(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-08
(45)【発行日】2022-04-18
(54)【発明の名称】エンジン駆動溶接機
(51)【国際特許分類】
B23K 9/073 20060101AFI20220411BHJP
【FI】
B23K9/073 515
(21)【出願番号】P 2018122957
(22)【出願日】2018-06-28
【審査請求日】2021-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】509264132
【氏名又は名称】株式会社やまびこ
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸岡 忠司
(72)【発明者】
【氏名】西元 崇
(72)【発明者】
【氏名】風呂川 尚史
【審査官】山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-195929(JP,A)
【文献】特開2001-298994(JP,A)
【文献】特開2010-131664(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0309053(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2001/0025838(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/00 - 9/32、10/00 - 10/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の直流電源とそれぞれの直流電源に対応した複数組の溶接出力端子とを有するエンジン駆動溶接機であって、
使用者による前記各直流電源の電流設定を受け、該電流設定に基づく設定信号を出力する電流設定手段と、
前記複数の直流電源の出力をまとめて所定の前記溶接出力端子である第1出力端子から出力させる第1出力モードと、前記直流電源からの出力電流を個別の前記溶接出力端子から出力させる第2出力モードとを切り替える出力切替手段と、
前記電流設定手段から前記設定信号を受け、該設定信号にしたがって前記出力切替手段を制御して、前記電流設定値が所定の電流値以上の場合に前記第1出力モードに、前記電流設定値が所定の電流値未満の場合に前記第2出力モードに、自動的に切り替えるコントローラとを備えている
ことを特徴とするエンジン駆動溶接機。
【請求項2】
請求項1において、
前記複数組の溶接出力端子のうちの少なくとも1組から出力される出力電流を測定する電流測定手段を備え、
前記コントローラは、前記出力電流が流れていないと判断した場合に、前記出力切替手段を制御する
ことを特徴とするエンジン駆動溶接機。
【請求項3】
請求項2において、
前記コントローラは、前記第2出力モードから前記第1出力モードへの切り替えにおいて、前記第1出力端子に対して追加で出力電流を供給する前記直流電源の出力を停止させた後に、前記出力切替手段を切り替える
ことを特徴とするエンジン駆動溶接機。
【請求項4】
請求項1において、
前記複数組の溶接出力端子のうちの少なくとも前記所定の溶接出力端子から出力される出力電流を測定する電流測定手段を備え、
前記コントローラは、前記エンジン駆動溶接機が前記第1出力モードに設定されている場合において、前記電流測定手段に電流が流れている間、前記第1出力モードの設定を維持する
ことを特徴とするエンジン駆動溶接機。
【請求項5】
請求項1において、
前記第1出力モードに固定する第1出力固定モード、前記第2出力モードに固定する第2出力固定モード及び自動切替モードのうちいずれか1つを設定するモード切替スイッチを備え、
前記コントローラは、前記モード切替スイッチが前記自動切替モードに設定されている場合に、前記出力切替手段を自動的に切り替える
ことを特徴とするエンジン駆動溶接機。
【請求項6】
請求項1において、
前記複数の溶接出力端子の出力電流を表示する表示手段とを有し、
前記コントローラは、前記第1出力モードにする場合に、前記所定の溶接出力端子以外の溶接出力端子に対応する前記表示手段を非表示状態またはゼロ表示状態にさせる
ことを特徴とするエンジン駆動溶接機。
【請求項7】
請求項6において、
前記コントローラは、前記第2出力モードにする場合に、すべての前記溶接出力端子に対応する前記表示手段を表示状態にさせる
ことを特徴とするエンジン駆動溶接機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンによって駆動される発電体で発電された電力を出力するエンジン駆動溶接機に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジン駆動溶接機において、1人用と2人用とを切り替えることができるように構成されたものが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、2組の溶接出力端子から個別に溶接電流を出力する2人用運転モードと、両者を並列接続して溶接電流を出力する1人用運転モードとを切替器により切り替えることができるエンジン駆動溶接機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術では、1人用/2人用の接続の切り替えは、手動式のスイッチを用いており、以下のような問題点を有する。まず、1人用での大電流域と、2人用での小電流域とを交互に使用するような場合に、その都度切替スイッチを操作する必要がある。また、従来技術では、特許文献1の
