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特許7055941金属蒸着フイルム、及びそれを使用した積層フイルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】金属蒸着フイルム、及びそれを使用した積層フイルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/085 20060101AFI20220412BHJP
   C23C 14/02 20060101ALI20220412BHJP
【FI】
B32B15/085 A
C23C14/02 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020120039
(22)【出願日】2020-07-13
(65)【公開番号】P2022017007
(43)【公開日】2022-01-25
【審査請求日】2020-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000156042
【氏名又は名称】株式会社麗光
(72)【発明者】
【氏名】日野 洋一
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-251734(JP,A)
【文献】特開2002-067213(JP,A)
【文献】特開2003-145677(JP,A)
【文献】特開2011-037116(JP,A)
【文献】特開2021-171994(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00 - 43/00
C23C 14/00 - 16/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレンフイルムの片面に、少なくともアンカーコート層、及び金属薄膜層が順次形成されている金属蒸着フイルムであって、下記の(A)~(C)の条件をすべて満足することを特徴とする金属蒸着フイルム。
(A)アンカーコート層が、ウレタン系樹脂とセルロース系樹脂を少なくとも含むウレタンセルロース系樹脂、硬化剤、及び3-アミノプロピルトリエトキシシランを少なくとも含む層である。
(B)アンカーコート層のウレタンセルロース系樹脂、硬化剤、及び3-アミノプロピルトリエトキシシランの重量比が、ウレタンセルロース系樹脂:硬化剤:3-アミノプロピルトリエトキシシラン=100:10~200:0.3~10の範囲である。
(C)アンカーコート層に使用する硬化剤が、イソシアヌレート型PDI系イソシアネート、またはTMPアダクト型HDI系イソシアネートのいずれかである。
【請求項2】
少なくとも、請求項1記載の金属蒸着フイルムと他のプラスチックフイルムとが、樹脂層を介して貼り合わせされていることを特徴とする積層フイルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食料品、医薬品、衣料品等の包装材等に使用する金属蒸着フイルム、及びそれを使用した積層フイルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食料品、医薬品、衣料品等の製品の包装袋に使用する包装材として、プラスチックフイルム上に、水蒸気や酸素などをバリアするガスバリア層として金属薄膜層が形成された金属蒸着フイルムが一般的に広く使用されている。
そして、ポリプロピレンフイルムは、軽量であり、かつ機械特性やヒートシール性に優れることから、ポリプロピレンフイルム上に金属薄膜層が形成された金属蒸着フイルムが上記製品の包装袋に使用する包装材として好ましく利用されている。
【0003】
そして、上記金属蒸着フイルムを包装袋に使用する包装材として使用する場合に、ポリプロピレンフイルムと金属薄膜層との密着力が重要となるが、ポリプロピレンフイルムは、表面エネルギーが小さい為、ポリプロピレンフイルムと金属薄膜層との密着力は弱く、ポリプロピレンフイルムと金属薄膜層との間で容易に剥離してしまうものであった。
そして、金属蒸着フイルムを包装袋に使用する為に、金属蒸着フイルムのポリプロピレンフイルム同士を重ねてヒートシール加工をおこなった場合には、ヒートシール部のポリプロピレンフイルムと金属薄膜層との密着力がヒートシール加工時の熱ダメージにより、さらに低下してしまうものであった。
【0004】
その為、ポリプロピレンフイルムと金属薄膜層との密着力を向上させることを目的に、ポリプロピレンフイルムの表面に、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理、及びこれらを組み合わせた表面処理により、表面エネルギーを高めたりすることや、ポリプロピレンフイルムと金属薄膜層との間にアンカーコート層を形成すること等、密着力を向上させる方法が一般的に利用されている。
【0005】
しかしながら、上記方法を利用して得た金属蒸着フイルムは、ポリプロピレンフイルムと金属薄膜層との密着力が、上記方法を利用しなかった場合と比較すると、密着力は向上するものの、必ずしも充分ではなく、優れた密着力を発揮するものではなかった。
