(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-08
(45)【発行日】2022-04-18
(54)【発明の名称】ガスタービン用のバーナー及びバーナーの運転方法
(51)【国際特許分類】
F23N 1/00 20060101AFI20220411BHJP
F23N 5/00 20060101ALI20220411BHJP
【FI】
F23N1/00 102Z
F23N1/00 105Z
F23N5/00 K
F23N5/00 U
(21)【出願番号】P 2020549623
(86)(22)【出願日】2019-02-06
(86)【国際出願番号】 EP2019052852
(87)【国際公開番号】W WO2019179691
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2020-12-03
(32)【優先日】2018-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390039413
【氏名又は名称】シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】特許業務法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】ガイペル,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】リンドホルム,アニカ
(72)【発明者】
【氏名】マグヌッセン,リカルド
(72)【発明者】
【氏名】マンリケ カレラ,アルトゥーロ
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0200721(US,A1)
【文献】特開2005-155590(JP,A)
【文献】特開2003-293793(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03128238(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23N 1/00-5/26
F23R 3/00
F02C 9/28,7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御ユニット(11)と、
燃焼室(10)と、
圧力センサと、
前記燃焼室(10)へそれぞれの質量流量の燃料を供給するように配置された燃料段(2、3、5、6、8)と、
を備えたバーナー(1)であって、
前記質量流量は、前記制御ユニット(11)により制御され、
前記圧力センサは、前記燃焼室(10)又は前記バーナー(1)内の圧力シーケンス(14)を測定
するとともに、前記圧力シーケンス(14)の多数の
決定されたタイムスパン(t1、t2、t3、t4)に対してフーリエ変換を行
い周波数帯域(24)内のそれぞれの極大値(31、32、33、34)を有するそれぞれの圧力スペクトル(27、28、29、30)を生成する前記制御ユニット(11)へ
、前記圧力シーケンス(14)を移送し、
前記制御ユニット(11)は、前記
極大値(31、32、33、34)の各々と
予め定義された閾値(26)との比較を行い、
予め決定された数の前記タイムスパン(t1、t2、t3、t4)の
範囲内で前記閾値(26)を超え
る前記極大値(31、32、33、34)
の数をカウントし、前記比較を使用するとともに前記閾値を超える数を使用することによって、前記質量流量を制御し、前記燃焼室(10)内の圧力変動を低減及び/又は制御する
、
バーナー(1)。
【請求項2】
前記燃料段(2、3、5、6、8)は、パイロット燃料段と主燃料段を備える、請求項1に記載のバーナー。
【請求項3】
前記制御ユニット(11)は、前記数が第1の閾値数を超えたときに前記パイロット燃料段の
前記質量流量を増加させる、請求項2に記載のバーナー。
【請求項4】
前記制御ユニット(11)は、前記数が第2の閾値数を下回ったときに前記パイロット燃料段の
前記質量流量を減少させる、請求項2又は3に記載のバーナー。
【請求項5】
