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特許7055967アルデヒド類のためのポリマー吸着剤を含む複合顆粒
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】アルデヒド類のためのポリマー吸着剤を含む複合顆粒
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/26 20060101AFI20220412BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20220412BHJP
   B01D 53/04 20060101ALI20220412BHJP
   C08F 22/06 20060101ALI20220412BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20220412BHJP
   C08L 35/06 20060101ALI20220412BHJP
   C08F 8/32 20060101ALI20220412BHJP
   C08L 25/02 20060101ALI20220412BHJP
   B01D 53/62 20060101ALN20220412BHJP
【FI】
B01J20/26 A
B01J20/28 Z
B01D53/04
C08F22/06
C08L101/00
C08L35/06
C08F8/32
C08L25/02
B01D53/62
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018546681
(86)(22)【出願日】2017-03-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-04-11
(86)【国際出願番号】 US2017021821
(87)【国際公開番号】W WO2017160637
(87)【国際公開日】2017-09-21
【審査請求日】2020-03-06
(31)【優先権主張番号】62/307,831
(32)【優先日】2016-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/465,209
(32)【優先日】2017-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/465,214
(32)【優先日】2017-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/465,221
(32)【優先日】2017-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100157185
【弁理士】
【氏名又は名称】吉野 亮平
(72)【発明者】
【氏名】コーベ,マイケル ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】ウェンドランド,マイケル エス.
【審査官】瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0252566(US,A1)
【文献】特開昭63-154766(JP,A)
【文献】特表2004-536167(JP,A)
【文献】特開平04-011944(JP,A)
【文献】特表2005-516088(JP,A)
【文献】特表2013-537978(JP,A)
【文献】米国特許第04029597(US,A)
【文献】国際公開第2015/095115(WO,A1)
【文献】特表2017-501279(JP,A)
【文献】特開平01-094994(JP,A)
【文献】特開平03-083946(JP,A)
【文献】特表2019-515780(JP,A)
【文献】Porous Maleic Anhydride-Styrene-Divinylbenzene Copolymer Beads,Journal of Applied Polymer Science,1987年,34,307-317
【文献】Preparation of Spherical Polymer Beads of Maleic Anhydride-Styrene-Divinylbenzene and Metal Sorption of Its Derivatives,Journal of Applied Polymer Science,1984年,29,2851-2856
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00-20/34
B01D 53/02-53/12
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
C08C 19/00-19/44
C08F 6/00-246/00、301/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダーと、
アルデヒド用のポリマー吸着剤と
を含む複合顆粒であって、
前記ポリマー吸着剤が反応生成物を含み、当該反応生成物が、
(a)重合性組成物の重合生成物を含む前駆体ポリマー材料であって、
前記重合性組成物が、
(1)前記重合性組成物中のモノマーの総重量に基づいて20~65重量%の無水マレイン酸と、
(2)前記重合性組成物中のモノマーの総重量に基づいて30~80重量%のジビニルベンゼンと、
(3)前記重合性組成物中のモノマーの総重量に基づいて0~40重量%のスチレン型モノマーであって、スチレン、アルキル置換スチレン、又はこれらの組み合わせである、
スチレン型モノマーと、
を含む、前駆体ポリマー材料と、
(b)アンモニア、単一の一級アミノ基(-NH)を有する化合物、又は式-NHR[式中、Rは水素若しくはアルキルである。]のアミノ基を少なくとも2つ有する化合物から選択される窒素含有化合物と、
の反応生成物であり、
前記バインダーが前記ポリマー吸着剤の粒子と配合され、および複数のポリマー吸着剤の粒子は複合顆粒にてバインダーにより保持される、複合顆粒。
【請求項2】
前記バインダーの量が、前記複合顆粒の重量に基づいて1~30重量%の範囲内にある、請求項1に記載の複合顆粒。
【請求項3】
前記ポリマー吸着剤が、酸塩基比色指示薬を更に含む、請求項1に記載の複合顆粒。
【請求項4】
前記ポリマー吸着剤が、少なくとも25m/gと等しいBET表面積を有する、請求項1に記載の複合顆粒。
【請求項5】
アルデヒドを吸着させる方法であって、
請求項1~4のいずれか一項に記載のバインダーとポリマー吸着剤とを含む複合顆粒を用意する工程と、