図3に示されるように、1人用と2人用で、電流調整器の設定位置に対する設定電流値が異なる。そのため、切替スイッチにより1人用/2人用の接続の切り替えをするたびに、電流調整器で電流値を再調整する必要がある。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、電流調整部に設定された電流値に応じて、自動的に、大電流で少人数が接続可能な第1出力モードと、小電流の多人数接続可能な第2出力モードとの切り替えが可能に構成されたエンジン駆動溶接機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様に係るエンジン駆動溶接機は、複数の直流電源とそれぞれの直流電源に対応した複数組の溶接出力端子とを有する。エンジン駆動溶接機は、使用者による前記各直流電源の電流設定を受け、該電流設定に基づく設定信号を出力する電流設定手段と、前記複数の直流電源の出力をまとめて所定の前記溶接出力端子である第1出力端子から出力させる第1出力モードと、前記直流電源からの出力電流を個別の前記溶接出力端子から出力させる第2出力モードとを切り替える出力切替手段と、前記電流設定手段から前記設定信号を受け、該設定信号にしたがって前記出力切替手段を制御して、前記電流設定が所定の電流値以上の場合に前記第1出力モードに、前記電流設定が所定の電流値未満の場合に前記第2出力モードに、自動的に切り替えるコントローラとを備えていることを特徴とする。
【0008】
本態様によると、コントローラが、電流設定手段により設定された電流設定に応じて出力モード(第1出力モード,第2出力モード)を自動的に切り替えるようにしている。これにより、使用者による特別な操作(例えば、特許文献1に係る切替器の切り替え操作)を受ける必要がない。さらに、特許文献1の技術のように、切替スイッチにより1人用/2人用の接続の切り替えをするたびに、電流調整器(電流設定手段に相当)で電流値を再調整するような作業も必要がない。
【0009】
前記複数組の溶接出力端子のうちの少なくとも1組から出力される出力電流を測定する電流測定手段を備え、前記コントローラは、前記出力電流が流れていないと判断した場合に、前記出力切替手段を制御する、としてもよい。
【0010】
ここで、「出力電流が流れていないと判断した場合」とは、例えば、電流測定手段で測定された電流が実質的に流れていない場合である。すなわち、出力電流として微弱な電流が流れていて、電流測定手段で微弱な電流が検知されている状態を含む概念である。例えば、出力電流が流れていないと判断するのにあたり、製品規格等に基づいて所定の閾値を設け、その閾値を下回った場合に、出力電流が流れていないと判断するようにしてもよい。
【0011】
このように、コントローラが、出力電流が流れていないと判断した場合に出力切替手段を動作させることにより、出力モードの切り替えにより出力切替手段にストレスがかかることによる故障を回避することができる。
【0012】
さらに、前記コントローラは、前記第2出力モードから前記第1出力モードへの切り替えにおいて、前記第1出力端子に対して追加で出力電流を供給する前記直流電源の出力を停止させた後に、前記出力切替手段を切り替えるようにしてもよい。
【0013】
これにより、出力モードの切り替え時に、出力切替手段にかかるストレスを低減することができる。
【0014】
また、前記複数組の溶接出力端子のうちの少なくとも前記所定の溶接出力端子から出力される出力電流を測定する電流測定手段を備え、前記コントローラは、前記エンジン駆動溶接機が前記第1出力モードに設定されている場合において、前記電流測定手段に電流が流れている間、前記第1出力モードの設定を維持する、としてもよい。
【0015】
これにより、電流設定値の大幅な増加/減少による頻繁な切替リレー動作を回避することができる。
【0016】
前記第1出力モードに固定する第1出力固定モード、前記第2出力モードに固定する第2出力固定モード及び自動切替モードのうちいずれか1つを設定するモード切替スイッチを備え、前記コントローラは、前記モード切替スイッチが前記自動切替モードに設定されている場合に、前記出力切替手段を自動的に切り替えるようにしてもよい。
【0017】
これにより、エンジン駆動溶接機の動作方法の多様性が増し、使用者の利便性が向上する。
【0018】
前記複数の溶接出力端子の出力電流を表示する表示手段とを有し、前記コントローラは、前記第1出力モードにする場合に、前記所定の溶接出力端子以外の溶接出力端子に対応する前記表示手段を非表示状態にさせるようにしてもよい。
【0019】
前記コントローラは、前記第2出力モードにする場合に、すべての前記溶接出力端子に対応する前記表示手段の表示画面を表示状態にさせるようにしてもよい。
【0020】
これらの態様によると、使用者に対して、出力電流が出力される溶接出力端子/出力電流が出力されない溶接出力端子を明確に示すことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、電流設定手段に受け付けた出力電流設定に応じて、自動的に出力モードの切り替えができるので、使用者による操作の手間を削減し、利便性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施形態に係るエンジン駆動溶接機の概略構成図
