(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-08
(45)【発行日】2022-04-18
(54)【発明の名称】品質が向上した冷菓
(51)【国際特許分類】
A23G 9/00 20060101AFI20220411BHJP
A23G 9/34 20060101ALI20220411BHJP
A23L 29/256 20160101ALI20220411BHJP
A23L 29/269 20160101ALI20220411BHJP
【FI】
A23G9/00 101
A23G9/34
A23L29/256
A23L29/269
(21)【出願番号】P 2017227894
(22)【出願日】2017-11-28
【審査請求日】2020-11-16
(31)【優先権主張番号】P 2016233769
(32)【優先日】2016-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000175283
【氏名又は名称】三栄源エフ・エフ・アイ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】後藤 佳代
【審査官】福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-159908(JP,A)
【文献】特公昭44-010151(JP,B2)
【文献】特開平01-117749(JP,A)
【文献】特開2008-011845(JP,A)
【文献】前田和寛 他,食品開発の可能性を広げる新規多糖類『ウェランガム』, FFI ジャーナル, 2016年5月発行, vol.221, no.2, p.179
【文献】CP Kelco, Xanthan Book 8th edition, 2008, p.1-32
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23G
A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェランガム並びにカラギナ
ン又はキサンタンガムを含有する冷菓
であって、以下1)~4)を満たす冷菓;
1)前記冷菓におけるウェランガムの含量が、0.01質量%以上0.5質量%以下である、
2)前記冷菓におけるカラギナンの含量が0.003質量%以上0.15質量%以下、又は前記冷菓におけるキサンタンガムの含量が0.01質量%以上0.3質量%以下である、
3)前記冷菓におけるウェランガムとカラギナン又はキサンタンガムの含有比率が3:1~1:3である、
4)前記冷菓が、アイスクリーム類である。
【請求項2】
さらにアンモニウム塩を含有する請求項1に記載の冷菓。
【請求項3】
ウェランガム並びにカラギナ
ン又はキサンタンガムを含有
し、以下1)~3)を満たすように冷菓に添加される冷菓用品質向上剤であって、前記冷菓が、アイスクリーム類である、冷菓用品質向上剤
;
1)前記冷菓におけるウェランガムの含量が、0.01質量%以上0.5質量%以下である、
2)前記冷菓におけるカラギナンの含量が0.003質量%以上0.15質量%以下、又は前記冷菓におけるキサンタンガムの含量が0.01質量%以上0.3質量%以下である、
3)前記冷菓におけるウェランガムとカラギナン又はキサンタンガムの含有比率が3:1~1:3である。
【請求項4】
さらに、アンモニウム塩を含有する請求項3に記載の冷菓用品質向上剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、品質が向上した冷菓に関する。
【0002】
一般的に冷菓は、-18℃以下の温度において、氷結晶が育ちにくく、周囲への水分移行が起こりにくい。しかしながら、冷菓の製造、流通、保存時の状況により、その温度を-18℃以下に保つことは困難である。
【0003】
例えば、冷菓を製造する際に、製造ライン全体の温度を-18℃以下とすることはできないため、冷菓の温度が上昇してしまう。また、製造工場から販売店舗までの輸送や、店内倉庫から店内ショーケースまでの移動の際に、冷菓が一時的に常温に置かれることにより、冷菓の温度が上昇してしまう。
