IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エスセエ フランスの特許一覧

特許7055817ホウ素族からの元素をベースにした化合物、および電解質組成物中でのその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-08
(45)【発行日】2022-04-18
(54)【発明の名称】ホウ素族からの元素をベースにした化合物、および電解質組成物中でのその使用
(51)【国際特許分類】
   C07F 5/05 20060101AFI20220411BHJP
   C07F 5/06 20060101ALI20220411BHJP
   H01B 1/06 20060101ALI20220411BHJP
【FI】
C07F5/05 A CSP
C07F5/06 D
H01B1/06 A
【請求項の数】 37
(21)【出願番号】P 2019555073
(86)(22)【出願日】2017-12-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-30
(86)【国際出願番号】 FR2017053827
(87)【国際公開番号】W WO2018115793
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-11-27
(31)【優先権主張番号】2953163
(32)【優先日】2016-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CA
(73)【特許権者】
【識別番号】519226816
【氏名又は名称】エスセエ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】モリズール, ヴァンサン
(72)【発明者】
【氏名】エイ, ポリーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ドゥラボワシエール, アルテュール
(72)【発明者】
【氏名】パルヴォル, ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】ペイイェ, サブリナ
(72)【発明者】
【氏名】ザジブ, カリム
【審査官】安藤 倫世
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-303617(JP,A)
【文献】特開2016-152140(JP,A)
【文献】特開2015-041531(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0279155(US,A1)
【文献】特開2003-168476(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101882696(CN,A)
【文献】特開2014-194870(JP,A)
【文献】特表2003-536229(JP,A)
【文献】特開2000-268863(JP,A)
【文献】国際公開第2013/168821(WO,A1)
【文献】特開2013-067601(JP,A)
【文献】米国特許第03853941(US,A)
【文献】特開2000-109554(JP,A)
【文献】米国特許第03267154(US,A)
【文献】国際公開第98/050389(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第102424995(CN,A)
【文献】特開平04-214704(JP,A)
【文献】国際公開第2010/080505(WO,A1)
【文献】特表2001-517264(JP,A)
【文献】特開2006-245041(JP,A)
【文献】特開2002-138092(JP,A)
【文献】特開平04-256963(JP,A)
【文献】米国特許第05300387(US,A)
【文献】J Electrochem Soc,1998年,Vol.145, No.8,p.2813-2818
【文献】PRAKASH REDDY V; ET AL,BORON-BASED ANION RECEPTORS IN LITHIUM-ION AND METAL-AIR BATTERIES,JOURNAL OF POWER SOURCES,2014年02月,VOL:247,PAGE(S):813 - 820,http://dx.doi.org/10.1016/j.jpowsour.2013.09.028
【文献】Solid State Ionics,2009年,Vol.180,p.934-940
【文献】OLAH G A; ET AL,BORON, ALUMINUM, AND GALLIUM TRIS(TRIFLUOROMETHANESULFONATE) (TRIFLATE): EFFECTIVE 以下備考,JOURNAL OF THE AMERICAN CHEMICAL SOCIETY,1988年,VOL:110, NR:8,PAGE(S):2560 - 2565,http://dx.doi.org/10.1021/ja00216a032,NEW FRIEDEL-CRAFTS CATALYSTS
【文献】Journal of Fluorine Chemistry,1977年,Vol.10,p.177-180
【文献】Chem Ber,1986年,Vol.119,p.2075-2079
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 5/06
C07F 5/05
H01B 1/06
CAplus/REGISTRY/MARPAT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式IIIの化合物、および/またはその塩
【化60】
[式中、
は、元素周期表の13欄(IIIA族)の元素から選択される原子であり、
Xは、独立して、O、S、NH、NR、またはC(O)OもしくはS(O) O基から選択され、ここで、前記C(O)OもしくはS(O) O基は、酸素原子によってMに結合され、そしてここで、少なくとも1個のXが、S(O) O基であり
Rは、独立して、置換もしくは非置換の直鎖状もしくは分枝状アルキル、シクロアルキルおよびアリール基から選択され、そして
は、独立して、置換または非置換の直鎖状または分枝状アルキル、シクロアルキルおよびアリール基から選択される]。
【請求項2】
少なくとも1個のX基が、C(O)Oである、請求項に記載の化合物。
【請求項3】
Mに連結される全てのX基が、S(O)O基である、請求項に記載の化合物。
【請求項4】
は、独立して、OH、NH 、N(R )H、N(R 、C(O)OHおよびSO Hから選択される少なくとも1個の基で置換されたアルキル、シクロアルキルまたはアリール基またはそれらの塩であり、そしてR は、必要に応じて置換されたアルキル、シクロアルキルまたはアリール基から選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
前記塩が、C(O)O もしくはSO 陰イオンおよびA 陽イオンの塩であり、ここで、A が、金属陽イオンまたは有機塩基の陽イオンである、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
が、元素Li、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Zn、Cu、Sc、Y、Fe、Co、Ni、Ti、Sn、V、Cr、およびMnの陽イオンから選択される金属陽イオンである、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
が、Li 、Na 、K 、Rb 、Cs 、Be 2+ 、Mg 2+ 、Ca 2+ 、Sr 2+ 、およびBa 2+ から選択されるアルカリ金属またはアルカリ土類金属の陽イオンである、請求項5に記載の化合物。
【請求項8】
が、Li である、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
が、アンモニウム、アルキルアンモニウム、ジアルキルアンモニウム、トリアルキルアンモニウム、テトラアルキルアンモニウム、トリアリールアンモニウム、トリシクロアルキルアンモニウム、テトラシクロアルキルアンモニウム、イミダゾリウム、1,3-ジアルキルイミダゾリウム、4,5-ジシアノイミダゾリウム、N-アルキルピロリジニウム、N-アルキルピペリジニウム、オキソニウム、トリアルキルオキソニウム、スルホニウム、トリアルキルスルホニウム、トリアリールスルホニウム、トリシクロアルキルスルホニウム、ホスホニウム、テトラアルキルホスホニウム、テトラアリールホスホニウム、テトラシクロアルキルホスホニウム、トリアルキルホスホニウム、トリアリールホスホニウム、トリシクロアルキルホスホニウム、トリアルキルセレン、およびテトラアルキルアルソニウム陽イオンから選択される、請求項5に記載の化合物。
【請求項10】
が、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、N-アルキルピロリジン、N-アルキルモルホリン、N-メチルイミダゾール、4,5-ジシアノイミダゾール、ピリジン、ピコリン、ルチジン、キノリン、N,N-ジメチルアニリン、ジイソプロピルエチルアミン、キヌクリジン、およびトリメチルホスフィンから選択される有機塩基の陽イオンである、請求項5に記載の化合物。
【請求項11】
Mが、ホウ素、アルミニウム、ガリウムまたはインジウム原子である、請求項1から10のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
Mがホウ素原子である、請求項1から11のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項13】
Mがアルミニウム原子である、請求項1から11のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項14】
Mがガリウム原子である、請求項1から11のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項15】
Mがインジウム原子である、請求項1から11のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項16】
【化66】
【化67】
【化68】
[式中、A、金属陽イオンまたは有機塩基の陽イオンである]
から選択される、請求項に記載の化合物。
【請求項17】
が、元素Li、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Zn、Cu、Sc、Y、Fe、Co、Ni、Ti、Sn、V、Cr、およびMnの陽イオンから選択される金属陽イオンである、請求項16に記載の化合物。
【請求項18】
が、Li 、Na 、K 、Rb 、Cs 、Be 2+ 、Mg 2+ 、Ca 2+ 、Sr 2+ 、およびBa 2+ から選択されるアルカリ金属またはアルカリ土類金属の陽イオンである、請求項16に記載の化合物。
【請求項19】
が、Li である、請求項18に記載の化合物。
【請求項20】
が、アンモニウム、アルキルアンモニウム、ジアルキルアンモニウム、トリアルキルアンモニウム、テトラアルキルアンモニウム、トリアリールアンモニウム、トリシクロアルキルアンモニウム、テトラシクロアルキルアンモニウム、イミダゾリウム、1,3-ジアルキルイミダゾリウム、4,5-ジシアノイミダゾリウム、N-アルキルピロリジニウム、N-アルキルピペリジニウム、オキソニウム、トリアルキルオキソニウム、スルホニウム、トリアルキルスルホニウム、トリアリールスルホニウム、トリシクロアルキルスルホニウム、ホスホニウム、テトラアルキルホスホニウム、テトラアリールホスホニウム、テトラシクロアルキルホスホニウム、トリアルキルホスホニウム、トリアリールホスホニウム、トリシクロアルキルホスホニウム、トリアルキルセレン、およびテトラアルキルアルソニウム陽イオンから選択される、請求項16に記載の化合物。
【請求項21】
が、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、N-アルキルピロリジン、N-アルキルモルホリン、N-メチルイミダゾール、4,5-ジシアノイミダゾール、ピリジン、ピコリン、ルチジン、キノリン、N,N-ジメチルアニリン、ジイソプロピルエチルアミン、キヌクリジン、およびトリメチルホスフィンから選択される有機塩基の陽イオンである、請求項16に記載の化合物。
【請求項22】
式IVの化合物:
M(X’) (IV)
[式中、Mは、請求項1に定義された通りであり、そしてX’は、
水素、OH、ハロゲン、C ~C アルキル、O-C ~C アルキル、C ~C アルキルカルボキシレート、スルフェート、ホスフェートから選択される]、または式IVの化合物の塩を
約1モル当量の少なくとも1種の式VIの化合物:
XH (VI)
[式中、RおよびXは、請求項で定義された通りである]
接触させるステップを含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の化合物を調製するための方法。
【請求項23】
前記式IVの化合物が、B(OH) 、BH 、NaBH 、LiBH 、BBr 、BCl 、BF 、BMe 、BEt 、B(i-Pr) 、B(OMe) 、およびLiBF から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記式VIの化合物におけるR 基が、前記XH基に加えて1個以上のCO HまたはSO H基を含み、そして前記方法が、式IVの化合物を、1当量の少なくとも1種の式VIの化合物とそして存在するCO HまたはSO H基のモル当量当たり1モル当量の塩基形態のA 陽イオンと接触させることを含む、請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
水を排除するステップを含む、請求項22から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
水と共沸混合物を形成する溶媒の存在下、水の捕捉を可能にするデバイスを使用して、還流下で加熱するステップを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
乾燥剤の使用を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記接触させることが、-78℃と、前記溶媒または溶媒混合物の沸騰温度との間の温度で実施される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
請求項1から21のいずれか一項で定義された化合物、電解質組成物中での使用。
【請求項30】
請求項1から21のいずれか一項で定義された化合物含む、電解質組成物。
【請求項31】
液体溶媒または溶媒和ポリマーを含む、請求項30に記載の電解質組成物。
【請求項32】
液体電解質である、請求項30または31に記載の電解質組成物。
【請求項33】
ゲルポリマー電解質である、請求項30または31に記載の電解質組成物。
【請求項34】
固体ポリマー電解質である、請求項30または31に記載の電解質組成物。
【請求項35】
さらに含む、請求項30から34のいずれか一項に記載の電解質組成物。
【請求項36】
