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  • 特許-エレベータ制御システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-08
(45)【発行日】2022-04-18
(54)【発明の名称】エレベータ制御システム
(51)【国際特許分類】
   B66B 3/00 20060101AFI20220411BHJP
   B66B 1/34 20060101ALI20220411BHJP
【FI】
B66B3/00 U
B66B1/34 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020128595
(22)【出願日】2020-07-29
(65)【公開番号】P2022025647
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2020-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 祥平
【審査官】小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-214471(JP,A)
【文献】特開2013-005489(JP,A)
【文献】特開2019-026437(JP,A)
【文献】特開2007-290868(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 3/00
B66B 1/34
B66B 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータのかごに設けられ、無線で電力を送信する無線送電手段と、
各階床に設けられ、前記無線送電手段から電力を受け取る無線受電手段と、
各階床に設けられ、前記無線受電手段が出力する電力を検出する受電検出手段と、
各階床に設けられ、受信した階床情報を記憶可能な階床記憶手段と、
前記かごが昇降動作している場合に、前記無線送電手段が設けられた前記かごがいずれかの前記階床を通過するときに当該階床の前記受電検出手段によって検出される電力の大きさに基づいて予め設定された所定の電力閾値以上の電力を検出した前記受電検出手段に対応する前記階床記憶手段に対して階床情報を登録する階床登録手段と、を備えるエレベータ制御システム。
【請求項2】
前記無線送電手段は、電力供給を受けると周囲に磁界を発生させ、
前記無線受電手段は、前記無線送電手段が近接すると当該無線送電手段が発生させた磁界に基づいて電磁誘導による誘導起電力を発生させる、請求項1に記載のエレベータ制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータ制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線給電方式(ワイヤレス電力伝送方式)のエレベータの研究開発が進められている。無線給電方式のエレベータとは、例えば、かごに設置された送電側コイルに電力を供給した状態で、各階床(エレベータホール)側に設置された受電側コイルに送電側コイルが近接すると、受電側コイルに誘導起電力が発生し、非接触で電力を供給できるようにしたものである。
【0003】
また、ホール呼び釦の入力によりかごを各階床に配車するためには、入力されたホール呼び釦の階床を判別する必要があるため、各階床のホール制御装置に対して階床情報を登録する必要がある。従来の階床登録方法では、ホール制御装置を専用モードに切替え、作業員が各階床のホール呼び釦を階床順に押すことで各階床のホール制御装置に階床情報を登録している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-57054号公報
【文献】特開2015-157664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術の階床登録方法では、作業員が各階床に赴き、ホール呼び釦を押す必要があるため、階数が多いと作業時間が多くかかってしまうので、改善の余地がある。
【0006】
そこで、本発明の実施形態の課題は、エレベータの階床登録時の作業員の負担を軽減することができるエレベータ制御システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態のエレベータ制御システムは、エレベータのかごに設けられ、無線で電力を送信する無線送電手段と、各階床に設けられ、前記無線送電手段から電力を受け取る無線受電手段と、各階床に設けられ、前記無線受電手段が出力する電力を検出する受電検出手段と、各階床に設けられ、受信した階床情報を記憶可能な前記階床記憶手段と、前記かごが昇降動作している場合に、前記無線送電手段が設けられた前記かごがいずれかの前記階床を通過するときに当該階床の前記受電検出手段によって検出される電力の大きさに基づいて予め設定された所定の電力閾値以上の電力を検出した前記受電検出手段に対応する前記階床記憶手段に対して階床情報を登録する階床登録手段と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態のエレベータ制御システムを含むエレベータの一例の構成を示す模式図である。
図2図2は、実施形態のエレベータ制御システムの機能を示すブロック図である。
図3A図3Aは、実施形態における無線給電に関する説明図である。
図3B図3Bは、実施形態における無線給電に関する説明図である。
図4図4は、実施形態における階床登録に関する説明図である。