【0004】
また、冷菓を保存する際に、冷凍庫の開閉により、-18℃以下である冷凍庫内の温度が10℃以上も上昇することがある。かかる温度変化は、家庭での冷凍庫保存の際にも生じ、冷菓の温度が上昇してしまう。
【0005】
上記のような温度上昇(ヒートショック)が起きると、冷菓から水分が溶け出したり(離水)、糖分が染み出したりする問題が生じる。
また、溶融等による冷菓の形状の変化や、内容成分の濃度の不均一化が起き、この場合、冷菓を再び-18℃以下で冷凍しても元の状態に戻すことはできないので、冷菓の商品としての価値が低下する。
【0006】
従来、ヒートショック耐性の他、気泡安定性、保形性及び造形性等といった冷菓の品質を向上させるために、様々な方法が開発されている。特に食品多糖類を使用した冷菓の品質向上方法が多く開発されている。
【0007】
食品多糖類には種々の起源のものがあり、その物性及び機能性も多種多様である。食品多糖類の起源としては、例えば、種子、根茎、樹液、果実、海藻、微生物等がある。それぞれ代表的な物質として、種子では、例えば、ガラクトマンナン(例えば、グァーガム、タラガム、ローカストビーンガム等)、タマリンドシードガム、大豆多糖類、澱粉及びサイリウムシードガム等;根茎では、例えば、コンニャク粉、グルコマンナン及び澱粉等;樹液では、例えば、アラビアガム、トラガントガム、カラヤガム及びガティガム;果実では、例えば、ペクチン等;海藻では、例えば、寒天、カラギナン、アルギン酸類(例えば、アルギン酸、アルギン酸塩)等;微生物では、例えば、キサンタンガム、ジェランガム、プルラン及びカードラン等;動物由来では、例えばゼラチン等が挙げられる。
【0008】
例えば、特許文献1には、ローカストビーンガム、グァーガム及びキサンタンガムからなる群から選択される少なくとも一つの多糖類が含有された可食性発泡層と、アイスクリーム層との組合わせ冷菓が開示されている。
【0009】
また、特許文献2には、キサントモナスガム(キサンタンガム)のアイスクリーム等への使用が開示されている。特許文献3にはキサントモナスガムとグァーガムが配合されたアイスクリーム用安定剤が開示されている。特許文献4には、キサントモナスガム、ローカストビーンガムとグァルガムからなる冷菓用安定剤が開示されている。
【0010】
更に、特許文献5には、起泡剤として小麦由来の蛋白質加水分解物を含み、オーバーランが100~300%である綿菓子のような食感の冷菓に、安定剤としてタマリンド種子多糖類、ローカストビーンガム、グァーガム及びカラギナンから選ばれる1種を含むことにより、冷菓にヒートショック耐性を付加する方法が開示されている。特許文献6には、ローカストビーンガム及びタマリンド種子多糖類を含有することを特徴とするヒートショック耐性が向上した冷菓が開示されている。
【0011】
微生物が産生する多糖類であるウェランガムは、例えば、インキ組成物(特許文献7)、コンクリート・セメント系材料(特許文献8、特許文献9)、未加硫ゴム用材料(特許文献10)、化粧組成物(特許文献11)においての使用が知られている。
しかし、ウェランガムを冷菓に用いることにより発揮される物性及び機能性の向上や改良についての検討はなされていない。
【0012】
【文献】特開昭62-190050号公報
【文献】特公昭44-10149号公報
【文献】特開昭52-114054号公報
【文献】特公昭57-37306号公報
【文献】特開2002-360178号公報
【文献】特開2002-253126号公報
【文献】特開平11-148041号公報
【文献】特開昭63-315547号公報
【文献】特開平06-55529号公報
【文献】特開2009-249533号公報
【文献】特開2009-298809号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、かかる事情に鑑みて開発されたものであり、従来の技術では十分に改善されなかった冷菓の品質を向上させる新たな技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題の解決を図るため鋭意研究を行ったところ、ウェランガム並びにカラギナン及び/又はキサンタンガムを冷菓に含有させることにより、冷菓の品質を向上できるとの知見を得た。