前記塩が、リチウム塩である、請求項35に記載の電解質組成物。
【請求項37】
請求項30から36のいずれか一項で定義された電解質組成物を、アノードとカソードとの間に含む、電気化学セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、適用可能な法の下、2016年12月23日に出願されたカナダ特許出願第2,953,163号に基づく優先権を主張するものであり、その内容は、全体が全ての目的で参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本出願は、ホウ素族からの元素をベースにした化合物、その調製方法、ならびに電解質組成物中でのその塩および/または添加剤としての使用に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
リチウムイオンバッテリーは、負極、正極、セパレーターおよび電解質を含む。負極および正極は、1種または2種の活物質(リチウム挿入および抽出)、電子伝導体の混合物、粒子を固めて集電体(通常はアルミニウムまたは銅)に付着させるために使用されるポリマーからなる。電解質は、液体溶媒(通常は有機カーボネートの混合物)またはポリマー溶媒に溶解させた1種または複数のリチウム塩からなる。温度、高電圧、アルミニウムの腐食などに対するバッテリーの耐性を改善するために、添加剤が電解質溶液に添加されてもよい。
【0004】
今日利用可能な電気自動車およびその他の電気デバイス用のリチウムイオンバッテリーは、カーボネートの混合物中のヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)をベースにした液体電解質を、最も頻繁に使用している。この塩の普及は、主に、アルミニウム(カソード用に最も使用される集電体)上の不動態層の形成に起因する。しかし、LiPFは熱的に不安定であるだけでなく、プロトン種(例えば、HOなど)と反応して、有毒ガスである非常に侵襲的で望ましくないフッ化水素(HF)を形成し得るので、化学的にも不安定である。LiPFとプロトン種との接触を回避するために全ての対策が取られたとしても、短縮された寿命および潜在的な安全性の問題をもたらす、バッテリーの劣化に関わる高いリスクが存在する。さらに、この塩のコストは依然として比較的高い。これらの主な欠点により、LiPFに代わる、改善された電気化学的、熱的、および化学的性質などを持つ塩に関する研究が促されてきた。
【0005】
様々な塩が、LiPFに代わる候補として提案されてきた。それにもかかわらず、これらの塩には、その使用を制限するまたは妨げる欠点がある。例えば、ヘキサフルオロヒ酸リチウム(LiAsF)は、ヒ素誘導体および分解生成物の毒性により、使用することができない。別の例、過塩素酸リチウム(LiClO)は、過酷な酸化条件下で爆発する可能性のある反応性の高い塩である。一方で、リチウム(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(LiTFSI)は、集電体のアルミニウムを腐食する。テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF)などのホウ素をベースにした塩も提案されてきたが、これらはその低い伝導率とカーボネート中でのその限られた溶解度とに関して批判されてきたが、それでも安価であることおよび水分にそれほど感受性がないこと、したがってより安全であるという利点がある。高い電気化学的および熱的安定性(293℃)など、多くの利点があるリチウム(オキサラト)ボレート(LiBOB)は、LiCoOをベースにしたカソードが使用される場合、気体を発生させる。化学的、電気化学的および熱的性質ならびにそれらの水分安定性に鑑み、ホウ素をベースにしたリチウム塩、より具体的にはボレートおよびボロキシンが近年開発されている。
【0006】
一般に、ボレートは、アルコール、カルボン酸またはジカルボン酸を使用して調製されるが、B(OR)またはAr-B(OR)からの多官能性カルボン酸-アルコール分子を使用しても調製される(J. Power Sources、2014年、247巻、813頁;J. Phys. Chem.、2009年、113巻、5918頁;J. Electrochem. Soc.、1998年、145巻、2813頁)。リチウム化ボレートの調製は、LiOH、LiCOまたはLiなどのリチウム塩基(J. Electrochem. Soc.、1996年、143巻、3572頁)、ならびにホウ素をベースにした化合物:B(OMe)、LiBFおよびBFの存在下、求核剤(アルコール)またはカルボン酸を使用することによって得られた。
【0007】
一方、ボロキシンの調製は、一般にArB(OH)またはArOB(OH)の脱水によって実施され、その結果、それぞれ(BOAr)またはB(O(OAr)が得られる(J. Power Sources、2014年、247巻、813頁;J. Phys. Chem.、2009年、113巻、5918頁;J. Am. Chem. Soc.、2013年、135巻、10990頁)。このタイプの反応では、置換ホウ酸(ArB(OH)またはArOB(OH))は、事前に調製しなければならず、したがってボロキシンの調製は、2ステップで実施される。0.5から1wt%の濃度での、電解質組成物中へのトリメチルボロキシン(TMB)などのボロキシンの添加は、電解質の電気化学的性質を改善してきた。TMBは優先的に酸化され、カソード上にSEIを形成する。ボロキシンの添加は、イオン伝導度および容量保持を改善できることが示されてきた(J. Electro. Soc.、2014年、161巻、2255頁;Electrochem. Comm.、2013年、28巻、20頁;Electrochemica Acta、2015年、173巻、804頁)。
バッテリーの寿命および安全性を改善するために、電解質組成物のための新しい塩および/または添加剤を開発することによって、既存の電解質の性質(例えば、熱的、電気化学的、水分安定性など)を改善することは極めて重要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【文献】J. Power Sources、2014年、247巻、813頁
【文献】J. Phys. Chem.、2009年、113巻、5918頁
【文献】J. Electrochem. Soc.、1998年、145巻、2813頁
【文献】J. Electrochem. Soc.、1996年、143巻、3572頁
【文献】J. Am. Chem. Soc.、2013年、135巻、10990頁
【文献】J. Electro. Soc.、2014年、161巻、2255頁
【文献】Electrochem. Comm.、2013年、28巻、20頁
【文献】Electrochemica Acta、2015年、173巻、804頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
要旨
第1の態様によれば、本出願は、ホウ素族からの元素をベースにした化合物に関する。例えば、化合物は、式IもしくはIIのもの、および/またはそれらの塩であり:
【化1】
式中:
Mは、元素周期表の13欄(IIIA族)の元素から選択される原子、例えばホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウムもしくはタリウム原子、例えばホウ素、アルミニウム、ガリウムもしくはインジウム原子、またはホウ素もしくはアルミニウム原子であり;
Xは、O、S、NH、NR、またはC(O)OもしくはS(O)O基から独立して選択され、前記基は、酸素原子によってMに結合され;
Rは、置換もしくは非置換の直鎖状もしくは分枝状アルキル、シクロアルキルおよびアリール基から独立して選択されるか、または2個もしくは3個のR基が、それに結合しているXラジカルと一緒になって、Mを含めて5員から7員の環を形成し、もしくはMを含めて7員から10員を有する二環式基を形成し、かつ/または最大で1個のXRがヒドロキシル基であり;
は、金属陽イオンまたは有機塩基の陽イオンであり、分子の残部に対するAの合計モル比は電気的中性を達成するよう調節される。
【0010】
一実施形態によれば、Aは、金属陽イオンであり、例えば元素Li、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Zn、Cu、Sc、Y、Fe、Co、Ni、Ti、Sn、V、CrまたはMnの陽イオンから選択される。一実施形態によれば、Aは、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の陽イオン(Li、Na、K、Rb、Cs、Be2+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、およびBa2+)であり、例えばAはLiである。
【0011】
別の実施形態によれば、Aは、有機陽イオンであり、例えばアンモニウム、アルキルアンモニウム、ジアルキルアンモニウム、トリアルキルアンモニウム、テトラアルキルアンモニウム、トリアリールアンモニウム、トリシクロアルキルアンモニウム、テトラシクロアルキルアンモニウム、イミダゾリウム、1,3-ジアルキルイミダゾリウム、4,5-ジシアノイミダゾリウム、N-アルキルピロリジニウム、N-アルキルピペリジニウム、オキソニウム、トリアルキルオキソニウム、スルホニウム、トリアルキルスルホニウム、トリアリールスルホニウム、トリシクロアルキルスルホニウム、ホスホニウム、テトラアルキルホスホニウム、テトラアリールホスホニウム、テトラシクロアルキルホスホニウム、トリアルキルホスホニウム、トリアリールホスホニウム、トリシクロアルキルホスホニウム、トリアルキルセレン、テトラアルキルアルソニウム、およびその他類似の塩基から選択される。別の実施形態によれば、Aは、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、N-アルキルピロリジン、N-アルキルモルホリン、N-メチルイミダゾール、4,5-ジシアノイミダゾール、ピリジン、ピコリン、ルチジン、キノリン、N,N-ジメチルアニリン、ジイソプロピルエチルアミン、キヌクリジン、トリメチルホスフィン、およびその他類似の有機塩基から選択される、有機塩基の有機陽イオンである。
【0012】
実施形態によれば、式Iの化合物は、式I(a)、I(b1)、I(b2)およびI(c)の化合物、ならびに/またはそれらの塩から選択され:
【化2】
式中、X、Mは先に定義された通りであり、
は、直鎖状または分枝状アルキル、シクロアルキルおよびアリールから選択される、置換または非置換の基であり;
は、出現するごとに独立して、水素、ハロゲン、ならびに置換もしくは非置換の直鎖状もしくは分枝状アルキル、シクロアルキルおよびアリール基から選択されるか、またはR基は、それらの隣接する炭素原子と組み合わされて、単環式もしくは二環式のシクロアルキルもしくはアリールを形成し、出現するごとにXがOまたはNHである場合、nは1とは異なり;
nは、1、2、3および4から選択される整数であり;
mは、0、1および2から選択される整数である。
【0013】
一実施形態によれば、式IIの化合物は、式II(a)、II(b1)、II(b2)およびII(c)の化合物、ならびに/またはそれらの塩から選択され:
【化3】
式中、X、M、R、R、A、nおよびmは先に定義された通りである。
【0014】
一実施形態によれば、化合物は、式IIIのものおよび/またはその塩であり:
【化4】
式中、MおよびXは先に定義された通りであり;
は独立して、置換または非置換の直鎖状または分枝状アルキル、シクロアルキルおよびアリール基から選択される。
【0015】
上記実施形態のうちの1つによれば、化合物のX基のうちの少なくとも1つはC(O)OまたはS(O)O基である。例えば、少なくとも1つのX基はS(O)O基である。一部の実施形態では、M原子に結合された化合物の全てのX部分は、S(O)O基である。
【0016】
上記実施形態のうちの1つによれば、化合物は記載された通りであり、Mはホウ素原子である。別の実施形態によれば、Mはアルミニウム原子である。他の実施形態によれば、Mはガリウム原子である。さらに別の実施形態によれば、Mはインジウム原子である。
【0017】
一例によれば、本明細書に記載される式Iの化合物は、下記の化合物:
【化5】
【化6】
(式中、Aは、先に定義された通りである)
から選択される。
【0018】
別の実施例によれば、本明細書に記載される式IIの化合物は、下記の化合物:
【化7】
【化8】
【化9】
(式中、Aは、先に定義された通りである)
から選択される。
【0019】
追加の実施例によれば、本明細書に記載される式IIIの化合物は、下記の化合物:
【化10】
【化11】
【化12】
(式中、Aは、先に定義された通りである)
から選択される。
【0020】
別の態様によれば、本出願は、式IVの化合物:
M(X’) (IV)
(式中、Mは、先に定義された通りであり、X’は、水素、OH、ハロゲン(例えば、F、Cl、Br)、C~Cアルキル、O-C~Cアルキル(例えば、OMe、OEt、Oi-Pr)、C~Cアルキルカルボキシレート、スルフェート、ホスフェートから選択される)、または式IVの化合物の塩、例えば、式(IV)の化合物またはB(OH)、BH、NaBH、LiBH、BBr、BCl、BF、BMe、BEt、B(i-Pr)、B(OMe)、LiBF、Al(OH)、AlBr、AlCl、Al(OMe)、Al(OEt) Al(Oi-Pr)、Al(OC(O)C、Al(OC(O)CH(CH、Al(OC(O)CH、AlPO、Al(SO、AlMe、AlEt、Al(i-Pr)、LiAlHおよびLiAlClから選択されるその塩の1種
と、少なくとも1種の式Vの化合物:
RXH (V)
(式中、RおよびXは、先に定義された通りであり、2または3個のR基が連結して2または3個のXH基を含む単一化合物を形成してもよい)
とを接触させるステップを含む、本明細書に記載される化合物を調製するための方法に関する。
【0021】
一実施形態によれば、方法は、約1当量の式IVの化合物と、2、3または4モル当量のXH基に相当する量の式Vの化合物とを接触させることを含み、官能基を中和するXH基と塩を形成するための塩基の存在は、計算から除外される。塩基の例を以下に記載するが、これらは無機であっても有機であってもよい。
【0022】
一実施形態によれば、式Vの化合物(RXH)は、式V(a)からV(c):
【化13】
(式中、X、n、m、RおよびRは、先に定義された通りである)
から選択される化合物である。
【0023】
一実施形態によれば、少なくとも1個のX基は、C(O)OもしくはS(O)O基であり、または少なくとも1個のX基は、S(O)O基である。
【0024】
一例によれば、式IVの化合物において、Mはホウ素原子である。別の実施例によれば、Mはアルミニウム原子である。
【0025】
上記方法および化合物において、Rは、OH、NH、N(R)H、N(R、COHおよびSOHから選択される少なくとも1個の基で置換されたアルキル、シクロアルキルもしくはアリール、または適応可能な場合にはそれらの塩であってもよく、式中、Rは、必要に応じて置換されたアルキル、シクロアルキルまたはアリール基から選択される。例えば、Rは、COHおよびSOHから選択される少なくとも1個の基で置換されたアルキル、シクロアルキルもしくはアリール、またはCO もしくはSO 陰イオンおよびA陽イオンで形成された塩であり、Aは先に定義された通りである。別の実施例によれば、Rは、置換または非置換アルキルおよびフェニル基、例えば、メチル、トリフルオロメチル、カルボキシフェニル、カルボキシアルキルおよびジカルボキシアルキル基から選択される。
