(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-08
(45)【発行日】2022-04-18
(54)【発明の名称】偏光フィルム、その製造方法および画像表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20220411BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20220411BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20220411BHJP
C08G 18/10 20060101ALI20220411BHJP
C08G 18/32 20060101ALI20220411BHJP
C08G 18/76 20060101ALI20220411BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20220411BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20220411BHJP
H01L 27/32 20060101ALI20220411BHJP
H05B 33/02 20060101ALN20220411BHJP
H01L 51/50 20060101ALN20220411BHJP
【FI】
G02B5/30
B32B7/023
B32B27/40
C08G18/10
C08G18/32 006
C08G18/76 014
C08G18/76 057
G02F1/1335 510
G09F9/00 313
G09F9/00 323
H01L27/32
H05B33/02
H05B33/14 A
(21)【出願番号】P 2018223659
(22)【出願日】2018-11-29
【審査請求日】2021-11-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石原 康隆
(72)【発明者】
【氏名】上野 友徳
【審査官】中村 説志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/170527(WO,A1)
【文献】特開2017-015883(JP,A)
【文献】特開2018-168213(JP,A)
【文献】特開2007-119772(JP,A)
【文献】特開平08-199129(JP,A)
【文献】特開平11-030715(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0308798(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
G09F 9/00
B32B 7/023
B32B 27/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光子、および前記偏光子の少なくとも片面に、直接、形成されている機能層を有する偏光フィルムであって、
前記機能層は、イソシアネート化合物と多価アルコールとの反応物であるウレタンプレポリマー(a)、およびイソシアネート基と反応性を有する活性水素を有する官能基を少なくとも2個有し、かつ、分子量を前記官能基の個数で除した値が350以下である化合物(b)を含有する形成材の硬化物であることを特徴とする偏光フィルム。
【請求項2】
前記化合物(b)が有する活性水素を有する官能基の個数が3以上であることを特徴とする請求項1記載の偏光フィルム。
【請求項3】
前記化合物(b)の分子量が1000以下であることを特徴とする請求項1または2記載の偏光フィルム。
【請求項4】
前記化合物(b)が多価アルコールであることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の偏光フィルム。
【請求項5】
前記化合物(b)がトリメチロールプロパンであることを特徴とする請求項4記載の偏光フィルム。
【請求項6】
前記ウレタンプレポリマー(a)における前記イソシアネート化合物が、トリレンジイソシアネートおよびジフェニルメタンジイソシアネートから選ばれるいずれか少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の偏光フィルム。
【請求項7】
前記形成材は、前記ウレタンプレポリマー(a)と前記化合物(b)の合計100重量%(固形分比率)に対して、前記化合物(b)を5重量%以上含有することを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の偏光フィルム。
【請求項8】
前記機能層の厚みが3μm以下であることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の偏光フィルム。
【請求項9】
前記偏光子の厚みが10μm以下であることを特徴とする請求項1~8のいずれかに記載の偏光フィルム。
【請求項10】
前記偏光子の他の片面には、前記機能層を有し、
他の片面には、介在層を介して、保護フィルムを有することを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載の偏光フィルム。
【請求項11】
前記保護フィルムを形成するポリマーが、セルロース系ポリマー、アクリル系ポリマー、およびシクロ系ないしはノルボルネン構造を有するポリオレフィンから選ばれるいずれか少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項
10記載の偏光フィルム。
【請求項12】
前記機能層において、前記偏光子を有する側との反対側に、粘着剤層を有することを特徴とする請求項1~11のいずれかに記載の偏光フィルム。
【請求項13】
請求項1~12のいずれかに記載の偏光フィルムの製造方法であって、
イソシアネート化合物と多価アルコールとの反応物であるウレタンプレポリマー(a)、およびイソシアネート基と反応性を有する活性水素を有する官能基を少なくとも2個有し、かつ、分子量を前記官能基の個数で除した値が350以下である化合物(b)を含有する形成材を調製する工程(1)、
前記工程(1)で調製した形成材を偏光子の少なくとも片面に、直接、塗布する工程(2)、および、
前記塗布工程(2)で塗布された形成材を硬化する工程(3)、
を有することを特徴とする偏光フィルムの製造方法。
【請求項14】
前記工程(1)で調製した形成材は、前記工程(1)で調製した直後に、FT-IRで測定した、形成材におけるイソシアネート基のピーク面積の値が5%以上減少するまで放置した後に、前記工程(2)に供することを特徴とする請求項13記載の偏光フィルムの製造方法。
【請求項15】
請求項1~12のいずれかに記載の偏光フィルムを有する画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光フィルムおよびその製造方法に関する。前記偏光フィルムはこれ単独で、またはこれを積層した光学フィルムとして液晶表示装置(LCD)、有機EL表示装置などの画像表示装置を形成しうる。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置には、その画像形成方式から液晶パネル表面を形成するガラス基板の両側に偏光フィルムを配置することが必要不可欠である。偏光フィルムは、一般的には、ポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素等の二色性材料からなる偏光子の片面または両面に、保護フィルムをポリビニルアルコール系接着剤等により貼り合わせたものが用いられている。
【0003】
また、偏光フィルムは、その使用用途や使用状態によっては過酷な環境下に曝される。そのため、偏光フィルムには、過酷な環境下においても、光学特性を維持することができる耐久性が求められる。例えば、偏光子の少なくとも片面にウレタンプレポリマーを硬化させてウレタン樹脂層を設けることが提案されている(特許文献1、2)。特許文献1、2によれば、高温下においても偏光フィルムの直交透過率を維持することができることが記載されている。また、例えば、偏光板と粘着剤層との間、イソシアネート化合物を含むプライマー組成物から形成されたプライマー層を設けた粘着剤層付偏光板が記載されている(特許文献3)。特許文献3によれば前記プライマー層によって偏光板と粘着剤層との密着性が優れた粘着剤層付偏光板が得られることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11‐030715号公報