【0015】
本発明は以下の態様を有する冷菓及び冷菓用品質向上剤に関する;
項1.ウェランガム並びにカラギナン及び/又はキサンタンガムを含有する冷菓。
項2.さらにアンモニウム塩を含有する項1に記載の冷菓。
項3.ウェランガム並びにカラギナン及び/又はキサンタンガムを含有する冷菓用品質向上剤。
項4.さらにアンモニウム塩を含有する項3に記載の冷菓用品質向上剤。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、品質が向上した冷菓を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(i)冷菓
本発明の冷菓は、ウェランガム並びにカラギナン及び/又はキサンタンガムを含有することを特徴とする。
【0018】
本発明の冷菓は、ウェランガム並びにカラギナン及び/又はキサンタンガムを含有することにより、以下(1)~(3)に示す冷菓の品質向上効果を奏する;
(1)ヒートショック耐性(離水抑制効果、糖分の染み出し抑制効果)の向上
(2)オーバーラン性の向上
(3)保形性、造形性の向上。
なお、本発明の冷菓は、離水が抑制されることから、離水した水分によって、コーンや最中のサクサク、パリッとした食感が喪失することを抑制できる。
本発明でいう品質の向上とは、上記(1)~(3)の一部又は全部の効果を含む概念である。
【0019】
本発明の冷菓は、目的とする製品により種々の構成をとることができる。例えば、アイスクリーム類(アイスクリーム、ラクトアイス、アイスミルク)、ソフトクリーム、アイスケーキ、クラッカーサンドアイス、不凍アイスケーキ、コーン入りアイス、カップ入りアイス、シューアイス、アイスもなか、ソフトクリームミックス、アイスクリームミックス、シャーベット、アイスキャンデー、みぞれ、かき氷、フローズンヨーグルト、凍結飲料、シェイク等が挙げられる。
【0020】
本発明で使用するウェランガムは、スフィンゴモナス属細菌(Sphingomonas sp.)の培養液から得られた多糖類を主成分とするものである。簡便には、一般に流通している市販製品を利用することが可能であり、具体的には三栄源エフ・エフ・アイ株式会社の「ビストップ[登録商標]W」等が例示できる。
【0021】
本発明の冷菓におけるウェランガムの含量は、好ましくは0.001質量%以上であり、より好ましくは0.01質量%以上である。当該含量とすることにより、より優れた冷菓の品質向上効果を得ることができる。
また、本発明の冷菓におけるウェランガムの含量は、好ましくは1質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以下である。当該含量とすることにより、冷菓ミックスの粘度上昇による作業効率の低下を抑制することができる。
【0022】
本発明で使用するカラギナンは、紅藻類から抽出、精製される天然高分子であり、硫酸基の位置やアンヒドロ糖の有無によって、κ(カッパ)カラギナン、ι(イオタ)カラギナン、λ(ラムダ)カラギナン等の各種カラギナンが存在する。
【0023】
本発明の冷菓におけるカラギナンの含量は、好ましくは0.001質量%以上であり、より好ましくは0.003質量%以上である。当該含量とすることにより、より優れた冷菓の品質向上効果を得ることができる。
また、本発明の冷菓におけるカラギナンの含量は、好ましくは0.25質量%以下であり、より好ましくは0.15質量%以下である。当該含量とすることにより、冷菓ミックスの粘度上昇による作業効率の低下を抑制することができる。
【0024】
本発明で使用するキサンタンガムは、キサントモナス・キャンペストリス(Xanthomonas campestris)が菌体外に生産する多糖類であり、D-マンノース、D-グルコース、D-グルクロン酸で構成されている。
【0025】
本発明の冷菓におけるキサンタンガムの含量は、好ましくは0.001質量%以上であり、より好ましくは0.01質量%以上である。当該含量とすることにより、より優れた冷菓の品質向上効果を得ることができる。
