(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-08
(45)【発行日】2022-04-18
(54)【発明の名称】可撓部材
(51)【国際特許分類】
F16F 1/32 20060101AFI20220411BHJP
A61B 17/29 20060101ALI20220411BHJP
B25J 18/06 20060101ALI20220411BHJP
【FI】
F16F1/32
A61B17/29
B25J18/06
(21)【出願番号】P 2019075948
(22)【出願日】2019-04-11
【審査請求日】2021-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110629
【氏名又は名称】須藤 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100166615
【氏名又は名称】須藤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】大塚 幹之
(72)【発明者】
【氏名】平田 貴史
(72)【発明者】
【氏名】黒川 真平
(72)【発明者】
【氏名】中山 壮一
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 正紘
【審査官】児玉 由紀
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-229119(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108953440(CN,A)
【文献】実開昭60-172035(JP,U)
【文献】実開昭63-140908(JP,U)
【文献】国際公開第2019/073860(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 13/00-18/18
A61F 2/01
A61N 7/00- 7/02
B25J 1/00-21/02
F16F 1/00- 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のウェーブワッシャーが軸方向に積層されると共に隣接間を接合され前記ウェーブワッシャーの弾性変形により前記軸方向に対して屈曲可能な本体部と、
該本体部の端部に設けられ他部材に対して結合される弾性変形可能な結合部材とを備え、
前記結合部材は、前記本体部の屈曲時に前記ウェーブワッシャーよりも変形量が小さい、
可撓部材。
【請求項2】
請求項1の可撓部材であって、
前記結合部材は、前記本体部の前記ウェーブワッシャーよりも変形量が小さい環状の板材である、
可撓部材。
【請求項3】
請求項1又は2の可撓部材であって、
前記結合部材は、前記軸方向に相互に積層されると共に隣接間を相互に接合された複数の平ワッシャーからなる、
可撓部材。
【請求項4】
請求項3の可撓部材であって、
前記複数のウェーブワッシャーは、それぞれ周方向に複数の山部及び該山部間の谷部を備え、隣接するウェーブワッシャーの山部と谷部とが当接した状態で接合され、
前記複数の平ワッシャーは、前記ウェーブワッシャーの接合部分に対応した位置で隣接間が相互に接合される、
可撓部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボット等の関節機能部に供される可撓部材に関する。
【背景技術】
【0002】
各種分野のロボット、マニピュレーター、或はアクチュエータ等には、可撓部材を用いることで屈曲動作を可能にした関節機能部を有するものがある。このような関節機能部に用いられる可撓部材としては、特許文献1にコイルスプリングが開示されている。
【0003】
コイルスプリングは、関節機能部の屈曲動作に対して高い自由度を確保できるものの、耐荷重及び屈曲性を確保する必要性から小型化に限界があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする問題点は、小型化を図りつつ耐荷重及び屈曲性を確保することに限界があった点である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、複数のウェーブワッシャーが軸方向に積層されると共に隣接間を接合され前記ウェーブワッシャーの弾性変形により前記軸方向に対して屈曲可能な本体部と、該本体部の端部に設けられ他部材に対して結合される弾性変形可能な結合部材とを備え、前記結合部材は、前記本体部の屈曲時に前記ウェーブワッシャーよりも変形量が小さい可撓部材を最も主な特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、複数のウェーブワッシャーの変形により屈曲できるようにしたため、小型化を図りつつ耐荷重及び屈曲性に優れた可撓部材を得ることが可能となる。