【文献】特開平11‐183726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、偏光子に、直接、上記特許文献1、2のようなウレタン樹脂や上記特許文献3のようなプライマー層は、これらの層を形成するための反応が遅く、形成層の凝集力の向上までに時間を要するため、得られた形成層の剥がれの原因となっていた。
【0006】
本発明は、偏光子の少なくとも片面に、直接、形成されている機能層を有する偏光フィルムであって、偏光子との密着性および凝集力の良好な機能層を効率よく形成することができる偏光フィルムおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
また本発明は、前記偏光フィルムを有する画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者らは、鋭意検討の結果、下記の偏光フィルム等により上記課題を解決し得ることを見出し、本発明に至った。
【0009】
即ち本発明は、偏光子、および前記偏光子の少なくとも片面に、直接、形成されている機能層を有する偏光フィルムであって、
前記機能層は、イソシアネート化合物と多価アルコールとの反応物であるウレタンプレポリマー(a)、およびイソシアネート基と反応性を有する活性水素を有する官能基を少なくとも2個有し、かつ、分子量を前記官能基の個数で除した値が350以下である化合物(b)を含有する形成材の硬化物であることを特徴とする偏光フィルム、に関する。
【0010】
前記偏光フィルムにおいて、前記化合物(b)が有する活性水素を有する官能基の個数が3以上であることが好ましい。
【0011】
前記偏光フィルムにおいて、前記化合物(b)の分子量が1000以下であることが好ましい。
【0012】
前記偏光フィルムにおいて、前記化合物(b)としては、多価アルコールを用いることができる。前記化合物(b)としては、トリメチロールプロパンを例示できる。
【0013】
前記偏光フィルムにおいて、前記ウレタンプレポリマー(a)における前記イソシアネート化合物が、トリレンジイソシアネートおよびジフェニルメタンジイソシアネートから選ばれるいずれか少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0014】
前記偏光フィルムにおいて、前記形成材は、前記ウレタンプレポリマー(a)と前記化合物(b)の合計100重量部(固形分)に対して、前記化合物(b)を5重量%含有することが好ましい。
【0015】
前記偏光フィルムにおいて、前記機能層の厚みが3μm以下であることが好ましい。
【0016】
前記偏光フィルムにおいて、前記偏光子の厚みが10μm以下であることが好ましい。
【0017】
また、前記偏光フィルムは、前記偏光子の他の片面には、前記機能層を有し、
他の片面には、介在層を介して、保護フィルムを有することができる。前記保護フィルムを形成するポリマーは、セルロース系ポリマー、アクリル系ポリマー、およびシクロ系ないしはノルボルネン構造を有するポリオレフィンから選ばれるいずれか少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0018】
また、前記偏光フィルムは、前記機能層において、前記偏光子を有する側との反対側に、粘着剤層を有することができる。
【0019】
また本発明は、前記偏光フィルムの製造方法であって、
イソシアネート化合物と多価アルコールとの反応物であるウレタンプレポリマー(a)、およびイソシアネート基と反応性を有する活性水素を有する官能基を少なくとも2個有し、かつ、分子量を前記官能基の個数で除した値が350以下である化合物(b)を含有する形成材を調製する工程(1)、
前記工程(1)で調製した形成材を偏光子の少なくとも片面に、直接、塗布する工程(2)、および、
前記塗布工程(2)で塗布された形成材を硬化する工程(3)、
を有することを特徴とする偏光フィルムの製造方法、に関する。
【0020】
前記偏光フィルムの製造方法において、前記工程(1)で調製した形成材は、前記工程(1)で調製した直後に、FT-IRで測定した、形成材におけるイソシアネート基のピーク面積の値が5%以上減少するまで放置した後に、前記工程(2)に供することが好ましい。
【0021】
また本発明は、前記偏光フィルムを有する画像表示装置、に関する。
【発明の効果】
【0022】
本発明の偏光フィルムが有する機能層は、ウレタンプレポリマー(a)の他に、イソシアネート基と反応性を有する活性水素を有する官能基を少なくとも2個有し、かつ、分子量を前記官能基の個数で除した値が350以下である化合物(b)を含有する形成材の硬化物により形成されている。当該形成材は、前記ウレタンプレポリマー(a)が自己架橋する他に、前記化合物(b)を有することから、前記ウレタンプレポリマー(a)のイソシアネート基と化合物(b)の前記官能基との反応が進行するため、単に前記ウレタンプレポリマー(a)を用いて硬化物を形成する場合に比べて反応の進行が早く、形成材が十分に硬化して機能層が凝集力を得るまでの時間が早い。その結果、偏光子との密着性の良好な機能性を形成することができ、機能層に基づく剥がれを抑えることができる偏光フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の偏光フィルムの概略断面図の一例である。
【
図2】本発明の偏光フィルムの概略断面図の一例である。
【
図3】本発明の偏光フィルムの概略断面図の一例である。
【
図4】本発明の偏光フィルムの概略断面図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に本発明の偏光フィルムを、
図1乃至
図4を参照しながら説明する。
本発明の偏光フィルムは、例えば、
図1乃至
図4に示す偏光フィルム11のように、偏光子Pおよび機能層1を有する。なお、
図1では、偏光子Pの片側にのみ機能層1を有する場合を例示している。機能層1は、偏光子Pの両側に設けることもできる。また、
図1乃至
図4に示すように、機能層1は偏光子Pに、直接、設けられる。
【0025】
また、本発明の偏光フィルムは、例えば、
図2に示す偏光フィルム12のように、前記偏光フィルム11の機能層1にさらに粘着剤層2を設けることができる。粘着剤層2は、機能層1に、直接、設けることができる。
【0026】
一方、本発明の偏光フィルムは、
図3に示す偏光フィルム13のように、偏光子Pの片面には前記機能層1を有し、他の片面には、介在層3を介して、保護フィルム4を設けることができる。保護フィルム4として低透湿度の材料を用いた場合には、介在層3とともに前記偏光子Pからの水分拡散が妨げられるため、本発明は、偏光子Pの一方の側にのみ保護フィルム4を有する片保護偏光フィルムの態様において好ましく適用される。また、
図4は、前記偏光フィルム13の機能層1に、粘着剤層2を設けた場合である。
【0027】
なお、本発明の偏光フィルム12、14において、粘着剤層2として粘着剤層を用いる場合には、当該粘着剤層(粘着剤層)にはセパレータを設けることができる。一方、本発明の偏光フィルム11乃至14には、適宜に、表面保護フィルムを設けることができる。
【0028】
なお、偏光フィルムは、高温環境下の他に、高温高湿環境下で用いられることがある。かかる過酷な環境雰囲気下では、環境雰囲気中の水分が偏光子の光学特性に影響を及ぼして、偏光フィルムの端部において、偏光度が大きく低下することが分かった。しかし、上記特許文献1、2のようなウレタン樹脂を偏光子に設けることでは、前記偏光フィルムの端部において、偏光度の低下を十分には抑えることができていなかった。
【0029】
偏光フィルムの構成要素である偏光子は水系材料により形成されているため環境雰囲気中の水分を偏光子中に取り込み易い。そのため、高温高湿環境下に偏光フィルムを保持した場合には、偏光子中の飽和水分率が上昇すると考えられる。その結果、偏光フィルムの光学特性が低下する傾向がある。特に、高温高湿環境下では、偏光子中への水分の侵入量が多いため、偏光フィルムの端部において偏光度が大きく低下して、端部色抜けと呼称する現象が発生していたものと考えられる。
【0030】
本発明の偏光フィルムにおいて、
前記機能層1の他に、例えば、介在層3を設けた場合において、
前記機能層1については、85℃、85%R.H.における飽和水分率を、前記偏光子の85℃、85%R.H.における飽和水分率よりも低く、
前記機能層1は前記偏光子中の水分の排出を助ける浸透膜として機能させ、
前記介在層3の85℃、85%R.H.における飽和水分率が5重量%以下、
に調整することで、上記課題に対して有効に対応することができる。
【0031】