また、本発明の冷菓におけるキサンタンガムの含量は、好ましくは0.5質量%以下であり、より好ましくは0.3質量%以下である。当該含量とすることにより、冷菓ミックスの粘度上昇による作業効率の低下を抑制することができる。
【0026】
本発明の冷菓は、ウェランガム並びにカラギナン及び/又はキサンタンガムを含有し、好ましくはウェランガム及びカラギナンを含有する。本発明の冷菓は、ウェランガム及びカラギナンを含有することで、特に離水抑制において顕著な効果を奏する。
【0027】
本発明の冷菓における、ウェランガム1質量部に対するカラギナン及び/又はキサンタンガムの含量は、好ましくは0.01~50質量部であり、より好ましくは0.05~10質量部である。当該含量とすることにより、より優れた冷菓の品質向上効果を得ることができる。
【0028】
本発明の冷菓は、公知の冷菓の製造工程にて、前述のウェランガム並びにカラギナン及び/又はキサンタンガムを添加し、製造することができる。例えば、原料の .量混合→加温(30~80℃)→溶解・混合→濾過→ホモジナイズ→殺菌(68℃、30分以上又はHTST殺菌やUHT殺菌)→冷却(5℃以下)→エージング→フレーバー添加→フリージング→充填→硬化の工程より必要な工程を適宜選択して製造することができる。通常、原料の秤量混合の工程において、前述のウェランガム並びにカラギナン及び/又はキサンタンガムを他の原料と合わせて .量混合することで製造することができる。
【0029】
冷菓に食品多糖類を相当量使用すると、冷菓ミックスの粘度上昇により冷却効率が減退し、冷菓ミックスの凍結が十分に進まない場合がある。この場合、冷菓中の未凍結部の割合の増加により、当該部の離水等の問題が生じることがある。
本発明の冷菓は、当該問題を解決する観点からは、ウェランガム並びにカラギナン及び/又はキサンタンガムに加え、アンモニウム塩を含有することが好ましい。本発明によれば、冷菓ミックスの粘度が高い場合であっても、アンモニウム塩を含有することにより、冷却効率の減退が抑制され、冷菓中の未凍結部の割合が減少するため、当該部の離水等の抑制を通じて、より品質が向上した冷菓を提供できる。
【0030】
本発明で使用するアンモニウム塩は、例えば、リン酸水素一アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、クエン酸鉄アンモニウム、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、硫酸アルミニウムアンモニウムなどを挙げることができ、これらを単独或いは併用して使用することができる。好ましくは、リン酸水素二アンモニウムを使用することができる。
【0031】
本発明の冷菓におけるアンモニウム塩の含量は、好ましくは0.001質量%以上であり、より好ましくは0.005質量%以上である。当該含量とすることにより、冷菓ミックスの粘度上昇による冷却効率の減退を、より抑制することができる。
また、本発明の冷菓におけるアンモニウム塩の含量は、好ましくは0.3質量%以下であり、より好ましくは0.15質量%以下である。当該含量とすることにより、冷菓の造形性の悪化を抑制することができる。
【0032】
本発明の冷菓は、前述のウェランガム並びにカラギナン及び/又はキサンタンガム以外に、本発明の効果を奏する限り、例えば、水、油脂、果汁、タンパク質、甘味料、無脂乳固形分、香料、酸味料、色素、乳化剤、酸化防止剤等の成分を含有することができる。
なお、本発明の冷菓における可溶性固形分の含量は、好ましくは1~60質量%であり、より好ましくは10~40質量%である。かかる可溶性固形分の成分としては、通常冷菓に使用される水溶性の固形分であれば特に制限はなく、通常の冷菓と同様の構成をとることができる。
【0033】
油脂としては、例えば、植物油脂、乳脂肪(例えば、バター等)、又はこれらの分別油脂、硬化油脂、エステル交換油脂等が挙げられる。植物油脂としては、例えば、ヤシ油、パーム油、大豆油、菜種油、綿実油、コーン油、ひまわり油、オリーブ油、サフラワー油、カカオ脂、パーム核油等が挙げられる。
【0034】
タンパク質としては、例えば、乳(例えば、牛乳、脱脂粉乳、全脂粉乳、全脂加糖練乳、脱脂加糖練乳、脱脂濃縮乳、生クリーム等)由来のタンパク質、卵(例えば、卵白等)由来のタンパク質等が挙げられる。