【0006】
尚、本明細書でいう優れた密着力とは、JIS K 6854-2法(接着剤-剥離接着強度試験方法-第2部:180度剥離)に準拠して測定した、ポリプロピレンフイルムと金属薄膜層との密着強度が、350gf/15mm以上であることをいう。
【0007】
また、特許文献1には、ポリプロピレンフィルム基材と、その上に形成される金属蒸着膜又は金属酸化物蒸着膜からなるガスバリア層(金属薄膜層)との密着力を向上させる目的で、ポリプロピレンフィルム基材の、ガスバリア層(金属薄膜層)側表面にシンジオタクチックポリプロピレン層が存在しており、かつガスバリア層(金属薄膜層)上に保護層が形成されたポリプロピレン複合フィルム材料(金属蒸着フイルム)が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平10-329286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記のとおり、従来の金属蒸着フイルムは、ポリプロピレンフイルムと金属薄膜層との密着力が弱い為、ポリプロピレンフイルムと金属薄膜層との間で容易に剥離してしまう欠点があった。特にヒートシール加工後には、ヒートシール部のポリプロピレンフイルムと金属薄膜層との密着力がヒートシール加工時の熱ダメージにより、さらに低下し、上記欠点がより顕著であった。
【0010】
そして、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理等の表面処理が施されたポリプロピレンフイルムを使用した金属蒸着フイルム、特許文献1記載のポリプロピレン複合フィルム材料(金属蒸着フイルム)に代表されるポリプロピレンフイルムと金属薄膜層との間に、従来のアンカーコート層が形成された金属蒸着フイルム等、ポリプロピレンフイルムと金属薄膜層との密着力を向上させた従来の金属蒸着フイルムであっても、ポリプロピレンフイルムと金属薄膜層との密着力は充分ではなく、依然として優れた密着力を発揮するものではない為、上記欠点を解消するものではなかった。
【0011】
さらに、従来のアンカーコート層が形成された金属蒸着フイルムは、アンカーコート層を形成した後、長期間保管した場合には、ポリプロピレンフイルムと金属薄膜層との密着力が低下してしまい、アンカーコート層形成後、長期間保管せずに金属薄膜層を形成する必要があった。特に夏場のような30℃以上の高温環境下で数日間保管した場合には、より顕著であった。
その為、従来のアンカーコート層が形成された金属蒸着フイルムは、該金属蒸着フイルムを製造する際、アンカーコート層形成後から金属薄膜層形成までの時間を考慮して製造する必要があり、製造予定の自由度が制限され、金属蒸着フイルムを効率よく製造することができない欠点があった。
【0012】
また、金属蒸着フイルムを製品の包装袋の包装材として使用するには、金属蒸着フイルムに製品の製品名等の印刷を行ったり、ヒートシール加工等を行う必要があり、金属蒸着フイルムと他のプラスチックフイルムとが貼り合わせされた積層フイルムを使用することが一般的であり、金属蒸着フイルムと他のプラスチックフイルムのいずれか、または両方がヒートシール性を有している必要がある。
例えば、金属蒸着フイルムに使用するポリプロピレンフイルムがヒートシール性を有している場合には、該金属蒸着フイルムと、製品の製品名等が印刷されたヒートシール性を有していない他のプラスチックフイルムとが貼り合わせされた積層フイルムを包装袋の包装材として使用することになり、そして、金属蒸着フイルムに使用するポリプロピレンフイルムがヒートシール性を有していない場合には、該金属蒸着フイルムと、ヒートシール性を有には、製品の製品名等が印刷された金属蒸着フイルムと、ヒートシール性を有している他のプラスチックフイルムとが貼り合わせされた積層フイルムを包装袋の包装材として使用することになる。
そして、上記従来の金属蒸着フイルムを使用した積層フイルムは、従来の金属蒸着フイルムと同様の欠点があった。
【0013】
本発明の課題は、食料品、医薬品、衣料品等の製品の包装袋に使用する包装材として使用する金属蒸着フイルムに切望されている効果である、ポリプロピレンフイルムと金属薄膜層との間で、優れた密着力を発揮する効果、及びヒートシール加工前後でポリプロピレンフイルムと金属薄膜層との密着力が変化することなく、ヒートシール加工後であってもヒートシール部の優れた密着力を維持する効果のすべてを発揮する金属蒸着フイルム、及び積層フイルムを提供することである。
【0014】
[1]本発明は、ポリプロピレンフイルムの片面に、少なくともアンカーコート層、及び金属薄膜層が順次形成されている金属蒸着フイルムであって、下記の(A)~(C)の条件をすべて満足することを特徴とする金属蒸着フイルムである。
(A)アンカーコート層が、ウレタン系樹脂とセルロース系樹脂を少なくとも含むウレタンセルロース系樹脂、硬化剤、及び3-アミノプロピルトリエトキシシランを少なくとも含む層である。
