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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-08
(45)【発行日】2022-04-18
(54)【発明の名称】内視鏡用処置具
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20220411BHJP
【FI】
A61B18/14
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020546620
(86)(22)【出願日】2018-09-13
(86)【国際出願番号】 JP2018033939
(87)【国際公開番号】W WO2020054014
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2020-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163050
【弁理士】
【氏名又は名称】小栗 眞由美
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】樋高 裕也
(72)【発明者】
【氏名】宮島 千賀
【審査官】安田 昌司
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-253597(JP,A)
【文献】国際公開第2016/006407(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第2014-0100451(KR,A)
【文献】国際公開第2014/199759(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/036326(WO,A2)
【文献】特開平10-085230(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/00-18/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡の先端に取り付けられる筒状の先端部材と、
前記内視鏡の外側面に前記内視鏡の長手軸に沿って設けられ、生体組織を把持する把持具と、
前記先端部材の先端前方に突出して配置された電極と、
電極を前記長手軸に対して垂直な第1の方向に移動させる電極駆動部と、を備え、
該電極駆動部が、前記電極に接続されるワイヤと、前記先端部材に固定され、前記ワイヤの進退により前記第1の方向に伸縮する弾性部材と、を有する内視鏡用処置具。
【請求項2】
前記先端部材と前記把持具とを接続する線状の接続部材を備え、
前記先端部材が、前記長手軸を挟んで前記先端部材の外周面に設けられ、前記接続部材の端部を固定する保持部を備え、
前記把持具は、前記把持具の先端が前記保持部を中心として回動可能に前記接続部材に接続され、
前記電極は、前記内視鏡の前記長手軸に直交、かつ前記電極駆動部による前記電極の移動方向に直交する方向に延出する請求項1に記載の内視鏡用処置具。
【請求項3】
前記先端部材が、前記内視鏡の前記長手軸に沿う方向に延びるチャンネルを備え、
前記把持具が、前記チャンネルに前記長手軸に沿う方向に移動可能に挿入される長尺の挿入部と、該挿入部の先端に配置された把持部とを備え、
前記接続部材が、前記先端部材の軸線および前記チャンネルの軸線を含む平面に直交する軸線を中心とした円弧状の軌跡に沿って、前記第1の方向に前記把持部を案内する請求項2に記載の内視鏡用処置具。
【請求項4】
前記電極駆動部が、前記電極を、前記第1の方向に前記先端部材の下から全高寸法の2/3までの範囲で移動させる請求項2に記載の内視鏡用処置具。
【請求項5】
前記電極は、前記内視鏡の前記長手軸に直交、かつ前記電極駆動部による前記電極の移動方向に直交する方向の中央部分を露出させ、前記先端部材の全幅寸法の20%以上80%以下の長さを電気的な絶縁部材によって被覆されている請求項2に記載の内視鏡用処置具。
【請求項6】
前記電極の露出している前記中央部分が、前記絶縁部材よりも前方に突出している請求項5に記載の内視鏡用処置具。
【請求項7】
前記弾性部材の先端が、前記把持具に対して前記先端部材を挟んで反対側の位置に固定される、請求項1に記載の内視鏡用処置具。
【請求項8】
前記電極駆動部が、前記ワイヤを移動可能に挿入するチューブと、該チューブの基端に接続され、前記ワイヤを長手方向に進退操作する操作部とを備える請求項1に記載の内視鏡用処置具。
【請求項9】
前記チューブが、前記電極に固定された鍔状部と、前記チューブの先端から基端側に所定距離離れた位置において設けられた段部とを備え、
