(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-08
(45)【発行日】2022-04-18
(54)【発明の名称】コーテッドサンド及びその製造方法並びにこれを用いた鋳型の製造方法
(51)【国際特許分類】
B22C 1/18 20060101AFI20220411BHJP
B22C 1/02 20060101ALI20220411BHJP
【FI】
B22C1/18 B
B22C1/02 Z
(21)【出願番号】P 2018552615
(86)(22)【出願日】2017-11-22
(86)【国際出願番号】 JP2017042006
(87)【国際公開番号】W WO2018097178
(87)【国際公開日】2018-05-31
【審査請求日】2020-07-10
(31)【優先権主張番号】P 2016226984
(32)【優先日】2016-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000117102
【氏名又は名称】旭有機材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078190
【氏名又は名称】中島 三千雄
(74)【代理人】
【識別番号】100115174
【氏名又は名称】中島 正博
(72)【発明者】
【氏名】高間 智宏
(72)【発明者】
【氏名】浦 哲也
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/194550(WO,A3)
【文献】特開2012-076113(JP,A)
【文献】特開2013-094834(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22C 1/00-9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐火性骨材の表面が水ガラスを含む被覆層にて覆われてなる、常温流動性を有する乾態のコーテッドサンドにして、該被覆層
にシリコーン系界面活性
剤が含有せしめられていることを特徴とするコーテッドサンド。
【請求項2】
含水分量が、前記被覆層における水ガラスの固形分量の5~55質量%である請求項
1に記載のコーテッドサンド。
【請求項3】
前記
シリコーン系界面活性剤の含有量が、前記被覆層における水ガラスの固形分の100質量部に対して、0.1~20.0質量部である請求項1
又は請求項2に記載のコーテッドサンド。
【請求項4】
前記被覆層に、保湿剤が更に含有せしめられている請求項1乃至
請求項3の何れか1項に記載のコーテッドサンド。
【請求項5】
前記保湿剤の含有量が、前記被覆層における水ガラスの固形分の100質量部に対して、0.1~20.0質量部である
請求項4に記載のコーテッドサンド。
【請求項6】
前記被覆層に、平均粒子径が0.1~20.0μmである球状粒子が更に含有せしめられている請求項1乃至
請求項5の何れか1項に記載のコーテッドサンド。
【請求項7】
前記球状粒子の含有量が、前記被覆層における水ガラスの固形分の100質量部に対して、0.1~500質量部である
請求項6に記載のコーテッドサンド。
【請求項8】
前記耐火性骨材が球状である請求項1乃至
請求項7の何れか1項に記載のコーテッドサンド。
【請求項9】
耐火性骨材の表面が水ガラスを含む被覆層にて覆われてなる、常温流動性を有する乾態のコーテッドサンドの製造方法にして、
加熱した耐火性骨材に対して、水ガラスを主成分とする粘結剤、及
びシリコーン系界面活性
剤を混和せしめ、水分を蒸発させることにより、該耐火性骨材の表面が水ガラス及び
シリコーン系界面活性剤を含む被覆層にて覆われてなり、含水分量が該被覆層における水ガラスの固形分量の5~55質量%であるコーテッドサンドを製造することを特徴とするコーテッドサンドの製造方法。
【請求項10】
請求項1乃至
請求項8の何れか1項に記載のコーテッドサンドを用い、それを、目的とする鋳型を与える成形型の成形キャビティ内に充填した後、水蒸気を通気させて、かかる成形型内で保持し、固化乃至は硬化せしめることにより、目的とする鋳型を得ることを特徴とする鋳型の製造方法。
【請求項11】
請求項1乃至
請求項8の何れか1項に記載のコーテッドサンドに水を添加して湿態化させ、その湿態状のコーテッドサンドを成形型内に充填した後、かかる成形型内で保持し、固化乃至は硬化せしめることにより、目的とする鋳型を得ることを特徴とする鋳型の製造方法。
【請求項12】
前記成形型の保持中に、さらに、乾燥空気、加熱乾燥空気又は窒素ガスが、前記成形型の成形キャビティ内に通気せしめられる
請求項10又は
請求項11に記載の鋳型の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーテッドサンド及びその製造方法並びにこれを用いた鋳型の製造方法に係り、特に、水の浸透性に優れ、最終的に得られる鋳型において優れた強度を発揮させることが可能なコーテッドサンド、及びその製造方法、並びに、そのようなコーテッドサンドを用いた鋳型の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、金属溶湯の鋳造に用いられる鋳型の一つとして、耐火性骨材からなる鋳型砂を所定の粘結剤にて被覆してなるコーテッドサンドを用いて、目的とする形状に造型して得られたものが、用いられている。具体的には、日本鋳造工学会編の「鋳造工学便覧」第78~90頁には、そのようなコーテッドサンドにおける粘結剤として、水ガラスの如き無機系粘結剤の他、フェノール樹脂やフラン樹脂、ウレタン樹脂等の樹脂を用いた有機系粘結剤が明らかにされており、また、それら粘結剤を用いて自硬性鋳型を造型する手法も、明らかにされている。
【0003】
例えば、特開2012-076115号公報(特許文献1)においては、粘結剤として水ガラスを用いた粘結剤コーテッド耐火物として、耐火骨材の表面に水ガラスを含有する固形のコーティング層が被覆されてなる、流動性が良好な粘結剤コーテッド耐火物(コーテッドサンド)が、明らかにされている。そこにおいて、そのような流動性が良好な粘結剤コーテッド耐火物(コーテッドサンド)は、鋳型造型のための成形型の成形キャビティ内に充填せしめられた後、水蒸気が通気せしめられることにより、かかる粘結剤コーテッド耐火物(コーテッドサンド)の固化が進行し、目的とする鋳型を得る手法が、明らかにされているのである。
【0004】
ここで、流動性が良好な乾態のコーテッドサンドは、水蒸気などの水分で濡らした後、それを乾燥することによって固化せしめて、鋳型の造型を行うものであるところ、成型キャビティ内に充填されたコーテッドサンドが全体に亘って水分に濡れて湿態化するには、水分と接触した乾態のコーテッドサンドの粘結剤に水分が浸透し、濡れて、膨潤化するという過程を経るものである。このような過程を経るためには、十分な量の水蒸気を添加することが必要とされるが、コーテッドサンドに対する水蒸気の添加量が多くなると、成形型の成形キャビティにおける水蒸気の通気口付近に存在するコーテッドサンドにおいて、濡れた粘結剤が流されてしまい、最終的に得られる鋳型が十分な物性を発揮し得ない恐れがあり、また、コーテッドサンドが水蒸気の水分に濡れすぎてしまい、成形型からの鋳型の離型性が悪くなる恐れがある等の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景として為されたものであって、その解決すべき課題とするところは、水の浸透性に優れ、鋳型造型の際の成形型からの離型性にも優れ、更には、最終的に得られる鋳型において優れた強度をも発揮させることが可能なコーテッドサンドを提供することにある。また、本発明は、そのような優れたコーテッドサンドを用いた鋳型の製造方法を提供することも、その解決課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そして、本発明は、上記した課題を解決するために、以下に列挙せる如き各種の態様において、好適に実施され得るものであるが、また、以下に記載の各態様は、任意の組合せにおいて採用可能である。なお、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに何等限定されることなく、明細書全体の記載から把握され得る発明思想に基づいて、認識され得るものであることが、理解されるべきである。
【0009】
(1) 耐火性骨材の表面が水ガラスを含む被覆層にて覆われてなる、常温流動性を有す る乾態のコーテッドサンドにして、該被覆層に、非イオン性界面活性剤、シリコー ン系界面活性剤及びフッ素系界面活性剤から選ばれる一種又は二種以上の界面活性 剤が含有せしめられていることを特徴とするコーテッドサンド。
(2) 前記界面活性剤が非イオン性界面活性剤及び/又はシリコーン系界面活性剤であ る前記態様(1)に記載のコーテッドサンド。
(3) 含水分量が、前記被覆層における水ガラスの固形分量の5~55質量%である前 記態様(1)又は前記態様(2)に記載のコーテッドサンド。
(4) 前記界面活性剤の含有量が、前記被覆層における水ガラスの固形分の100質量 部に対して、0.1~20.0質量部である前記態様(1)乃至前記態様(3)の 何れか1つに記載のコーテッドサンド。
(5) 前記被覆層に、保湿剤が更に含有せしめられている前記態様(1)乃至前記態様 (4)の何れか1項に記載のコーテッドサンド。
(6) 前記保湿剤の含有量が、前記被覆層における水ガラスの固形分の100質量部に 対して、0.1~20.0質量部である前記態様(5)に記載のコーテッドサンド 。
(7) 前記被覆層に、平均粒子径が0.1~20.0μmである球状粒子が更に含有せ しめられている前記態様(1)乃至前記態様(6)の何れか1つに記載のコーテッ ドサンド。
