(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-08
(45)【発行日】2022-04-18
(54)【発明の名称】質量分析法を用いた、特性評価および/または同定のための、液体培地に由来する抗酸菌を不活性化および抽出するための方法
(51)【国際特許分類】
C12N 1/20 20060101AFI20220411BHJP
C12Q 1/04 20060101ALI20220411BHJP
G01N 27/62 20210101ALI20220411BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20220411BHJP
C12R 1/32 20060101ALN20220411BHJP
【FI】
C12N1/20 C
C12Q1/04
G01N27/62 V
C12M1/34 A
C12M1/34 B
C12R1:32
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021041681
(22)【出願日】2021-03-15
(62)【分割の表示】P 2018510063の分割
【原出願日】2016-07-15
【審査請求日】2021-04-12
(32)【優先日】2016-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2015-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502073946
【氏名又は名称】ビオメリュー・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】パランパル デオル
(72)【発明者】
【氏名】エリック ミラー
(72)【発明者】
【氏名】エリック モレノ
(72)【発明者】
【氏名】ヘザー トッティ
【審査官】白井 美香保
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-517315(JP,A)
【文献】Journal of clinical microbiology,2014年,Vol.52 No.10,p.3654-3659
【文献】培養関連製品、組織培養・濾過製品,三商研究実験用ガラス製品・機器総合カタログ,2014年,p.46
【文献】培養関連製品、組織培養・濾過製品,三商研究実験用ガラス製品・機器総合カタログ,2014年,p.44
【文献】Journal of clinical microbiology,2013年,Vol.51 No.12,p.4226-4229
【文献】Journal of clinical microbiology,2014年,Vol.52 No.1,p.130-138
【文献】European journal of clinical microbiology and infectious diseases,2015年04月,Vol.34 Vol.8,p.1527-1532
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q1/00-3/00
C12N1/00-7/08
Pubmed
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAPLUS/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS/EMBASE(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の連続的な工程を含む、試験サンプル中の
マイコバクテリアを不活性化および抽出するための方法:
(a)試験サンプルを、
液体血液培地中で培養された前記マイコバクテリアを含有する
該液体
血液培地から
、5mLの容積を有する第1のチューブへと移す工程であって、該第1のチューブは、本体、開口部を有する該本体の第1の端、および凹型の先端で終わる円錐台形の部分を有する該本体の第2の端を含む、工程;
(b)前記凹型の先端中に前記
マイコバクテリアをペレット化するために前記第1のチューブを遠心分離し、次いで
、前記凹型の先端に前記マイコバクテリアのペレットを保持しながら、第1の上清
の少なくとも90%をデカントする工
程;
(c)
第1懸濁液を生成するために、前記
マイコバクテリアのペレットをアルコールに再懸濁する工程;
(d)
第2懸濁液を生成するために、前記
第1懸濁液を、前記第1のチューブから、ビーズを含む第2のチューブへと移す工程;および
(e
)前記第2懸濁液中の塊を壊すため、およ
び、マイコバクテリア細胞を破砕するために、前記第2のチューブをアジテートする工程;および
(f
)前記試験サンプル中の前記
マイコバクテリアを不活性化
して不活性化第2懸濁液を生成するために
、少なくとも5分間、前記
第2懸濁液をインキュベートする工程。
【請求項2】
さらに、以下の工程を含む、請求項1に記載の方法:
(g)前記
不活性化第2懸濁液を第3のチューブへと移し、前記不活性化した
マイコバクテリアをペレット化するために、該第3のチューブを遠心分離し、次いで第2の上清を取り除く工程。
【請求項3】
さらに以下の工程を含む、請求項2に記載の方法:
(h)前記不活性化した
マイコバクテリアを含む溶液を生成するために、前記不活性化した
マイコバクテリアのペレットを再懸濁する工程;
(i)不活性化した
マイコバクテリアを含む前記溶液から細胞タンパク質を抽出し、前記細胞デブリスをペレット化するために、前記溶液を遠心分離する工程;
(j)工程(i)からの第3の上清のアリコートを、質量分析ターゲットスライドへと移す工程;および
(k)前記不活性化した
マイコバクテリアのタンパク質プロファイルを、前記質量分析スライド上で、質量分析装置を用いて同定する工程。
【請求項4】
工程(
g)の前記ペレットを、ギ酸に再懸濁する、請求項
2に記載の方法。
【請求項5】
前記再懸濁した不活性化した
マイコバクテリアに、アセトニトリルを、35%から65%の最終濃度になるまで加える、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記
マイコバクテリアのサンプルを
、種、系統レベル、および/または、群/複合体まで同定する、請求項3から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記
マイコバクテリアの1または2以上のマススペクトルを取得するために、前記スライド上の前記試験サンプルを質量分析法によって解析し、前記測定した1または2以上のスペクトルを1または2以上の参照用マススペクトルと比較することによって、前記試験サンプル中の前記
マイコバクテリアを特性評価および/または同定する工程をさらに含む、請求項3から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記サンプルは液体培地に由来し、かつ:
工程(a)の前記試験サンプルは、液体培地であり;
および
工程(f)
は前記
第2懸濁液をアルコール中でインキュベートする工程を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の上清の少なくとも99%が、工程(b)において取り除かれる、請求項1から
8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記アルコールは、エタノールである、請求項1から
9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
工程(e)
は、前記第2のチューブを、ビーズ式破砕装置またはボルテックスおよびビーズを用いてアジテートする工程を含み、該ビーズは0.5mmのガラスビーズである、請求項1から
10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記方法は、工程(f)の前記懸濁液を少なくとも10分間、室温においてインキュベートする工程をさらに含む、請求項1から
11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
以下の連続的な工程を含む、試験サンプル中の
マイコバクテリアを不活性化および抽出するための方法:
(a)
3mLの試験サンプルを、
液体培地中で培養されたマイコバクテリアを含有する
