(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-08
(45)【発行日】2022-04-18
(54)【発明の名称】基板処理装置
(51)【国際特許分類】
F26B 5/14 20060101AFI20220411BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20220411BHJP
B08B 5/02 20060101ALI20220411BHJP
F26B 13/04 20060101ALI20220411BHJP
F26B 13/10 20060101ALI20220411BHJP
【FI】
F26B5/14
H01L21/304 643B
H01L21/304 648A
B08B5/02 A
F26B13/04
F26B13/10 H
(21)【出願番号】P 2020109523
(22)【出願日】2020-06-25
(62)【分割の表示】P 2016124025の分割
【原出願日】2016-06-23
【審査請求日】2020-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000002428
【氏名又は名称】芝浦メカトロニクス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大森 圭悟
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-283652(JP,A)
【文献】特開2003-176982(JP,A)
【文献】特開2006-024696(JP,A)
【文献】特開2006-278859(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F26B 5/14
H01L 21/304
B08B 5/02
F26B 13/04
F26B 13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板搬送路の上方に設けられ、前記基板搬送路に向けて気体を吹き出す第1の気体吹出部と、
前記基板搬送路の下方に設けられ、前記基板搬送路に向けて気体を吹き出す第2の気体吹出部と、
前記第2の気体吹出部により吹き出された前記気体を妨げないように分断された搬送軸を有し、前記基板搬送路に沿って前記基板を搬送する搬送部と、
前記搬送軸が分断された位置に対応して設けられ、駆動源を持たず、前記搬送部により搬送されて前記基板搬送路を移動する前記基板によって回転し、前記基板搬送路を移動する前記基板を支持する補助ローラと、
前記補助ローラに付着した液体が飛散することを防止する液飛散防止機構と、
を備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記液飛散防止機構は、前記補助ローラに付着した液体を前記補助ローラから除去する除去部材を有することを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記除去部材は、前記補助ローラに接触するように設けられた、ブラシ、布、スポンジのいずれかであることを特徴とする請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記補助ローラは、前記第1の気体吹出部又は前記第2の気体吹出部により吹き出された前記気体により、前記基板によって回転する方向と逆方向に回転する位置に設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置や半導体装置などの製造工程において、液晶パネル用ガラスやフォトマスク用ガラスなどの基板を搬送し、その基板表面に処理液を供給して処理を行う基板処理装置が用いられている。この基板処理装置において、基板に処理液を供給する手段としては、スリット開口を有するノズルから膜状に処理液を吐出し、水平又は傾斜状態で搬送される基板の全面に処理液を供給する手段がある。また、搬送される基板を乾燥させる手段としては、スリット開口を有するエアナイフを基板の搬送路の上下に設け、それら上下のエアナイフからドライエアを基板の上下面(表裏面)にそれぞれ吹き付け、搬送される基板に付着した処理液(例えば、純水など)を吹き飛ばして基板を乾燥させる手段がある。
【0003】
このような基板処理装置において、処理される基板は、回転するシャフトに固定された搬送ローラによって搬送されるが、下側エアナイフに対応する位置のシャフトは、下エアナイフから吹き出されたエアがシャフトや搬送ローラによって遮られることがないように、分断されている。そして、シャフトが分断された箇所に対応するように、補助ローラが設置されている。この補助ローラは、搬送される基板の下面を支持する機能を有し、シャフトが分断された箇所においても、基板の搬送状態が不安定になることを防いでいる。