前記複合顆粒を前記アルデヒドに曝露する工程と、
前記アルデヒドを前記ポリマー吸着剤上に吸着させる工程と、を含み、前記アルデヒドが式(I)の化合物:
-(CO)-H
(I)
[式中、Rは、水素、アルキル、ビニル、又はアリールである。]であり、
前記式(I)のアルデヒドの分子量が200g/mol以下である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国仮特許出願第62/307831号(2016年3月14日出願)、同第62/465214号(2017年3月1日出願)、同第62/465209号(2017年3月1日出願)、及び同第62/465221号(2017年3月1日出願)の利益を主張し、これらの開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
アルデヒド類のためのポリマー吸着剤材料を含有する複合顆粒が提供される。
【背景技術】
【0003】
ホルムアルデヒドは、既知の発癌性物質であり、アレルゲンである。このため、米国労働安全衛生庁(OSHA)は、ホルムアルデヒド蒸気に関して、8時間の曝露制限を0.75ppm(parts per million)、15分の曝露制限を2ppmに設定している。その毒性にもかかわらず、ホルムアルデヒドは、大量生産されている工業的化合物である。例えば、発泡断熱材、パーティクルボード、カーペット、塗料及びワニスを含む、種々の建築材料における広範な使用が認められる多数のポリマー材料を調製するために使用される。これらの建築材料からの残留ホルムアルデヒドのアウトガスにより、ホルムアルデヒドは、最も主要な室内空気汚染物質の1つになっている。ホルムアルデヒドはまた、有機材料の燃焼の副生成物でもある。そのため、ホルムアルデヒドは、自動車排ガス、メタン燃焼、森林火災及びタバコの煙から生じる一般的な外気汚染物質でもある。
【0004】
北米では、ホルムアルデヒドの厳しいアウトガス制限が建築材料に課されているが、世界の全ての地域でそうであるわけではない。例えば、アジアの一部の国々では、建築材料に対する制限はほとんどない。家庭用暖房及び自動車走行へのバイオ燃料の使用増加と重なり、危険レベルのホルムアルデヒド蒸気が室内空気と外気の両方で発生する可能性がある。このため、室内空気と外気の両方の汚染物質であるホルムアルデヒド蒸気に対するヒト曝露を減じるための解決策が直ちに必要である。
【0005】
ホルムアルデヒドは揮発性が高い(室温で気体である)ため、物理吸着の機構のみで捕捉することは極めて難しい。しかしながら、ホルムアルデヒドは反応性であることから、化学吸着によって、より容易に捕捉することができる。化学吸着の場合、ホルムアルデヒド蒸気は、吸着剤自体又は吸着剤に含浸させた化学物質との化学的反応により捕捉される。したがって、ホルムアルデヒド用高容量吸着剤を作製するのに重要な点は、ホルムアルデヒドに対する反応部位を多く有する吸着剤を用意することである。
【0006】
ホルムアルデヒドの捕捉に使用されている典型的な吸着剤材料の1つは、活性炭スキャフォールド(scaffold)によるものである。しかし、活性炭のスキャフォールドは、比較的不活性であり、この不活性により、活性炭スキャフォールド自体に高密度の反応性基を組み込むことは難しい。このため、ホルムアルデヒド用吸着剤の製造に対する努力のほとんどは、ホルムアルデヒドと反応できる含浸化学物質を見出すことに焦点が当てられてきた。そのため、活性炭スキャフォールドには、典型的には、ホルムアルデヒドと反応する種々の化学物質が含浸されている。ホルムアルデヒドの捕捉に使用される最も一般的な2つの含浸化学物質は、スルファミン酸のナトリウム塩及びリン酸と共含浸させたエチレン尿素である。様々なその他の金属塩も同様に使用されてきた。
【0007】
含浸は、一般に、吸着剤の作製にいくつかの欠点を有する。まず、含浸化学物質は、移動する場合があり、これは、特に、他の吸着剤が同じ製品中に使用されている場合、問題となる。含浸の別の欠点は、揮発性有機化合物(VOC)を吸着する活性炭の能力が排除されてしまうことである。含浸化学物質が活性炭の孔を占有するため、物理吸着によってのみ捕捉される非反応性蒸気の捕捉に利用できる表面積が減少する。
【0008】
アルデヒド類用の吸着剤材料がなお必要とされている。
【発明の概要】
【0009】
ホルムアルデヒドなどのアルデヒド類を捕捉するためのポリマー吸着剤材料を含有する複合顆粒が提供される。更に、複合顆粒を製造する方法、複合顆粒を使用してアルデヒドを捕捉する方法、及び複合顆粒をアルデヒドと反応させることによって形成される組成物もまた、提供される。複合顆粒中に含まれるポリマー吸着剤は、アルデヒド化合物と反応する共有結合した窒素含有基を有する。
【0010】
第1の態様では、複合顆粒が提供される。複合顆粒は、バインダーとポリマー吸着剤とを含み、ポリマー吸着剤は(a)前駆体ポリマー材料と(b)窒素含有化合物との反応生成物である。前駆体ポリマー材料は、重合性組成物の重合生成物を含み、重合性組成物は、(1)重合性組成物中のモノマーの総重量に基づいて8~65重量%の無水マレイン酸と、(2)重合性組成物中のモノマーの総重量に基づいて30~85重量%のジビニルベンゼンと、(3)重合性組成物中のモノマーの総重量に基づいて0~40重量%のスチレン型モノマーであって、スチレン、アルキル置換スチレン、又はこれらの組み合わせである、スチレン型モノマーと、を含む。窒素含有化合物は、アンモニア、単一の一級アミノ基(-NH)を有する化合物、又は式-NHR[式中、Rは水素若しくはアルキルである。]のアミノ基を少なくとも2つ有する化合物から選択される。
【0011】
第2の態様では、アルデヒドを吸着させる(すなわち、捕捉する)方法が提供される。本方法は、上記のようにバインダーとポリマー吸着剤とを含む複合顆粒を用意する工程を含む。本方法は、複合顆粒をアルデヒドに曝露する工程と、アルデヒドをポリマー吸着剤上に吸着させる工程と、を更に含む。アルデヒドは、式(I)のアルデヒド:
-(CO)-H
(I)
[式中、Rは、水素、アルキル、ビニル、又はアリールである。]である。式(I)のアルデヒドの分子量は、典型的には、200g/モル以下である。
【0012】
第3の態様では、アルデヒドと複合顆粒との反応生成物を含む組成物が提供される。本複合顆粒は、上記のようにバインダーとポリマー吸着剤とを含有する。アルデヒドは、式(I)のアルデヒド:
-(CO)-H
(I)
[式中、Rは、水素、アルキル、ビニル、又はアリールである。]である。式(I)のアルデヒドの分子量は、典型的には、200g/モル以下である。
【0013】
