(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-08
(45)【発行日】2022-04-18
(54)【発明の名称】活物質球複合層
(51)【国際特許分類】
H01M 4/62 20060101AFI20220411BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20220411BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20220411BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20220411BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20220411BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20220411BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20220411BHJP
【FI】
H01M4/62 Z
H01M4/36 A
H01M4/48
H01M4/36 E
H01M4/525
H01M4/38 Z
H01M4/505
H01M4/587
(21)【出願番号】P 2020133050
(22)【出願日】2020-08-05
【審査請求日】2020-08-07
(32)【優先日】2019-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】512306818
【氏名又は名称】輝能科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】PROLOGIUM TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.6-1, Ziqiang 7th Rd., Zhongli Dist., Taoyuan City, Taiwan
(73)【特許権者】
【識別番号】512316932
【氏名又は名称】プロロジウム ホールディング インク
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【氏名又は名称】山口 真二郎
(72)【発明者】
【氏名】楊思▲ダン▼
【審査官】原 和秀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/052572(WO,A1)
【文献】特開2009-224239(JP,A)
【文献】特開2014-120459(JP,A)
【文献】特表2019-510353(JP,A)
【文献】特表2017-531907(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/587
H01M 4/36
H01M 4/48
H01M 4/525
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活物質球複合層であって、
複数の活物質球であって、それぞれ複数の第1活物質粒子と、第1導電性材料と、内側結合剤とを含み、前記第1活物質粒子及び前記第1導電性材料は前記内側結合剤により固着される、複数の活物質球と、
前記活物質球の外側に配置された第2導電性材料と、
前記活物質球及び前記第2導電性材料を固着する外側結合剤と、を含み、
前記内側結合剤の弾性は、前記外側結合剤の弾性より低く、
前記活物質球中の第1導電性材料の体積含有率は、前記活物質球を除く前記複合層全体積中の前記第2導電性材料の体積含有率より高
く、
前記外側結合剤及び前記内側結合剤が、それぞれ架橋ポリマー及び線状ポリマーを含み、
前記外側結合剤中の前記線状ポリマーの体積含有率が、前記内側結合剤中の前記線状ポリマーの体積含有率より高く、
前記外側結合剤中の前記架橋ポリマーの体積含有率が、前記内側結合剤中の前記架橋ポリマーの体積含有率よりも低いことを特徴とする、
活物質球複合層。
【請求項2】
抜去反応や挿入反応時の前記第1活物質粒子の体積変化率は15%~400%であることを特徴とする、請求項1に記載の活物質球複合層。
【請求項3】
前記第1活物質粒子はケイ素系活物質粒子又はリチウムニッケルマンガンコバルト(NMC)であることを特徴とする、請求項1に記載の活物質球複合層。
【請求項4】
前記第1活物質粒子はケイ素及び/又は酸化ケイ素粒子から選択され、前記第1活物質粒子の平均粒子径D50は前記活物質球の直径の60%以下であることを特徴とする、請求項3に記載の活物質球複合層。
