行される場合、シーケンス制御回路121は、リードアウト傾斜磁場として位相エンコード用傾斜磁場と周波数エンコード用傾斜磁場とを同時に発生させるように傾斜磁場電源105を制御する。加えて、シーケンス制御回路121は、送信コイル115への高周波パルスの印加毎に、位相エンコード用傾斜磁場の強度と周波数エンコード用傾斜磁場の強度とを変化させるように、傾斜磁場電源105を制御する。シーケンス制御回路121は、リードアウト傾斜磁場の発生とともに、MR信号を受信するために受信回路119を制御する。シーケンス制御回路121は、受信回路119から出力されたMRデータを、リードアウト傾斜磁場の強度およびラジアル方向(k空間に充填される位置)とともに、処理回路131および記憶装置129に出力する。
【0023】
バス123は、インタフェース回路125と、ディスプレイ127と、記憶装置129と、処理回路131との間でデータを伝送させる伝送路である。バス123には、ネットワーク等を介して、各種生体信号計測器、外部記憶装置、各種モダリティなどが適宜接続されてもよい。
【0024】
インタフェース回路125は、操作者からの各種指示や情報入力を受け付ける回路である。インタフェース回路125は、例えば、マウス等のポインティングデバイス、あるいはキーボード等の入力デバイスに関する回路である。なお、インタフェース回路125は、マウス、キーボードなどの物理的な操作部品に関する回路に限定されない。例えば、本MRI装置100とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、受け取った電気信号を種々の回路へ出力するような電気信号の処理回路もインタフェース回路125の例に含まれる。
【0025】
ディスプレイ127は、処理回路131におけるシステム制御機能1311による制御のもとで、例えば、再構成機能1313により再構成された磁気共鳴画像(以下、MR画像と呼ぶ)、不図示の画像処理機能によりMR画像に対して画像処理を実行した画像等を表示する。ディスプレイ127は、例えば、CRTディスプレイや液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDディスプレイ、プラズマディスプレイ、又は当技術分野で知られている他の任意のディスプレイ、モニタ等の表示デバイスである。
【0026】
記憶装置129は、再構成機能1313を介してk空間に充填されたMRデータ、再構成機能1313により再構成された画像データ等を記憶する。記憶装置129は、各種撮像プロトコル、撮像プロトコルを規定する複数の撮像パラメータを含む撮像条件等を記憶する。記憶装置129は、処理回路131で実行される各種機能に対応するプログラムを記憶する。記憶装置129は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスクドライブ(hard disk drive)、ソリッドステートドライブ(solid state drive)、光ディスク等である。また、記憶装置129は、CD-ROMドライブやDVDドライブ、フラッシュメモリ等の可搬性記憶媒体との間で種々の情報を読み書きする駆動装置等であってもよい。
【0027】
処理回路131は、ハードウェア資源として図示していないプロセッサ、ROMやRAM等のメモリ等を有し、本MRI装置100を統括的に制御する。処理回路131は、システム制御機能1311、再構成機能1313、設定機能1315を有する。システム制御機能1311、再構成機能1313、設定機能1315にて行われる各種機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶装置129へ記憶されている。処理回路131は、これら各種機能に対応するプログラムを記憶装置129から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読みだした状態の処理回路131は、
図1の処理回路131内に示された複数の機能等を有することになる。
【0028】
なお、
図1においては単一の処理回路131にてこれら各種機能が実現されるものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路131を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。換言すると、上述のそれぞれの機能がプログラムとして構成され、1つの処理回路が各プログラムを実行する場合であってもよいし、特定の機能が専用の独立したプログラム実行回路に実装される場合であってもよい。なお、処理回路131が有するシステム制御機能1311、再構成機能1313、設定機能1315は、それぞれシステム制御部、再構成部、設定部の一例である。