第4の態様において、複合顆粒を調製する方法が提供される。方法は、前駆体ポリマー材料を用意する工程を含む。前駆体ポリマー材料は、重合性組成物の重合生成物を含み、重合性組成物は、(1)重合性組成物中のモノマーの総重量に対して8~65重量%の無水マレイン酸と、(2)重合性組成物中のモノマーの総重量に対して30~85重量%のジビニルベンゼンと、(3)重合性組成物中のモノマーの総重量に対して0~40重量%のスチレン型モノマーであって、スチレン、アルキル置換スチレン、又はこれらの組み合わせである、スチレン型モノマーと、を含む。方法は、前駆体ポリマー材料を、アンモニア、単一の一級アミノ基(-NH)を有する化合物、又は式-NHR[式中、Rは水素若しくはアルキルである。]のアミノ基を少なくとも2つ有する化合物から選択される窒素含有化合物と反応させる工程を更に含む。反応は、共有結合した窒素含有基を有するポリマー吸着剤の形成をもたらす。本方法は、ポリマー吸着剤をバインダーと配合して、配合材料を形成する工程と、この配合材料から複合顆粒を調製する工程とをなお更に含む。
【発明を実施するための形態】
【0014】
バインダーと、ホルムアルデヒドなどのアルデヒド類を捕捉するためのポリマー吸着剤材料とを含有する複合顆粒が提供される。更に、複合顆粒を製造する方法、複合顆粒を使用してアルデヒドを捕捉する方法、及び複合顆粒をアルデヒドと反応させることによって形成される組成物もまた、提供される。複合顆粒中に含まれるポリマー吸着剤材料は、ジビニルベンゼン/無水マレイン酸前駆体ポリマー材料と窒素含有化合物との反応生成物である。得られるポリマー吸着剤は、共有結合した窒素含有基を有する。ポリマー吸着剤は、典型的には、多孔質であり、ポリマー吸着剤の細孔は多くの場合、メソ細孔及び/又はミクロ細孔の寸法範囲にある。
【0015】
より詳細には、複合顆粒中のポリマー吸着剤は、ジビニルベンゼン/無水マレイン酸前駆体ポリマー材料と窒素含有化合物との反応生成物である。得られるポリマー吸着剤は、共有結合した窒素含有基を有する。ポリマー吸着剤を使用して、室温又は使用条件下で揮発性であるアルデヒドを吸着することができる。好適なアルデヒドは、典型的には、式(I)のアルデヒド:
-(CO)-H
(I)
[式中、Rは、水素、アルキル、ビニル、又はアリールである。]である。式(I)のアルデヒドの分子量は、典型的には、200g/モル以下である。いくつかの実施形態では、アルデヒドはホルムアルデヒド(Rが水素である)、又はアセトアルデヒド(Rがメチルである)である。
【0016】
「a」、「an」及び「the」などの用語は、単数の実体のみを指すことを意図するものではなく、具体例を例示するために用いることができる一般的な種類を含む。用語「a」、「an」、及び「the」は、用語「少なくとも1つの」と互換的に使用される。列挙が後続する「~のうちの少なくとも1つ」及び「~のうちの少なくとも1つを含む」という語句は、列挙内の項目のうちのいずれか1つ、及び、列挙内の2つ以上の項目のいずれかの組み合わせを指す。
【0017】
「及び/又は(and/or)」という用語は、一方又は両方を意味する。例えば「A及び/又はB」は、Aのみ、Bのみ、又はAとBとの両方を意味する。
【0018】
端点による数値範囲の記載は、その範囲内に包含される全ての数及びその端点を含むものである(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5等を含む)。
【0019】
用語「の範囲」又は「の範囲内」(及び類似の記載)は、その記載された範囲の終点を含む。
【0020】
「ポリマー」及び「ポリマー材料」という用語は、交換可能に使用され、1つ以上のモノマーを反応させることによって形成された材料を指す。これらの用語は、ホモポリマー、コポリマー、又はターポリマーなどを含む。同様に、「重合させる」及び「重合させること」という用語は、ホモポリマー、コポリマー、又はターポリマーなどであり得るポリマー材料を製造するプロセスを指す。
【0021】
「ポリマー吸着剤」及び「多孔質ポリマー吸着剤」という用語は、同じ意味で用いられ、多孔質であり、例えば、アルデヒドなどのガス状物質を吸着できるポリマー材料を指す。ポリマー吸着剤などの多孔質材料は、それらの細孔の径に基づいて特性評価することができる。「ミクロ細孔」という用語は、2ナノメートル未満の直径を有する細孔を指す。「メソ細孔」という用語は、2~50ナノメートルの範囲の直径を有する細孔を指す。「マクロ細孔」という用語は、50ナノメートルより大きい直径を有する細孔を指す。ポリマー吸着剤の多孔度(porosity)は、極低温条件下(例えば、77Kの液体窒素)での多孔質材料による窒素又はアルゴンなどの不活性ガスの吸着等温線から特性評価することができる。吸着等温線は、典型的には、約10-6~約0.98±0.01の範囲の複数の相対圧力における多孔質ポリマー吸着剤による、アルゴンなどの不活性ガスの吸着率を測定することによって得られる。次いで等温線を、比表面積を計算するためのBET(Brunauer-Emmett-Teller)法、多孔度及び孔径分布を特性評価するための密度関数理論(DFT)などの様々な方法を用いて分析する。
【0022】
「吸着している」という用語、並びに、「吸着する」、「吸着した」、及び「吸着」などの同様の単語は、吸着、吸収、又はその両方により、第1の物質(例えば、アルデヒドなどのガス)を、第2の物質(例えば、多孔質ポリマー吸着剤などのポリマー材料)に付加することを指す。同様に、「吸着剤」という用語は、吸着、吸収、又はその両方により、第1の物質を吸着する第2の物質を指す。吸着剤は、物理吸着、化学吸着、又はその両方によって吸着される第1の物質と相互作用することができる。
【0023】
「重合性組成物」という用語は、ポリマー材料を形成するために使用される、反応混合物に含まれる全ての材料を含む。重合性組成物には、例えば、モノマー混合物、有機溶媒、開始剤、及び他の任意の成分が含まれる。有機溶媒などの重合性組成物中の成分のうちのいくつかは、化学反応は起こさないものの、化学反応及び得られるポリマー材料に影響を与え得る。
【0024】
「モノマー混合物」という用語は、重合性組成物の、モノマーを含む部分を指す。より具体的には、本明細書で使用する場合、モノマー混合物は、少なくともジビニルベンゼン及び無水マレイン酸を含む。
【0025】
「ジビニルベンゼン/無水マレイン酸ポリマー材料」、及び「ジビニルベンゼン/無水マレイン酸前駆体ポリマー材料」という用語は、同じ意味で用いられ、ジビニルベンゼン、無水マレイン酸、及び任意でスチレン型モノマーから調製されるポリマー材料を指す。
【0026】
「スチレン型モノマー」という用語は、スチレン、アルキル置換スチレン(例えばエチルスチレン)、又はそれらの混合物を指す。これらのモノマーは、ジビニルベンゼン中に不純物としてしばしば存在する。