(B)アンカーコート層のウレタンセルロース系樹脂、硬化剤、及び3-アミノプロピルトリエトキシシランの重量比が、ウレタンセルロース系樹脂:硬化剤:3-アミノプロピルトリエトキシシラン=100:10~200:0.3~10の範囲である。
(C)アンカーコート層に使用する硬化剤が、イソシアヌレート型PDI系イソシアネート、またはTMPアダクト型HDI系イソシアネートのいずれかである。
[2]本発明は、少なくとも、上記[1]記載の金属蒸着フイルムと他のプラスチックフイルムとが、樹脂層を介して貼り合わせされていることを特徴とする積層フイルムである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の金属蒸着フイルムは、ポリプロピレンフイルムの片面に、少なくともアンカーコート層、及び金属薄膜層が順次形成されている金属蒸着フイルムであって、アンカーコート層が、ウレタン系樹脂とセルロース系樹脂を少なくとも含むウレタンセルロース系樹脂、及び硬化剤を少なくとも含む層であることを特徴とする金属蒸着フイルムである。
そして、本発明の金属蒸着フイルムは、上記特徴のアンカーコート層が形成されている為、ポリプロピレンフイルムと金属薄膜層との間で優れた密着力を発揮するものであり、さらにヒートシール加工前後でポリプロピレンフイルムと金属薄膜層との密着力が変化することなく、ヒートシール加工後であっても優れた密着力を維持することができる。
【0016】
具体的には、ヒートシール加工前後で、ポリプロピレンフイルムと金属薄膜層との密着力を比較し、密着強度の変化率が5%以下であれば、ヒートシール加工後であっても、ヒートシール部のポリプロピレンフイルムと金属薄膜層との密着力が低下することなく、優れた密着力を維持しているといえる。
尚、密着強度の変化率は下記式にて算出する。
密着強度の変化率(%)=((ヒートシール前の密着強度-ヒートシール後の密着強度)/ヒートシール前の密着強度)×100
【0017】
さらに、本発明の金属蒸着フイルムは、前記アンカーコート層に、シランカップリング剤が含まれているものとすれば、アンカーコート層を形成した後、長期間保管や、夏場のような30℃以上の高温環境下で数日間保管した場合であっても、ポリプロピレンフイルムと金属薄膜層との間で、優れた密着力を発揮することができる。
その為、本発明の金属蒸着フイルムは、本発明の金属蒸着フイルムを製造する際、アンカーコート層形成後から金属薄膜層形成までの時間を考慮することなく、製造予定に自由度が増し、金属蒸着フイルムを効率よく製造することができるものとなる。
【0018】
以上のことから、本発明の金属蒸着フイルムは、従来の金属蒸着フイルムの前記欠点を解消し、各種製品の包装袋に使用する包装材として最適なものとなる。
【0019】
また、本発明の金属蒸着フイルムと他のプラスチックフイルムとが、樹脂層を介して貼り合わせされている本発明の積層フイルムは、容易に袋状に製袋しやすく、包装袋に使用する包装材として、最適なものであり、本発明の金属蒸着フイルムの前記効果のすべてを発揮するものである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(ポリプロピレンフイルム)
本発明の金属蒸着フイルムに使用するポリプロピレンフイルムは、特に制限はなく、無延伸、一軸延伸、二軸延伸のいずれでもよいが、本発明の金属蒸着フイルムをヒートシール性を有したものとする場合には、無延伸のポリプロピレンフイルムを使用することが好ましい。
また、本発明の金属蒸着フイルムの前記効果を損なわない範囲で帯電防止剤、着色剤、熱安定剤等の各種添加剤が1種類以上添加されていても構わず、ポリプロピレンフイルムの種類や厚さは、所望の用途、目的に応じて適宜選択すればよい。
【0021】
ポリプロピレンフイルムは、ポリプロピレンフイルム上に、コロナ放電処理等の表面処理がされたものでも構わず、これら表面処理がされたポリプロピレンフイルムも、本明細書のポリプロピレンフイルムに含まれる。
【0022】
ポリプロピレンフイルムの厚さは、特に制限なく使用することができるが、2~250μmの範囲とすることが好ましく、9~125μmの範囲であることがより好ましい。
ポリプロピレンフイルムの厚さが、2μmよりも薄いと、本発明の金属蒸着フイルムを製造する際に、カールやシワ等が発生しやすくなるおそれがあり好ましくなく、ポリプロピレンフイルムの厚さが、250μmよりも厚いと、本発明の金属蒸着フイルムを製造する際に、作業性が悪くなり、また製造コストも上がる為、好ましくない。
【0023】
(アンカーコート層)
本発明の金属蒸着フイルムに形成されているアンカーコート層は、本発明の金属蒸着フイルムに、ポリプロピレンフイルムと後述の金属薄膜層との間で優れた密着力を発揮させる目的、及び後述の金属薄膜層と合わせて、所望のガスバリア性(水蒸気透過度、及び酸素透過度)を付与する目的で、ポリプロピレンフイルム上に形成される層であり、ウレタン系樹脂とセルロース系樹脂を少なくとも含むウレタンセルロース系樹脂、及び硬化剤を少なくとも含む層である。
【0024】