前記液体培地から
、微生物の生育についての陽性の結果後24時間以上72時間以内に第1のチューブへと移す工程であって、該第1のチューブは、
5mLの容積を有する本体、開口部を有する該本体の第1の端、および凹型の先端で終わる円錐台形の部分を有する該本体の第2の端を含む、工程;
(b)前記凹型の先端中に前記
マイコバクテリアをペレット化するために前記第1のチューブを遠心分離し、次いで
、前記凹型の先端に前記マイコバクテリアのペレットを保持しながら、第1の上清
の少なくとも90%をデカントする工
程;
(c)余分な液体を取り除くために、前記第1のチューブをブロッティングする工程;
(
d)
第1懸濁液を生成するために、前記
マイコバクテリアのペレットをアルコールに再懸濁する工程;
(
e)
第2懸濁液を生成するために、前記
第1懸濁液を、前記第1のチューブから、ビーズを含む第2のチューブへと移す工程;
(
f)前記第2懸濁液中の塊を壊すため、および
、マイコバクテリア細胞を破砕するために、前記第2のチューブをアジテートする工程;および
(
g)前記試験サンプル中の前記抗酸菌を不活性化
して不活性化第2懸濁液を生成するために
、少なくとも5分間、前記
第2懸濁液をインキュベートする工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイコバクテリウム属(Mycobacterium)またはノカルディア
属(Nocardia)などの抗酸菌を、不活性化および抽出するための方法に関連する
。特に、本発明は、質量分析法を用いた、液体培地中で増殖したマイコバクテリウム属ま
たはノカルディア属の種の迅速な特性評価および/または同定のための方法を対象とする
。
【背景技術】
【0002】
Vitek(登録商標)、Phoenix(商標)、およびMicroscan(登録
商標)システムなどの、従来の自動化表現型ID試験、またはAPIなどの手動表現型試
験では、ロバストな結果を得るために、微生物が適切な増殖期にあり、かつ干渉する培地
および血液生成物を含まないことを必要とする。これらのシステムでは、プレート状培地
の上で18から24時間、陽性培養液から培養したコロニーを用いる。しかしながら、よ
り迅速な結果を得るための試みとして、これらのシステムを臨床サンプルから単離した微
生物とともに用いることが、いくつかの研究室から報告されている。臨床的に意義がある
結果を医者に提供するために、より迅速かつより幅広い特異的な試験が、緊急で必要とさ
れる。
【0003】
液体培地中で培養した微生物を同定することは、サンプル容器中の微生物の濃度が低く
、および液体培地が質量分析法などの分析方法に干渉することから、特に難しい。
【0004】
質量分析法は、微生物の非常に迅速な同定を可能にする可能性を有するが、液体培地中
、および、痰、無菌の体液、またはそれらの組み合わせなどの臨床サンプル中に存在する
多くの化合物からの干渉に直面し得る。
【0005】
微生物の特性評価および同定をするための他の方法が、以下を含む文献に記述されてい
る:
【0006】
米国特許第6,177,266号は、細胞タンパク質抽出物または全細胞のいずれかを
、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析法(MALDI-TOF-
MS)で分析することによって生成された、属、種、および系統特異的バイオマーカによ
る、細菌の化学分類学的特性評価のための方法を開示する。
【0007】
米国特許第8,735,091号は、固体および液体培地に由来する、マイコバクテリ
ウム属またはノカルディア属などの抗酸菌を、不活性化および抽出するための方法を開示
する。しかしながらこの‘091特許においては、液体培地中で増殖させた場合の、抗酸
菌のタンパク質抽出に伴う難しさが認識されていない。特に、‘091特許においては、
質量分析法を用いて同定するために、十分な量の微生物のバイオマスを液体培地から確保
することの難しさが認識されていない。さらに、‘091特許においては、質量分析法を
用いた同定に干渉する、不活性化溶液を取り除くことの難しさが認識されていない。‘0
91特許においては、特定の大きさおよび/または形状を有するチューブ中で、不活性化
および抽出するために抗酸菌の十分なバイオマスを収集および保持することによる、予期
しない利益が認識されていない。最後に、‘091特許は、質量分析法を用いた同定のた
めに、ペレットを液体培地から分離して干渉を避けることの難しさに対処していない。
【0008】
したがって、当該技術分野において、後続の質量分析法による分析、特性評価、および
/または同定のために、液体培地に由来する微生物を不活性化および/または抽出するた
めの、効率がよく、かつ迅速なプロトコールに対する要求が残されている。特に、不活性
化または細胞死は、マイコバクテリウム属またはノカルディア属などの抗酸菌を、バイオ
セーフティレベル3(BSL-3/P3)環境の外において続けて取り扱うためにしばし
ば必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許第6,177,266号
【文献】米国特許第8,735,091号
【発明の概要】
【発明を解決するための手段】
【0010】
一実施形態において、本発明は、液体培地に由来する試験サンプル中の抗酸菌(例えば
、マイコバクテリウム属またはノカルディア属の種)を不活性化および抽出するための方
法を対象とし、該方法は、以下の連続的な工程を含む:(a)試験サンプルを、抗酸菌を
含有する液体培地から第1のチューブへと移す工程であって、該第1のチューブは、本体
、開口部を有する該本体の第1の端、および凹型の先端で終わる円錐台形の部分を有する
該本体の第2の端を含む、工程;(b)凹型の先端中に抗酸菌をペレット化するために前
記第1のチューブを遠心分離し、次いで第1の上清をデカントする工程であって、凹型の
先端で終わる円錐台形の部分は、第1の上清の少なくとも90%をデンカントする際に、
抗酸菌のペレットを凹型の先端中に保持するように構成されている、工程;(c)抗酸菌
のペレットをアルコールに再懸濁する工程;(d)懸濁液を、第1のチューブから、ビー
ズを含む第2のチューブへと移す工程;(e)塊を壊すため、および/または、第2のチ
ューブ中の抗酸菌細胞を破砕するために、第2のチューブをアジテートする工程;および
(f)試験サンプル中の抗酸菌を不活性化するために、少なくとも5分間、懸濁液をイン
キュベートする工程。
【0011】
一実施形態において、抗酸菌(たとえば、マイコバクテリウム属またはノカルディア属
)ペレットは、工程(c)において、約50%から約100%のエタノールに再懸濁する
ことができ、例えば、ペレットは、約70%のエタノールに再懸濁することができる。方
法は、工程(e)において、約1分間から約30分間、ビーズ式破砕をする工程、および
/または、容器をボルテックスする工程を、さらに含み得る。一実施形態において、ビー
ズは、0.5mmのガラスビーズである。一実施形態において、続くインキュベーション
工程(f)は、少なくとも約3分間、または少なくとも約10分間のインキュベーション
を含む。一実施形態において、工程(f)におけるインキュベーションは、室温において
実施される。
【0012】
他の実施形態においては、方法は、タンパク質抽出の一部として、以下の追加の連続的
な工程をさらに含む:(g)懸濁液を第3のチューブへと移し、不活性化した抗酸菌をペ
レット化するために、第3のチューブを遠心分離し、次いで第2の上清を取り除く工程;
および(h)不活性化した抗酸菌を含む溶液を生成するために、不活性化した抗酸菌のペ
レットを再懸濁する工程。いくつかの実施形態においては、工程(h)からの上清を直接
、または水懸濁液として、質量分析スライドまたはプレートへと適用することができる。
【0013】
工程(g)におけるペレットは、約50%から約90%のギ酸を用いて、再懸濁し得、
例えば、工程(h)において、ペレットは、70%のギ酸を用いて、再懸濁し得る。ペレ
ットを再懸濁する工程の後、アセトニトリルの最終濃度が約35%から約65%となるま
で、例えば、約50%の最終濃度となるまで、アセトニトリルを加え得る。一実施形態に
おいて、ペレットは、工程(h)において10μLのギ酸に再懸濁し得、および工程(h
)においてペレットを再懸濁するために10μLのアセトニトリルを加え得る。いくつか
の実施形態においては、工程(i)に示すように、細胞デブリスをペレット化するために