前記弾性部材は、前記段部と前記鍔状部との間に配置されている請求項に記載の内視鏡用処置具。
【請求項10】
内視鏡の先端に取り付けられる筒状の先端部材と、
前記内視鏡の外側面に前記内視鏡の長手軸に沿って設けられ、生体組織を把持する把持具と、
前記先端部材の先端前方に突出して配置された電極と、
前記電極に接続されるワイヤを有し、前記電極を前記長手軸に対して交差する方向に移動させる電極駆動部とを備え、
該電極駆動部が、前記ワイヤの進退により前記長手軸に対して交差する方向に伸縮する内視鏡用処置具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡用処置具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内視鏡の先端に着脱可能に取り付けられるキャップと、キャップの先端前方に突出し、内視鏡の視界を左右に横断する高周波切開電極とを備え、高周波電極付近とその周辺の組織の状態を観察しながら組織を切開する内視鏡用処置具が知られている(例えば、特許文献1および特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-66139号公報
【文献】国際公開第2016/006407号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば、粘膜を挙上しながら粘膜下層を切開する場合に、粘膜の挙上の程度によって、切開すべき位置が相違する。このため、特許文献1の内視鏡用処置具では、切開すべき位置に高周波切開電極を一致させるように内視鏡の湾曲部の湾曲度合いを変化させる必要があり、内視鏡と組織との位置関係が変動してしまうという不都合がある。
また、特許文献2の内視鏡システムでは、粘膜と筋層の位置を正確に切開すべき位置に電極部を配置するが煩雑であり、内視鏡の挿入部の操作によっては内視鏡と組織との位置関係が変動してしまうという不都合がある。
【0005】
本発明は、内視鏡と組織との位置関係を変動させることなく、切開すべき部位に精度よく高周波切開電極を一致させることができる内視鏡用処置具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、内視鏡の先端に取り付けられる筒状の先端部材と、前記内視鏡の外側面に前記内視鏡の長手軸に沿って設けられ、生体組織を把持する把持具と、前記先端部材の先端前方に突出して配置された電極と、電極を前記長手軸に対して垂直な第1の方向に移動させる電極駆動部と、を備え、該電極駆動部が、前記電極に接続されるワイヤと、前記先端部材に固定され、前記ワイヤの進退により前記第1の方向に伸縮する弾性部材と、を有する内視鏡用処置具である。上記態様においては、前記先端部材と前記把持具とを接続する線状の接続部材を備え、前記先端部材が、前記長手軸を挟んで前記先端部材の外周面に設けられ、前記接続部材の端部を固定する保持部を備え、前記把持具は、該把持具の先端が前記保持部を中心として回動可能に前記接続部材に接続され、前記電極は、前記内視鏡の前記長手軸に直交、かつ前記電極駆動部による前記電極の移動方向に直交する方向に延出してもよい。
【0007】
本態様によれば、内視鏡の先端に先端部材を取り付けると、電極は、把持具の先端方向に対して垂直な方向に延出して先端部材の先端面の前方に配置されるので、内視鏡の視野内において電極の位置を観察しながら、電極を生体組織に押し付けて、その周辺を切開することができる。この場合において、接続部材によって先端部材の保持部を中心として把持具の先端を回動させて、把持具の先端を生体組織に近接させて生体組織を把持具によって把持する。そして、把持具によって把持した生体組織の挙上の程度により、切開すべき部位が、例えば、現状の電極の位置に対して上方または下方に存在する場合には、電極駆動部を作動させて電極を内視鏡の視野内において移動させることができる。これにより、内視鏡と組織との位置関係を変動させることなく、切開すべき部位に精度よく電極を一致させることができる。
【0008】
上記態様においては、前記電極駆動部は、前記先端部材の先端面に沿う方向に前記電極を移動させてもよい。
【0009】
また、上記態様においては、前記先端部材が、前記内視鏡の前記長手軸に沿う方向に延びるチャンネルを備え、前記把持具が、前記チャンネルに前記長手軸に沿う方向に移動可能に挿入される長尺の挿入部と、該挿入部の先端に配置された把持部とを備え、前記接続部材が、前記先端部材の軸線および前記チャンネルの軸線を含む平面に直交する軸線を中心とした円弧状の軌跡に沿って、前記第1の方向に前記把持部を案内してもよい。
【0010】