【0029】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。
【0030】
プロセッサは、記憶装置129に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、記憶装置129にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、寝台制御回路109、送信回路113、受信回路119、シーケンス制御回路121等も同様に、上記プロセッサなどの電子回路により構成される。
【0031】
処理回路131は、システム制御機能1311により、MRI装置100を統括的に制御する。具体的には、処理回路131は、記憶装置129に記憶されているシステム制御プログラムを読み出してメモリ上に展開し、展開されたシステム制御プログラムに従って本MRI装置100における各種回路を制御する。例えば、処理回路131は、システム制御機能1311により、インタフェース回路125を介して操作者から入力される撮像条件に基づいて、撮像プロトコルを記憶装置129から読み出す。なお、処理回路131は、撮像条件に基づいて、撮像プロトコルを生成してもよい。処理回路131は、撮像プロトコルをシーケンス制御回路121に送信し、被検体Pに対する撮像を制御する。
【0032】
処理回路131は、再構成機能1313により、k空間のリードアウト方向(ラジアルスキャンの場合はラジアル方向)に沿ってMRデータを充填する。処理回路131は、k空間に充填されたMRデータに対してフーリエ変換を行うことにより、MR画像を再構成する。
【0033】
以上が本実施形態に係るMRI装置100の全体構成についての説明である。以下、ラジアルスキャンにおける複数のスポーク各々を設定する処理および、設定されたスポークを用いてラジアルスキャンを実行する処理等について説明する。
【0034】
処理回路131は、設定機能1315により、k空間において隣接するスポークの間の角度が等間隔となるように、N本のスポークを設定する。ここで、Nは、一例として、2以上の自然数であって、デフォルトとして設定される。Nが偶数の場合、スポーク間の角度を等間隔にする条件から、対向するスポークが発生するため、k空間上の収集効率の観点で、Nは奇数が好適である。さらに、2以上の奇数の中でも、N=3の場合、後述するように、スポーク収集におけるk空間上での1回転にかかる時間がもっとも短く、少ない本数でk空間分布がばらつきやすいという観点で好適である。
【0035】
具体的には、処理回路131は、設定機能1315により、Nのj乗(Nj)で等間隔となる再帰的な分割を360°に対して実行することで、k空間においてN本のスポークの回転角度を設定する。ここで、jは、Njがラジアルスキャンにおけるスポークの総数以上となる自然数のうち、最小の自然数である。具体的には、処理回路131は、360°に対する再帰的な分割の一例として、スポークの総数とNとに基づいて、バランス木であってNの多分木である木構造(以下、再帰木(リカーシブツリー(recursive tree))を生成する。スポークの総数とNとは、再帰木の生成に関するパラメータである。処理回路131は、生成された再帰木を記憶装置129に記憶させる。なお、360°に対する再帰的な分割は、再帰木に限定されない。
【0036】
再帰木の一例として、Nが3であって、ラジアルスキャンにおけるスポークの総数が9本である場合の再帰木について説明する。このとき、jは、2となる。
図2は、Nが3であって、スポークの総数が9本である場合の再帰木RT1を示す図である。
【0037】
処理回路131は、設定機能1315により、木構造における根ノードの下層に3本の枝を介して3個の親ノードを設定する。処理回路131は、設定された3個の親ノードに、1から3までの自然数(第1自然数と呼ぶ)を、3個の親ノードの左側から順に割り当てる。処理回路131は、設定された3個の親ノード各々の下層に、3本の枝を介して、3個の子ノードをそれぞれ設定する。設定された子ノードは、
図2に示す再帰木RT1の葉ノードに相当する。処理回路131は、分岐元が同一な3個の葉ノードに、枝を介してこれらの3個の葉ノードの上層に位置する親ノードの第1自然数と、1から2までの回数に亘って3を順次加算した2個の自然数とを、3個の葉ノードの左側からこれらの自然数の小さい順にそれぞれ割り当てる。葉ノードに割り当てられた自然数を、以下第2自然数と呼ぶ。処理回路131は、360°をスポークの総数で除算した除算値に1からNをそれぞれ乗じた複数の値を計算する。複数の値各々は、k空間において基準の軸に対するスポークの角度に相当する。処理回路131は、複数の葉ノード各々に、計算された複数の角度を、複数の葉ノードの左側から角度の小さい順に割り当てる。このような割り当てにより、