【請求項5】
前記第1活物質粒子の材料特性とは異なる材料特性を有する複数の第3活物質粒子を更に含み、前記第3活物質粒子は前記活物質球の外側に位置し、前記外側結合剤により前記活物質球に固着していることを特徴とする、請求項1に記載の活物質球複合層。
【請求項6】
前記第3活物質粒子は炭素材料から選択されることを特徴とする、請求項5に記載の活物質球複合層。
【請求項7】
前記複合層は電気化学的電極層として機能することを特徴とする、請求項1に記載の活物質球複合層。
【請求項8】
前記活物質球の平均粒子径D50は前記電極層の厚さの70%以下であることを特徴とする、請求項7に記載の活物質球複合層。
【請求項9】
前記架橋ポリマーはポリイミド(PI)、アクリル樹脂、エポキシ、又はこれらの組み合わせから選択されることを特徴とする、請求項
1に記載の活物質球複合層。
【請求項10】
前記内側結合剤中の前記線状ポリマーの体積含有率は前記内側結合剤中の前記架橋ポリマーの体積含有率より低いことを特徴とする、請求項
1に記載の活物質球複合層。
【請求項11】
前記外側結合剤の前記線状ポリマーはポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニリデンヘキサフルオロプロピレン(PVDF‐HFP)、スチレン‐ブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)、又はこれらの組み合わせから選択されることを特徴とする、請求項
1に記載の活物質球複合層。
【請求項12】
前記内側結合剤の水素イオン濃度は前記外側結合剤の水素イオン濃度と異なることを特徴とする、請求項1に記載の活物質球複合層。
【請求項13】
前記活物質球は、前記第1活物質粒子の材料特性とは異なる材料特性を有する複数の第2活物質粒子を更に含むことを特徴とする、請求項1に記載の活物質球複合層。
【請求項14】
前記第2活物質粒子は炭素から選択されることを特徴とする、請求項
13に記載の活物質球複合層。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学装置用の複合層に関し、特に電気化学反応時の体積変化が大きい活物質から形成された活物質球を含む複合層に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池の負極材料では、従来のグラファイトカーボン負極材料の理論体積比容量は372mAh/gに過ぎず、リチウムイオン電池のエネルギー密度の向上を限定的なものにしている。体積比容量は最大で4200mAh/gであるが、近年の研究ではケイ素が注目されている。しかし、負極としてケイ素元素を使用する場合、充放電の過程で体積が大きく変化し(最大300%)、これにより電解質とケイ素元素との間に空隙界面が形成されやすくなり、電極性能の低下が続く場合がある。空隙界面により起こり得る問題には、以下が挙げられる。
a.電子導電性の低下:ケイ素の膨張は、導電性材料同士の接触を分離する。
b.イオン伝導性の低下:電解質が固体であろうと液体であろうと、ケイ素の膨張により空隙領域が形成されるため、イオンの透過距離が長くなるか、又は界面の接触抵抗が大幅に増加する。
【0003】
現在、ケイ素負極の最も一般的な作成方法はケイ素材料とグラファイト材料を混合する方法である(5%~10%のケイ素材料に95%~90%のグラファイト材料を加える)。次いで導電性材料及び結合剤を添加し、厚さ約80~85μmのケイ素‐グラファイト混合負極層を形成する。上記ケイ素材料の比率は所望のエネルギー密度に応じて調整可能であり、また厚さは塗布プロセスに応じて調整可能である。
【0004】
理論的には、ケイ素材料の体積変化を効果的に制御して体積変化により形成される空隙やそれに関連する派生問題を低減するために、架橋タイプなどの剛性結合剤を使用して固着を強力にする。従って、充放電過程時のケイ素材料の体積変化を制御する。
しかし、容量を増加させるためには、導電性材料及び結合剤の量を過度に増加すべきではなく、活物質の割合をできる限り増加させることが可能である。また、より広い面積へ容易に塗布するためには、剛性結合剤の割合を過度に高くすべきではない。このような材料では、電極層が脆くなり、ひびが発生しやすくなり、ショートの原因となる。更に、剛性結合剤の添加量が多いほど、電極層の厚さが増加する。ひびが発生しやすくなり、厚く塗布することはより困難になる。従って、剛性結合剤による空隙に起因する派生問題を効果的に制御することは実践的には困難である。これらの問題はいずれも導電性やイオン伝導性の低下につながる。