、懸濁液を遠心分離し得る。
【0014】
本実施形態にしたがい、方法は、以下の追加の連続的な工程をさらに含み得る:(j)
工程(i)からの上清のアリコートを、質量分析ターゲットスライドへと移し、マトリッ
クス溶液を加える工程;および(k)抗酸菌の1または2以上のマススペクトルを取得す
るために、不活性化した抗酸菌のタンパク質プロファイルを、質量分析スライド上で、質
量分析装置を用いて同定し、測定した1または2以上のスペクトルを1または2以上の参
照用マススペクトルと比較することによって、試験サンプル中の抗酸菌を特性評価および
/または同定する工程。任意で、工程(j)は、工程(i)から得られた試験サンプルの
アリコート(例えば、1μL)を、質量分析スライドまたはプレートへと移す工程を含み
、これにより、アリコートを乾燥することができ、かつ次いでマトリックスを加える。任
意の公知のマトリックスを用いることができ、例えば、マトリックスは、アルファ‐シア
ノ‐4‐ヒドロキシ桂皮酸(CHCA)であり得る。本発明にしたがって、抗酸菌を、質
量分析法、例えば、MALDI-TOF質量分析法を用いて、科、属、種、系統レベル、
および/または、群/複合体まで同定することができる。
【0015】
一実施形態に関して記載された任意の1または2以上の態様または特徴は、それに関し
て具体的に記載されていないが、異なる実施形態に組み込むことができることに留意され
たい。すなわち、任意の実施形態のすべての実施形態および/または特徴は、任意の方法
および/または組み合わせで組み合わせることができる。出願人は、最初に提出した任意
の請求項を変更する、またはそれに応じて任意の新しい請求項を提出する権利を留保し、
それは、最初に提出した任意の請求項を、その様式において最初に請求項化されていなく
ても、任意の他の請求項の任意の特徴に従属する、および/または、任意の他の請求項の
任意の特徴を取りこむように、補正することができる権利を含む。本発明のこれらおよび
他の目的および/または態様を、以下に示す明細書において詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本開示の方法およびキットを、以下の添付の図と一緒に説明する:
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係る、液体培地に由来する抗酸菌(たとえば、マイコバクテリウム属またはノカルディア属)を不活性化および抽出する方法のフローチャートを示す。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係る、凹型の先端で終わる円錐台形の部分を有するチューブの例を示す。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態に係る、異なる外形を有するチューブの例を示す。
【
図4】
図4は、VersaTREK(登録商標)自動微生物検出システム(Automated Microbial Detection System)中でインキュベートした、さまざまなマイコバクテリウム属の系統の同定結果を示す。
【
図5】
図5は、Bactec(商標) MGIT(商標)960 マイコバクテリア検出システム(Mycobacterial Detection System)中でインキュベートした、さまざまなマイコバクテリウム属系統の同定結果を示す。
【
図6】
図6は、BacT/ALERT(登録商標)3D装置中でインキュベートした、さまざまなマイコバクテリウム属の系統の同定結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、異なる形態で実施することができ、本明細書に記載された実施形態に限定さ
れると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示を徹底的かつ完全
にするため、および本発明の範囲を当業者に完全に伝えるように提供される。例えば、一
実施形態に関して説明された特徴は、他の実施形態に組み込むことができ、および特定の
実施形態に関して説明された特徴は、その実施形態から削除することができる。さらに、
本明細書に示唆された実施形態に対する多くの変形および追加は、本開示に照らして当業
者には明らかであり、本発明から逸脱しない。
【0018】
本譲受人らのVITEK(登録商標)MSシステム(ビオメリュー・インコーポレイテ
ッド、ミズーリ州セントルイス)は、サンプルのタンパク質プロファイルを分析し、およ
び公知の生物のプロファイルのデータベースと一致させるために、マトリックス支援レー
ザー脱離イオン化法―飛行時間型(MALDI‐TOF)質量分析計を用いた、細菌の同
定のためのプラットフォームを提供する。サンプルをターゲットスライド上に置き、マト
リックス(例えば、CHCAマトリックス(α‐シアノ‐4‐ヒドロキシ‐桂皮酸マトリ
ックス))によって覆い、およびそれから、質量分析計で処理した。
【0019】
最も一般的な臨床的に意義のある微生物を、細胞を直接VITEK(登録商標)MSタ
ーゲットスライド上へと置くことによって分析することができる。分析のための抗酸菌(
例えば、マイコバクテリウム属またはノカルディア属)サンプルの調製は、バイオセーフ
ティレベル3(BSL‐3/P3)環境の外でサンプルを安全に操作することができるよ
うにするために、不活性化工程が必要であるという点において、標準的な手順とは異なる
。さらに、液体培地由来のサンプルを分析することは、十分な量のバイオマスを確保する
こと、および同定に干渉する不活性化溶液を排除することへの挑戦につながる。
【0020】
本出願において、アルコール中におけるインキュベーションを機械的破砕と組み合わせ
ることによって、抗酸菌の不活性化のための、効果的かつ迅速な方法がもたらされること
が見出された。アジテーションまたは機械的破砕の工程と、その後破砕したサンプルをア
ルコール中において室温で、少なくとも3分間、少なくとも5分間、または少なくとも1
0分間、インキュベートすることによる不活性化工程とを含むプロセスを用いるときに、
アルコールへの曝露が効果的であることを示した。いくつかの実施形態において、アルコ
ールはエタノールである。一実施形態において、機械的破砕は、ボルテックス、または、
サンプル、抽出溶媒、およびビーズ(例えば、ごく小さいガラスビーズ)を含む封をした
マイクロ遠心チューブをアジテートすることによって細胞を破砕するホモジナイザーであ
る、ビーズ式破砕装置(BioSpec、オクハラマ州バートルズビル)を用いて実施す
る。典型的には、ビーズは、微量遠心チューブの中で細胞を破砕するために機能すること
ができる、任意の公知のビーズであり得る。例えば、ビーズは、ガラス、セラミック、ジ
ルコニア、シリコン、金属、スチール、タングステンカーバイド、ガーネット、砂、また
はサファイアビーズであり得る。一実施形態において、ビーズは、約0.1mmから約1
mmの大きさであり得、例えば、約0.5mmの大きさであり得る。
【0021】
明確かつ一貫したスペクトルをもたらすために、不活性化した細胞からの細胞タンパク
質の抽出を助けるための追加の処理工程を用いることができる。例えば、ギ酸による処置
工程に続いてアセトニトリルに曝す工程を用い、後の分析(例えば、質量分析法による)
用にタンパク質を抽出及び溶解してもよい。
【0022】
本発明は、液体培地に由来する試験サンプル中の未知の抗酸菌を不活性化、抽出、特性
評価、および/または、同定する方法を提供する。本発明はまた、質量分析法を用いた、
液体培地に由来する試験サンプル中の抗酸菌(たとえば、マイコバクテリウム属またはノ
カルディア属)を迅速に特性評価および/または同定するための方法を対象とする。迅速
な方法によって、従来の技術に比べてより迅速に抗酸菌を特性評価および/または同定す
ることができ、試験サンプルのより迅速な診断および特性評価/同定につながる。サンプ
ルの取得から、抗酸菌のサンプルの特性評価/同定までの、本発明の方法に含まれる工程
は、臨床的に意義がある利用できる情報を得るために、とても短い時間枠において実行す
ることができる。特定の実施形態において、本発明の方法は、約120分間未満、たとえ
ば、約110、100、90、80、70、60、50、40、30、20、15、また
は10分間未満で、実行することができる。本発明の方法の迅速性は、従来の方法に対す
る改善を表す。