図2に示す再帰木RT1が生成される。
図2に示す再帰木RT1における複数の葉ノードに割り当てられた第2自然数は、ラジアルスキャンが実行されるスポークのスキャン順序に対応する。すなわち、処理回路131は、木構造における最下層の葉ノードの各々に対して、互いに異なる自然数(第2自然数、スキャン順序)と、前記k空間において互いに異なるスポークの角度と割り当てる。
【0038】
再帰木における子ノードの下層に、葉ノードとしての子ノードが再帰的に生成される場合について、
図3を用いて説明する。このとき、jは、3となる。
図3は、Nが3であって、スポークの総数が27本である場合の再帰木RT2を示す図である。
図3に示す子ノードに1から9までの自然数を割り当てるまでの処理は、
図2を用いた説明と同様なため、説明を省略する。
【0039】
処理回路131は、設定機能1315により、木構造における3個の子ノード各々の下層に、3本の枝を介して、3個の子ノードをそれぞれ設定する。設定された子ノードは、木構造における最下層の子ノードであって、
図3に示す再帰木RT2の葉ノードに相当する。処理回路131は、分岐元が同一な3個の葉ノードに、枝を介してこれら3個の葉ノードの上層に位置する親ノードの第1自然数と、1から2までの回数に亘って3の2乗を順次加算した2個の自然数とを、3個の葉ノードの左側から第2自然数の小さい順にそれぞれ割り当てる。処理回路131は、複数の葉ノード各々に、計算された複数の角度を、複数の葉ノードの左側から角度の小さい順に割り当てる。このような割り当てにより、
図3に示す再帰木RT2が生成される。
図3に示す再帰木RT2における複数の葉ノードに割り当てられた第2自然数は、ラジアルスキャンが実行されるスポークのスキャン順序を示している。
【0040】
上記再帰木の生成を一般化すると、処理回路131は、設定機能1315により、以下のような手順で再帰木を設定する。処理回路131は、木構造における根ノードの下層にN個の親ノードを設定する。処理回路131は、親ノード各々の下層に、N本の枝を介してN個の子ノードをそれぞれ設定する。処理回路131は、複数の子ノード各々の下層に、(j-2)回に亘って、枝を介して子ノードを再帰的に設定する。処理回路131は、親ノードに、1からNまでの第1自然数を小さい順にそれぞれ割り当てる。処理回路131は、親ノードから子ノードまでの枝の数がi(iは、j未満の自然数)であって枝の分岐元が同一なN個の子ノードに、枝を介してこれらN個の子ノードの上層に位置する親ノードの第1自然数と、1から(N-1)までの回数に亘ってNiを第1自然数に順次加算した(N-1)個の自然数とを、小さい順に第2自然数としてそれぞれ割り当てる。処理回路131は、k空間におけるスポークの角度として、360°をスポークの総数で除算した除算値に1からNをそれぞれ乗じた複数の値を計算する。処理回路131は、木構造における最下層の子ノードに相当する葉ノード各々に、計算された複数の角度を、複数の葉ノードの左側から角度の小さい順に割り当てる。なお、再帰木の生成は、上記手順に限定されず、例えば、処理回路131は、根ノードからNが3の場合で子ノードを生成し、次いでNが2の場合で子ノードを生成し、これらの子ノードの生成を再帰的に繰り返すことで、再帰木の木構造を生成してもよい。いずれの場合も、生成された木構造の葉ノードの数で等間隔となる再帰的な分割がなされる。
【0041】
また、再帰木は、スポークの総数とNとに対する第2自然数とスポークの角度との対応表(Look Up Table:以下、LUTと呼ぶ)として、記憶装置129に記憶されてもよい。また、検査時間(MR信号の収集時間)に対するスポークの総数の対応関係も、記憶装置129に記憶されてもよい。このとき、インタフェース回路125等を介した操作者の指示により、被検体Pに対する検査時間が入力されると、処理回路131は、入力された検査時間に応じてスポークの総数を決定する。スポークの総数の決定は、一例であり、上記記載に限定されない。例えば、スポークの総数は、インタフェース回路125を介した操作者の指示により入力されてもよい。次いで、処理回路131は、スポークの総数とLUTとに基づいて、スポーク各々のスキャン順序と、スポーク各々の角度とを設定する。処理回路131は、設定されたスキャン順序と設定されたスポークの角度とを、シーケンス制御回路121に出力する。なお、スポークの総数は検査時間に比例するため、LUTは、検査時間とNとに対する第2自然数とスポークの角度との対応表であってもよい。このとき、検査時間に応じてスポークの総数を決定する処理は不要となる。
