IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 矢崎総業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-車室内表示システム 図1
  • 特許-車室内表示システム 図2
  • 特許-車室内表示システム 図3
  • 特許-車室内表示システム 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-08
(45)【発行日】2022-04-18
(54)【発明の名称】車室内表示システム
(51)【国際特許分類】
   B60K 35/00 20060101AFI20220411BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20220411BHJP
   B60J 1/02 20060101ALI20220411BHJP
   B60R 1/04 20060101ALI20220411BHJP
【FI】
B60K35/00 A
B60R16/02 640K
B60J1/02 M
B60R1/04 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018071647
(22)【出願日】2018-04-03
(65)【公開番号】P2019182018
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】特許業務法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野 淳也
【審査官】稲村 正義
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-072365(JP,A)
【文献】特開2008-132915(JP,A)
【文献】特開2010-179854(JP,A)
【文献】実開昭57-128433(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 35/00
B60R 1/00,16/02
B60J 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
投射情報の投射光を投射して、車室内から視認し得る位置に設けた少なくとも1箇所の表示領域に前記投射情報を表示させる表示装置と、
前記表示装置を制御して、前記表示装置から前記投射光を投射させる制御装置と、
を備え、
前記表示領域又は前記表示領域に向けた車室内の乗員の視線の先に存在する透過具の前記投射光の投射領域には、印加電圧の電圧値に応じて光の透過率を変化させる調光フィルムと、前記調光フィルムに重ね合わせつつ、前記調光フィルムの端部から食み出した境界領域で、前記調光フィルムから離れるほど光の透過率が段階的に又は徐々に上がる濃淡調整具と、を設け、
前記制御装置は、前記表示領域に映し出された前記投射情報を車室内の乗員が視認し得るように、車外の明るさに応じて前記調光フィルムの透過率を変化させる調光制御部を有することを特徴とした車室内表示システム。
【請求項2】
投射情報の投射光を投射して、車室内から視認し得る位置に設けた少なくとも1箇所の表示領域に前記投射情報を表示させる表示装置と、
前記表示装置を制御して、前記表示装置から前記投射光を投射させる制御装置と、
を備え、
前記表示領域又は前記表示領域に向けた車室内の乗員の視線の先に存在する透過具の前記投射光の投射領域には、印加電圧の電圧値に応じて光の透過率を変化させる調光フィルムと、前記調光フィルムの端部から食み出した境界領域で、前記調光フィルムから離れるほど光の透過率が段階的に又は徐々に上がる濃淡調整具と、を設け、
前記制御装置は、前記表示領域に映し出された前記投射情報を車室内の乗員が視認し得るように、車外の明るさに応じて前記調光フィルムの透過率を変化させる調光制御部を有し、
前記濃淡調整具は、複数枚の濃淡調整用調光フィルムを備え、
複数枚の前記濃淡調整用調光フィルムは、前記境界領域で前記調光フィルムから離れるほど積層枚数が少なくなるように1枚ずつずらしながら重ね合わせ、各々が同等の透過率となるように前記制御装置で制御されることを特徴とした車室内表示システム。
【請求項3】
投射情報の投射光を投射して、車室内から視認し得る位置に設けた少なくとも1箇所の表示領域に前記投射情報を表示させる表示装置と、
前記表示装置を制御して、前記表示装置から前記投射光を投射させる制御装置と、