【0008】
しかも、本発明では、本体部の屈曲時に結合部材が変形することにより、本体部の端部のウェーブワッシャーに作用する応力を緩和することができ、可撓部材の耐久性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】可撓部材を用いたマニピュレーターを示す斜視図である(実施例1)。
【
図2】
図1のマニピュレーターを示す正面図である(実施例1)。
【
図3】
図1のマニピュレーターの断面図である(実施例1)。
【
図4】
図1のマニピュレーターの一部を省略し、関節機能部を主に示す斜視図である(実施例1)。
【
図5】
図4の関節機能部を主に示す側面図である(実施例1)。
【
図7】
図4のVII-VII線における、関節機能部の可撓部材を示す断面図であり、(A)が平常時、(B)が屈曲時を示す(実施例1)。
【
図8】(A)は可撓部材の本体部に用いられるウェーブワッシャーを示す平面図、(B)は可撓部材の結合部に用いられる平ワッシャーを示す平面図である(実施例1)。
【
図9】可撓部材を用いたマニピュレーターの一部を省略し、関節機能部を主に示す側面図である(実施例2)。
【
図10】可撓部材を用いたマニピュレーターの一部を省略し、関節機能部を主に示す側面図である(実施例3)。
【
図11】可撓部材を用いたマニピュレーターの一部を省略し、関節機能部を主に示す側面図である(実施例4)。
【
図12】(A)は可撓部材の本体部に用いられるウェーブワッシャーを示す平面図、(B)は可撓部材の結合部に用いられる平ワッシャーを示す平面図である(実施例5)。
【
図13】実施例5の変形例に係り、(A)は可撓部材の本体部に用いられるウェーブワッシャーを示す平面図、(B)は可撓部材の結合部に用いられる平ワッシャーを示す平面図である(実施例5)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
小型化を図りつつ耐荷重及び屈曲性に優れた可撓部材を得ることを可能にするという目的を、耐久性を向上しつつ実現した。
【0011】
すなわち、可撓部材は、複数のウェーブワッシャーが軸方向に積層されると共に隣接間を接合されウェーブワッシャーの弾性変形により軸方向に対して屈曲可能な本体部と、この本体部の端部に設けられ他部材に対して結合される弾性変形可能な結合部材とを備え、結合部材は、本体部の屈曲時にウェーブワッシャーよりも変形量が小さい構成となっている。
【0012】
結合部材は、各種の弾性部材を採用することが可能であるが、本体部のウェーブワッシャーよりもばね定数が大きい環状の板材としてもよい。
【0013】
この場合、結合部材は、軸方向に積層されると共に隣接間を接合された複数の平ワッシャーからなる構成であってもよい。
【0014】
複数のウェーブワッシャーは、それぞれ周方向に複数の山部及びこれら山部間の谷部を備え、隣接するウェーブワッシャーの山部と谷部とが当接した状態で接合され、複数の平ワッシャーは、ウェーブワッシャーの接合部分に対応した位置で隣接間が相互に接合されてもよい。
【実施例1】
【0015】
[マニピュレーターの構造]
図1は、本発明の実施例1に係る可撓部材を用いたマニピュレーターを示す斜視図、
図2は、同正面図、
図3は、同断面図である。
【0016】
本実施例は、可撓部材1を用いた関節機能部3を有するロボット、マニピュレーター、或はアクチュエータの一例として、医療用のマニピュレーター5について説明する。
【0017】
マニピュレーター5は、手術ロボットのロボットアーム先端を構成し、医師等によって操作されるものである。なお、マニピュレーター5は、手術ロボットに取り付けずに医師等によって直接操作される手動マニピュレーターであってもよい。また、可撓部材1を適用可能なロボット、マニピュレーター、或はアクチュエータは、マニピュレーター5に限られず、産業用ロボット等の他の分野のものであってもよい。
【0018】
マニピュレーター5は、シャフト部7と、関節機能部3と、エンドエフェクタ9とを備えている。
【0019】
シャフト部7は、中空筒状、例えば円筒状に形成されている。シャフト部7内には、関節機能部3を駆動するための駆動ワイヤ11やエンドエフェクタ9を駆動するためのプッシュプルケーブル13が通っている。シャフト部7の先端には、関節機能部3を介してエンドエフェクタ9が設けられている。
【0020】