【0004】
ところが、補助ローラを有する基板処理装置においては、基板の乾燥が不十分となり、後工程に悪影響が及ぶことがある。例えば、後工程で基板に対して成膜を行う場合に、乾燥後の基板上に液滴が残っていることによって、成膜が十分に行われずに膜が剥がれやすくなったり、液滴が液シミとして残ってしまったりするという処理不良を生じることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、基板を良好に乾燥させることができる基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態に係る基板処理装置は、基板搬送路の上方に設けられ、前記基板搬送路に向けて気体を吹き出す第1の気体吹出部と、前記基板搬送路の下方に設けられ、前記基板搬送路に向けて気体を吹き出す第2の気体吹出部と、前記第2の気体吹出部により吹き出された前記気体を妨げないように分断された搬送軸を有し、前記基板搬送路に沿って前記基板を搬送する搬送部と、前記搬送軸が分断された位置に対応して設けられ、駆動源を持たず、前記搬送部により搬送されて前記基板搬送路を移動する前記基板によって回転し、前記基板搬送路を移動する前記基板を支持する補助ローラと、前記補助ローラに付着した液体が飛散することを防止する液飛散防止機構と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態によれば、基板を良好に乾燥させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の一形態に係る基板処理装置の概略構成を示す図である。
【
図2】
図1に示す基板処理装置の2-2線断面図である。
【
図3】実施の一形態に係る液飛散防止機構による液飛散防止を説明するための図である。
【
図4】実施の一形態に係る液飛散防止機構が無い場合の液飛散を説明するための図である。
【
図5】実施の一形態に係る液飛散防止機構の変形例1を示す図である。
【
図6】実施の一形態に係る液飛散防止機構の変形例2を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の一形態について図面を参照して説明する。
【0011】
(基本構成)
図1及び
図2に示すように、実施の一形態に係る基板処理装置10は、処理室20と、複数の気体吹出部30a、30bと、搬送部40と、複数の補助ローラ50と、複数の液飛散防止機構60(
図2参照)とを備えている。この基板処理装置10には、前工程で液体により処理されて濡れた状態の基板Wが搬入される。そして、基板処理装置10は、搬入された基板Wを乾燥させて搬出する乾燥処理装置として機能する。
【0012】
処理室20は、基板Wを乾燥させるための部屋であり、
図2に示すように、基板Wが移動する搬送路(基板搬送路)A1を内蔵する筐体である。この処理室20には、搬入口21及び搬出口22が形成されている。搬送路A1は、搬入口21から搬出口22まで水平に延びており、処理室20の上下方向の略中央に位置している。
【0013】
ここで、基板Wの表裏面(
図2中の上下面)は、基板Wが処理室20に搬入される前の工程において、純水などの液体によって濡らされており、基板Wの表裏面に液体が付着している。この基板Wとしては、例えば矩形状のガラス基板が用いられる。また、処理室20内にはダウンフロー(垂直層流)が生じており、処理室20の底面には、基板Wから取り除かれた液体を排出する排出口(図示せず)が形成されている。
【0014】
各気体吹出部30a、30bは、
図2に示すように、搬送路A1を挟むように搬送路A1の上方及び下方に一つずつ設けられている。搬送路A1の上方に位置する気体吹出部30aは、搬送路A1に対して上方から気体(例えば、空気や窒素ガス)を吹き出す第1の気体吹出部として機能する。搬送路A1の下方に位置する気体吹出部30bは、搬送路A1に対して下方から気体(例えば、空気や窒素ガス)を吹き出す第2の気体吹出部として機能する。これら第1の気体吹出部30a及び第2の気体吹出部30bは、搬送路A1を通過する基板Wに向けて高圧で気体を吹き出し、基板Wに付着している液体を吹き飛ばして基板Wの両面を乾燥させる。
【0015】