(8) 前記球状粒子の含有量が、前記被覆層における水ガラスの固形分の100質量部 に対して、0.1~500質量部である前記態様(7)に記載のコーテッドサンド 。
(9) 前記耐火性骨材が球状である前記態様(1)乃至前記態様(8)の何れか1つに 記載のコーテッドサンド。
(10) 耐火性骨材の表面が水ガラスを含む被覆層にて覆われてなる、常温流動性を有 する乾態のコーテッドサンドの製造方法にして、加熱した耐火性骨材に対して、 水ガラスを主成分とする粘結剤、及び、非イオン性界面活性剤、シリコーン系界 面活性剤及びフッ素系界面活性剤から選ばれる一種又は二種以上の界面活性剤を 混和せしめ、水分を蒸発させることにより、該耐火性骨材の表面が水ガラス及び 該界面活性剤を含む被覆層にて覆われてなり、含水分量が該被覆層における水ガ ラスの固形分量の5~55質量%であるコーテッドサンドを製造することを特徴 とするコーテッドサンドの製造方法。
(11) 前記態様(1)乃至前記態様(9)の何れか1つに記載のコーテッドサンドを 用い、それを、目的とする鋳型を与える成形型の成形キャビティ内に充填した後 、水蒸気を通気させて、かかる成形型内で保持し、固化乃至は硬化せしめること により、目的とする鋳型を得ることを特徴とする鋳型の製造方法。
(12) 前記態様(1)乃至前記態様(9)の何れか1つに記載のコーテッドサンドに 水を添加して湿態化させ、その湿態状のコーテッドサンドを成形型内に充填した 後、かかる成形型内で保持し、固化乃至は硬化せしめることにより、目的とする 鋳型を得ることを特徴とする鋳型の製造方法。
(13) 前記成形型の保持中に、さらに、乾燥空気、加熱乾燥空気又は窒素ガスが、前 記成形型の成形キャビティ内に通気せしめられる前記態様(11)又は前記態様 (12)に記載の鋳型の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
このように、本発明に従う常温流動性を有する乾態のコーテッドサンドにあっては、耐火性骨材の表面を覆う被覆層に、粘結剤としての水ガラスと共に界面活性剤が含有せしめられているのであり、外部から水分が供給されると、かかる水分と被覆層を構成する水ガラスとの間を界面活性剤が仲介することにより、優れた濡れ性を発揮することとなる。従って、本発明のコーテッドサンドを用いて鋳型を造型するに際しては、粘結剤として水ガラスを用いてなる従来の乾態のコーテッドサンドと比較して、少量の水分であっても、成形型の成形キャビティ内に充填されたコーテッドサンドの全体を十分に湿態化させることが可能となり、コーテッドサンドへの水分の供給時間(例えば、水蒸気によって水分を供給する場合には、水蒸気の通気時間)を必要最低限に抑えることが可能である。また、従来より少量の水分であってもコーテッドサンド全体が有利に湿態化することから、成形型(成形キャビティ)への水分の供給量が少量に抑えられ、その結果、造型された鋳型にあっては、成形型からの離型性が優れていることに加えて、優れた強度を発揮することとなるのである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ところで、本発明に従うコーテッドサンドは、一般に、耐火性骨材に対して、粘結剤として、水溶液の状態にある水ガラスを混合せしめ、そしてその混合物から水分を蒸発させることにより、換言すれば水溶液の状態にある水ガラスの水分を蒸発させることによって、製造されるものであり、粘結剤である水ガラスの固形分からなる乾燥した被覆層が、所定厚さにおいて、かかる耐火性骨材の表面に形成されてなる、乾態のものであって、良好な常温流動性を有しているものである。
【0012】
ここで、本発明における「常温流動性を有する乾態のコーテッドサンド」とは、含水分量にかかわらず、動的安息角を測定した際に測定値が得られるコーテッドサンドを意味する。この動的安息角とは、軸方向の一方の端部が透明な板材で閉塞されてなる円筒内にコーテッドサンドを収容して(例えば、直径7.2cm×高さ10cmの容器に、その体積の半分まで、コーテッドサンドを入れる)、軸心が水平方向となるように保持し、一定速度(例えば、25rpm)で水平な軸心回りに回転させることにより、円筒内で流動しているコーテッドサンド層の斜面が平坦面状となり、かかる斜面と水平面との間に形成される角度をいう。本発明に従うコーテッドサンドの動的安息角は、80°以下であることが好ましく、45°以下であることがより好ましく、30°以下であることが更に好ましい。本発明においては、球状の耐火性骨材を用いることにより、動的安息角が45°以下のコーテッドサンドが有利に得られる。なお、例えばコーテッドサンドが湿ったような状態で、円筒内で流動せずに、コーテッドサンド層の斜面が平坦面として形成されず、その結果、動的安息角を測定することができないものは、湿態のコーテッドサンドと称することとする。
【0013】
本発明に従う常温流動性を有する乾態のコーテッドサンドは、その含水分量が、耐火性骨材の表面を覆う被覆層に含まれる水ガラスの固形分量に対して、5~55質量%の割合に相当する量であることが望ましく、10~50質量%であることがより望ましく、20~50質量%であることが最も望ましい。コーテッドサンドにおける含水分量が、被覆層中の水ガラスの固形分量に対して5質量%に相当する量よりも少なくなると、水ガラスがガラス化して、鋳型造型の際に再び水を添加しても、溶液状に戻らない恐れがあり、一方、55質量%に相当する量よりも多くなると、コーテッドサンドが乾態状態とはならない恐れがある。なお、コーテッドサンドにおける含水分量の測定方法としては、特に限定されるものではなく、水ガラスや界面活性剤等の種類に応じた手法が適宜に採用可能である。具体的には、後掲の実施例の欄に記載の測定方法を、例示することが出来る。
【0014】
本発明のコーテッドサンドを構成する耐火性骨材としては、鋳型の基材として機能する耐火性物質であって、従来から鋳型用として利用されている各種の耐火性粒状乃至は粉状材料が何れも用いられ得、具体的には、ケイ砂、再生ケイ砂をはじめとして、アルミナサンド、オリビンサンド、ジルコンサンド、クロマイトサンド等の特殊砂や、フェロクロム系スラグ、フェロニッケル系スラグ、転炉スラグ等のスラグ系粒子;アルミナ系粒子、ムライト系粒子等の人工粒子及びこれらの再生粒子;アルミナボール、マグネシアクリンカー等を、挙げることが出来る。なお、これらの耐火性骨材は、新砂であっても、或いは、鋳物砂として鋳型の造型に一回或いは複数回使用された再生砂または回収砂であっても、更には、そのような再生砂や回収砂に新砂を加えて混合せしめてなる混合砂であっても、何ら差支えない。そして、そのような耐火性骨材は、一般に、AFS指数で40~130程度の粒度のものとして、好ましくは、50~110程度の粒度のものとして、用いられることとなる。
【0015】
また、耐火性骨材は球状のものが好ましく、具体的には粒形係数が1.2以下、より好ましくは1.0~1.1である耐火性骨材が望ましい。粒形係数が1.2以下である耐火性骨材を用いることにより、鋳型造型時の流動性や充填性が向上し、骨材同士の接点数が多くなるところから、同じ強度を発現するために必要な粘結剤や添加物の量を少なくすることが出来る。なお、ここで用いられる骨材の粒形係数は、一般に、粒子の外形形状を示す一つの尺度として採用され、粒形指数とも称されているものであって、その値が1に近付く程、球形(真球)に近付くことを意味するものである。そして、そのような粒形係数は、公知の各種の手法で測定された骨材の表面積(砂表面積)を用いて算出された値にて表わされるものであって、例えば、砂表面積測定器(ジョージ・フィッシャー社製)を用いて、1gあたりの実際の骨材粒子(砂粒)の表面積を測定し、それを、理論的表面積で除した値を意味するものである。なお、理論的表面積とは、骨材粒子(砂粒)が全て球形であると仮定した場合の表面積である。
【0016】
本発明に係るコーテッドサンドにおいては、上述の如き耐火性骨材を被覆する粘結剤として、水ガラスを主成分とするものが用いられることとなる。水ガラスとは、水溶性のケイ酸化合物であり、そのようなケイ酸化合物としては、例えば、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、メタケイ酸ナトリウム、メタケイ酸カリウム、ケイ酸リチウム、ケイ酸アンモニウム等を挙げることが出来るが、それらの中でも、特に、ケイ酸ナトリウム(ケイ酸ソーダ)が本発明では有利に用いられることとなる。また、粘結剤としては、水ガラスを主成分として用いる限りにおいて、種々の水溶性バインダ、例えば、熱硬化性樹脂、糖類、タンパク質、合成高分子、塩類や無機高分子等を併用することが可能である。なお、他の水溶性バインダを水ガラスと併用する場合、粘結剤全体における水ガラスの割合は、60質量%以上であることが好ましく、より好ましくは80質量%以上、最も好ましくは90%質量以上である。
【0017】
ここで、ケイ酸ナトリウムは、通常、SiO2 /Na2O のモル比により、1号~5号の種類に分類されて、用いられている。具体的には、ケイ酸ナトリウム1号は、SiO2 /Na2O のモル比が2.0~2.3であるものであり、またケイ酸ナトリウム2号は、SiO2 /Na2O のモル比が2.4~2.6であるものであり、更にケイ酸ナトリウム3号は、SiO2 /Na2O のモル比が2.8~3.3であるものである。加えて、ケイ酸ナトリウム4号は、SiO2 /Na2O のモル比が3.3~3.5であるものであり、またケイ酸ナトリウム5号は、SiO2 /Na2O のモル比が3.6~3.8であるものである。これらの中で、ケイ酸ナトリウム1号~3号は、JIS-K-1408にても規定されている。そして、これら各種のケイ酸ナトリウムは、本発明において、単独での使用の他、混合して用いられても良く、また混合することで、SiO2 /Na2O のモル比を調製することも可能である。
【0018】