前記制御ユニット(11)は、前記燃焼室(10)内の燃料の燃焼全体の出力が一定になるように、前記パイロット燃料段とは異なる1つの
前記燃料段(2、3、5、6、8)の少なくとも1つの
前記質量流量を制御する、請求項3又は4に記載のバーナー(1)。
【請求項6】
前記制御
ユニットは、前記バーナー(1)のエンジンパラメータ(41)及び/又は前記バーナー(1)の周囲条件に応じて、
少なくとも1つの前記燃料段(2、3、5、6、8)の
前記質量流量を記述する特性線(43)を有し、前記制御
ユニット(11)は、前記
少なくとも1つの燃料段(2、3、5、6、8)の
前記質量流量を変更する際に、前記特性線(43)の範囲の少なくとも1つをシフトする、請求項1~5のいずれか1項に記載のバーナー。
【請求項7】
前記制御ユニット(11)は、初期特性線を記憶しており、前記制御ユニット(11)が信号不良又はハードウェア不良を検出した場合、前記特性線(43)を
前記初期特性線に戻す、請求項6に記載のバーナー。
【請求項8】
前記燃焼室(10)に前記燃料段(2,3,5,6,8)の1つを介して供給される燃料と、前記燃料段(2,3,5,6,8)の1つを介して前記燃焼室(10)に供給される燃料とは、同一又は異なるものである、請求項1~7のいずれか1項に記載のバーナー。
【請求項9】
前記圧力シーケンス(14)が、
複数の前記決定されたタイムスパン(t1、t2、t3、t4)を含み、かつ前記制御ユニット(11)が、2つの連続するタイムスパン(t1、t2、t3、t4)の2つの
極大値(31、32、33、34)間の差を計算し、前記差を使用することによって、前記質量流量の変化の速度及び/又は前記質量流量の変化の大きさを制御する、請求項1~8のいずれか1項に記載のバーナー(1)。
【請求項10】
前記フーリエ変換が、高速フーリエ変換である、請求項1~9のいずれか1項に記載のバーナー(1)。
【請求項11】
前記バーナー(1)は、前記バーナー(1)の排気ガス中の窒素酸化物濃度を測定し、前記窒素酸化物濃度を用いて前記燃料段(2、3、5、6、8)の1つに対する最大質量流量又は最小質量流量を測定し、前記窒素酸化物濃度を用いて、前記制御ユニット(11)に前記窒素酸化物濃度を移送する放出センサを備えた、請求項1~10のいずれか1項に記載のバーナー(1)。
【請求項12】
前記
予め定義された閾値(26)は、前記バーナー(1)のエンジンパラメータ(41)及び/又は前記バーナー(1)の周囲条件を使用することによって決定される、請求項1~11のいずれか1項に記載のバーナー(1)。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載のバーナー(1)を備えるガスタービン。
【請求項14】
制御ユニット(11)と、
燃焼室(10)と、
圧力センサと、
前記燃焼室(10)へ
それぞれの質量流量の燃料を
供給するように配置された燃料段(2、3、5、6、8)と、
を備え、前記質量流量が、前記制御ユニット(11)によって制御されるバーナー(1)の運転方法であって、
a)前記燃焼室(10)へそれぞれの質量流量の燃料を供給
するステップ、及び前記燃焼室(10)内の燃料を燃焼
させるステップと、
b)前記圧力センサを使用して前記燃焼室(10)内又は
前記バーナー(1)内の圧力シーケンス(14)を測定
するステップ、及び前記圧力シーケンス(14)を前記制御ユニット(11)に移送
するステップと、
c)前記圧力シーケンス(14)の多数の
決定されたタイムスパン(t1、t2、t3、t4)に対してフーリエ変換を行い、周波数帯
域(24)内のそれぞれの
極大値(31、32、33、34)を有する圧力スペクトル(27、28、29、30)
を生成
するステップと、
d)前記
極大値(31、32、33、34)の各々と予め定義された閾値(26)とを比較
するステップと、
e)
予め決定された数の前記タイムスパン(t1、t2、t3、t4)の
範囲内で前記閾値(26)を超え
る前記
極大値(31、32、33、34)の数をカウント
するステップと、
f)前記
極大値(31、32、33、34)と
前記予め定義された閾値(26)と
の比較