【0042】
処理回路131は、設定機能1315により、1つのMR画像の再構成に用いられるスポークの本数と、再帰木における葉ノードに属する第2自然数とスポークの角度とに基づいて、1つのMR画像(1フレーム)の再構成に用いられる複数のスポーク(以下、再構成スポークと呼ぶ)を特定する。MR画像の再構成に用いられるスポークの本数は、複数のフレームに亘って同一であってもよいし、異なっていてもよい。複数のフレーム各々における再構成スポークは、インタフェース回路125を介した操作者の指示により、適宜設定、変更されてもよい。
【0043】
1つのMR画像の再構成に用いられるスポークの本数は、インタフェース回路125を介した操作者の指示により入力されてもよいし、記憶装置129に記憶されたデフォルト値であってもよい。デフォルト値は、例えば(j-1)より小さい自然数をNの指数とする値である。例えば、Nが3であってスポークの総数が45本である場合、記憶装置129は、デフォルト値として再構成スポークを9本として記憶する。
【0044】
具体的には、処理回路131は、設定機能1315により、入力されたスポークの本数またはデフォルト値と、再帰木とを用いて、1フレームに対応するk空間において、複数のスポークのうち隣接する2つのスポークの間隔が略等間隔となるように、再構成スポークを特定する。再構成スポークの特定は、再帰木におけるスキャン順序とスポークの角度とを用いたラジアルスキャンの実行前でもよいし、全スポークに対するMRデータの収集後であってもよい。
【0045】
シーケンス制御回路121は、複数のスポークの総数より少ないN本のスポーク各々においてMR信号を収集した後、隣接するスポーク間の角度を維持してN本のスポークを回転させた回転後のN本のスポーク各々において、MR信号を収集する。具体的には、シーケンス制御回路121は、再帰木における葉ノードに割り当てられた第2自然数をスキャン順序として、葉ノードに割り当てられた角度に対応するスポークにおいて、MR信号を収集するように、傾斜磁場電源105、送信回路113及び受信回路119等を制御する。すなわち、シーケンス制御回路121は、設定されたスキャン順序と設定されたスポークの角度とを用いて、ラジアルスキャンを実行する。
【0046】
図4は、
図2における再帰木RT1を用いたスキャン順序の一例を示す図である。
図4に示すように、3本スポークの2回転後まで、
図2に示す再帰木RT1の葉ノードにおける第2自然数の1乃至9の順序でスキャンが実行される。具体的には、まず、(360/9)×1の角度のスポークに沿ってスキャンが実行され、次いで、(360/9)×4の角度のスポークに沿ってスキャンが実行され、最後に(360/9)×7の角度のスポークに沿ってスキャンが実行される。次いで、3本のスポークは、再帰木RT1において第2自然数が4である葉ノードに割り当てられたスポークの角度分だけ回転される。3本のスポークの1回転後、(360/9)×2の角度のスポークに沿ってスキャンが実行され、次いで、(360/9)×5の角度のスポークに沿ってスキャンが実行され、最後に(360/9)×8の角度のスポークに沿ってスキャンが実行される。次いで、3本のスポークは、再帰木RT1において第2自然数が7である葉ノードに割り当てられたスポークの角度分だけ回転される。3本のスポークの2回転後、(360/9)×3の角度のスポークに沿ってスキャンが実行され、次いで、(360/9)×6の角度のスポークに沿ってスキャンが実行され、最後に(360/9)×9の角度のスポークに沿ってスキャンが実行される。
【0047】
なお、
図4に示す複数のスポーク各々は、k空間の中心付近からk空間の中心を経由してk空間の端部近傍まで記載されている。これは、傾斜磁場の立ち上がり期間に応じたMR信号の収集開始時点の遅れやMR信号の収集時間の短縮、エコー時間(TE)の短縮等のために、
図4に示す複数のスポーク各々に沿って、ラジアルスキャンが実行されることを示している。なお、本実施形態においては、
図4の示すスポークの経路長に限定されない。例えば、本実施形態におけるラジアルスキャンは、k空間の中心を通り、かつk空間の両端を結ぶ経路(trajectory)に沿ったスポークにおいて実行されてもよい
【0048】
処理回路131は、再構成機能1313により、収集されたMR信号のうち、設定機能1315により設定されたスポークに対応するMR信号を用いて、フレームごとにMR画像を再構成する。例えば、