そして、本発明の金属蒸着フイルムに形成される上記アンカーコート層以外の従来のアンカーコート層上に、金属薄膜層が形成された従来の金属蒸着フイルムは、アンカーコート層を形成しなかった場合と比較すると、ポリプロピレンフイルムと金属薄膜層との密着力は向上するものの、依然として優れた密着力を発揮するものではなく、前記欠点を確実に解消するものではなかった。
しかしながら、本発明の金属蒸着フイルムは、上記特徴のアンカーコート層がポリプロピレンフイルム上に形成されている為、ポリプロピレンフイルムと、該アンカーコート層上に形成された金属薄膜層との間で、優れた密着力を発揮し、本発明の金属蒸着フイルムの前記効果のすべてを発揮することができる。
【0025】
また、アンカーコート層は、本発明の金属蒸着フイルムの前記効果を損なわない範囲で帯電防止剤、着色剤、熱安定剤等の各種添加剤が1種類以上添加されていても構わず、各種添加剤の種類や添加量は、所望の目的に応じて適宜決定すればよい。
【0026】
アンカーコート層をポリプロピレンフイルム上に形成する方法は、グラビアコート法、リバースコート法、ダイコート法、バーコート法等、従来公知のコーティング方法が使用でき、所望の目的に応じて適宜選択すればよい。
【0027】
アンカーコート層の厚さは、0.03~3.0μmの範囲が好ましく、0.03~1.0μmの範囲であることがよりこのましい。
アンカーコート層の厚さが、0.03μmよりも薄いと均一にアンカーコート層を形成することが困難となり、所望の密着力を得ることが困難となる為、好ましくなく、アンカーコート層の厚さが、3.0μmよりも厚いと、ポリプロピレンフイルムとアンカーコート層との密着力が低下してしまうおそれがある為、好ましくない。
【0028】
アンカーコート層に使用するウレタンセルロース系樹脂は、ウレタン系樹脂とセルロース系樹脂を少なくとも含むものであり、ウレタン系樹脂とセルロース系樹脂との混合比率は、ウレタン系樹脂:セルロース系樹脂=5:95~95:5の範囲であることが好ましく、所望の目的に応じて適宜選択すればよい。
また、本発明の金属蒸着フイルムの前記効果を損なわない範囲で、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂等、各種公知の樹脂が含まれたものであっても構わない。
【0029】
また、アンカーコート層に使用する、硬化剤は、特に制限無く、IPDI系、MDI系、HDI系、XDI系、TDI系、PDI系等の従来公知の各種イソシアネートが使用でき、所望の目的に応じて適宜選択すればよい。
特に、PDI系イソシアネート、TDI系イソシアネート、またはXDI系イソシアネートを使用すれば、反応性が高く、アンカーコート層の架橋密度が高まり、金属蒸着フイルムが、容易に所望のガスバリア性を発揮することができる為、好ましく、イソシアヌレート型PDI系イソシアネート、TMPアダクト型TDI系イソシアネート、またはイソシアヌレート型XDI系イソシアネートを使用すればより好ましく、イソシアヌレート型PDI系イソシアネートを使用すれば、上記ガスバリア性に加えて、ポリプロピレンフイルムと金属薄膜層との間で、容易に優れた密着力とすることもできる為、万全である。
【0030】
本発明の金属蒸着フイルムに形成されたアンカーコート層は、該アンカーコート層に使用するウレタンセルロース系樹脂の水酸基、及び硬化剤のイソシアネート基が、アンカーコート層上に形成される金属薄膜層に使用する金属と相互作用することにより、本発明の金属蒸着フイルムが優れた密着力を発揮することができる。
【0031】
アンカーコート層のウレタンセルロース系樹脂と硬化剤の重量比は、ウレタンセルロース系樹脂:硬化剤=100:10~200の範囲とすることが好ましく、ウレタンセルロース系樹脂:硬化剤=100:10~100の範囲であることがより好ましい。
アンカーコート層のウレタンセルロース系樹脂と硬化剤との重量比が、上記重量比の範囲でないと、本発明の金属蒸着フイルムの前記効果をすべて発揮することができなくなるおそれがある為、好ましくない。
【0032】
また、アンカーコート層は、本発明の金属蒸着フイルムの前記効果を損なわない範囲で、帯電防止剤、着色剤、熱安定剤等の各種添加剤が1種類以上添加されていても構わず、各種添加剤の種類や添加量は、所望の目的に応じて適宜決定すればよい。
【0033】
本発明の金属蒸着フイルムに形成されるアンカーコート層は、ウレタンセルロース系樹脂と硬化剤に加え、さらにシランカップリング剤が含まれたものとすれば、シランカップリング剤の官能基がアンカーコート層のイソシアネート基と結合することにより、アンカーコート層を形成後、金属薄膜層を形成するまでの間、長期間保管や、夏場に高温環境下で保管した場合であっても、ポリプロピレンフイルムと金属薄膜層との間で、確実に優れた密着力を発揮することができ、本発明の金属蒸着フイルムの前記効果のすべてをより確実に発揮することができる為、好ましい。
【0034】
具体的には、アンカーコート層形成後、長期間保管や、夏場に高温環境下で保管するとアンカーコート層内で、ウレタンセルロース系樹脂の水酸基と硬化剤のイソシアネート基とが反応することで、金属薄膜層の金属と相互作用するアンカーコート層内の官能基(水酸基、及びイソシアネート基)が減少する為、官能基が減少したアンカーコート層上に金属薄膜層が形成されると、ポリプロピレンフイルムと金属薄膜層との間で、優れた密着強度を発揮することができなくなってしまうおそれがあった。