を備え、
前記表示領域又は前記表示領域に向けた車室内の乗員の視線の先に存在する透過具の前記投射光の投射領域には、印加電圧の電圧値に応じて光の透過率を変化させる調光フィルムと、前記調光フィルムの端部から食み出した境界領域で、前記調光フィルムから離れるほど光の透過率が段階的に又は徐々に上がる濃淡調整具と、を設け、
前記制御装置は、前記表示領域に映し出された前記投射情報を車室内の乗員が視認し得るように、車外の明るさに応じて前記調光フィルムの透過率を変化させる調光制御部を有し、
前記濃淡調整具は、複数枚の濃淡調整用調光フィルムを備え、
複数枚の前記濃淡調整用調光フィルムは、前記境界領域で前記調光フィルムから離れる方向にて、互いに重ならないように間を詰めて又は間隔を空けて同一層に並べ、前記調光フィルムから離して配置されているものほど透過率を上げるように前記制御装置で制御されることを特徴とした車室内表示システム。
【請求項4】
前記濃淡調整具は、前記境界領域で前記調光フィルムから離れるほど光の透過率が段階的に又は徐々に上がっているグラデーションフィルムであることを特徴とした請求項1に記載の車室内表示システム。
【請求項5】
前記境界領域における前記濃淡調整具の透過率は、前記調光フィルムから離れるほど、前記調光フィルムの最高透過率よりも低い透過率から段階的に又は徐々に上げることを特徴とした請求項1から4の内の何れか1つに記載の車室内表示システム。
【請求項6】
前記透過具は、車両の窓硝子であることを特徴とした請求項1から5の内の何れか1つに記載の車室内表示システム。
【請求項7】
前記透過具は、車両のフロント硝子であることを特徴とした請求項1から5の内の何れか1つに記載の車室内表示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の室内(車室内)で情報を表示させる車室内表示システムが知られている。車室内表示システムは、車室内の所定の表示領域で情報を表示する表示装置と、その情報を表示装置に表示させる制御装置と、を備える。この種の車室内表示システムについては、例えば、下記の特許文献1及び2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-142982号公報
【文献】特開2005-184225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車室内の明るさは、車外の明るさ等の影響を受けて変化する。そして、その車室内の明るさの変化は、表示領域やその周囲でも生じるので、表示領域に表示された情報の視認性に影響を与える。
【0005】
本発明は、表示領域の情報の視認性を向上させ得る車室内表示システムを提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する為、本発明は、投射情報の投射光を投射して、車室内から視認し得る位置に設けた少なくとも1箇所の表示領域に前記投射情報を表示させる表示装置と、前記表示装置を制御して、前記表示装置から前記投射光を投射させる制御装置と、を備え、前記表示領域又は前記表示領域に向けた車室内の乗員の視線の先に存在する透過具の前記投射光の投射領域には、印加電圧の電圧値に応じて光の透過率を変化させる調光フィルムと、前記調光フィルムに重ね合わせつつ、前記調光フィルムの端部から食み出した境界領域で、前記調光フィルムから離れるほど光の透過率が段階的に又は徐々に上がる濃淡調整具と、を設け、前記制御装置は、前記表示領域に映し出された前記投射情報を車室内の乗員が視認し得るように、車外の明るさに応じて前記調光フィルムの透過率を変化させる調光制御部を有することを特徴としている。また、上記目的を達成する為、本発明は、投射情報の投射光を投射して、車室内から視認し得る位置に設けた少なくとも1箇所の表示領域に前記投射情報を表示させる表示装置と、前記表示装置を制御して、前記表示装置から前記投射光を投射させる制御装置と、を備え、前記表示領域又は前記表示領域に向けた車室内の乗員の視線の先に存在する透過具の前記投射光の投射領域には、印加電圧の電圧値に応じて光の透過率を変化させる調光フィルムと、前記調光フィルムの端部から食み出した境界領域で、前記調光フィルムから離れるほど光の透過率が段階的に又は徐々に上がる濃淡調整具と、を設け、前記制御装置は、前記表示領域に映し出された前記投射情報を車室内の乗員が視認し得るように、車外の明るさに応じて前記調光フィルムの透過率を変化させる調光制御部を有し、前記濃淡調整具は、複数枚の濃淡調整用調光フィルムを備え、複数枚の前記濃淡調整用調光フィルムは、前記境界領域で前記調光フィルムから離れるほど積層枚数が少なくなるように1枚ずつずらしながら重ね合わせ、各々が同等の透過率となるように前記制御装置で制御されることを特徴としている。