第1の気体吹出部30aは、基板Wの幅(基板Wにおける搬送方向A2と直交する方向の長さ)よりも長いスリット状の吹出口(長尺の吹出口)31aを有している。そして、第1の気体吹出部30aは、吹出口31aから基板Wの搬送方向A2の上流側に向けて気体を吹き出すように、搬送路A1の上方に設けられている。詳述すると、第1の気体吹出部30aは、
図1に示すように、搬送路A1を横切ると共に、第1の気体吹出部30aのどちらか一方の端部(
図1では、上側の端部)が他方の端部(
図1では、下側の端部)に対して搬送方向A2の上流側に位置するように、平面視において、角度θ1(例えば45度)で傾けられている。また、第1の気体吹出部30aは、
図2に示すように、第1の気体吹出部30aの搬送路A1側の端部がその反対側の端部に対して搬送方向A2の上流側に位置するように、角度θ2(例えば50度以上70度以下の範囲内)で傾けられている。なお、第1の気体吹出部30aの吹出口31aと搬送中の基板Wの表面との鉛直方向の離間距離(ギャップ)は数mm(例えば3mm)程度となる。
【0016】
第2の気体吹出部30bも、第1の気体吹出部30aと同様、基板Wの幅よりも長いスリット状の吹出口(長尺の吹出口)31bを有しており、吹出口31bから基板Wの搬送方向A2の上流側に気体を吹き出すように搬送路A1の下方に設けられている。さらに、第2の気体吹出部30bは、第1の気体吹出部30aと同じように角度θ1及びθ2で傾けられており、ギャップも前述と同程度となる。
【0017】
搬送部40は、基板Wの搬送路A1を形成する複数の搬送ローラ41を有している。これらの搬送ローラ41は、複数本のシャフト(搬送軸)42に固定されている。各シャフト42は、それぞれ基板Wの幅よりも長く形成されており、並列に基板Wの搬送方向に沿って並べられ、回転可能に設けられている。これらのシャフト42は、共通の駆動機構(図示せず)により、互いに同期して回転するように構成されており、各搬送ローラ41と共に基板Wの搬送路A1を形成する。各搬送ローラ41は、個々のシャフト42に所定間隔で固定されており、シャフト42が回転することによって共に回転する。この搬送部40は、各搬送ローラ41により基板Wを支持し、支持した基板Wを各搬送ローラ41の回転によって搬送する。
【0018】
ここで、前述の各シャフト42のうち、
図1に示す平面視で気体吹出部30aと交差する位置に存在する複数のシャフト42は、搬送路A1の下方に位置する第2の気体吹出部30bにより吹き出された気体を妨げないようにそれぞれ分断されている。すなわち、シャフト42は、第2の気体吹出部30bの上方、すなわち第2の気体吹出部30bから吹き出された気体の流路上に存在しないように、
図1に示すように、第1のシャフト42a及び第2のシャフト42bに分断されている。なお、第1のシャフト42aの一端部は、支持部材44により回転可能に支持されており、第2のシャフト42bの一端部も支持部材44により回転可能に支持されている。各支持部材44は、処理室20の底面に設けられている。なお、
図2では、各支持部材44の図示は省略されている。
【0019】
前述のように、搬送路A1の下方に位置する第2の気体吹出部30bにより吹き出された気体を妨げないようにシャフト42が分断され、第1のシャフト42aと第2のシャフト42bとの間に空間が形成される。これにより、第2の気体吹出部30bにより吹き出された気体は、搬送ローラ41やシャフト42により邪魔されることなく、基板Wの下面に到達することになるので、基板Wの下面を確実に乾燥させることができる。
【0020】
各補助ローラ50は、回転可能に形成されており、シャフト42が分断された位置に対応して設けられている。すなわち、補助ローラ50は、シャフト42が分断された箇所において、各気体吹出部30a、30bの吹出口31a、31bに対して基板Wの搬送方向A2の上流側及び下流側に一つずつ設けられている。各補助ローラ50は、その回転軸51が搬送ローラ41のシャフト42と平行に、さらに、その上端の高さが、シャフト42に支持される搬送ローラ41の上端の高さ(
図2参照)と同じになるように設けられている。各補助ローラ50の直径は、搬送ローラ41の直径よりも小さい。これらの補助ローラ50は、各搬送ローラ41による基板Wの支持を補うためのローラであり、搬送部40により搬送される基板Wを支持する。なお、各補助ローラ50は個別に各回転軸51に固定されており、回転軸51は、
図1に示すように、支持部材52により回転可能に支持されている。これらの支持部材52は、処理室20の底面に設けられている。なお、
図2では、各支持部材52の図示は省略されている。
【0021】