【0005】
米国特許第8,263,265号(特許文献1)は二酸化ケイ素を還元するためにマグネシウム金属などの還元方法を利用している。その後、酸性化を行って酸化マグネシウムを除去し、負極活物質として機能する多孔質の炭素‐ケイ素複合体を形成する。従って、高容量かつ優れた容量保持率が得られる。
しかし、この特許では主に、多孔質複合体を用いてケイ素材料の体積膨張を吸収しており、当該多孔質複合体は空隙の問題をわずかに処理できるが、効果的に制御して問題を完全に克服することは依然としてできていない。
【0006】
従って、本発明は従来の欠陥を克服するための全く新規な活物質球複合層を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上述の短所を克服するための活物質球複合層を提供することである。
本発明の活物質球複合層は、活物質球を形成するために、より高い割合で剛性結合剤を利用する。従って、充放電過程における活物質の大幅な体積変化が効果的に制御され、空隙の問題及びその派生問題を解決できる。
【0009】
また、本発明の別の目的は、活物質球の内側にある膨張耐性の高い内側結合剤、及び活物質球の外側にある高弾性の外側結合剤を含む活物質球複合層を提供することである。従って、活物質粒子の体積膨張を制御する場合には、複合層の柔軟性が保持され、比容量、導電性、イオン伝導性の全てが向上する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を実施するために、本発明は、複数の活物質球、第2導電性材料、及び活物質球の外側に配置される外側結合剤を含む活物質球複合層を開示する。外側結合剤は、活物質球及び第2導電性材料を固着する。活物質球は複数の第1活物質粒子、第1導電性材料、及び内側結合剤を含む。内側結合剤の弾性は外側結合剤の弾性より低く、活物質球中の第1導電性材料の体積含有率は、活物質球を除く全体積中の第2導電性材料の体積含有率より高い。本発明では内側結合剤と外側結合剤との弾性が異なることにより、充放電過程における活物質粒子の大幅な体積変化が効果的に制御され、空隙の問題やその派生問題が解決可能になり、複合層の柔軟性が保持される。
【0011】
更に、本発明の活物質球は、第1活物質粒子の材料特性とは異なる材料特性を有する複数の第2活物質粒子を含む。
【0012】
その他、本発明の活物質球複合層は活物質球の外側に第3活物質粒子を更に含む。第3活物質粒子は、第1活物質粒子の材料特性とは異なる材料特性を有する。
【0013】
本発明の適用範囲は以下に示す詳細な説明から明らかになる。しかし、これは本発明の好ましい実施形態に過ぎず、本発明の精神及び範囲内の様々な変更及び修正がこの詳細な説明から当業者に明らかであるため、詳細な説明及び具体的な例は単に例示として提供されていることを理解すべきである。
【0014】
本発明は、以下の単に例証として示された詳細な説明から完全に理解されるが、以下の詳細な説明は本発明を何ら限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図3】本発明の活物質球の別の実施形態の概略図である。
【
図4】本発明の活物質球複合層の別の実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1及び
図2を参照されたい。図はそれぞれ本発明の活物質球複合層の概略図及び本発明の活物質球の概略図である。
本発明の活物質球複合層20は、事前に形成した活物質球10、外側結合剤23、及び第2導電性材料22から構成されている。事前に形成した活物質球10は複数の第1活物質粒子11、第1導電性材料12、及び内側結合剤13を含む。第1活物質粒子11の平均粒子径D50は活物質球10の直径の60%以下である。例えば、活物質球10の直径が50~60μmである場合、第1活物質粒子11の平均粒子径D50は30~36μmとなる。第1活物質粒子11は抜去反応や挿入反応時の体積変化が大きい活物質粒子である。充放電過程時の第1活物質粒子11の体積変化率は15%~400%である。例えば、第1活物質粒子11は、体積変化率が200%を超えるケイ素系活物質粒子、又はリチウムニッケルマンガンコバルト(NMC)から選択してもよい。ケイ素系活物質粒子としては、ケイ素元素や酸化ケイ素(SiO
x)などのケイ素を含むあらゆる活物質が挙げられる。
【0017】