を使用するとともに、前記閾値を超える数を使用することによって、前記質量流量を制御し、前記燃焼室(10)内の圧力変動を低減及び/又は制御する
、ステップと、
を含む、バーナー(1)の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービン用のバーナー及びバーナーの運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービン用のバーナーは、従来、特定の燃料組成や特定の燃料圧力のような特定の運転条件のために設計されている。従来、ガスタービン及びバーナーが設計されていた特定の運転条件で従来のガスタービンを運転すれば、ガスタービンの排出量及びガスタービンの稼働率は、その計画範囲内にある。
【0003】
しかし、現場でのガスタービンの運転中、特定の運転条件は異なる範囲で変化する可能性がある。周囲温度は、例えば、-50℃から+50℃まで変化し、又は燃料圧力、燃料温度、燃料組成又は燃料品質のような燃料の特性は、ガスタービンの動作中に変化又は変動する可能性がある。
【0004】
変動する運転条件は、燃焼のための問題のある運転条件を導き出すことが知られている。問題のある運転条件は、燃焼室内の圧力が変動する可能性がある。このような圧力変動は非常に速く発生し、検出が困難になる可能性があり、バーナーの安全な動作を確保するために低減すべきである。
【0005】
この問題を解決するために、特許文献1及び特許文献2には、燃焼室、制御ユニット、及び圧力センサを備えたガスタービンを制御する方法が記載されており、それによって、圧力センサは、バーナー内のある期間にわたって圧力シーケンスを測定し、そのシーケンスを制御ユニットに移送する。制御ユニットは、圧力スペクトルを生成するために、圧力シーケンスのフーリエ変換を行う。圧力スペクトルの極大値を予め定義された閾値と比較して、質量流量を制御する。
【0006】
既知の解が圧力変動に応じた質量流量の制御を可能にしても、過剰な制御を伴った望ましくない効果が発生する。特に、閾値を超える極大圧力シーケンスが発生するが、実際の燃焼条件を反映していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許公開公報US2014/0200721A1
【文献】米国特許公開公報US2005/0107942A1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、バーナーの燃焼室内の圧力変動を低減及び/又は制御することができるバーナー及びバーナーの運転方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、請求項1及び14の特徴で解決される。好適な実施態様は、さらなる従属請求項に記載されている。
【0010】
本発明に係るバーナーは、制御ユニットと、燃焼室と、圧力センサと、燃焼室へそれぞれの質量流量の燃料を供給するように配置された燃料段と、を備えたバーナーであって、質量流量は、制御ユニットにより制御され、圧力センサは、燃焼室又はバーナー内の圧力シーケンスを測定するとともに、圧力シーケンスの少なくとも1つの決定されたタイムスパンに対してフーリエ変換を行い周波数帯域内のそれぞれの極大値を有するそれぞれの圧力スペクトルを生成する制御ユニットへ、圧力シーケンスを移送し、制御ユニットは、極大値の各々と予め定義された閾値との比較を行い、比較を使用することによって、質量流量を制御して、燃焼室内の圧力変動を低減及び/又は制御する。
【0011】
本発明に係るバーナーの運転方法は、制御ユニットと、燃焼室と、圧力センサと、燃焼室へそれぞれの質量流量の燃料を供給するように配置された燃料段と、を備え、質量流量が、制御ユニットによって制御されるバーナーの運転方法であって、a)燃焼室へそれぞれの質量流量の燃料を供給するステップ、及び燃焼室内の燃料を燃焼させるステップと:b)圧力センサを使用して燃焼室内又はバーナー内の圧力シーケンスを測定するステップ、及び圧力シーケンスを制御ユニットに移送するステップと;c)圧力シーケンスの少なくとも1つの測定されたタイムスパンに対してフーリエ変換を行うステップであって、周波数帯域内の極大値を有する圧力スペクトルを生成する、ステップと;d)極大値と予め定義された閾値を比較するステップと;e)極大値と予め定義された閾値の比較を使用することによって、質量流量を制御して、燃焼室内の圧力変動を低減及び/又は制御する、ステップと、を含む。