この構成により、チャンネルに対して挿入部を前進させると、接続部材によって円弧状の軌跡に沿って案内された把持部が、内視鏡の視野内で内視鏡の長手軸に交差する方向、例えば上方から下方に向けて移動し、下方に存在する組織を把持部によって把持することができる。この状態で、チャンネルに対して挿入部を後退させると、内視鏡の視野内において把持部が内視鏡の長手軸に交差する方向として下方から上方に向けて移動し、把持部によって把持された組織が挙上される。
【0011】
挙上の初期においては、切開すべき部位はより下方に存在するので、電極駆動部を作動させて電極を内視鏡の視野内で下降させることにより、内視鏡の視野を変動させることなく、切開すべき部位に電極を精度よく一致させることができる。また、組織が高い位置まで挙上されると、切開すべき部位も上昇するので、電極駆動部を作動させて電極を内視鏡の視野内で上昇させることにより、内視鏡の視野を変動させることなく、切開すべき部位に電極を精度よく一致させることができる。
【0012】
また、上記態様においては、前記電極駆動部が、前記電極を、前記第1の方向に前記先端部材の下から全高寸法の2/3までの範囲で移動させてもよい。
この構成により、組織の挙上の度合いに応じて、切開すべき部位が、先端部材の下から全高寸法2/3までの範囲で変化するので、この変化に追従させて適正な位置で切開を行うことができる。
【0013】
また、上記態様においては、前記電極は、前記内視鏡の前記長手軸に直交、かつ前記電極駆動部による前記電極の移動方向に直交する方向の中央部分を露出させ、前記先端部材の全幅寸法の20%以上80%以下の長さを電気的な絶縁部材によって被覆されていてもよい。
この構成により、周囲の余計な組織が切開されてしまうことを防止することができる。
【0014】
また、上記態様においては、前記電極の露出している前記中央部分が、前記絶縁部材よりも前方に突出していてもよい。
この構成により、絶縁部材によって覆われている電極が組織と突き当たっても露出している中央部分を組織に確実に接触させて、効果的に切開を行うことができる。
【0015】
また、上記態様においては、前記電極駆動部が、前記電極に接続するワイヤと、前記先端部材に該先端部材を挟んで前記把持具に対して反対側の位置に先端が固定され、前記ワイヤとともに前記電極を前記長手軸に直交する方向に伸縮する弾性部材と、前記ワイヤを移動可能に挿入するチューブと、該チューブの基端に接続され、前記ワイヤを長手方向に進退操作する操作部とを備えていてもよい。
この構成により、操作者が操作部を操作してワイヤを進退させることによって、ワイヤに接続されている電極を内視鏡の長手軸に直交する方向に動作させることができる。
【0016】
また、上記態様においては、前記チューブが、前記電極に固定された鍔状部と、前記チューブの先端から基端側に所定距離離れた位置において設けられた段部とを備え、前記弾性部材は、前記段部と前記鍔状部との間に配置されていてもよい。
この構成により、操作者が操作部を操作してワイヤを牽引して後退させると、段部と鍔状部との間において弾性部材が圧縮されて内視鏡の視野の一方向に電極が移動し、牽引を緩めてワイヤを前進させると弾性部材の弾性復元力によって弾性部材が伸張して内視鏡の視野の一方向とは逆の他方向に電極が移動することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、内視鏡と組織との位置関係を変動させることなく、切開すべき部位に精度よく電極を一致させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る内視鏡用処置具を示す側面図である。
図2図1の内視鏡用処置具の先端部を示す側面図である。
図3図1の内視鏡用処置具の先端部を示す平面図である。
図4図1の内視鏡用処置具の先端部を部分的に破断して示す正面図である。
図5図4の内視鏡用処置具において高周波切開電極を下降させた状態を部分的に破断して示す正面図である。
図6図1の内視鏡用処置具において処置具本体を押し出した状態を示す側面図である。
図7図6の内視鏡用処置具の処置具本体により粘膜を挙上した状態を示す側面図である。
図8図7の内視鏡用処置具の処置具本体により粘膜をさらに挙上した状態を示す側面図である。
図9図1の内視鏡用処置具の変形例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一実施形態に係る内視鏡用処置具1について図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る内視鏡用処置具1は、図1に示されるように、内視鏡100の先端に取り付けられる筒状のキャップ(先端部材)2と、キャップ2の先端前方に突出して配置された高周波切開電極(電極)3と、高周波切開電極3を移動させる電極駆動部4とを備えている。
