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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-08
(45)【発行日】2022-04-18
(54)【発明の名称】結束テープ
(51)【国際特許分類】
   B65D 63/10 20060101AFI20220411BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220411BHJP
   B32B 27/12 20060101ALI20220411BHJP
【FI】
B65D63/10 M
B65D63/10 L
B65D63/10 N
B32B27/00 B
B32B27/00 M
B32B27/12
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017253469
(22)【出願日】2017-12-28
(65)【公開番号】P2019119458
(43)【公開日】2019-07-22
【審査請求日】2020-11-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【弁理士】
【氏名又は名称】益頭 正一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 尚弥
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 好彦
【審査官】金丸 治之
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-088654(JP,A)
【文献】特開2016-145362(JP,A)
【文献】特開2002-294189(JP,A)
【文献】特開2013-159643(JP,A)
【文献】特開2015-17235(JP,A)
【文献】特開2012-36516(JP,A)
【文献】特開2005-33907(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 63/10
B32B 27/00
B32B 27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
JIS C 3406の試験において耐摩耗性150mm以上の樹脂からなる2枚の樹脂フィルムと、
縦糸及び横糸の交点となる部位において横糸が縦糸を1周すると共に横糸が延びる方向で隣り合う横糸の1周同士が独立するように編み込まれて縦糸及び横糸が固定関係にあり、縦糸及び横糸の少なくとも一方が径10デニール以上150デニール以下の単繊維又は複数本の単繊維を撚った撚糸で構成され、前記2枚の樹脂フィルムの間に介在する編物によって構成された繊維層と、
前記2枚の樹脂フィルムの一方の外側面に設けられた粘着層と、
を備える、ことを特徴とする結束テープ。
【請求項2】
前記繊維層は、縦糸及び横糸の交点となる部位において更に縦糸が横糸を1周するように編み込まれて縦糸及び横糸が固定関係にある、ことを特徴とする請求項1に記載の結束テープ。
【請求項3】
前記2枚の樹脂フィルムそれぞれは、厚さが100μm以上200μm以下であると共に、ポリプロピレン又は塩化ビニルにより形成される
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の結束テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結束テープに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワイヤーハーネスにおいて電線を結束させるための塩化ビニルテープやノンハロゲンテープが提案されている。これらのテープは、基材と粘着層とを有し、基材が樹脂フィルムであることから耐摩耗性に優れるものとすることができる。しかしながら、これらのテープは、手切れ性が決して良いとはいえない。そこで、基材に織布を用いた結束テープが提案されている(例えば特許文献1~3参照)。この結束テープによれば、基材が織布であることから、樹脂フィルムと比較して手切れ性を高めることができる。しかし、特許文献1に記載の結束テープは、手切れ性が高いものの、耐摩耗性については決して高いものではなかった。
【0003】
そこで、ポリエステル織布からなる基材の一方の面に粘着剤層を設け、他方の面にポリエチレンからなる樹脂層を設けた結束テープが提案されている(例えば特許文献4参照)。この結束テープによれば、織布からなる基材によって手切れ性を高めつつ、ポリエチレンからなる樹脂層によって耐摩耗性を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-26717号公報