【
図2A】エンジン駆動溶接機の動作の一例を示すフロー図
【
図2B】エンジン駆動溶接機の動作の一例を示すフロー図
【
図2C】エンジン駆動溶接機の動作の一例を示すフロー図
【
図3A】操作部の設定例及び表示部の表示例を示す図
【
図3B】操作部の設定例及び表示部の表示例を示す図
【
図3C】操作部の設定例及び表示部の表示例を示す図
【
図3D】操作部の設定例及び表示部の表示例を示す図
【
図3E】操作部の設定例及び表示部の表示例を示す図
【
図3F】操作部の設定例及び表示部の表示例を示す図
【
図4】エンジン駆動溶接機の他の例を示す概略構成図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0024】
本実施形態に係るエンジン駆動溶接機は、エンジンによって駆動される複数の発電巻線を巻装した発電体を有し、それぞれの発電巻線が発生する交流電力を整流し、それぞれに対応する溶接出力端子から出力する機能を備える。すなわち、本実施形態に係るエンジン駆動溶接機は、複数の直流電源を有し、複数の直流電源の出力をまとめて所定の溶接出力端子から出力させる出力統合機能を備えている。さらに、エンジン駆動溶接機は、それぞれの直流電源からの出力電流を個別の溶接出力端子に出力させる個別出力機能を備えている。そして、後述する電流設定手段としての出力調整ダイヤルに設定された設定値に応じて、出力を統合させる出力統合設定と個別に出力させる個別出力設定とを自動的に切り替えることができる点に特徴を有するエンジン駆動溶接機である。
【0025】
以下において、具体的に説明する。
【0026】
<エンジン駆動溶接機の構成>
図1は、本実施形態に係るエンジン駆動溶接機1の概略構成を示す図である。
【0027】
エンジン駆動溶接機1は、複数の直流電源2,3と、エンジン溶接機1の動作を制御する機能を有するコントローラ4とを備えている。
図1では、発明の理解を容易にするために、2つの直流電源2,3を備えている例を示している。また、説明の便宜上、図面上側の直流電源を第1直流電源2といい、図面下側の直流電源を第2直流電源3というものとする。
【0028】
第1直流電源2は、エンジン11で駆動される発電体の第1発電巻線12aが発生する交流電力を第1整流器21によって整流し、整流された直流電力を、第1配電線22を介して第1溶接出力端子23から出力するように構成されている。
【0029】
第2直流電源3は、エンジン11で駆動される発電体の第2発電巻線12bが発生する交流電力を出力回路としての第2整流器31によって整流し、整流された直流電力を、第2配電線32を介して第2溶接出力端子33から出力するように構成されている。
【0030】
第1配電線22には、第1直流電源2の出力電流を測定する第1CTセンサCT1が取り付けられている。第1CTセンサCT1の測定結果は、コントローラ4に送られる。
【0031】
第2配電線32には、コントローラ4の制御を受けて、第2直流電源3の出力を、第2溶接出力端子33に接続するか、第1溶接出力端子23に接続するかを切り替える切替リレー71(出力切替手段に相当)が設けられている。さらに、第2配電線32には、第2直流電源3の出力電流を測定する電流測定手段としての第2CTセンサCT2が取り付けられている。第2CTセンサCT2の測定結果は、コントローラ4に送られる。
【0032】
さらに、エンジン駆動溶接機1には、使用者の操作を受ける操作部5と、第1及び第2直流電源2,3の出力電流を表示する表示部6とが設けられている。
【0033】
操作部5は、モード切替スイッチ51と、電流設定手段としての出力調整ダイヤル52とを含む。
【0034】
モード切替スイッチ51は、1人用の出力モードである「1人モード」、2人用の出力モードである「2人モード」及び「自動切替モード」の中から適用する出力モードを選択する(切り替える)ためのスイッチである。
【0035】
第1出力モードとしての「1人モード」は、第1及び第2直流電源2,3の出力をまとめて所定の溶接出力端子としての第1溶接出力端子23から出力させる出力モードであり、切替リレー71を第1直流電源2側(
図1上側[白丸側])に切り替えるモードである。
【0036】
第2出力モードとしての「2人モード」は、第1及び第2直流電源2,3からの出力電流を個別の溶接出力端子23,33に出力させる出力モードであり、切替リレー71を第2直流電源2側(
図1下側[黒丸側])に切り替えるモードである。
【0037】
「自動切替モード」は、「1人モード」と「2人モード」とを自動で切り替えるモードであり、具体的な切り替え方向については、後ほど詳細に説明する。
【0038】
なお、「1人モード」において、第1直流電源2の出力と第2直流電源3の出力とをまとめて、第2溶接出力端子33から出力させるように構成してもよく、同様の効果が得られる。
【0039】
出力調整ダイヤル52は、「2人モード」において、第1直流電源の出力を調整するためのダイヤル式の第1出力調整ダイヤル52aと、第2直流電源の出力を調整するためのダイヤル式の第2出力調整ダイヤル52bとを備えている。なお、「1人モード」では、第1出力調整ダイヤル52aにより、第1及び第2直流電源2,3の出力合計値を調整できるようになっている。
【0040】