【0026】
上記方法および化合物において、Rは、出現するごとに水素原子であってもよい。
【0027】
実施形態によれば、式Vの化合物は式V(b)の化合物であり、nは2に等しく、R基はそれに結合している炭素原子と一緒になってアリール基を形成する。
【0028】
別の実施形態によれば、式Vの化合物は、ピナコール、オルタニル酸、スルホ酢酸、スルホ安息香酸、エタノールアミン、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸およびスルホスクシニム酸(acide sulfosuccinimique)から選択される。
【0029】
一実施形態によれば、上述の方法は:
- 式IVの化合物と、約3モル当量の式V(a)の化合物とを、必要に応じて塩基の存在下で接触させることを含む、式I(a)の化合物の調製;または
- 式IVの化合物と、約1モル当量の式V(a)の化合物および約1モル当量の式V(b)の化合物とを、必要に応じて塩基の存在下で接触させることを含む、式I(b1)の化合物の調製;または
- 式IVの化合物と、約1モル当量の式V(b)の化合物とを、必要に応じて塩基の存在下で接触させることを含む、式I(b2)の化合物の調製;または
- 式IVの化合物と、約1モル当量の式V(c)の化合物とを、必要に応じて塩基の存在下で接触させることを含む、式I(c)の化合物の調製;または
- 式IVの化合物と、約4モル当量の式V(a)の化合物とを、塩基の存在下で接触させることを含む、式II(a)の化合物の調製;または
- 式IVの化合物と、約1モル当量の式V(b)の化合物および約2モル当量の式V(a)の化合物とを、塩基の存在下で接触させることを含む、式II(b1)の化合物の調製;または
- 式IVの化合物と、約2モル当量の式V(b)の化合物とを、塩基の存在下で接触させることを含む、式II(b2)の化合物の調製;または
- 式IVの化合物と、約1モル当量の式V(c)の化合物および約1モル当量の式V(a)の化合物とを、塩基の存在下で接触させることを含む、式II(c)の化合物の調製
を含む。
【0030】
別の実施形態によれば、本出願は、式IVの化合物:
M(X’) (IV)
(式中、MおよびX’は、先に定義された通りである)
と、式VIの少なくとも1種の化合物:
XH (VI)
(式中、RおよびXは、請求項8で定義された通りである)
とを接触させるステップを含む、式IIIの化合物の調製からの方法に関する。
【0031】
例えば、方法は、式IVの化合物と、約1モル当量の式VIの化合物とを接触させることを含む、式IIIの化合物の調製を含む。
【0032】
優先的に、本明細書に記載される方法は、水を除去するステップを含む。一例によれば、方法は、水と共沸混合物を形成する溶媒の存在下で加熱還流するステップを含む。別の実施例では、方法は、乾燥剤の使用を含む。
【0033】
別の態様では、本出願は、本明細書に記載される化合物または本明細書に記載される方法によって調製される化合物の、電解質組成物中での使用に関する。本出願は、本明細書に記載される少なくとも1種の化合物または本明細書に記載される方法により調製された化合物を含む、電解質組成物にも関する。一実施形態によれば、電解質組成物はさらに、液体溶媒または溶媒和ポリマーを含む。例えば、電解質組成物は、液体電解質、またはゲルポリマー電解質、または固体ポリマー電解質である。
【0034】
最後の態様によれば、本出願は、アノードとカソードとの間に本明細書に記載される電解質組成物を含む、電気化学セルに関する。例えば、Li、Na、K、Rb、Cs、Be2+、Mg2+、Ca2+などの金属イオンをベースにする電気化学セルは、リチウムまたはリチウムイオンバッテリー型のものである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1図1は、実施例2で使用される、(a)ポリ(エチレングリコール)480(AcrPEG480、x=8、M=480g/mol)アクリレートマクロモノマーの;(b)ポリ(ポリ(エチレングリコール)480アクリレート)(PAcrPEG480)の;(c)PAcrPEG480およびポリスチレン(PAcrPEG480-b-PS)のジブロックコポリマーの、化学構造を示す。
【0036】
図2図2は、EC/DEC混合物中の塩の1M溶液の、アルミニウム(カソードの集電体)の腐食に対する比較効果を示し、実施例4.1に記載するように、曲線は上から下に:LiTFSI、LiPFおよびLiPF+添加剤である。
【0037】
図3図3は、実施例4.2で記載するように、LiPFを単独で(下の曲線)または化合物C10もしくはC13と組み合わせて(上の曲線)使用したときの、半電池のサイクリング結果を示す(回復した放電容量対充放電のサイクル数)。
【0038】
図4図4は、実施例4.3に記載するように、LiPFを単独で(下の曲線)または化合物C10もしくはC13と組み合わせて(上の曲線)使用したときの、セルのサイクリング結果を示す(回復した放電容量対充放電のサイクル数)。
【発明を実施するための形態】
【0039】
詳細な説明
本明細書で使用される全ての技術的および科学的用語は、本発明の技術分野の当業者に一般に理解されるものと同じ意味を有する。しかしながら、使用される用語および表現のうちのいくつかの意味を、以下に提供する。
【0040】
炭化水素基中の炭素原子の数は、接頭辞「C~C」により示されてもよく、ここでxは、基内の炭素原子の最小数であり、yは最大数である。
【0041】
本明細書に記載される化学構造は、当技術分野で公知の従来の基準に従い描かれる。また、描かれるような炭素原子などの原子が不十分な原子価を有するような場合、原子価は、必ずしも明確に描かれていない場合であっても1個または複数の水素原子によって満たされると仮定する。
【0042】
一般に、「置換(された)」という用語は、「必要に応じて」という用語が先に存在しても存在しなくても、指示された基の1個または複数の水素原子が適切な置換基によって置き換えられていることを意味する。本記載で企図される置換基または置換基の組合せは、化学的に安定な化合物の形成をもたらすものである。置換基の例には、ハロゲン(例えば、F、Cl、Br)、ヒドロキシル、アルコキシル、ニトリル、アジド、カルボキシレート、アルコキシカルボニル、第1級、第2級もしくは第3級アミン、アミド、ニトロ、シラン、シロキサン、チオカルボキシレート、アルキル、アルケニル、アリール、またはシクロアルキルが含まれる。適用可能な場合、これらの置換基は、上記基の1つでさらに置換されてもよい。
【0043】
本出願は、ホウ素族の元素をベースにした新規な化合物と、それらの調製と、電気化学セルにおける、例えば液体、ゲル、もしくは固体電解質の組成物における、それらの添加剤および/または塩としての使用とに関する。一例では、電気化学セルは、Liイオン型バッテリーまたはその他のタイプのイオンバッテリー(例えば、Na、K、Rb、Cs、Be2+、Mg2+、Ca2+など)である。一般に、ホウ素またはアルミニウム原子上に存在する基を、この原子の電気陰性度、したがって金属または有機陽イオンからのその解離を変調させるために、様々に変更することができる。
【0044】
これらの化合物は、例えば、集電体(例えば、アルミニウム製)上での安定な不動態層、カソードもしくはアノード上での安定な固体電解質界面(SEI)の形成に関与してもよく、かつ/または室温でのバッテリーの寿命を、例えば高温および/もしくは高電圧での容量保持を改善することによって、改善し得る。
【0045】
本明細書に記載される化合物は、添加剤として、有機または金属塩として(化合物が有機または金属陽イオンを含む場合)、単独でまたはその他の塩と組み合わせて、例えば液体溶媒または溶媒和ポリマー(ゲルまたは固体)中で使用されてもよい。
【0046】
一実施形態によれば、本記載は、式IもしくはIIの化合物、またはそれらの塩に関し:
【化14】
式中:
Mは、元素周期表の13欄(IIIA族)の元素、例えばホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウムもしくはタリウム原子から選択される原子であり、例えばホウ素、アルミニウム、ガリウムもしくはインジウム原子であり、またはホウ素もしくはアルミニウム原子であり;
Xは、独立して、O、S、NH、NR、またはC(O)OもしくはS(O)O基から選択され、前記基は、酸素原子を介してMに結合されており;
Rは独立して、置換もしくは非置換の直鎖状もしくは分枝状アルキル、シクロアルキルおよびアリール基からされるか、または2個もしくは3個のR基がそれに結合しているXラジカルと一緒になって、Mを含めて5員から7員を有する環を形成し、もしくはMを含めて7員から10員を有する二環式基を形成し、かつ/または最大で1個のXRがヒドロキシル基であり;
は、金属陽イオンまたは有機塩基の陽イオンであり、分子の残部に対するAの合計モル比は電気的中性を達成するように調節される。
【0047】
一実施形態によれば、少なくとも1個のX基は、C(O)OもしくはS(O)O基であり、または少なくとも1個のX基はS(O)O基である。
【0048】
金属陽イオンとしてのAの非限定的な例には、元素Li、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Zn、Cu、Sc、Y、Fe、Co、Ni、Ti、Sn、V、CrもしくはMnの陽イオン、またはアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の陽イオン、例えばLi、Na、K、Rb、Cs、Be2+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、およびBa2+が含まれ、例えばAはLiである。
【0049】
有機塩基の陽イオンとしてのAの例には、陽イオンアンモニウム、アルキルアンモニウム、ジアルキルアンモニウム、トリアルキルアンモニウム、テトラアルキルアンモニウム、トリアリールアンモニウム、トリシクロアルキルアンモニウム、テトラシクロアルキルアンモニウム、イミダゾリウム、1,3-ジアルキルイミダゾリウム、4,5-ジシアノイミダゾリウム、N-アルキルピロリジニウム、N-アルキルピペリジニウム、オキソニウム、トリアルキルオキソニウム、スルホニウム、トリアルキルスルホニウム、トリアリールスルホニウム、トリシクロアルキルスルホニウム、ホスホニウム、テトラアルキルホスホニウム、テトラアリールホスホニウム、テトラシクロアルキルホスホニウム、トリアルキルホスホニウム、トリアリールホスホニウム、トリシクロアルキルホスホニウム、トリアルキルセレン、テトラアルキルアルソニウム、およびその他類似の塩基が含まれる。例えば、Aは、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、N-アルキルピロリジン、N-アルキルモルホリン、N-メチルイミダゾール、4,5-ジシアノイミダゾール、ピリジン、ピコリン、ルチジン、キノリン、N,N-ジメチルアニリン、ジイソプロピルエチルアミン、キヌクリジン、トリメチルホスフィン、およびその他類似の有機塩基から選択される、有機塩基の陽イオンであってもよい。
【0050】
例えば、化合物は、式I(a)、I(b1)、I(b2)およびI(c)のもの、または化合物A1からA12のうちの1種、ならびに/あるいはそれらの塩である。別の実施例によれば、化合物は、式II(a)、II(b1)、II(b2)およびII(c)のもの、または化合物B1からB25のうちの1種、ならびに/あるいはそれらの塩である。
【0051】
別の実施形態によれば、本記載は、式IIIの化合物、またはその塩の1種に関し:
【化15】
式中、MおよびXは、先に定義された通りであり;かつ
は独立して、置換または非置換の直鎖状または分枝状アルキル、シクロアルキルおよびアリール基から選択される。
【0052】
実施形態によれば、少なくとも1個のX基はC(O)OもしくはS(O)O基であり、または少なくとも1個のX基はS(O)O基である。
【0053】
一実施形態によれば、式I、IIまたはIIIの化合物において、RまたはR基は独立して、OH、NH、N(R)H、N(R、C(O)OHおよびSOHから選択される少なくとも1個の基で置換されたアルキル、シクロアルキルもしくはアリール基、または適用可能な場合にはそれらの塩、例えばC(O)OおよびSO イオンとA陽イオンとの塩であり、式中、Aは上記にて定義された通りであり、Rは、必要に応じて置換されたアルキル、シクロアルキルまたはアリール基から選択される。
【0054】
例えば、化合物は、化合物C1からC16、および/またはそれらの塩のうちの1種に相当する。
【0055】
概略的プロセス
上記化合物の調製は類似の手法で行われ、最終生成物は、使用される各試薬の当量数および状態によって大部分が決定される。例えば三置換された場合に非常に良好な求電子試薬であるホウ素およびアルミニウム(または13欄中のその他の原子)は、求核試薬(カルボン酸およびスルホン酸を含む)と反応することができる。例えば、ホウ酸もしくは水酸化アルミニウムなどの求電子ホウ素もしくはアルミニウム誘導体、またはハロゲン化もしくはアルコキシル化等価物を、1個または複数の求核基、例えばヒドロキシル、チオール、アミン、スルホン酸および/またはカルボン酸を含む化合物と接触させる。好ましくは、求核化合物は、少なくとも1個のスルホン酸もしくはカルボン酸基、または少なくとも1個のスルホン酸基を含む。
【0056】
一般に、式IおよびII(およびそれらの、以下に定義されるサブグループ)の、または式IIIの化合物の調製中、求電子ホウ素またはアルミニウム誘導体と求核化合物との間の反応は、溶媒、通常は非反応性有機溶媒、またはまれに水性溶媒の存在下で行われる。有機溶媒の非限定的な例には、脂肪族または環式エーテル(例えばジエチルエーテル、メチルt-ブチルエーテル(MTBE)、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ジグリムなど)、ハロゲン化溶媒(例えばジクロロメタン(DCMまたはCHCl)、ジクロロエタン(DCE)など)、および芳香族溶媒(例えばトルエン、ベンゼンなど)、またはこれらの組合せが含まれる。一例によれば、溶媒は、THF、CHCl、またはこれらの混合物である。別の実施例によれば、溶媒はトルエンである。
【0057】
塩基の存在は、酸性官能基、例えばR基上の置換基を中和するため、または四置換された場合にM元素を中和するために、媒体中に必要とされ得る。例えば、Aが金属陽イオンである場合、塩基は、リチウムまたはナトリウム塩基から選択されてもよく、例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、リチウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、リチウムエトキシド、ナトリウムエトキシド、リチウムイソプロポキシド、ナトリウムイソプロポキシド、リチウムtert-ブトキシド、ナトリウムtert-ブトキシド、水素化リチウム、水素化ナトリウム、n-ブチルリチウム、n-ブチルナトリウム、s-ブチルリチウム、リチウムジイソプロピルアミド、tert-ブチルリチウム、メチルリチウム、フェニルリチウム、フェニルナトリウム、ベンジルリチウム、ベンジルナトリウム、リチウムジムシレート(dimsylate de lithium)、ナトリウムジムシレート、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、酢酸リチウム、および酢酸ナトリウムから選択されてもよい。同様に、Aが有機塩基の陽イオンである場合、塩基は、Aの定義を参照して、本明細書に記載される有機塩基から選択される。