【0012】
本発明によれば、燃焼室内の圧力の変動を検出することができ、質量流量を適応させることにより、問題のある運転条件によって生じる圧力変動に反応して、最適な運転条件でバーナーを確実に運転させることができる。質量流量を適応させることにより、燃焼室内の圧力変動を低減及び/又は制御することが可能である。
【0013】
燃焼室内の圧力変動によって引き起こされる圧力シーケンスの信号変動は、非常に低くなり、ガスタービン内の他の状況によって引き起こされる信号変動は、非常に高くなる。そのため、圧力シーケンスが誤った解釈されやすくなり、誤って制御指令を発する可能性がある。本発明によれば、制御ユニットは、圧力シーケンスの1つの決定されたタイムスパンでフーリエ変換を行う。フーリエ変換は、その周波数領域において、決められた周波数帯域において極大値を有する振幅スペクトルを示す。これにより、燃焼室内の圧力変動のみが、燃焼室への質量流量の制御に使用されることが保証される。干渉信号は次第に消失する可能性があり、燃焼室への質量流量にはほとんど影響を与えない。従って、制御ユニットによる質量流量の確実な適応につながる燃焼室内の圧力変動を非常に確実に検出することができる。
【0014】
極大値と予め定義された閾値の比較は、極大値が予め定義された閾値を超えているか、または極大値が予め定義された閾値を超えていないかを示す。
例えば、極大値が予め定義された閾値を超えない場合、又は極大値が予め定義された閾値を超える場合、別の又は同一の燃料段階の質量流量を増加させることができる場合、1つの燃料段階の質量流量を増加させることができる。圧力スペクトルにおける極大値の検出は、比較的単純な数学演算であり、予め決定された閾値との極大値の比較も、単純な数学演算である。簡単な数学演算は、制御ユニットによって自動的かつ高速に実行できる。従って、制御ユニットによる質量流量の自動で高速な適応によって、高速に変化する動作条件に反応することが可能である。これは、圧力変動が速く発生しても、燃焼室内の圧力変動を低減及び/又は制御するのに役立つ。
【0015】
圧力シーケンスを、2つ以上の圧力センサを用いて測定してもよい。
【0016】
本発明のバーナーの制御ユニットは、決定された多数のタイムスパンにわたってフーリエ変換を行い、周波数帯域内のそれぞれの極大値を有するそれぞれの圧力スペクトルが得られる。制御ユニットでは、予め定義された閾値と極大値のそれぞれについて比較を行い、予め決定された数のタイムスパンの範囲内で閾値を超えた極大値の数をカウントする。これにより、制御ユニットは、閾値を超える極大値の数を使用することによって、質量流量をさらに制御することが可能になる。これにより、燃焼室への質量流量を制御するために、より長い時間範囲を考慮に入れることが可能にある。こうして、制御ユニットに影響を及ぼす可能性のあるバーナーの一部の誤作動によって生じる誤った制御指令を発する可能性を低減することができる。そのため、燃焼室内の圧力の変動をより確実に低減及び/又は制御することができる。
【0017】
圧力シーケンスの2つ以上の決定されたタイムスパンを使用することによって、以下の極大値の可能な展開を決定することも可能である。圧力シーケンスの対応するタイムスパンが評価される前に、以下の極大値の事前予測を行うことができる。これは、極大値の展開を使用することによって、燃焼室内の圧力変動をより確実に低減及び/又は制御するきっかけを得ることができる。これは、質量流量を非常に速く安全な方法で制御し、問題のある運転条件を回避するのに役立つ。
【0018】
燃料段は、パイロット燃料段及び主燃料段を有することが好ましい。パイロット燃料段は、一般に、主燃料段及び/又は他の燃料段を介して燃焼室に供給される燃料の燃焼に使用される。主燃料段は、燃焼室の異なる位置で燃焼室に燃料を供給する異なる燃料段を有することができる。燃焼室に供給される燃料全体は、パイロット燃料段、主燃料段及び/又は他の燃料段を介して供給される燃料の合計である。制御ユニットは、パイロット燃料段を介して及び/又は主燃料段を介して燃焼室に供給される質量流量を変化させることが可能である。パイロット燃料段は、燃焼室の異なる位置で異なる燃料段を有してもよい。