【0035】
しかしながら、本発明の金属蒸着フイルムに形成されるアンカーコート層を、ウレタンセルロース系樹脂と硬化剤に加え、さらにシランカップリング剤が含まれたものとすれば、シランカップリング剤の官能基がイソシアネート基と結合することにより、ウレタンセルロース系樹脂の水酸基と硬化剤のイソシアネート基との反応が抑えられ水酸基の減少を抑えることができる。
さらに、シランカップリング剤の官能基がアンカーコート層のイソシアネート基と結合することによるイソシアネート基の減少を、シランカップリング剤のシラノール基が補完するととなり、シラノール基も、水酸基、及びイソシアネート基とともに金属薄膜層の金属と相互作用する官能基となる。
その為、長期間保管や、夏場に高温環境下で保管することによっておこる、金属薄膜層の金属と相互作用するアンカーコート層内の官能基の減少を抑えることができる。
その結果、アンカーコート層形成後に長期間保管や、夏場に高温環境下で保管した場合であっても、ポリプロピレンフイルムと金属薄膜層との間で、確実に優れた密着力を発揮することができ、本発明の金属蒸着フイルムの前記効果のすべてをより確実に発揮することができる。
【0036】
アンカーコート層に使用するシランカップリング剤としては、ビニル系、エポキシ系、スチリル系、メタクリル系、アクリル系、アミノ系、イソシアヌレート系、ウレイド系、メルカプト系、スルフィド系、イソシアネート系等、各種シランカップリング剤を使用することができ、特に、シランカップリング剤に、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)アミン、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)アミン、等のアミノ系シランカップリング剤を使用すれば、シランカップリング剤のアミノ基がアンカーコート層のイソシアネート基と結合することによりポリプロピレンフイルムと金属薄膜層との間で、アンカーコート層形成後に長期間保管や、夏場に高温環境下で保管した場合であっても、より確実に優れた密着力を発揮することができる為、好ましい。
【0037】
アンカーコート層に、シランカップリング剤を使用した場合に、アンカーコート層のウレタンセルロース系樹脂、硬化剤、及びシランカップリング剤の重量比は、ウレタンセルロース系樹脂:硬化剤:シランカップリング剤=100:10~200:0.3~10の範囲とすることが好ましく、ウレタンセルロース系樹脂:硬化剤:シランカップリング剤=100:10~100:0.8~3.0の範囲であることがより好ましい。
アンカーコート層のウレタンセルロース系樹脂、硬化剤、及びシランカップリング剤の重量比が、上記重量比の範囲でないと、ポリプロピレンフイルムと金属薄膜層との間で、確実に優れた密着力とすることができなくなるおそれがある為、好ましくない。
【0038】
(金属薄膜層)
本発明の金属蒸着フイルムに形成されている金属薄膜層は、金属蒸着フイルムに、ガスバリア性を付与する目的で積層される層であり、金属薄膜層に使用する金属は、アルミニウム、クロム、錫、金、銀、銅、亜鉛、ニッケル等の各種従来公知の金属を使用することができ、所望の目的により適宜選択すればよい。また、金属薄膜層は、上記従来公知の金属の酸化物、硫化物、窒化物の薄膜層であっても構わない。また、金属薄膜層は1層でも良く、異種または同種の2層以上の複数層としても構わない。
【0039】
金属薄膜層の厚さは30~100nmの範囲が好ましい。厚さが30nmよりも薄いと、所望のガスバリア性を発揮できなくなるおそれがある為、好ましくなく、厚さが100nmよりも厚いと、金属薄膜層を形成する際の熱によってポリプロピレンフイルムが変形、変質してしまうおそれがあり、または金属薄膜層にクラックが発生しやすくなってしまい、所望のガスバリア性を得ることができなくなるおそれがある為、好ましくない。
【0040】
金属薄膜層をアンカーコート層上に形成する方法は、真空蒸着法、スパッタリング蒸着法、化学気相蒸着法(CVD法)等、従来公知の金属薄膜層を形成する方法が使用でき、所望の目的に応じて適宜選択すればよい。
【0041】
(トップコート層)
また、本発明の金属蒸着フイルムは、本発明の金属蒸着フイルムの前記効果を損なわない範囲で、金属薄膜層上に、金属薄膜層等の傷つきを防止する等の目的の為に、従来公知の樹脂からなるトップコート層が形成されていても構わない。尚、該トップコート層に使用する樹脂、トップコート層の厚さ、及び形成する方法は、特に制限なく使用することができ、所望の目的に応じて適宜選択すればよい。
【0042】
(積層フイルム)
本発明の積層フイルムは、少なくとも、本発明の金属蒸着フイルムと他のプラスチックフイルムとが、樹脂層を介して貼り合わせされている積層フイルムである。
また、本発明の金属蒸着フイルムの金属薄膜層上やポリプロピレンフイルム上、または他のプラスチックフイルムの片面または両面に、印刷層、トップコート層等の各種機能層が形成されていても構わず、各種機能層が形成される位置は、目的に応じて適宜選択すればよい。