【0027】
「表面積」という用語は、到達可能な細孔の内表面を含む、材料表面の総面積のことを指す。表面積は、典型的には、ある範囲の相対圧力にわたって極低温条件下(例えば、77Kの液体窒素)で材料の表面に吸着する、窒素又はアルゴンなどの不活性ガスの量を測定することによって得られる吸着等温線から計算される。「BET比表面積」「SABET」という用語は、BET法を使用して0.05~0.30の相対圧力範囲にわたる不活性ガスの吸着等温線データから通常は計算される、材料1g当たりの表面積(典型的には、m/g)である。
【0028】
用語「複合顆粒」は、バインダーで一緒に保持された複数のポリマー吸着剤粒子を指す。複合顆粒は、少なくとも30ミクロンの平均顆粒サイズ(すなわち、顆粒が球状である場合の直径である顆粒の最大寸法)を有する。ある特定の実施形態では、顆粒サイズは、少なくとも100ミクロンである。ある特定の実施形態において、顆粒サイズは、最大30,000ミクロン以上、最大25,000ミクロン、最大20,000ミクロン、最大10,000ミクロン、最大5,000ミクロン、又は最大2,500ミクロンである。
【0029】
「室温」という用語は、20℃~30℃の範囲、20℃~25℃の範囲、25℃に近接した及び25℃を含む範囲、又は25℃の温度を指す。
【0030】
複合顆粒は、アルデヒドの化合物を捕捉するために付与される。複合顆粒に含まれるポリマー吸着剤及び/又はポリマー吸着剤の前駆体は、ポリマー材料の単一ブロックとして加圧反応器中で調製されることが多い。このポリマー材料のブロックは、次いで回転ハンマーミルを用いて微細粒子に分解かつ破砕される。典型的なミルはスクリーンを含み、スクリーンは、全ての破砕粒子がスクリーンの孔のサイズよりも小さくなるようにしておくことにより、粒径の制御を助ける。ポリマー材料の破砕及び粉砕の間、濾過用途のようないくつかの用途で使用するには小さすぎることがある微細粒子が、かなりの量で生成される。例えば、破砕及び粉砕されるポリマー材料の3分の1程の量は、ある特定の濾過用途で使用するには小さすぎることがある。小さすぎると考えられるものは、特定の用途及び許容される圧力降下に応じて様々であり得る。
【0031】
ポリマー材料の微細粒子は、バインダーと組み合わせることで大きな粒子(すなわち複合顆粒)に形成することができる。複合顆粒は、通常、濾過用途で使用するために好適であるサイズを有する。このように、複合顆粒を形成することにより、反応器内に形成されるポリマー材料の全てを十分に使用することができ、これによって、ポリマー吸着剤の全体的な製造コストを低減することができる。
【0032】
更に、ポリマー吸着剤を含有する物品(例えば、濾過用品)を製造するためのいくつかのプロセスは、追加の微細粒子の形成をもたらし得る。例えば、ポリマー吸着剤添着ウェブの作製、呼吸器カートリッジの装填、及び呼吸器並びに呼吸器カートリッジの超音波溶着は、ポリマー吸着剤材料の微粉化をもたらし、微細粒子の形成をもたらし得る。ポリマー吸着剤を、微粒子化を低減する形態で提供することは、加工の観点から有益であり得る。ポリマー吸着剤をバインダーと組み合わせることが、バインダーを含まないポリマー吸着剤と比べて、改善された靭性(例えば、粉々に砕ける可能性が低い)を有する複合顆粒の形成をもたらし得ることが判明している。加えて、本開示の複合顆粒は、アルデヒド化合物を吸着するためのポリマー吸着剤の能力に、複合顆粒が吸着剤として有用でない程度にまで悪影響を及ぼすことなく、製造することができる。
【0033】
ポリマー吸着剤
複合顆粒中に含まれるポリマー吸着剤は、前駆体ポリマー材料を、窒素含有化合物と反応させることにより形成される。前駆体ポリマー材料は、ジビニルベンゼン、無水マレイン酸、及び任意のスチレン型モノマーから形成される。前駆体ポリマー材料は、ジビニルベンゼン/無水マレイン酸ポリマー材料と称することができる。前駆体ポリマー材料を合成するために使用される条件が選択され、少なくとも25m/gと等しいBET比表面積を有するポリマー吸着剤を生成する。窒素含有化合物は、前駆体ポリマー材料中の無水物基と反応する。この反応の結果、窒素含有基をポリマー材料に結合させる共有結合が形成される。即ち、ポリマー吸着剤は、共有結合した窒素含有基を含有する。
【0034】
より具体的には、前駆体ポリマー材料(即ち、ジビニルベンゼン/無水マレイン酸ポリマー材料)は、無水マレイン酸、ジビニルベンゼン、及び任意のスチレン型モノマーを含有するモノマー混合物を含む重合性組成物から合成される。前駆体ポリマー材料を形成するために使用されるモノマー混合物は、1)8~65重量%の無水マレイン酸、2)30~85重量%のジビニルベンゼン、及び3)0~40重量%のスチレン型モノマーであって、スチレン、アルキル置換スチレン、又はこれらの組み合わせであるスチレン型モノマー、を含有する。量は、重合性組成物中のモノマーの総重量に相当するモノマー混合物中のモノマーの総重量に基づく。前駆体ポリマー材料を使用して、アルデヒドの吸着に特に効果的なポリマー吸着剤を形成する場合、モノマー混合物は、多くの場合、1)15~65重量%の無水マレイン酸、2)30~85重量%のジビニルベンゼン、及び3)0~40重量%のスチレン型モノマーであって、スチレン、アルキル置換スチレン、又はこれらの組み合わせであるスチレン型モノマー、を含有する。
【0035】
モノマー混合物に含まれる無水マレイン酸は、前駆体ポリマー材料内に式(II)の無水マレイン酸モノマー単位の形成をもたらす。
【化1】
この式及び本明細書に含まれる他の式中のアスタリスクは、モノマー単位の別のモノマー単位又は末端基への結合位置を示す。
【0036】
前駆体ポリマー材料を形成するために使用される無水マレイン酸の量は、前駆体ポリマー材料と反応してポリマー吸着剤を形成することができる窒素含有化合物の量に影響を与える。窒素含有化合物は、無水物基と反応して、ポリマー吸着剤であるポリマー材料に共有結合するようになる。
【0037】
いくつかの実施形態では、モノマー混合物に含まれる無水マレイン酸の量は、少なくとも8重量%、少なくとも10重量%、少なくとも12重量%、少なくとも15重量%、又は少なくとも20重量%である。無水マレイン酸の量は、65重量%まで、60重量%まで、55重量%まで、50重量%まで、45重量%まで、40重量%まで、35重量%まで、30重量%まで、又は25重量%までとすることができる。例えば、無水マレイン酸は、8~65重量%、15~65重量%、15~60重量%、15~50重量%、15~40重量%、20~65重量%、20~60重量%、20~50重量%、20~40重量%、30~65重量%、30~60重量%、30~50重量%、40~65重量%、又は40~60重量%の範囲で存在してもよい。量は、前駆体ポリマー材料を形成するために使用される重合性組成物に含有されるモノマー混合物中のモノマーの総重量に基づく。