表示部6は、第1直流電源2の出力電流を表示する第1表示部61と、第2直流電源3の出力電流を表示する第2表示部62とを備えている。第1及び第2表示部61,62には、操作部5の出力調整ダイヤル52で設定された設定値と、第1及び第2CTセンサCT1,CT2で測定された電流(
図3では「実電流」と記載)とが、それぞれ表示できるようになっている。なお、本明細書では、「CT1」「CT2」は、CTセンサ自体と、そのCTセンサで測定された測定値との両方を表す符号として用いる。
【0041】
例えば、
図3に示すように、第1及び第2表示部61,62は、出力電流が表示される7セグの表示画面と、表示画面に表示されている数値が「設定値」なのか「実電流」なのかを示す発光部とを備えている。以下の説明では、「設定値」を示す発光部を設定ランプ、「実電流」を示す発光部を実電流ランプと呼ぶものとする。
【0042】
より具体的に、表示部6は、「1人モード」において、第1直流電源2と第2直流電源3の出力電流の合計値CT0(CT1+CT2)を第1表示部61に表示する。また、表示部6は、「2人モード」において、第1直流電源2の出力電流の測定値CT1を第1表示部61に、第2直流電源3の出力電流の測定値CT2を第2表示部62に、それぞれ表示する。
【0043】
また、溶接出力端子23,33に対して電流が流れている場合、対応する表示部61,62の実電流ランプが点灯し、対応するCTセンサCT1,CT2で測定された電流が優先表示される。一方で、溶接出力端子23,33に対して電流が流れていない場合、表示部61,62の設定ランプが点灯し、出力調整ダイヤル52で設定された設定値が表示される。なお、「実電流」及び「設定値」の表示方法は、これに限定されず、電流が流れている場合に「実電流」及び「設定値」を交互表示させるなど、他の表示形態であってもよい。
【0044】
エンジン駆動溶接機1は、制御基板(図示省略)を備えており、そこには、コントローラ4としての機能を有するマイクロコントローラ等が搭載されている。
【0045】
コントローラ4では、モード切替スイッチ51の設定状態及び出力調整ダイヤル52の設定値を読み取り、その設定状態に応じて切替リレー71を制御する。また、コントローラ4は、第1CTセンサCT1の測定電流値に基づいて、第1表示部61の表示を制御する。同様に、コントローラ4は、第2CTセンサCT2の測定電流値に基づいて、第2表示部62の表示を制御する。具体的なコントローラ4の動作については、以下の「エンジン駆動溶接機の動作」において詳細に説明する。
【0046】
<エンジン駆動溶接機の動作>
次に、エンジン駆動溶接機1の動作及び制御について、
図1,
図2を参照しつつ具体的に説明する。
図2は、エンジン駆動溶接機1の動作の一例を示すフロー図である。なお、特に明記する場合を除いて、エンジン駆動溶接機1の動作の制御主体は、コントローラ4であるものとする。
【0047】
以下の説明では、
図1に示すように、第1及び第2直流電源2,3の双方にそれぞれ溶接作業装置8が接続されているものとする。具体的に、それぞれの直流電源2,3において、溶接出力端子23,33の正極に溶接トーチ81が、負極に溶接対象の鉄板83が接続されている。そして、溶接トーチ81の先端には、溶接棒82が装着されている。本実施形態では、溶接トーチ81、溶接棒82及び鉄板83を含む溶接作業に係る設備を総称して、溶接作業装置8と呼ぶものとし、第1溶接出力端子23に接続された溶接作業装置8を第1溶接作業装置8A、第2溶接出力端子33に接続された溶接作業装置8を第2溶接作業装置8Bと呼ぶものとする。
【0048】
ここで、後述するステップS21,S31,S43,S51及びステップS61では、第1出力調整ダイヤル52aの設定値が、所定の基準値以上、または、所定の基準値未満かどうかを判定する。以下の説明では、所定の基準値が196Aであるものとして説明する。この所定の基準値は、エンジン駆動溶接機1の出力能力等に応じて任意に設定することができる値である。例えば、所定の基準値は、それぞれの直流電源2,3が出力可能な最大電流値に基づいて設定される。すなわち、第1及び第2直流電源2,3から個別の溶接出力端子23,33に供給可能な最大電流値に設定される。すなわち、以下の説明では、説明の便宜上、第1及び第2直流電源2,3が供給可能な最大電流値がともに、195Aであるものとして説明する。ただし、上記最大電流値が195Aである必要はなく、また、第1及び第2直流電源2,3で最大電流値が互いに異なってもよく、以下の説明と同様の動作が可能であり、同様の効果が得られる。
【0049】
まず、
図2のステップS11において、コントローラ4は、モード切替スイッチ51の設定状態及び第1出力調整ダイヤル52aの設定値を読み取る。そして、第1出力調整ダイヤル52aの設定値に応じた「溶接モード」の初期値設定を行う。「溶接モード」には、「自動1人モード」及び「自動2人モード」がある。
【0050】
「自動1人モード」とは、モード切替スイッチ51が「自動切替モード」の場合に、本モードに設定されていると、切替リレー71が前述の「1人モード」に設定されることを示している。コントローラ4は、例えば、第1出力調整ダイヤル52aの設定値が196A以上の場合に「溶接モード」の初期値を「自動1人モード」に設定する。
【0051】