また、上記目的を達成する為、本発明は、投射情報の投射光を投射して、車室内から視認し得る位置に設けた少なくとも1箇所の表示領域に前記投射情報を表示させる表示装置と、前記表示装置を制御して、前記表示装置から前記投射光を投射させる制御装置と、を備え、前記表示領域又は前記表示領域に向けた車室内の乗員の視線の先に存在する透過具の前記投射光の投射領域には、印加電圧の電圧値に応じて光の透過率を変化させる調光フィルムと、前記調光フィルムの端部から食み出した境界領域で、前記調光フィルムから離れるほど光の透過率が段階的に又は徐々に上がる濃淡調整具と、を設け、前記制御装置は、前記表示領域に映し出された前記投射情報を車室内の乗員が視認し得るように、車外の明るさに応じて前記調光フィルムの透過率を変化させる調光制御部を有し、前記濃淡調整具は、複数枚の濃淡調整用調光フィルムを備え、複数枚の前記濃淡調整用調光フィルムは、前記境界領域で前記調光フィルムから離れる方向にて、互いに重ならないように間を詰めて又は間隔を空けて同一層に並べ、前記調光フィルムから離して配置されているものほど透過率を上げるように前記制御装置で制御されることを特徴としている。
【0007】
ここで、前記境界領域における前記濃淡調整具の透過率は、前記調光フィルムから離れるほど、前記調光フィルムの最高透過率よりも低い透過率から段階的に又は徐々に上げることが望ましい。
【0008】
また、前記濃淡調整具は、前記境界領域で前記調光フィルムから離れるほど光の透過率が段階的に又は徐々に上がっているグラデーションフィルムであることが望ましい。
【0009】
また、前記透過具は、車両の窓硝子であることが望ましい。
【0010】
また、前記透過具は、車両のフロント硝子であることが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る車室内表示システムは、表示領域の投射情報を車室内の乗員が視認できるように、車外の明るさに応じて調光フィルムの透過率を変化させている。従って、この車室内表示システムは、表示領域の情報(投射情報)の視認性を向上させることができる。そして、この車室内表示システムは、調光フィルムの端部から食み出した境界領域で、この調光フィルムから離れるほど光の透過率が段階的に又は徐々に上がっている濃淡調整具を設けている。従って、この車室内表示システムは、調光フィルムとその周囲との境目が目立ち難くなり、走行中に車両が振動(上下動等)したときの乗員の目の疲労を軽減させることができるので、表示領域の情報(投射情報)の視認性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施形態の車室内表示システムを示すブロック図である。
図2図2は、実施形態の車室内表示システムの構成の一例を説明する図である。
図3図3は、車室内表示の一例を示す図である。
図4図4は、透過具について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明に係る車室内表示システムの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0014】
[実施形態]
本発明に係る車室内表示システムの実施形態の1つを図1から図4に基づいて説明する。
【0015】
図1及び図2の符号1は、本実施形態の車室内表示システムを示す。先ずは車室内表示システム1の概要を説明し、その後、具体的な実施形態についての説明を行う。
【0016】
車室内表示システム1は、表示装置10と制御装置20とを備える。
【0017】
本実施形態の表示装置10とは、投射情報の投射光を投射して、車室内から視認し得る位置に設けた少なくとも1箇所の表示領域に投射情報を表示させる装置のことである。また、本実施形態の制御装置20とは、その投射情報を表示装置10に表示させるための制御を行う装置のことであり、表示装置10を制御して、この表示装置10から投射情報の投射光を投射させる。
【0018】
投射情報は、文字情報、アイコン等のマーク情報、画像情報、動画情報、経路案内情報、TV画面等、如何様なものであってもよい。動画情報には、自車両周辺(車両前方や車両後方等)を撮像する撮像装置の撮像情報も含む。
【0019】