前述のように、補助ローラ50は、シャフト42が分断された箇所に対応して設けられている。これにより、シャフト42が分断された箇所において、基板Wが補助ローラ50により支持されるので、シャフト42が分断された箇所においても、基板Wのうねりが防止されるので、基板Wを安定して搬送し、確実に乾燥させることができる。
【0022】
なお、各補助ローラ50は、搬送ローラ41の駆動源とは切り離され、特別な駆動源を有していない。そして、前述したように、補助ローラ50の上端の高さが、搬送ローラ41の上端の高さと同じになるように設けられているため、搬送部40により搬送される基板Wに接触してその基板Wの進行に伴って回転する。このため、各補助ローラ50は、基板Wの通過後に停止するが、第1の気体吹出部30aから吹き出された気体が直接当たる補助ローラ50は、基板Wの通過後も、第1の気体吹出部30aから吹き出された気体により回転(空転)することがある。これは、前述のように補助ローラ50が第1の気体吹出部30aの近傍に設けられるためである。また、基板Wを乾燥させるため、第1の気体吹出部30aから吹き出される気体の吹出量は多くなる傾向にあることから、第1の気体吹出部30aから吹き出された気体が直接当たる補助ローラ50は、その気体(気流)によって回転しやすいという状況にある。
【0023】
ここで、発明者は、補助ローラ50が第1の気体吹出部30aからの気体によって、空転することにより、補助ローラ50に付着した処理液などの液体が、回転する補助ローラ50の遠心力で飛散し、乾燥後の基板Wに付着することによって、基板Wの乾燥が不十分となったり、後工程に悪影響が及んだりすることがあることを見出した。特に、補助ローラ50と第1の気体吹出部30aとの位置関係において、第1の気体吹出し部30aより吹き出された気体によって、補助ローラ50が基板Wを搬送する方向とは逆方向に回転する位置に設けられている場合、補助ローラ50に付着した液体が飛散しやすいことが分かった。しかも、第1の気体吹出部30aから気体が吹きつけられる補助ローラ50は、基板Wの搬送によって共回りしている時の回転速度より、遙かに速いことも判明した。したがって、各補助ローラ50は、第1の気体吹出部30aから吹き出された気体によって、基板Wに接している状態のときよりも高速で回転することになる。
【0024】
液飛散防止機構60は、
図3に示すように、各気体吹出部30a、30bの個々の吹出口31a、31bに対し基板Wの搬送方向A2の上流側に位置する補助ローラ50に対して設けられている。すなわち、液飛散防止機構60は、各気体吹出部30a、30bの個々の吹出口31a、31bに対し基板Wの搬送方向A2の上流側に位置する全ての補助ローラ50に対してそれぞれ設けられている。各液飛散防止機構60は、それぞれ除去部材61を有している。この除去部材61は、搬送部40による基板Wの搬送を邪魔せず、例えば、補助ローラ50の下端に接触するように設けられており、補助ローラ50に付着した液体を除去する。除去部材61としては、例えば、ブラシや布、スポンジなどを用いることが可能である。ブラシは補助ローラ50に付着した液体を払い落として除去し、布やスポンジは補助ローラ50に付着した液体を拭き取って除去する。
【0025】
なお、補助ローラ50と除去部材61との摩擦によって、パーティクルが発生し、基板Wにパーティクルが付着すると、後工程において、悪影響を及ぼす可能性がある。これを防止するために、除去部材61としては、樹脂製のブラシを用いることが最も好ましい。さらに、除去部材61として布を用いる場合には、不織布を用いることが好ましい。
【0026】
(基板乾燥処理)
次に、前述の基板処理装置10が行う基板乾燥処理(基板乾燥工程)について説明する。
【0027】
基板乾燥処理では、搬送部40の各搬送ローラ41が回転し、それらの搬送ローラ41上の基板Wは所定の搬送方向A2に搬送され、搬送路A1に沿って移動する。この搬送路A1における気体供給位置には、基板Wの搬送前から予め、搬送路A1の上方に位置する第1の気体吹出部30aによって乾燥用の気体が吹き出されており、さらに、搬送路A1の下方に位置する第2の気体吹出部30bによって乾燥用の気体が吹き出されている。このように気体が搬送路A1における気体供給位置に吹き出されている状態で、基板Wがその気体供給位置を通過すると、基板Wの上下面(表裏面)に付着している液体が気体の吹き付けにより基板Wの上下面から吹き飛ばされ、基板Wの上下面が乾燥していく。このとき、基板Wの上下面に付着している液体は、気体の吹き付けによって基板Wの上下面の右上の隅から左下の隅(
図1参照)に向かって移動するため、基板Wの上下面はそれぞれ右上の隅から左下の隅へ順次乾燥することになる。
【0028】
この基板乾燥処理中には、基板Wの上下面から取り除かれた液体が補助ローラ50に付着することがある。