【0023】
本発明の一実施形態において、サンプルは、抗酸菌感染を有する、または有すると疑わ
れる被験者(たとえば、患者)から得られる。本明細書中で用いられる場合、用語「抗酸
菌」は、マイコバクテリウム属およびアクチノマイセス属(Actinomyces)(
ノカルディア属、ロドコッカス属(Rhodococcus)、ゴルドニア属(Gord
onia)、ツカムレラ属(Tsukamurella)、およびディエチア属(Die
tzia))を包含するが、これらに限定されない任意の抗酸菌を包含する。
【0024】
本明細書中で用いられる場合、用語「マイコバクテリア」または「マイコバクテリウム
属」は、マイコバクテリウム ツベルクローシス(Mycobacterium tub
erculosis)、マイコバクテリウム ボビス(Mycobacterium b
ovis)、マイコバクテリウム ミクロティ(Mycobacterium micr
oti)、マイコバクテリウム アフリカナム(Mycobacterium afri
canum)、マイコバクテリウム カネッティ(Mycobacterium can
etti)、マイコバクテリウム アビウム(Mycobacterium avium
)、マイコバクテリウム イントラセルラーレ(Mycobacterium intr
acellulare)、マイコバクテリウム スクロフラセウム(Mycobacte
rium scrofulaceum)、マイコバクテリウム カンサシ(Mycoba
cterium kansasii)、マイコバクテリウム マルモエンス(Mycob
acterium malmoense)、マイコバクテリウム ゼノピ(Mycoba
cterium xenopi)、マイコバクテリウム マリヌム(Mycobacte
rium marinum)、マイコバクテリウム シミアエ(Mycobacteri
um simiae)、マイコバクテリウム テラエ(Mycobacterium t
errae)、マイコバクテリウム ウルセランス(Mycobacterium ul
cerans)、マイコバクテリウム アブセッサス(Mycobacterium a
bscessus)、マイコバクテリウム フォーチュイタム(Mycobacteri
um fortuitum)、マイコバクテリウム ケロネー(Mycobacteri
um chelonae)、マイコバクテリウム スメグマチス(Mycobacter
ium smegmatis)、マイコバクテリウム アルベイ(Mycobacter
ium alvei)、マイコバクテリウム ファルシノゲネス(Mycobacter
ium farcinogenes)、マイコバクテリウム フォーチュイタム フォー
チュイタム亜種(Mycobacterium fortuitum ssp fort
uitum)、マイコバクテリウム ハウストネンス(Mycobacteirum h
oustonense)、マイコバクテリウム ペレグリナム(Mycobacteri
um peregrinum)、マイコバクテリウム ポルシナム(Mycobacte
rium porcinum)、マイコバクテリウム セネガレンセ(Mycobact
erium senegalense)、マイコバクテリウム ゲナベンス(Mycob
acterium genavense)、マイコバクテリウム ヘモフィルム(Myc
obacterium haemophilum)、マイコバクテリウム イムノゲナム
(Mycobacterium immunogenum)、マイコバクテリウム レン
ティフラバム(Mycobacterium lentiflavum)、マイコバクテ
リウム ムコゲニカム(Mycobacterium mucogenicum)、マイ
コバクテリウム ツルガイ(Mycobacterium szulgai)、マイコバ
クテリウム ツベルクローシス複合体(Mycobacterium tubercul
osis complex)およびマイコバクテリウム ゴードナエ(Mycobact
erium gordonae)などの、迅速発育菌、または遅発育菌を包含するが、こ
れらに限定されない任意の公知のマイコバクテリウム属を含むことを意図している。いく
つかの実施形態において、M. アブセッサス(M. abscessus)、M. フ
ォーチュイタム(M. fortuitum)、M. ケロネー(M. chelona
e)、およびM. スメグマチス(M. smegmatis)などの迅速発育菌は、短
い時間で同定することができ、診断および処理を助ける。予期できなかったことに、遅発
育菌マイコバクテリウム属の種もまた、敏速に不活性化および抽出することができ、また
、
図4~6に示すように、短い時間で同定できた。
【0025】
本明細書中で用いられる場合、用語「ノカルディア属」は、ノカルディア アエロコロ
ニゲネス(Nocardia aerocolonigenes)、ノカルディア アフ
リカーナ(Nocardia africana)、ノカルディア アルゼンティネンシ
ス(Nocardia argentinensis)、ノカルディア アステロイデス
(Nocardia asteroids)、ノカルディア ブラックウェルイー(No
cardia blackwellii)、ノカルディア ブラジリエンシス(Noca
rdia brasiliensis)、ノカルディア ブレビカテナ(Nocardi
a brevicatena)、ノカルディア カメア(Nocardia camea
)、ノカルディア カヴィエ(Nocardia caviae)、ノカルディア セラ
ドエンシス(Nocardia cerradoensis)ノカルディア コラリナ(
Nocardia corallina)、ノカルディア シリアシジョージカ(Noc
ardia cyriacigeorgica)、ノカルディア ダソンヴィレイ(No
cardia dassonvillei)、ノカルディア エレガンス(Nocard
ia elegans)、ノカルディア ファルシニカ(Nocardia farci
nica)、ノカルディア ナイジイタンシス(Nocardia nigiitans
is)、ノカルディア ノヴァ(Nocardia nova)、ノカルディア オパカ
(Nocardia opaca)、ノカルディア オティティジス-キャビアルム(N
ocardia otitidis-cavarium)、ノカルディア パウシボラン
ス(Nocardia paucivorans)、ノカルディア シュードブラシリエ
ンシス(Nocardia pseudobrasiliensis)、ノカルディア
ルブラ(Nocardia rubra)、ノカルディア セリオラエ(Nocardi
a seriolae)、ノカルディア トランスバレンシス(Nocardia tr
ansvelencesis)、ノカルディア ユニフォルミス(Nocardia u
niformis)、ノカルディア ヴァシニ(Nocardia vaccinii)
、およびノカルディア ベテラナ(Nocardia veterana)を包含するが
、これらに限定されない任意の公知のノカルディア属を包含することを意図している。
【0026】
本明細書で用いられる場合、「特性評価」は、生物学的粒子の幅広いカテゴリ化、また
は分類、および/または、抗酸菌の科、属、種、および/または系統レベルまたは群/複
合体の実際の同定を包含する。分類は、抗酸菌の表現型および/または形態上の特性の判
定を含んでもよい。例えば、細菌の特性評価は、構造、形、大きさ、着色、クラスタリン
グ、および/または代謝などの観察できる違いに基づいて達成されてもよい。
【0027】
本明細書で使用される場合、「同定」とは、これまで未知とされてきた抗酸菌(例えば
、マイコバクテリウム属またはノカルディア属)が、どの科、属、種、系統、または群/
複合体に属するかを決定することを意味する。例えば、これまで未知とされてきた抗酸菌
を、科、属、種、系統レベル、および/または、群/複合体まで同定することなどである
。
【0028】
実施態様において、本発明は、液体培地中に含まれる抗酸菌の不活性化方法を対象とす
る。一実施形態においては、方法は以下の工程を含む:(a)試験サンプルを、抗酸菌を
含有する液体培地から第1のチューブへと移す工程であって、該第1のチューブは、本体
、開口部を有する該本体の第1の端、および凹型の先端で終わる円錐台形の部分を有する