表示装置10としては、車室内で表示領域として定められた場所に投射情報の投射光を直接投射して表示させる形態のものが考えられる。この場合の表示装置10は、車室内の壁面を表示領域として利用し、表示領域として定められた車室内の壁面に投射情報の投射光を直接投射する。例えば、車室内においては、内張り(車両のピラー、ドア又は天井等の内張り)の壁面、座席の背面側の壁面、ダッシュボードの壁面、インスツルメントパネルの壁面等を表示領域として利用することができる。これらの壁面においては、全面の中の1つの区画を1つの表示領域として設定してもよく、その1つの区画を複数に区分けした各々を表示領域に設定してもよい。
【0020】
この場合の表示領域には、印加電圧の電圧値に応じて光の透過率を変化させる調光フィルムを設ける。調光フィルムは、透過率を任意に変化させることができる。この調光フィルムは、例えば、車室内の壁面における表示領域として定められた部分に貼り付けて車室内側から覆ったり、車室内の壁面における表示領域として定められた部分と車室内側の透明の外装との間に介在させたりする。制御装置20は、その表示領域に投射情報の投射光が投射されるよう表示装置10を制御すると共に、その表示領域の投射情報を車室内の乗員が視認し得るように、車外の明るさに応じて調光フィルムの透過率を変化させる。例えば、制御装置20は、車外が明るいほど調光フィルムの透過率を下げていくことによって、表示領域に映し出された投射情報の視認性を向上させる。特に、表示領域として定められた車室内の壁面が淡色の場合には、車外が明るいほど投射情報が見え難くなるが、調光フィルムの透過率を下げて、表示領域を透明色又は淡色から濃色へと変化させることによって、表示領域に映し出された投射情報が見易くなる。
【0021】
更に、この場合の表示領域には、調光フィルムの端部から食み出した境界領域で、その調光フィルムから離れるほど光の透過率が段階的に又は徐々に上がる濃淡調整具を設ける。濃淡調整具は、調光フィルムとその周囲における車室内の淡色の壁面との間の濃淡の差(いうなればコントラスト比)を調整するためのものであり、1つの部材又は複数の部材で構成する。この濃淡調整具は、境界領域だけに設けてもよく、調光フィルムに重ね合わせてもよい。後者の濃淡調整具は、例えば、車室内の壁面における表示領域として定められた部分と調光フィルムとの間に介在させる。
【0022】
この車室内表示システム1においては、調光フィルムの透過率を下げるほど、調光フィルムとその周囲における車室内の淡色の壁面との間の濃淡の差が大きくなる。これに伴い、その間では、調光フィルムとその周囲における車室内の壁面との境目が目立ち易くなる。しかしながら、この車室内表示システム1では、調光フィルムとその周囲における車室内の壁面との間の境界領域に、調光フィルムから離れるほど光の透過率が段階的に又は徐々に上がる濃淡調整具を設けている。これにより、この車室内表示システム1においては、調光フィルムとその周囲における車室内の壁面との境目が目立ち難くなるので、表示領域に映し出された投射情報の視認性が向上する。
【0023】
また、表示装置10としては、表示領域に向けた車室内の乗員の視線(アイポイントEP(図2)を起点とする視線)の先に存在する透過具の投射領域に投射情報の投射光を投射し、その投射領域の更にその先の表示領域に投射情報の虚像を表示させる形態のものが考えられる。この場合の表示装置10とは、所謂ヘッドアップディスプレイシステムの表示装置のことをいう。よって、この場合の表示領域とは、ヘッドアップディスプレイシステムの虚像の表示領域のことをいう。また、この場合の透過具とは、ヘッドアップディスプレイシステムの投射光を透過させることが可能な部材のことであり、例えば、車両の窓硝子やヘッドアップディスプレイシステムのコンバイナ等が該当する。この透過具においては、全面の中の1つの区画を1つの投射領域として設定してもよく、その1つの区画を複数に区分けした各々を投射領域に設定してもよい。
【0024】
