(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】変性澱粉、その製造方法、それを含む接着剤組成物、及び前記接着剤組成物を用いて製造された多層紙
(51)【国際特許分類】
C08B 31/04 20060101AFI20220412BHJP
C09J 103/06 20060101ALI20220412BHJP
D21H 27/30 20060101ALI20220412BHJP
B32B 7/12 20060101ALI20220412BHJP
B32B 9/06 20060101ALI20220412BHJP
B32B 9/02 20060101ALI20220412BHJP
【FI】
C08B31/04
C09J103/06
D21H27/30 B
B32B7/12
B32B9/06
B32B9/02
(21)【出願番号】P 2020545024
(86)(22)【出願日】2018-10-18
(86)【国際出願番号】 KR2018012341
(87)【国際公開番号】W WO2019098543
(87)【国際公開日】2019-05-23
【審査請求日】2020-07-08
(31)【優先権主張番号】10-2017-0154131
(32)【優先日】2017-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】515261354
【氏名又は名称】サムヤン コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】SAMYANG CORPORATION
【住所又は居所原語表記】31,Jongno 33-gil,Jongno-gu,Seoul,110-725 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヨン オ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヤン ソク
【審査官】奥谷 暢子
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-120235(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0073051(US,A1)
【文献】特開昭58-141268(JP,A)
【文献】BISWAS A. et al.,Rapid preparation of starch maleate half-esters,Carbohydrate Polymer,2006年,64,pp.484-487
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08B
C09J
D21H
B32B
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)澱粉と有機酸をスラリー状に混合し、エステル化反応を行うステップと、
b)前記a)ステップの反応が完了した後、溶媒を除去し、乾燥させるステップとを含
み、
前記a)ステップでのスラリーが澱粉100重量部を基準に有機酸0.5~4重量部を含み、
前記有機酸は、マレイン酸およびコハク酸からなる群から選択される少なくとも1つである、
変性澱粉の製造方法。
【請求項2】
前記スラリーが溶媒として水を含む、請求項
1に記載の変性澱粉の製造方法。
【請求項3】
前記a)ステップでのエステル化反応がpH6~8で行われる、請求項1
または2に記載の変性澱粉の製造方法。
【請求項4】
前記pHは、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムの中から選ばれる1種以上を添加して調節する、請求項
3に記載の変性澱粉の製造方法。
【請求項5】
前記a)ステップの反応が2~9時間行われる、請求項
1から
4のいずれか一項に記載の変性澱粉の製造方法。
【請求項6】
前記a)ステップの反応が30~50℃の温度で行われる、請求項
1から
5のいずれか一項に記載の変性澱粉の製造方法。
【請求項7】
前記b)ステップでの反応物を濾過及び洗浄する工程をさらに行う、請求項
1から
6のいずれか一項に記載の変性澱粉の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変性澱粉、その製造方法、それを含む接着剤組成物、及び前記接着剤組成物を用いて製造された多層紙に関する。
【背景技術】
【0002】