図4において、1フレームあたりのスポークが3と設定された場合、処理回路131は、第2自然数が1乃至3各々に対応するMRデータを用いて、第1フレームの第1MR画像を再構成する。処理回路131は、第2自然数が4乃6各々に対応するMRデータを用いて、第2フレームの第3MR画像を再構成する。処理回路131は、第2自然数が7乃至9各々に対応するMRデータを用いて、第3フレームの第3MR画像を再構成する。
【0049】
(動作)
図5は、本実施形態における動作の処理手順の一例を示すフローチャートである。再帰木は、上述した手順により予め生成され、スポークの総数とNとに応じたLUTとして記憶装置129に記憶されているものとする。以下、説明を具体的にするために、Nは3であって、ラジアルスキャンにおけるスポークの総数は、45本であるものとする。このとき、再帰木は、
図3に示す最下層の子ノードの下層に葉ノードがさらに生成された、j=4であってN
j=81の木構造となる。
【0050】
(ステップSa1)
インタフェース回路125を介して被検体Pに対する検査時間が入力される。なお、検査時間は、放射線部門情報管理システム(Radiorogy Information System:RIS)、病院情報システム(Hospital Information System:HIS)等の本MRI装置100の外部から、例えば検査オーダーなどにより、ネットワークを介して本MRI装置100に入力されてもよい。検査時間が入力されると、検査時間に基づいてスポークの総数が決定される。なお、再帰木に対応するLUTが、検査時間に対する第2自然数とスポークの角度との対応表として記憶装置129に記憶されている場合、本ステップは、不要となる。
【0051】
(ステップSa2)
スポークの総数と再帰木に関するLUTとを用いて、スポーク各々に対するスキャン順序(第2自然数)とスポークの角度とが決定される。例えば、スポークの総数が45本のとき、j=4に対応する再帰木のLUTが記憶装置129から読み出される。読み出されたLUTとスポークの総数とに基づいて、45本のスポーク各々のスキャン順序と、45本のスポーク各々のk空間での角度とが決定される。なお、再帰木に対応するLUTが、検査時間に対する第2自然数とスポークの角度との対応表として記憶装置129に記憶されている場合、本ステップにおいて、検査時間に基づいて、スポーク各々に対するスキャン順序とスポークの角度とが決定される。
【0052】
(ステップSa3)
決定されたスポークのスキャン順序に従って、決定された角度で被検体Pがスキャンされることにより、MR信号がスポークごとに収集される。MR信号の収集およびMR画像の再構成において、パラレルイメージング(Parallel Imaging)が実施される場合、またはパラレルイメージングに加えて圧縮センシング(Compressed Sensing)が実施される場合、本ステップの前または本ステップの後において、複数のコイルエレメントの空間的な感度差を示す感度マップを得るためのスキャンが実行されてもよい。また、感度マップを得るためのスキャンを実行する代わりに、処理回路131は、再構成機能1313により、コイルエレメント毎にk空間に充填されたMRデータに対して、スポークに応じた不均一高速フーリエ変換(Non-Uniform Fast Fourier Transformation:NUFFT)を実行することで、コイルエレメント各々の感度マップを推定してもよい。
【0053】
図6は、k空間上における45本の全スポークの一例を示す図である。
図6における45本の全スポークは、再帰木に基づいて、後述するステップSa4における処理により、フレームごとに分割される。
【0054】
(ステップSa4)
操作者により入力されたスポークの本数(またはデフォルト値)と再帰木とに基づいて、再構成スポークが特定される。以下、MR画像の再構成に用いられるスポークの本数が、9本である場合について具体的に説明する。
図7は、フレームごとに特定された再構成スポークの一例を示す図である。
図7に示す第1フレームの再構成スポークは、葉ノードに第2自然数として割り当てられた1乃至9に対応する9本のスポークを有する。以下同様に、
図7に示す第2乃至第5フレームの再構成スポークは、葉ノードに第2自然数として割り当てられた10乃至18、19乃至27、28乃至36、37乃至45にそれぞれ対応する9本のスポークを有する。
【0055】
図7に示すように、第1乃至第5フレームにおけるk空間上での再構成スポークの位置は、再帰木において割り当てられた第2自然数とk空間におけるスポークの角度とにより、フレーム間において重複しないように設定される。加えて、第1乃至第5フレーム各々におけるk空間上での再構成スポークに含まれる9本のスポークのうち隣接する2つのスポークの間隔は、等間隔となる。