本発明においては、乾態のコーテッドサンドを有利に得るべく、粘結剤として用いられる水ガラスを構成するケイ酸ナトリウムは、SiO2 /Na2O のモル比が、一般に1.9以上、好ましくは2.0以上、より好ましくは2.1以上であることが望ましく、上記したケイ酸ナトリウムの分類において、1号及び2号に相当するケイ酸ナトリウムが、特に有利に用いられることとなる。かかるケイ酸ナトリウム1号及び2号は、それぞれ、水ガラス中のケイ酸ナトリウム濃度が広い範囲においても、安定して、特性の良好な乾態のコーテッドサンドを与えるものである。また、そのようなケイ酸ナトリウムにおけるSiO2 /Na2O のモル比の上限は、水溶液の形態にある水ガラスの特性に応じて適宜に選定されることとなるが、一般に3.5以下、好ましくは3.2以下、より好ましくは2.7以下とされることとなる。ここで、SiO2 /Na2O のモル比が1.9よりも小さくなると、水ガラスの粘性が低くなり、水分量をかなり低くしなければ、コーテッドサンドを乾態とすることが困難となる恐れがあり、その一方、3.5よりも大きくなると、水への溶解度が低下して、接着面積が稼げず、最終的に得られる鋳型の強度が低下する恐れがある。
【0019】
また、本発明において用いられる水ガラスは、水に溶けた状態のケイ酸化合物の溶液のことを意味し、市場において購入されたままの原液の状態において用いられる他、そのような原液に水を添加して、希釈した状態において用いられることとなる。そして、そのような水ガラスから、水や溶剤等の、揮発する物質を除いた不揮発分(水ガラス成分)を固形分と言い、これが、上記したケイ酸ナトリウム等の可溶性のケイ酸化合物に相当するものである。また、そのような固形分(不揮発分)の割合が高い程、水ガラス中のケイ酸化合物濃度は、高くなるものである。従って、本発明において用いられる水ガラスの固形分とは、それが原液のみにて構成される場合においては、かかる原液中の水分量を除いた量に相当することとなり、一方、原液を水にて希釈して得られる希釈液が用いられる場合にあっては、原液中の水分量と希釈に用いられた水の量とを除いた量が、使用される水ガラスの固形分に相当することとなる。
【0020】
そして、そのような水ガラス中の固形分は、水ガラス成分(可溶性ケイ酸化合物)の種類等に応じて適宜の割合とされることとなるが、有利には、20~50質量%の割合において含有せしめられていることが望ましい。この固形分に相当する水ガラス成分を適度に水溶液中に存在せしめることによって、耐火性骨材との混合(混練)時に、かかる耐火性骨材に対して、ムラなく、均一に、水ガラス成分を被覆させることが出来、それによって、目的とする鋳型を有利に造型することが可能となる。なお、水ガラス中における水ガラス成分の濃度が低くなり過ぎて、固形分の合計量が20質量%未満となると、コーテッドサンドの乾燥のために、加熱温度を高くしたり、加熱時間を長くしたりする必要があり、そのために、エネルギーロス等の問題が惹起されるようになる。また、水ガラス中における固形分の割合が高くなり過ぎると、耐火性骨材の表面を、水ガラス成分にて均一に被覆することが困難となり、目的とする鋳型の特性の向上にも問題を惹起するところから、かかる固形分は50質量%以下、従って水分量が50質量%以上の割合となるように、水溶液の形態にある水ガラスを調製することが望ましい。
【0021】
そして、かかる水ガラスは、耐火性骨材の100質量部に対して、不揮発分のみとして考えた場合の固形分換算で0.1~5.0質量部の割合において、好ましくは0.1~2.5質量部の割合において用いられることが望ましく、中でも、0.2~2.0質量部の割合が特に有利に採用されて、耐火性骨材の表面に、所定の被覆層が形成されることとなる。ここで、固形分の測定は、以下のようにして実施される。即ち、アルミ箔製皿(縦:9cm、横:9cm、高さ:1.5cm)内に、試料10gを秤量して収容し、180±1℃に保持した加熱板上に置き、20分間放置した後、かかる試料皿を反転させて、更に20分間、上記加熱板上に放置する。その後、試料皿を加熱板上から取り出して、デシケータ中で放冷した後、秤量を行って、次式により、固形分(質量%)が算出される。
固形分(質量%)=[乾燥後の質量(g)/乾燥前の質量(g)]
×100
【0022】
なお、本発明において水ガラスの使用量が少なくなり過ぎると、耐火性骨材の表面に被覆層が形成され難くなり、鋳型造型時のコーテッドサンドの固化乃至は硬化が充分に進行し難くなる恐れがある。また、水ガラスの使用量が多くなり過ぎても、耐火性骨材の表面に、余分な量の水ガラスが付着して、均一な被覆層が形成され難くなると共に、コーテッドサンドが相互に固着して団塊化(複合粒子化)する恐れもあり、そのために、最終的に得られる鋳型の物性に悪影響をもたらし、加えて、金属を鋳込んだ後の中子の砂落としを難しくする問題も惹起する恐れがある。
【0023】
そして、本発明に従うコーテッドサンドにおいては、耐火性骨材の表面を覆う、水ガラスを含む被覆層中に、界面活性剤が含有せしめられているところに、大きな技術的特徴が存しているのである。このように、水ガラスを含む被覆層中に界面活性剤が含有せしめられていることにより、本発明のコーテッドサンドは、水の浸透性、換言すれば水への濡れ性が、優れたものとなっている。このため、コーテッドサンドに対して鋳型造型時に水分が供給されると、供給された水分と水ガラスとの間を界面活性剤が仲介することにより、少量の水分であってもコーテッドサンド全体が効果的に湿態化することとなるのであり、1)コーテッドサンドへの水分の供給時間(例えば、水蒸気によって水分を供給する場合には、水蒸気の通気時間)を必要最低限に抑えることが可能ならしめられ、また、2)成形型(成形キャビティ)への水分の供給量が少量に抑えられる結果、造型された鋳型にあっては、成形型からの離型性が優れていることに加えて、優れた強度も発揮する、等の効果を、有利に享受することが可能である。
【0024】
ここで、本発明において、水ガラスを含む被覆層中に含有せしめられる界面活性剤の量は、被覆層における水ガラスの固形分量の100質量部に対して、0.1~20.0質量部であることが望ましく、中でも0.5~15.0質量部が好ましく、特に0.75~12.5質量部であることが好ましい。含有せしめられる界面活性剤の量が少な過ぎると、上記した効果を有利に享受することが出来ない恐れがあり、その一方、界面活性剤の量が多過ぎても、使用量に応じた効果の向上が認められず、また界面活性剤によっては、水ガラスが乾態化する際に固体化せず、乾態のコーテッドサンドを得ようとしても得られない恐れがあり、更には、費用対効果の観点より得策ではない。本発明においては、界面活性剤として、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、シリコーン系界面活性剤及びフッ素系界面活性剤の何れをも、用いることが出来る。
【0025】
具体的には、陽イオン性界面活性剤としては、脂肪族アミン塩、脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩等が挙げられる。また、陰イオン性界面活性剤としては、脂肪酸石鹸、N-アシル-N-メチルグリシン塩、N-アシル-N-メチル-β-アラニン塩、N-アシルグルタミン酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アシル化ペプチド、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホ琥珀酸エステル塩、アルキルスルホ酢酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、N-アシルメチルタウリン、硫酸化油、高級アルコール硫酸エステル塩、第2級高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸塩、第2級高級アルコールエトキシサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、モノグリサルフェート、脂肪酸アルキロールアミド硫酸エステル塩、アルキルエーテルリン酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩等が挙げられる。更に、両性界面活性剤としては、カルボキシベタイン型、スルホベタイン型、アミノカルボン酸塩、イミダゾリニウムベタイン等が挙げられる。加えて、非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン2級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(例えば、エマルゲン911)、ポリオキシエチレンステロールエーテル、ポリオキシエチレンラノリン誘導体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル(例えば、ニューポールPE-62)、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアミンオキサイド、アセチレングリコール、アセチレンアルコール等が挙げられる。
【0026】
また、種々の界面活性剤のうち、特に、非極性部位としてシロキサン構造を有するものをシリコーン系界面活性剤といい、パーフルオロアルキル基を有するものをフッ素系界面活性剤という。シリコーン系界面活性剤としては、ポリエステル変性シリコーン、アクリル末端ポリエステル変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、アクリル末端ポリエーテル変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーン、アミノプロピル変性シリコーン等が挙げられる。また、フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキルスルフォン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキル基含有オリゴマー等が挙げられる。