【0038】
言い方を変えれば、前駆体ポリマー材料は、式(II)のモノマー単位を、8~65重量%、15~65重量%、15~60重量%、15~50重量%、15~40重量%、20~65重量%、20~60重量%、20~50重量%、20~40重量%、30~65重量%、30~60重量%、30~50重量%、40~65重量%、又は40~60重量%の範囲で含有する。これらの量は、前駆体ポリマー材料中のモノマー単位の総重量に基づく。
【0039】
モノマー混合物に含まれるジビニルベンゼンは、前駆体ポリマー材料内に式(III)のジビニルベンゼンモノマー単位の形成をもたらす。
【化2】
ベンゼン環と結合した2つの基は、互いにオルト位、メタ位又はパラ位であることができる。式(III)のモノマー単位は、高い架橋密度並びにミクロ細孔及び/又はメソ細孔を有する硬質ポリマー材料の形成に寄与する。
【0040】
前駆体ポリマー材料を形成するために使用されるジビニルベンゼンの量は、前駆体ポリマー材料及びポリマー吸着剤の両方のBET比表面積に大きな影響を有し得る。BET比表面積は、前駆体ポリマー材料を形成するために使用されるモノマー混合物中のジビニルベンゼンの量の増加と共に、及びポリマー吸着剤中の式(III)のモノマー単位の得られる量と共に増大する傾向がある。ジビニルベンゼンの量が30重量%未満である場合、ポリマー吸着剤が、十分に高いBET比表面積を有しなくなる場合がある。他方では、ジビニルベンゼンの量が85重量%よりも高い場合、ポリマー吸着剤中の窒素含有基がより少ないので、吸着したアルデヒドの量が損なわれる場合がある。いくつかの実施形態では、モノマー混合物に含まれるジビニルベンゼンの量は、少なくとも30重量%、少なくとも35重量%、少なくとも40重量%、又は少なくとも45重量%である。ジビニルベンゼンの量は、85重量%まで、80重量%まで、75重量%まで、70重量%まで、65重量%まで、60重量%まで、又は50重量%までとすることができる。例えば、量は、30~85重量%、30~80重量%、30~75重量%、30~70重量%、30~65重量%、30~60重量%、30~55重量%、30~50重量%、35~80重量%、35~70重量%、35~60重量%、40~85重量%、40~80重量%、40~70重量%、又は40~60重量%の範囲とすることができる。量は、前駆体ポリマー材料を形成するために使用される重合性組成物に含有されるモノマー混合物中のモノマーの総重量に基づく。
【0041】
言い方を変えれば、前駆体ポリマー材料は、式(III)のモノマー単位を、30~85重量%、30~80重量%、30~75重量%、30~70重量%、30~65重量%、30~60重量%、30~55重量%、30~50重量%、35~80重量%、35~70重量%、35~60重量%、40~85重量%、40~80重量%、40~70重量%、又は40~60重量%の範囲で含有する。これらの量は、前駆体ポリマー材料中のモノマー単位の総重量に基づく。
【0042】
ジビニルベンゼンは、純粋な形態で得ることが困難である場合がある。例えば、ジビニルベンゼンは、55重量%という低い純度で市販されていることが多い。ジビニルベンゼンを約80重量%よりも高い純度で得ることは、困難かつ/又は高コストでありうる。ジビニルベンゼンに付随する不純物は、典型的には、スチレン、アルキル置換スチレン(例えばエチルスチレン)、又はこれらの混合物などのスチレン型モノマーである。したがって、スチレン型モノマーは、多くの場合、前駆体ポリマー材料を形成するために使用される重合性組成物に含有されるモノマー混合物中のジビニルベンゼン及び無水マレイン酸と共に存在する。モノマー混合物は、典型的には、モノマー混合物中のモノマーの総重量に基づいて0~40重量%のスチレン型モノマーを含んでいる。スチレン型モノマーの含有量が40重量%よりも高い場合、望ましいBET比表面積(例えば、少なくとも25m/g)を有するポリマー吸着剤を提供するには、架橋密度が低すぎる可能性があり、及び/又は架橋間距離が大きすぎる場合がある。架橋密度が低下するに従って、ポリマー吸着剤の剛性は低くなり、多孔度は低くなる傾向がある。典型的には、55重量%の純度を有するジビニルベンゼンは、スチレン型モノマー不純物の含有量が高すぎることから、前駆体ポリマー材料を形成するために使用されるモノマー混合物中での使用には適さない。即ち、ジビニルベンゼンの好適な量を有するモノマー混合物を得るためには、ジビニルベンゼンは、多くの場合、少なくとも約80重量%の純度である。約80重量%よりも低い純度を有するジビニルベンゼンを使用すると、不所望に低いBET比表面積を有する前駆体ポリマー材料及び/又はポリマー吸着剤が生成され得る。
【0043】
モノマー混合物に含まれるスチレン型モノマーは、前駆体ポリマー材料内に式(IV)のスチレン型モノマー単位の存在をもたらす。
【化3】
基Rは、水素又はアルキル(例えば、1~10個の炭素原子、1~6個の炭素原子、又は1~4個の炭素原子を有するアルキル)である。
【0044】
いくつかの実施形態では、前駆体ポリマー材料を形成するために使用されるスチレン型モノマーの量は、少なくとも1重量%、少なくとも2重量%、又は少なくとも5重量%である。スチレン型モノマーの量は、40重量%まで、30重量%まで、20重量%まで、又は10重量%までとすることができる。例えば、量は、0~40重量%、1~40重量%、5~40重量%、10~40重量%、0~30重量%、1~30重量%、5~30重量%、10~30重量%、0~20重量%、1~20重量%、5~20重量%、又は10~20重量%の範囲であることができる。量は、前駆体ポリマー材料を形成するために使用される重合性組成物に含有されるモノマー混合物中のモノマーの総重量に基づく。
【0045】
言い方を変えれば、前駆体ポリマー材料は、式(IV)のモノマー単位を、0~40重量%、1~40重量%、5~40重量%、10~40重量%、0~30重量%、1~30重量%、5~30重量%、10~30重量%、0~20重量%、1~20重量%、5~20重量%、又は10~20重量%の範囲で含有する。これらの量は、前駆体ポリマー材料中のモノマー単位の総重量に基づく。
【0046】