該本体の第2の端を含む、工程;(b)凹型の先端中に抗酸菌をペレット化するために第
1のチューブを遠心分離し、次いで第1の上清をデカントする工程であって、凹型の先端
で終わる円錐台形の部分は、第1の上清の少なくとも90%をデンカントする際に、抗酸
菌のペレットを凹型の先端中に保持するように構成されている、工程;(c)抗酸菌のペ
レットをアルコールに再懸濁する工程;(d)懸濁液を、ビーズを含む第2のチューブへ
と移す工程;(e)第2のチューブ中の塊を壊すため、および/または、抗酸菌細胞を破
砕するために、第2のチューブをアジテートする工程;および(f)試験サンプル中の抗
酸菌を不活性化するために、少なくとも5分間、懸濁液をインキュベートする工程。
【0029】
一実施形態においては、取得した液体培養サンプルは、約0.5mLから約10mL、
約1mLから約5mL、約1mLから約3mL、または約1、2、3、4、もしくは5m
Lであり得る。例示的な実施形態においては、陽性の液体培地から取得したサンプルは、
約3mLである。液体培養サンプルからの少なくとも約3mLを含むサンプルは、質量分
析法による正確な同定をもたらすために十分な微生物を有することが見出されている。
【0030】
いくつかの実施形態においては、抗酸菌を含有する液体培地は、抗酸菌について陽性の
試験結果が得られたサンプル容器である。たとえば、サンプル容器は、被験者からの生物
学的サンプルを培養し得る。被験者が抗酸菌について陽性であるとき、サンプル容器は、
たとえば容器内のセンサによって、陽性と認定される。一実施形態においては、液体培養
サンプルは、サンプル容器が陽性と認定された後、少なくとも約24時間後に取得される
。いくつかの実施形態においては、液体培養サンプルは、サンプル容器が陽性と認定され
た後、約24時間から72時間の間に、取得される。さらなる実施形態においては、液体
培養サンプルは、サンプル容器が陽性と認定された後、1時間、2時間、4時間、6時間
、9時間、12時間、15時間、18時間、21時間、または24時間後に、取得される
。さらに他の実施形態においては、液体培養サンプルは、サンプル容器が陽性と認定され
た後、48時間よりも遅くに取得される。いくつかの実施形態においては、陽性と認定さ
れた後もサンプル容器をインキュベートし続けることによって、サンプル容器内の微生物
の個体数が増加する。たとえば、いくつかの実施形態においては、抗酸菌についての必要
とされるバイオマスとして、最低濃度の1.0×107CFU/mLがサンプル中に存在
する。このようにして、液体培養サンプル中の微生物の濃度はより多くなり、かつ、質量
分析により正確に同定できる可能性がより増加する。さらに、いくつかの研究室において
は、日または週の間に、サンプル容器を評価することができない時が存在し得る。本方法
は、時間の長さに融通がきき、サンプル容器が陽性と認定された後、サンプル容器をイン
キュベートし得る。
【0031】
説明したように、いくつかの実施形態においては、方法は、本体、開口部を有する本体
の第1の端、および凹型の先端で終わる円錐台形の部分を有する本体の第2の端を有する
チューブの中で、サンプルを遠心分離する工程を含む。
図2について簡単に説明すると、
説明した例示的なチューブが示されている。
図2においては、チューブ200は、チュー
ブ200の縦軸210にそって、本体202、本体202の第1の端における開口部20
4、および本体202の第2の端における凹型の先端208で終わる円錐台形の部分20
6を含む。一実施形態において、本体は、約5mLの容積を有する。たとえば、本体は、
3mL、4mL、5mL、6mL、または7mLの容積を有する。本明細書中で用いられ
る場合、「円錐台形」は、円錐の錐台の形状を意味する。円錐の錐台は、土台に対して並
行な面で上部を切ることによって形成された、円錐の土台部分である。いくつかの実施形
態においては、チューブ200は、チューブ200の内容物を保持するために何度も封が
できるキャップ212を含み、チューブ200の内容物は、さらにセーフティロックによ
って保持されてもよい。いくつかの実施形態においては、何度も封ができるキャップは、
スクリューキャップであり得る。この実施形態においては、スクリューキャップは、第1
のチューブ中に微生物を封じることによってユーザを保護する。たとえば、スクリューキ
ャップは、感染の機会を減少させるために、気密な封を形成してもよい。さらなる実施形
態においては、何度も封ができるキャップは、スナップフィットキャップであり得、Oリ
ングシールまたはツイストロックのような特徴を含んでもよい。
【0032】
いくつかの実施形態においては、円錐台形の部分206の縦軸210からの角度は、4
5度より小さい。たとえば、円錐台形の部分206の縦軸からの角度は、約30度、約2
5度、約20度、約15度、約10度、または約5度であり得る。円錐台形の部分206
の縦軸210に対する角度は、ペレット化された微生物を凹型の先端中に保持しながら、
チューブから上清をデカントすることを助ける。いくつかの実施形態においては、凹型の
先端は、上清(たとえば、液体培地など)をデカントする際に、抗酸菌のペレットを保持
するように構成されている。
【0033】
いくつかの実施形態においては、第1のチューブを少なくとも約10分間遠心分離し、
たとえば、第1のチューブを、5分間、10分間、15分間など、遠心分離し得る。一実
施形態においては、チューブの底にペレットを、かつペレットの上部に上清を生成するた
めに、第1のチューブを3,000×gにおいて遠心分離する。第1のチューブは、当業
者の決定に従い、より速い、またはより遅い速度で遠心され得る。
【0034】
いくつかの実施形態においては、第1のチューブ中でサンプルを遠心分離した後、遠心
分離によって生じた第1の上清を第1のチューブからデカントし、ここで、凹型の先端で
終わる円錐台形の部分は、抗酸菌のペレットを凹型の先端中に保持するように構成されて
いる。いくつかの実施形態においては、少なくとも約90%の第1の上清がデカントされ
る。たとえば、90%、95%、99%、または99.9%の上清が第1のチューブから
デカントされる。上清の除去およびペレット化された微生物の保持は、質量分析法を用い
た微生物の正確な同定のために重要である。生物学的サンプル中の過剰な上清が、質量分
析計を用いて生成されたスペクトルに干渉し得ることから、上清の除去は重要である。質
量分析計による分析のために十分な微生物が利用できることを保証するために、ペレット
化された微生物の保持は重要である。いくつかの実施形態においては、デカントする工程
は、第1のチューブを吸い取り紙によって乾かす工程、および/または、上清が開口部か
ら出ていくことができるように、第1のチューブを一定時間さかさまにする工程を含む。
【0035】
遠心分離工程(b)の後、工程(c)において、約10μLから約1mL、または約5
0μLから約750μL、約100μLから約500μL、または約500μLのアルコ
ールによって、第1のチューブ中で抗酸菌のペレットを再懸濁することができる。ペレッ
トを懸濁するために用いるアルコールは、約50%から約100%のアルコール、約60
%から約90%のアルコール、または約50%、60%、70%、80%、または90%
のアルコールであり得る。例示的な実施形態においては、アルコールはエタノールである
。
【0036】
いくつかの実施形態においては、方法は、第1のチューブから、ビーズを含む第2のチ
ューブへと懸濁液を移す工程を含む。いくつかの実施形態においては、方法は、塊を壊す
ため、および/または、抗酸菌細胞を破砕するために、懸濁液をアジテートする工程を含
む。たとえば、抗酸菌試験サンプルを、ボルテックス、または、サンプル、抽出溶媒、お
よびビーズを含む封をしたマイクロ遠心チューブをアジテートすることによって細胞を破
砕するホモジナイザーである、ビーズ式破砕装置(たとえば、BioSpec社(オクラ
ホマ州バートルズビル)のビーズ式破砕装置)を用いて、機械的に破砕する。典型的には
、ビーズは、容器または微量遠心チューブの中で細胞を破砕するために機能する、任意の
公知のビーズであり得る。例えば、ビーズは、ガラス、セラミック、ジルコニア、シリコ
ン、金属、スチール、タングステンカーバイド、ガーネット、砂、またはサファイアビー
ズであり得る。一実施形態において、ビーズは、約0.1mmから約1mmの大きさであ
り得、例えば、約0.5mmの大きさであり得る。一実施形態において、ビーズは、0.