上記態様の偏光フィルムは、偏光子の片面に当該偏光子中の水分の排出を助ける浸透膜として機能する機能層を有する。当該機能層の高温高湿環境下における飽和水分率は、偏光子の飽和水分率よりも低く設計されているため、環境雰囲気中の水分が偏光子中に侵入したとしても、偏光子中の水分を、偏光子の飽和水分率よりも低い飽和水分率を有する機能層(浸透膜)側へ積極的に透過させることができ、当該作用により偏光子中の水分を偏光子外に排出することができる。一方、前記偏光子の他の片面には、飽和水分率が5重量%以下の介在層を有しており、当該低飽和水分率の介在層によって偏光子への水分の侵入を抑制するとともに、前記偏光子Pからの水分拡散を妨げて、機能層(浸透膜)側へることができ偏光子の水分率透過させることができる。このように、上記態様の偏光フィルムは、前記機能層および介在層を有することで、高温高湿環境下においても偏光子の飽和水分率の上昇を抑制することができ、偏光フィルムの端部色抜け量を抑制することができる。
【0032】
<偏光子>
偏光子は、特に限定されず、各種のものを使用できる。偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。これらの中でも、ポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素等の二色性物質からなる偏光子が好適である。これらの偏光子の厚さは特に制限されないが、一般的に80μm程度以下である。
【0033】
ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸した偏光子は、例えば、ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3~7倍に延伸することで作成することができる。必要に応じてホウ酸や硫酸亜鉛、塩化亜鉛等を含んでいても良いヨウ化カリウム等の水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗してもよい。ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるほかに、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラ等の不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行っても良いし、染色しながら延伸しても良いし、また延伸してからヨウ素で染色しても良い。ホウ酸やヨウ化カリウム等の水溶液や水浴中でも延伸することができる。
【0034】
本発明では、厚み10μm以下の偏光子を用いることができる。偏光子の厚みは薄型化の観点から8μm以下であるのが好ましく、さらには7μm以下、さらには6μm以下であるのが好ましい。一方、偏光子の厚みは2μm以上、さらには3μm以上であるのが好ましい。このような薄型の偏光子は厚みムラが少なく、視認性が優れており、また寸法変化が少ないため熱衝撃に対する耐久性に優れる。
【0035】
薄型の偏光子としては、代表的には、
特許第4751486号明細書、
特許第4751481号明細書、
特許第4815544号明細書、
特許第5048120号明細書、
国際公開第2014/077599号パンフレット、
国際公開第2014/077636号パンフレット、
等に記載されている薄型偏光子またはこれらに記載の製造方法から得られる薄型偏光子を挙げることができる。
【0036】
前記偏光子は、単体透過率T及び偏光度Pによって表される光学特性が、次式
P>-(100.929T-42.4-1)×100(ただし、T<42.3)、又は、
P≧99.9(ただし、T≧42.3)の条件を満足するように構成されている。前記条件を満足するように構成された偏光子は、一義的には、大型表示素子を用いた液晶テレビ用のディスプレイとして求められる性能を有する。具体的にはコントラスト比1000:1以上かつ最大輝度500cd/m2以上である。他の用途としては、例えば有機EL表示装置の視認側に貼り合される。
【0037】
前記薄型偏光子としては、積層体の状態で延伸する工程と染色する工程を含む製法の中でも、高倍率に延伸できて偏光性能を向上させることのできる点で、特許第4751486号明細書、特許第4751481号明細書、特許4815544号明細書に記載のあるようなホウ酸水溶液中で延伸する工程を含む製法で得られるものが好ましく、特に特許第4751481号明細書、特許4815544号明細書に記載のあるホウ酸水溶液中で延伸する前に補助的に空中延伸する工程を含む製法により得られるものが好ましい。これら薄型偏光子は、ポリビニルアルコール系樹脂(以下、PVA系樹脂ともいう)層と延伸用樹脂基材を積層体の状態で延伸する工程と染色する工程を含む製法によって得ることができる。この製法であれば、PVA系樹脂層が薄くても、延伸用樹脂基材に支持されていることにより延伸による破断などの不具合なく延伸することが可能となる。
【0038】
本発明の偏光子は、85℃、85%R.H.における飽和水分率が、通常、10~40重量%のものが用いられる。前記偏光子の飽和水分率は、端部色抜け抑制の観点から25重量%以下であってもよく、さらに18重量%以下であってもよい。なお、前記偏光子の飽和水分率は、機能層との関係において、機能層の飽和水分率が、偏光子の飽和水分率よりも低くなる値であれば特に下限値はない。
【0039】
本発明の偏光子の飽和水分率は、任意の適切な方法で調整すればよい。例えば偏光子の製造工程における乾燥工程の条件を調整することにより制御する方法が挙げられる。
【0040】
<機能層>
機能層は、イソシアネート化合物と多価アルコールとの反応物であるウレタンプレポリマー(a)、およびイソシアネート基と反応性を有する活性水素を有する官能基を少なくとも2個有し、かつ、分子量を前記官能基の個数で除した値が350以下である化合物(b)を含有する形成材の硬化物である。
【0041】
ウレタンプレポリマー(a)を形成する、イソシアネート化合物としては、例えば、多官能のイソシアネート化合物が好ましく、具体的に多官能の芳香族系イソシアネート化合物、脂環族系イソシアネート、脂肪族系イソシアネート化合物またはこれらの2量体などが挙げられる。
【0042】
多官能芳香族系イソシアネート化合物としては、例えば、フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソソアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-トルイジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンビス4-フェニルイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、等が挙げられる
【0043】
多官能脂環族系イソシアネート化合物としては、例えば、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、1,3-シクロへキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-ビスイソシアナトメチルシクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0044】
多官能脂肪族系イソシアネート化合物としては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0045】
また多官能イソシアネート化合物としては、イソシアヌル酸トリス(6-インシアネートヘキシル)などのイソシアネート基を3個以上有するものが挙げられる。
【0046】
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,8-デカンジオール、オクタデカンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ヘキサントリオール、ポリプロピレングリコールなどが挙げられる。
【0047】
前記ウレタンプレポリマー(a)としては、本発明では、分子構造的に環状構造(ベンゼン環、シアヌレート環、イソシアヌレート環等)が構造中で占める割合の大きなリジットな構造のものを使用することが好ましい。例えば、前記多官能のイソシアネート化合物は1種を単独でまたは2種以上を併用することができるが、前記飽和水分率の調製の観点からは芳香族系イソシアネート化合物が好ましい。他の多官能のイソシアネート化合物は、芳香族系イソシアネート化合物と併用することができる。特に、芳香族系イソシアネート化合物のなかでも前記イソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネートおよびジフェニルメタンジイソシアネートから選ばれるいずれか少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0048】