【0043】
本発明の積層フイルムに使用する他のプラスチックフイルムは、低密度ポリエチレンフイルム、ポリエチレンテレフタレートフイルム、ポリプロピレンフイルム、ポリアミドフイルム等、従来公知のプラスチックフイルムを使用することができ、目的に応じて適宜選択すればよい。
また、他のプラスチックフイルムは、無延伸、一軸延伸、二軸延伸のいずれでもよく、ヒートシール性を有していても有してもいなくてもよい。
また、帯電防止剤、着色剤、熱安定剤等の各種添加剤を含んでいても構わず、他のプラスチックフイルムに使用するプラスチックフイルムの種類や厚さは、所望の用途、目的に応じて適宜選択すればよい。
【0044】
本発明の積層フイルムの構成の一例をあげると、本発明の金属蒸着フイルムにヒートシール性を有している無延伸ポリプロピレンフイルムを使用した場合、該金属蒸着フイルムとヒートシール性を有していない他のプラスチックフイルムとが貼り合わせされた積層フイルムとすればよく、また、金属蒸着フイルムに使用するポリプロピレンフイルムがヒートシール性を有していない場には、該金属蒸着フイルムとヒートシール性を有している他のプラスチックフイルムとが貼り合わせされた積層フイルムとすればよい。
尚、上記構成は本発明の積層フイルムの一態様であり、上記構成以外であっても構わない。
【0045】
本発明の金属蒸着フイルムと他のプラスチックフイルムとを貼り合わせる方法は、ドライラミネート法、押出しラミネート法等、従来公知のラミネート法を使用することができ、目的に応じて適宜選択すればよい。
【0046】
本発明の積層フイルムの樹脂層は、本発明の金属蒸着フイルムと他のプラスチックフイルムとを貼りわせる目的で、本発明の金属蒸着フイルムと他のプラスチックフイルムとの間に形成される樹脂からなる層である。
また樹脂層に使用する樹脂は、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂等、各種公知の樹脂が使用でき、これらのいずれか1種、または2種以上の混合樹脂としてもよく、目的に応じて適宜選択すればよい。
【0047】
樹脂層の厚さは、特に制限なく、目的に応じて適宜選択すればよい。
【0048】
また、本発明の積層フイルムの樹脂層は、本発明の金属蒸着フイルムの前記効果を損なわない範囲で帯電防剤、着色剤、熱安定剤等の各種添加剤が1種類以上添加されていても構わず、各種添加剤の種類や添加量は、所望の目的に応じて適宜決定すればよい。
【0049】
以上のとおり、本発明の金属蒸着フイルムは、ポリプロピレンフイルムの片面に、少なくともアンカーコート層、及び金属薄膜層が順次形成されている金属蒸着フイルムであって、アンカーコート層が、ウレタン系樹脂とセルロース系樹脂を少なくとも含むウレタンセルロース系樹脂、及び硬化剤を少なくとも含む層であることを特徴とする金属蒸着フイルムである。
その為、本発明の金属蒸着フイルムは、上記特徴のアンカーコート層が形成されていることにより、ポリプロピレンフイルムと金属薄膜層との間で、優れた密着力を発揮することができる。
さらに、本発明の金属蒸着フイルムは、ヒートシール加工前後でポリプロピレンフイルムと金属薄膜層との密着力が変化することなく、ヒートシール加工後であっても、ヒートシール部において優れた密着力を維持することができる。
【0050】
そして、本発明の金属蒸着フイルムは、前記アンカーコート層に、シランカップリング剤がさらに含まれているものとすれば、アンカーコート層形成後、金属薄膜層を形成するまでの間、長期間保管や、夏場に高温環境下で保管した場合であっても、ポリプロピレンフイルムと金属薄膜層との間で、確実に優れた密着力を発揮することができ、本発明の金属蒸着フイルムの前記効果のすべてをより確実に発揮することができる。
【0051】
また、本発明の金属蒸着フイルムと他のプラスチックフイルムとが、樹脂層を介して貼り合わせされている本発明の積層フイルムは、包装袋に使用する包装材として、最適なものであり、本発明の金属蒸着フイルムの前記効果のすべてを発揮するものであり、各種製品の包装袋に使用する積層フイルムとして最適である。
【実施例
【0052】
[実施例1]
以下の(工程1)、(工程2)を順に行い、ポリプロピレンフイルム上に、アンカーコート層、及び金属薄膜層が順次積層された実施例1の本発明の金属蒸着フイルムを得た。
(工程1)ポリプロピレンフイルムとして、片面にコロナ放電処理された厚さ30μmの無延伸ポリプロピレンフイルムのコロナ放電処理面上に、ウレタン系樹脂とセルロース系樹脂からなるウレタンセルロース系樹脂(DICグラフィックス株式会社製 商品名:MET No.17-7)100重量部と、硬化剤としてイソシアヌレート型PDI系イソシアネート(三井化学株式会社製 商品名:スタビオD370N)50重量部、シランカップリング剤として、アミノ系シランカップリング剤の3-アミノプロピルトリエトキシシラン(ダウ・東レ株式会社製 商品名:DOWSIL Z6011)1.0重量部を混合して得た混合樹脂をグラビアコート法でコーティングして、厚さ0.07μmのアンカーコート層を形成した。