全体として、前駆体ポリマー材料は、8~65重量%の無水マレイン酸、30~85重量%のジビニルベンゼン、及び0~40重量%のスチレン型モノマーを含む、モノマー混合物を含有する重合性組成物から形成される。いくつかの実施形態では、モノマー混合物は、15~65重量%の無水マレイン酸、30~85重量%のジビニルベンゼン、及び0~40重量%(又は5~40重量%)のスチレン型モノマーを含む。いくつかの実施形態では、25~65重量%の無水マレイン酸、30~75重量%のジビニルベンゼン、及び1~20重量%(又は5~20重量%)のスチレン型モノマーを含む。いくつかの実施形態では、25~60重量%の無水マレイン酸、30~75重量%のジビニルベンゼン、及び1~30重量%(又は5~30重量%、若しくは10~30重量%)のスチレン型モノマーを含む。更にその他の実施形態では、モノマー混合物は、30~65重量%の無水マレイン酸、30~70重量%のジビニルベンゼン、及び1~20重量%(又は5~20重量%、若しくは10~20重量%)のスチレン型モノマーを含む。更にその他の実施形態では、モノマー混合物は、30~60重量%の無水マレイン酸、30~65重量%のジビニルベンゼン、及び1~20重量%(又は5~20重量%、若しくは10~20重量%)のスチレン型モノマーを含む。更なる実施形態では、モノマー混合物は、40~60重量%の無水マレイン酸、30~55重量%のジビニルベンゼン、及び1~20重量%(又は5~20重量%、若しくは10~20重量%)のスチレン型モノマーを含む。更に他の実施形態では、モノマー混合物は、20~40重量%の無水マレイン酸、50~70重量%のジビニルベンゼン、及び1~20重量%(又は5~20重量%、若しくは10~20重量%)のスチレン型モノマーを含む。重量%値は、前駆体ポリマー材料を形成するために使用されるモノマー混合物中のモノマーの総重量に基づく。
【0047】
前駆体ポリマー材料を形成するために使用される重合性組成物に含まれるモノマー混合物は、典型的には、無水マレイン酸、ジビニルベンゼン、及びスチレン型モノマーから選択されるモノマーを少なくとも95重量%含む。例えば、モノマー混合物中のモノマーの少なくとも97重量%、少なくとも98重量%、少なくとも99重量%、少なくとも99.5重量%、少なくとも99.9重量%、又は100重量%は、無水マレイン酸、ジビニルベンゼン、及びスチレン型モノマーから選択される。高純度のジビニルベンゼンが使用されるいくつかの実施形態では、モノマー混合物は、ジビニルベンゼン及び無水マレイン酸のみを含有する。即ち、ジビニルベンゼン及び無水マレイン酸の量の合計は、100重量%である。
【0048】
モノマー混合物に加えて、前駆体ポリマー材料を形成するために使用される重合性組成物は、有機溶媒を含む。重合性組成物は、重合前には単一の相である。言い換えると、重合前には、重合性組成物は懸濁液ではない。有機溶媒は、モノマー混合物中に含まれるモノマーを溶解し、前駆体ポリマー材料が生成されはじめる際にこれを可溶化するように選択される。有機溶媒としては、典型的には、ケトン、エステル、アセトニトリル、又はこれらの混合物が挙げられる。
【0049】
有機溶媒は、前駆体ポリマー材料の形成中にポロゲンとして機能することができる。有機溶媒の選択は、BET比表面積、及び前駆体ポリマー材料中に形成される細孔の径に大きく影響を与え得る。モノマー及び形成するポリマーの両方と混和性の有機溶媒を使用することにより、前駆体ポリマー材料内のミクロ細孔及びメソ細孔が形成されやすくなる。モノマー及び形成するポリマーに好適な溶媒を用いることにより、最終的なポリマー吸着剤の多孔度のより多くの部分がミクロ細孔及びメソ細孔の形態になりやすい。
【0050】
特に適当な有機溶媒としては、ケトン、エステル、アセトニトリル、及びこれらの混合物が挙げられる。得られる前駆体ポリマー材料が少なくとも100m/gと等しいBET比表面積を有するのであれば、その他の有機溶媒は、これらの有機溶媒の1つ以上と共に添加することができる。好適なケトンの例としては、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトンなどのアルキルケトンが挙げられるが、これらに限定されない。適当なエステルの例としては、これらに限定されるものではないが、エチルアセテート、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、及び酢酸tert-ブチルなどの酢酸エステルが挙げられる。
【0051】
有機溶媒は、任意の望ましい量で使用することができる。重合性組成物は、多くの場合、1~75重量%の範囲の固形分率を有する(即ち、重合性組成物は、25~99重量%の有機溶媒を含有する。)。固形分率が低すぎると、重合時間が不必要に長くなることがある。固形分率は、多くの場合、少なくとも1重量%、少なくとも2重量%、少なくとも5重量%、少なくとも10重量%、又は少なくとも15重量%である。しかしながら固形分重量%が高すぎると、モノマーは有機溶媒と共に単一の相を形成しない。更に、固形分率を増大させると、より低いBET比表面積を有する前駆体ポリマー材料が形成される傾向がある。固形分率(%)は、75重量%以下、70重量%以下、60重量%以下、50重量%以下、40重量%以下、30重量%以下、又は25重量%以下であってよい。例えば、固形分率は、5~75重量%、5~70重量%、5~60重量%、5~50重量%、5~40重量%、5~30重量%又は5~25重量%の範囲であることができる。
【0052】
モノマー混合物及び有機溶媒に加えて、前駆体ポリマー材料を形成するために使用される重合性組成物は、典型的には、フリーラジカル重合反応のための開始剤を含む。任意の好適なフリーラジカル開始剤を使用することができる。好適なフリーラジカル開始剤は、通常、重合性組成物中に含まれるモノマーと混和性であるように選択される。いくつかの実施形態では、フリーラジカル開始剤は、室温よりも高い温度で活性化され得る熱開始剤である。別の実施形態では、フリーラジカル開始剤はレドックス開始剤である。重合反応はフリーラジカル反応であるため、重合性組成物中の酸素の量を最小限に抑えることが望ましい。
【0053】
開始剤の種類及び量はいずれも重合速度に影響し得る。一般的に、開始剤の量を増やすとBET比表面積が低下する傾向にあるが、開始剤の量が少なすぎるとモノマーからポリマー材料への高い変換率を得ることが困難となりうる。フリーラジカル開始剤は、通常、0.05~10重量%、0.05~8重量%、0.05~5重量%、0.1~10重量%、0.1~8重量%、0.1~5重量%、0.5~10重量%、0.5~8重量%、0.5~5重量%、1~10重量%、1~8重量%、又は1~5重量%の範囲の量で存在する。重量%は、重合性組成物中のモノマーの総重量に基づく。
【0054】