【0056】
なお、
図7は45本のスポークの総数に対して5つのフレームで9本づつの再構成スポークが特定された例を示しているが、再構成スポークの設定は、
図7に示すようなフレームごとに同一のスポーク数に限定されない。例えば、再構成されるMR画像の画質を向上させるために、処理回路131は、設定機能1315により、
図7に示す第1乃至第5フレームにおけるスポーク番号を任意に組み合わせて、一つのフレームに対する再構成スポークを特定してもよい。
【0057】
具体的には、処理回路131は、設定機能1315により、一つのフレームに対する再構成スポークとして
図7の第1、第2フレームにおけるスポーク番号1乃至18を組み合わせ、次のフレームの再構成スポークとして
図7の第2、第3フレームにおけるスポーク番号10乃至27を組み合わせ、さらに次のフレームの再構成スポークとして
図7の第3、第4フレームにおけるスポーク番号19乃至36を組み合わせ、最後のフレームの再構成スポークとして
図7の第4、第5フレームにおけるスポーク番号28乃至45を組み合わせてもよい。また、他の例として、処理回路131は、一つのフレームに対する再構成スポークとして
図7の第1乃至第3フレームにおけるスポーク番号1乃至27を組み合わせ、次のフレームの再構成スポークとして
図7の第2乃至第4フレームにおけるスポーク番号10乃至36を組み合わせ、最後のフレームの再構成スポークとして
図7の第3乃至第5フレームにおけるスポーク番号19乃至45を組み合わせてもよい。
【0058】
また、他の例として、処理回路131は、設定機能1315により、一つのフレームに対する再構成スポークとして
図7の第1乃至第3フレームにおけるスポーク番号1乃至27を組み合わせ、最後のフレームの再構成スポークとして
図7の第3乃至第5フレームにおけるスポーク番号19乃至45を組み合わせてもよい。また、他の例として、処理回路131は、一つのフレームに対する再構成スポークとして
図7の第1乃至第4フレームにおけるスポーク番号1乃至36を組み合わせ、最後のフレームの再構成スポークとして
図7の第2乃至第5フレームにおけるスポーク番号10乃至45を組み合わせてもよい。また、他の例として、時間分解能を維持して再構成されるMR画像の画質を順次向上させるために、処理回路131は、
図7における第2フレーム以降のフレームにおいて、前のフレーム番号における再構成スポークに含まれる複数のスポークを累積させて、再構成スポークを特定してもよい。また、処理回路131は、
図6に示すように、45本の全スポークを1つのフレームに対応する再構成スポークとして特定されてもよい。また、造影剤、心拍、呼吸等の影響による時間的変化に応じて、再構成スポークにおけるスポークの本数はフレームごとに変化させてもよい。たとえば、ラジアル収集時間(たとえば1分間)のうち、最初に可能な時間の息止めを実施した場合、第1フレームはスポーク番号1~9、第2フレームはスポーク番号10~18、とし、息止め終了時刻以降のフレームは、18フレームずつ使う、といったことも可能である。
【0059】
(ステップSa5)
ラジアルスキャンにより収集されたMR信号のうち特定されたスポーク(再構成スポーク)に対応するMR信号を用いて、フレームごとにMR画像が再構成される。例えば、処理回路131は、再構成機能1313により、複数のフレーム各々の再構成スポークにおける複数のスポーク各々に対応するMRデータに対して、グリッディング(gridding)処理を実行する。具体的には、処理回路131は、グリッディング処理により、再構成スポークにおける非直交座標系のMRデータを、直交座標系のMRデータに変換する。処理回路は131は、直交座標系に変換されたMRデータに対してフーリエ変換をフレームごとに実行することにより、複数のフレームに対応するMR画像を再構成する。
【0060】
パラレルイメージングを用いたラジアルスキャンによりMR信号が収集された場合、処理回路131は、再構成機能1313により、感度マップと再構成スポークに対応するMR信号とを用いて、時系列に沿った複数のフレームに対応する複数のMR画像を再構成する。また、パラレルイメージングに加えてさらに圧縮センシングを用いた場合、処理回路131は、例えば、以下のコスト関数E(x)を最小化させることで、時系列に沿った複数のフレームに対応する複数のMR画像を再構成する。
【0061】
E(x)=1/2×||F・S・x-b||2+λ×||T・x||1