【文献】特開2015-209446号公報
【文献】特開2013-510207号公報
【文献】特開平11-116911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献4に記載の結束テープは、ポリエチレンからなる樹脂層では耐摩耗性が不充分であった。このため、樹脂層を厚くすることが考えられるが、樹脂層を厚くした場合には耐摩耗性が向上しても手切れ性の低下を招くこととなり、耐摩耗性及び手切れ性の双方について両立することが困難であった。
【0006】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、耐摩耗性及び手切れ性の双方についてより良好な結束テープを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る結束テープは、2枚の樹脂フィルムと、繊維層と、粘着層とを備えている。2枚の樹脂フィルムはJIS C 3406の試験において耐摩耗性150mm以上の樹脂からなる。繊維層は、縦糸及び横糸の交点となる部位において横糸が縦糸を1周すると共に横糸が延びる方向で隣り合う横糸の1周同士が独立するように編み込まれて縦糸及び横糸が固定関係にあり、縦糸及び横糸の少なくとも一方が径10デニール以上150デニール以下の単繊維又は複数本の単繊維を撚った撚糸で構成され、2枚の樹脂フィルムの間に介在する編物によって構成されている。粘着層は2枚の樹脂フィルムの一方の外側面に設けられている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、繊維層は、縦糸及び横糸の交点となる部位において両者が固定関係にあり、縦糸及び横糸の少なくとも一方が径10デニール以上150デニール以下の単繊維又は複数本の単繊維を撚った撚糸で構成されている。このため、単繊維又は撚糸で構成された縦糸や横糸を引き裂くようにして良好な手切れ性を得ることができる。また、耐摩耗性150mm以上の樹脂フィルムを備えるため、良好な耐摩耗性を得ることができる。特に、2枚の樹脂フィルムによって繊維層を挟み込むことから、1枚の厚い樹脂フィルムを使用した場合と比較して同様の耐摩耗性を得つつも2枚の樹脂フィルムそれぞれを薄く構成して手切れ性を良好とすることができる。従って、耐摩耗性及び手切れ性の双方についてより良好な結束テープを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る結束テープの側面図である。
図2図1に示したテープ本体の斜視図である。
図3図2に示した織布を示す平面図である。
図4図2に示した編物を示す平面図である。
図5】実施例及び比較例、並びにそれらの試験結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を好適な実施形態に沿って説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す実施形態においては、一部構成の図示や説明を省略している箇所があるが、省略された技術の詳細については、以下に説明する内容と矛盾が発生しない範囲内において、適宜公知又は周知の技術が適用されていることはいうまでもない。また、以下の説明において結束テープは電線を結束(収束)するものとして説明するが、これに限らず、電線以外の他の線条体を結束させる場合に適用されてもよい。
【0011】
図1は、本実施形態に係る結束テープの側面図である。図1に示すように、結束テープ1は、複数の電線等を結束(収束)させるためのテープ本体10と、テープ本体10がロール状に巻き回されるコア20とを備えている。テープ本体10は、一面に粘着層(後述の符号13)を備え、粘着層がテープ本体10の他面に重なるように巻かれてロール状とされている。
【0012】
図2は、図1に示したテープ本体10の斜視図である。図2に示すように、テープ本体10は、積層体Lと粘着層13とを備えている。積層体Lは、2枚の樹脂フィルム11と繊維層12とを備えて構成されている。2枚の樹脂フィルム11は、JIS C 3406の試験において耐摩耗性150mm以上の樹脂によって構成されたフィルムである。
【0013】
2枚の樹脂フィルム11それぞれは、厚さが50μm以上200μm以下となっている。2枚の樹脂フィルム11は、互いに厚さが同じであってもよいし、異なっていてもよいが、以下では厚さが同じものであるとして説明する。粘着層13は、2枚の樹脂フィルム11のいずれか一方の外側面に設けられる。
【0014】