【0035】
甘味料としては、例えば、糖類(例えば、ショ糖、異性化糖、乳糖、麦芽糖、ブドウ糖、果糖、転化糖、水あめ、粉末水あめ、還元麦芽水あめ、蜂蜜、トレハロース、パラチノース、D-キシロース等)、糖アルコール類(例えば、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、エリスリトール等)、高甘味度甘味料(例えば、サッカリンナトリウム、サイクラメート及びその塩、アセスルファムカリウム、ソーマチン、アスパルテーム、スクラロース、アリテーム、ネオテーム、アドバンテーム、ステビア抽出物に含まれるステビオサイド等)等が挙げられる。
【0036】
乳化剤としては、冷菓用途に一般的に用いられている乳化剤が挙げられる。例えば、グリセリン脂肪酸エステル(例えば、モノグリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル、有機酸(例えば、クエン酸、乳酸等)モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル等)、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチン、サポニン、ポリソルベート、ステアロイル乳酸塩(例えば、ナトリウム塩、カルシウム塩等)等を挙げることができる。
【0037】
また、本発明の冷菓は、本発明の効果を奏する限り、ウェランガム、カラギナン及びキサンタンガム以外の多糖類を併用することができる。例えば、グルコマンナン、ガラクトマンナン(例えば、ローカストビーンガム、グァーガム、タラガム等)、タマリンドシードガム、トラガントガム、カラヤガム、脱アシル型ジェランガム、ネイティブ型ジェランガム、アラビアガム、ガティガム、マクロホモプシスガム、ゼラチン、ペクチン、カードラン、アルギン酸類(例えば、アルギン酸、アルギン酸塩等)、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、微結晶セルロース、発酵セルロース、微小繊維状セルロース、大豆多糖類等が挙げられる。
【0038】
本発明の冷菓は、冷菓に使用される香料及び色素を含有することができる。また、その他栄養強化用の食品素材(例えば、ミネラル、ビタミン、カテキン等)や、冷菓の風味・食感にバラエティを持たせるための不溶性固形分(例えば、果肉、ナッツ類、クッキー、チョコレート、クルトン、パン、ソース類等)を含有することができる。
【0039】
(ii)冷菓用品質向上剤
本発明の冷菓用品質向上剤は、ウェランガム並びにカラギナン及び/又はキサンタンガムを含有することを特徴とし、ウェランガム及びカラギナンを含有することが好ましい。本発明の冷菓用品質向上剤を冷菓に含有させることにより奏される効果は上記(i)の記載を援用できる。
【0040】
本発明の冷菓用品質向上剤に使用するウェランガム並びにカラギナン及び/又はキサンタンガムは、上記(i)の記載を援用できる。冷菓に対する本発明の冷菓用品質向上剤の含有量は特に制限されず、冷菓中のウェランガム並びにカラギナン及び/又はキサンタンガムの含量が上記(i)の範囲となるように、冷菓に本発明の冷菓用品質向上剤を含有させることができる。
【0041】
本発明の冷菓用品質向上剤は、冷菓ミックスの粘度上昇による冷却効率の減退を抑制する観点からは、アンモニウム塩を含有することが好ましい。本発明の冷菓用品質向上剤に使用するアンモニウム塩は上記(i)の記載を援用できる。また、本発明の冷菓用品質向上剤は、冷菓中のアンモニウム塩の含量が上記(i)の範囲となるように、冷菓に含有させることができる。
【0042】
本発明の冷菓用品質向上剤は、本発明の効果を奏する限り、ウェランガム並びにカラギナン及び/又はキサンタンガム以外の成分を含有させることができ、前記成分としては、例えば、上記(i)の記載を援用できる。
【0043】
本発明の冷菓用品質向上剤を含有させる対象となる冷菓は、上記(i)の記載を援用できる。