透過具における投射光の投射領域には、印加電圧の電圧値に応じて光の透過率を変化させる調光フィルムを設ける。調光フィルムは、例えば、透過具の投射領域に車室内側から貼り付けたり、透過具の中に介在させたりする。制御装置20は、その投射領域に投射情報の投射光が投射されるよう表示装置10を制御すると共に、表示領域に映し出された投射情報を車室内の乗員が視認し得るように、車外の明るさに応じて調光フィルムの透過率を変化させる。例えば、制御装置20は、車外が明るいほど調光フィルムの透過率を下げていくことによって、投射領域を透明色又は淡色から濃色へと変化させ、投射領域の背景を視認させ難くする。制御装置20は、このようにして表示領域に映し出された投射情報を見易くして、その投射情報の視認性を向上させる。更に、制御装置20は、車外が明るいほど調光フィルムの透過率を下げていくことによって、投射領域を透明色又は淡色から濃色へと変化させ、投射領域とその周囲の透過具の先の背景との間のコントラストを高める。制御装置20は、このようにして表示領域に映し出された投射情報を見易くして、その投射情報の視認性を向上させる。一方、制御装置20は、車外が暗いほど調光フィルムの透過率を上げていくことによって、投射領域を濃色から透明色又は淡色へと変化させる。この透過率の上昇は、例えば、投射情報を表示させないときに、投射領域の背景を視認し易くするので、乗員の視界を広げることができる。
【0025】
更に、透過具における投射光の投射領域には、調光フィルムの端部から食み出した境界領域で、その調光フィルムから離れるほど光の透過率が段階的に又は徐々に上がる濃淡調整具を設ける。この濃淡調整具は、境界領域だけに設けてもよく、調光フィルムに重ね合わせてもよい。後者の濃淡調整具は、例えば、調光フィルムを車室内側から貼り付けるのであれば、透過具の投射領域と調光フィルムとの間に介在させ、調光フィルムを透過具の中に介在させるのであれば、透過具の中で調光フィルムに重ね合わせる。
【0026】
この車室内表示システム1においては、車外が明るいときに調光フィルムの透過率を下げるほど、調光フィルムとその周囲の透過具との間の濃淡の差(いうなればコントラスト比)が大きくなる。これに伴い、その間では、調光フィルムとその周囲の透過具との境目が目立ち易くなる。しかしながら、この車室内表示システム1では、調光フィルムとその周囲の透過具との間の境界領域に、調光フィルムから離れるほど光の透過率が段階的に又は徐々に上がる濃淡調整具を設けている。これにより、この車室内表示システム1においては、調光フィルムとその周囲の透過具との境目が目立ち難くなるので、表示領域に映し出された投射情報の視認性が向上する。
【0027】
続いて、この車室内表示システム1の具体的な実施形態について説明する。
【0028】
本実施形態の車室内表示システム1は、ヘッドアップディスプレイシステムとして構成されたものを例示する。この例示では、制御装置20で作像された投射情報を表示装置10で表示させる。また、この例示の透過具30は、車両のフロント硝子であり、車両の下方側を投射領域31として設定している(図1から図3)。この例示では、複数の投射領域31(ここでは、第1から第4の投射領域31a-31d)が車幅方向に並べて配置されている(図1及び図3)。この表示装置10では、第1投射部11aを車両左側方側に配置し、第4投射部11dを車両右側方側に配置している。
【0029】
表示装置10は、制御装置20で作像された投射情報の投射光を投射させる投射部11を備える(図1及び図2)。この表示装置10は、第1から第4の投射領域31a-31d毎に投射部11(第1から第4の投射部11a-11d)を備えている(図1)。
【0030】
投射部11は、投射情報を表示する表示部12を備えている(図1及び図2)。この投射部11は、その表示部12を投射領域31に向けた状態でダッシュボード101に埋設されている。投射部11は、表示部12に投射情報の表示像を表示させることで、ダッシュボード101の開口101aを介して、その表示像の投射光を投射領域31に向けて投射させる(図2)。この表示装置10においては、その投射領域31で投射光が車外側に透過し、その透過先に乗員が視認し得る表示像の虚像が形成される。ここでは、その虚像が形成されている位置を、便宜上、表示領域15と定義する(図2)。
【0031】
制御装置20は、投射情報を生成する投射情報生成部21と、生成された投射情報を表示装置10に送信する情報送信部22と、を有する(図1及び図2)。この例示の制御装置20は、投射情報生成部21で投射情報の表示像情報を生成し、その表示像情報を情報送信部22が表示装置10に送信する。表示装置10では、その表示像情報に基づいた表示像を表示部12に表示させる。
【0032】
投射情報生成部21は、第1から第4の投射部11a-11dのそれぞれの表示部12に表示させる投射情報の表示像情報を各々生成する。ここでは、その一例を示す。
【0033】