板紙は、大まかに「堅くて厚い紙」と定義することができる。板紙に含まれる白板紙、ライナー紙、中芯原紙などは紙種によって異なるが、相当量の廃紙を使用しており、新聞用紙や印刷用紙と比較して多層に抄紙する。このように多層に紙を抄造する場合、高坪量での生産が容易であり、低級原料を効率よく用いて生産コストを減らすことができるうえ、物性の改善及び新しい機能性の付与が可能である。
【0003】
一般に、多層紙を製造するために、糊化していない一般澱粉を層間に噴霧する方法が広く用いられている。一般澱粉が層間に噴霧され、紙匹がドライヤーを通過するときにドライヤーの高温によって澱粉が糊化しながら糊液の粘性により層間接着が起こる。しかし、このような効果は、最近現れている多層紙製造技術の変化に伴って大幅に減少しており、その対策が求められる。
【0004】
最近、紙の生産速度を増加させるために圧着、脱水をより効果的に行うことにより、紙匹の乾燥時間が短縮され、且つ層間に噴霧された澱粉の糊化に必要な水分が減少し、それにより澱粉粒子の膨潤時間も短縮されるようになった。よって、未変性澱粉による層間結合強度が大幅に減少した。また、高速化と共に閉鎖化が促進されることにより、紙匹に保留されずに白水に残存する澱粉の量が増加するようになった。特に澱粉が未糊化状態で紙匹に保留されずに白水に持続的に蓄積されると、廃水のCODが増加したり活性汚泥が死滅したりするなど、廃水処理システムに問題を引き起こすおそれがあり、湿部の各種添加剤を無力化させる副作用を引き起こすおそれがある。
【0005】
韓国公開特許第10-1998-0039253号は、多層紙製造用接着剤及びこれを用いた多層紙製造方法について開示している。具体的には、従来の方法で使用されていた未糊化の一般澱粉に無機物であるシリカゾルと粘土を添加して製造されたスラリー液状の接着剤を多層紙の層間に使用する場合、多層紙の層間接着力が著しく向上することを確認したと記載している。しかし、無機物と澱粉とを混合して使用しなければならない作業上の困難が存在し、混合比による強度偏差が発生するという欠点がある。
【0006】
日本特開1996-120235号は、澱粉を低分子化させ且つアセチル化処理し、ジカルボン酸エステル化処理を併用することにより得られた澱粉誘導体を多層紙などのシートの層間に使用することができる方法を開示している。具体的には、澱粉を低分子化して紙内部への浸透を向上させることにより、強度上昇効果を得ることができ、アセチル化とジカルボン酸エステル化を併用処理することにより澱粉の糊化温度を低下させて層間接着強度及び紙表面の印刷適性を向上させることができると記載している。ところが、実際の量産時に、上記の3つの製法を同時に適用する場合、製造コストが高くなり、多層紙の原料の種類によって紙匹の空隙が異なるため、さまざまな種類の変性澱粉を製造しなければならないという欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】韓国公開特許第10-1998-0039253号
【文献】日本特許公開1996-120235号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、かかる従来技術の問題点を解決するためになされたもので、その目的は、有機酸を用いるエステル変性技術を用いて、糊化開始温度が低い高粘度の変性澱粉及びその製造方法を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、前記変性澱粉を含むことにより、低い糊化開始温度を有し、層間結合面積が広くなって優れた層間結合強度を提供し、環境汚染を最小限に抑える接着剤組成物を提供することにある。
【0010】
本発明の別の目的は、前記接着剤組成物を用いることにより、層間結合強度、圧縮強度及び剛性(stiffness)に優れた多層紙を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明は、澱粉を有機酸とのエステル化反応によって改質させた変性澱粉を提供する。
【0012】
前記変性澱粉は、粒子サイズが10~25μmである特徴を持つことができる。
【0013】
また、前記変性澱粉は、澱粉の糊化開始温度が60~75℃である特徴を持つことができる。
【0014】
また、前記変性澱粉は、60~75℃での糊化最大粘度が500~3500cpsである特徴を持つことができる。
【0015】
本発明は、また、a)澱粉と有機酸をスラリー状に混合し、エステル化反応を行うステップと、b)前記a)ステップの反応が完了した後、溶媒を除去し、乾燥させるステップとを含む、変性澱粉の製造方法を提供する。