5mmのガラスビーズである。典型的には、工程(e)において、約1分間から約30分
間、約5分間から約20分間、約5分間から約10分間、または約5分間または10分間
、ビーズ式破砕、または容器をボルテックスすることにより、チューブに破砕を施す。さ
らなる実施形態においては、ボルテックスを用いて、チューブを一定時間アジテートする
。たとえば、チューブを少なくとも約15分間ボルテックスし得る。いくつかの実施形態
においては、チューブを10分間、15分間、20分間、30分間、またはそれより長く
、ボルテックスする。
【0037】
試験サンプル中の抗酸菌を破砕した後、チューブ、およびすなわち試験サンプル中の抗
酸菌(たとえば、マイコバクテリウム属またはノカルディア属)を、容器を少なくとも3
分間インキュベートすることによって、不活性化する。一実施形態においては、インキュ
ベーション工程(f)は、少なくとも5分間または少なくとも10分間であり得る。他の
実施形態において、インキュベーション工程(f)は、約5分間から約30分間、約10
分間から約20分間、または約5、10、15、20、25または30分間であり得る。
一実施形態においては、インキュベーション工程(f)は、室温において実施される。他
の実施形態において、インキュベーション工程(f)は、より高い温度、たとえば、30
℃、37℃、または55℃において実施される。
【0038】
他の様態において、本発明は、抗酸菌試験サンプルのタンパク質抽出のためのさらなる
工程を対象とする。一実施形態において、本発明の抽出工程にさらされる抗酸菌試験サン
プルは、上述した不活性化のための方法から得られた試験サンプルであり得る(すなわち
、上述した不活性化した抗酸菌試験サンプル)。
【0039】
抽出方法は、以下の工程を含み得る:(g)懸濁液を第3のチューブへと移し、不活性
化した抗酸菌(たとえば、マイコバクテリウム属またはノカルディア属)をペレット化す
るために、第3のチューブを遠心分離し、次いで第2の上清を取り除く工程;および(h
)不活性化した抗酸菌を含む溶液を生成するために、不活性化した抗酸菌のペレットを再
懸濁する工程。いくつかの実施形態においては、不活性化した抗酸菌のペレットを、ギ酸
および/またはアセトニトリルに再懸濁する。任意で、方法は、細胞タンパク質を抽出し
(工程(i))、細胞デブリスをペレット化するために、工程(h)の後に容器中の試験
サンプルの遠心分離を、さらに含む。たとえば、第3のチューブは、16,000×gに
おいて2分間、遠心分離することができる。
【0040】
これらの実施形態にしたがって、約50%から約100%のギ酸、約60%から約90
%のギ酸、または約50%、60%、70%、80%、90%、または100%のギ酸を
用いて、ペレットを再懸濁し得る。いくつかの実施形態においては、ペレットを再懸濁し
た後、アセトニトリルを、約35%から約65%の最終濃度まで、約40%から約60%
の最終濃度まで、またはアセトニトリルの最終濃度が、約35%、40%、50%、60
%、または65%となるまで、加える。一実施形態においては、この工程において100
%アセトニトリルを用いるが、他の濃度のアセトニトリルを用いてもよい。
【0041】
一実施形態においては、ペレットを少なくとも3、5、または10μLのギ酸に再懸濁
し得、および再懸濁したペレットに、少なくとも3、5、または10μLのアセトニトリ
ルを加えることができる。他の実施形態においては、ペレットを、約3μLから約100
μLのギ酸、約5μLから約80μLのギ酸、約10μLから約50μLのギ酸、または
約3、5、10、15、20、25、30、40、50、60、70、80、90、また
は100μLのギ酸を用いて再懸濁し得る。他の実施形態においては、ペレットを再懸濁
した後、少なくとも約3、5、または10μLのアセトニトリルを、再懸濁したペレット
に加える。たとえば、約3μLから約100μLのアセトニトリル、約5μLから約80
μLのアセトニトリル、10μLから約50μLのアセトニトリル、または約3、5、1
0、15、20、25、30、40、50、60、70、80、90、または100μL
のアセトニトリルを、再懸濁したサンプルに加え得る。
【0042】
本発明は、質量分析法を用いた、たとえば、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛
行時間型質量分析法(MALDI‐TOF‐質量分析法)を用いた、未知の抗酸菌(たと
えば、マイコバクテリウム属またはノカルディア属)を特性評価、および/または、同定
するための方法もまた提供する。本発明にしたがって、特性評価および/または同定工程
は、上述した不活性化および抽出工程の後に行い得る。
【0043】
この実施形態にしたがって、方法は、以下の追加の工程をさらに含み得る:工程(j)
からの上清のアリコートを、質量分析ターゲットスライドへと移し、上清へマトリックス
溶液を加える工程;および(k)抗酸菌の1または2以上のマススペクトルを取得するた
めに、質量分析法によって、質量分析スライド上において、第3の上清中の不活性化した
抗酸菌のタンパク質プロファイルを同定し、測定した1または2以上のスペクトルを1ま
たは2以上の参照用マススペクトルと比較することによって、試験サンプル中の抗酸菌を
、特性評価および/または同定する工程。任意で、移したアリコートは、約0.5μLか
ら約2.5μL、または約1μLであり得る。当該技術分野においてよく知られているよ
うに、アリコートは、典型的には乾燥することができ、かつ次いで、マトリックス溶液を
加える。一般的に、当該技術分野における任意の公知のマトリックスを用いることができ
る。たとえば、一実施形態においては、マトリックスは、アルファ‐シアノ‐4‐ヒドロ
キシ桂皮酸(CHCA)である。本発明にしたがって、抗酸菌(たとえば、マイコバクテ
リウム属またはノカルディア属)は、さらに以下で記載するように、たとえばMALDI
-TOF質量分析法を用いて、科、属、種、系統レベル、または、群/複合体まで同定す
ることができる。
【0044】
質量分析プレートまたはスライドを準備した後、スライドまたはプレートを質量分析計
に挿入する。試料のポンプダウン時間が終わった後(すなわち、10-5から10-7T
orrの雰囲気下になるように大気ガスを試料から除去する)、試料を質量分析計のイオ
ン化室に導入する。試料を装置に合わせて並べる。最適配置が得られたら、窒素レーザー
を照射する。マトリックスはレーザーエネルギーを吸収し、蓄積した高エネルギーにより
プレート表面から気化する。副次的効果として、本工程においては、抗酸菌細胞の一部(
たとえばタンパク質)も蒸発してイオン化される。これらのイオンは、プレートと、質量
分析計の飛行管への入り口との間における静電界の発生により、既知の運動エネルギーに
まで加速される。質量にかかわらず、すべての一価イオンは、飛行管の入り口で同じ運動
エネルギーを有するが、その質量に反比例した速度を有する。飛行管の入り口から、イオ
ンは、飛行管を移動して検出器に向かい、かつ、より軽いイオンは、より重いイオンの前
に達する(飛行管は質量/電荷識別器である)。検出器は、イオンが検出器に衝突するた
びに電荷を発生する。検出器の出力はデジタル化され、その出力は、一方の座標軸に質量
/電荷比、もう一方の座標軸に衝突回数を表示する。一実施形態においては、スライドま
たはプレート上の抗酸菌のタンパク質プロファイルは、MALDI‐TOF質量分析法、
脱離エレクトロスプレーイオン化(DESI)質量分析法、ガスクロマトグラフ(GC)
質量分析法、液体クロマトグラフ(LC)質量分析法、エレクトロスプレーイオン化(E
SI)質量分析法、及び選択イオンフローチューブ(SIFT)分析法などの、任意の公
知の質量分析技術、或いは、他の質量分析技術を用いて、解析することができる。
【0045】
一実施形態においては、対照測定値(control measurements)を
既知の抗酸菌に対して取ることで、測定した試験データと調査対象の抗酸菌の特性評価と
の相関付けを様々な数学的方法を使用して行うことが可能となる。例えば、ソフトウェア
システムを活用して、サンプルからのデータを、基準または対照測定値と比較し得る。よ
り詳細には、データを多数の多変量解析法、例えば、一般判別分析(GDA)、部分最小
二乗法判別分析(PLSDA)、部分最小二乗回帰、主成分分析(PCA)、平行因子分
析(PARAFAC)、ニューラルネットワーク分析(NNA)及び/またはサポートベ
クターマシン(SVM)によって分析し得る。これらの方法を使用することにより、調査
対象の未知の抗酸菌(例えば、マイコバクテリア属またはノカルディア属)を、既存の命
名法に基づいて関連群に、及び/または、有機体の代謝、病原性及び/若しくは毒性に基
づいて、天然群に分類することができる。一実施形態においては、抗酸菌の1または2以
上のマススペクトルを取得した後、その1または2以上のスペクトルを「SARAMIS
」微生物同定ソフトウェア(ビオメリュー社、ミズーリ州セントルイス)に入力し、抗酸
菌の解析、つまり特性評価及び/または同定を実施する。
【0046】