ウレタンプレポリマー(a)としては、トリメチロールプロパン-トリ-トリレンイソシアネート、トリメチロールプロパン-トリ-ジフェニルメタンジイソシアネート、が好ましく用いられる。
【0049】
なお、前記ウレタンプレポリマー(a)は、末端イソシアネート基を有する化合物であり、例えば、イソシアネート化合物と多価アルコールとを混合して攪拌し反応させることによって得られる。通常は、多価アルコールの水酸基に対して、イソシアネート基が過剰となるよう、イソシアネート化合物と多価アルコールと混合することが好ましい。なお、上記反応に際しては、適宜に、有機溶媒(例えば、酢酸エチル、メチルエチルケトン、クロロホルムなど)中で行ない、触媒(例えば、スズ塩化物、有機スズ化合物などの有機金属触媒類;3級アミン化合物などの有機塩基類;酢酸、アクリル酸などの有機酸類;など)を用いることができる。
【0050】
また、前記ウレタンプレポリマー(a)は、末端イソシアネート基に保護基を付与したものを用いることもできる。保護基としてはオキシムやラクタムなどがある。イソシアネート基を保護したものは、加熱することによりイソシアネート基から保護基を解離させ、イソシアネート基が反応するようになる。
【0051】
機能層を形成する形成材は、前記ウレタンプレポリマー(a)に加えて、イソシアネート基と反応性を有する活性水素を有する官能基を少なくとも2個有し、かつ、分子量を前記官能基の個数で除した値が350以下である化合物(b)を含有する。イソシアネート基と反応性を有する活性水素を有する官能基としては、水酸基、アミノ基当が挙げられる。前記化合物(b)が有する活性水素を有する官能基の個数は多いほど、ウレタンプレポリマー(a)のイソシアネート基との反応点が多くなり硬化物を形成しやすいため、前記官能基の個数は3以上が好ましい。
【0052】
また、化合物(b)は、その分子量を前記官能基の個数で除した値が350以下であるものを用いる。このように、分子量と官能基の個数との関係を定義することによって、化合物(b)とウレタンプレポリマー(a)のイソシアネート基との反応性を確保することができる。
【0053】
また、前記化合物(b)の分子量は1000以下であることが好ましい。化合物(b)の分子量を1000以下の範囲のものは、ウレタンプレポリマー(a)とともに形成材を溶液として調製する際の相溶性の点で好ましい。
【0054】
前記化合物(b)としては、例えば、多価アルコール、多価アミン、分子内に水酸基とアミノ基を有する化合物等を例示することができる。
【0055】
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,8-デカンジオール、オクタデカンジオール、ポリプロピレングリコール、等の2官能アルコール;グリセリン、トリメチロールプロパン等の3官能アルコール;ペンタエリスリトール、ヘキサントリオール、ソルビトール等の4官能アルコール等;その他、ポリオキシプロピレングリセリルエーテル、ポリオキシプロピレントリメチロールプロパンエーテル、ポリオキシプロピレンソルビトールエーテル等の前記多価アルコールへのアルキレンオキシド(例えば、プロピレンオキシド)付加物等が挙げられる。
【0056】
多価アミンとしては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジアミン、ダイマージアミン等が挙げられる。
【0057】
また、分子内に水酸基とアミノ基を有する化合物としては、例えば、2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミン等の分子内に水酸基を有するジアミン類;エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン類が挙げられる。
【0058】
前記化合物(b)としては、多価アルコールを用いることが、偏光子の光学信頼性の悪化を防ぐ点から好ましく、特に、トリメチロールプロパンは、ウレタンプレポリマーの反応性のから好ましい。
【0059】
前記形成材は、前記ウレタンプレポリマー(a)を主成分として含有する。ウレタンプレポリマー(a)は、形成材の固形分の50重量%以上を含有することが好ましい。
【0060】
前記ウレタンプレポリマー(a)に対する前記化合物(b)の配合割合は、前記ウレタンプレポリマー(a)と前記化合物(b)の合計100重量%(固形分比率)に対して、5重量%以上であるのが好ましい。前記化合物(b)の配合割合は、凝集力向上の観点から10重量%以上であるのが好ましい。一方、前記化合物(b)の配合割合が多くなると偏光板の光学信頼性が悪化する場合があるため、前記化合物(b)の配合割合は80重量%以下、さらには50重量%以下であることが好ましい。
【0061】
前記形成材は、さらにイソシアネート基の反応性をあげるために反応触媒を用いることができる。反応触媒は特に制限されないが、スズ系触媒またはアミン系触媒が好適である。反応触媒は1種または2種以上を用いることができる。反応触媒の使用量は、通常、ウレタンプレポリマー(a)100重量部に対して、5重量部以下で使用される。反応触媒量が多いと、架橋反応速度が速くなり形成材の発泡が起こる。発泡後の形成材を使用しても十分な接着性は得られない。通常、反応触媒を使用する場合には、0.01~5重量部、さらには0.05~4重量部が好ましい。
【0062】
スズ系触媒としては、無機系、有機系のいずれも使用できるが有機系が好ましい。無機系スズ系触媒としては、例えば、塩化第一スズ、塩化第二スズ等があげられる。有機系スズ系触媒は、メチル基、エチル基、エーテル基、エステル基などの骨格を有する脂肪族基、脂環族基などの有機基を少なくとも1つ有するものが好ましい。例えば、テトラ-n-ブチルスズ、トリ-n-ブチルスズアセテート、n-ブチルスズトリクロライド、トリメチルスズハイドロオキサイド、ジメチルスズジクロライド、ジブチルスズジラウレート等があげられる。
【0063】
またアミン系触媒としては、特に制限されない。例えば、キノクリジン、アミジン、ジアザビシクロウンデセンなどの脂環族基等の有機基を少なくとも1つ有するものが好ましい。その他、アミン系触媒としては、トリエチルアミン等があげられる。また前記以外の反応触媒としては、ナフテン酸コバルト、ベンジルトリメチルアンモニウムハイドロオキサイド等が例示できる。
【0064】
前記形成材は、通常、前記ウレタンプレポリマー(a)および前記化合物(b)を含有する溶液として用いられる。溶液は、形成材を有機溶剤に溶解した溶剤系であってもよいし、エマルジョン、コロイド分散液、水溶液等の水系であってもよい。
【0065】
有機溶剤としては、イソシアネート基と反応性を有する活性水素を有する官能基を有さず、形成材を構成する前記ウレタンプレポリマー(a)および前記化合物(b)を均一に溶解すれば特に制限はない。有機溶剤は、1種または2種以上を組わせて用いることができる。また有機溶剤は、前記ウレタンプレポリマー(a)および前記化合物(b)に対して、それぞれ別の溶剤を用いることができる。この場合には、各溶液を調製した後に、各溶液を混合することにより形成材を調製することができる。また、調製した形成材に、有機溶剤をさらに加えて形成材の粘度を調整することができる。さらに、有機溶剤に溶解した溶剤系の溶液の場合にも、下記例示のアルコール類や水等を溶剤として含ませることができる。
【0066】
有機溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類);酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族または脂環式炭化水素類;1,2-ジクロロエタン等のハロゲン化アルカン類;tert-ブチルメチルエーテル等のエーテル類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、アセチルアセトン等のケトン類;等が挙げられる。
【0067】
なお、水系にする場合には、例えば、n-ブチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、アセトン等のケトン類を配合することもできる。水系にする場合には、分散剤を用いたり、ウレタンプレポリマーに、カルボン酸塩、スルホン酸塩、4級アンモニウム塩等のイソシアネート基と反応性の低い官能基や、ポリエチレングリコール等の水分散性成分を導入することにより行うことができる。
【0068】
前記機能層の形成は、例えば、当該形成材を偏光子に、直接、塗布した後に硬化することにより行うことができる。
詳しくは、
前記ウレタンプレポリマー(a)および化合物(b)を含有する形成材を調製する工程(1)、