以下においては、キャップ2が内視鏡100の先端に取り付けられたときの内視鏡100の視野の方向を上下左右として説明する。具体的には、上下方向は、内視鏡100の長手軸に対して垂直な方向であり、左右方向は、内視鏡100の長手軸に直交、かつ電極駆動部4による高周波切開電極3の移動方向に直交する方向である。
【0020】
また、内視鏡用処置具1は、長尺の軟性の挿入部5と挿入部5の先端に配置された処置部(把持部)6とを備える処置具本体(把持具)7と、処置具本体7とキャップ2とを接続する接続部材8とを備えている。
キャップ2には、処置具本体7の挿入部5を長手軸方向に移動可能に挿入するチャンネル9と、接続部材8の一端を固定する保持部30とが備えられている。
処置部6は、例えば、処置の対象となる生体組織(図6参照)Xを把持する把持鉗子であり、開閉可能な一対の把持片10を備え、挿入部5の基端側において加えた力を、挿入部5内を貫通する図示しないワイヤによって把持片10に伝達し、把持片10を開閉させる。
【0021】
キャップ2は、内視鏡100の先端から軸方向に被せられる透明な樹脂製の筒状部材である。キャップ2の下面は、図4に示されるように、平坦に形成され、キャップ2の上面は、処置具本体7の移動を容易にするために、円筒状に形成されている。
チャンネル9は、キャップ2の上部の外周面近傍に、キャップ2の軸線に平行に配置され、処置具本体7の挿入部5を長手軸方向に移動可能に挿入する内径寸法を有している。
【0022】
接続部材8は糸であり、図2に示されるように、処置具本体7の処置部6の基端に挿入部5の長手軸に直交する方向に形成された貫通孔11を貫通している。接続部材8の両端は、キャップ2の長手軸を挟んで対称な位置、すなわちキャップ2の左右の外周面にそれぞれ設けられた保持部30により固定されている。
【0023】
高周波切開電極3は、図3および図4に示されるように、キャップ2の前方に左右方向に延びる棒状の電極部12と、該電極部12の中央部(中央部分)13のみを露出させて他の部分を被覆し、電気的に絶縁する絶縁被覆(絶縁部材)14とを備えている。絶縁被覆14から露出している電極部12の中央部13はさらに前方にオフセットして配置されている。また、電極部12の両端は屈曲し、相互に平行に延びている。
【0024】
電極駆動部4は、図1に示されるように、電極部12に電気的および機械的に接続するワイヤ15と、キャップ2の下側に先端が固定され、ワイヤ15を移動可能に挿入する長尺のチューブ16と、チューブ16の基端に接続され、ワイヤ15を長手方向に進退させる操作部17とを備えている。操作部17は、操作者によって把持されるハンドル18と、ハンドル18に対して直線移動可能に支持されたスライダ19とを備え、スライダ19にワイヤ15の一端が接続されている。
図中、符号20は、ワイヤ15に外部の電源を接続するためのプラグである。
【0025】
チューブ16の先端部は図3に示されるように左右2方向に分岐し、それぞれキャップ2の前方において、内視鏡100の長手軸に対して垂直な方向に延出、具体的には、図2に示されるように上側に湾曲している。
上方に向かって延びるチューブ16内には、図4および図5に示されるように、電極部12の両端に固定された鍔状部21と、チューブ16の先端から基端側に所定距離離れた位置においてチューブ16内に設けられた段部22と、鍔状部21と段部22との間に配置された圧縮バネ(弾性部材)23とが収容されている。圧縮バネ23は、自由状態において、図4に示されるように伸張しており、操作部17の操作によってワイヤ15を基端側に牽引することにより、その牽引力によって、図5に示されるように圧縮される。
【0026】
このように構成された本実施形態に係る内視鏡用処置具1の作用について以下に説明する。
本実施形態に係る内視鏡用処置具1を用いて視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)等の処置を実施するには、まず、図2に示されるように、内視鏡100の先端にキャップ2を装着することにより、内視鏡100に内視鏡用処置具1を装着する。このとき、処置具本体7を貫通させているチャンネル9が、内視鏡100の視野の上側に位置する角度に装着する。
【0027】
次いで、内視鏡用処置具1を装着した内視鏡100を患者の体腔内に挿入し、内視鏡100の視野内に患部が配置されるまで挿入する。そして、内視鏡100を長手軸回りに回転させることにより、視野の下側に患部が配置される角度に調整する。キャップ2の下面が平坦に形成されているので、キャップ2の下面を粘膜(生体組織)Xに押し付けることにより内視鏡100を体腔内に安定して保持することができる。