【0058】
一実施形態では、方法は、例えば無水硫酸マグネシウムもしくはモレキュラーシーブなどの乾燥剤を添加することによって、またはDean-Stark型装置を使用して水と共沸混合物を形成する不混和性溶媒(例えば、トルエン)中で還流することによって、反応中に水を除去することを含んでいてもよい。このようにすることで、反応媒体中に存在するまたは発生した微量の水を除去することが可能になる。
【0059】
反応媒体は、室温で維持されてもよく、または反応が加速されるようにもしくは水が除去されるように(Dean-Stark、上記参照)加熱されてもよい。温度は、約-78℃から、使用される溶媒または溶媒混合物の還流温度の範囲内にあってもよい。反応の持続時間は、例えば、関係する出発材料の反応性および使用される温度に応じて変化する。持続時間はまた、使用される当量数、および反応媒体中に導入された求核化合物上に存在するアルコール/アミン/酸官能基のそれぞれの反応性に依存してもよい。スルホン酸基は、一般に、最も反応性があり、より素早く反応することになる。媒体は、好ましくは不活性雰囲気下(例えば、窒素またはアルゴン雰囲気下)で保持される。
【0060】
式Iの方法
一態様によれば、上記にて定義された式Iの化合物を調製するための方法が企図され、その方法は、式IVの化合物:
M(X’) (IV)
(式中、Mは先に定義された通りであり、X’は、水素、OH、ハロゲン(例えば、F、Cl、Br)、C~Cアルキル、O-C~Cアルキル(例えば、OMe、OEt、Oi-Pr)、C~Cアルキルカルボキシレート、スルフェート、ホスフェートから選択される)
または式IVの化合物の塩(例えば、式(IV)の化合物またはその塩)と;
少なくとも1種の式Vの化合物:
RXH (V)
(式中、RおよびXは先に定義された通りであり、2または3個のR基が連結して2または3個のXH基を含む単一化合物を形成してもよい)
とを接触させるステップを含む。方法は、約1当量の式IVの化合物と、2または3モル当量のXH基に相当する量の式Vの化合物とを接触させることを含む。XH基と塩を形成するために使用される塩基の存在は、官能基を中和するが、これは計算には考慮されないことに留意されたい。
【0061】
本発明の方法および本出願に記載されるそのような方法では、式Vの化合物がスルホネート基を含む数個のXH(求核試薬)官能基を含む場合、スルホネート基は一般に、ヒドロキシル、アミンまたはカルボキシレート基などのその他の求核基よりも素早く反応する。
【0062】
式IVの化合物、またはその塩の1種の例には、B(OH)、BH、NaBH、LiBH、BBr、BCl、BF、BMe、BEt、B(i-Pr)、B(OMe)、LiBF、Al(OH)、AlBr、AlCl、Al(OMe)、Al(OEt) Al(Oi-Pr)、Al(OC(O)C、Al(OC(O)CH(CH、Al(OC(O)CH、AlPO、Al(SO、AlMe、AlEt、Al(i-Pr)、LiAlHおよびLiAlClが含まれる。
【0063】
一実施形態によれば、式Vの化合物(RXH)は、式V(a)からV(c):
【化16】
(式中、
Xは、先に定義された通りであり;
nは、1、2、3および4から選択される整数であり;
mは、0、1および2から選択される整数であり;
は、直鎖状または分枝状アルキル、シクロアルキルおよびアリールから選択される、置換または非置換の基であり;
は、出現するごとに独立して、水素、ハロゲン、ならびに置換もしくは非置換の直鎖状もしくは分枝状アルキル、シクロアルキルおよびアリール基から選択されるか、またはR基は、それに結合している炭素原子と一緒になって、単環式もしくは二環式のシクロアルキル基もしくはアリールを形成し、出現するごとにXがOまたはNHである場合、nは1とは異なる)
から選択される化合物である。
【0064】
一実施形態によれば、少なくとも1個のX基は、C(O)OもしくはS(O)O基であり、または少なくとも1個のX基は、S(O)O基である。
【0065】
一実施形態によれば、Rは、SH、OH、NH、N(R)H、N(R、COHおよびSOHから選択される少なくとも1個の基で置換されたアルキル、シクロアルキルもしくはアリール、または適用可能な場合にはそれらの塩、例えばCO またはSO 陰イオンおよびA陽イオンで形成される塩であり、ここでAおよびRは先に定義された通りである。
【0066】
別の実施形態によれば、Rは、置換または非置換アルキルおよびフェニル基から選択され、例えばメチル、トリフルオロメチル、カルボキシフェニル、カルボキシアルキルおよびジカルボキシアルキル基から選択される。
【0067】
別の実施例によれば、Rは、出現するごとに水素原子である。別の実施例では、式V(b)において、nは2であり、R基はそれに結合している炭素原子と一緒になってアリール基を形成する。
【0068】
本発明の方法の実施形態によれば、化合物V(a)からV(c)は、ピナコール、オルタニル酸、スルホ酢酸、スルホ安息香酸、エタノールアミン、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸およびスルホスクシニム酸から選択される。
【0069】
実施形態によれば、方法は、式I(a)、I(b1)、I(b2)およびI(c):
【化17】
(式中、X、M、R、R、nおよびmは、先に定義された通りである)
から選択される式Iの化合物の調製を含む。式I(a)において、XRは、出現するごとに同じであるかまたは異なる。
【0070】
一実施形態によれば、少なくとも1個のX基は、C(O)OもしくはS(O)O基であり、または少なくとも1個のX基はS(O)O基である。
【0071】
例えば、式I(a)の化合物の調製は、式IVの化合物と、約3当量の式V(a)の少なくとも1種の化合物とを接触させることを含む。別の実施例によれば、R基がC(O)OHまたはSOOH基を含む式I(a)の化合物の調製は、式IVの化合物と、約3当量の式V(a)の化合物(即ち、6モル当量の陰イオン基)および3モル当量の塩基の形の対イオン(即ち、1.5当量のLiCO)とを接触させることを含んでいてもよい。
【0072】
同様に、式I(b2)の化合物は、式IVの化合物と、約1当量の式V(b)の化合物とを接触させることによって、調製される。式I(b1)の化合物の調製は、式IVの化合物と約1当量の式V(b)の化合物とを接触させることに加えて、当量の式V(a)の化合物を接触させることをさらに含む。
【0073】
類似の手法で、式I(c)の化合物は、式IVの化合物と約1当量の式V(c)の化合物とを接触させることによって調製される。
【0074】
一実施形態によれば、式Iの化合物は、下記の化合物:
【化18】
【化19】
(式中、Aは、先に定義された通りである)
から選択される。
【0075】
式IIの方法
別の態様によれば、本発明の記載は、上記にて定義された式IIの化合物を調製するための方法であって、塩基の存在下、式IVの化合物:
M(X’) (IV)
(式中、MおよびX’は、先に定義された通りである)と;
式Vの少なくとも1種の化合物:
RXH (V)
(式中、RおよびXは先に定義された通りであり、2または3個のR基が連結して2または3個のXH基を含む単一化合物を形成してもよい)と
を接触させるステップを含む方法に関する。方法は、約1当量の式IVの化合物、少なくとも4モル当量のXH基に相当する量の式Vの化合物、および少なくとも1モル当量のA陽イオンを含む塩基を接触させることを含む。
【0076】
一実施形態によれば、式Vの化合物(RXH)は、上記にて定義された式V(a)からV(c)から選択される化合物である。
【0077】
一実施形態によれば、方法は、式II(a)、II(b1)、II(b2)およびII(c):
【化20】
(式中、X、M、R、R、nおよびmは、先に定義された通りである)
から選択される式IIの化合物の調製を含む。
【0078】
一実施形態によれば、少なくとも1個のX基は、C(O)OもしくはS(O)O基であり、または少なくとも1個のX基は、S(O)O基である。
【0079】
例えば、式II(a)の化合物の調製は、式IVの化合物と、4当量の式V(a)の化合物とを、1当量の塩基の形態のA陽イオンの存在下で、接触させることを含む。別の実施例によれば、RがCOHまたはSOHを含む式II(a)の化合物の調製は、式IVの化合物と、約4当量の式V(a)の少なくとも1種の化合物(即ち、8モル当量の陰イオン基)およびさらに4モル当量の塩基の形態の陽イオン(例えば、4のLiのために2当量のLiCO)とを接触させることを含んでいてもよい。同様に、式II(a)のR基のうちの1個が1個より多くのCOHまたはSOH基を含む場合、調製は、塩基形態にある陽イオンの、相当する当量数を添加することを含む。
【0080】
同様に、式II(b2)の化合物は、式IVの化合物と、約2当量の式V(b)の化合物とを、1当量の塩基形態のA陽イオンの存在下で接触させることによって調製される。式II(b1)の化合物の調製は、式IVの化合物と約1当量の式V(b)の化合物とを接触させることに加え、2当量の式V(a)の化合物を、1当量の塩基形態のA陽イオンの存在下で接触させることをさらに含む。
【0081】
類似の手法で、式II(c)の化合物は、式IVの化合物と、約1当量の式V(c)の化合物および1当量の式V(a)の化合物とを、塩基形態にある1当量のA陽イオンの存在下で接触させることによって調製される。
【0082】
一実施形態によれば、化合物V(a)からV(c)は、ピナコール、オルタニル酸、スルホ酢酸、スルホ安息香酸、エタノールアミン、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸およびスルホスクシニム酸から選択される。
【0083】
一実施形態によれば、式IIの化合物は、下記の化合物:
【化21】
【化22】
【化23】
(式中、Aは、先に定義された通りである)
から選択される。
【0084】
式IIIの方法
別の態様によれば、本発明の記載は、上記にて定義された式IIIの化合物を調製するための方法であって、式IVの化合物:
M(X’) (IV)
(式中、MおよびX’は、先に定義された通りである)と;
式VIの少なくとも1種の化合物:
XH (VI)
(式中、RおよびXは、先に定義された通りである)と
を接触させるステップを含む方法に関する。
【0085】
一実施形態によれば、少なくとも1個のX基は、C(O)OもしくはS(O)O基であり、または少なくとも1個のX基は、S(O)O基である。
【0086】
方法は、約1当量の式IVの化合物と、少なくとも1モル当量に相当する量の式VIの化合物(即ち、RX:M比が約1である)とを接触させることを含む。方法は、加熱および/または水を除去するステップを含む。例えば、方法は、水と共沸混合物を形成する溶媒(例えば、トルエン)中で化合物を加熱することを含み、加熱は、還流下でDean-Stark型装置を用いて実施される。
【0087】
対イオンを用いてまたは用いずに、式IIIの化合物を調製するために、様々な試薬を、溶媒の存在下で接触させるようにする。好ましくは、溶媒はトルエンである。
【0088】
一実施形態によれば、反応媒体は最初に室温で撹拌され、次いで加熱還流され、反応は、Dean-Stark型アセンブリで実施されて媒体から水が除去されるようになる。反応時間は、主に、媒体に導入された出発材料のそれぞれの反応性、および反応温度に依存する。反応時間は、合計で約1時間から約10時間であってもよく、例えば還流ステップは、2時間から8時間の間で続いてもよい。
【0089】
一実施例では、式IIIの化合物の調製は、式IVの化合物と当量の式VIの化合物とを接触させることを含む。別の実施例では、Rが(XH基に加えて)1個または複数の追加のCOHまたはSOH基を含む式IIIの化合物の調製は、式IVの化合物と、約1当量の式VIの少なくとも1種の化合物、および存在するCOHまたはSOH基のモル当量当たり1モル当量の塩基形態のA陽イオン(例えば、LiCO分子当たりLiは2モル)とを、接触させることを含んでいてもよい。
【0090】
実施形態によれば、式IIIの化合物は、下記の化合物:
【化24】
【化25】
【化26】
(式中、Aは、先に定義された通りである)
から選択される。
【0091】
使用
別の態様によれば、本出願は、液体、ゲルまたは固体電解質組成物中での添加剤もしくは塩としての、記載される化合物の使用も企図する。調製された化合物が、金属塩または有機塩の形態でイオン基を含む場合、これらは電解質中で塩または添加剤として働いてもよく、したがってカソードからアノードへ(およびその逆も同様)のイオンの輸送が可能になる。例えば、形成された化合物は、アルミニウム(カソードの一般的な集電体)の耐熱性、高電圧耐性、耐食性が改善されるように、リチウムイオンバッテリーに添加されてもよく、それによって、バッテリー寿命が改善される。それらは、高い充放電率(電力)でのバッテリーの性能も改善し得る。
【0092】
合成された化合物には、添加剤としての用途があるが、これらの化合物が金属陽イオンを含有する場合には金属塩としての用途もある。これらの構造は、スルホン酸官能基を含み、金属陽イオンを含有し、その存在は電解質組成物に有利である。
【0093】
電解質添加剤としての式I、IIまたはIIIの化合物の使用は、バッテリー寿命を改善させる。例えば、添加剤の添加は、Li/Liに対して5Vまで電気化学的安定性も増大させる。本発明の方法によって調製された、1種または複数の金属陽イオンを含む式I、IIまたはIIIの化合物は、金属塩として単独で、またはそれぞれの有益な性質が組み合わさるように1種もしくは複数の金属塩と混合して使用され(液体溶媒もしくはポリマー溶媒に溶解され)てもよい。
【0094】
式IIIの化合物は、電解質組成物中の添加剤として使用することができるが、これらの化合物が金属陽イオンを含有する場合には金属塩としても使用することができる。
【0095】
本出願に記載される一部の化合物、例えば有機陽イオンを含む塩の形態をとる化合物は、イオン性液体として、単独でまたはその他の塩と組み合わせて使用されてもよい。
【実施例
【0096】
下記の実施例は、例示を目的とするものであり、本出願に記載される本発明の範囲をさらに限定すると解釈すべきではない。
【0097】
(実施例1)
化合物の合成
1.1 化合物A
【化27】
100mLの丸底フラスコに、1モル当量(以下、eq.)のピナコール(80.87mmol)、1eq.のホウ酸(80.87mmol)、およびスパチュラの先端2杯のMgSOを、窒素下で導入する。次いでTHF(50mL)を添加し、媒体を室温(20℃)で2時間30分撹拌させる。混合物を濾過してMgSOを除去し、溶媒を蒸発させる。得られた白色粉末を、一晩、ポンプで乾燥させる。得られた化合物Aの収率は96%(11.17g)である。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ ppm 1.21 (s, 12 H), 5.40 - 5.66 (m, 1 H); 11B NMR (128 MHz, CDCl3) δ ppm 22.4; 13C NMR (101 MHz, CDCl3) δ ppm 24.5, 83.2.