図5図5は、実施形態における階床登録処理を示す一例のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、実施形態のエレベータ制御システムについて図面を参照して詳細に説明する。なお、この実施形態における各構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれ、以下の実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0010】
図1は、実施形態のエレベータ制御システム101(図2)を含むエレベータ100の一例の構成を示す模式図(一部断面図)である。図2は、実施形態のエレベータ制御システム101の機能を示すブロック図である。
【0011】
図1に示すように、エレベータ100は、以下のように構成されている。かご2とカウンターウェイト3を繋ぐロープ4が、かご2を移動させるための駆動手段1に掛けられている。また、制御装置5の運転制御手段6は駆動手段1を制御する。つまり、駆動手段1は、運転制御手段6から入力される操作信号に応じて駆動する。これにより、かご2が昇降路7を昇降する。つまり、エレベータ100は、いわゆる「つるべ式エレベータ」として構成されている。
【0012】
昇降路7の上部に設置されている上昇方向制限手段8と下部に設置されている下降方向制限手段9は、例えば、光電式のセンサであり、かご2が近傍を通過すると検知信号を運転制御手段6に送信する。そうすると、運転制御手段6は駆動手段1を停止する。
【0013】
かご2の外部に設置されている無線送電手段10は、無線で電力を送信する。具体的には、無線送電手段10は、例えば、導線を螺旋状に巻いた構造であり、有線で接続された電力貯蔵手段11から電力が供給される。また、各階床において昇降路7の内部に面して設置されている無線受電手段12は、無線送電手段10から電力を受け取る。具体的には、無線受電手段12は、例えば、無線送電手段10と同様の構造であり、かご2がフロアレベル(高さ)に着床した状態で無線送電手段10と対向する位置に設置されている。
【0014】
無線送電手段10は、電力貯蔵手段11によって通電されると、周囲に磁界を発生させる。そうすると、無線送電手段10の近傍に位置する無線受電手段12は、電磁誘導によって誘導起電力を発生させる。こうして、無線送電手段10から無線受電手段12へ無線で電力が供給される。そして、無線受電手段12で発生する誘電起電力は、無線送電手段10と無線受電手段12の距離が近いほど大きい。
【0015】
電力貯蔵手段11は、例えば、正負の電極板と電解液等から構成され、酸化還元反応により電子が電解液を介して電極間を移動することで電力を発生させる。そして、電力貯蔵手段11によって発生させた電力を、無線送電手段10を介して無線受電手段12に供給することが可能となる。
【0016】
最上階ホールに設置されているオペレーション開始手段13は、例えば、つまみ状の操作レバーを一方向に倒すことで電気回路を切り替える構造のスイッチである。そして、操作者がオペレーション開始手段13をONすることにより、階床登録オペレーションが開始する。
【0017】
受電検出手段14は、無線受電手段12が出力する電力を検出する。具体的には、受電検出手段14は、例えば、抵抗素子や集積回路等から構成される基板である。受電検出手段14は、対応する無線受電手段12に無線送電手段10が近接している場合、その無線受電手段12が発生させる誘導起電力によって生じた電力の電圧を検出する。
【0018】
階床記憶手段15は、例えば、半導体素子や集積回路等から構成される基板で、信号を送受信したり、実装するROM(Read Only Memory)に階床情報を記憶したりすることが可能である。階床記憶手段15は、有線にて受電検出手段14と接続されており、予め設定する閾値以上の電圧を受電検出手段14が検出した場合に、階床情報を記憶するための通信を階床登録手段16と行うことが可能である。
【0019】
階床登録手段16は、例えば、半導体素子や集積回路等から構成される基板で、信号を送受信したり、実装するCPU(Central Processing Unit)によって演算処理を実行したりすることが可能である。階床登録手段16は、各階床の階床記憶手段15と有線で接続されており、各階床の階床記憶手段15に対して階床を登録する。
【0020】
例えば、階床登録手段16は、かご2が昇降動作している場合に、無線送電手段10が設けられたかご2がいずれかの階床に来たときに当該階床の受電検出手段14によって検出される電力の大きさに基づいて予め設定された所定の電力閾値以上の電力を検出した受電検出手段14に対応する階床記憶手段15に対して階床情報を登録する。
【0021】
より具体的には、例えば、階床登録手段16は、オペレーション開始手段13がONされると一斉同報にて受電検出手段14が閾値以上の電圧を検出している階床の階床記憶手段15に対して階床情報を登録する。
【0022】
また、受電検出手段14、階床記憶手段15などを収容する収容部21は、例えば、HIB(Hall Indicator Box)であればよいが、これに限定されない。
【0023】
図3Aは、実施形態における無線給電に関する説明図である。図3Aを用いて、受電検出手段14が検出する電圧V2は無線送電手段10と無線受電手段12の位置関係により変動することを説明する。なお、図3Aの(α)の列では無線送電手段10と無線受電手段12の垂直方向(鉛直方向)の位置関係を示し、(β)の列では電力貯蔵手段11を交流電源、受電検出手段14を電圧計、無線送電手段10を巻き数Nのコイル、無線受電手段12を巻き数Nのコイルと見立てた等価回路モデルを示す。
【0024】
例えば、かご2が昇降路7を下降する場合、無線送電手段10と無線受電手段12の位置関係は時系列に(A)→(B)→(C)と変化する。無線送電手段10と無線受電手段12の中心(等価回路における各コイルの軸の位置。以下同様)が一致している(B)の位置では、無線送電手段10に接続する電力貯蔵手段11の電圧Vと電流Iにより無線送電手段10と無線受電手段12を貫く磁束Φが発生し、磁束Φにより無線受電手段12の電圧V2_Bと電流I2_Bが発生し、受電検出手段14が無線受電手段12の電圧V2_Bを検出する。