第1活物質粒子11、第1導電性材料12、及び内側結合剤13を混合し、平均粒径D50が複合電極層の厚さの70%以下である活物質球10を形成する。活物質球10は必須の球体として事前に形成する。以下の説明では、活物質球複合層は電極層であってもよい。なお、活物質球10は、粒度分けするか、又はボールミル粉砕により破砕混合して形成する。従って、いわゆる球体は例に過ぎず、球体に限定されるものではなく、また、球体は断面が完全な円形であるものや規則的な球体でなくてもよい。三次元形状の任意の球体、略球体、又は他の非球体を含むものとする。
【0018】
内側結合剤13は主に架橋ポリマーを含む。即ち内側結合剤中の体積%では架橋ポリマーの含有率が最も高い。例えば、第1結合剤中の架橋ポリマーの体積含有率は70%を超える。また、第1導電性材料12及び内側結合剤13の割合を高くすれば、十分に高い膨張拘束力及び導電性が得られる。
従来の電極層では(ケイ素及び/又は酸化ケイ素(Si/SiOx)及びグラファイトを直接混合する例では)、導電性材料の体積含有率は約5%であり、結合剤の体積含有率は約7%であり、ケイ素及び/又は酸化ケイ素(Si/SiOx)及びグラファイトを含む活物質の体積含有率は約88%である。
しかし、本発明では、活物質球10中の第1導電性材料12の体積含有率は7%~10%であり、活物質球10中の内側結合剤13の体積含有率は10%~15%である。従って、架橋ポリマーなどの弾性率の低い結合剤(剛性結合剤ともいう)を主成分とする内側結合剤13の量を多くすることで、膨張拘束力を大幅に高め、充放電過程中の活物質の大幅な体積変化を効果的に制御できる。一方、内側結合剤13は線状ポリマーなどの更に弾性が高い結合剤も含んでよい。内側結合剤13は体積比10%の線状ポリマー及び体積比90%の架橋ポリマーを含んでもよい。即ち、内側結合剤13中の線状ポリマーの体積含有率は内側結合剤13中の架橋ポリマーの体積含有率より低い。
【0019】
第1導電性材料12には、人工グラファイト、カーボンブラック、アセチレンブラック、グラフェン、カーボンナノチューブ、気相成長炭素繊維(VGCF)、又はこれらの組み合わせが挙げられる。内側結合剤13は主に、物理的又は化学的固着が強力で弾性が低い架橋ポリマーである。例えば、内側結合剤13はポリイミド(PI)、アクリル樹脂、エポキシ、又はこれらの組み合わせなど、酸基を持つ良好な電子供与体を有していてもよい。結合剤の量が上述したような大量であれば、剛性の強い内側結合剤13を使用して活物質粒子11を拘束し、充放電後に活物質粒子の膨張規模を制御することが可能になる。従って、回復不能な空隙領域を制御又は除去することとなる。
【0020】
図3を参照されたい。図では複数の第2活物質粒子21が活物質球10に添加されている。第2活物質粒子21の材料特性は第1活物質粒子11の材料特性とは異なる。例えば、第2活物質粒子21はグラファイトなどの導電性も良好な活物質から選択してもよい。グラファイトの導電性は高いため、第1導電性材料12の使用量を減少させてエネルギー密度を高めることが可能になる。
【0021】
剛性内側結合剤13の量が多く、即ち弾性が低く、また第1導電性材料12の量が多いと、複合層の屈曲性が低下する共に、残留活物質比率低下が限定的になる。そのため、比容量が低下する。しかし、本発明の活物質球10は電極層構造体内の活物質の一部として機能しているに過ぎず、そのような懸念はない。即ち、これらの欠点は本発明の電極層構造体に影響を及ぼすことはない。このことは下記に詳述する。
【0022】
上述の活物質球10をより明確にするために、以下の記述では、可能な製造工程を1例のみ例示するに留める。活物質粒子11、第1導電性材料12、及び内側結合剤13を溶媒と共に混合した後、仮基板上に塗布する。順次乾燥させて溶媒を除去した後、仮基板を除去する。その後、混合物をボール粉砕により粉砕することで、平均粒径D50が複合電極層の厚さの70%以下である活物質球10が得られる。以下の記述では、活物質球複合電極層は電極層である。
【0023】
図1を参照されたい。上述の活物質球10及び外側結合剤23とを混合し、負極などの電気化学的電極層として機能する活物質球複合層20を形成してもよい。活物質球10の平均粒径D50は、電極層の厚さの70%以下である。例えば、電極層の厚さが90μmの場合、活物質球10の平均粒径D50は72μm以下である。また、内側結合剤13の弾性と外側結合剤23の弾性とは異なる。外側結合剤23の弾性は内側結合剤13の弾性より高い。即ち、外側結合剤23中、弾性がより良好な線状ポリマーの割合は内側結合剤13中の線状ポリマーの割合より高い。外側結合剤23中の弾性がより良好な線状ポリマーはポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニリデンヘキサフルオロプロピレン(PVDF‐HFP)、スチレン‐ブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)、又はこれらの組み合わせから選択される。