また別の実施形態では、検出時間および増殖率などの検出システムからの非分光測定値
を、試験サンプルに由来する抗酸菌の特性評価及び/または同定を助けるために用いるこ
とができる。
【0047】
本発明のいくつかの実施形態においては、試験サンプル中の抗酸菌の特性評価及び/ま
たは同定において、正確な種の同定を行う必要はない。特性評価は、単一の種の実際の同
定だけでなく、生物学的粒子の幅広いカテゴリ化または分類も包含し得る。本明細書で使
用される場合、「同定」とは、これまで未知とされてきた抗酸菌が、どの科、属、種、系
統レベル、または、群/複合体に属するのか決定することを意味する。例えば、これまで
未知とされてきた抗酸菌を、科、属、種、系統レベル、または群/複合体まで同定する。
【0048】
ここで
図1を参照すると、一様態において、液体試験サンプル中の抗酸菌の不活性化、
抽出、および同定のための方法100を提供する。一実施形態において、方法は、以下の
工程を含む:(a)試験サンプルを、抗酸菌を含有する液体培地から第1のチューブへと
移す工程であって、該第1のチューブは、本体、開口部を有する該本体の第1の端、およ
び凹型の先端で終わる円錐台形の部分を有する該本体の第2の端を含む、工程;(b)凹
型の先端中に抗酸菌をペレット化するために第1のチューブを遠心分離し、次いで第1の
上清をデカントする工程;(c)懸濁液を生成するために、抗酸菌のペレットをアルコー
ルに再懸濁する工程;(d)懸濁液を、機械的破砕のために、ビーズを含む第2のチュー
ブへと移す工程;(e)抗酸菌を不活性化するために、アルコール中の懸濁液をインキュ
ベートする工程;(f)懸濁液を、第3のチューブへと移す工程;(g)不活性化した抗
酸菌をペレット化するために、第3のチューブを遠心分離し、次いで第2の上清を取り除
く工程;(h)不活性化した抗酸菌を含む溶液を生成するために、不活性化した抗酸菌の
ペレットを再懸濁する工程;(i)不活性化した抗酸菌を含む溶液から細胞タンパク質を
抽出し、前記細胞デブリスをペレット化するために、前記溶液を遠心分離する工程;(g
)工程(i)からの第3の上清のアリコートを、質量分析ターゲットスライドへと移す工
程;および(h)抗酸菌のタンパク質プロファイルの1または2以上のマススペクトルを
取得するために、質量分析法によって、前記質量分析ターゲットスライドを解析し、測定
した1または2以上のスペクトルを1または2以上のタンパク質プロファイルの参照用マ
ススペクトルと比較することによって、前記試験サンプル中の前記抗酸菌を特性評価およ
び/または同定する工程。
【0049】
ここでブロック102を参照すると、いくつかの実施形態において、方法は、陽性の液
体培地から、陽性の結果後24~72時間の間に、3.0mLのサンプルを取得する工程
を含む。説明したように、サンプルの容積は、質量分析装置を用いて、受容し得るスペク
トルを取得するために、十分な微生物がサンプル中に存在することを保証することを助け
る。同様に、陽性の液体培地から、陽性の結果後24~72時間の間に、サンプルを取得
することによって、液体培地中の微生物の数を増加させる。いくつかの実施形態において
は、陽性の液体培地からサンプルを、24時間より短い時間内で取得する。たとえば、マ
イコバクテリウム属の多くの系統が、陽性のわずか2時間後に同定され得ることを示す図
4~6を参照されたい。
【0050】
ブロック104においては、いくつかの実施形態においては、サンプルを、凹型の先端
で終わる円錐台形の部分を有するチューブ(たとえば、5.0mLのチューブ)中に入れ
、それから遠心分離する。たとえば、ペレットを凹型の先端中に、かつ上清をペレットの
上に生成するために、チューブを3,000×gにおいて10分間遠心分離することがで
きる。それから上清を、デカントする工程によって捨てる。たとえば、チューブを逆さま
にし、上清を開口部を通して捨て、それから過剰な液体を取り除くために、チューブを吸
い取り紙によって乾かし得る。
【0051】
ブロック106においては、ペレットをアルコールに再懸濁する。いくつかの実施形態
においては、ペレットを500μLの70%エタノールに再懸濁し、および一実施形態に
おいては、懸濁液を0.5mmのガラスビーズを含む第2のチューブに移す。いくつかの
実施形態においては、ガラスビーズを元のチューブに加える。いくつかの実施形態におい
ては、アルコールは微生物を不活性化しはじめるが、細胞は懸濁液中で塊になったままで
ある。結果として、はじめのアルコール処理は、アジテーション後の処理と同じくらい効
果的ではない。
【0052】
ブロック108において、一実施形態においては、チューブをビーズ式破砕し、それか
らインキュベートする。たとえば、5分間チューブをビーズ式破砕し得、それから10分
間インキュベートし得る。アジテーションおよびインキュベーションの組み合わせは、微
生物を不活性化する。或いは、ブロック110に示すように、いくつかの実施形態におい
ては、チューブをボルテックスしてからインキュベートし、たとえば15分間ボルテック
スしてから10分間インキュベートする。議論したように、インキュベーションは室温に
おいて、またはより高い温度において実施され得る。
【0053】
ここで、ブロック112を参照すると、いくつかの実施形態においては、アジテーショ
ンおよびインキュベーションの後にチューブ中に存在する不活性化した抗酸菌を、ボルテ
ックスし、懸濁液を空のチューブに移す。ブロック114においては、懸濁液を遠心分離
し、エタノールの上清を取り除き、不活性化した抗酸菌をチューブ中でペレット化したま
ま残す。
【0054】
ブロック116および118においては、細胞タンパク質を、10μLの70%ギ酸を
加え、その後10μLのアセトニトリルを加えることによって抽出する。いくつかの実施
形態においては、細胞デブリスをペレット化するために、ギ酸および/またはアセトニト
リルを加えた後にチューブをボルテックスする。
【0055】
ブロック120においては、1μLの懸濁液を質量分析ターゲットスライド上に播種し
、ブロック122においてマトリックスをターゲットスライドに加え、およびブロック1
24においてMALDI‐TOF質量分析法を用いて微生物を同定する。この方法におい
ては、液体培地から同定を行うことの難しさに対処する特定の工程を用いることによって
、液体培地に由来する微生物の同定における予期しない改善を表す。
【0056】
ここで話を
図3に移すと、チューブの外形の比較300を提供する。
図3に示すように
、チューブAは、凹型の先端で終わる円錐台形の部分を有する。この外形は、チューブB
、C、D、およびEと対照的である。チューブAは、質量分析法を用いた微生物の同定を
助けるために、上清の多くの割合をデカントする際に、ペレットを凹型の先端に保持する
ことが見出された。チューブBは、たとえば、ペレットのいくらか、またはすべてが上清
をデカントする工程の間に失われてしまうため、同定に適さない。チューブCは、デカン
トする工程の間に、保持された上清を減らすが、ペレットを保持するように設計されてい
ない。かわりに、先端の形によって、上清はペレットの下および周囲に保持される。同様
に、チューブDは、ペレットを保持するが、ペレットの下の角のある先端中に液体もまた
保持する。たとえば、チューブAをデカントした後に、一実験においてはたった10~2
0μLの培地のみがチューブ中に保持されていたが、チューブDにおいてはデカントした
後に、200~400μLの培地がチューブ中に残っていた。チューブEは、デカントす
る工程の間に、ペレットのいくらか、またはすべての損失につながった。予期できなかっ
たことに、チューブAは、液体培地を用いることの難しさに対処しながら、質量分析装置
を用いた微生物の同定において、著しく改善した結果を示す。
【0057】
図4においては、VersaTREK(登録商標)自動微生物検出システム中でインキ
ュベートした、ATCCおよび臨床的に単離したマイコバクテリウム属の種の、多数の系
統の同定結果を提供する。この図においては、28の異なるマイコバクテリウム属の系統
を、VersaTREK(登録商標)自動微生物検出システム中でインキュベートした。
各系統をサンプル容器中でVersaTREK(登録商標)自動微生物検出システムを用
いてインキュベートし、サンプル容器が微生物の増殖について陽性であるとシステムが表
示したときに取り除き、追加の時間、サンプル容器中でインキュベートし、およびマイコ
バクテリウム属の細胞からのタンパク質を不活性化かつ抽出するために、サンプル容器か
らのサンプルを、本明細書中で開示した方法によって、断続的に処理した。陽性後のサン
プルが、正確なマススペクトルを生じるために、十分なバイオマスを有し、かつコンタミ
ネーションを欠いているかどうかを決定するために、MALDI‐TOF質量分析法によ
って、マイコバクテリアのタンパク質を分析した。
図4に示す結果は、本明細書に開示し
た方法が、サンプル容器が微生物の増殖について陽性であるとシステムが判定した後、短
い時間で、マイコバクテリアのタンパク質を不活性化および抽出することができ、および
、正確にスペクトルを生成することができ、予期された種レベルの同定に対して、99.