好適な熱開始剤としては、有機過酸化物及びアゾ化合物が挙げられる。アゾ化合物の例としては、E.I.du Pont de Nemours Co.(Wilmington,DE)から商標表記VAZOで市販されているもの、例えば、VAZO 64(2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル))(多くの場合、AIBNと称される)及びVAZO 52(2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルペンタンニトリル))が挙げられるが、これらに限定されない。他のアゾ化合物は、Wako Chemicals USA,Inc.(Richmond,VA)から市販されており、例えば、V-601(ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート))、V-65(2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル))、及びV-59(2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル))などである。有機過酸化物としては、ベンゾイルパーオキシド(BPO)などのビス(1-オキソアリール)ペルオキシド、過酸化ラウロイルなどのビス(1-オキソアルキル)ペルオキシド、及び過酸化ジクミル又は過酸化ジ-tert-ブチルなどのジアルキルペルオキシド、並びにこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。熱開始剤を活性化するために必要とされる温度はしばしば、25℃~160℃の範囲、30℃~150℃の範囲、40℃~150℃の範囲、50℃~150℃の範囲、50℃~120℃の範囲、又は50℃~110℃の範囲である。
【0055】
好適なレドックス開始剤としては、アリールスルフィン酸塩、トリアリールスルホニウム塩、又は酸化状態の金属、過酸化物若しくは過硫酸塩と組み合わせたN,N-ジアルキルアニリン(例えば、N,N-ジメチルアニリン)が挙げられる。具体的なアリールスルフィン酸塩としては、テトラブチルアンモニウム4-エトキシカルボニルベンゼンスルフィネート、テトラブチルアンモニウム4-トリフルオロメチルベンゼンスルフィネート、及びテトラブチルアンモニウム3-トリフルオロメチルベンゼンスルフィネートなどのテトラアルキルアンモニウムアリールスルフィネートが挙げられる。具体的なトリアリールスルホニウム塩としては、トリフェニルスルホニウム陽イオンを有するもの、並びにPF 、AsF 、及びSbF から選択される陰イオンを有するものが挙げられる。好適な金属イオンとしては、例えば、第3族の金属イオン、遷移金属、及びランタニド金属が挙げられる。具体的な金属イオンとしては、Fe(III)、Co(III)、Ag(I)、Ag(II)、Cu(II)、Ce(III)、Al(III)、Mo(VI)、及びZn(II)が挙げられるが、これらに限定されない。好適な過酸化物としては、ベンゾイルパーオキシド、過酸化ラウロイルなどが挙げられる。好適な過硫酸塩としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸テトラアルキルアンモニウム(例えば、過硫酸テトラブチルアンモニウム)などが挙げられる。
【0056】
重合性組成物は通常、界面活性剤を含まないか又は実質的に含まない。本明細書で使用する場合、界面活性剤に関する「実質的に含まない」という用語は、界面活性剤が重合性組成物に意図的に添加されていることはなく、存在し得る界面活性剤は、重合性組成物の成分のうちの1つに存在する不純物(例えば有機溶媒又はモノマーのうちの1つに存在する不純物)に由来するものであることを意味する。重合性組成物は通常、重合性組成物の総重量に基づいて0.5重量%未満、0.3重量%未満、0.2重量%未満、0.1重量%未満、0.05重量%未満、又は0.01重量%未満の界面活性剤を含有する。界面活性剤は前駆体ポリマー材料中のミクロ細孔及びメソ細孔への進入を制限する傾向があり、場合によってはこれらの細孔を塞ぐ傾向があるため、これらの材料を含まないことが有利である。
【0057】
重合性組成物がフリーラジカル開始剤の存在下で加熱されると、モノマー混合物中のモノマーの重合が起こる。モノマー混合物中の各モノマーの量のバランスをとることによって、かつ、モノマーの全て及び成長中のポリマー材料をその初期の形成段階において可溶化することができる有機溶媒を選択することによって、少なくとも100m/gと等しいBET比表面積を有する前駆体ポリマー材料を調製することができる。前駆体ポリマー材料のBET比表面積は、少なくとも150m/g、少なくとも200m/g、又は少なくとも300m/gであることができる。BET比表面積は、例えば、1000m/gまで又はそれ以上、900m/gまで、800m/gまで、750m/gまで、又は700m/gまでとすることができる。
【0058】
前駆体ポリマー材料は、重合性組成物の反応生成物である。重合性組成物から形成される前駆体ポリマー材料は、(a)8~65重量%の、式(II)の第1のモノマー単位と、
【化4】
(b)30~85重量%の、式(III)の第2のモノマー単位と、
【化5】
(c)0~40重量%の、式(IV)(式中、Rは、水素又はアルキル(例えば、1~10個の炭素原子、1~6個の炭素原子、又は1~4個の炭素原子を有するアルキル)である。)の第3のモノマー単位と、を含有する。
【化6】
多くの実施形態では、アルデヒド用ポリマー吸着剤として特に効果的であるように、前駆体ポリマー材料は、(a)15~65重量%の、式(II)の第1モノマー単位、(b)30~85重量%の、式(III)の第2モノマー単位、及び(c)0~40重量%(又は5~40重量%)の、式(IV)の第3モノマー単位、を含有する。各重量%値は、前駆体ポリマー材料中のモノマー単位の総重量に基づく。
【0059】
前駆体ポリマー材料のいくつかの実施形態は、25~65重量%の、式(II)の第1モノマー単位、30~75重量%の、式(III)の第2モノマー単位、及び1~20重量%(又は5~20重量%)の、式(IV)の第3モノマー単位、を含有する。いくつかの実施形態は、25~60重量%の、式(II)の第1モノマー単位、30~75重量%の、式(III)の第2モノマー単位、及び1~30重量%(又は5~30重量%、若しくは10~30重量%)の、式(IV)の第3モノマー単位、を含有する。更にその他の実施形態では、モノマー混合物は、30~65重量%の、式(II)の第1モノマー単位、30~70重量%の、式(III)の第2モノマー単位、及び1~20重量%(又は5~20重量%、若しくは10~20重量%)の、式(IV)の第3モノマー単位、を含有する。更にその他の実施形態では、モノマー混合物は、30~60重量%の、式(II)の第1モノマー単位、30~65重量%の、式(III)の第2モノマー単位、及び1~20重量%(又は5~20重量%、若しくは10~20重量%)の、式(IV)の第3モノマー単位、を含有する。更なる実施形態では、モノマー混合物は、40~60重量%の、式(II)の第1モノマー単位、30~55重量%の、式(III)の第2モノマー単位、及び1~20重量%(又は5~20重量%、若しくは10~20重量%)の、式(IV)の第3モノマー単位、を含有する。更に他の実施形態では、モノマー混合物は、20~40重量%の、式(II)の第1モノマー単位、50~70重量%の、式(III)の第2モノマー単位、及び1~20重量%(又は5~20重量%、若しくは10~20重量%)の、式(IV)の第3モノマー単位、を含有する。重量%値は、前駆体ポリマー材料中で使用されるモノマー単位の総重量に基づく。