前記工程(1)で調製した形成材を偏光子の少なくとも片面に、直接、塗布する工程(2)、および、
前記塗布工程(2)で塗布された形成材を硬化する工程(3)、
を施すことにより、機能層を有する偏光フィルムが得られる。
【0069】
上記工程(1)で調製した形成材は、調製した直後に、前記工程(2)に供することができる他、上記工程(1)の後に、ある程度放置してから工程(2)に供することができる。上記工程(1)から、工程(2)へ移行する時間は、FT-IRで測定した、形成材におけるイソシアネート基のピーク面積を管理することにより行うことが好ましい。即ち、前記工程(1)で調製した直後の形成材の前記ピーク面積値が5%以上減少するまで放置した後に、前記工程(2)に供することが好ましい。前記割合で前記ピーク面積が減少している場合には、形成材において、ウレタンプレポリマー(a)と化合物(b)との反応がある程度進行していると認められ、凝集力の良好な機能層を効率よく形成するうえで好適である。前記ピーク面積値の減少の割合は、10%以上であるのが好ましく、さらには15%以上であるのが好ましい。一方、前記ピーク面積値の減少の割合が大きすぎると、ウレタンプレポリマー(a)と化合物(b)との反応が進行し過ぎており、形成材の取り扱いが困難になる場合があるため、前記ピーク面積値の減少の割合は、80%以下であるのが好ましく、さらには50%以下であるのが好ましい。前記ピーク面積値が5%以上減少するまでの放置時間は、形成材が含有するウレタンプレポリマー(a)と化合物(b)の種類によって異なり、さらには湿度によっても影響されるため、前記ピーク面積値の減少は、前記要因を考慮して適宜に決定される。前記放置時間は、通常は、常温(23℃)において、24時間以下程度、好ましくは0.5~5時間程度の範囲で制御するのが好ましい。
【0070】
前記工程(3)では、通常、30~100℃程度、好ましくは50~80℃で、0.5~15分間程度乾燥することにより、形成材を硬化させることにより機能層を形成する。なお、前記形成材におけるイソシアネート成分の反応促進の為に、30~100℃程度、好ましくは50~80℃で、0.5~24時間程度のアニール処理を行うことができる。さらには、前記加温と共に加湿してアニール処理を行ってもよい。前記加湿は、例えば、相対湿度50~95%程度で行うことができる。
【0071】
機能層の厚さは、薄層化および光学信頼性の観点から、3μm以下であるのが好ましく、さらには2μm以下であるのが好ましく、さらには1.5μm以下であるのが好ましい。機能層が厚すぎる場合には、厚みを有するために、機能を発揮できないおそれがある。一方、機能層の厚さは、機能確保の観点から、0.1μm以上であるのが好ましく、さらには0.2μm以上が好ましく、さらには0.3μm以上であるのが好ましい。
【0072】
機能層は、前記偏光子中の水分の排出を助ける浸透膜として機能する層であり、機能層の85℃、85%R.H.における飽和水分率は、前記偏光子の飽和水分率よりも低くなるように設計することができる。
【0073】
前記偏光子の飽和水分率と前記機能層の飽和水分率の差は、浸透膜としての機能の観点から、1~20重量%であるのが好ましく、さらには3~15重量%であるのが好ましい。なお、前記飽和水分率の差が大きくなり過ぎても問題ないが、一方、小さくなり過ぎると浸透膜として十分な機能が発揮できなくなるため、前記範囲で制御するのが好ましい。また、前記機能層の飽和水分率は、通常、1~10重量%のものが好ましく、さらには、3~8重量%のものが好ましく用いられる。
【0074】
前記機能層は、当該機能層中の85℃、85%R.H.における飽和水分濃度が、前記偏光子側から前記偏光子とは反対側に向けて次第に低下するような傾斜分布を有する構造を有するものが好ましい。このような構造により、浸透膜としての機能をより有効に発揮することができる。
【0075】
<粘着剤層>
本発明の偏光フィルムでは、前記機能層に、さらに粘着剤層を形成することができる。粘着剤層としては、各種層を形成することができる。
【0076】
粘着剤層の厚さは、浸透膜としての機能の観点から、1~100μm程度である。好ましくは、2~50μm、より好ましくは2~40μmであり、さらに好ましくは、5~35μmである。
【0077】
前記粘着剤層としては、例えば、粘着剤層、接着剤層、ハードコート層等や保護フィルム等樹脂フィルムにより形成することができる。これらのなかでも、偏光フィルムの端部色抜け抑制の観点から粘着剤層が好ましい。
【0078】
粘着剤層の形成には、適宜な粘着剤を用いることができ、その種類について特に制限はない。粘着剤としては、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、などがあげられる。
【0079】
これら粘着剤のなかでも、光学的透明性に優れ、適宜な濡れ性と凝集性と接着性の粘着特性を示して、耐候性や耐熱性などに優れるものが好ましく使用される。このような特徴を示すものとしてアクリル系粘着剤が好ましく使用される。
【0080】
粘着剤層を形成する方法としては、例えば、前記粘着剤を剥離処理したセパレータなどに塗布し、重合溶剤などを乾燥除去して粘着剤層を形成した後に、機能層に転写する方法、または前記粘着剤を機能層に塗布し、重合溶剤などを乾燥除去して粘着剤層を偏光子に形成する方法などにより作製される。なお、粘着剤の塗布にあたっては、適宜に、重合溶剤以外の一種以上の溶剤を新たに加えてもよい。
【0081】
剥離処理したセパレータとしては、シリコーン剥離ライナーが好ましく用いられる。このようなライナー上に本発明の粘着剤を塗布、乾燥させて粘着剤層を形成する工程において、粘着剤を乾燥させる方法としては、目的に応じて、適宜、適切な方法が採用され得る。好ましくは、上記塗布膜を過熱乾燥する方法が用いられる。加熱乾燥温度は、好ましくは40℃~200℃であり、さらに好ましくは、50℃~180℃であり、特に好ましくは70℃~170℃である。加熱温度を上記の範囲とすることによって、優れた粘着特性を有する粘着剤を得ることができる。
【0082】
乾燥時間は、適宜、適切な時間が採用され得る。上記乾燥時間は、好ましくは5秒~20分、さらに好ましくは5秒~10分、特に好ましくは、10秒~5分である。
【0083】
粘着剤層の形成方法としては、各種方法が用いられる。具体的には、例えば、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、ディップロールコート、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、リップコート、ダイコーターなどによる押出しコート法などの方法があげられる。
【0084】
粘着剤層の厚さは、特に制限されず、例えば、1~100μm程度である。好ましくは、2~50μm、より好ましくは2~40μmであり、さらに好ましくは、5~35μmである。
【0085】
前記粘着剤層が露出する場合には、実用に供されるまで剥離処理したシート(セパレータ)で粘着剤層を保護してもよい。
【0086】
セパレータの構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルフィルムなどのプラスチックフィルム、紙、布、不織布などの多孔質材料、ネット、発泡シート、金属箔、およびこれらのラミネート体などの適宜な薄葉体などをあげることができるが、表面平滑性に優れる点からプラスチックフィルムが好適に用いられる。
【0087】
そのプラスチックフィルムとしては、前記粘着剤層を保護し得るフィルムであれば特に限定されず、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフイルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体フィルムなどがあげられる。
【0088】
前記セパレータの厚みは、通常5~200μm、好ましくは5~100μm程度である。前記セパレータには、必要に応じて、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系もしくは脂肪酸アミド系の離型剤、シリカ粉などによる離型および防汚処理や、塗布型、練り込み型、蒸着型などの帯電防止処理もすることもできる。特に、前記セパレータの表面にシリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理などの剥離処理を適宜おこなうことにより、前記粘着剤層からの剥離性をより高めることができる。
【0089】
前記粘着剤層が、より浸透膜としての機能を発揮する観点からは、当該機能層の飽和水分率よりも低い飽和水分率を有する粘着剤層を設けることが好ましい。
【0090】