【0019】
制御ユニットは、数が第1の閾値数を超えると、パイロット燃料段の質量流量を増加させるのが好ましい。制御ユニットによるこのような構成は、圧力変動を低減することができる。あるいは、又はこれに加えて、複数の主燃料段を設け、その数が第1の閾値数を超えると、異なる主燃料段の質量流量の分布が変化する。
【0020】
制御ユニットは、数が第2の閾値数を下回るときに、パイロット燃料段の質量流量を減少させることが好ましい。これにより、排ガス中の窒素酸化物濃度を有利に低減できる。従って、圧力変動を低減及び/又は制御すること、及び、同時にバーナーの排気ガス中の窒素酸化物濃度を減少させることが可能である。
【0021】
制御ユニットは、燃焼室内の燃料の燃焼の全体の出力が一定に保たれるように、パイロット燃料段階とは異なる燃料段階の少なくとも1つの質量流量を制御することが好ましい。全体の出力は、少なくとも燃焼室に供給される燃料の質量流量と、燃焼室に供給される燃料の種類に依存する。これにより、燃焼全体の出力を一定に保ちながら、圧力変動を低減及び/又は制御することが可能になる。
【0022】
制御ユニットは、バーナーのエンジンパラメータ及び/又はバーナーの周囲条件に応じて、燃料段の少なくとも1つの質量流量を記述する特性線を含むことが好ましい。制御ユ
ニットは、燃料段の少なくとも1つの質量流量を変更するときに、少なくとも特性線の範囲をシフトされる。エンジンパラメータは、例えば、ガスタービン負荷、燃料温度、排出値又は燃料圧力である。周囲条件は、例えば、周囲温度、周囲圧力又は周囲湿度である。特性線は、例えば、パイロット燃料段の質量流量又はパイロット燃料段の質量流量を含み、少なくとも他の燃料段の1つの質量流量の比を記述することができる。制御ユニットは、異なる燃料段に対して、及び/又は異なるエンジンパラメータに対して、及び/又は異なる周囲条件に対して、異なる特性線を使用することが可能である。また、特性線は、バーナーの多数のエンジンパラメータ及び/又はバーナーの多数の周囲条件に依存して質量流量を記述することも可能である。特性線又は特性線の関連する範囲をシフトさせることによって、燃焼室内の圧力変動に反応し、燃焼室内の圧力変動を低減及び/又は広範囲の運転条件にわたって非常に信頼性の高い制御が可能である。
【0023】
制御ユニットは、信号故障又はハードウェア故障を検出した場合、初期特性線を記憶し、特性線を初期特性線に戻すのが好ましい。初期特性線は、バーナーの製造中、又は建設現場でのバーナーの設置中に、制御ユニットに記憶することができる。例えば、圧力センサのハードウェア故障により特性線が変更された場合、問題のある運転条件でバーナーを運転することができる。制御ループ又は他のメカニズムを使用して故障を検出し、制御ユニットは特性線を安全な初期特性線に戻すように設定することができる。
【0024】
好ましくは、燃料段の1つを介して燃焼室に供給される燃料と、燃料段の1つを介して燃焼室に供給される燃料とは、同一又は異なるものである。燃料は、例えば、液体燃料又は気体燃料とすることができる。液体燃料は、例えば、石油又は灯油又はディーゼルのような製品であり、ガス状燃料は、例えば、天然ガス又はアンモニアガスである。異なる燃料が燃焼室に供給される場合、パイロット燃料段を介して供給される燃料は、例えば、気体状であってもよく、主燃料段を介して供給される燃料は、例えば、液体であってもよい。バーナーは、異なる種類の燃料を同時に燃焼させるように、及び/又はバーナーの運転中に異なる種類の燃料の割り当てを変化させることが可能である。異なる燃料の各々は、発熱量を有し、供給される燃料の全体の出力を一定に保つか、又は全体の出力を制御するために、発熱量及び供給される各燃料のそれぞれの質量流量を知る必要がある。制御ユニットは、予め定義された閾値との極大値の比較を使用することによって、異なる燃料の質量流量を変化させる。異なる燃料の割り当てが変化しても、異なる燃料の質量流量を変化させることにより、燃焼室内の圧力変動を低減及び/又は制御することが可能である。