「自動2人モード」は、モード切替スイッチ51が「自動切替モード」の場合に、本モードに設定されていると、切替リレー71が前述の「2人モード」に設定されることを示している。コントローラ4は、例えば、第1出力調整ダイヤル52aの設定値が196A未満の場合に「溶接モード」の初期値を「自動2人モード」に設定する。
【0052】
なお、「溶接モード」の初期値設定は、後述するステップS15の「溶接モード」の判定までに行われていればよい。
【0053】
そして、ステップS12では、コントローラ4は、モード切替スイッチ51が「自動切替モード」(
図2,3では「自動」と記載)に設定されているかどうかを判定する。モード切替スイッチ51が「手動1人モード」(
図3では「1人用」と記載)または「手動2人モード」(
図3では「2人用」と記載)に設定されている場合(S12でNO)、フローはS13に進む。
【0054】
ステップS13では、コントローラ4は、エンジン駆動溶接機1の出力モードを、モード切替スイッチ51の設定に応じた出力モードに固定する。例えば、コントローラ4は、モード切替スイッチ51が「手動1人モード」の場合(第1出力固定モードに相当)、切替リレー71を「1人モード」に設定(固定)する。これにより、エンジン駆動溶接機1は、第1直流電源2の出力電流と第2直流電源3の出力電流とをまとめて第1溶接出力端子23から出力する。また、コントローラ4は、モード切替スイッチ51が「手動2人モード」の場合(第2出力固定モードに相当)、切替リレー71を「2人モード」に設定(固定)する。これにより、エンジン駆動溶接機1は、第1直流電源2の出力電流を第1溶接出力端子23から出力し、第2直流電源3の出力電流を第2溶接出力端子33から出力する。
【0055】
一方で、ステップS12において、モード切替スイッチ51が自動切替モードに設定されている場合、フローはステップS14に進む。以下において、ステップS14以降の動作について、場合分けして詳細に説明する。
【0056】
-動作例1-
本動作例では、
図3Aに示すように、モード切替スイッチ51が「自動切替モード」に設定され、初期状態における、第1出力調整ダイヤル52aの設定値が230A、第2出力調整ダイヤル52bの設定値が195Aであるものとする。すなわち、「溶接モード」の初期値が「自動1人モード」であるものとする。「自動1人モード」の場合、第2表示部62の表示は、非表示状態になる、すなわち、消灯している。
【0057】
また、第1溶接作業装置8Aは動作していて電流が供給されている一方、第2溶接作業装置8Bは動作を停止していて電流が供給されていないものとする。
【0058】
ステップS14では、第1CTセンサCT1の測定値に基づいて、第1直流電源2の出力電流が供給されているかどうかが判定される。ここでは、第1配電線22に電流が流れているので、ステップS14で「YES」となる。
【0059】
ステップS15では、「溶接モード」が「自動1人モード」と「自動2人モード」とのどちらに設定されているかが判定される。ここでは、「溶接モード」の初期値が「自動1人モード」に設定されているので、フローはステップS12に戻る。
【0060】
そして、第1配電線22に電流が流れ続けている間、すなわち、第1溶接作業装置8Aは動作している期間は、上記ステップS12からステップS15が繰り返される。すなわち、第1出力調整ダイヤル52aの設定値が195A以下(例えば、190A)になっても、「自動1人モード」が設定され、切替リレー71の設定は、「1人モード」のままである。これにより、頻繁にリレーが切り替わることを防ぐことができる。
【0061】
-動作例2-
本動作例では、
図3Bに示すように、モード切替スイッチ51が「自動切替モード」に設定され、初期状態における、第1出力調整ダイヤル52aの設定値が190A、第2出力調整ダイヤル52bの設定値が195Aであるものとする。すなわち、「溶接モード」の初期値が「自動2人モード」であるものとする。
【0062】
また、第1溶接作業装置8A及び第2溶接作業装置8Bが、ともに動作している、すなわち、両方ともに電流が供給されているものとする。さらに、所定時間の経過後に、第1出力調整ダイヤル52aの設定値が190Aから230Aに変更されるものとする。
【0063】
本動作例では、第1配電線22に電流が流れているので、ステップS14で「YES」となる。また、「溶接モード」の初期値が「自動2人モード」に設定されているので、フローがステップS15からステップS16に進む。
【0064】
ステップS16では、コントローラ4は、第2CTセンサCT2の測定値に基づいて、第2直流電源3の出力電流が供給されているかどうかを判定する。ここでは、第2配電線32に電流が流れているので、「YES」となり、フローはステップS21に進む。
【0065】
ステップS21では、第1出力調整ダイヤル52aの設定値が、196A以上かどうかが判定される。所定時間の経過前には、第1出力調整ダイヤル52aの設定値が190Aなので、ステップS21で「NO」となり、フローはステップS12に戻る。
【0066】
一方で、所定時間の経過後は、第1出力調整ダイヤル52aの設定値が196A以上になるので、ステップS21で「YES」となり、フローはステップS22に進む。
【0067】
ここで、本動作例では、第2溶接作業装置8Bに電流が供給されているので、第1出力調整ダイヤル52aの設定値が196A以上になっても、195Aを超える電流を第1溶接作業装置8Aに供給することができない。そこで、次のステップS22において、コントローラ4は、第1表示部61の数値を195Aのままにし、実電流ランプを点灯させたままにするとともに、第1表示部61の設定ランプを点滅させる(