前記機能層の飽和水分率と前記粘着剤層の飽和水分率の差は、浸透膜としての機能の観点から、0.1~8重量%であるのが好ましく、さらには0.5~5重量%であるのが好ましい。なお、前記差が大きくなり過ぎても問題ないが、一方、小さくなり過ぎると浸透膜として十分な機能が発揮できなくなるため、前記範囲で制御するのが好ましい。なお、前記粘着剤層の飽和水分率は、前記機能層の飽和水分率よりも低い範囲で好適に用いられるが、通常、0.1~8%のものが好ましく、さらには、0.5~5重量%のものが好ましく用いられる。
【0091】
<介在層>
前記介在層としては、偏光子と保護フィルムとの間に適用される接着剤層、粘着剤層、下塗り層(プライマー層)などの介在層が挙げられる。その他、保護フィルムに適用される易接着層が挙げられる。なお、保護フィルムには易接着層を設けたり活性化処理を施したりして、当該易接着層と接着剤層を積層することができる。
【0092】
前記介在層を形成する材料は透明性を有し、かつ、前記介在層として機能するもの用いることができる。この際、介在層により両者を空気間隙なく積層することが望ましい。
【0093】
接着剤層は接着剤により形成される。接着剤の種類は特に制限されず、種々のものを用いることができる。前記接着剤層は光学的に透明であれば特に制限されず、接着剤としては、水系、溶剤系、ホットメルト系、活性エネルギー線硬化型等の各種形態のものが用いられるが、水系接着剤または活性エネルギー線硬化型接着剤が好適である。
【0094】
水系接着剤としては、イソシアネート系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ゼラチン系接着剤、ビニル系ラテックス系、水系ポリエステル等を例示できる。水系接着剤は、通常、水溶液からなる接着剤として用いられ、通常、0.5~60重量%の固形分を含有してなる。
【0095】
活性エネルギー線硬化型接着剤は、電子線、紫外線(ラジカル硬化型、カチオン硬化型)等の活性エネルギー線により硬化が進行する接着剤であり、例えば、電子線硬化型、紫外線硬化型の態様で用いることができる。活性エネルギー線硬化型接着剤は、例えば、光ラジカル硬化型接着剤を用いることができる。光ラジカル硬化型の活性エネルギー線硬化型接着剤を、紫外線硬化型として用いる場合には、当該接着剤は、ラジカル重合性化合物および光重合開始剤を含有する。
【0096】
接着剤の塗工方式は、接着剤の粘度や目的とする厚みによって適宜に選択される。塗工方式の例として、例えば、リバースコーター、グラビアコーター(ダイレクト,リバースやオフセット)、バーリバースコーター、ロールコーター、ダイコーター、バーコーター、ロッドコーター等が挙げられる。その他、塗工には、デイッピング方式などの方式を適宜に使用することができる。
【0097】
また、前記接着剤の塗工は、水系接着剤等を用いる場合には、最終的に形成される接着剤層の厚みが30~300nmになるように行うのが好ましい。前記接着剤層の厚さは、さらに好ましくは60~250nmである。一方、活性エネルギー線硬化型接着剤を用いる場合には、前記接着剤層の厚みは、0.1~200μmになるよう行うのが好ましい。より好ましくは、0.5~50μm、さらに好ましくは0.5~10μmである。
【0098】
易接着層は、例えば、ポリエステル骨格、ポリエーテル骨格、ポリカーボネート骨格、ポリウレタン骨格、シリコーン系、ポリアミド骨格、ポリイミド骨格、ポリビニルアルコール骨格などを有する各種樹脂により形成することができる。これらポリマー樹脂は1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。また易接着層の形成には他の添加剤を加えてもよい。具体的にはさらには粘着付与剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐熱安定剤などの安定剤などを用いてもよい。
【0099】
易接着層は、通常、保護フィルムに予め設けておき、当該保護フィルムの易接着層側と偏光子とを接着剤層により積層する。易接着層の形成は、易接着層の形成材を保護フィルム上に、公知の技術により塗工、乾燥することにより行われる。易接着層の形成材は、乾燥後の厚み、塗工の円滑性などを考慮して適当な濃度に希釈した溶液として、通常調整される。易接着層は乾燥後の厚みは、好ましくは0.01~5μm、さらに好ましくは0.02~2μm、さらに好ましくは0.05~1μmである。なお、易接着層は複数層設けることができるが、この場合にも、易接着層の総厚みは上記範囲になるようにするのが好ましい。
【0100】
粘着剤層は、粘着剤から形成される。粘着剤としては各種の粘着剤を用いることができ、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリビニルピロリドン系粘着剤、ポリアクリルアミド系粘着剤、セルロース系粘着剤などが挙げられる。前記粘着剤の種類に応じて粘着性のベースポリマーが選択される。前記粘着剤のなかでも、光学的透明性に優れ、適宜な濡れ性と凝集性と接着性の粘着特性を示して、耐候性や耐熱性などに優れる点から、アクリル系粘着剤が好ましく使用される。
【0101】
下塗り層(プライマー層)は、偏光子と保護フィルムとの密着性を向上させるために形成される。プライマー層を構成する材料としては、基材フィルムとポリビニルアルコール系樹脂層との両方にある程度強い密着力を発揮する材料であれば特に限定されない。たとえば、透明性、熱安定性、延伸性などに優れる熱可塑性樹脂などが用いられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、又はそれらの混合物が挙げられる。
【0102】
介在層は、85℃、85%R.H.における飽和水分率が5重量%以下に調整された層である。介在層の飽和水分率は、4重量%以下であるのが好ましく、さらには3.5重量%以下であるのが好ましい。一方、介在層の飽和水分率に特に下限は無い。
【0103】
<保護フィルム>
前記保護フィルムを構成する材料としては、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性などに優れるものが好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロースやトリアセチルセルロースなどのセルロース系ポリマー、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)などのスチレン系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー等が挙げられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロ系ないしはノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミドなどのアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、または上記ポリマーのブレンド物なども上記保護フィルムを形成するポリマーの例として挙げられる。前記保護フィルムとしては、セルロース系ポリマー、アクリル系ポリマー、およびシクロ系ないしはノルボルネン構造を有するポリオレフィンから選ばれるいずれか少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0104】
偏光子を基準にして、前記保護フィルムが適用される側には、本発明の機能層を設けることは任意であることから、前記保護フィルムの材料としては、保護フィルム側からの水分侵入を抑制する観点から、低透湿のアクリル系ポリマー、ポリオレフィン系ポリマー等を用いることが好ましい。
【0105】
なお、保護フィルム中には任意の適切な添加剤が1種類以上含まれていてもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、可塑剤、離型剤、着色防止剤、難燃剤、核剤、帯電防止剤、顔料、着色剤などがあげられる。保護フィルム中の上記熱可塑性樹脂の含有量は、好ましくは50~100重量%、より好ましくは50~99重量%、さらに好ましくは60~98重量%、特に好ましくは70~97重量%である。保護フィルム中の上記熱可塑性樹脂の含有量が50重量%以下の場合、熱可塑性樹脂が本来有する高透明性等が十分に発現できないおそれがある。
【0106】
前記保護フィルムとしては、位相差フィルム、輝度向上フィルム、拡散フィルム等も用いることができる。位相差フィルムとしては、正面位相差が40nm以上および/または、厚み方向位相差が80nm以上の位相差を有するものが挙げられる。正面位相差は、通常、40~200nmの範囲に、厚み方向位相差は、通常、80~300nmの範囲に制御される。保護フィルムとして位相差フィルムを用いる場合には、当該位相差フィルムが偏光子保護フィルムとしても機能するため、薄型化を図ることができる。