【0025】
圧力シーケンスは、複数の決定されたタイムスパンを含み、制御ユニットは、2つの連続するタイムスパンの2つの極大値の間の差を計算し、その差を使用することによって、質量流量の変化の速度及び/又は質量流量の変化の大きさを制御することが好ましい。連続したタイムスパンは互いに直後に続いている。例えば、2つの連続するタイムスパンの2つの極大値の間の大きな差は、制御ユニットが、圧力変動を回避するために、質量流量の変化の速度及び/又は質量流量の変化の大きさを非常に速く変化させなければならないことを示している。例えば、2つの連続するタイムスパンの2つの極大値の間の差が小さい場合、質量流量の変化の速度及び/又は質量流量の変化の大きさをゆっくり変化させることができる。特に、タイムスパンが異なる場合、2つの連続するタイムスパンの2つの極大値の間のベクトルを計算することができ、ベクトルを使用して質量流量を制御することができる。振幅スペクトルの差と時間差を用いてベクトルを決定することができた。時間差は、例えば、2つの連続するタイムスパンの第1のタイムスパンの中心時間から、2つの連続するタイムスパンの第2のタイムスパンの中心時間までの時間である。
【0026】
フーリエ変換は高速フーリエ変換であることが好ましい。高速フーリエ変換は、フーリエ変換を拡張したものであり、算術演算の時間を節約できるフーリエ変換を高速する計算するための効率的な計算アルゴリズムである。極大値の計算中に時間を節約することができ、質量の流れをより速く制御することができる。これにより、問題のある運転条件でのバーナーの運転を回避し、圧力変動をより早く確実に低減及び/又は制御することができる。
【0027】
バーナーは、バーナーの排気ガス中の窒素酸化物濃度を決定し、窒素酸化物濃度を使用することによって燃料段の少なくとも1つの最大質量流量又は最小質量流量を決定する制御ユニットに窒素酸化物濃度を移送する排出センサを備えることが好ましい。排出センサは、燃焼の下流の排気ガス流中に配置することができる。バーナーの運転条件は燃焼の火炎温度に影響し、火炎温度は窒素酸化物の生成に影響する。窒素酸化物の生成は、火炎温度が高い場合に有利である。窒素酸化物値の増加は、火炎温度の望ましくない上昇を示す。質量流量を適応させることにより、圧力変動を低減及び/又は制御するとともに、窒素酸化物濃度を制御及び/又は低減することが可能である。窒素酸化物濃度は、例えば、パイロット燃料段を介して燃焼室に供給される最大質量流量の境界として制御ユニットに使用することができる。
【0028】
予め定義された閾値は、バーナーのエンジンパラメータ及び/又はバーナーの周囲条件を使用することによって決定することが好ましい。極大値との比較に使用される予め定義された閾値は、タービン負荷、燃料組成、燃料圧力又は燃料温度のようなバーナーのエンジンパラメータを使用することによって決定することができる。決定された閾値をエンジンパラメータに従って決定することが可能である。従って、負荷をかけることが可能であり、及び/又は圧力変動をより確実に制御することが可能である。更に、周囲条件を用いて閾値を決定することが可能である。これにより、環境条件の少なくとも1つが変化した場合に閾値を適応させ、圧力変動を低減及び/又は制御することが可能である。これにより、運転条件の広い範囲にわたって非常に信頼性の高い燃焼室内の圧力変動を低減及び/又は制御することが可能である。
【0029】
本発明によるガスタービンは、少なくとも1つのバーナーを有する。この場合、バーナーの周囲条件は、ガスタービンの周囲条件とすることができる。この場合、バーナーのエンジンパラメータは、ガスタービンのエンジンパラメータとすることができる。また、先行するいずれか1項に記載のバーナーの1つを電力ユニット又は電力プラントが備えることも可能である。
【0030】