繊維層12は、2枚の樹脂フィルム11の間に介在した織布12a又は編物12bである。図3は、図2に示した織布12aを示す平面図である。図3に示すように、織布12aは、縦糸WW1及び横糸WW2によって構成されている。縦糸WW1及び横糸WW2は、互いの交点となる部位において交互に折り重なるように織られたものである。すなわち、例えば交点IS1において縦糸WW1が横糸WW2の上部に重なる場合において、交点IS1と隣接する交点IS2においては、横糸WW2が縦糸WW1の上部に重なっており、織布12aはこれが連続することで織られたものとなっている。
【0015】
ここで、縦糸WW1及び横糸WW2は、交点IS1,IS2において両者が固定関係にある。すなわち、織布12aの全域に接着剤が塗布されたり2枚の樹脂フィルム11と共に織布12aの上下から熱圧着されたりすることにより、縦糸WW1及び横糸WW2それぞれは交点IS1,IS2において相手側に固定されることとなる。
【0016】
加えて、縦糸WW1及び横糸WW2の少なくとも一方は、径10デニール以上150デニール以下の単繊維、複数本の単繊維を撚って径10デニール以上150デニール以下とされた撚糸で構成されている。径が10デニール未満となると、縦糸WW1及び横糸WW2が細すぎて意図しない切れが発生してしまうからである。一方、径が150デニールを超えると、縦糸WW1及び横糸WW2が太すぎて手切れ性が極端に低下してしまうからである。
【0017】
さらに、縦糸WW1及び横糸WW2の少なくとも一方は、径18デニール以上60デニール以下の単繊維、複数本の単繊維を撚って径18デニール以上60デニール以下とされた撚糸で構成されていることが好ましい。これにより、より一層意図しない切れを防止すると共に、より手切れ性を向上できるからである。
【0018】
図4は、図2に示した編物12bを示す平面図である。繊維層12は織布12aに限らず、図4に示す編物12bであってもよい。編物12bは、縦糸WW1と横糸WW2とが編み込まれたものであり、織布12aと同様に、縦糸WW1及び横糸WW2によって構成されている。縦糸WW1は直線状に配置されている。横糸WW2は、複数の縦糸WW1に跨るように設けられており、例えば各縦糸WW1の周囲を1周するように編み込まれている。この結果、縦糸WW1と横糸WW2とは交点ISにおいて固定関係となる。
【0019】
なお、図4に示す編物12bにおいても、全域に接着剤が塗布されたり2枚の樹脂フィルム11と共に熱圧着されるようになっていてもよい。
【0020】
次に、本実施形態に係る結束テープ1の実施例及び比較例を説明する。図5は、実施例及び比較例、並びにそれらの試験結果を示す表である。
【0021】
まず、実施例1~4に係る結束テープについては、接着剤を介したうえで織布をポリプロピレンからなる2枚の樹脂フィルムにて挟み込んで積層体を形成した。積層体の一面には粘着層を設けた。織布については径が30デニールからなる縦糸及び横糸を編み込んで形成した。2枚の樹脂フィルムそれぞれの厚さは、実施例1で50μmであり、実施例2で100μmであり、実施例3で150μmであり、実施例4で200μmとした。
【0022】
また、実施例5~8に係る結束テープについては、接着剤を介したうえで織布を塩化ビニルからなる2枚の樹脂フィルムにて挟み込んで積層体を形成した。積層体の一面には粘着層を設けた。織布については径が30デニールからなる縦糸及び横糸を編み込んで形成した。2枚の樹脂フィルムそれぞれの厚さは、実施例5で50μmであり、実施例6で100μmであり、実施例7で150μmであり、実施例8で200μmとした。
【0023】
比較例1,2に係る結束テープについては、2枚の樹脂フィルムの厚さ以外は実施例1~4のものと同じ構成とした。2枚の樹脂フィルムそれぞれの厚さは、比較例1で30μmであり、比較例2で300μmとした。
【0024】
比較例3,4に係る結束テープについては、2枚の樹脂フィルムの厚さ以外は実施例5~8のものと同じ構成とした。2枚の樹脂フィルムそれぞれの厚さは、比較例3で30μmであり、比較例4で300μmとした。
【0025】
比較例5~10に係る結束テープについては、織布を用いることなく接着剤で2枚の樹脂フィルムを接着して積層体を形成した。積層体の一面には粘着層を設けた。2枚の樹脂フィルムそれぞれの厚さは、比較例5で30μmであり、比較例6で50μmであり、比較例7で100μmであり、比較例8で150μmであり、比較例9で200μmであり、比較例10で300μmとした。
【0026】
比較例11~16に係る結束テープについては、接着剤を介したうえで織布をポリエチレンテレフタレートからなる2枚の樹脂フィルムにて挟み込んで積層体を形成した。積層体の一面には粘着層を設けた。織布については径が30デニールからなる縦糸及び横糸を編み込んで形成した。2枚の樹脂フィルムそれぞれの厚さは、比較例11で30μmであり、比較例12で50μmであり、比較例13で100μmであり、比較例14で150μmであり、比較例15で200μmであり、比較例16で300μmとした。