関節機能部3は、駆動ワイヤ11の操作に応じ、軸方向に対して屈曲動作を行う。軸方向とは、後述する可撓部材1の軸心に沿った方向を意味し、軸心に対して厳密に平行な方向である必要はなく、軸心に対して若干傾斜した方向も含む。関節機能部3の詳細は後述する。
【0021】
エンドエフェクタ9は、関節機能部3の可動部17に対して取り付けられ、目的に応じた動作を行う機器である。本実施例のエンドエフェクタ9は、鉗子であり、一対の把持部9a,9bを備えている。このエンドエフェクタ9は、関節機能部3の屈曲動作に応じて所望の方向へ指向可能であり、且つ一対の把持部9a,9bがプッシュプルケーブル13の操作に応じて開閉可能になっている。
【0022】
なお、エンドエフェクタ9は、鉗子に限られず、例えば鋏、把持レトラクタ、針ドライバ、カメラ等とすることも可能である。
【0023】
[関節機能部の構造]
図4は、
図1のマニピュレーター5の一部を省略し、関節機能部3を主に示す斜視図、
図5は、同側面図、
図6は、
図5のVI部の拡大図、
図7は、
図4のVII-VII線における、関節機能部3の可撓部材1を示す断面図であり、
図7(A)が平常時、
図7(B)が屈曲時を示す。
図8(A)は可撓部材の本体部に用いられるウェーブワッシャーを示す平面図、
図8(B)は可撓部材の結合部に用いられる平ワッシャーを示す平面図である。
【0024】
図1~
図8のように、関節機能部3は、基部15と、可動部17と、可撓部材1とを備えている。
【0025】
基部15は、金属等によって円柱状に形成され、シャフト部7の先端に取り付けられている。基部15の軸心部には、プッシュプルケーブル13が軸方向で挿通し、その周囲には、駆動ワイヤ11が軸方向で挿通している。
【0026】
可動部17は、金属等によって円柱状に形成され、エンドエフェクタ9に取り付けられている。可動部17の軸心部は、プッシュプルケーブル13を挿通し、プッシュプルケーブル13の先端は、エンドエフェクタ9に結合されている。
【0027】
この可動部17は、可撓部材1を介して基部15に支持され、駆動ワイヤ11の先端部が固定されている。このため、可動部17は、駆動ワイヤ11の操作により基部15に対して変位し、エンドエフェクタ9を所望の方向に指向させることを可能とする。
【0028】
可撓部材1は、関節機能部3の屈曲動作を可能とするものであり、基部15と可動部17との間に介設されている。可撓部材1は、基部15に対する可動部17の変位に応じて屈曲する。可撓部材1には、駆動ワイヤ11及びプッシュプルケーブル13が軸方向で通されている。
【0029】
かかる可撓部材1は、本体部19と、結合部材21a,21bとで構成されている。
【0030】
本体部19は、複数のウェーブワッシャー23を軸方向で積層すると共に軸方向で隣接するウェーブワッシャー23の相互間を接合することによって形成されている。この本体部19は、ウェーブワッシャー23の弾性変形により屈曲可能となっている。
【0031】
各ウェーブワッシャー23は、金属等によって閉環状に形成された板材である。本実施例のウェーブワッシャー23は、ステンレスからなる円環状の板材であり、内外周間の径方向の幅及び板厚が一定となっている。
【0032】
各ウェーブワッシャー23は、周方向に複数の山部23aを有し、隣接する山部23a間に谷部23bを有する。本実施例のウェーブワッシャー23は、径方向に対向する二つの山部23aを有し、山部23a間に径方向に対向する二つの谷部23bを有する。従って、本実施例では、山部23aと谷部23bとが周方向において90度毎に交互に設けられている。
【0033】
山部23a及び谷部23bは、ウェーブワッシャー23の内周から外周にわたる領域が軸方向で逆向きの円弧状に湾曲して形成されいる。軸方向で隣接するウェーブワッシャー23間では、一方のウェーブワッシャー23の山部23aが他方のウェーブワッシャーの谷部23bに当接している。これら山部23a及び谷部23bの伸縮により、各ウェーブワッシャー23は、軸方向での弾性的な伸縮による変形が可能となっている。
【0034】
相互に当接する山部23a及び谷部23bは、溶接や接着等の適宜の手段によって接合されている。これにより、可撓部材1の本体部19は、積層状態が保持されている。
【0035】
なお、山部23a及び谷部23bは、相互に当接しなくてもよく、例えば、相互に若干周方向にずれて傾斜部23cに当接する形態としてもよい。
【0036】
各ウェーブワッシャー23において、山部23aと谷部23bとの間は、傾斜部23cによって連続している。傾斜部23cは、周方向に傾斜し、且つ内周と外周との間で僅かにねじれた形状となっている。
【0037】