本発明の上述の属性及び他の特徴及び利点、並びにそれらを達成する方法は、添付の図面と併せて以下の本発明の実施形態の説明を参照することにより、より明らかになり、発明自体をより良く理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、燃焼室10と、制御ユニット11と、燃料段2、3、5、6、8とを備えたバーナー1を示す。燃料段2、3、5、6、8は、燃料を燃焼室10に供給する。燃料段2、3、5、6、8は、第1の液体燃料段2、第1の気体燃料段3、第2の気体燃料段5、第3の気体燃料段6及び第2の液体燃料段8である。液体燃料は液体燃料段2、8を介して燃焼室10に供給され、気体燃料は気体燃料段2、5、6を介して燃焼室10に供給される。圧縮空気4も燃焼室10に供給される。圧縮空気4は、燃料とともに燃焼室10内で燃焼される。
図1に示す火炎7は燃焼を表し、矢印9は燃焼室10内の主流方向を表す。制御ユニット11は、燃料段2、3、5、6、8の少なくとも1つを介して燃焼室10への燃料の供給を制御する。制御ユニット11は、燃焼室10内の圧力を示す圧力シーケンス14を用いて、燃焼室10への燃料の質量流量を制御する。圧力シーケンスを測定するために、1つの圧力センサを燃焼室10の内側に配置することができる。あるいは、又はこれに加えて、圧力シーケンスは、バーナー1内の圧力を示す。この場合には、1つの圧力センサを燃焼室10の外側、特に燃焼室10を仕切る壁上に配置することができる。複数の圧力センサを設けることができ、圧力センサは、燃焼室10の周囲に円周方向に配置される。
【0033】
図2は、時間軸12及び圧力軸13を有する圧力
図15を示す。圧力
図15は、圧力シーケンス14によって表される、時間の経過に伴う燃焼室10内の圧力を示す。
図2は、異なる時間部分で圧力シーケンス14を分割するために使用することができる追加のタイムスパンt1、t2、t3、t4を示す。
図2は、タイムスパンt1、t2、t3、t4が互いに直後に位置していることを示す。あるいは、タイムスパンt1、t2、t3、t4が重なったり、連続するタイムスパンt1、t2、t3、t4の間にギャップがあってもよい。
図2は、フーリエ変換前のその時間領域における圧力シーケンス14を示す。
【0034】
図3は、時間軸21、周波数軸22、及び圧力振幅軸23を有する圧力発生
図20を示す。
さらに、周波数帯域24、決定された閾値26、及び時間範囲25を示す。圧力発生
図20は、周波数領域における対応するタイムスパンt1、t2、t3、t4の圧力シーケンス14のフーリエ変換後の異なる圧力スペクトル27、28、29、30を示す。圧力スペクトル27、28、29、30の各々は、周波数帯
域24内でそれぞれ
極大値31、32、33、34を有する。第1の圧力スペクトル27は第1の
極大値31を有し、第2の圧力スペクトル28は第2の
極大値32を有し、第3の圧力スペクトル29は第3の
極大値33を有し、第4の圧力スペクトル30は第4の
極大値34を有する。圧力スペクトル27、28、29、30は、時間軸21に沿って圧力発生
図20に配置されている。圧力発生
図20は、
極大値31、32、33、34のいくつかが決定された閾値26を超え、極大値31、32、33、34のいくつかが決定された閾値26を下回ることを示す。制御ユニット11は、決定された閾値26と
極大値31、32、33、34の少なくとも1つと比較して、燃料段2、3、5、6、8の少なくとも1つを通って燃焼室10への質量の流れを制御する。
【0035】
振幅スペクトル
図20は、さらに、第1の
極大値31から第2の
極大値32を示す第1のベクトル35と、第2の
極大値32から第3の
極大値33を示す第2のベクトル36と、第3の
極大値33から第4の
極大値34を示す第3のベクトル37とを示す。各ベクトル35、36、37は、それぞれの2つの
極大値31、32、33、34の差と、タイムスパンt1、t2、t3、t4のうちの1つの持続時間とによって決定される。制御ユニット11は、
極大値31、32、33、34の2つの間のベクトル35、36、37を計算し、ベクトル35、36、37を使用して質量流量の変化の速度及び/又は質量流量の変化の大きさを制御するようにしてもよい。
【0036】
図4は、特性線
図40を示す。特性線
図40は、バーナー1のエンジンパラメータ41、例えば、ガスタービン負荷にわたるパイロット燃料段の質量流量にわたって、燃料段2、3、5、6、8のうちの1つを介して供給される燃料の質量流量42を示す。特性線