【0024】
更に
図4を参照されたい。活物質球複合層20は複数の第3活物質粒子24及び第2導電性材料22を更に含む。グラファイトなどの炭素材料であってもよい第3活物質粒子24の材料特性は第1活物質粒子11の材料特性とは異なる。第2導電性材料22としては、人工グラファイト、カーボンブラック、アセチレンブラック、グラフェン、カーボンナノチューブ、気相成長炭素繊維(VGCF)、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
第1導電性材料12と第2導電性材料22の組成は同じであっても異なっていてもよい。例えば、第2導電性材料22の比率は1~1.5体積%であり、外側結合剤23の比率は2~4体積%である。第3活物質粒子24と第2活物質粒子21とは同じ材料、又は異なる材料から選択されてもよい。
【0025】
内側結合剤13及び外側結合剤23の両方が剛性結合剤(架橋ポリマー)、及び更に優れた弾性を有する線状ポリマーを含んでいてもよいが、これらの割合は異なる。例えば、内側結合剤13中の架橋ポリマーの体積比率は線状ポリマーより高く、外側結合剤23中の線状ポリマーの体積比率は架橋ポリマーより高い。内側結合剤13と外側結合剤23を比較すると、外側結合剤23中の線状ポリマーの体積比率は、内側結合剤13中の線状ポリマーの体積比率より高い。
【0026】
外側結合剤23は、弾性率がより良好な線状ポリマーを主成分としているため、電極層構造体全体の柔軟性は依然として非常に良好である。活物質球10の内側結合剤13は剛性結合剤を主成分としているが、当該結合剤は主に、球体に形成した活物質を拘束するためのものである。電極層全体では、活物質球は内部粒状構造体に過ぎない(活物質球10の平均粒径D50は電極層の厚さの70%以下である)。主な柔軟性は依然として、電極層全体にわたって外側結合剤23(活物質球10の外側)に依存している。従って、電極層構造体全体の柔軟性は依然として良好である。
更に、第3活物質粒子24はグラファイトから選択される。グラファイトの導電性は高めであることから、外部の第2導電性材料22の使用量を減少させて活物質全体の割合を維持することが可能である。換言すれば、高割合の第1導電性材料12が第1活物質粒子11の近傍に集中している。複合層全体では、第1導電性材料12の割合が増加することにより活物質の割合が減少することはない。
【0027】
更に、活物質球、導電性材料、結合剤等の上述の成分に加えて、電極層内の残りの空間には電解質系が充填される。この電解質系は固体電解質、液体電解質、又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0028】
本発明において、活物質球複合層では、活物質球の内外で特性が異なる。例えば、内部及び外部の活物質ではタイプが異なり、内部及び外部の結合剤では弾性が異なり、内部及び外部の導電性材料では割合が異なる。あるいは、更に内側結合剤の水素イオン濃度は外側結合剤の水素イオン濃度と異なる。例えば、活物質球10内の第1活物質粒子11が中性でない場合、即ちpHが7ではない場合、適当な酸/塩基結合剤を選択して調整又は修正することが可能である。例えば、第1活物質粒子11がアルカリ性である場合、内側結合剤13にはこのアルカリ性に対応した酸性結合剤を使用し、より良好に固着させることが可能となる。一方、その後に活物質複合層に塗布し基板への腐食などの損傷を避けるための中性材料を外側結合剤に使用可能である。
【0029】
以下の表1は単一のデータを例示している。
【0030】
【0031】
以上より、導電性材料と結合剤との比率が維持される条件下において、充放電過程で活物質粒子の体積膨張を効果的に制御できる。更に、空隙の問題やその派生問題を解決できる。また、複合層の柔軟性も保持され、比容量、導電性、イオン伝導性のいずれも向上する。当然ながら、上記の表1は、本発明のデータを模式的に例示したに過ぎず、この比率を制限することを意図したものではない。
【0032】
本発明をこのように説明してきたが、上記の対象物が多くの方法で変形され得ることは明らかである。このような変形は本発明の精神及び範囲から逸脱していると見なされるものではなく、当業者には自明であるこのような改変は全て、以下の特許請求の範囲内に含まれることが意図されている。