【0025】
また、(A)の位置では、無線送電手段10と無線受電手段12の中心が一致しないため、漏れ磁束ΦL_Aが発生し、無線送電手段10と無線受電手段12を貫く磁束Φが磁束Φよりも小さい。したがって、受電検出手段14が検出する無線受電手段12の電圧V2_Aは、電圧V2_Bよりも小さい。
【0026】
(C)の位置でも、(A)の位置と同様に、磁束Φが磁束Φよりも小さい。したがって、受電検出手段14が検出する無線受電手段12の電圧V2_Cは、電圧V2_Bよりも小さい。
【0027】
図3Bは、実施形態における無線給電に関する説明図である。図3Bでは、縦軸は受電検出手段14が検出する電圧Vで、横軸はかご2の垂直方向(鉛直方向)の位置xである。ここでは、かご2の床レベルが任意階のフロアレベルと一致する状態をx=0として、かご2が任意の位置xにあるときの電圧Vを示している。
【0028】
かご位置xについてフロアレベルに対して上方向を正の数、下方向を負の数としたとき、曲線CV2は、かご2を昇降路7で下降させ任意階のフロアレベルを通過する過程で受電検出手段14が検出する電圧Vを連続的にプロットした曲線である。(B)の位置では、かご2の床レベルがフロアレベルにあるため、無線送電手段10と無線受電手段12の中心が一致し、電圧V(=V2_B)は最大値となる。(A)および(C)の位置(範囲)では、かご2の床レベルがフロアレベルから離れるにつれて漏れ磁束ΦL_A、ΦL_Cが増加し、無線受電手段12を貫く磁束Φ、Φが減少することから、受電検出手段14が検出する電圧V(=V2_A、V2_C)は減少する。
【0029】
図4は、実施形態における階床登録に関する説明図である。図4を用いて、階床登録手段16が階床記憶手段15に対して階床情報を登録する方法について説明する。階床登録手段16と任意階x~xの階床記憶手段15は有線にて接続しており、互いに通信可能である。
【0030】
任意階xの受電検出手段14が検出する電圧をV2_x1とし、同様に、任意階xでの検出電圧をV2_x2、任意階xでの検出電圧をV2_x3とする。任意階x~xの受電検出手段14は、予め共通の閾値電圧V2_thを設定されており、検出電圧と比較する。
【0031】
かご2が昇降路7を昇降し任意階を通過する場合、無線送電手段10と任意階の無線受電手段12が対向する位置において受電検出手段14が検出する電圧Vは閾値電圧V2_thを超過する。
【0032】
例えば、かご2が任意階xを通過している場合、任意階xの受電検出手段14の検出電圧V2_x1はV2_th以上であり、任意階x、xの検出電圧V2_x2、V2_x3はV2_th未満となる。階床登録手段16は一斉同報にて階床情報を発信し、閾値電圧V2_thを超える電圧V2_x1を検出する任意階xの階床記憶手段15が応答することで、かご2が通過している任意階xの階床記憶手段15に対して階床情報を登録することが可能となる。
【0033】
図5は、実施形態における階床登録処理を示す一例のフローチャートである。オペレーション開始手段13がONされると(S1)、階床登録処理(オペレーション)が開始し、階床登録手段16は次に登録する階床情報をK(最上階の階数)とする(S2)。
【0034】
次に、運転制御手段6は上昇方向制限手段8の信号を判定する(S3)。上昇方向制限手段8がONされていない場合(S3でNo)、運転制御手段6は駆動手段1に対して上昇運転信号を出力し、上昇方向制限手段8がONされるまでかご2を上昇運転させる(S4)。上昇方向制限手段8がONされている場合(S3でYes)、運転制御手段6は駆動手段1に対して下降運転信号を出力し、かご2を下降運転させる(S5)。
【0035】
次に、階床登録手段16は各階床の受電検出手段14と通信して、閾値電圧V2_th以上の電圧を検出している受電検出手段14があるか否かを判定し(S6)、Yesの場合はS7に進み、Noの場合はS5に戻る。
【0036】
S7において、階床登録手段16は、閾値電圧V2_th以上の電圧を検出している受電検出手段14に対応する階床記憶手段15に対して階床情報Kを登録し、次に登録する階床情報をK-1とする。次に、階床登録手段16は、下降方向制限手段9がONされているか否かを判定し(S8)、Yesの場合はS9に進み、Noの場合はS5に戻る。
【0037】
その後、すべての階床について階床情報の登録が終わり、S8でYesとなると、階床登録手段16は、階床登録オペレーションを終了する(S9)。
【0038】
このようにして、本実施形態のエレベータ制御システム101によれば、かご2が昇降動作している場合に、所定量以上の電力を検出した受電検出手段14に対応する階床記憶手段15に対して階床登録手段16が階床情報を登録することで、階床登録時の作業員の負担を軽減することができる。
【0039】
また、無線送電を、上述のように、無線送電手段10と無線受電手段12を用いた電磁誘導方式によって実現できる。ただし、採用可能な無線送電の方式は、この電磁誘導方式に限定されず、磁気共鳴方式やマイクロ波方式などの他の方式であってもよい。
【0040】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その
他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0041】
1…駆動手段、2…かご、3…カウンターウェイト、4…ロープ、5…制御装置、6…運転制御手段、7…昇降路、8…上昇方向制限手段、9…下降方向制限手段、10…無線送電手段、11…電力貯蔵手段、12…無線受電手段、13…オペレーション開始手段、14…受電検出手段、15…階床記憶手段、16…階床登録手段、21…収容部、100…エレベータ
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5