【0107】
位相差フィルムとしては、熱可塑性樹脂フィルムを一軸または二軸延伸処理してなる複屈折性フィルムが挙げられる。上記延伸の温度、延伸倍率等は、位相差値、フィルムの材料、厚みにより適宜に設定される。
【0108】
保護フィルムの厚さは、適宜に決定しうるが、一般には強度や取扱性等の作業性、薄層性などの点より1~500μm程度である。特に1~300μmが好ましく、5~200μmがより好ましく、さらには、5~150μm、特に、20~100μmの薄型の場合に特に好適である。
【0109】
前記保護フィルムの偏光子を接着させない面には、ハードコート層、反射防止層、スティッキング防止層、拡散層ないしアンチグレア層などの機能層を設けることができる。なお、上記ハードコート層、反射防止層、スティッキング防止層、拡散層やアンチグレア層などの機能層は、保護フィルムそのものに設けることができるほか、別途、保護フィルムとは別体のものとして設けることもできる。
【0110】
<表面保護フィルム>
本発明の偏光フィルムには、表面保護フィルムを設けることができる。表面保護フィルムは、通常、基材フィルムおよび粘着剤層を有し、当該粘着剤層を介して偏光子を保護する。
【0111】
表面保護フィルムの基材フィルムとしては、検査性や管理性などの観点から、等方性を有する又は等方性に近いフィルム材料が選択される。そのフィルム材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステル系樹脂、セルロース系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂のような透明なポリマーがあげられる。これらのなかでもポリエステル系樹脂が好ましい。基材フィルムは、1種または2種以上のフィルム材料のラミネート体として用いることもでき、また前記フィルムの延伸物を用いることもできる。基材フィルムの厚さは、一般的には、500μm以下、好ましくは10~200μmである。
【0112】
表面保護フィルムの粘着剤層を形成する粘着剤としては、(メタ)アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系やゴム系などのポリマーをベースポリマーとする粘着剤を適宜に選択して用いることができる。透明性、耐候性、耐熱性などの観点から、アクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤が好ましい。粘着剤層の厚さ(乾燥膜厚)は、必要とされる粘着力に応じて決定される。通常1~100μm程度、好ましくは5~50μmである。
【0113】
なお、表面保護フィルムには、基材フィルムにおける粘着剤層を設けた面の反対面に、シリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理などの低接着性材料により、剥離処理層を設けることができる。
【0114】
<他の光学層>
本発明の偏光フィルムは、実用に際して他の光学層と積層した光学フィルムとして用いることができる。その光学層については特に限定はないが、例えば反射板や半透過板、位相差板(1/2や1/4などの波長板を含む)、視角補償フィルムなどの液晶表示装置などの形成に用いられることのある光学層を1層または2層以上用いることができる。特に、本発明の偏光フィルムに更に反射板または半透過反射板が積層されてなる反射型偏光フィルムまたは半透過型偏光フィルム、偏光フィルムに更に位相差板が積層されてなる楕円偏光フィルムまたは円偏光フィルム、偏光フィルムに更に視角補償フィルムが積層されてなる広視野角偏光フィルム、あるいは偏光フィルムに更に輝度向上フィルムが積層されてなる偏光フィルムが好ましい。
【0115】
偏光フィルムに上記光学層を積層した光学フィルムは、液晶表示装置などの製造過程で順次別個に積層する方式にても形成することができるが、予め積層して光学フィルムとしたものは、品質の安定性や組立作業などに優れていて液晶表示装置などの製造工程を向上させうる利点がある。積層には粘着剤層などの適宜な接着手段を用いうる。上記の偏光フィルムやその他の光学フィルムの接着に際し、それらの光学軸は目的とする位相差特性などに応じて適宜な配置角度とすることができる。
【0116】
本発明の偏光フィルムまたは光学フィルムは液晶表示装置、有機EL表示装置などの各種画像表示装置の形成などに好ましく用いることができる。液晶表示装置の形成は、従来に準じて行いうる。すなわち液晶表示装置は一般に、液晶セルと偏光フィルムまたは光学フィルム、及び必要に応じての照明システムなどの構成部品を適宜に組立てて駆動回路を組込むことなどにより形成されるが、本発明においては本発明による、偏光フィルムまたは光学フィルムを用いる点を除いて特に限定はなく、従来に準じうる。液晶セルについても、例えばIPS型、VA型などの任意なタイプのものを用いうるが、特にIPS型に好適である。
【0117】
液晶セルの片側又は両側に偏光フィルムまたは光学フィルムを配置した液晶表示装置や、照明システムにバックライトあるいは反射板を用いたものなどの適宜な液晶表示装置を形成することができる。その場合、本発明による偏光フィルムまたは光学フィルムは液晶セルの片側又は両側に設置することができる。両側に偏光フィルムまたは光学フィルムを設ける場合、それらは同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。さらに、液晶表示装置の形成に際しては、例えば拡散板、アンチグレア層、反射防止膜、保護板、プリズムアレイ、レンズアレイシート、光拡散板、バックライトなどの適宜な部品を適宜な位置に1層又は2層以上配置することができる。
【実施例】
【0118】
以下に、本発明を、実施例を挙げて説明するが、本発明は以下に示した実施例に制限されるものではない。なお、各例中の部および%はいずれも重量基準である。以下に特に規定のない室温放置条件は全て23℃65%R.H.である。
【0119】
(薄型偏光子Aの作製)
吸水率0.75%、Tg75℃の非晶質のイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(IPA共重合PET)フィルム(厚み:100μm)基材の片面に、コロナ処理を施し、このコロナ処理面に、ポリビニルアルコール(重合度4200、ケン化度99.2モル%)およびアセトアセチル変性PVA(重合度1200、アセトアセチル変性度4.6%、ケン化度99.0モル%以上、日本合成化学工業社製、商品名「ゴーセファイマーZ200」)を9:1の比で含む水溶液を25℃で塗布および乾燥して、厚み11μmのPVA系樹脂層を形成し、積層体を作製した。
得られた積層体を、120℃のオーブン内で周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に2.0倍に自由端一軸延伸した(空中補助延伸処理)。
次いで、積層体を、液温30℃の不溶化浴(水100重量部に対して、ホウ酸を4重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(不溶化処理)。
次いで、液温30℃の染色浴に、偏光板が所定の透過率となるようにヨウ素濃度、浸漬時間を調整しながら浸漬させた。本実施例では、水100重量部に対して、ヨウ素を0.2重量部配合し、ヨウ化カリウムを1.0重量部配合して得られたヨウ素水溶液に60秒間浸漬させた(染色処理)。
次いで、液温30℃の架橋浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを3重量部配合し、ホウ酸を3重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(架橋処理)。
その後、積層体を、液温70℃のホウ酸水溶液(水100重量部に対して、ホウ酸を4重量部配合し、ヨウ化カリウムを5重量部配合して得られた水溶液)に浸漬させながら、周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に総延伸倍率が5.5倍となるように一軸延伸を行った(水中延伸処理)。
その後、積層体を液温30℃の洗浄浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを4重量部配合して得られた水溶液)に浸漬させた(洗浄処理)。
以上により、厚み5μmの偏光子を含む光学フィルム積層体を得た。
【0120】
(保護フィルム)
TAC:富士フィルム社製、製品名「TJ25」、厚み25μmのトリアセチルセルロース系樹脂フィルムを用いた。
【0121】
<介在層(ブロック層)の形成材>
(形成材a:接着剤aの調製)