傾斜部23cには、駆動ワイヤ11を通す通し部としての挿通孔23dが設けられている。挿通孔23dは、本体部19の周方向に複数設けられている。本実施例では、駆動ワイヤ11が周方向に90度毎に4本設けられていることから、これに応じて挿通孔23dも周方向に90度毎に4つ設けられている。
【0038】
軸方向に隣接するウェーブワッシャー23の傾斜部23c間では、挿通孔23dが軸方向に連通し、これら連通する挿通孔23dにより駆動ワイヤ11を挿通する。この挿通により、可撓部材1は、駆動ワイヤ11を通し部として軸方向に通すと共に所定位置に保持するガイドとして機能する。
【0039】
挿通孔23dの形状は、ほぼ円形であり、駆動ワイヤ11の径よりも大きくなっている。この径の差は、傾斜部23cの傾斜及び変位を許容する。なお、挿通孔23dの形状は、円形に限られるものではなく、矩形等の他の形状としても良い。
【0040】
ウェーブワッシャー23の形状や材質等は、可撓部材1に要求される特性等に応じて適宜変更することが可能である。山部23a及び谷部23bの数や曲率半径、傾斜部23cの傾斜角度等も、可撓部材1に要求される特性等に応じて適宜変更することが可能である。
【0041】
かかる本体部19は、両端部がそれぞれ結合部材21a,21bを介して基部15及び可動部17に対して接合されている。
【0042】
すなわち、結合部材21a,21bは、本体部19の両端部に設けられ、他部材である基部15及び可動部17に対して結合される弾性変形可能な部材である。なお、結合部材21a,21bは、本体部19の両端部にそれぞれ設けられているが、本体部19の一端部及び他端部の一方にのみ設けてもよい。
【0043】
本実施例の結合部材21a,21bは、同一構成となっており、基本的に一方の結合部材21aについてのみ説明する。このため、
図7では、結合部材21aのみを図示する。
【0044】
結合部材21aは、本体部19のウェーブワッシャー23よりも変形量が小さい(ばね定数が大きい)環状の板材として、軸方向に相互に積層されると共に隣接間を相互に接合された一対の平ワッシャー25a,25bからなる。なお、結合部材21aは、3つ以上の平ワッシャー或いは他の弾性部材で形成することも可能である。また、環状の板材の代わりに、環状に部材を複数配置して結合部材21aとしてもよい。
【0045】
各平ワッシャー25a,25bは、ウェーブワッシャー23と同一材料により同一の内外周の径及び板厚を有し、且つ平坦に形成されている。従って、平ワッシャー25a,25bは、本体部19が屈曲する際に、両者間が開くようにウェーブワッシャー23と共に変形するが、ウェーブワッシャー23よりも変形量が小さいものとなる。すなわち、結合部材21aは、本体部19の屈曲時にウェーブワッシャー23よりも変形量が小さい構成となっている。なお、平ワッシャー25a,25bは、ウェーブワッシャー23と異なる材料を用いて形成されても良い。
【0046】
平ワッシャー25a,25bには、ウェーブワッシャー23の挿通孔23dに対応して挿通孔25aa,25baが設けられている。挿通孔25aa,25baの形状は、ウェーブワッシャー23の挿通孔23dと同様に構成されており、駆動ワイヤ11の径よりも大きい径のほぼ円形である。
【0047】
これら挿通孔25aa,25baは、ウェーブワッシャー23の挿通孔23dと軸方向で連通し、駆動ワイヤ11を挿通する。従って、挿通孔23aa,23baは、挿通孔23dと共に通し部として機能する。
【0048】
本実施例の平ワッシャー25a,25bは、本体部19のウェーブワッシャー23の接合部分に対応した位置で隣接間が相互に接合される。従って、結合部材21aは、本体部19と同様にして円滑に変形することが可能となっている。
【0049】
具体的には、一方の平ワッシャー25aが本体部19の一端部(他方の結合部材21bにおいては他端部)のウェーブワッシャー23の谷部23bに軸方向で当接すると共に溶接等によって接合される。
【0050】
一方の平ワッシャー25aと他方の平ワッシャー25bとの間は、一端部のウェーブワッシャー23の山部23aに対応した周方向の位置で相互に溶接等によって接合される。
【0051】
他方の平ワッシャー25bは、関節機能部3の基部15(他方の結合部材21bにおいては可動部17)に当接し、一端部のウェーブワッシャー23の谷部23bに対応した周方向の位置で溶接等によって接合される。
【0052】
[関節機能部の屈曲動作]
関節機能部3では、医師がマニピュレーター5を操作する際、何れか一つの駆動ワイヤ11を引くことにより可撓部材1が屈曲する。この関節機能部3は、いくつかの駆動ワイヤ11を組み合わせて引くことにより、360度全方位に屈曲することが可能となる。
【0053】
少なくとも何れか一つの駆動ワイヤ11を引いて屈曲する際、可撓部材1は、