【0028】
この状態で、処置具本体7の挿入部5を前進させる方向に押すことにより、図6に示されるように、処置部6が前進させられる。処置具本体7の処置部6の基端が、接続部材8によってキャップ2に拘束されているので、接続部材8が弛みなく延びた状態で挿入部5を長手軸方向に押圧し続けると、処置部6が接続部材8によってキャップ2の保持部30を回転中心とする円弧状の軌跡に沿って下向きになる位置まで移動させられる。
【0029】
この位置で、処置部6を開閉して患部の粘膜Xを把持し、挿入部5を手前側に引くことにより、図7に示されるように、把持した粘膜Xを挙上することができる。キャップ2の平坦な下面を粘膜Xに押し付けているので、粘膜Xの挙上の際に、筋層Yが持ち上がらないように押さえつけることができる。
【0030】
この状態においては、切開すべき粘膜Xの下層は内視鏡視野の下方に位置するため、ハンドル18を把持する操作者は、ハンドル18に対してスライダ19を基端側にスライドさせることにより、スライダ19に取り付けられたワイヤ15を基端側に牽引する。
【0031】
これにより、ワイヤ15に加えられた牽引力によって鍔状部21が牽引されることにより、圧縮バネ23が圧縮されて図5に示されるように電極部12が押し下げられる。そして、この状態でプラグ20からワイヤ15を経由して電極部12に電源を供給することにより、電極部12の絶縁被覆14から露出している中央部13を粘膜Xの下層に接触させて、切開位置を内視鏡画像によって確認しながら適正に切開することができる。
【0032】
また、図7および図8に示されるように、処置具本体7による粘膜Xの挙上の程度によっては切開すべき位置が上下方向に変動する。この場合においても、本実施形態に係る内視鏡用処置具1によれば、操作部17においてスライダ19に加えていた牽引力を緩めることにより、圧縮バネ23を弾性復元力によって伸張させ、図4および図8に示されるように、電極部12を上昇させることができ、切開すべき位置を調整することができる。
【0033】
このように、本実施形態に係る内視鏡用処置具1によれば、内視鏡100の前方に配置されている電極部12を、内視鏡100の視野を変動させることなく上下動させることができて、高周波切開電極3の電極部12を切開すべき位置に適正に調整し、所望の位置を処置することができるという利点がある。
【0034】
また、本実施形態においては、高周波切開電極3が棒状の電極部12の中央部13のみを露出させて絶縁被覆14により被覆しているので、所望の部位を選択的に切開することができ、不必要な部分が切開されてしまう不都合の発生を未然に防止することができる。この場合、電極部12を露出させている領域の長さは、キャップ2の横幅の20%以上80%以下であればよい。
また、絶縁被覆14から露出している電極部12を前方にオフセットさせているので、生体組織Xを高周波切開電極3の他の部分に干渉させることなく、実際に切開が行われる電極部12のみを生体組織Xに接触させることができる。
【0035】
また、電極駆動部4による高周波切開電極3の上下動範囲は、内視鏡100の長手軸に直交する方向にキャップ2の下面から全高寸法の2/3の高さまでの範囲であることが好ましい。生体組織Xの挙上の度合いに応じて、切開すべき部位が、キャップ2の下から全高寸法2/3までの範囲で変化するので、この変化に追従させて適正な位置で切開を行うことができる。
また、電極駆動部4が、高周波切開電極3に通電するためのワイヤ15を牽引することにより、高周波切開電極3を上下動させることとしたが、これに代えて、他の任意の方法により、高周波切開電極3を上下動させることにしてもよい。
【0036】
また、例えば、図9に示されるように、キャップ2の上下に軸方向に沿って設けた貫通孔24に一部の露出部分25のみを絶縁被覆14から露出させたワイヤ状の高周波切開電極3を挿入し、上下の一方の端部を先端側に押し、他方の端部を基端側に引くことにより、露出部分25を上下動させることにしてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 内視鏡用処置具
2 キャップ(先端部材)
3 高周波切開電極(電極)
4 電極駆動部
5 挿入部
6 処置部(把持部)
7 処置具本体(把持具)
8 接続部材
9 チャンネル
13 中央部(中央部分)
14 絶縁被覆(絶縁部材)
15 ワイヤ
16 チューブ
17 操作部
21 鍔状部
22 段部
23 圧縮バネ(弾性部材)
30 保持部
100 内視鏡
X 粘膜(生体組織)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9