例えば、第1投射部11aの表示部12には、左サイドミラーに映し出されるミラー情報に相当する表示像を表示させる。車両左側方に設けた第1撮像装置41(図1及び図2)は、車両左側方且つ車両後方の自車両周辺を撮像し、その撮像情報を制御装置20に送信する。投射情報生成部21は、その撮像情報に基づいて第1投射部11aの表示像情報を生成する。制御装置20は、その表示像情報に基づいた表示像を第1投射部11aの表示部12に表示させ、その表示像の投射光を第1投射領域31aに投射させる。これにより、左サイドミラーのミラー情報に相当する表示像の虚像は、乗員の視線の先にある第1投射領域31aに表示されているかの如く(図3)、投射光の透過先の表示領域15に形成される(図2)。
【0034】
第4投射部11dの表示部12には、右サイドミラーに映し出されるミラー情報に相当する表示像を表示させる。車両右側方に設けた第2撮像装置42(図1及び図2)は、車両右側方且つ車両後方の自車両周辺を撮像し、その撮像情報を制御装置20に送信する。投射情報生成部21は、その撮像情報に基づいて第4投射部11dの表示像情報を生成する。制御装置20は、その表示像情報に基づいた表示像を第4投射部11dの表示部12に表示させ、その表示像の投射光を第4投射領域31dに投射させる。これにより、カーナビゲーションシステム51の表示情報に関わる表示像の虚像は、乗員の視線の先にある第2投射領域31bに表示されているかの如く(図3)、投射光の透過先の表示領域15に形成される(図2)。
【0035】
第2投射部11bの表示部12には、カーナビゲーションシステム51(図1及び図2)の表示情報(経路案内情報等)に関わる表示像を表示させる。この場合、投射情報生成部21は、例えば、カーナビゲーションシステム51から表示情報を受け取り、その表示情報に基づいて第2投射部11bの表示像情報を生成する。例えば、ここでは、次の分岐点などの簡易経路情報を生成する。制御装置20は、その表示像情報に基づいた表示像を第2投射部11bの表示部12に表示させ、その表示像の投射光を第2投射領域31bに投射させる。これにより、カーナビゲーションシステム51の表示情報に関わる表示像の虚像は、乗員の視線の先にある第2投射領域31bに表示されているかの如く(図3)、投射光の透過先の表示領域15に形成される(図2)。
【0036】
第3投射部11cの表示部12には、自車両情報(車速情報等)に関わる表示像を表示させる。この場合、投射情報生成部21は、例えば、車速センサ61(図1及び図2)から車速情報を受け取り、その車速情報に基づいて第3投射部11cの表示像情報を生成する。制御装置20は、その表示像情報に基づいた表示像を第3投射部11cの表示部12に表示させ、その表示像の投射光を第3投射領域31cに投射させる。これにより、車速情報に関わる表示像の虚像は、乗員の視線の先にある第3投射領域31cに表示されているかの如く(図3)、投射光の透過先の表示領域15に形成される(図2)。
【0037】
本実施形態の車室内表示システム1は、投射領域31(第1から第4の投射領域31a-31d)に調光フィルム35を設けている(図2及び図3)。この例示の透過具30は、2枚の板状の硝子30a,30bの間に2枚の中間膜30cを設け、更にその2枚の中間膜30cの間に調光フィルム35を介在させた所謂合せ硝子である(図4)。尚、この例示では、硝子30aを車室内側に配置し、硝子30bを車室外側に配置している。
【0038】
調光フィルム35は、電圧を印加するための通電部材(図示略)とSPD(Suspended Particle Device)層とを備えており、その通電部材を介して制御装置20が電気的に接続されている。この例示では、全ての投射領域31(第1から第4の投射領域31a-31d)に亘って1枚の調光フィルム35を設けている(図3)。制御装置20は、その通電部材に電圧を印加して、調光フィルム35の光の透過率を変化させる調光制御部23を有する(図1及び図2)。その調光制御部23は、調光フィルム35の目標透過率に応じた電圧値の電圧を印加する。
【0039】
ここで、調光制御部23は、表示領域15に形成された投射情報の表示像の虚像を車室内の乗員が視認し得るように、車外の明るさに応じて調光フィルム35の透過率を変化させる。本実施形態の車室内表示システム1は、車外の明るさを把握するべく、車外の明るさに関わる検出情報を検出する車外情報検出装置70(図1及び図2)を備える。そして、制御装置20は、その車外情報検出装置70の検出情報に基づいて車外の明るさを推定する車外情報推定部24を有する(図1及び図2)。
【0040】