尚、アンカーコート層は、ウレタンセルロース系樹脂:硬化剤:シランカップリング剤=100:50:1.0の重量比であった。
(工程2)上記アンカーコート層上に、蒸着材料にアルミニウムを使用し、真空蒸着機にて真空蒸着法を用いて、厚さ40nmの金属薄膜層(アルミニウム薄膜層)を形成した。
尚、(工程1)のアンカーコート層形成後、すぐに(工程2)を行い、アンカーコート層上にアルミニウム薄膜層を形成した。
【0053】
[実施例2~5]
実施例1のアンカーコート層に使用したシランカップリング剤の量を、0重量部(使用しない)、0.5重量部、2.5重量部、5.0重量部としたこと以外は、実施例1と同様にして実施例2~5の本発明の金属蒸着フイルムを得た。
尚、実施例2~5の本発明の金属蒸着フイルムに形成されたアンカーコート層は、ウレタンセルロース系樹脂:硬化剤:シランカップリング剤の重量比が、実施例2が100:50:0、実施例3が100:50:0.5、実施例4が100:50:2.5、実施例5が100:50:5.0であった。
【0054】
[実施例6]
アンカーコート層に使用する硬化剤として、TMPアダクト型TDI系イソシアネート(日本ポリウレタン工業株式会社製 商品名:コロネートL)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして実施例6の本発明の金属蒸着フイルムを得た。
【0055】
[実施例7]
アンカーコート層に使用する硬化剤として、イソシアヌレート型XDI系イソシアネート(三井化学株式会社製 商品名:タケネートD131N)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして実施例7の本発明の金属蒸着フイルムを得た。
【0056】
[実施例8]
アンカーコート層に使用する硬化剤として、TMPアダクト型HDI系イソシアネート(日本ポリウレタン工業株式会社製 商品名:コロネートHL)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして実施例8の本発明の金属蒸着フイルムを得た。
【0057】
[比較例1]
実施例1のアンカーコート層を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様にして比較例1の金属蒸着フイルムを得た。
【0058】
[比較例2]
ポリエステル系樹脂とニトロセルロースからなる混合樹脂(東洋インキ株式会社製 商品名:VMアンカーP331S)100重量部と、硬化剤としてTMPアダクト型HDI系イソシアネート(日本ポリウレタン工業株式会社製 商品名:コロネートHL)50重量部からなる混合樹脂を使用してアンカーコート層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして比較例2の金属蒸着フイルムを得た。
【0059】
[比較例3]
アクリル系樹脂(荒川化学工業株式会社製 商品名:アラコートACS-21)100重量部と、硬化剤としてTMPアダクト型XDI系イソシアネート(三井化学株式会社製 商品名:タケネートD110N)50重量部からなる混合樹脂を使用してアンカーコート層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして比較例3の金属蒸着フイルムを得た。
【0060】
[積層フイルムの作成]
厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートフイルム上に、ドライラミネート用接着剤樹脂としてウレタン系樹脂(三井化学株式会社製 商品名:タケラックA-310)100重量部と硬化剤(三井化学株式会社製 商品名:タケネートA-3)8重量部を配合した混合樹脂をコーティングして厚さ3μmの接着剤樹脂層を形成し、実施例1~8で得た本発明の金属蒸着フイルム、及び比較例1~3で得た金属蒸着フイルムのアルミニウム薄膜層と接着剤樹脂層とを接するようにしてドライラミネート法で貼り合わせた本発明の金属蒸着フイルム、及び比較例の金属蒸着フイルムに係る積層フイルムを、それぞれ作成した。
【0061】
[密着強度測定]
(測定方法)
JIS K 6854-2法(接着剤-剥離接着強度試験方法-第2部:180度剥離)に準拠して測定する。(剥離速度:300mm/min)
【0062】
(測定試料)
実施例1~8、及び比較例1~3で得た金属蒸着フイルムに係る上記積層フイルムを幅15mm、長さ10cmにカットしたものを各1枚それぞれ作成し測定試料とした。
【0063】
各測定試料を上記測定方法を用いて、試験試料(積層フイルム)の金属蒸着フイルムとポリエチレンテレフタレートフイルムとを剥離しながらそれぞれポリプロピレンフイルムとアルミニウム薄膜層との密着強度を測定し、比較した。
【0064】
[ヒートシール後のポリプロピレンフイルムとアルミニウム薄膜層との密着強度測定]
実施例1~8で得た本発明の金属蒸着フイルム、及び比較例1~3で得た金属蒸着フイルムにかかる上記積層フイルムを使用し、それぞれポリプロピレンフイルム同士を重ね、シーラー機を使用して、圧着部の温度230℃とし圧着部を2秒間圧着させる条件でヒートシールした。