本発明の冷菓用品質向上剤は、公知の冷菓の製造工程にて、冷菓に含有させることができる。通常、原料の .量混合の工程において、本発明の冷菓用品質向上剤を他の原料と合わせて .量混合し、冷菓を製造することができる。
【0044】
本発明の冷菓用品質向上剤の剤形は特に制限されず、例えば、固体状(例えば、粉末状、顆粒状、錠剤状等)、液体状、ペースト状等が挙げられる。
【実施例】
【0045】
以下、本発明の内容を以下の実施例、比較例等を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。実施例において、ウェランガムは、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社の「ビストップ[登録商標]W」を使用した。なお、文中、「%」は「質量%」を意味する。
【0046】
実験例1 冷菓の評価(1)
次の処方に示す、冷菓(ラクトアイス)を調製した。使用した多糖類等とその添加量を表1に示す。なお、調製された冷菓は、全固形分33.6%、無脂乳固形分8.6%、植物油脂分9.0%及び甘味度14.3であった。
【0047】
<処方>
(%)
砂糖 13.5
脱脂粉乳 9
ヤシ油 9
水あめ 3
多糖類等 表1参照
乳化剤 0.25
香料 0.05
水にて全量 100
【0048】
<調製方法>
1)水あめ及び水を撹拌しながら、予め粉体混合した砂糖、脱脂粉乳、多糖類等、乳化剤及び香料を添加して加熱撹拌した。
2)80℃達温後、ヤシ油を添加し、温度を保持したまま10分間撹拌溶解した。
3)ホモジナイザーにて均質化(第一段10MPa、第二段5MPa)した。
4)5℃以下まで冷却後、一晩エージングした。
5)バッチ式フリーザーにてフリージングを行った。
6)カップに充填して-40℃で急速凍結した。
【表1】
【0049】
均質化後の冷菓ミックスの粘度を以下の条件で測定した。
粘度測定条件:BL型粘度計、ローター適宜、5℃、60rpm、1分間測定
結果を表2に示す。
【0050】
さらに、調製された冷菓の離水抑制評価を以下の方法により行った。
<離水抑制評価>
調製された冷菓を、室温においてろ紙の上に45分間静置した。その後、冷菓を取り除いたろ紙の質量を測定し、次の式に基づいて離水率を算出した。離水率が低いほど、冷菓の離水が少ないことを意味する。結果を表2に示す。
離水率=ろ紙の吸水量/冷菓の質量×100
(※ろ紙の吸水量=45分後のろ紙の質量-試験前のろ紙の質量)
【0051】
【0052】
実施例1~5は、比較例1~比較例4と比べて、離水が抑制された。
【0053】
実験例2 冷菓の評価(2)
実験例1で調製された冷菓(実施例1及び2、比較例1~4)につき、保形性及び造形性の評価を以下の方法により行った。
<保形性評価>
冷菓をカップから取り出し網の上に乗せ、溶け出し時間(最初に垂れ落ちた時間)を記録した。溶け出し時間が遅いほど、冷菓の保形性が高いことを意味する。結果を表3に示す。
<造形性評価>
フリージング直後の冷菓を絞り出し袋に充填し、ろ紙の上に円錐状に絞り出し、絞り出し5分後の冷菓の外観形状を目視で確認した。絞り出し5分後の実施例1の外観形状(エッジのシャープさ及び表面のなめらかさ)の評価を+とし、実施例1と比較して絞り出し5分後の外観形状の変化が大きくなる順に、-<--<---と評価した。結果を表3に示す。
【0054】
【0055】
実施例1及び2は、比較例1~比較例4と比べて、保形性及び造形性が向上した。
【0056】
実験例3 冷菓の評価(3)
実験例1で調製した冷菓ミックス(実施例1~5、比較例2)につき、フリージングにおける最高オーバーラン値(%)を測定した。結果を表4に示す。
【0057】
【0058】
実施例1~5は、比較例2と比べて、オーバーラン性が向上した。
【0059】
実施例4 冷菓の調製(4)
実験例1で調製された冷菓ミックス(実施例1及び4)につき、フリージング開始から13分後の冷菓ミックスの温度を測定した。
結果を表5に示す。
【0060】
【0061】
アンモニウム塩を含有する実施例4は、アンモニウム塩を含有しない実施例1に対し、冷却効率が優れていた。すなわち、実施例4は、実施例1に対し、冷菓中の未凍結部の割合が減少し、当該部の離水が抑制されるため、より優れた品質を有する。