【0027】
これらの実施例1~8、及び、比較例1~16に係る結束テープに対して、耐摩耗性試験、及び、手切れ性試験を行った。
【0028】
耐摩耗性試験については、適当な長さの試験片としてのワイヤーハーネス用テープをφ10mmのアルミパイプに2重に貼り付け、JASO D 608に規定する耐摩耗試験器にセットし、試験片に4.4Nの荷重を加えた。そして、1500mm/minの速さで摩耗テープを移動させ、アルミパイプとテープとが接触するまでのテープ長さを読み取った。この測定による判定は、1000mm以上の場合を「◎」とし、500mm以上1000mm未満の場合を「○」とし、500mm未満の場合を「×」として評価した。
【0029】
手切れ性試験については、長さ100mmに形成した結束テープを横方向に(すなわち縦糸を引き裂くように)人間の手で切断し、切断面の切り口の状態を評価したものである。結束テープが切れない又は切れたものの切断面が直線状とならなかった場合を「×」とし、切断面が直線状となりきれいに切れた場合を「○」とした。
【0030】
この結果、比較例1,3に係る結束テープについては、手切れ性が「〇」となったものの、耐摩耗性が「×」となった。また、比較例6,12に係る結束テープについては、耐摩耗性が「〇」となったものの、手切れ性が「×」となった。また、比較例2,4,7~10,13~16に係る結束テープについては、耐摩耗性が「◎」となったものの、手切れ性が「×」となった。さらに、比較例5,11に係る結束テープについては、耐摩耗性及び手切れ性の双方で「×」となった。
【0031】
これに対して、実施例1,5に係る結束テープについては、耐摩耗性及び手切れ性の双方で「〇」となった。さらに、実施例2~4,6~8に係る結束テープについては、耐摩耗性が「◎」となり、手切れ性が「〇」となった。このため、実施例1~8に係る結束テープは耐摩耗性及び手切れ性について両立することがわかった。特に、実施例2~4,6~8に係る結束テープは、より耐摩耗性の面で好ましいこともわかった。
【0032】
このようにして、本実施形態に係る結束テープ1によれば、繊維層12は、縦糸WW1及び横糸WW2の交点IS1,IS2,ISとなる部位において両者が固定関係にあり、縦糸WW1及び横糸WW2の少なくとも一方が径10デニール以上150デニール以下の単繊維又は複数本の単繊維を撚った撚糸で構成されている。このため、単繊維又は撚糸で構成された縦糸WW1や横糸WW2を引き裂くようにして良好な手切れ性を得ることができる。また、耐摩耗性150mm以上の樹脂フィルム11を備えるため、良好な耐摩耗性を得ることができる。特に、2枚の樹脂フィルム11によって繊維層12を挟み込むことから、1枚の厚い樹脂フィルムを使用した場合と比較して同様の耐摩耗性を得つつも2枚の樹脂フィルム11それぞれを薄く構成して手切れ性を良好とすることができる。従って、耐摩耗性及び手切れ性の双方についてより良好な結束テープ1を提供することができる。
【0033】
また、2枚の樹脂フィルム11それぞれは厚さが100μm以上200μm以下であるため、手切れ性を著しく低下させることなく耐摩耗性をより向上させることができる。
【0034】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよいし周知及び公知の技術を組み合わせてもよい。
【0035】
例えば、本実施形態に係る結束テープ1は、2枚の樹脂フィルム11、繊維層12、及び粘着層13の4層構造(2枚の樹脂フィルム11と繊維層12との間に接着剤を介在させる場合には6層構造)であるが、手切れ性に支障が無ければ更に他の層を設けてもよい。
【0036】
また、繊維層12として編物12bは図4に示したものに限られない。例えば、図4に示す例において横糸WW2のみが縦糸WW1を1周するように編み込まれているが、交点ISにおいて縦糸WW1及び横糸WW2の双方が1周するように編み込まれていてもよい。
【0037】
加えて、上記実施形態ではテープ本体10の長手方向に平行に縦糸WW1が延在する結束テープ1を想定しているが、これに限らず、テープ本体10の長手方向に対して縦糸WW1が傾いて延在するものであってもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 :結束テープ
10 :テープ本体
11 :樹脂フィルム
12 :繊維層
12a :織布
12b :編物
13 :粘着層
IS,IS1,IS2 :交点
WW1 :縦糸
WW2 :横糸
図1
図2
図3
図4
図5