上式において、xは、時系列に沿った複数のフレーム各々に対応するMR画像の画素値である。Fは、再構成スポークにより定義された不均一高速フーリエ変換(NUFFT)を実行する演算子である。Sは、複数のコイルエレメントの感度マップである。bは、複数のコイルエレメントに対応する再構成スポークのMRデータである。λは、パラレルイメージングによるMRデータの無矛盾性(consisitency)と疎らの程度(sparsity)との間のトレードオフを制御するための正則パラメータである。Tは、時間的な全分散(total variance)を実行する演算子である。また、||・・・||1はL1ノルム、||・・・||2はL2ノルムである。
【0062】
再構成されたMR画像は、システム制御機能1311による処理回路の制御のもとで、ディスプレイ127に表示される。このとき、再帰木に関するパラメータ、
図7に示すような再構成スポーク、フレームごとのスポークの分布等が、MR画像とともに表示されてもよい。このとき、操作者は、k区間におけるスポークの分布状況を確認することができる。
【0063】
以上に述べた構成によれば、以下に示す効果を得ることができる。
本実施形態に係るMRI装置100によれば、k空間における複数のラジアル方向に沿った複数のスポーク各々において、MR信号を収集するシーケンス制御回路121(収集部)は、複数のスポークの総数より少ないN本のスポーク各々においてMR信号を収集した後、N本のスポークにおいて隣接するスポーク間の角度を維持してN本のスポークを回転させた回転後のN本のスポーク各々においてMR信号を収集する。
【0064】
また、本MRI装置100によれば、k空間において隣接するスポークの間の角度が等間隔になるようにN本のスポークを設定することができる。例えば、本MRI装置100によれば、ラジアルスキャンにおけるスポークの総数とNとに基づいて、再帰的な分割として、バランス木であってNの多分木である木構造を再帰木として生成することができる。例えば、本MRI装置100によれば、木構造における根ノードの下層にN個の親ノードを設定し、親ノード各々の下層にN本の枝を介してN個の子ノードをそれぞれ設定し、子ノード各々の下層に(j-2)回に亘って枝を介して子ノードを再帰的に設定し、親ノードに1からNまでの第1自然数を小さい順にそれぞれ割り当て、親ノードから子ノードまでの枝の数がiであって枝の分岐元が同一なNの子ノードに、枝を介してN個の子ノードの上層に位置する親ノードの第1自然数と、1から(N-1)までの回数に亘ってNのi乗を第1自然数に順次加算した(N-1)個の自然数とを小さい順に第2自然数としてそれぞれ割り当て、木構造における最下層の子ノードに相当する葉ノード各々に、360°をスポークの総数で除算した除算値に1からNをそれぞれ乗じた複数の値を、k空間におけるスポークの角度として小さい順に割り当てることで、再帰木を生成することができる。すなわち、本MRI装置100によれば、木構造における最下層の葉ノードの各々に対して、互いに異なる自然数と、前記k空間において互いに異なるスポークの角度と割り当てることができる。これにより、本MRI装置100によれば、生成された再帰木を用いて、葉ノードに割り当てられた第2自然数をスキャン順序として、葉ノードに割り当てられたスポークの角度に対応するスポークにおいて、MR信号を収集する。
【0065】
また、本MRI装置100によれば、1つの磁気共鳴画像の再構成に用いられるスポークの本数と、葉ノードに属する第2自然数とスポークの角度とに基づいて、再構成に用いられる複数のスポークを特定し、収集されたMR信号のうち特定されたスポークに対応するMR信号を用いて、フレームごとにMR画像を再構成することができる。また、本MRI装置100によれば、パラレルイメージングや圧縮センシングを組み込んだ再構成手法で、時系列に沿った複数のMR画像をそれぞれ再構成することができる。
【0066】
これらのことから、本実施形態に係るMRI装置100によれば、ラジアルスキャンにおける複数のスポークの間隔を、k空間において均等に重複なく設定することができる。特に、複数のフレーム各々における複数のスポーク数がNのべき乗である場合、本MRI装置100によれば、全フレームに亘って隣接するスポークの間隔を均等に重複なく設定することができる。以上のことから、本実施形態におけるMRI装置100によれば、再構成されるMR画像の画質を向上させることができる。
【0067】
(変形例)
本実施形態との相違は、再帰木を用いることなく、1フレームあたりのスポークの本数を設定し、設定された本数に従って、隣接するスポークの間の角度が等間隔なるようにk空間上におけるスポークの位置を決定することにある。
【0068】