【0016】
また、本発明は、前記変性澱粉を含む接着剤組成物を提供する。
【0017】
また、本発明は、前記接着剤組成物を用いて製造された多層紙を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、有機酸を用いるエステル変性技術を採用することにより、糊化開始温度が低い高粘度の変性澱粉、及びその製造方法を提供する。
【0019】
また、本発明は、前記変性澱粉を含むことにより低い糊化開始温度を有し、優れた結合強度を提供し、環境汚染を最小限に抑える接着剤組成物を提供する。
【0020】
また、本発明は、前記接着剤組成物を使用することにより、層間結合面積が広くなって優れた層間結合強度を有し、圧縮強度及び剛性(stiffness)に優れた多層紙を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0022】
本発明は、澱粉を有機酸とのエステル化反応によって改質させた変性澱粉に関する。
【0023】
最近、速度が速い高速抄紙機が普遍化されて乾燥工程が非常に短時間で行われ、圧着、脱水条件が悪化することにより、一般澱粉を使用する場合には、収率が低くなり、紙匹内に未糊化状態で残っている澱粉が多量発生して層間結合力が減少するという問題が台頭している。また、未糊化状態の一般澱粉が廃水に流入して廃水処理の負荷が増大するおそれがある。
【0024】
本発明の変性澱粉は、かかる問題点を解決するために開発されたものである。
【0025】
よって、本発明の変性澱粉は、糊化開始温度が低く、粘度が高い特徴を持つ。
【0026】
本発明に係る変性澱粉に使用される澱粉としては、一般澱粉(すなわち、変性されていない澱粉)を使用することができ、具体的には、トウモロコシ澱粉、モチトウモロコシ澱粉、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉及び甘藷澱粉よりなる群から選択される1種以上を使用することができる。
【0027】
前記有機酸(Organic acid)としては、マレイン酸、コハク酸、フマル酸及び酢酸などよりなる群から選択される1種以上を使用することができ、好ましくはマレイン酸を使用することができる。
【0028】
無機酸による付加反応の際には、澱粉が酸加水分解されてエステル化反応が起こらないので、有機酸を使用しなければならない。
【0029】
本発明の変性澱粉は、粒子サイズが10~25μm、好ましくは10~20μmであり得る。上記の範囲よりも粒子サイズが小さくなると、紙製造工程で脱水されて損失する可能性があり、上記の範囲よりも粒子サイズが大きくなると、工程内でノズルが詰まってしまうおそれがあって好ましくない。
【0030】
本発明の変性澱粉の糊化開始温度は75℃以下、好ましくは60~75℃であり得る。さらに好ましくは60~70℃であり得る。糊化開始温度が上記の範囲よりも高い場合には、紙の速い生産速度のために未糊化澱粉によって層間結合強度が減少するか、澱粉が未糊化状態であって紙匹に保留されずに白水に持続的に蓄積されて廃水問題が発生するおそれがあるから、低い糊化開始温度が必要である。
【0031】
また、前記変性澱粉は、60~75℃での糊化最大粘度が500~3500cps、好ましくは1000~3500cps、さらに好ましくは1500~3500cpsであり得る。糊化最大粘度が上記の範囲を超える場合には、工程内の高い粘度のため工程効率が低くなるという問題があって、上記の範囲が適当である。
【0032】
本発明の変性澱粉において、前記エステル化反応は、澱粉100重量部を基準に有機酸0.5~4重量部、好ましくは1~3重量部を添加して行われる。
【0033】
有機酸(Organic acid)の使用量が0.5重量部未満である場合には、糊化温度が低くならないため層間結合強度効果が低下し、有機酸の使用量が4重量部を超える場合には、糊化温度は大幅に低くなるが、澱粉粒子の急激な膨張により澱粉製造時に脱水性が低下するので好ましくない。
【0034】
また、本発明は、a)澱粉と有機酸をスラリー状に混合し、エステル化反応を行うステップと、b)前記a)ステップの反応が完了した後、溶媒を除去し、乾燥させるステップとを含む、変性澱粉の製造方法に関する。
【0035】
前記変性澱粉について記述された内容は、製造方法にそのまま適用できる。
【0036】
前記a)ステップでのスラリーは、澱粉100重量部を基準に有機酸0.5~4重量部を含むことができる。
【0037】