【0098】
1.2 化合物A1
【化28】
100mLの二口丸底フラスコに、1eq.のオルタニル酸(3.29mmol)を導入し、次いで10mLの水を窒素下で添加する。混合物を約50℃で15分間加熱し、オルタニル酸を溶解させる。並行して、ホウ酸水溶液(1eq.、3.29mmol)を、10mLの水中で調製する。次いで溶液を、シリンジを介して二口丸底フラスコにゆっくり導入(滴下)する。次いで溶液を室温(20℃)で66時間維持する。得られた収率は100%(0.655g)である。
1H NMR (400 MHz, D2O) δ ppm 7.32 - 7.37 (m, 1 H). 7,38 - 7.46 (m, 1 H), 7.52 - 7.59 (m, 1 H), 7.83 (m, 1 H); 11B NMR (128 MHz, D2O) δ ppm 19.40.
【0099】
1.3 化合物A2
【化29】
100mLの丸底フラスコに、1eq.のスルホ酢酸(1.53mmol)を導入し、次いで20mLの蒸留したTHF、およびMgSOを導入する。5分後、1eq.のホウ酸(1.53mmol)をフラスコに導入する。混合物を、室温(20℃)で18時間の間、窒素下で維持する。次いで媒体を濾過し、溶媒を蒸発させ、これらは常に窒素雰囲気下のままで行う。一晩、ポンプで乾燥後、白色固体が収率85%(0.215g)で得られる。
1H NMR (400 MHz, THF-d8) δ ppm 3.89 (s, 2 H); 11B NMR (128 MHz, THF-d8) δ ppm 20.25; 13C NMR (101 MHz, THF-d8) δ ppm 55.6, 165.3.
【0100】
1.4 化合物A3
【化30】
100mLの丸底フラスコに、1eq.のスルホスクシニム酸(2.68mmol)、20mLのTHF、およびスパチュラの先端2杯のMgSOを導入する。20分後、1eq.のホウ酸(2.68mmol)を添加する。反応を、室温(20℃)で一晩(18時間)維持する。次いで媒体を濾過してMgSOを排除し、溶媒を蒸発させる。褐色の油が収率91%(0.50g)で得られる。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 2.75 - 2.89 (m, 1 H), 2.92 - 3.04 (m, 1 H), 4.01 - 4.12 (m, 1 H); 11B NMR (128 MHz, DMSO-d6) δ ppm 20.07; 13C NMR (101 MHz, DMSO-d6) δ ppm 32.4, 62.0, 170.9.
【0101】
1.5 化合物A5
【化31】
ホウ酸(1eq.、3.30mmol)およびTHF(15mL)を、100mLの丸底フラスコに導入して、ホウ酸の部分可溶化を得る。次いでスルホ安息香酸(3eq.、9.89mmol)を媒体に添加し、均質な溶液が20分後に得られる。その後、1.5eq.のLiCO(4.95mmol)を添加し、媒体を、可溶化に至るまで30分間撹拌する。次いで媒体を室温(20℃)で4時間保持し、均質な溶液を得る。次いで溶媒を蒸発させ、白色粉末(「混濁」型)が収率98%(2.05g)で得られる。
1H NMR (400 MHz, DMSO) δ ppm 7.26 - 7.34 (m, 6 H), 7.59 - 7.67 (m, 3 H), 7.85 - 7.91 (m, 3 H); 13C NMR (101 MHz, CDCl3) δ ppm 131.8, 134.8, 135.8, 149.1, 173.8.
【0102】
1.6 化合物A6
【化32】
100mLの丸底フラスコに、ホウ酸(1eq.、8.09mmol)を導入し、そこに70mLのTHFを添加する。室温で30分後、スルホ安息香酸(3eq.、24.26mmol)を添加する。次いで反応を室温で3時間保持する。1H-イミダゾール-4,5-ジカルボニトリル(3eq.、24.26mmol)を10mLのTHFに溶かした溶液を、添加する。均質な溶液として残る反応混合物を、2時間の期間、撹拌する。次いでTHFを蒸発させ、白色固体が収率99%(7.790g)で得られる。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 7.46 - 7.58 (m, 6 H), 7.74 (s, 3 H), 7.81 - 7.88 (m, 3 H), 8.30 - 8.32 (m, 3 H); 13C NMR (101 MHz, DMSO-d6) δ ppm 111.6, 115.6, 127.1, 130.2, 131.2, 131.3, 131.5, 142.3, 144.6, 168.2.
【0103】
1.7 化合物A8
【化33】
スルホスクシニム酸(3eq.、10.6mmol)およびMgSOを、100mLの丸底フラスコに導入し、15mLのTHFを添加する。10分後、MgSOを濾過によって排除し、25mLのTHFで濯ぐ。濾液を100mLの丸底フラスコに回収する。ホウ酸(1eq.、3.53mmol)を媒体に添加する。30分後、均質混合物が得られる。次いでLiCO(3eq.、10.6mmol)を添加し、15分撹拌した後、沈殿物が形成される。30分が過ぎた後、中間生成物(粉末と白色油との間)が観察される。反応を、室温(20℃)で20時間維持する。次いで媒体を濾過し、回収された固体を2時間、ポンプ乾燥する。白色粉末が、収率93%(2.140g)で得られる。得られた化合物はDMSO-Dおよびアセトニトリルに不溶であるが、水には可溶である。
1H NMR (400 MHz, D2O) δ ppm 2.77 - 2.97 (m, 6 H), 3.91 - 3.99 (m, 3 H); 11B NMR (128 MHz, D2O) δ 19.4 ppm; 13C NMR (101 MHz, D2O) δ ppm 34.9, 64.2, 172.5, 176.4.
【0104】
1.8 化合物A11
【化34】
100mLの丸底フラスコに、水酸化アルミニウム(1eq.、12.82mmol)および70mLのトルエンを導入して、不均質混合物を形成する。次いでメタンスルホン酸(3eq.、38.46mmol)を添加する。反応を、Dean-Stark型装置を用いる還流下で5時間維持して、形成された水を排除する。溶媒の蒸発および真空下での一晩の乾燥後、白色粉末が収率97%(3.87g)で得られる。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 2.43 (m, 9 H).
【0105】
1.9 化合物A12
【化35】
100mLの丸底フラスコに、水酸化アルミニウム(1eq.、12.82mmol)および70mLのトルエンを導入して、不均質混合物を形成する。次いでスルホ安息香酸(3eq.、38.46mmol)および炭酸リチウム(1.5eq.、19.23mmol)を添加する。反応を、Dean-Stark型装置を使用して還流下で5時間維持して、形成された水を排除する。溶媒の蒸発および真空下での一晩の乾燥後、白色粉末が収率97%(7.80g)で得られる。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 7.33 - 7.42 (m, 6 H), 7.51 - 7.60 (m, 3 H), 7.74 - 7.83 (m, 3 H).
【0106】
1.10 化合物B2
【化36】
スルホ安息香酸(1eq.、9.89mmol)、ホウ酸(1eq.、9.89mmol)、および20mLのTHFを、窒素雰囲気下で100mLの丸底フラスコに導入する。媒体を約15分間撹拌して固形分を可溶化する。次いでエタノールアミン(1eq.、9.89mmol)をCHClに溶かした溶液を添加し、白色沈殿物が形成される。次いでLiCO(0.5eq.、4.95mmol)を媒体に添加し、反応を室温(20℃)で5時間維持する。次いで白色油状固体を濾過し、CHClを用いて磨り潰す(2×15mL)。ポンプで一晩(18時間)乾燥した後、白色固体が定量的収率(2.740g)で得られる。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 2.85 (m, 2 H), 3.59 (m, 2 H), 7.34 (m, 2 H), 7.40 (m, 1 H), 7.76 (m, 1 H); 11B NMR (128 MHz, DMSO-d6) δ ppm 1.46, 1.34; 13C NMR (101 MHz, DMSO-d6) δ ppm 41.8, 58.2, 127.0, 127.5, 128.9, 129.5, 142.8, 172.8.
【0107】
1.11 化合物B6
【化37】
先にMgSOで乾燥させたスルホ安息香酸(2eq.、4.94mmol)および20mLのTHFを、丸底フラスコに導入する。次いで1eq.のホウ酸(2.97mmol)を添加し、次いでその後、10mLのCHCl・LiCO(0.5eq.、1.48mmol)を反応媒体に添加し、次いでこれを室温(20℃)で一晩(18時間)維持する。得られた生成物は、空気の湿度に非常に敏感である。媒体の濾過および溶媒の蒸発後、化合物が収率97%(1.2g)で得られる。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 7.47 - 7.58 (m, 4 H), 7.73 - 7.78 (m, 2 H), 7.81 - 7.87 (m, 2 H); 13C NMR (101 MHz, DMSO-d6) δ ppm 126.6, 129.7, 130.6, 130.9, 131.2, 144.3, 167.6.
【0108】
1.12 化合物B8
【化38】
100mLの丸底フラスコに、ホウ酸(1eq.、8.09mmol)を導入し、そこに70mLのTHFを添加する。室温で30分後、スルホ安息香酸(2eq.、16.17mmol)を添加する。反応物を、室温で3時間保持する。1H-イミダゾール-4,5-ジカルボニトリル(1eq.、8.09mmol)を10mLのTHFに溶かした溶液を添加し、混合物を2時間撹拌する。次いでTHFを蒸発させる。白色固体が定量的収率(4.20g)で得られる。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 7.47 - 7.59 (m, 4 H), 7.75 (dd, J=7.58, 1.47 Hz, 2 H), 7.84 (dd, J=7.70, 1.34 Hz, 2 H), 8.31 (s, 1 H).
【0109】
1.13 化合物B10
【化39】
スルホスクシニム酸(1eq.、3.85mmol)、20mLのTHF、およびMgSOを、丸底フラスコに窒素雰囲気下で導入する。15分後、ホウ酸(1eq.、3.85mmol)を導入する。媒体を室温(20℃)で一晩(18時間)維持する。次いで媒体を濾過してMgSOを除去し、溶媒を蒸発させる。中間化合物は不溶性であり、10mLのCHClを媒体に添加する。メタンスルホン酸(1eq.、3.85mmol)を5mLのCHClおよび5mLのTHFに溶かした溶液を調製し、媒体に添加した後、LiCO(0.5eq.)を添加する。4時間反応させた後、沈殿物を濾過し、次いで一晩、ポンプで乾燥する。白色粉末が収率98%(1.1g)で得られる。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 2.33 (s, 3 H), 2.61 - 2.72 (m, 1 H), 2.74 - 2.87 (m, 1 H), 3.59 (m, 1 H); 13C NMR (101 MHz, DMSO-d6) δ ppm 33.4, 60.9, 167.0, 172.2.