例えば、ここでは、ステレオカメラ等の撮像装置を車外情報検出装置70として利用する。車外情報検出装置70は、車外の周辺情報(例えば、車両進行方向の道路や建物等)を撮像し、その撮像情報を制御装置20に送信する。車外情報推定部24は、その撮像情報から画素毎の輝度値を算出し、その輝度値に基づいて車外の明るさを推定する。例えば、車外情報推定部24は、各画素の輝度値の平均値を算出し、その平均値を車外の明るさ情報として利用する。調光制御部23は、その車外の明るさ情報に基づいて調光フィルム35の目標透過率を算出し、その目標透過率まで調光フィルム35の透過率を変化させる。目標透過率は、表示領域15に形成された投射情報の表示像の虚像を車室内の乗員が視認できる値とする。この車室内表示システム1においては、車外の明るさ情報と目標透過率との対応関係を予めマップデータとして用意しておく。
【0041】
尚、車外の明るさ情報は、車車間通信や路車間通信を利用して取得してもよい。
【0042】
更に、本実施形態の車室内表示システム1は、投射領域31(第1から第4の投射領域31a-31d)に濃淡調整具36を設けている(図2及び図3)。この例示の濃淡調整具36は、調光フィルム35に重ね合わせつつ、この調光フィルム35の端部から食み出させている。ここでは、調光フィルム35の車両上方側の端部から濃淡調整具36を食み出させている。透過具30においては、調光フィルム35と2枚の中間膜30cの内の何れか一方との間に濃淡調整具36を配置する(図4)。この例示では、調光フィルム35と車室外側の中間膜30cとの間に濃淡調整具36を配置している。
【0043】
その端部から食み出した境界領域32において、濃淡調整具36は、調光フィルム35から離れるほど(つまり、車両上方に向かうほど)、光の透過率が段階的に又は徐々に上がっている。その境界領域32における濃淡調整具36の透過率は、調光フィルム35から離れるほど、調光フィルム35の最高透過率よりも低い透過率から段階的に又は徐々に上げている。この境界領域32における濃淡調整具36の透過率は、調光フィルム35とその端部側の周囲の透過具30との間での濃淡の移り変わりが乗員にとって違和感の無いものとすることが望ましい。例えば、この境界領域32における濃淡調整具36の透過率は、調光フィルム35から離れるほど、調光フィルム35の最高目標透過率よりも低い透過率から段階的に又は徐々に上げていればよい。調光フィルム35の最高目標透過率とは、本システムでの制御対象となる最も高い透過率のことをいう。これにより、この車室内表示システム1においては、調光フィルム35とその端部側の周囲の透過具30との境目が目立ち難くなる。
【0044】
具体的に、この例示の濃淡調整具36としては、境界領域32で調光フィルム35から離れるほど光の透過率が段階的に又は徐々に上がっているグラデーションフィルムを用いている。そのグラデーションフィルムは、調光フィルムとは異なり、透過率を任意に変化させることができない。この例示のグラデーションフィルムは、調光フィルム35に重ね合わせつつ、この調光フィルム35の車両上方側の端部から食み出させている。
【0045】
また、濃淡調整具36は、複数枚の調光フィルム(図示略)で構成してもよい。例えば、その濃淡調整用の複数枚の調光フィルムは、境界領域32で調光フィルム35から離れるほど積層枚数が少なくなるように、1枚ずつずらしながら重ね合わせていく。この場合の濃淡調整具36は、例えば、それぞれの濃淡調整用の調光フィルムが同等の透過率となるように制御装置20で制御することによって、境界領域32で調光フィルム35から離れるほど光の透過率を段階的に上げていくことができる。また、濃淡調整用の複数枚の調光フィルムは、境界領域32で調光フィルム35から離れる方向にて、互いに重ならないように間を詰めて又は間隔を空けて、例えば同一層に並べてもよい。この場合の濃淡調整具36は、例えば、調光フィルム35から離して配置されている濃淡調整用の調光フィルムほど透過率を上げるように制御装置20で制御することによって、境界領域32で調光フィルム35から離れるほど光の透過率を段階的に上げていくことができる。
【0046】