処理回路131は、設定機能1315により、例えば、インタフェース回路125を介した操作者の指示に従って、1フレームあたりのスポークの本数を設定する。なお、1フレームあたりのスポークの本数は、記憶装置129にデフォルトとして記憶されてもよい。処理回路131は、設定されたスポークの本数で360°を除算することにより、1フレームにおいて隣接するスポークの間の角度を計算する。処理回路131は、計算された角度に基づいて、ラジアルスキャンが実施される初期のフレーム(以下、初期フレームと呼ぶ)におけるスポークの位置(以下、初期スポーク位置と呼ぶ)を、k空間において設定する。処理回路131は、計算されたスポーク間の角度を、フレームの総数で除算することにより、初期スポーク位置を、フレーム数に応じて回転させる回転角度を決定する。なお、回転角度は、計算されたスポーク間の角度の範囲において、例えば不図示の乱数発生器により発生されてもよい。
【0069】
シーケンス制御回路121は、初期フレームにおいて、初期スポーク位置においてラジアルスキャンを実行しMR信号を収集するように、傾斜磁場電源105、送信回路113及び受信回路119等を制御する。初期フレームにおいてラジアルスキャンが実行されると、シーケンス制御回路121は、初期スポーク位置を回転角度に応じて回転させた回転後のスポークの位置においてラジアルスキャンを実行する。以下、同様に、全フレームに亘ってMR信号が収集されるまで、シーケンス制御回路121は、フレームごとに、初期スポーク位置を回転させてラジアルスキャンを実行する。
【0070】
図8は、1フレームあたりのスポークの本数が9本である場合において、初期スポーク位置をフレームごとに回転させた一例を示す図である。
図8におけるフレーム1は、初期フレームに相当する。
図8に示すように、フレームに応じて初期スポーク位置は回転し、回転後のスポークの位置においてラジアルスキャンが実行される。
図8に示すように、複数のフレーム各々において、隣接するスポークの間隔は等間隔となる。
【0071】
図9は、ランダムに初期スポーク位置を回転させてラジアルスキャンを実行する一例を示す図である。
図9に示すように、スポークの回転の1周目から2周目において、ランダムに発生された回転角度θ
r1で初期スポーク位置が回転され、ラジアルスキャンが実行される。次いで、スポークの回転の2周目から3周目において、ランダムに発生された回転角度θ
r2で、回転された初期スポーク位置がさらに回転され、ラジアルスキャンが実行される。全スポークに亘ってMR信号が収集されるまで、初期スポーク位置が回転されて、ラジアルスキャンが実行される。
【0072】
以上に述べた構成によれば、以下に示す効果を得ることができる。
本変形例に係るMRI装置100によれば、1フレームあたりのスポークの本数を設定し、設定された本数に従って、隣接するスポークの間の角度が等間隔なるようにk空間上におけるスポークの位置を決定し、決定されたスポークの位置を回転角度分だけ回転させてラジアルスキャンを実行することができる。これにより、本変形例によれば、ラジアルスキャンにおける複数のスポークの間隔を、k空間において均等に設定することができる。すなわち、本MRI装置100によれば、全フレームにおいて隣接するスポークの間隔を均等に設定することができ、MR画像の画質を向上させることができる。
【0073】
加えて、本実施形態および変形例における再構成機能1313、設定機能1315等は、当該機能を実行するプログラム(データ収集プログラム)を本MRI装置100のコンピュータにインストールし、これらをメモリ上で展開することによっても実現することができる。このとき、データ収集プログラムは、例えば、コンピュータに、再帰木を生成することと、ラジアルスキャンを実行することとを実現させる。また、コンピュータに当該手法を実行させることのできるプログラムは、磁気ディスク、光ディスク、半導体メモリなどの各種可搬型記憶媒体に格納して頒布することも可能である。
【0074】
以上に述べた実施形態、変形例等のMRI装置100によれば、MR画像の画質の向上を実現することができる。
【0075】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0076】
100…磁気共鳴イメージング装置、101…静磁場磁石、103…傾斜磁場コイル、105…傾斜磁場電源、107…寝台、109…寝台制御回路、111…ボア、113…送信回路、115…送信コイル、117…受信コイル、119…受信回路、121…シーケンス制御回路、123…バス、125…インタフェース回路、127…ディスプレイ、129…記憶装置、131…処理回路、1071…天板、1311…システム制御機能、1313…再構成機能、1315…設定機能。