【0027】
本発明においては、上述の如き各種の界面活性剤を、単独で、又は2種類以上を混合して、用いることが可能である。尤も、界面活性剤によっては、水ガラスと反応し、時間の経過と共に界面活性能が低下乃至は消失する恐れがあるものがあるため、水ガラスと反応しない陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤及びシリコーン系界面活性剤が、本発明のコーテッドサンドにおいては有利に使用される。特に、少ない添加量でも優れた効果を享受でき、高い強度を維持する鋳型が得られることから、シリコーン系界面活性剤が最も有利に使用される。
【0028】
また、本発明のコーテッドサンドにおいては、上述した界面活性剤の他にも、更なる添加剤として、保湿剤を被覆層に含有せしめても良い。水ガラスを含む被覆層に保湿剤を含有せしめることにより、鋳型造型の際に、水分に濡れて湿態化したコーテッドサンドの膨潤性を、加熱によって固化又は硬化されるまで、安定して維持することが可能となる。本発明における保湿剤の含有量は、被覆層における水ガラスの固形分の100質量部に対して、0.1~20.0質量部であることが望ましく、中でも0.5~15.0質量部がより望ましく、0.75~12.5質量部であることが最も望ましい。また、そのような保湿剤としては、多価アルコール、水溶性高分子、炭化水素類、糖類、タンパク質、無機化合物等を用いることが出来る。
【0029】
具体的には、多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-ヘプタンジオール、1,2-オクタンジオール、1,2,6-ヘキサントリオール、チオグリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等が挙げられる。水溶性高分子化合物としては、特に分子量1000当り、アルコール性水酸基を5~25個有している化合物を指すものである。このような水溶性高分子化合物としては、ポリビニルアルコール及びその各種変性物等のビニルアルコール系重合体;アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、アルキルヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース誘導体;アルキル澱粉、カルボキシルメチル澱粉、酸化澱粉などの澱粉誘導体;ポリアクリル酸ナトリウム等の吸水性高分子等が挙げられる。炭化水素類としては、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、石油エーテル、石油ベンジル、テトラリン、デカリン、ターシャリーアミルベンゼン、ジメチルナフタリン等が挙げられる。糖類としては、単糖類、オリゴ糖、デキストリン等の多糖類等を挙げることが出来、その中で、単糖類は、加水分解によって更に簡単な糖類に分解することの出来ない糖類であり、好ましくは三炭糖(炭素原子3個を持つ単糖類)~十炭糖(炭素原子10個を持つ単糖類)、より好ましくは六炭糖(炭素原子6個を持つ単糖類)である。また、タンパク質としては、ゼラチン等が挙げられる。加えて、無機化合物としては、食塩、硫酸ソーダ、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、ケイ酸塩等が挙げられる。これら各種の保湿剤を、単独で、又は2種類以上を混合して、用いることが出来る。
【0030】
なお、従来より公知の各種保湿剤には、水溶性のものから難水溶性のものまで含まれているが、本発明においては、常温(25℃)の水に投入した際に、粘度の上昇が低い保湿剤が有利に用いられる。具体的には、水溶性の保湿剤の場合、常温の水に、水の質量の20%に相当する量の保湿剤を投入し、1時間撹拌し、かかる撹拌後の溶液の粘度が0.8~10cP、好ましくは0.8~5cPの保湿剤が、有利に用いられる。一方、難水溶性の保湿剤は、水中に分散すれば保湿剤としての効果を発揮するものであるところ、難水溶性の保湿剤であっても、常温の水に、水の質量の20%に相当する量の保湿剤を投入し、1時間撹拌し、かかる撹拌後の溶液(水と保湿剤の混合物)をろ過し、得られるろ液の粘度が上記範囲内にあるものが、有利に用いられる。以上より、本発明において有利に用いられる保湿剤としては、グリセリン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリアクリル酸ナトリウム等の吸水性高分子、ポリビニルアルコール等のビニルアルコール系重合体、重量平均分子量が50000以上のポリエチレングリコール(ポリエチレンオキサイド)等を、挙げることが出来る。
【0031】
また、本発明のコーテッドサンドにおける被覆層には、平均粒子径が0.1~20.0μmである球状粒子を、好ましくは平均粒子径が0.5~10.0μmの球状粒子を、含有せしめても良い。そのような所定の球状粒子を被覆層に含有せしめることにより、鋳型造型に際しての成形型(成形キャビティ)へのコーテッドサンドの充填性を、より有利に向上させることが可能となる。そのような球状粒子の含有量は、被覆層における水ガラスの固形分の100質量部に対して、0.1~500質量部であり、好ましくは0.3~300質量部であり、より好ましくは0.5~200質量部であり、さらに好ましくは0.75~100質量部であり、最も好ましくは1.0~50質量部である。球状粒子の平均粒子径は、レーザ回折式の粒度分布測定装置等による測定される粒度分布より、求めることが可能である。
【0032】
なお、本発明において用いられる球状粒子は、球状を呈するものであれば良く、必ずしも真球状を呈することは必要とされないところ、通常、真球度が0.5以上であるものが、好ましくは0.7以上であるものが、更に好ましくは0.9以上であるものが、有利に用いられることとなる。ここで、真球度とは、走査型電子顕微鏡観察において、単粒子のものを無作為に10個選択し、その投影形状から得られたアスペクト比(短径/長径の比)の平均値を意味している。また、球状粒子を構成する材質については特に限定されるものではないが、有利には、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン等の球状粒子が好適に用いられることとなる。なお、球状ではない粒子(非球状粒子)の表面には突起や窪みが存在していることから、例えば、非球状粒子が、供給された水分によって溶液状となった水ガラスと共に耐火性骨材の粒子間を流動しようとすると、非球状粒子表面の突起等と耐火性骨材粒子や他の非球状粒子との衝突により、滑り止め作用が生じてしまい、耐火性骨材粒子間への水ガラス及び非球状粒子の流動が妨げられる。このため、本発明において非球状粒子を用いると、最終的に得られる鋳型の充填性や、その強度を低下させる恐れがある。
【0033】
また、本発明において用いられる球状粒子を構成する材質については、特に限定されるものではないが、無機金属酸化物であることが好ましい。無機金属酸化物からなる粒子としては、二酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化チタン等からなる粒子が有利に用いられるのであり、それらの中でも、特に、二酸化珪素粒子は、強アルカリ性の水ガラスが二酸化珪素の表面上に形成されたシラノール基と反応することが出来、また水の蒸発に際して、二酸化珪素と固形となった水ガラスとの間に強固な結合が形成されて、鋳型強度を向上させ得る点において、好ましい。なお、二酸化珪素には晶質と非晶質とがあるが、非晶質の方が望ましく、非晶質二酸化珪素としては、沈殿シリカ、電気アーク中又は火炎加水分解で生成した焼成シリカ、ZrSiO4 の熱分解により生成したシリカ、酸素を含むガスで金属珪素の酸化により生成した二酸化珪素、溶融及びその後の急冷により結晶石英から生成された球状粒子の石英ガラス粉末等を、例示することが出来る。これらは、単独で用いられ得ることは勿論のこと、2種以上のものを混合して用いることも可能である。なお、本発明において、二酸化珪素は無機金属酸化物として扱うものとする。
【0034】
さらに、本発明のコーテッドサンドにおいては、その被覆層中に、上述した界面活性剤等の他にも、必要に応じて、公知の各種添加剤を適宜に含有せしめることも可能である。
【0035】
そのような添加剤の一つとして、本発明においては、被覆層中に耐湿性向上剤を含有せしめても良い。被覆層中に耐湿性向上剤を含有せしめることにより、最終的に得られる鋳型の耐湿性の向上を図ることが出来る。本発明において用いられる耐湿性向上剤としては、コーテッドサンドにおいて従来より用いられているものであれば、本発明の効果を阻害しないものである限り、如何なるものであっても使用可能である。具体的には、炭酸亜鉛、塩基性炭酸亜鉛、炭酸鉄、炭酸マンガン、炭酸銅、炭酸アルミニウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸リチウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等の炭酸塩、四ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸カリウム、四ホウ酸リチウム、四ホウ酸アンモニウム、四ホウ酸カルシウム、四ホウ酸ストロンチウム、四ホウ酸銀、メタホウ酸ナトリウム、メタホウ酸カリウム、メタホウ酸リチウム、メタホウ酸アンモニウム、メタホウ酸カルシウム、メタホウ酸銀 メタホウ酸銅、メタホウ酸鉛、メタホウ酸マグネシウム等のホウ酸塩、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸リチウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸ストロンチウム、硫酸バリウム、硫酸チタン、硫酸アルミニウム、硫酸亜鉛、硫酸銅等の硫酸塩、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素カリウム、リン酸リチウム、リン酸水素リチウム、リン酸マグネシウム、リン酸カルシウム、リン酸チタン、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛等のリン酸塩、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛等の水酸化物、珪素、亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、リチウム、銅、鉄、ホウ素、ジルコニウム等の酸化物等を、例示することが出来る。それらの中でも、特に塩基性炭酸亜鉛、四ホウ酸ナトリウム、メタホウ酸カリウム、硫酸リチウム、水酸化リチウムは、より有利に耐湿性を向上させることが可能である。上記したものを始めとする耐湿性向上剤は、単独で用いられ得ることは勿論のこと、2種以上のものを併用することも可能である。