【0110】
1.14 化合物B11
【化40】
250mLの丸底フラスコに、ホウ酸(1eq.)および70mLのTHFを導入し、次いでスルホスクシニム酸(1eq.)およびMgSOを添加する。反応を、室温で2時間保持する。次いでMgSOを濾過する。メタンスルホン酸(1eq.)を添加し、反応を室温で2時間継続する。次いでトリプロピルアミン(1eq.)を添加する。合計で6時間の反応後、溶媒を蒸発させる。固体が収率97%(3.70g)で得られる。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 0.91 (t, J=7.40 Hz, 9 H), 1.57 - 1.69 (m, 6 H), 2.42 (s, 3 H), 2.60 - 2.73 (m, 1 H), 2.61 - 2.87 (m, 1 H), 2.94 - 3.08 (m, 6 H), 3.59 (m, 1 H); 13C NMR (101 MHz, DMSO-d6) δ ppm 11.3, 17.1, 25.6, 34.4, 40.1, 54.0, 62.1, 67.5, 170.0, 173.2
【0111】
1.15 化合物B14
【化41】
エタノールアミン(1eq.、2.66mmol)、20mLのTHF、およびホウ酸(1eq.、2.66mmol)を、100mLの丸底フラスコに続けて導入する。混合物を室温(20℃)で2時間保持し、溶媒を蒸発させる。次いでCHCl(10mL)を媒体に添加する。メタンスルホン酸(2eq.、0.33mmol)をCHCl(5mL)およびTHF(5mL)に溶かした溶液を、混合物に添加し、その後、LiCO(0.5eq.、1.33mmol)を添加する。一晩(18時間)後、沈殿物を濾過し、一晩ポンプ乾燥する。白色粉末が、定量的収率(1.42g)で得られる。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 2.36 (s, 6 H), 2.80 - 2.91 (m, 2 H), 3.53 - 3.66 (m, 2 H); 11B NMR (128 MHz, DMSO-d6) δ ppm 5.34.
【0112】
1.16 化合物B18
【化42】
スルホ安息香酸(1eq.、4.95mmol)、20mLのTHFおよびMgSOを、窒素雰囲気下で丸底フラスコに導入する。15分後、ホウ酸(1eq.、4.95mmol)を導入する。媒体を室温(20℃)で一晩(22時間)保持する。次いで媒体を濾過してMgSOを排除し、溶媒を蒸発させる。中間化合物は不溶であり、10mLのCHClを媒体に添加する。メタンスルホン酸(3eq.、14.85mmol)を、5mLのCHClおよび5mLのTHFに溶かした溶液を調製し、媒体に添加し、その後、LiCO(0.5eq.)を添加する。媒体を、室温(20℃)で22時間維持する。濾過およびポンプ乾燥後、白色粉末が収率88%で得られる。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 2.32 - 2.37 (m, 9 H), 7.47 - 7.59 (m, 2 H), 7.73 - 7.78 (m, 1 H), 7.82 - 7.86 (m, 1 H); 11B NMR (128 MHz, DMSO-d6) δ ppm 19.55; 13C NMR (101 MHz, DMSO-d6) δ ppm 40.1, 127.0, 130.2, 131.1, 131.3, 131.6, 144.7, 168.2.
【0113】
1.17 化合物B23
【化43】
100mLの丸底フラスコに、ホウ酸(1eq.、5.20mmol)を導入し、そこに70mLのTHFを添加する。室温で30分後、メタンスルホン酸(4eq.、20.81mmol)を添加する。媒体を室温で2時間保持する。トリプロピルアミン(1eq.、5.20mmol)を10mLのTHFに溶かした溶液を、混合物に添加し、これを2時間撹拌する。次いでTHFを蒸発させる。僅かに褐色の油が収率99%(2.75g)で得られる。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 0.71 - 0.85 (m, 9 H), 1.42 - 1.56 (m, 6 H), 2.34 (s, 12 H), 2.70 - 2.96 (m, 6 H); 13C NMR (101 MHz, DMSO-d6) δ ppm 11.3, 17.0, 40.1, 54.0.
【0114】
1.18 化合物B25
【化44】
100mLの丸底フラスコに、水酸化アルミニウム(1eq.、12.82mmol)および70mLのトルエンを添加する。次いでメタンスルホン酸(4eq.、51.28mmol)および炭酸リチウム(0.5eq.、6.41mmol)を添加する。得られた混合物は不均質であり、気体の発生は観察されない。反応を、Dean-Stark型装置を使用して還流下で5時間維持する。溶媒の蒸発および真空下で一晩の乾燥後、白色粉末が収率98%(5.22g)で得られる。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 2.39 (s, 12 H).
【0115】
1.19 化合物C2
【化45】
ホウ酸(3eq.、4.95mmol)、スルホ安息香酸(3eq.、4.95mmol)、およびトルエン60mLを、Dean-Stark型装置を備えた100mLの丸底フラスコに続けて導入する。次いでLiCO(1.5eq.、2.47mmol)を添加し、気体の発生がもたらされる。30分後、混合物を5時間還流し、白色沈殿物が形成される。室温に戻した後、上澄みを濾過によって除去し、生成物を3時間、真空下で乾燥する。白色粉末が、収率96%(1.1g)で得られる。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 7.46 - 7.57 (m, 6 H), 7.71 - 7.77 (m, 3 H), 7.82 - 7.87 (m, 3 H); 11B NMR (128 MHz, DMSO-d6) δ ppm 1.41; 13C NMR (101 MHz, DMSO-d6) δ ppm 127.1, 130.2, 131.1, 131.4, 144.6.
【0116】
1.20 化合物C3
【化46】
100mLの丸底フラスコに、ホウ酸(3eq.、16.17mmol)を導入し、そこに70mLのトルエンを添加する。室温で30分後、スルホ安息香酸(3eq.、16.17mmol)および1H-イミダゾール-4,5-ジカルボニトリル(3eq.、16.17mmol)を添加する。次いでアセンブリの頂部にDean-Stark型装置を設ける。混合物を還流下で5時間加熱した後、トルエンを蒸発させ、白色固体が収率99%(5.50g)で得られる。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 7.46 - 7.61 (m, 6 H), 7.72 - 7.80 (m, 3 H), 7.81 - 7.88 (m, 3 H), 8.32 (s, 3 H).
【0117】
1.21 化合物C5
【化47】
ホウ酸(1eq.、7.07mmol)、スルホスクシニム酸(1eq.、7.07mmol)、およびトルエン60mLを、Dean-Starkを備えた100mLの丸底フラスコに導入する。次いでLiCO(1eq.、7.07mmol)を添加し、気体の発生がもたらされる。30分後、混合物を5時間還流し、白色沈殿物が形成される。室温に戻した後、上澄みを濾過によって除去し、生成物を真空下で3時間乾燥する。粉末が、収率92%(1.525g)で得られる。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 2.62 - 2.72 (m, 3 H), 2.82 - 2.72 (m, 3 H), 3.45 - 3.64 (m, 3 H); 11B NMR (128 MHz, DMSO-d6) δ ppm 1.39; 13C NMR (101 MHz, DMSO-d6) δ ppm 35.1, 63.1, 171.5, 173.7.
【0118】
1.22 化合物C7
【化48】
ホウ酸(3eq.、5.28mmol)、トルエン60mL、スルホ酢酸(3eq.、5.28mmol)、およびLiCO(1.5eq.、2.64mmol)を、Dean-Starkを備えた100mLの丸底フラスコに続けて導入する。媒体を室温で2時間保持し、次いで5時間還流する。室温に戻した後、沈殿物が観察される。上澄みを濾過によって除去し、生成物を3時間、真空下で乾燥する。白色粉末が、収率99%(0.9g)で得られる。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 3.41 (s, 6 H); 11B NMR (128 MHz, DMSO-d6) δ ppm 1.40; 13C NMR (101 MHz, DMSO-d6) δ ppm 57.5, 167.9.
【0119】
1.23 化合物C9
【化49】
ホウ酸(3eq.、16.17mmol)、およびトルエン60mL、次いでスルホスクシニム酸(1eq.、5.39mmol)、メタンスルホン酸(2eq.、10.78mmol)、およびLiCO(1eq.、2.70mmol)を、Dean-Starkを備えた100mLの丸底フラスコに続けて導入する。反応媒体を室温で2時間保持し、次いで5時間還流する。室温に戻した後、沈殿物が観察される。次いで上澄みを濾過によって除去し、生成物を、真空下で3時間乾燥する。白色粉末が、収率95%(2.45g)で得られる。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 2.39 (s, 6 H), 2.61 - 2.73 (m, 1 H), 2.74 - 2.86 (m, 1 H), 3.54 - 3.67 (m, 1 H); 11B NMR (128 MHz, DMSO-d6) δ ppm 2.73; 13C NMR (101 MHz, DMSO-d6) δ ppm 34.5, 40.2, 62.0, 170.1, 173.3.
【0120】
1.24 化合物C10
【化50】
ホウ酸(1eq.、16.17mmol)、トルエン60mL、およびメタンスルホン酸(1eq.、16.17mmol)を、Dean-Starkを備えた100mLの丸底フラスコに続けて導入する。混合物を5時間還流する。黄色の沈殿物が形成される。室温に戻した後、上澄みを濾過によって除去し、生成物を、真空下で3時間乾燥する。黄色固体が、収率81%(1.60g)で得られる。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 2.46 (s, 9 H); 11B NMR (128 MHz, DMSO-d6) δ ppm 2.96; 13C NMR (101 MHz, DMSO-d6) δ ppm 40.2.
【0121】
1.25 化合物C11
【化51】
ホウ酸(3eq.、16.17mmol)、トルエン60mL、次いで続けてメタンスルホン酸(2eq.、10.78mmol)、およびトリフルオロメタンスルホン酸(1eq.、5.39mmol)を、Dean-Starkを備えた100mLの丸底フラスコに導入する。混合物を室温で2時間保持し、次いで5時間還流する。黄色の沈殿物が形成される。室温に戻した後、上澄みを濾過によって除去し、生成物を、真空下で3時間乾燥する。黄色固体が収率88%(2.00g)で得られる。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 2.52 (s, 6 H); 11B NMR (128 MHz, DMSO-d6) δ ppm 2.63; 19F NMR (376 MHz, DMSO-d6) δ ppm -77.81; 13C NMR (101 MHz, DMSO-d6) δ ppm 40.1.
【0122】
1.26 化合物C12
【化52】
ホウ酸(3eq.、16.17mmol)、トルエン60mL、次いで続けてメタンスルホン酸(1eq.、5.39mmol)、およびトリフルオロメタンスルホン酸(2eq.、10.78mmol)を、Dean-Starkを備えた100mLの丸底フラスコに導入する。混合物を室温で2時間保持し、次いで5時間還流する。室温に戻した後、上澄みを濾過によって除去し、得られた固体を、真空下で3時間乾燥する。黄色固体が収率67%(1.70g)で得られる。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 2.47 (s, 3 H); 11B NMR (128 MHz, DMSO-d6) δ ppm 2.95; 19F NMR (376 MHz, DMSO-d6) δ ppm -77.81; 13C NMR (101 MHz, DMSO-d6) δ ppm 40.2.
【0123】
1.27 化合物C13
【化53】
ホウ酸(16.17mmol)、トルエン60mL、およびトリフルオロメタンスルホン酸(16.17mmol)を、Dean-Starkを備えた100mLの丸底フラスコに導入する。混合物を室温で2時間保持し、次いで4時間還流する。黄色の沈殿物が形成される。室温に戻した後、上澄みを濾過によって除去し、生成物を、真空下で3時間乾燥する。黄色固体が収率84%(2.39g)で得られる。
11B NMR (128 MHz, DMSO-d6) δ ppm 2.96; 19F NMR (376 MHz, DMSO-d6) δ ppm -77.80; 13C NMR (101 MHz, DMSO-d6) δ ppm 121.1.
【0124】
1.28 化合物C14
【化54】
p-トルエンスルホン酸(16.17mmol)、ホウ酸(16.17mmol)、およびトルエン60mLを、Dean-Starkを備えた100mLの丸底フラスコに導入する。混合物を5時間還流する。褐色の沈殿物が形成される。室温に戻した後、上澄みを濾過によって除去し、生成物を3時間、真空下で乾燥する。褐色粉末が収率98%(3.10g)で得られる。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 2.30 (s, 9 H), 7.04 - 7.34 (m, 6 H), 7.51 (d, J=8.07 Hz, 6 H); 11B NMR (128 MHz, DMSO-d6) δ ppm 2.89; 13C NMR (101 MHz, DMSO-d6) δ ppm 21.3, 125.9, 128.7, 138.7, 145.3.