そして、ヒートシール部において、2枚重なった積層フイルムのうち一方の積層フイルムの金属蒸着フイルムとポリエチレンテレフタレートフイルムとを剥離しながらポリプロピレンフイルムとアルミニウム薄膜層との密着強度を、上記測定方法を用いて測定し、比較するとともに、ヒートシール前後の密着強度の変化率を下記式を用いて求めた。
密着強度の変化率(%)=((ヒートシール前の密着強度-ヒートシール後の密着強度)/ヒートシール前の密着強度)×100
【0065】
(測定結果)
表1に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
表1のとおり、実施例1~8で得た本発明の金属蒸着フイルム及び積層フイルムは、いずれも密着強度測定の結果、ポリプロピレンフイルムとアルミニウム薄膜層との密着強度が350gf/15mm以上であり、優れた密着力を発揮するものであった。
また、密着強度の変化率(%)が、いずれも5%以下であり、ヒートシール後であってもヒートシール部のポリプロピレンフイルムと金属薄膜層(アルミニウム薄膜層)との密着力が低下することなく、優れた密着力を維持することができるものであった。
それに対して、比較例1~3で得た金属蒸着フイルム及び積層フイルムは、いずれも密着強度測定の結果、ポリプロピレンフイルムとアルミニウム薄膜層との密着強度が100gf/15mm以下であり、優れた密着力を発揮するものではなく、また密着強度の変化率(%)も30%以上であり、ヒートシール後の密着強度は、ヒートシール前の密着強度からいずれも著しく低下するものであった。
【0068】
このことから、実施例1~8で得た本発明の金属蒸着フイルム及び積層フイルムは、いずれもポリプロピレンフイルムとアルミニウム薄膜層との間で優れた密着力を発揮し、またヒートシール後であっても、ヒートシール部のポリプロピレンフイルムとアルミニウム薄膜層との密着力が低下することなく、優れた密着力を維持することができるものであることが確認できた。
【0069】
[アンカーコート層形成後に高温環境下保管した金属蒸着フイルムの作成]
実施例1~5の(工程1)において、アンカーコート層を形成した後、それぞれ夏場の保管を想定して、40℃の環境下で5日間保管(高温環境下保管)した後、(工程2)を行ったこと以外は、それぞれ同様にして、実施例1’~5’の本発明の金属蒸着フイルムを得た。
その後、実施例1’~5’で得た本発明の上記金属蒸着フイルムを使用し、前記積層フイルムの作成工程と同様にして、アンカーコート層形成後に高温環境下保管して得た本発明の金属蒸着フイルムに係る実施例1’~5’の本発明の積層フイルムを作成した。
【0070】
[高温環境下保管の有無での密着強度の比較]
アンカーコート層形成後に高温環境下保管していない実施例1~5で得た本発明の金属蒸着フイルム、及びアンカーコート層形成後に高温環境下保管して得た実施例1’~5’の本発明の金属蒸着フイルムにかかる上記積層フイルムを幅15mm、長さ10cmにカットしたものを各1枚それぞれ作成して測定試料とし、各測定試料を前記密着強度測定の測定方法を用いて、試験試料(積層フイルム)の金属蒸着フイルムとポリエチレンテレフタレートフイルムとを剥離しながらそれぞれポリプロピレンフイルムとアルミニウム薄膜層との密着強度を測定し、比較した。
【0071】
(測定結果)
表2に示す。
【0072】
【表2】
【0073】
表2のとおり、アンカーコート層形成後、高温環境下保管をしなかった実施例2の本発明の積層フイルムは、密着強度測定の結果、ポリプロピレンフイルムとアルミニウム薄膜層との密着強度が410gf/15mmであり、優れた密着力を発揮していたが、アンカーコート層形成後、高温環境下保管をした実施例2’の本発明の積層フイルムは、密着強度測定の結果、ポリプロピレンフイルムとアルミニウム薄膜層との密着強度が70gf/15mmとなり、アンカーコート層にシランカップリング剤が含まれていない為、アンカーコート層形成後、高温環境下保管を行うとポリプロピレンフイルムとアルミニウム薄膜層との密着強度が著しく低下し、優れた密着力を発揮することができなかった。
それに対して、実施例1、3~5で得た本発明の積層フイルム、及び実施例1’、3’~5’で得た本発明の積層フイルムは、密着強度測定の結果が、ポリプロピレンフイルムとアルミニウム薄膜層との密着強度がアンカーコート層形成後、高温環境下保管の有無に関わらず、いずれも350gf/15mm以上であり、アンカーコート層にシランカップリング剤が含まれていることにより、アンカーコート層形成後、高温環境下保管を行った場合であっても、ポリプロピレンフイルムとアルミニウム薄膜層との間で、確実に優れた密着力を発揮することが確認できた。
【0074】
また、実施例1~8で得た本発明の金属蒸着フイルムは、いずれも、JIS K 7129A法(40℃×90%RH)に準拠して測定した水蒸気透過度が0.5g/m・day以下であり、JIS K 7126B法(23℃×75%RH)に準拠して測定した酸素透過度が5.0cc/m・day以下のガスバリア性を発揮するものであり、実用上問題ないレベルのガスバリア性を発揮するものであった。