【0036】
なお、そのような耐湿性向上剤の使用量としては、その総量において、水ガラスの固形分100質量部に対して、一般に、0.5~50質量部程度であることが好ましく、中でも、1~20質量部がより好ましく、特に、2~15質量部が更に好ましい。耐湿性向上剤の添加効果を有利に享受するために、0.5質量部以上の使用量であることが望ましいのであり、一方、その添加量が多すぎると、水ガラスの結合を阻害し、最終的に得られる鋳型の強度が低下する等の問題を惹起する恐れがあるところから、50質量部以下とされることが望ましいのである。
【0037】
また、その他の添加剤として、耐火性骨材と水ガラスとの結合を強化するカップリング剤を含有せしめることも有効であり、例えば、シランカップリング剤、ジルコンカップリング剤、チタンカップリング剤等を用いることが出来る。更に、コーテッドサンドの流動性の向上に寄与する滑剤の含有も有効であり、例えば、パラフィンワックス、合成ポリエチレンワックス、モンタン酸ワックス等のワックス類;ステアリン酸アマイド、オレイン酸アマイド、エルカ酸アマイド等の脂肪酸アマイド類;メチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド等のアルキレン脂肪酸アマイド類;ステアリン酸、ステアリルアルコール;ステアリン酸鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等のステアリン酸金属塩;ステアリン酸モノグリセリド、ステアリルステアレート、硬化油等を使用することが可能である。加えて、パラフィン、ワックス、軽油、マシン油、スピンドル油、絶縁油、廃油、植物油、脂肪酸エステル、有機酸、黒鉛微粒子、雲母、蛭石、フッ素系離型剤、シリコーン系離型剤等の離型剤も、使用可能である。そして、これら各種の添加剤は、それぞれ、コーテッドサンドの被覆層における水ガラスの固形分に対して、一般に、5質量%以下、好ましくは3質量%以下の割合となるような量において、被覆層に含有せしめられる。
【0038】
ところで、本発明に従う常温流動性を有する乾態のコーテッドサンドを製造するに際しては、一般に、耐火性骨材に対して、粘結剤としての水ガラスと、界面活性剤と、必要に応じて用いられる添加剤とを添加し、混練乃至は混合せしめて均一に混和し、かかる耐火性骨材の表面を界面活性剤を含む水ガラスにて被覆するようにすると共に、そのような水ガラスの水分を蒸散せしめることによって、耐火性骨材の表面に、水ガラス及び界面活性剤を含む被覆層を形成せしめる手法が採用される。そのような手法において、被覆層の水分の蒸散は、水ガラスの固化乃至は硬化が進む前に迅速に行なわれる必要があるところから、耐火性骨材に対して、水溶液の形態にある水ガラスを投入(混合)してから、一般には5分以内に、より好ましくは3分以内に、含有水分を飛ばして、乾態の粉末状コーテッドサンドとすることが望ましい。かかる蒸散の時間が長くなると、混和(混練)サイクルが長くなり、コーテッドサンドの生産性が低下する他、水ガラスが空気中のCO2 に触れる時間が長くなって、失活する等の問題を生じる恐れが高くなるからである。
【0039】
また、上述したコーテッドサンドの製造工程において、水ガラス中の水分を迅速に蒸散せしめるための有効な手段の一つとして、耐火性骨材を予め加熱しておき、それに、水溶液の形態にある水ガラス及び界面活性剤を混練乃至は混合して、混和せしめるようにする手法が、採用される。この予め加熱された耐火性骨材に、水ガラス及び界面活性剤を混練乃至は混合せしめるようにすることによって、水ガラス中の水分は、そのような耐火性骨材の熱にて、極めて迅速に蒸散せしめられ得ることとなるのであり、以て、得られるコーテッドサンドの水分量を効果的に低下せしめ得て、常温流動性を有する乾態の粉体が、有利に得られることとなるのである。ここで、耐火性骨材の予熱温度としては、水ガラスの含有水分量やその配合量等に応じて、適宜に選定されることとなるが、一般には100~160℃程度の温度が、好ましくは100~140℃程度の温度が、採用される。この予熱温度が低すぎると、水分の蒸散を効果的に行うことが出来ず、乾燥に時間がかかるようになるところから、100℃以上の温度を採用することが望ましいのであり、また予熱温度が高すぎると、得られるコーテッドサンドの冷却時に、水ガラス成分の硬化が進み、加えて複合粒子化が進行するようになるところから、コーテッドサンドとしての機能、特に、最終的に得られる鋳型の強度等の物性に問題を生じるようになる。
【0040】
なお、本発明のコーテッドサンドにおいて、水ガラスを含む被覆層に含有せしめられる界面活性剤や、必要に応じて用いられる他の添加剤、例えば保湿剤や球状粒子等は、予め水ガラスを混合した状態で耐火性骨材に添加し、混練しても良く、また、混練時に水ガラスとは別個に添加して混練しても良く、更には混練時に、水ガラスの投入との間に時間差を設けて投入し、混練しても良い。そのため、本発明のコーテッドサンドにおける被覆層は、例えば、水ガラスと界面活性剤等とが渾然一体となった状態において、或いは、耐火性骨材の表面から外方に向かって、水ガラスの固形分(不揮発分)の濃度が漸次減少又は増加する一方で、界面活性剤等の濃度は漸次増加又は減少するような状態において、構成されることとなる。また、本発明のコーテッドサンドを製造するに際して、粘結剤としての水ガラスは、粘度を調節するために水で希釈されたものであっても用いることが可能であり、更には、耐火性骨材との混練乃至は混合時に、水ガラスと水とを個別に添加することも可能である。
【0041】
上述の如き製法に従って、本発明に従う常温流動性を有する乾態のコーテッドサンドは、含水分量が、耐火性骨材の表面を覆う被覆層に含まれる水ガラスの固形分量に対して、好ましくは5~55質量%の割合に相当する量となるように、より好ましくは10~50質量%の割合に相当する量となるように、最も好ましくは20~50質量%の割合に相当する量となるように、製造されるのである。
【0042】
ところで、本発明に従う乾態のコーテッドサンドを用いて鋳型を造型する際の方法としては、以下の二つの方法を例示することが出来る。第一の方法においては、鋳型の製造場所たる造型現場にて、乾態のコーテッドサンドと水とを混練することにより、コーテッドサンドを湿態化させて湿潤状態とし、その湿潤状態とされたコーテッドサンドを、目的とする鋳型を与える成形型の成形キャビティ内に充填する一方、かかる成形型を90~200℃の温度に加熱して、充填されたコーテッドサンドが成形型内で乾燥されるまで、保持されることとなる。第二の方法においては、目的とする鋳型を与える成形型の成形キャビティ内にコーテッドサンドを充填した後に、水蒸気を吹き込み、この水蒸気の通気によって、コーテッドサンドの充填相が湿らされて湿潤状態となり、その後、90~200℃に加熱された成形型内で乾燥するまで保持されることとなる。
【0043】
その際、常温流動性を有する乾態のコーテッドサンドが充填せしめられる、金型や木型等の成形型は、予め加熱により保温されていることが望ましく、それによって、水蒸気によって湿態化されたコーテッドサンドの乾燥が、有利に進行せしめられ得るのである。なお、その予熱による保温温度としては、一般に、90~200℃程度、特に100~140℃程度の温度が、望ましい。この保温温度が高すぎると、成形型の表面にまで蒸気が通り難くなるのであり、一方、温度が低すぎると、造型された鋳型の乾燥に時間を要するようになる。加えて、かかる成形型内に充填せしめられる乾態のコーテッドサンドも、有利には、予熱されていることが望ましい。一般に、30℃以上の温度に加温されたコーテッドサンドを、成形型に充填せしめるようにすることによって、得られる鋳型の抗折強度がより有利に高められ得ることとなるのである。このようなコーテッドサンドの加温温度としては、好ましくは30~100℃程度とされ、特に、40~80℃程度の温度に加温されたコーテッドサンドが、有利に用いられることとなる。
【0044】
上記した第一の方法において、乾態のコーテッドサンドに水を加えて湿態化する工程は、単に、乾態のコーテッドサンドと所定量の水とを適当なミキサに投入して、混合せしめることにより、実施することが可能であるところから、極めて単純な作業にて実施され得て、作業環境の悪い造型現場においても、極めて簡単に且つ容易に行い得るという利点がある。なお、水の添加時には、他の添加剤を添加することも可能である。また、上記第一の方法においては、成形型の加熱に代えて、成形型内に充填された湿潤状態のコーテッドサンドに対して、乾燥空気や乾燥加熱空気、窒素ガス等を吹き込むことにより、コーテッドサンドを乾燥させ、固化乃至は硬化させることも可能である。