【0125】
1.29 化合物C15
【化55】
100mLの丸底フラスコに、水酸化アルミニウム(3eq.、25.64mmol)および70mLのトルエンを導入する。次いでメタンスルホン酸(3eq.、25.64mmol)を添加し、反応を、Dean-Stark型装置を使用して5時間、還流下で維持する。溶媒を蒸発させ真空下で一晩乾燥した後、白色粉末が収率99%(3.50g)で得られる。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 2.35 (s, 9 H).
【0126】
1.30 化合物C16
【化56】
Dean-Stark型装置を備えた100mLの丸底フラスコに、水酸化アルミニウム(3eq.、25.64mmol)および70mLのトルエンを導入する。次いでスルホ安息香酸(3eq.、25.64mmol)および炭酸リチウム(1.5eq.、12.82mmol)を添加する。反応を、還流下で5時間維持する。溶媒を蒸発させ真空下で一晩乾燥した後、白色粉末が収率97%(6.21g)で得られる。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 7.38 - 7.48 (m, 6 H) 7.57 - 7.70 (m, 3 H) 7.75 - 7.86 (m, 3 H).
【0127】
(実施例2)
ポリマーマトリックス中の溶解度
本出願によるホウ素含有化合物の溶解度は、ポリマー中で評価されるが、その目的は、これらホウ素含有化合物に関して、溶媒(固体)としてのポリマーの使用を評価することである。次いでリチウムを含有するいくつかのホウ素をベースにした塩の溶解度を試験する。ホウ素塩は、その場合、電解質添加剤として働かず、リチウム塩として働く。試験をした3種の化合物(下記参照)は、研究されたポリマーに可溶であることがわかった。
【0128】
この研究でマトリックスとして使用されるポリマー(図1参照)は、ポリマー電解質において通常使用されるポリマーの例である。試験をしたポリマーは、ポリエチレングリコールアクリレートマクロモノマーから作製されたホモポリマー、ならびにポリ(エチレングリコール)(伝導度のため)およびポリスチレン(PS、機械的強度のため)のコポリマーを含む。これらのポリマーは、制御されたラジカル重合により、実験室で合成される。PAcrPEG480(図1b参照、以後、P.I)は、AcrPEG480マクロモノマー(図1a参照、M=480g/mol)から合成されたホモポリマーであり、それに対してPAcrPEG480-b-PSジブロックコポリマー(図1c参照、以後、P.II)は、ここではマクロ開始剤として使用されるPAcrPEG480およびポリスチレンから合成される。
【0129】
ポリマーの特性を、プロトンNMR分光法によって決定し、表1に列挙する。
【表1】
【0130】
ポリマー電解質をベースにした溶液を、アルゴン雰囲気下にてグローブボックス内で調製する。グローブボックス内に配置する前に、ポリマーを凍結乾燥し、次いで70℃で少なくとも48時間、真空下で乾燥して、水を残らず排除する。ポリマー電解質溶液を調製するのに使用されるDMSO溶媒は、無水物で高純度(Ar下で99.8+%)のものであり、モレキュラーシーブ上に配置する。5mLのバイアルに、ポリマー(P.IまたはP.II、表1参照)、塩、および溶媒を導入する。混合物を、40℃で、最短で72時間撹拌させる。溶液中のポリマーの重量濃度を、約11~12%に設定する。ポリマー、塩および溶媒の量を、表2から6に示す。これらの量は、リチウムイオンに対するエチレンオキシド単位の種々の比:[EO]/[Li]に相当する。
【0131】
LiTFSIをベースにしたポリマー電解質(比較)の場合、従うべき手順は、特に使用される溶媒が異なり、ここではTHFである。使用されるTHFを、ナトリウムおよびベンゾフェノン上でかつ不活性雰囲気下で事前に蒸留する。次いでモレキュラーシーブ上に配置し、その後、グローブボックスに導入する。溶液を調製したら、それを室温で少なくとも24時間撹拌する。ポリマーの重量濃度を約17%に設定する。ポリマー、塩および溶媒の量を表6に示す。これらの量は、リチウムイオンに対するエチレンオキシド単位の種々の比:[EO]/[Li]に相当する。
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【0132】
試験がなされた3種のホウ素含有化合物A5、C2およびC5は、P.IおよびP.IIに可溶である。比較の目的で、ポリマー電解質中で通常使用される塩であるLiTFSI塩をベースにしたポリマー電解質も、ポリマーP.IおよびP.II中で調製した。これらに関する結果を表6に提示する。
【0133】
(実施例3)
電解質組成物の調製
化合物B2、C10、C11、C12およびC13を、0.5wt%の濃度で含む組成物を、LiPFを炭酸エチレンおよび炭酸ジエチル(EC/DEC、3/7(v/v))に溶かした1M溶液中で調製した。同じ炭酸エステル混合物中に添加剤なしでのLiPFまたはLiTFSIの1M濃度の組成物も、比較の目的で調製した。これらの電解質組成物を、以下の実施例で使用する。
【0134】
(実施例4)
電気化学的評価
4.1 アルミニウム腐食試験
この試験は、本発明の化合物を含む電解質溶液がアルミニウム(従来のカソード集電体)を腐食しないことを、検証する働きをする。得られた結果を、ビス(スルホニル)イミド基を含むLiTFSI塩を含む組成物と比較する。さらに、この塩は、アルミニウムが集電体として使用されるときにアルミニウムを腐食することが公知である。
【0135】
アルミニウムコイン半電池の調製:
大型セルキャップにおいて、半電池素子を以下の順で配置構成する:
- ステンレス鋼0.5mmスペーサー
- 試験がなされる電極(アルミニウムディスク)
- セパレーター(Celgard)
- 電解質(200μL)
- ジョイント
- Li金属ディスク
- ステンレス鋼1mmスペーサー
- ばね
【0136】
次いで半電池を、小型セルキャップを使用して密閉し、固定する。次いで半電池をエタノールで清浄化して、電解質の溢流を除去する。
【0137】
電気化学試験:
半電池を、VMP3型サイクラーを使用して試験する。添加剤として使用される化合物によるアルミニウムの腐食を検証するために、4.4Vの電位をコインセルに1時間印加することによって、クロノアンペロメトリーを使用して評価を行う。結果を図2に示す。試験をした化合物を、LiPFへの添加剤として評価する。LiPFおよびLiTFSI塩を単独で試験して、それらの結果を、新しく合成された添加剤を含む電解質で得られた結果と比較する。実際に、LiPFは、LiTFSIとは異なってアルミニウムを腐食しないことが公知である。実施された試験は、LiPFによるアルミニウムの非腐食とLiTFSIによるその腐食とを確認する。試験は、LiPF添加剤として試験された化合物がアルミニウムを腐食しないことも実証する。
【0138】
4.2 半電池対リチウムの評価
大型セルキャップにおいて、半電池素子を以下の順で配置構成する:
- ステンレス鋼0.5mmスペーサー
- 試験がなされる電極(カソードまたはアノード)
- セパレーターCelgard 3501(商標)
- 実施例3による電解質(200μL)
- ジョイント
- Li金属ディスク
- ステンレス鋼1mmスペーサー
- ばね
【0139】
次いで半電池を、小型セルキャップを使用して密閉し、固定する。次いで半電池をエタノールで清浄化し、電解質の溢流を除去する。半電池を2時間含浸させ、その後、電気化学試験を開始する。
【0140】
コイン半電池NMC-Li
半電池を、化合物C10およびC13が添加剤として使用される実施例3により調製された電解質を使用して、上記のように組み立てる。比較の目的で、半電池を、添加剤なしでLiPFを含有する電解質からも調製し(実施例3参照)、同じ条件下で評価した。
【0141】
半電池で使用される電極は、下記のものである:
- カソード:LiNi1/3Mn1/3Co1/3(NMC):カーボンブラック(デンカ):VGCF-H(昭和電工):PVDF(クレハKF-7305(商標))を89:3:3:5の重量比で、ローラーからインク転写型の方法により工業用アプリケーター上で塗り拡げる(電荷密度=0.9mAh/cm
- アノード:金属リチウム
- 電位範囲:3~4.4V
【0142】
電気化学試験:
半電池を、VMP(商標)型ポテンショスタット/ガルバノスタットを使用して、25℃(恒温槽)で試験する。次いで2サイクル形成を実施し、1つのサイクルは以下の記載に対応する:
- 3Vから4.4Vの間で24時間充電(C/24)
- 4.4Vから3Vの間で24時間放電(D/24)
- セルが形成されると(2サイクル)安定し始める
【0143】
下記の安定性サイクルを、安定性サイクルの1回目の放電の終わりに回復した場合と比較して容量が20%損失するまで繰り返す:
- 3Vから4.4Vの間で4時間の充電(C/4)
- 10秒の休止期間
- 4.4Vから3Vの間で1時間放電(D)
- 10秒の休止期間
【0144】
得られた結果を図3に報告する。バッテリーの寿命の終わりが、安定性サイクルの1回目の放電の終わりで回復した容量の20%を失ったときと見なされる場合、僅か0.5%のC10またはC13添加剤を添加することにより、添加剤なしでの約190サイクルから添加剤を添加したときの340サイクルまで、バッテリー寿命を約1.8倍改善することができる。
【0145】
4.3 リチウムイオンバッテリーの評価
次いで化合物C10およびC13を、リチウムイオンバッテリーで使用される電解質組成物中の添加剤として評価する。LiMn3/2Ni1/2(LMN)を、カソード活物質として使用する。アノード活物質はLiTi12(LTO)であり、これはバッテリーサイクリング中の制限実体である。
【0146】
カソードは、下記の素子:LMN、カーボンブラック、VGCF-HおよびPVDFを、89:3:3:5の重量比で含む(電荷密度:0.9mAh/cm)。アノードは、同じ重量比で、素子:LTO、カーボンブラック、VGCF-HおよびPVDFを含む(電荷密度:0.95mAh/cm)。
【0147】
使用される電解質を、実施例3で記載した手順により調製し、使用されるセパレーターは、セラミックコーティングを備えたCelgard(商標)Q20S1HXセパレーターである。添加剤なしのEC/DEC(3:7、v/v)中での1MのLiPF溶液を使用するバッテリーも、比較のため評価する。
【0148】
次いでバッテリーを、25℃で、2から3.4Vのサイクリング範囲でサイクルさせる。バッテリーの形成は、最初に3回のC/24~C/24サイクルで行う。次いでバッテリーの安定性を、C/4サイクリングにより試験する。得られた結果を図4に示す。これらの結果は、添加剤0.5wt%の添加が、バッテリーの寿命を著しく改善することを実証する。実際に、添加剤がないと、容量は、僅か160サイクル後に20%減少する。比較では、僅か0.5%のC10またはC13添加剤を、EC/DEC(3:7)中での1MのLiPF溶液中に含む電解質組成物を使用する場合、200サイクルを超えた後に僅か5%の容量減少が観察される。
【0149】
まとめると、本出願は、容量および質量密度を得るために高電圧カソード材料の使用を可能にする化合物について記載している。実際、電圧4.4Vは、1/3 1/3 1/3型のNMCカソード(通常は4.2Vのみまでサイクルされる)に関して高電圧と見なされる。添加剤の量および選択は、使用される材料に応じて調節し、最適化し、または適合させることができた。
【0150】
これらの新しい添加剤に関して、添加される最適な量は、さらにより著しくバッテリーの寿命がさらに改善されるように、調節され得る。例えば、4.9Vまでのサイクリングを可能にする、本明細書でも評価されるLMNなどの非常に高電圧のカソード材料を、使用することができる。したがって、これらの新しい添加剤を高電圧システムで使用することは興味深い。
【0151】
黒鉛およびLTOなど(本明細書でも評価される)のその他の標準的なアノード材料を使用してもよい。本発明の記載は、これらのアノード材料に対する本発明の添加剤の良好な適合性も確認する。
【0152】
数多くの修正を、本発明の範囲から逸脱することなく、上述の実施形態のいずれかに行うことができる。本出願で言及される任意の参考文献、特許または科学文献資料は、参照によりその全体が全ての目的で本明細書に組み込まれる。
本発明の好ましい実施形態によれば、例えば、以下が提供される。
(項1)
式IもしくはIIの化合物、および/またはそれらの塩
【化57】

[式中、
Mは、元素周期表の13欄(IIIA族)の元素から選択される原子、例えばホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウムもしくはタリウム原子、例えばホウ素、アルミニウム、ガリウムもしくはインジウム原子、またはホウ素もしくはアルミニウム原子であり、
Xは、O、S、NH、NR、またはC(O)OもしくはS(O) O基から独立して選択され、前記基は、酸素原子によってMに結合され、
Rは、置換もしくは非置換の直鎖状もしくは分枝状アルキル、シクロアルキルおよびアリール基から独立して選択されるか、または2個もしくは3個のR基が、それに結合しているXラジカルと一緒になって、Mを含めて5員から7員の環を形成し、もしくはMを含めて7員から10員を有する二環式基を形成し、かつ/または最大で1個のXRがヒドロキシル基であり、