以上示したように、本実施形態の車室内表示システム1は、表示領域15の投射情報を車室内の乗員が視認できるように、車外の明るさに応じて調光フィルム35の透過率を変化させている。従って、この車室内表示システム1は、表示領域15の情報(投射情報)の視認性を向上させることができる。例えば、この具体例の車室内表示システム1は、投射領域31とその周囲の背景との間のコントラストを高めることができるので、その投射領域31に投射された投射情報の表示領域15での視認性が向上する。また、この具体例の車室内表示システム1は、そのコントラスト比によって、調光フィルム35の無いシステムと比較して、より精密な投射情報を表示領域15に表示させることができる。また、この具体例の車室内表示システム1は、調光フィルム35の無いシステムと比較して、表示装置10の輝度を高めずとも済むので、安価な低輝度の表示装置10を適用することができる。また、この具体例の車室内表示システム1は、車外が暗いほど調光フィルム35の透過率を上げていくことによって、投射情報を表示させないときの投射領域31の背景が視認し易くなるので、乗員の視界を広げることができる。
【0047】
更に、本実施形態の車室内表示システム1は、調光フィルム35の端部から食み出した境界領域32で、この調光フィルム35から離れるほど光の透過率が段階的に又は徐々に上がる濃淡調整具36を設けている。従って、この車室内表示システム1は、調光フィルム35とその周囲との境目が目立ち難くなり、走行中に車両が振動(上下動等)したときの乗員の目の疲労を軽減させることができるので、表示領域15の情報(投射情報)の視認性を向上させることができる。また、この車室内表示システム1は、調光フィルム35とその周囲との境目が目立ち難くなることで、美観を向上させることができる。更に、この車室内表示システム1は、濃淡調整具36を調光フィルム35に重ね合わせることによって、調光フィルム35の最低透過率が0%でなければ、濃淡調整具36を用いて表示領域(先に示した車室内のピラー等の壁面)又は投射領域31の透過率を下げることができる。よって、この車室内表示システム1は、その表示領域又は投射領域31とその周囲の背景との間のコントラストを更に高めることができるので、その表示領域又は投射領域31に投射された投射情報の表示領域15での視認性を更に向上させることができる。
【0048】
ところで、その具体例の車室内表示システム1では、複数の投射領域31(第1から第4の投射領域31a-31d)を車幅方向に並べて配置しているので、その全ての投射領域31に亘る1枚の調光フィルム35を設けている。故に、この車室内表示システム1においては、投射領域31毎に透過率を変化させることができない。そこで、車室内表示システム1は、投射領域31毎に1枚ずつ調光フィルム35を設け、その投射領域31毎に調光フィルム35の目標透過率を変更してもよい。例えば、ここまでの説明では車外の明るさ情報をパラメータにして目標透過率を算出しているが、この車室内表示システム1においては、その車外の明るさ情報と共に、投射情報の内容(具体的には輝度等)もパラメータにして投射領域31毎に目標透過率を算出してもよい。これにより、この車室内表示システム1は、投射情報の内容に応じた更に適切なコントラスト比となるので、表示領域15の情報(投射情報)の視認性をより向上させることができる。この場合には、調光フィルム35毎に1つずつ濃淡調整具36を設ける。それぞれの濃淡調整具36は、境界領域32の透過率が全ての調光フィルム35で同じものとなるようにしてもよく、境界領域32の透過率が調光フィルム35毎に異なるものとなるようにしてもよい。その何れの場合でも、境界領域32の透過率は、先の例示の如く定める。
【0049】
また、この車室内表示システム1では、表示装置10の投射部11が表示部12を有するものとして例示したが、その投射部11として発光ダイオード等の光源を用いてもよい。例えば、表示装置10においては、第1投射部11aと第4投射部11dとを光源にする。これにより、この車室内表示システム1においては、制御装置20が車両左側方且つ車両後方から近づいてきた他車両を検知した際に、制御装置20が第1投射部11aを点灯又は点滅させ、その出射光を第1投射領域31aに映し出すことで、その他車両を乗員に認識させることができる。これと同様に、この車室内表示システム1においては、制御装置20が車両右側方且つ車両後方から近づいてきた他車両を検知した際に、制御装置20が第4投射部11dを点灯又は点滅させ、その出射光を第4投射領域31dに映し出すことで、その他車両を乗員に認識させることができる。
【符号の説明】
【0050】
1 車室内表示システム
10 表示装置
15 表示領域
20 制御装置
23 調光制御部
24 車外情報推定部
30 透過具
31 投射領域
31a 第1投射領域
31b 第2投射領域
31c 第3投射領域
31d 第4投射領域
32 境界領域
35 調光フィルム
36 濃淡調整具
70 車外情報検出装置
図1
図2
図3
図4