図3Bの矢印の下参照)。このとき、第2表示部62は、従前の状態を維持する。
【0068】
これにより、第2直流電源3に接続された溶接作業装置8Bの作業中に切替リレー71が切り替わって作業に悪影響が出たり、切替リレー71に過度のストレスを与えられて切替リレー71が故障したり、エンジン駆動溶接機1自体が故障したりすることを防止できる。さらに、使用者に対しては、溶接作業装置8Bが作業中であるので第1出力調整ダイヤル52aの設定値どおりの電流が出力されないことを報知することができる。
【0069】
ステップS22の処理が終わると、フローはステップS12に戻る。
【0070】
-動作例3-
本動作例では、
図3Cに示すように、モード切替スイッチ51が「自動切替モード」に設定され、初期状態における、第1出力調整ダイヤル52aの設定値が190A、第2出力調整ダイヤル52bの設定値が195Aであるものとする。すなわち、「溶接モード」の初期値が「自動2人モード」であるものとする。
【0071】
また、第1溶接作業装置8Aは動作していて電流が供給されている一方、第2溶接作業装置8Bは動作を停止していて電流が供給されていないものとする。さらに、所定時間の経過後に、第1出力調整ダイヤル52aの設定値が190Aから230Aに変更されるものとする。
【0072】
ステップS14及びステップS15は、前述の「動作例2」と同じなので、ここでは説明を省略し、ステップS16以降の動作について説明する。
【0073】
本動作例では、第2配電線32に電流が流れていないので、ステップS16で「NO」となり、フローはステップS31に進む。
【0074】
ステップS31では、第1出力調整ダイヤル52aの設定値が、196A以上かどうかが判定される。所定時間の経過前には、第1出力調整ダイヤル52aの設定値が190Aなので、ステップS31で「NO」となり、フローはステップS12に戻る。
【0075】
一方で、所定時間の経過後は、第1出力調整ダイヤル52aの設定値が196A以上になるので、ステップS31で「YES」となり、フローはステップS32に進む。
【0076】
ここで、本動作例では、第2溶接作業装置8Bに電流が供給されていない。そこで、コントローラ4は、第2整流器31をオフ制御し(ステップS32)、切替リレー71を「1人モード」に設定し(ステップS33)、第2表示部62を消灯させ(ステップS34)、「溶接モード」を「自動1人モード」に設定して(ステップS35)、フローはステップS12に戻る。
【0077】
-動作例4-
本動作例では、
図3Dに示すように、モード切替スイッチ51が「自動切替モード」に設定され、初期状態における、第1出力調整ダイヤル52aの設定値が190A、第2出力調整ダイヤル52bの設定値が195Aであるものとする。すなわち、「溶接モード」の初期値が「自動2人モード」であるものとする。
【0078】
また、第1溶接作業装置8Aは動作を停止していて電流が供給されていない一方、第2溶接作業装置8Bは動作していて電流が供給されているものとする。さらに、所定時間の経過後に、第1出力調整ダイヤル52aの設定値が190Aから230Aに変更されるものとする。
【0079】
本動作例では、第1配電線22に電流が流れていないので、ステップS14で「NO」となり、フローは
図2BのステップS41に進む。
【0080】
ステップS41では、「溶接モード」が「自動1人モード」と「自動2人モード」とのどちらに設定されているかが判定される。ここでは、「溶接モード」の初期値が「自動2人モード」に設定されているので、フローはステップS42に進む。
【0081】
ステップS42では、コントローラ4は、第2CTセンサCT2の測定値に基づいて、第2直流電源3の出力電流が供給されているかどうかを判定する。ここでは、第2配電線32に電流が流れているので、「YES」となり、フローはステップS43に進む。
【0082】
ステップS43では、第1出力調整ダイヤル52aの設定値が、196A以上かどうかが判定される。所定時間の経過前には、第1出力調整ダイヤル52aの設定値が190Aなので、ステップS43で「NO」となり、フローは
図2AのステップS12に戻る。
【0083】
一方で、所定時間の経過後は、第1出力調整ダイヤル52aの設定値が196A以上になるので、ステップS43で「YES」となり、フローはステップS44に進む。
【0084】
ここで、本動作例では、第2溶接作業装置8Bに電流が供給されているので、第1出力調整ダイヤル52aの設定値が196A以上になっても、195Aを超える電流を第1溶接作業装置8Aに供給することができない。そこで、次のステップS44において、コントローラ4は、第1表示部61の数値を195Aのままにするとともに、第1表示部61の設定ランプを点滅させる。
【0085】
これにより、第2直流電源3に接続された溶接作業装置8Bの作業中に切替リレー71が切り替わって作業に悪影響が出たり、切替リレー71やエンジン駆動溶接機1自体が故障したりすることを防止できる。さらに、使用者に対しては、第1出力調整ダイヤル52aの設定値どおりの電流が出力されないことを報知することができる。ステップS44の処理が終わると、フローは
図2AのステップS12に戻る。
【0086】
-動作例5-
本動作例では、