図3に示すように、基板Wが搬送路A1における気体供給位置、すなわち各気体吹出部30a、30bの個々の吹出口31a、31bの間を通過した後、液体が付着した補助ローラ50が、第1の気体吹出部30aにより吹き出された気体によって回転する。液飛散防止機構60は、その補助ローラ50の回転に応じて、補助ローラ50に付着した液体を除去部材61により取り除く。これにより、補助ローラ50に付着した液体が飛散することを防止することができる。
【0029】
ここで、
図4に示すように、液飛散防止機構60が存在しない場合には、液体が付着した補助ローラ50が、第1の気体吹出部30aにより吹き出された気体によって回転すると、その補助ローラ50に付着した液体が、回転する補助ローラ50の遠心力により飛散することになる。この飛散した液体が、乾燥後の基板Wに付着することがあり、この液体の付着は、例えば、後工程で基板Wに対して成膜を行う場合、膜剥がれなどの不具合が生じる原因となる。基板Wに付着した液体が自然乾燥すると、液シミなどの乾燥不良が生じてしまう。このように、液飛散防止機構60が無い場合には、良好に基板Wを乾燥させることが困難である。
【0030】
なお、補助ローラ50の設置位置(例えば、
図3や
図4に示す設置位置よりも基板Wの搬送方向A2の上流側にずらした位置)によっては、補助ローラ50は、
図3や
図4に示す回転方向(矢印方向)と逆方向に回転することもある。このときも、液飛散防止機構60が存在しない場合には、補助ローラ50に付着した液体は飛散する。この飛散した液体は第1の気体吹出部30aに付着し、第1の気体吹出部30aを汚染することがある。さらに、第1の気体吹出部30aに付着した液体が乾燥後の基板W(搬送路A1における気体供給位置を通過した基板W)に落下することもある。また、補助ローラ50から飛散した液体は、第1の気体吹出部30aを飛び越え、乾燥後の基板Wに付着する可能性もある。このように、液飛散防止機構60が無い場合には、良好に基板Wを乾燥させることが困難である。
【0031】
以上説明したように、実施の一形態によれば、補助ローラ50に対して液飛散防止機構60を設けることによって、第1の気体吹出部30aから吹き出された気体により補助ローラ50が回転したとしても、その補助ローラ50に付着した液体が飛散することが防止される。これにより、補助ローラ50から飛散した液体が乾燥後の基板Wに付着することが抑えられるので、良好に基板Wを乾燥させることができる。
【0032】
さらに、液飛散防止機構60に除去部材61を設けることによって、補助ローラ50に付着した液体は、除去部材61により補助ローラ50から除去される。これにより、第1の気体吹出部30aから吹き出される気体により補助ローラ50が回転したとしても、その補助ローラ50に付着した液体が飛散することを確実に防止することができる。
【0033】
なお、ここで液体が飛散することを防止するとは、補助ローラ50から液体がまったく飛散しないことのみに限られず、補助ローラ50に付着した液体がたとえ飛散したとしても、基板Wに付着にすることなく、後工程に悪影響が及ぶことがないよう、防止することを含む。
【0034】
(液飛散防止機構の変形例1)
変形例1に係る液飛散防止機構60は、
図5に示すように、制限部62を有する。この制限部62は、第1の気体吹出部30aから吹き出される気体により補助ローラ50が回転することを制限する。制限部62は、補助ローラ50の回転軸51に設けられており、例えば、第1の気体吹出部30aと補助ローラ50とが
図3に示した位置関係である場合に、補助ローラ50における基板Wを搬送する方向(補助ローラ50における基板Wにより回転する方向)の回転を許可し、その逆方向(第1の気体吹出部30aから吹き出される気体により回転する方向)の回転を禁止する。制限部62としては、例えば、ワンウェイクラッチ機構(一方向クラッチ機構)などを用いることが可能である。
【0035】
この変形例1によれば、補助ローラ50に対して制限部62を設けることによって、第1の気体吹出部30aから吹き出される気体により補助ローラ50が回転することが防止される。これにより、第1の気体吹出部30aから吹き出される気体により補助ローラ50が回転し、その補助ローラ50に付着した液体が飛散することを確実に防止することができる。
【0036】
さらに、上述した第1の実施形態においては、基板Wと接触する補助ローラ50に除去部材61を直接接触させるが、本変形例においては、基板Wと接触することのない回転軸51に制限部62を作用させる。これによって、補助ローラ50を介して基板Wにパーティクルが付着しにくくなり、基板Wをより清浄に保ちつつ処理を行うことが可能となる。