9%の一致度で合致することを実証する。陽性の後、36時間以内に処理したとき、試験
したすべての系統が正確に同定され、かつ、3つの系統を除いてすべてが24時間以内に
同定された。驚くべきことに、M. avium(M. アビウム)およびM. int
racellulare(M. イントラセルラーレ)などの高い普及率の系統を含む多
くの系統は、陽性後、12時間以内に処理したとき、正確に同定された。
【0058】
図5は、Bactec(商標) MGIT(商標)960マイコバクテリア検出システ
ム中でインキュベートした、さまざまなマイコバクテリウム属の系統の同定結果を示す。
図4と同様に、
図5は、本方法が陽性の後迅速に、マイコバクテリアのタンパク質を不活
性化、抽出、および同定することができることを実証する。たとえば、2つ以外のすべて
の系統は、24時間以内で、予期された種レベルの同定に対して、99.9%の一致度で
合致するサンプルスペクトルを有していた。残りの2つの系統は、40時間以内で、予期
された種レベルの同定に対して、99.9%の一致度で合致した。マイコバクテリアのタ
ンパク質のこの迅速な不活性化、抽出、および同定は、マイコバクテリアに関連する感染
症の治療に衝撃を与えるだろう。
【0059】
図6においては、BacT/ALERT(登録商標)3D装置中でインキュベートした
マイコバクテリウム属のさまざまな系統の同定結果を提供する。再度、サンプルをサンプ
ル容器中でインキュベートし、装置はサンプルが微生物の増殖について陽性となったとき
を判定し、および開示した方法によって、試験のために、サンプルを陽性のサンプル容器
から、断続的に取得する。この例において、すべての系統は、24時間以内で、予期され
た種レベルの同定に対して、99.9%合致するサンプルスペクトルを有していた。
【0060】
他の様態においては、
図1および本明細書の他の場所で記載した、方法とともに用いる
ためのキットを提供する。一実施形態においては、キットは、本体、開口部を有する該本
体の第1の端、および凹型の先端で終わる円錐台形の部分を有する該本体の第2の端を有
する第1のチューブであって、第1のチューブは少なくとも5mLの容積を有する、第1
のチューブ;アルコールの溶液;ギ酸の溶液;およびアセトニトリルの溶液を含む。さら
なる実施形態においては、キットは0.5mmのガラスビーズおよび/または吸い取り紙
を含み得る。同様に、キットは、第1のチューブをデカントするためのスタンド、または
本明細書中で記載し、およびキットがそのために用いるように設計された方法のための使
用説明書を含み得る。
【0061】
図面において、線の厚さ、層、特徴、構成要素および/または領域は、明確化のために
誇張され得る。加えて、動作(または工程)の配列は、特に指示がない限り、特許請求の
範囲に示された順序に限定されない。
【0062】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみを説明するためのものであり、本発
明を限定するものではない。本明細書で使用されるように、単数形「a」、「an」およ
び「the」は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数形も含むことが意図
される。本明細書で使用される場合、用語「含む(comprises)」および/また
は「含む(comprising)」は、記載された特徴、工程、動作、要素および/ま
たは構成要素の存在を特定するが、1または2以上の他の特徴、工程、動作、要素、構成
要素、および/またはそれらの群の存在または追加を排除しない。「含む」という用語は
、本明細書で使用することができるが、要素を「含む」と呼ばれる目的語は、要素「から
なる」または「から本質的になる」ことでもあり得ることが理解されるべきである。本明
細書中で使用される場合、「および/または」という用語は、関連する列挙された項目の
うちの1つまたは2以上の任意のおよびすべての組み合わせを含む。同様の番号は、全体
を通して同様の要素を指す。本明細書中で使用される場合、「XとYとの間」および「約
XとYとの間」などの語句は、XおよびYを含むと解釈されるべきである。本明細書で使
用する場合、「約XとYとの間」などの語句は、「約Xと約Yとの間」を意味する。本明
細書中で使用する場合、「約XからYまで」などの語句は、「約Xから約Yまで」を意味
する。
【0063】
他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての用語(技術用語および科学用語
を含む)は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を
有する。一般的に使用される辞書に定義された用語などの用語は、明細書および関連技術
の文脈における意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、および、本明細書
中において明確にそのように定義されない限り、理想化された、または過度に正式な意味
で解釈されるべきではないことがさらに理解されるであろう。周知の機能または構成は、
簡潔さ、および/または明確さのために、詳細には説明されない場合がある。
【0064】
本発明は、部分的に、本発明の実施形態に係る方法、装置(システム)およびコンピュ
ータプログラム製品のフローチャート図および/またはブロック図を参照して説明される
。フローチャート図および/またはブロック図の各ブロック、およびフローチャート図お
よび/またはブロック図のブロックの組み合わせは、コンピュータプログラムの命令によ
って実施できることが理解されるであろう。これらのコンピュータプログラムの命令は、
汎用コンピュータ、特殊目的コンピュータ、または他のプログラマブルデータプロセシン
グ装置のプロセッサに提供されて機械を生成することができ、コンピュータまたは他のプ
ログラマブルデータプロセシング装置のプロセッサを介して実行される命令は、フローチ
ャートおよび/またはブロック図のブロックで指定された機能/動作を実施するための手
段を作成する。
【0065】
本明細書の一部の図面のフローチャートおよびブロック図は、本発明の実施形態の可能
な実施の例示的なアーキテクチャ、機能性、および動作を示す。いくつかの代替的な実施
形態においては、ブロックに記載された工程は、図に示された順序から外れることがある
ことに留意されたい。例えば、関連する機能目的に依存して、連続して示された2つのブ
ロックは、実際には実質的に同時に実行されてもよく、またはブロックは時には逆の順序
で実行されてもよく、または2つまたは3つ以上のブロックが結合されていてもよい。
【0066】
例えば、上記に示した2つのブロックは、本発明を説明するものであり、および本発明
を限定するものではない。本発明の少しの例示的な実施形態を記述したが、本発明の新規
な教示および利点から実質的に逸脱することなく、例示的な実施形態において多くの変更
が可能であることを、当業者は容易に理解するであろう。したがって、そのような変更の
全ては、特許請求の範囲に定義されるように、本発明の範囲内に含まれることが意図され
る。本発明は、添付の特許請求の範囲によって定義され、特許請求の範囲の等価物がその
中に含まれる。