図3Eに示すように、モード切替スイッチ51が「自動切替モード」に設定され、初期状態における、第1出力調整ダイヤル52aの設定値が190A、第2出力調整ダイヤル52bの設定値が195Aであるものとする。すなわち、「溶接モード」の初期値が「自動2人モード」であるものとする。
【0087】
また、第1溶接作業装置8A及び第2溶接作業装置8Bが、ともに動作していない、すなわち、両方ともに電流が供給されていないものとする。さらに、所定時間の経過後に、第1出力調整ダイヤル52aの設定値が190Aから230Aに変更されるものとする。
【0088】
ステップS14及びステップS41は、前述の「動作例4」と同じなので、ここでは説明を省略し、ステップS42以降の動作について説明する。
【0089】
本動作例では、第2配電線32に電流が流れていないので、ステップS42で「NO」となり、フローはステップS51に進む。
【0090】
ステップS51では、第1出力調整ダイヤル52aの設定値が、196A以上かどうかが判定される。所定時間の経過前には、第1出力調整ダイヤル52aの設定値が190Aなので、ステップS51で「NO」となり、フローは
図2AのステップS12に戻る。
【0091】
一方で、所定時間の経過後は、第1出力調整ダイヤル52aの設定値が196A以上になるので、ステップS51で「YES」となり、フローはステップS52に進む。
【0092】
ここで、本動作例では、第2溶接作業装置8Bに電流が供給されていない。そこで、コントローラ4は、切替リレー71を「1人モード」に設定し(ステップS52)、第2表示部62を消灯させ(ステップS53)、「溶接モード」を「自動1人モード」に設定して(ステップS54)、フローは
図2AのステップS12に戻る。
【0093】
-動作例6-
本動作例では、
図3Fに示すように、モード切替スイッチ51が「自動切替モード」に設定され、初期状態における、第1出力調整ダイヤル52aの設定値が230A、第2出力調整ダイヤル52bの設定値が195Aであるものとする。すなわち、「溶接モード」の初期値が「自動1人モード」であるものとする。
【0094】
また、第1溶接作業装置8A及び第2溶接作業装置8Bが、ともに動作していない、すなわち、両方ともに電流が供給されていないものとする。さらに、所定時間の経過後に、第1出力調整ダイヤル52aの設定値が230Aから180Aに変更されるものとする。
【0095】
本動作例では、第1配電線22に電流が流れていないので、ステップS14で「NO」となり、フローは
図2BのステップS41に進む。また、「溶接モード」の初期値が「自動1人モード」に設定されているので、フローがステップS41から
図2CのステップS61に進む。
【0096】
ステップS43では、第1出力調整ダイヤル52aの設定値が、196A未満かどうかが判定される。所定時間の経過前には、第1出力調整ダイヤル52aの設定値が230Aなので、ステップS61で「NO」となり、フローは
図2AのステップS12に戻る。
【0097】
一方で、所定時間の経過後は、第1出力調整ダイヤル52aの設定値が196A未満になるので、ステップS61で「YES」となり、フローはステップS62に進む。
【0098】
ここで、本動作例では、第1溶接作業装置8A及び第2溶接作業装置8Bに電流が供給されていない。そこで、コントローラ4は、切替リレー71を「2人モード」に設定する(ステップS62)。
【0099】
さらに、次のステップS63において、コントローラ4は、第2整流器31の出力制御を行う。具体的には、第2溶接出力端子33の印加電圧を低減させるようにする。例えば、第2溶接出力端子33の印加電圧を70Vから許容接触電圧である25V以下まで低減させる。さらに、コントローラ4は、切替リレー71の「2人モード」への設定と同時に、第2CTセンサCT2で電流を検知したときに、第2出力調整ダイヤル52bの設定値に拘わらず、第2直流電源3の出力電流を所定値未満に絞る制御を実行する。これにより、アーク発生を防止することができる。また、第2直流電源3の出力電流を所定値未満に下げた後に、所定時間以上電流が途切れたことが確認できた場合に、第2直流電源3の出力電流を復帰させる。これにより、安全性を確保しつつ、自動復帰機能を実現することができる。
【0100】
そして、コントローラ4は、第2表示部62に出力電流の表示を点灯させるとともに(ステップS64)、「溶接モード」を「自動2人モード」に設定して(ステップS65)、フローは
図2AのS12に戻る。これにより、使用者に対して、第2溶接出力端子33に接続された溶接作業装置8Bに、出力電流が供給可能であることを報知することができる。
【0101】
以上のように、本実施形態によると、出力制御部が、出力調整ダイヤル52の設定値を読み取り、その設定値に応じて切替リレー71を制御して、第1出力モードと第2出力モードを切り替えるようにしている。すなわち、使用者によるモード切替スイッチ51の操作を受けることなく、「1人モード」から「2人モード」への切り替え動作、及び、「2人モード」から「1人モード」への切り替え動作が自動的に行われる。また、第2直流電源3からは電流の供給がされていないタイミングで切替リレー71を切り替えるようにしているので、切替リレー71に過度のストレスを与えることもない。
【0102】
なお、上記実施形態(例えば、ステップS33,S52)において、「2人モード」から「1人モード」へのリレーの切り替え方法は、特に限定されるものではない。ここでは、2つの動作例を例示する。