N-ヒドロキシエチルアクリルアミド10重量部、アクリロイルモルフォリン30重量部、1,9-ノナンジオールジアクリレート45部、(メタ)アクリルモノマーを重合してなるアクリル系オリゴマー(ARUFONUP1190,東亞合成社製)10部、光重合開始剤(IRGACURE 907,BASF社製)3部、重合開始剤(KAYACURE DETX-S,日本化薬社製)2部を混合し、紫外線硬化型接着剤を調製した。
【0122】
<粘着剤層(粘着剤層)の形成>
上記形成剤cで調製した、粘着剤溶液を、剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ38μm)からなる離型シート(セパレータ)の表面に、乾燥後の厚みが20μmになるように塗布し、乾燥して、粘着剤層を形成した。
【0123】
実施例1
<片保護偏光フィルムの作製>
上記光学フィルム積層体の偏光子Aの表面に、上記紫外線硬化型接着剤aを硬化後の接着剤層の厚みが1μmとなるように塗布しながら、上記保護フィルム(TAC)を貼合せたのち、活性エネルギー線として、紫外線を照射し、接着剤を硬化させた。紫外線照射は、ガリウム封入メタルハライドランプ、照射装置:Fusion UV Systems,Inc社製のLight HAMMER10、バルブ:Vバルブ、ピーク照度:1600mW/cm2、積算照射量1000/mJ/cm2(波長380~440nm)を使用し、紫外線の照度は、Solatell社製のSola-Checkシステムを使用して測定した。次いで、非晶性PET基材を剥離し、薄型偏光子を用いた片保護偏光フィルムを作製した。得られた片保護偏光フィルムの光学特性は単体透過率42.8%、偏光度99.99%であった。
【0124】
<機能層の形成材>
≪ウレタンプレポリマー(a)の溶液≫
トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンよりなるウレタンプレポリマーの75%酢酸エチル溶液(東ソー社製、商品名「コロネートL」)を用いた。
【0125】
≪化合物(b)の溶液の調製≫
トリメチロールプロパンを、シクロペンタノンに固形分濃度10%となるように溶解して、トリメチロールプロパン溶液を調製した。
【0126】
≪形成材の調製≫
上記のウレタンプレポリマーの75%酢酸エチル溶液(東ソー社製、商品名「コロネートL」)100部に、上記のトリメチロールプロパン溶液を、ウレタンプレポリマー:トリメチロールプロパンの固形分比率が、90:10になるように添加し、さらに、ジオクチルスズジラウレート系触媒(東京ファインケミカル社製,商品名「エンビライザーOL-1」)0.1部を加えた。さらに溶媒としてメチルイソブチルケトンを加えた後、変速攪拌機により15分間撹拌を実施して、固形分濃度10%に調製した形成材(塗工液)を調製した。
【0127】
<機能層付の片保護偏光フィルムの作製>
上記片保護偏光フィルムの偏光子の面(保護フィルムが設けられていない偏光子面)に、上記機能層の形成材(塗工液:放置後)をバーコーターにより塗布した後、60℃で5分間処理を施すことより行って、厚さ1.5μmのウレタン樹脂層を形成した。
【0128】
<FT-IRで測定した、形成材におけるイソシアネート基のピーク面積>
上記形成材は、形成材を調製してから、イソシアネート基のピーク面積の減少率(B/A)×100(%)が30%になるまで放置した後に、上記塗布を行った。上記形成材は、調製した直後(具体的には上記の15分間の撹拌を終了した直後)のイソシアネート基のピーク面積(A)は、5.7であり、塗布前のイソシアネート基のピーク面積(B)は4.0であった。
なお、FT-IRによる形成材におけるイソシアネート基のピーク面積の測定は、FT-IR(本体:Parkin Elmer社製,Spectrum Two)を用いて行った。
測定条件:
測定ユニット: Specac社製QuestGe-ATR
積算回数:8
イソシアネートピーク計算条件
面積計算範囲:2500-2080cm-1
ベース:2600-2000cm-1
サンプル作成方法:評価直前に調整した液3~5滴をPETフィルム(三菱樹脂製、ダイアホイルT390-38)に滴下した。その後、5分間、室温(23℃)環境下で放置して溶剤を揮発させて固化させたのち、FT-IR測定を実施した。面積の計算は付属の面積計算プログラムによって上記の条件で行った。
【0129】
<粘着剤層付の片保護偏光フィルムの作製>
次いで、片保護偏光フィルムに形成した機能層に、上記離型シート(セパレータ)の剥離処理面に形成した厚さ20μmの粘着剤層(粘着剤層)を貼り合わせて、粘着剤層付片保護偏光フィルムを作製した。
【0130】
実施例2~6、比較例1~3
実施例1において、機能層の形成材に用いた化合物(b)の種類、配合量を表1に示すように変えたこと以外は、実施例1と同様にして、機能層付の片保護偏光フィルムおよび粘着剤層付の片保護偏光フィルムを作製した。得られた片保護偏光フィルムの光学特性は単体いずれも透過率42.8%、偏光度99.99%であった。
【0131】
なお、比較例3では、化合物(b)を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして、機能層付の片保護偏光フィルムおよび粘着剤層付の片保護偏光フィルムを作製した。
【0132】
上記実施例および比較例で得られた機能層付の片保護偏光フィルム(但し、比較例3は片保護偏光フィルムについて)および粘着剤層付の片保護偏光フィルムについて下記評価を行った。結果を表1に示す。
【0133】
<偏光子の単体透過率Tおよび偏光度P>
得られた片保護偏光フィルムの単体透過率Tおよび偏光度Pを、積分球付き分光透過率測定器(村上色彩技術研究所のDot-3c)を用いて測定した。
なお、偏光度Pは、2枚の同じ偏光フィルムを両者の透過軸が平行となるように重ね合わせた場合の透過率(平行透過率:Tp)および、両者の透過軸が直交するように重ね合わせた場合の透過率(直交透過率:Tc)を以下の式に適用することにより求められるものである。偏光度P(%)={(Tp-Tc)/(Tp+Tc)}1/2×100
各透過率は、グランテラープリズム偏光子を通して得られた完全偏光を100%として、JIS Z8701の2度視野(C光源)により視感度補整したY値で示したものである。
【0134】
<凝集力の測定>
得られた機能層付の片保護偏光フィルムを、室温(23℃)で1週間放置した後に、島津製作所製オートグラフAG-ISにより凝集力を測定した。測定に際しては、機能層付の片保護偏光フィルムの機能層に両面テープ(日東電工社製,No.500)を貼り合せて、150mm×25mmの短冊状にカットしたものをサンプルとした。次いで、前記サンプルの両面テープ側をガラス板(松浪ガラス社製アルカリガラス,165mm×65mm×1.3mm)に貼り合せ。その後、前記サンプルにおける機能層と前記両面テープの界面の端部から、引張方向がガラス板に対して90°方向になるように剥離試験を行い、その際の試験力(N/25mm)を凝集力とした。
試験は下記条件で行った
試験条件:ストローク(機械によってフィルムを挟んでいる部分が引っ張り方向に動く距離)80mm、剥離速度1000mm/min
【0135】
<剥離試験:密着性>
得られた粘着剤層付の片保護偏光フィルムを、室温(23℃)で1週間放置した後に、10cm×10cmにカットしたものをサンプルとした。剥離試験は、前記サンプルの粘着剤層側をガラス板(松浪ガラス社製アルカリガラス,165mm×65mm×1.3mm)に貼り合せた後、前記サンプル(保護フィルム側)の4角にテープ(積水化学社製,
セロテープ(登録商標)No.252,24mm幅)を貼り合せた後、引張方向がガラス板に対して90°方向に勢いよく前記テープを引っ張った。その際に、機能層部分にてハガレが発生するかどうかを確認した。
剥離試験は下記基準で評価した。
◎:ハガレなし。
〇:1つの角でハガレが発生。
△:2つの角でハガレが発生。
×:3箇所以上でハガレが発生。
【0136】
【0137】
表1中、GP1000、GP3000は、三洋化成社製のポリオキシプロピレングリセリルエーテルを、T5650Jは、旭化成ケミカルズ社製のポリカーボネートポリオール、を示す。
【0138】
表1から、本発明に係る実施例によれば、偏光子との密着性および凝集力の良好な機能層を効率よく形成することができるとの効果を有することが分かる。一方、比較例では、十分な密着性と凝集力が得られていないことが分かる。また、本発明に係る実施例によれば、イソシアネート基のピーク面積の減少率を大きくすることで、前記効果を奏するうえで有効であるが、比較例では、前記減少率を大きくしたとしても、特性としては大きな変化ないことが分かる。
【符号の説明】
【0139】
P 偏光子
1 機能層
2 粘着剤層
3 介在層
4 保護フィルム