は、金属陽イオンまたは有機塩基の陽イオンであり、分子の残部に対するA の合計モル比は電気的中性を達成するよう調節される]。
(項2)
が、金属陽イオンであり、例えば元素Li、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Zn、Cu、Sc、Y、Fe、Co、Ni、Ti、Sn、V、CrおよびMnの陽イオンから選択される、上記項1に記載の化合物。
(項3)
が、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の陽イオン(Li 、Na 、K 、Rb 、Cs 、Be 2+ 、Mg 2+ 、Ca 2+ 、Sr 2+ 、およびBa 2+ )であり、例えばA がLi である、上記項1に記載の化合物。
(項4)
が、アンモニウム、アルキルアンモニウム、ジアルキルアンモニウム、トリアルキルアンモニウム、テトラアルキルアンモニウム、トリアリールアンモニウム、トリシクロアルキルアンモニウム、テトラシクロアルキルアンモニウム、イミダゾリウム、1,3-ジアルキルイミダゾリウム、4,5-ジシアノイミダゾリウム、N-アルキルピロリジニウム、N-アルキルピペリジニウム、オキソニウム、トリアルキルオキソニウム、スルホニウム、トリアルキルスルホニウム、トリアリールスルホニウム、トリシクロアルキルスルホニウム、ホスホニウム、テトラアルキルホスホニウム、テトラアリールホスホニウム、テトラシクロアルキルホスホニウム、トリアルキルホスホニウム、トリアリールホスホニウム、トリシクロアルキルホスホニウム、トリアルキルセレン、およびテトラアルキルアルソニウム陽イオンから選択される、上記項1に記載の化合物。
(項5)
が、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、N-アルキルピロリジン、N-アルキルモルホリン、N-メチルイミダゾール、4,5-ジシアノイミダゾール、ピリジン、ピコリン、ルチジン、キノリン、N,N-ジメチルアニリン、ジイソプロピルエチルアミン、キヌクリジン、およびトリメチルホスフィンから選択される有機塩基の陽イオンである、上記項1に記載の化合物。
(項6)
式I(a)、I(b1)、I(b2)およびI(c)の化合物、ならびに/またはそれ
らの塩
【化58】

[式中、X、Mは先に定義された通りであり、
は、直鎖状または分枝状アルキル、シクロアルキルおよびアリールから選択される、置換または非置換の基であり、
は、出現するごとに独立して、水素、ハロゲン、ならびに置換もしくは非置換の直鎖状もしくは分枝状アルキル、シクロアルキルおよびアリール基から選択されるか、またはR 基は、それらの隣接する炭素原子と組み合わされて、単環式もしくは二環式のシクロアルキルもしくはアリールを形成し、出現するごとにXがOまたはNHである場合、nは1とは異なり、
nは、1、2、3および4から選択される整数であり、
mは、0、1および2から選択される整数である]
から選択される、上記項1に記載の化合物。
(項7)
式II(a)、II(b1)、II(b2)およびII(c)の化合物、ならびに/またはそれらの塩
【化59】

[式中、X、M、R 、R 、A 、nおよびmは、先に定義された通りである]
から選択される、上記項1に記載の化合物。
(項8)
式IIIの化合物、および/またはその塩
【化60】

[式中、MおよびXは、先に定義された通りであり、
は、独立して、置換または非置換の直鎖状または分枝状アルキル、シクロアルキルおよびアリール基から選択される]。
(項9)
少なくとも1個のX基が、C(O)OまたはS(O) O基である、上記項1から8のいずれか一項に記載の化合物。
(項10)
少なくとも1個のX基が、S(O) O基である、上記項9に記載の化合物。
(項11)
Mに連結される全てのX基が、S(O) O基である、上記項10に記載の化合物。
(項12)
Mがホウ素原子である、上記項1から11のいずれか一項に記載の化合物。
(項13)
Mがアルミニウム原子である、上記項1から11のいずれか一項に記載の化合物。
(項14)
Mがガリウム原子である、上記項1から11のいずれか一項に記載の化合物。
(項15)
Mがインジウム原子である、上記項1から11のいずれか一項に記載の化合物。
(項16)
【化61】

【化62】

[式中、A は先に定義された通りである]
から選択される、上記項1に記載の化合物。
(項17)
【化63】

【化64】

【化65】

[式中、A は先に定義された通りである]
から選択される、上記項1に記載の化合物。
(項18)
【化66】

【化67】
【化68】

[式中、A は先に定義された通りである]
から選択される、上記項8に記載の化合物。
(項19)
式IVの化合物:
M(X’) (IV)
[式中、Mは先に定義された通りであり、X’は、水素、OH、ハロゲン(例えば、F、Cl、Br)、C ~C アルキル、O-C ~C アルキル(例えば、OMe、OEt、Oi-Pr)、C ~C アルキルカルボキシレート、スルフェート、ホスフェートから選択される]、または式IVの化合物の塩(例えば、B(OH) 、BH 、NaBH 、LiBH 、BBr 、BCl 、BF 、BMe 、BEt 、B(i-Pr) 、B(OMe) 、LiBF 、Al(OH) 、AlBr 、AlCl 、Al(OMe) 、Al(OEt) Al(Oi-Pr) 、Al(OC(O)C 、Al(OC(O)CH(CH 、Al(OC(O)CH 、AlPO 、Al (SO 、AlMe 、AlEt 、Al(i-Pr) 、LiAlH およびLiAlCl )と、
少なくとも1種の式Vの化合物:
RXH (V)
[式中、RおよびXは先に定義された通りであり、2または3個のR基が連結して2または3個のXH基を含む単一化合物を形成してもよい]
とを接触させるステップを含む、上記項1に記載の化合物を調製するための方法。
(項20)
約1当量の前記式IVの化合物と、2または3モル当量のXH基に相当する量の前記式Vの化合物とを接触させることを含み、官能基を中和するXH基と塩を形成するための塩基の存在は計算から除外される、上記項19に記載の方法。
(項21)
前記式Vの化合物(RXH)が、式V(a)からV(c)
【化69】

[式中、X、n、m、R およびR は、上記項6で定義された通りである]
から選択される化合物である、上記項19または20に記載の方法。
(項22)
が、OH、NH 、N(R )H、N(R 、CO HおよびSO Hから選択される少なくとも1個の基で置換されたアルキル、シクロアルキルもしくはアリール、または適用可能な場合にはそれらの塩であり、R が、必要に応じて置換されたアルキル、シクロアルキルまたはアリール基から選択される、上記項21に記載の方法。
(項23)
が、CO HおよびSO Hから選択される少なくとも1個の基で置換されたアルキル、シクロアルキルもしくはアリール、またはCO もしくはSO 陰イオンおよびA 陽イオンで形成された塩であり、A は先に定義された通りである、上記項21に記載の方法。
(項24)
が、置換または非置換アルキルおよびフェニル基から選択され、例えばメチル、トリフルオロメチル、カルボキシフェニル、カルボキシアルキルおよびジカルボキシアルキル基である、上記項21に記載の方法。
(項25)
が、出現するごとに水素原子である、上記項21に記載の方法。
(項26)
前記化合物が、式V(b)の化合物であり、nは2に等しく、R 基は、それに結合している炭素原子と一緒になってアリール基を形成する、上記項21に記載の方法。
(項27)
前記式Vの化合物が、ピナコール、オルタニル酸、スルホ酢酸、スルホ安息香酸、エタノールアミン、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸およびスルホスクシニム酸から選択される、上記項19に記載の方法。
(項28)
前記方法が、式I(a)の化合物を調製することを含み、式I(a)の化合物の調製は、前記式IVの化合物と、約3モル当量の式V(a)の化合物とを接触させることを含む、上記項19から27のいずれか一項に記載の方法。
(項29)
前記方法が、式I(b1)の化合物を調製することを含み、式I(b1)の化合物の調製は、前記式IVの化合物と、約1モル当量の式V(a)の化合物および約1モル当量の式V(b)の化合物とを接触させることを含む、上記項19から27のいずれか一項に記載の方法。
(項30)
前記方法が、式I(b2)の化合物を調製することを含み、式I(b2)の化合物の調製は、前記式IVの化合物と、約1モル当量の式V(b)の化合物とを接触させることを含む、上記項19から27のいずれか一項に記載の方法。
(項31)
前記方法が、式I(c)の化合物を調製することを含み、式I(c)の化合物の調製は、前記式IVの化合物と約1モル当量の式V(c)の化合物とを接触させることを含む、
上記項19から27のいずれか一項に記載の方法。
(項32)
塩基の添加をさらに含む、上記項28から31のいずれか一項に記載の方法。
(項33)
前記方法が、式II(a)の化合物を調製することを含み、式II(a)の化合物の調製は、前記式IVの化合物と約4モル当量の式V(a)の化合物とを、塩基の存在下で接触させることを含む、上記項19から27のいずれか一項に記載の方法。
(項34)
前記方法が、式II(b1)の化合物を調製することを含み、式II(b1)の化合物の調製は、前記式IVの化合物と、約1モル当量の式V(b)の化合物および約2モル当量の式V(a)の化合物とを、塩基の存在下で接触させることを含む、上記項19から27のいずれか一項に記載の方法。
(項35)
前記方法が、式II(b2)の化合物を調製することを含み、式II(b2)の化合物の調製は、前記式IVの化合物と約2モル当量の式V(b)の化合物とを、塩基の存在下で接触させることを含む、上記項19から27のいずれか一項に記載の方法。
(項36)
前記方法が、式II(c)の化合物を調製することを含み、式II(c)の化合物の調製は、前記式IVの化合物と、約1モル当量の式V(c)の化合物および約1モル当量の式V(a)の化合物とを、塩基の存在下で接触させることを含む、上記項19から27のいずれか一項に記載の方法。
(項37)
式IVの化合物:
M(X’) (IV)
[式中、MおよびX’は、先に定義された通りである]と、
少なくとも1種の式VIの化合物:
XH (VI)
[式中、R およびXは、上記項8で定義された通りである]
とを接触させるステップを含む、上記項8に記載の化合物を調製するための方法。
(項38)
前記方法が、式IIIの化合物を調製することを含み、式IIIの化合物の調製は、式IVの化合物と約1モル当量の式VIの化合物とを接触させることを含む、上記項37に記載の方法。
(項39)
少なくとも1個のX基が、C(O)OまたはS(O) O基である、上記項19から38のいずれか一項に記載の方法。
(項40)
少なくとも1個のX基がS(O) O基である、上記項39に記載の方法。
(項41)
Mがホウ素原子である、上記項19から40のいずれか一項に記載の方法。
(項42)
Mがアルミニウム原子である、上記項19から40のいずれか一項に記載の方法。
(項43)
Mがガリウム原子である、上記項19から40のいずれか一項に記載の方法。
(項44)
Mがインジウム原子である、上記項19から40のいずれか一項に記載の方法。
(項45)
前記化合物が、上記項16で定義された化合物から選択される、上記項19に記載の方法。
(項46)
前記化合物が、上記項17で定義された化合物から選択される、上記項19に記載の方法。
(項47)
前記化合物が、上記項18で定義された化合物から選択される、上記項37に記載の方法。
(項48)
水を排除するステップを含む、上記項19から47のいずれか一項に記載の方法。
(項49)
水と共沸混合物を形成する溶媒の存在下、水の捕捉を可能にするデバイスを使用して、還流下で加熱するステップを含む、上記項48に記載の方法。
(項50)
乾燥剤の使用を含む、上記項48に記載の方法。
(項51)
前記接触させることが、-78℃と、前記溶媒または溶媒混合物の沸騰温度との間の温度で実施される、上記項50に記載の方法。
(項52)
上記項1から18のいずれか一項で定義された化合物、または上記項19から51のいずれか一項で定義された方法により調製された化合物の、電解質組成物中での使用。
(項53)
上記項1から18のいずれか一項で定義された化合物、または上記項19から51のいずれか一項で定義された方法により調製された化合物を含む、電解質組成物。
(項54)
液体溶媒または溶媒和ポリマーを含む、上記項53に記載の電解質組成物。
(項55)
液体電解質である、上記項53または54に記載の電解質組成物。
(項56)
ゲルポリマー電解質である、上記項53または54に記載の電解質組成物。
(項57)
固体ポリマー電解質である、上記項53または54に記載の電解質組成物。
(項58)
塩、例えばリチウム塩(例えば、LiPF )をさらに含む、上記項53から57のいずれか一項に記載の電解質組成物。
(項59)
上記項53から58のいずれか一項で定義された電解質組成物を、アノードとカソードとの間に含む、電気化学セル。
図1a)】
図1b)】
図1c)】
図2
図3
図4