図7(B)のように、中立軸に対する屈曲内側部分で山部23a及び谷部23bが圧縮されると共に屈曲外側部分で山部23a及び谷部23bが伸張される。
【0054】
このように変形することで、操作された駆動ワイヤ11を挿通している傾斜部23c相互間が近接し、可撓部材1が全体として屈曲することになる。これにより、屈曲角度と荷重との荷重特性の線形性が高い屈曲動作を実現する。
【0055】
このとき、本実施例では、可撓部材1の両端部の結合部材21a,21bが、可撓部材1の本体部19と基部15及び可動部17との間で平ワッシャー25a,25bが開くように変形する。
【0056】
このため、可撓部材1の本体部19の両端部に位置するウェーブワッシャー23は、直接基部15及び可動部17に接合した場合と比較して変形量が低減する。従って、結合部材21a,21bは、可撓部材1の本体部19の両端部のウェーブワッシャー23に作用する応力を緩和することができ、可撓部材1の耐久性を向上することができる。
【0057】
また、結合部材21a,21bは、本体部19の変形量よりも小さいので、本体部19の両端部を基部15及び可動部17に対して確実に支持し、本体部19に確実な屈曲を行わせると共に本体部19の屈曲の繰り返しによる疲労破壊を抑制する。
【0058】
[実施例1の効果]
以上説明したように、本実施例の可撓部材1は、複数のウェーブワッシャー23が軸方向に積層されると共に隣接間を接合され、ウェーブワッシャー23の弾性変形により軸方向に対して屈曲可能な本体部19と、この本体部19の端部に設けられ他部材である基部15及び可動部17に対して結合される弾性変形可能な結合部材21a,21bとを備え、本体部19の屈曲時にウェーブワッシャー23よりも結合部材21aの変形量が小さい構成を有する。
【0059】
従って、本実施例では、屈曲角度と荷重との荷重特性の線形性を高くすることができ、小型化を図りつつ耐荷重及び屈曲性に優れた可撓部材1を得ることが可能となる。
【0060】
しかも、本実施例では、本体部19の屈曲時に可撓部材1の本体部19と基部15及び可動部17との間で結合部材21a,21bが変形することにより、可撓部材1の本体部19の両端部のウェーブワッシャー23に作用する応力を緩和することができ、可撓部材1の耐久性を向上することができる。
【0061】
また、結合部材21a,21bは、本体部19よりも変形量が小さいので、本体部19の両端部を基部15及び可動部17に対して確実に支持することができ、本体部19の屈曲を確実に行わせることができると共に、本体部19の屈曲の繰り返しによる疲労破壊を抑制できる。
【0062】
結合部材21a,21bは、本体部19のウェーブワッシャー23よりもばね定数が大きい環状の板材であるため、確実に本体部19よりも変形量を小さくできる。
【0063】
結合部材21a,21bは、軸方向に相互に積層されると共に隣接間を相互に接合された複数の平ワッシャー25a,25bからなるので、本体部19よりも小さい変形量を容易に実現できる。
【0064】
複数のウェーブワッシャー23は、それぞれ周方向に複数の山部23a及びこれら山部23a間の谷部23bを備え、隣接するウェーブワッシャー23の山部23aと谷部23bとが当接した状態で接合されている。一方、複数の平ワッシャー25a,25bは、ウェーブワッシャー23の接合部分に対応した位置で隣接間が相互に接合される。
【0065】
従って、結合部材21aは、本体部19と同様にして本体部19と共に円滑に変形することが可能となる。
【0066】
また、本実施例では、本体部19の山部23a及び谷部23bの伸縮により、屈曲動作を確実に行わせることができる。
【0067】
さらに、本実施例では、当接する山部23a及び谷部23b間が接合されていることにより、ねじり剛性において優れた可撓部材1を得ることができる。
【0068】
また、本実施例では、複数のウェーブワッシャー23が駆動ワイヤ11を挿通する挿通孔23dを有するので、本体部19を駆動ワイヤ11のガイドとして利用することができ、駆動ワイヤ11を適切な位置に保持し、より安定且つ正確な屈曲動作を行わせることができる。
【実施例2】
【0069】
図9は、本発明の実施例2に係る可撓部材を用いたマニピュレーターの一部を省略し、関節機能部を主に示す側面図である。なお、実施例2では、実施例1と対応する構成に同符号を用いて重複した説明を省略する。
【0070】
本実施例は、関節機能部3の可撓部材1の結合部材21a,21bを、それぞれエラストマー等の樹脂製の一枚の平ワッシャーにより構成したものである。かかる結合部材21a,21bは、材質及び断面形状等の設定により本体部19よりも変形量が小さく設定されている。その他は、実施例1と同一である。