【0045】
一方、上記した第二の方法において、上記の如く加熱された成形型内に、具体的には、その成形キャビティ内に、本発明に従う乾態のコーテッドサンドを充填せしめた後、そこに形成される充填相内に、成形型に設けられた通気口を通じて、水蒸気を加圧下に通気させて、かかる充填相を構成するコーテッドサンドを湿態化させて(湿らせて)、コーテッドサンドの被覆層に含まれる水ガラスによってコーテッドサンドを相互に結合させて連結せしめ、一体的な鋳型形状のコーテッドサンド集合体(結合物)が形成されるのである。なお、水ガラスは、通常、何の添加剤も加えられていなければ、水の蒸発乾固により固化し、また硬化剤としての酸化物や塩が加えられている場合には、硬化することとなるのである。実用的には、硬化剤が添加されることとなるところから、充填相は硬化されたものとなるが、単に、固化されたものであっても、何等差支えない。
【0046】
ここで、そのような成形型の通気口を通じて吹き込まれて、コーテッドサンドの充填相内を通気せしめられる水蒸気の温度としては、一般に、80~150℃程度、より望ましくは95~120℃程度とされる。高温の水蒸気温度を採用すると、その生産のために多量のエネルギーが必要となるところから、特に100℃付近の水蒸気温度が有利に採用されることとなる。また、通気せしめられる水蒸気の圧力としては、ゲージ圧で、0.01~0.3MPa程度、より好ましくは0.01~0.1MPa程度の値が有利に採用されるのである。コーテッドサンドの通気性が良い場合において、水蒸気を通気させるための圧力が、前記したゲージ圧程度であれば、成形型内に形成される鋳型に、満遍なく、水蒸気を通気させることが出来るのであり、しかも水蒸気の通気時間及び鋳型の乾燥時間が短時間で済み、造型速度を短縮することが出来る特徴がある。また、そのようなゲージ圧であれば、コーテッドサンドの通気性が悪い場合においても、造型が可能となる利点がある。なお、ゲージ圧が高すぎると、通気口付近でしみつきが発生する恐れがあり、一方、ゲージ圧が低すぎると、コーテッドサンドの充填相の全体に通気せず、コーテッドサンドを充分に湿らせることが出来ない恐れがある。
【0047】
また、かくの如く水蒸気を通気させる方法としては、成形型に設けた通気口から水蒸気を吹き込み、成形型の成形キャビティ内に充填されたコーテッドサンド(相)内を通気せしめる手法が採用され、更にその通気時間としては、かかる充填されたコーテッドサンドの表面に水蒸気を供給して、その表面の被覆層に含まれる粘結剤たる水ガラスを充分に湿らせ、コーテッドサンドを相互に結合(接合)し得るような時間が、成形型の大きさや通気口の数等によって、適宜に選定されることとなるが、一般に、2秒程度から60秒程度までの通気時間が、採用されることとなる。この水蒸気の通気時間が短すぎると、コーテッドサンド表面を充分に湿らせることが困難となるからであり、また通気時間が長すぎると、コーテッドサンド表面の粘結剤(水ガラス)が溶解乃至流出する恐れ等が生じるからである。なお、前述したように、本発明のコーテッドサンドは、水の濡れ性に優れていることから、水蒸気の通気時間が短時間であっても問題なく、コーテッドサンドを十分に湿態化せしめることが可能である。また、この成形型内に充填されたコーテッドサンド内における水蒸気の通気性は、かかる成形型の排気口から型内の雰囲気を吸引しつつ、水蒸気の通気を行なうことによって、より向上させることが可能である。
【0048】
さらに、本発明のコーテッドサンドを用いて鋳型を製造するに際して、上述した第一の方法及び第二の方法においては、湿ったコーテッドサンドの充填相を積極的に乾燥させるべく、乾燥空気、加熱乾燥空気又は窒素ガスを吹き込み、かかる充填相に通気せしめるようにする手法が、好適に採用される。このような乾燥空気、加熱乾燥空気又は窒素ガスの通気によって、コーテッドサンドの充填相の内部に至るまで十分に且つ迅速に乾燥させて、かかる充填相の固化乃至は硬化をより一層有利に促進せしめ、以て、硬化速度を有利に高めると共に、得られる鋳型の抗折強度等の特性をも有利に高め得ることとなる他、鋳型の造型時間の短縮にも、有利に寄与し得るのである。
【0049】
また、成形型の保持中に、水ガラスの硬化を促進させるための添加剤として、成形型内に硬化剤を添加しても良い。硬化剤で粘結剤(水ガラス)を中和することで、その固化をより促進させることが可能である。なお、硬化剤の通気は、成形型での保持中であれば、いずれのタイミングで行っても良く、水蒸気の通気と同時に、又は乾燥空気等の通気と同時に行なっても、何等差支えない。
【0050】
硬化剤としては、二酸化炭素(炭酸水)、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、シュウ酸、カルボン酸、パラトルエンスルホン酸等の有機酸や、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、γ-ブチロラクトン、γ-プロピオンラクトン、エチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、グリセリンジアセテート、トリアセチン、プロピレンカーボネート等のエステルや、メタノール、エタノール、ブタノール、ヘキサノール、オクタノール等の一価のアルコール等を、例示することが出来る。これら硬化剤は、単独で用いられ得ることは勿論のこと、2種以上のものを混合して、使用することも可能である。なお、これらの硬化剤は、成形型の保持中にガス状又は霧状にしたものを、成形型内に通気すると良く、乾態のコーテッドサンドに水を加えて湿態化する場合には、水と共に硬化剤を加えても良い。
【0051】
さらにまた、本発明のコーテッドサンドを用いて鋳型を製造するに際しては、上述した、成形型内にコーテッドサンドを充填して成形する手法の他、公知の各種の造型手法が適宜に採用され得ることは、言うまでもないところである。
【実施例】
【0052】
以下に、幾つかの実施例を用いて、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等限定的に解釈されるものでないことが理解されるべきである。なお、以下の実施例や比較例において、「%」及び「部」は、特に断りのない限りにおいて、何れも、質量基準にて示されている。また、実施例や比較例で得られたコーテッドサンド(CS)の水分量、充填性、充填流動性、強度の評価は、それぞれ、以下のようにして行った。
【0053】
-水ガラスの固形分に対する水分量の測定-
空焼して秤量したるつぼに、各CSを10g秤量して収容し、900℃にて1時間曝熱した後の質量減少量(%)を用いて、CS中の水分量と有機分量との合計量(以下、「(水分+有機分)量)」と示し、「W1」とする。)を、下記の式(1)より算出する。ここで、有機分量とは、界面活性剤及びその他の液状の添加剤(以下、有機分という)の合計量である。なお、秤量は、小数点以下第4位まで計測する。次に、CSに対する水ガラスの固形分量(B1)を、下記の式(2)を用いて算出する。そして、CS中の(水分+有機分)量(W1)と、CSに対する水ガラスの固形分量(B1)と、水ガラスの固形分の100部に対する有機分の添加量(A)と、後述する手法に従って測定される有機分における固形分率(C)より、水ガラスの固形分量に対する水分量(被覆層における水ガラスの固形分量に対するCSの水分量:W2)を、下記の式(3)を用いて算出する。以上の如くして算出されたW2を、下記表1乃至表4において「含水分量(質量%)」として示す。
W1=[(M1-M2)/M3]×100 ・・・(1)
[W1:CS中の(水分+有機分)量(%)、M1:焼成前のるつぼ
とCSの合計質量(g)、M2:焼成後のるつぼとCSの合計質量
(g)、M3:焼成前のCSの質量(g)]
B1=[B2/(100+B2)]×(100-W1) ・・・(2)
[B1:CSに対する水ガラスの固形分量(%)、B2:砂の100
部に対して添加した水ガラスの固形分量(部)、W1:CS中の(
水分+有機分)量(%)]
W2=[(W1/B1)×100]-[(A×C)/100]
・・・(3)
[W2:被覆層における水ガラスの固形分量に対するCSの水分量(
%)、W1:CS中の(水分+有機分)量(%)、B1:CSに対
する水ガラスの固形分量(%)、A:水ガラスの固形分の100部
に対する有機分の添加量(部)、C:CS中の有機分における固形
分率(%)]
【0054】
-有機分における固形分率の測定-
先ず、界面活性剤及びその他の液状添加剤からなり、それらの配合割合が、砂(耐火性骨材)CSに対する添加割合と同様である試料を調製する。次いで、アルミ箔製皿(縦:9cm、横:9cm、高さ:1.5cm)内に、先に調製した試料の10gを収容して秤量し、100±1℃に保持した加熱板上にアルミ箔製皿を載置し、20分間放置した後、デシケータ中で放冷する。そして、かかる放冷後のアルミ箔製皿の秤量を行ない、下記の式(4)より、有機分における固形分率(C)を算出する。
C=[乾燥後のアルミ箔製皿の質量(g)/乾燥前のアルミ箔製皿
の質量(g)]×100 ・・・(4)
【0055】
-抗折強度の測定-
各CSを用いて得られた、幅:2.54cm×高さ:2.54cm×長さ:20.0cmの大きさの試験片について、その破壊荷重を、測定器(高千穂精機株式会社製:デジタル鋳物砂強度試験機)を用いて、測定する。そして、この測定された破壊荷重を用いて、抗折強度を、下記の式(5)により、算出する。
抗折強度(N/cm2 )=1.5×(L×W)/(a×b2 )
・・・(5)
[L:支点間距離(cm)、W:破壊荷重(N)、a:試験片の幅(
cm)、b:試験片の厚み(cm)]
【0056】
-抗折強度(経時変化CS)の測定-