図40は、質量流量の比、例えば、パイロット燃料段の質量流量と主燃料段の質量流量とを示してもよい。バーナー1のエンジンパラメータ41は、例えば、ガスタービン負荷、燃料温度、排出値又は燃料圧力である。上側境界44及び下側境界45は、特性線43を配置することができる運用包絡線
図47を制限する。上側境界44又は下側境界45が発光値を用いて決定することが可能である。例えば、特性線
図40が、別の燃料段2、3、5、6、8の質量流量に対するパイロット燃料段の質量流量の比を示す場合、上側境界44は、排気ガス中の最大窒素酸化物濃度によって決定することができる。また、制御
ユニット11は、極大値31、32、33、34の少なくとも1つと
予め決定された閾値26と比較することで、少なくとも特性線43の範囲を変更する。矢印46は、特性線43の可能な変更方向を示す。
【0037】
図5は、バーナー1の可能な運転プログラムのフローチャート50を示す。
この運転プログラムは、制御
ユニット11に実装することができる。フローチャート50は、第1の要素51はバーナー1の定常状態を示し、第2の要素52は
極大値の比較を示し、第3の要素53はタイムスパンの数
のカウントを示し、第4の要素54は結果の組合せを示し、第5の要素55は排出設定値を示し、第6の要素56はパイロット質量流量の変化を示し、第7の要素57は最終パイロット質量流量を示し、第8の要素58はパイロット質量流量の最大値及びパイロット質量流量の最小値を示し、第9の要素59はパイロット特性線及び第10の要素65を示す。
各要素は、矢印で示すようにリンクされている。第1の矢印66は第1の要素51から第2の要素52へのリンクを示し、第2の矢印67は第2の要素52から第4の要素54へのリンクを示し、第3の矢印68は第2の要素52から第3の要素53へのリンクを示し、第4の矢印69は第3の要素53から第6の要素56へのリンクを示し、第5の矢印70は第5の要素55から第4の要素54へのリンクを示し、第6の矢印71は第4の要素54から第6の要素56へのリンクを示し、第7の矢印72は第6の要素56から第7の要素57へのリンクを示し、第8の矢印73は第8の要素58から第7の要素57へのリンクを示し、第9の矢印74は第9の要素59から第7の要素57へのリンクを示し、第10の矢印75は第7の要素57からガスタービン60の燃焼室10へのリンクを示す。
【0038】
ガスタービン60は、圧縮機61と、燃焼室10と、タービン63と、シャフト64とを備える。圧縮機61は空気を圧縮し、圧縮された空気は第11の矢印76で示す燃焼室10に供給される。燃焼室10は、圧縮された空気を燃料とともに燃焼させる。燃焼の排気ガスは、第12の矢印78で示すタービン63に供給される。タービン63は、シャフト64を介して圧縮機61を駆動する。排出量は、第13の矢印79及び第10の要素65で示す燃焼室10の排気ガス中で測定される。第14の矢印80は、発光素子65から第4の要素54を示す。
【0039】
プログラムのターゲットは、最終パイロット質量流量(要素59)を決定し、それに応じてバーナー1を制御することである(矢印75)。最終パイロット質量流量は、パイロット質量流量(要素59及び矢印74)のパイロット特性線、及びパイロット質量流量最大値及びパイロット質量流量最小値(要素58及び矢印73)に依存する。最終パイロット質量流量は、パイロット質量流量の変化(要素56及び矢印72)を使用して決定される。パイロット質量流量の変化は、予め決定された数のタイムスパンt1、t2、t3、t4(要素53及び矢印69)の範囲内で、決定された閾値26(要素52及び54、及び矢印67、68及び71)を超える極大値31、32、33、34の数、並びに排出設定値(要素55及び矢印70)と組み合わせたバーナー1の排気ガス(要素65及び矢印79、80)内の窒素酸化物濃度に依存する。パイロット質量流量の変化は、パイロット質量流量の増加又はパイロット質量流量の減少である。プログラムは、定常状態(要素51及び矢印66)から始まる。
【0040】
本発明の好適な実施形態を詳細に説明したが、本発明は開示された実施形態によって制約されるものではなく、当業者であれば、本発明の範囲を逸脱することなく、他の変形例を導出することができる。