【0071】
なお、結合部材21a,21bは、エラストマー等の樹脂製の平ワッシャーに代えて、弾性接着剤層としてもよい。
【0072】
かかる実施例2においても、実施例1と同様の作用効果を奏することができる。
【実施例3】
【0073】
図10は、本発明の実施例3に係る可撓部材を用いたマニピュレーターの一部を省略し、関節機能部を主に示す側面図である。なお、実施例3では、実施例1と対応する構成に同符号を用いて重複した説明を省略する。
【0074】
本実施例は、関節機能部3の可撓部材1の結合部材21a,21bを、ウェーブワッシャー27a,27bによって構成したものである。これらウェーブワッシャー27a,27bは、本体部19のウェーブワッシャー23よりも板厚が厚く形成されて変形量が抑制されている。その他は、実施例1と同一である。
【0075】
なお、結合部材21a,21bは、本体部19のウェーブワッシャー23と板厚を同一にしつつ、より弾性係数が大きい材質によって構成し或いはよりウェーブ量が小さいウェーブワッシャーとすることも可能である。
【0076】
かかる実施例3おいても、実施例1と同様の作用効果を奏することができる。
【実施例4】
【0077】
図11は、本発明の実施例4に係る可撓部材を用いたマニピュレーターの一部を省略し、関節機能部を主に示す側面図である。なお、実施例4では、実施例1と対応する構成に同符号を用いて重複した説明を省略する。
【0078】
本実施例は、関節機能部3の可撓部材1の軸心部に、弾性部材29を配置したものである。その他は、実施例1と同一である。
【0079】
弾性部材29は、金属製のコイルばね、特に密着コイルばねである。なお、密着コイルばねは、コイル相互間が自由状態で密着しているコイルばねを意味する。弾性部材29としては、自由状態でコイル相互間に隙間を有する非密着コイルばねを用いることも可能である。
【0080】
本実施例の弾性部材29は、コイルばねの素線の断面が円形となっている。ただし、コイルばねの素線の断面は、矩形や楕円等のように他の形状とすることも可能である。
【0081】
弾性部材29は、内周側にプッシュプルケーブ13を挿通し、外周が可撓部材1の内周に対して隙間を有している。
【0082】
軸方向において、弾性部材29は、少なくとも可撓部材1の全域にわたって伸び、圧縮に対する剛性が可撓部材1よりも高く設定されている。これにより、弾性部材29は、可撓部材1が軸方向に不用意に圧縮されることを抑制可能となっている。
【0083】
また、弾性部材29は、可撓部材1に応じて屈曲可能であり、且つ屈曲方向の荷重特性に応じて可撓部材1の荷重特性を調整する機能を有する。
【0084】
かかる実施例4においても、実施例1と同様の作用効果を奏することができる。
【実施例5】
【0085】
図12(A)は、本発明の実施例5に係る可撓部材の本体部に用いられるウェーブワッシャーを示す平面図、
図12(B)は同結合部に用いられる平ワッシャーを示す平面図である。なお、実施例5では、実施例1と対応する構成に同符号を用いて重複した説明を省略する。
【0086】
本実施例は、可撓部材1の本体部19のウェーブワッシャー23の平面形状及び結合部材21aの平ワッシャー25a,25bの平面形状を変更したものである。その他は、実施例1と同一形状である。
【0087】
本体部19の各ウェーブワッシャー23は、外周を正八角形形状としている。山部23a及び谷部23bは、それぞれ正八角形の対応する辺の中間部から内周にわたって設けられている。ウェーブワッシャー23の内周の形状は、実施例1と同様に円形形状である。
【0088】
結合部材21a,21bは、ウェーブワッシャー23と同様、外周を正八角形形状とし、内周を円形形状とされている。
【0089】
図13(A)及び(B)は、変形例に係り、
図13(A)はウェーブワッシャー23を示す平面図、
図13(B)は平ワッシャー25a(25b)を示す平面図である。
【0090】
図13の変形例では、本体部19の各ウェーブワッシャー23の外周が正八角形形状となっているが、山部23a及び谷部23bがそれぞれ正八角形の角部から内周にわたって設けられている。その他は、
図12(A)及び(B)の実施例5と同一である。
【0091】
本実施例及び変形例においても、実施例1と同様の作用効果を奏することができる。なお、本実施例及び変形例では、ウェーブワッシャー23の外周の形状を変更したが、内周の形状を変更してもよい。
【符号の説明】
【0092】
1 可撓部材
3 関節機能部
15 基部(他部材)
17 可動部(他部材)
19 本体部
21a,21b 結合部材
23 ウェーブワッシャー
23a 山部
23b 谷部
25a、25b 平ワッシャー