前記スラリーは、溶媒としては、有機溶媒、水、またはこれらの混合物を使用することができるが、水を使用することが特に好ましい。
【0038】
前記a)ステップでのエステル化反応は、pH6~8で行われることが好ましい。
【0039】
pH6.0未満の酸性条件では、糊化開始温度減少率が低いため好ましくなく、pH8.0超過のアルカリ条件では、糊化開始温度減少率も低く、粘度も低くなるので効率的ではない。好ましくは、pHを7.0~8.0に維持させるのが良い。特に、pH7.0の条件で糊化開始温度が低く、脱水時間が短くて望ましい結果を提供する。
【0040】
前記pHは、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムの中から選択される1種以上を添加して調節することができる。
【0041】
前記a)ステップの反応は、2~9時間、好ましくは3~5時間行われる。
【0042】
また、前記a)ステップの反応は、30~50℃の温度で行われる。
【0043】
前記b)ステップで反応物を濾過及び洗浄する工程をさらに行ってもよい。
【0044】
また、本発明は、前記本発明の変性澱粉を含む接着剤組成物を提供する。
【0045】
前記接着剤組成物は水をさらに含んでもよく、このとき、変性澱粉の濃度は1~30重量%であることが好ましい。しかし、変性澱粉の濃度が上記の範囲に限定されるものではない。
【0046】
前記接着剤組成物は、多層紙層間結合用として好ましく使用できる。
【0047】
前記接着剤組成物が多層紙層間結合用として使用される場合、前記接着剤組成物による多層紙の層間結合強度は、75から130ft.lb/in2、好ましくは80から120ft.lb/in2であり得る。層間結合強度が上記の範囲よりも低い場合には、多層紙の層間結合が弱くて層分離が起こる問題があり、上記の範囲を超える場合には、工程の経済性が低くなる問題があるので、上記の範囲が適当である。
【0048】
また、本発明は、前記本発明の接着剤組成物を用いて製造された多層紙を提供する。
【0049】
前記多層紙の製造方法は、本発明の接着剤組成物を使用する以外は当該分野における公知の技術によって行われ得る。
【0050】
具体的には、例えば、まず、本発明の変性澱粉に水を添加してスラリー状の接着剤組成物を製造し、前記接着剤組成物を多層紙の層間に0.1~5g/m2となるように噴霧し、0.1~20分間1~3kg/cm2の圧力でラミネートした後、100~130℃の温度で乾燥させて多層紙に製造することができる。
【0051】
また、紙自体の内部結合強度を増加させるために、カチオン置換度0.06のカチオン性澱粉を、パルプ100重量部を基準に1~3重量部で投入することができる。
【0052】
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明する。しかし、下記の実施例は、本発明をさらに具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。下記の実施例は、本発明の範囲内で当業者によって適切に修正、変更できる。
【0053】
実施例1~12:変性澱粉の製造
一般澱粉と水とを混合した澱粉スラリーを40℃で攪拌しながら、ここにマレイン酸(実施例1~3)、コハク酸(実施例4~6)、フマル酸(実施例7~9)、または酢酸(実施例10~12)を澱粉100重量部に対してそれぞれ1重量部、2重量部、3重量部で投入した。このとき、澱粉スラリーのpHを7.0~7.5に維持するために、NaOH水溶液を持続的に投入し、40℃で4時間反応させた。
【0054】
反応完了後、濾過、洗浄及び脱水を行い、熱風乾燥機で乾燥させて変性澱粉を製造した。
【0055】
試験例1:変性澱粉の物性評価
前記実施例で製造された変性澱粉に対して、製品の量産時に澱粉脱水の問題点を確認するために、反応済みの澱粉スラリー500gを取って2倍の水で希釈し、完全脱水されるときの時間を測定して一般澱粉の脱水時間と比較し、廃水負荷を確認するために脱水液のCODを測定した。
【0056】
水分が10%前後に調節されて乾燥した変性澱粉に対してBrabender viscosity graphを介して糊化温度と粘度を確認し、その結果を下記表1に示した。比較例1は、一般澱粉の糊化温度、粘度及び脱水時間を測定した。
【0057】
【0058】
前記表1から確認されるように、有機酸(Organic acid)の投入後にエステル変性方法を用いると、一般澱粉に比べて低い糊化温度を示し、粘度が上昇し、脱水時間が減少するという結果が現れた。廃水のCODは、自体の廃水のCOD基準である15,000ppmに比べて低いレベルを示した。