【0037】
(液飛散防止機構の変形例2)
変形例2に係る液飛散防止機構60は、
図6に示すように、速度低下部材63を有している。この速度低下部材63は、第1の気体吹出部30aから吹き出された気体による補助ローラ50の回転速度(補助ローラ50における基板Wにより回転する方向と逆方向への回転速度)を、補助ローラ50に付着した液体が補助ローラ50の回転によって飛散するときの回転速度より下げる。速度低下部材63は、搬送部40による基板Wの搬送を邪魔せず、例えば、補助ローラ50の回転軸51に接触するように設けられている。速度低下部材63としては、例えば、ゴムなどの摩擦抵抗部材を用いることが可能である。
【0038】
なお、補助ローラ50は、搬送部40により搬送される基板Wに接触し、その基板Wの進行に伴って回転する。このとき、速度低下部材63は、補助ローラ50が基板Wの進行に伴って回転するときの回転速度を下げることになるが、この速度低下部材63は、補助ローラ50が搬送部40による基板Wの搬送に支障を及ぼさない程度に回転することが可能に形成されている。あるいは、基板Wの搬送路A1にセンサを配置し、基板Wが補助ローラ50上を通過した時点で、速度低下部材63が回転軸51に接触し、基板Wが補助ローラ50上を通過している時点では、速度低下部材63が回転軸51に接触しないように退避するよう、速度低下部材63が回転軸51に対して動作できるように構成しても良い。
【0039】
この変形例2によれば、補助ローラ50に対して速度低下部材63を設けることによって、第1の気体吹出部30aから吹き出された気体による補助ローラ50の回転速度は、補助ローラ50に付着した液体が補助ローラ50の回転によって飛散するときの回転速度より下げられる。これにより、第1の気体吹出部30aから吹き出される気体により補助ローラ50が回転したとしても、その補助ローラ50に付着した液体が飛散することを確実に防止することができる。
【0040】
さらに、本変形例においても上述した変形例1と同様、基板Wと接触することのない回転軸51に速度低下部材63を接触させる。これによって、変形例1と同様、補助ローラ50を介して基板Wにパーティクルが付着しにくくなり、基板Wをより清浄に保ちつつ処理を行うことが可能となる。
【0041】
(他の実施形態)
前述の実施形態においては、第1の気体吹出部30aを搬送路A1の上方に設け、第2の気体吹出部30bを搬送路A1の下方に設けることを例示したが、これに限るものではなく、例えば、基板Wの上面だけを乾燥させる場合など、搬送路A1の上方だけに設けることも可能である。
【0042】
また、前述の実施形態においては、補助ローラ50を各気体吹出部30a、30bの吹出口31a、31bに対して基板Wの搬送方向A2の上流側及び下流側に一つずつ設けることを例示したが、これに限るものではなく、例えば、基板Wの搬送方向A2の上流側だけに補助ローラ50を設けることも可能である。
【0043】
また、前述の実施形態においては、搬送部40として、シャフト42(搬送軸)に支持された搬送ローラ41を構成要件の1つとしたが、これに限るものではなく、例えば、搬送ローラ41として円筒状の一本のローラを用いることも可能である。この場合においては、搬送ローラ41自体が搬送軸として機能する。
【0044】
また、前述の実施形態においては、補助ローラ50は、主に、第1の気体吹出部30aからの気体によって空転する場合を説明した(
図3、
図4参照)。しかしながら、補助ローラ50が第1の気体吹出部30aから気体を受けない配置の場合であっても、基板Wが補助ローラ50上を通過した後、補助ローラ50が惰性で回転し続けることもある。この回転速度は、基板Wを高速で搬送する程、そして搬送方向A2における基板Wの長さが長い程、高速となる可能性がある。このような場合であっても、本発明を適用することが可能である。
【0045】
また、前述の実施形態においては、液飛散防止機構60として、除去部材61や制限部62、速度低下部材63などを用いることを例示したが、これに限るものではなく、例えば、それらのいずれか二つや三つを組み合わせて用いることも可能であり、また、他の機構や部材を用いることも可能である。
【0046】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0047】
10 基板処理装置
30a 第1の気体吹出部
30b 第2の気体吹出部
40 搬送部
41 搬送ローラ
42 シャフト(搬送軸)
50 補助ローラ
60 液飛散防止機構
61 除去部材
62 制限部
63 速度低下部材
A1 搬送路
W 基板