【0103】
第1の方法として、第1出力調整ダイヤル52aの設定値が所定の基準値以上(例えば、196A以上)になったことを検知し、切替リレー71を切り替えた後に、所定時間(例えば、0.5秒)が経過してから、第2整流器31を動作させて、第2直流電源3の出力を開始する方法がある。例えば、切替リレー71の接点が電磁コイルで構成されている場合には、動作を開始してから接点が接続されるまでの時間(例えば、0.2秒程度)が必要であるため、その時間の経過後に、第2整流器31を動作させることで、切替リレー71の接点に余計なストレスがかからないようにすることができる。
【0104】
第2の方法として、第1出力調整ダイヤル52aの設定値が所定の基準値以上(例えば、196A以上)になったことを検知して切替リレー71を切り替えた後、すぐに第2整流器31を動作させて、第2直流電源3の出力を開始する方法がある。これにより、電流を連続的に増加させることができるようになる。
【0105】
以上、本発明の好ましい実施形態及びその変形例について説明したが、本開示に係る技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え等を行った実施形態にも適用が可能である。また、上記実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施形態とすることも可能である。
【0106】
<その他の実施形態>
例えば、上記実施形態では、第1配電線には、第1CTセンサCT1が設けられているものとしたが、第1CTセンサCT1がなくてもよく、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0107】
上記実施形態では、直流電源が2つの場合について説明したが、これに限定されない。すなわち、直流電源が3つ以上の場合についても、本開示に係る技術は適用が可能であり、同様の効果が得られる。
【0108】
図4では、直流電源を3つ設けた場合におけるエンジン駆動溶接機1の構成例を示している。
【0109】
図4では、図面の最下段に第3直流電源9を追加した例を示している。具体的に、第3直流電源9は、エンジン11で駆動される発電体の第3発電巻線12cが発生する交流電力を第3整流器91によって整流し、整流された直流電力を単相の第3配電線92を介して第3溶接出力端子93から出力するように構成されている。
【0110】
表示部6には、第3直流電源9の出力電流を表示する第3表示部63が追加され、操作部5には、第3直流電源9の出力を調整するためのダイヤル式の第3出力調整ダイヤル52cが追加されている。
【0111】
第3配電線92には、コントローラ4の制御を受けて、第3直流電源9の出力を、第3溶接出力端子93に接続するか、第1溶接出力端子23に接続するかを切り替える切替リレー72が設けられている。さらに、第3配電線92には、第3直流電源9の出力電流を測定する電流測定手段としての第3CTセンサCT9が取り付けられている。第3CTセンサCT9の測定結果は、コントローラ4に送られる。
【0112】
なお、
図4の構成においても、エンジン駆動溶接機1の動作は、前述の実施形態と同様であり、ここではその詳細説明を省略する。具体的に、前述の実施形態の説明において、第2配電線32に設けられた切替リレー71を制御するのと同じように、第3配電線92に設けられた切替リレー72を制御するとよい。例えば、第1~第3直流電源2,3,9の出力をまとめて所定の溶接出力端子としての第1溶接出力端子23から出力させる場合、すなわち第1出力モードとしての「1人モード」の場合には、切替リレー71及び切替リレー72を第1直流電源2側(
図4上側[白丸側])に切り替える。一方で、第1~第3直流電源2,3,9からの出力電流を個別の溶接出力端子23,33,93から出力させる場合、すなわち第2出力モードとしての「3人モード」の場合には、切替リレー71を第2直流電源2側(
図4下側[黒丸側])に、切替リレー72を第3直流電源9側(
図4下側[黒丸側])にそれぞれ切り替える。
【0113】
上記実施形態では、第1及び第2表示部61,62は、出力電流を表示させるための表示画面を有するものとしたが、これに限定されない。例えば、第1及び第2表示部61,62が、指針により電流値を指し示すアナログ式の表示部であってもよい。この場合、上記のステップS34,S53において、コントローラ4が、第2CTセンサCT2で計測される電流に拘わらず第2表示部62の指針を0Aにさせることで、第2表示部62を前述の消灯に相当するゼロ表示状態にさせる。一方で、コントローラ4は、「2人モード」になると、第1及び第2表示部61,62を、出力電流が表示されるいわゆる表示状態にさせる。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明は、電流設定手段に受けた出力電流設定に応じて、自動的に出力モードの切り替えができるので、極めて有用である。
【符号の説明】
【0115】
1 エンジン駆動溶接機
2 第1直流電源(直流電源)
3 第2直流電源(直流電源)
4 コントローラ
6 表示部(表示手段)
23 第1溶接出力端子(溶接出力端子、第1出力端子)
33 第2溶接出力端子(溶接出力端子)
51 モード切替スイッチ
52 出力調整ダイヤル(電流設定手段)
71 切替リレー(出力切替手段)