【0059】
試験例2:変性澱粉の粒度分析
前記実施例1、2、及び3の変性澱粉と比較例1の一般澱粉の平均粒度をMASTERSIZER 2000(MALVERN.Ltd製、英国)を用いて測定し、その結果を下記表2に示した。
【0060】
【0061】
実施例13~16:変性澱粉の製造
エステル化反応時のpHを5.0、6.0、8.0、10.0に変更した以外は前記実施例2と同様にして、変性澱粉を製造した。
【0062】
試験例3:pHによる変性澱粉の物性評価
前記実施例13~16で製造された変性澱粉の物性を試験例1と同様の方法で測定し、その結果を下記表3に示した。
【0063】
【0064】
前記表3から確認されるように、反応pH7.0の条件で糊化開始温度が最も低く、分脱水時間も最も良好であると分析された。6.0未満の酸性条件では、糊化開始温度減少率が低く、pH8.0超過のアルカリ条件では、糊化開始温度減少率も低く、粘度も低い結果を示した。
【0065】
実施例17~20:変性澱粉の製造
有機酸投入量を澱粉100重量部に対して0.5、1.5、2.5、4.0重量部で投入した以外は前記実施例1~3と同様にして、変性澱粉を製造した。
【0066】
試験例4:有機酸投入量に応じた変性澱粉の物性評価
前記実施例1~3及び17~20の変性澱粉の有機酸投入量に応じた変性澱粉の物性を試験例1と同様の方法で測定し、その結果を下記表4に示した。
【0067】
【0068】
前記表4より、有機酸投入量が低いほど糊化開始温度減少率が低くなり、有機酸投入量が多くなると、糊化開始温度は急激に低くなるが、脱水性は低下することが確認できた。特に投入量が3.0重量部を超える場合には、変性澱粉粒子が急激に膨潤して脱水が著しく低下する結果を示した。
【0069】
また、前記実施例の変性澱粉反応効率を確認するために、一な澱粉と有機酸(Organic acid)の反応が完了した澱粉液を遠心分離して上澄み液の未反応有機酸の量をHPLCで測定して反応効率を確認した。その結果、無水マレイン酸0.5から4重量部でいずれも79%(±1%)の反応効率を示した。
【0070】
実施例21~26及び比較例2:層間結合適用多層紙の製造
前記実施例1~6及び比較例1の変性澱粉を紙に適用する場合、多層紙の強度を確認するために手抄紙を製造した。広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)を濾水度(Canadian standard freeness、CSF)が400mlとなるように叩解し、坪量50g/m2の手抄紙を製造した。手抄紙の製造時に紙の一重の内部結合強度を強化させるためにカチオン性澱粉(置換度0.06)を投入した。
【0071】
手抄紙を2枚製造し、それらの間に噴霧装置を用いて実施例1~6の各変性澱粉を1~3g/m2となるように噴霧し、1分間2.0kg/cm2の圧力でラミネートした。その後、120℃のドラムドライヤーを通過させて完全乾燥させることにより、多層紙を製造した。
【0072】
試験例5:多層紙の物性評価
前記実施例21~23及び比較例2で製造された多層紙に対して、層間結合強度はスコットボンドテスター(Scott Bond Tester、Precision Scientific、米国)、圧縮強度はKS M 7051-1997(板紙の圧縮強度試験方法)、剛性(stiffness)はTAPPI Standard T489によって測定し、測定結果を表5に示した。
【0073】
【0074】
前記表5の結果から確認されるように、本発明の実施例1~3の変性澱粉を紙に適用した実施例21から23の多層紙は、比較例1の一般澱粉を用いた比較例2の多層紙と比較して紙の層間結合強度、圧縮強度及び剛性(stiffness)が大幅に向上した。
【0075】
以上の詳細な説明は、本発明を例示するものである。また、前述した内容は、本発明の好適な実施形態を示して説明するものであり、本発明は、様々な異なる組み合わせ、変更及び環境で使用することができる。すなわち、本明細書に開示された発明の概念の範囲、記述した開示内容、及び均等な範囲及び/又は当該分野における技術または知識の範囲内で変更または修正が可能である。前述した実施形態は、本発明の技術的思想を実現するための最良の状態を説明するものであり、本発明の具体的な適用分野及び用途で要求される様々な変更も可能である。よって、上述した発明の詳細な説明は、開示された実施状態に本発明を制限しようとする意図ではない。