各CSを密封可能な容器に入れて密封し、その密封した容器を25℃の雰囲気下で1週間放置する。その後、容器より取り出した各CSを用いて、上記した手法と同様の手法に従い、試験片の作製及び破壊荷重の測定を行ない、上記式(5)より、抗折強度を算出する。なお、以上より算出される抗折強度を、特に「抗折強度(経時変化CS)」という。
【0057】
-離型性の評価-
成形金型内に離型剤を塗布することなく、5回連続して造型したときの試験片の離型状態を、目視評価した。評価基準は、以下の通りである。
○:全く問題なく、スムーズに離型出来る
△:少し抵抗があるが、離型は問題なし
×:離型不良
【0058】
-乾態CSの製造例1-
耐火性骨材として、市販の鋳造用人工砂であるルナモス#50(商品名:花王クエーカー株式会社製、粒径係数:1.01)を準備すると共に、粘結剤たる水ガラスとして、市販品:2号ケイ酸ナトリウム(商品名:富士化学株式会社製、SiO2 /Na2O のモル比:2.5、固形成分:41.3%)を準備した。そして、上記のルナモス#50を約120℃の温度に加熱した後、品川式万能攪拌機(5DM-r型)(株式会社ダルトン製)に投入し、更に、前記水ガラスを、ルナモス#50の100部に対して1.21部(固形成分:0.50部)、陰イオン性界面活性剤(アニオン性界面活性剤)として市販品:オルフィンPD-301(商品名:日信化学工業株式会社製)を用い、これを、ルナモス#50の100部に対して0.01部(水ガラスの固形分100部に対して2部)の割合でそれぞれ添加して、3分間の混練を行ない、水分を蒸発せしめる一方、砂粒塊が崩壊するまで攪拌混合せしめ、更にステアリン酸カルシウムの0.01部(水ガラスの固形分100部に対して2部)を加えて攪拌混合せしめた後に取り出すことにより、常温流動性を有する乾態のコーテッドサンド:CS1を得た。かかる混練後のCS1の含水分量を算出したところ、被覆層における水ガラスの固形分量の40質量%に相当する量であった。
【0059】
-乾態CSの製造例2-
アニオン性界面活性剤の添加量を0.02部(水ガラスの固形分100部に対して4部)とした以外は、上記製造例1と同様の手順に従って、常温流動性を有する乾態のCS2を得た。得られたCS2の含水分量を算出したところ、被覆層における水ガラスの固形分量の40質量%に相当する量であった。
【0060】
-乾態CSの製造例3-
アニオン性界面活性剤の添加量を0.05部(水ガラスの固形分100部に対して10部)とした以外は、上記製造例1と同様の手順に従って、常温流動性を有する乾態のCS3を得た。得られたCS3の含水分量を算出したところ、被覆層における水ガラスの固形分量の40質量%に相当する量であった。
【0061】
-乾態CSの製造例4-
界面活性剤として、市販品のカチオン性界面活性剤:リポガード16-29(商品名:ライオン株式会社製)を用い、これを、耐火性骨材(ルナモス#50)の100部に対して0.02部(水ガラスの固形分100部に対して4部)の割合で添加した以外は、上記製造例1と同様の手順に従って、常温流動性を有する乾態のCS4を得た。得られたCS4の含水分量を算出したところ、被覆層における水ガラスの固形分量の40質量%に相当する量であった。
【0062】
-乾態CSの製造例5-
界面活性剤として、市販品のアニオン性界面活性剤:リポランLB-440(商品名:ライオン株式会社製)を用いて、これを、耐火性骨材(ルナモス#50)の100部に対して0.02部(水ガラスの固形分100部に対して4部)の割合で添加した以外は、上記製造例1と同様の手順に従って、常温流動性を有する乾態のCS5を得た。得られたCS5の含水分量を算出したところ、被覆層における水ガラスの固形分量の40質量%に相当する量であった。
【0063】
-乾態CSの製造例6-
界面活性剤として、市販品のシリコーン系界面活性剤:KF643(商品名:信越化学工業株式会社製)を用いて、これを、耐火性骨材(ルナモス#50)の100部に対して0.015部(水ガラスの固形分100部に対して3部)の割合で添加した以外は、上記製造例1と同様の手順に従って、常温流動性を有する乾態のCS6を得た。得られたCS6の含水分量を算出したところ、被覆層における水ガラスの固形分量の40質量%に相当する量であった。
【0064】
-乾態CSの製造例7-
界面活性剤として、市販品のシリコーン系界面活性剤:KF642(商品名:信越化学工業株式会社製)を用いて、これを、耐火性骨材(ルナモス#50)の100部に対して0.015部(水ガラスの固形分100部に対して3部)の割合で添加した以外は、上記製造例1と同様の手順に従って、常温流動性を有する乾態のCS7を得た。得られたCS7の含水分量を算出したところ、被覆層における水ガラスの固形分量の40質量%に相当する量であった。
【0065】
-乾態CSの製造例8-
界面活性剤として、市販品の非イオン性界面活性剤:Surfynol465(商品名:日信化学工業株式会社製)を用いて、これを、耐火性骨材(ルナモス#50)の100部に対して0.02部(水ガラスの固形分100部に対して4部)の割合で添加した以外は、上記製造例1と同様の手順に従って、常温流動性を有する乾態のCS8を得た。得られたCS8の含水分量を算出したところ、被覆層における水ガラスの固形分量の40質量%に相当する量であった。
【0066】
-乾態CSの製造例9-
界面活性剤として、市販品の非イオン性界面活性剤:Surfynol485(商品名:日信化学工業株式会社製)を用いて、これを、耐火性骨材(ルナモス#50)の100部に対して0.02部(水ガラスの固形分100部に対して4部)の割合で添加した以外は、上記製造例1と同様の手順に従って、常温流動性を有する乾態のCS9を得た。得られたCS9の含水分量を算出したところ、被覆層における水ガラスの固形分量の40質量%に相当する量であった。
【0067】
-乾態CSの製造例10-
粘結剤の水ガラスとして、市販品:1号ケイ酸ナトリウム(商品名:富士化学株式会社製、SiO2 /Na2O のモル比:2.1、固形成分:48.5%)を用い、また、その添加量を、耐火性骨材(ルナモス#50)の100部に対して1.03部(固形成分:0.50部)としたこと以外は、上記製造例2と同様の手順に従って、常温流動性を有する乾態のCS10を得た。得られたCS10の含水分量を算出したところ、被覆層における水ガラスの固形分量の40質量%に相当する量であった。
【0068】
-乾態CSの製造例11-
粘結剤の水ガラスとして、市販品:3号ケイ酸ナトリウム(商品名:富士化学株式会社製、SiO2 /Na2O のモル比:3.2、固形成分:38%)を用い、また、その添加量を、耐火性骨材(ルナモス#50)の100部に対して1.32部(固形成分:0.50部)としたこと以外は、上記製造例2と同様の手順に従って、常温流動性を有する乾態のCS11を得た。得られたCS11の含水分量を算出したところ、被覆層における水ガラスの固形分量の40質量%に相当する量であった。
【0069】
-乾態CSの製造例12-
製造例2において、保湿剤としてのグリセリンを0.04部(水ガラスの固形分100部に対して8部の割合となる)、更に添加したこと以外は、上記製造例2と同様の手順に従って、常温流動性を有する乾態のCS12を得た。得られたCS12の含水分量を算出したところ、被覆層における水ガラスの固形分量の40質量%に相当する量であった。
【0070】
-乾態CSの製造例13-
製造例2において、球状粒子であるHS311(商品名、新日鉄住金マテリアルズ株式会社製、平均粒子径:2.2μm、真球度:0.98)を0.05部(水ガラスの固形分100部に対して10部の割合となる)、更に添加したこと以外は、上記製造例2と同様の手順に従って、常温流動性を有する乾態のCS13を得た。得られたCS13の含水分量を算出したところ、被覆層における水ガラスの固形分量の40質量%に相当する量であった。
【0071】
-乾態CSの製造例14-
製造例12において、球状粒子であるHS311を0.05部(水ガラスの固形分100部に対して10部の割合となる)、更に添加したこと以外は、上記製造例12と同様の手順に従って、常温流動性を有する乾態のCS14を得た。得られたCS14の含水分量を算出したところ、被覆層における水ガラスの固形分量の40質量%に相当する量であった。
【0072】
-乾態CSの製造例15-
界面活性剤を添加しないこと以外は上記製造例2と同様の手順に従って、常温流動性を有する乾態のCS15を得た。得られたCS15の含水分量を算出したところ、被覆層における水ガラスの固形分量の40質量%に相当する量であった。
【0073】
-乾態CSの製造例16-
界面活性剤を添加しないこと以外は上記製造例10と同様の手順に従って、常温流動性を有する乾態のCS16を得た。得られたCS16の含水分量を算出したところ、被覆層における水ガラスの固形分量の40質量%に相当する量であった。
【0074】
-乾態CSの製造例17-
界面活性剤を添加しないこと以外は上記製造例11と同様の手順に従って、乾態のCS17を得た。得られたCS17の含水分量を算出したところ、被覆層における水ガラスの固形分量の40質量%に相当する量であった。
【0075】
-鋳型の造型例1(実施例1~14、比較例1、3、4)-
上記した各手順に従って製造されたCS(温度:20℃)を、110℃に加熱された成形金型内に、圧力:0.3MPaのゲージ圧にて吹き込んで、充填した後、更に0.05MPaのゲージ圧力の下で、温度:99℃の水蒸気を4秒間吹き込み、成形金型内に充填したコーテッドサンド相に通気せしめた。次いで、そのような水蒸気の通気が終了した後、0.03MPaのゲージ圧力の下で、温度150℃の熱風を2分間吹き込み、成形金型内に充填されたCSをそれぞれ硬化させることにより、試験片[2.54cm×2.54cm×20.0cm]として用いられる鋳型を、それぞれ作製した。なお、実施例1~14、比較例1、3、4の各々に係る鋳型(試験片)を作製する際に使用したCSは、下記表1及び表2に示す通りである。
【0076】
-鋳型の造型例2(比較例2)-
温度が20℃のCS15を用いて、水蒸気の通気時間を6秒に変えた以外は、造形例1と同様の手順に従って、鋳型(試験片)を作成した。
【0077】
上記の実施例1~13及び比較例1~4で得られた各々の鋳型(試験片)について、前述の試験法に従って二種類の抗折強度を測定すると共に、試験片作製時の成型金型からの離型性を評価し、それらの結果を、下記表1及び表2に示した。
【0078】
【0079】
【0080】
表1及び表2から明らかなように、本発明に従うコーテッドサンドを用いて得られる鋳型(実施例1~14)にあっては、被覆層に界面活性剤を含まないコーテッドサンドを用いて得られるもの(比較例1~4)と比較して、優れた抗折強度を発揮するものであることが認められる。
【0081】
また、鋳型を製造する際に使用される水分(水蒸気)が少量であっても、本発明のコーテッドサンドを用いると、成型金型からの鋳型の離型性が良好であることが認められるのであり、これは、本発明のコーテッドサンドが、水の浸透性に優れている、換言すれば、水に対して優れた濡れ性を発揮するものであることに、起因するものである。
【0082】
さらに、本発明に従うコーテッドサンドの中でも、特に、界面活性剤として、アニオン性界面活性剤(陰イオン性界面活性剤)、非イオン性界面活性剤又はシリコーン系界面活性剤を用いてなるコーテッドサンド(CS1~3、5~14)にあっては、その作製から時間が経過したものを用いて鋳型を製造しても、抗折強度の低下が低く抑えられるのであり(実施例1~3、4~14)、これは、コーテッドサンドの被覆層に含まれる界面活性剤の経時変化が、効果的に抑制されていることを意味するものである。
【0083】
次いで、コーテッドサンド(CS)における水の浸透性の評価を行った。なお、水の浸透性の評価では、耐火性骨材の粒子径が小さい方が、浸透による水の伝達の差がより明確となるため、先述した各CSで用いた耐火性骨材よりも粒子径が小さいものを用いて、試験を行なった。
【0084】
-コーテッドサンドにおける水の浸透性の評価-
外径φ1cm、内径φ0.9cmのガラスの筒にコットンを詰め、簡易的なカラムを作成する。その中にコーテッドサンド(CS)を22g入れ、1分間振動させることで密充填させる。次に、CSが充填されたカラムに浸透させる液体(水)を2g入れ、充填したCSの上面から2cmの位置にまで液体が浸透してきたら、測定を開始する。その後、液体が上面から3cmの位置に達した(浸透距離1cm)時点までの浸透時間を測定する。
【0085】
-乾態CSの製造例18-
耐火性骨材としてルナモス#110(商品名:花王クエーカー株式会社製、粒径係数:1.01)を用いた以外は、上記製造例1と同様の手順に従って、常温流動性を有する乾態のCS18を得た。得られたCS18の含水分量を算出したところ、被覆層における水ガラスの固形分量の40質量%に相当する量であった。
【0086】
-乾態CSの製造例19-
耐火性骨材としてルナモス#110を用いた以外は、上記製造例2と同様の手順に従って、常温流動性を有する乾態のCS19を得た。得られたCS19の含水分量を算出したところ、被覆層における水ガラスの固形分量の40質量%に相当する量であった。
【0087】
-乾態CSの製造例20-
耐火性骨材としてルナモス#110を用いた以外は、上記製造例3と同様の手順に従って、常温流動性を有する乾態のCS20を得た。得られたCS20の含水分量を算出したところ、被覆層における水ガラスの固形分量の40質量%に相当する量であった。
【0088】
-乾態CSの製造例21-
耐火性骨材としてルナモス#110を用いた以外は、上記製造例4と同様の手順に従って、常温流動性を有する乾態のCS21を得た。得られたCS21の含水分量を算出したところ、被覆層における水ガラスの固形分量の40質量%に相当する量であった。
【0089】
-乾態CSの製造例22-
耐火性骨材としてルナモス#110を用いた以外は、上記製造例5と同様の手順に従って、常温流動性を有する乾態のCS22を得た。得られたCS22の含水分量を算出したところ、被覆層における水ガラスの固形分量の40質量%に相当する量であった。
【0090】
-乾態CSの製造例23-
耐火性骨材としてルナモス#110を用いた以外は、上記製造例6と同様の手順に従って、常温流動性を有する乾態のCS23を得た。得られたCS23の含水分量を算出したところ、被覆層における水ガラスの固形分量の40質量%に相当する量であった。
【0091】
-乾態CSの製造例24-
耐火性骨材としてルナモス#110を用いた以外は、上記製造例7と同様の手順に従って、常温流動性を有する乾態のCS24を得た。得られたCS24の含水分量を算出したところ、被覆層における水ガラスの固形分量の40質量%に相当する量であった。
【0092】
-乾態CSの製造例25-
耐火性骨材としてルナモス#110を用いた以外は、上記製造例8と同様の手順に従って、常温流動性を有する乾態のCS25を得た。得られたCS25の含水分量を算出したところ、被覆層における水ガラスの固形分量の40質量%に相当する量であった。
【0093】
-乾態CSの製造例26-
耐火性骨材としてルナモス#110を用いた以外は、上記製造例9と同様の手順に従って、常温流動性を有する乾態のCS26を得た。得られたCS26の含水分量を算出したところ、被覆層における水ガラスの固形分量の40質量%に相当する量であった。
【0094】
-乾態CSの製造例27-
耐火性骨材としてルナモス#110を用いた以外は、上記製造例10と同様の手順に従って、常温流動性を有する乾態のCS27を得た。得られたCS27の含水分量を算出したところ、被覆層における水ガラスの固形分量の40質量%に相当する量であった。
【0095】
-乾態CSの製造例28-
耐火性骨材としてルナモス#110を用いた以外は、上記製造例11と同様の手順に従って、常温流動性を有する乾態のCS28を得た。得られたCS28の含水分量を算出したところ、被覆層における水ガラスの固形分量の40質量%に相当する量であった。
【0096】
-乾態CSの製造例29-
耐火性骨材としてルナモス#110を用いた以外は、上記製造例12と同様の手順に従って、常温流動性を有する乾態のCS29を得た。得られたCS29の含水分量を算出したところ、被覆層における水ガラスの固形分量の40質量%に相当する量であった。
【0097】
-乾態CSの製造例30-
耐火性骨材としてルナモス#110を用いた以外は、上記製造例13と同様の手順に従って、常温流動性を有する乾態のCS30を得た。得られたCS30の含水分量を算出したところ、被覆層における水ガラスの固形分量の40質量%に相当する量であった。
【0098】
-乾態CSの製造例31-
耐火性骨材としてルナモス#110を用いた以外は、上記製造例14と同様の手順に従って、常温流動性を有する乾態のCS31を得た。得られたCS31の含水分量を算出したところ、被覆層における水ガラスの固形分量の40質量%に相当する量であった。
【0099】
-乾態CSの製造例32-
耐火性骨材としてルナモス#110を用いた以外は、上記製造例15と同様の手順に従って、常温流動性を有する乾態のCS32を得た。得られたCS32の含水分量を算出したところ、被覆層における水ガラスの固形分量の40質量%に相当する量であった。
【0100】
-乾態CSの製造例33-
耐火性骨材としてルナモス#110を用いた以外は、上記製造例16と同様の手順に従って、常温流動性を有する乾態のCS33を得た。得られたCS33の含水分量を算出したところ、被覆層における水ガラスの固形分量の40質量%に相当する量であった。
【0101】
-乾態CSの製造例34-
耐火性骨材としてルナモス#110を用いた以外は、上記製造例17と同様の手順に従って、常温流動性を有する乾態のCS34を得た。得られたCS34の含水分量を算出したところ、被覆層における水ガラスの固形分量の40質量%に相当する量であった。
【0102】
上述の如くして得られた、常温流動性を有する乾態のCS18~34を、実施例15~28及び比較例5~7として、前述の試験法に従って浸透試験を実施し、それらの結果を、下記表3及び表4に示した。
【0103】
【0104】
【0105】
かかる表3及び表4の結果からも明らかなように、本発明に従うコーテッドサンド(CS18~31:実施例15~28)にあっては、被覆層に界面活性剤を含まないコーテッドサンド(CS32~34:比較例5~7)と比較して、水の浸透性に優れているものであることが、認められるのである。
【0106】
さらに、上記した各手順に従って製造されたCS2、CS6、CS7、CS15(温度:20℃)を常温のまま、品川式万能撹拌機(5DM-r型、株式会社ダルトン製)に投入し、更に、水を、CSの100部に対して2.0部の割合にて、撹拌機内に添加し、撹拌することにより、湿態化させたCSを準備した。撹拌機内より取り出した湿態状のCSを、150℃に加熱された成形金型内に充填した後、成形金型内で保持し、0.03MPaのゲージ圧力の下で、温度150℃の熱風を90秒間吹き込み、かかる成形型内に充填されたCSを各々、固化(硬化)させることにより、試験片[2.54cm×2.54cm×20.0cm]として用いられる鋳型を、それぞれ作製した。なお、実施例29~31、比較例8の各々に係る鋳型(試験片)を作製する際に使用したCSは、下記表5に示す通りである。
【0107】
以上の如くして得られた鋳型(試験片)の各々について、前述の試験法に従って二種類の抗折強度を測定すると共に、試験片作製時の成型金型からの離型性を評価し、それらの結果を、下記表5に示した。
【0108】
【0109】
かかる表5の結果からも明らかなように、本発明に従うコーテッドサンドに水を添加して湿態化させたものを用いて、鋳型を成形した場合、それによって得られる鋳型は、水蒸気の通気によって得られる鋳型と比較して、より高い強度を発揮し、同程度の離型性を発揮するものであることが、認められるのである。