【0060】
ポリマー吸着剤は、前駆体ポリマー材料を、窒素含有化合物と反応させることにより形成される。通常塩基性である窒素含有化合物は、前駆体ポリマー材料中の無水物基と反応する。即ち、窒素含有化合物は、前駆体ポリマー材料内の式(II)のモノマー単位と反応する。この反応の結果、窒素含有化合物をポリマー材料に結合させる共有結合が形成される。即ち、ポリマー吸着剤は共有結合した窒素含有基を有する。
【0061】
窒素含有化合物は、アンモニア、単一の一級アミノ基(-NH)を有する化合物、又は式-NHR[式中、Rは水素若しくはアルキルである。]の基を2つ以上有する化合物である。好適なアルキルR基(即ち、アルキルがアルカンの一価の基である)は、多くの場合、1~20個の炭素原子を有する。例えば、アルキルは、少なくとも1個の炭素原子、少なくとも2個の炭素原子、又は少なくとも4個の炭素原子を有することができ、最大20個の炭素原子、最大18個の炭素原子、最大16個の炭素原子、最大10個の炭素原子、又は最大6個の炭素原子を有することができる。いくつかの実施形態では、アルキルは、1~10個の炭素原子、1~6個の炭素原子又は1~4個の炭素原子を有する。
【0062】
単一の一級アミノ基を有する窒素含有化合物は、一級アミン化合物であり、典型的には、その他の一級及び/又は二級アミノ基を含まない。即ち、単一の窒素含有基があり、それは-NHである。式-NHRのアミノ基を少なくとも2つ有する窒素含有化合物は、2つ以上の一級アミノ基(Rは水素に相当する)を有することができるか、2つ以上の二級アミノ基(Rはアルキルに相当する)を有することができるか、又は少なくとも1つの一級アミノ基に加えて少なくとも1つの二級アミノ基を有することができる。
【0063】
多くの好適な窒素含有化合物は、式(V)の化合物である。
NHR
(V)
式(V)では、基Rは水素又はアルキルである。基Rは、水素、アルキル、又は式-R-NHR、若しくは-(C=NH)-NHの基である。基Rは、共有結合、アルキレン、アリーレン、アラルキレン、1つ以上のオキシ(-O-)基を有するヘテロアルキレン、又は1つ以上の-NH-基を有するヘテロアルキレンである。基Rは、水素、アルキル又は-(C=NH)-NHである。
【0064】
及びRの両方が水素である場合、式(V)はアンモニアに相当する。Rが水素であり、Rがアルキルである場合、式(V)は単一の一級アミノ基を有する化合物に相当する。Rが-R-NHRである場合、又はRが-(C=NH)-NHである場合、式(V)は式-NHRの基を2つ以上有する化合物に相当する。
【0065】
式(V)のRのための好適なアルキル基は、少なくとも1個の炭素原子、少なくとも2個の炭素原子、又は少なくとも4個の炭素原子を有することができ、最大20個の炭素原子、最大18個の炭素原子、最大12個の炭素原子、最大10個の炭素原子、又は最大6個の炭素原子を有することができる。いくつかの実施形態では、アルキルは、1~10個の炭素原子、1~6個の炭素原子又は1~4個の炭素原子を有する。
【0066】
いくつかの実施形態では、式(V)のRは、アルキルである。窒素含有化合物として好適であるためには、Rがアルキルである場合、Rは水素に相当する。即ち、式(V)の化合物は、一級アミン化合物である。Rのための好適なアルキル基は、多くの場合、少なくとも1個の炭素原子、少なくとも2個の炭素原子、又は少なくとも4個の炭素原子を有し、最大20個の炭素原子、最大18個の炭素原子、最大12個の炭素原子、最大10個の炭素原子、又は最大6個の炭素原子を有することができる。いくつかの実施形態では、アルキルは、1~10個の炭素原子、1~6個の炭素原子又は1~4個の炭素原子を有する。好適な一級アミン化合物の例としては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、及びシクロヘキシルアミンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0067】
いくつかの実施形態では、式(V)のRは式-R-NHRの基であり、窒素含有化合物は式(V-1)の化合物である。
HN-R-NHR
(V-1)
このような化合物は、式-NHRのアミノ基を少なくとも2つ有する。式(V-1)のRのための好適なアルキル基は、少なくとも1個の炭素原子、少なくとも2個の炭素原子、又は少なくとも4個の炭素原子を有することができ、最大20個の炭素原子、最大18個の炭素原子、最大12個の炭素原子、最大10個の炭素原子、又は最大6個の炭素原子を有することができる。いくつかの実施形態では、アルキルは、1~10個の炭素原子、1~6個の炭素原子又は1~4個の炭素原子を有する。基Rは、共有結合(即ち、窒素含有化合物がヒドラジン化合物である)、アルキレン(即ち、アルキレンがアルカンの二価の基である)、アリーレン、アラルキレン、1つ以上のオキシ(-O-)基を有するヘテロアルキレン、又は1つ以上の-NH-基を有するヘテロアルキレンであることができる。
【0068】
式(V-1)の好適なアルキレンR基は、通常、少なくとも1個の炭素原子、少なくとも2個の炭素原子、少なくとも3個の炭素原子、又は少なくとも4個の炭素原子を有し、最大20個の炭素原子、最大16個の炭素原子、最大12個の炭素原子、最大10個の炭素原子、又は最大6個の炭素原子を有することができる。いくつかの窒素含有化合物は、Rが水素であり、Rがアルキレンであり、Rが水素である、式(V-1)の化合物である。このような窒素含有化合物の例は、例えば、メチレンジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、及びブチレンジアミンなどのアルキレンジアミンである。R及びRの両方がアルキルに相当する式(V-1)の窒素含有化合物としては、N,N’-ジメチルエチレンジアミンが挙げられる。
【0069】
式(V-1)の化合物の他の実施形態では、基Rは、少なくとも1つのカテナリー-O-又は-NH-基を有するヘテロアルキレン(即ち、ヘテロアルキレンは、カテナリーヘテロ原子を有するアルカンである、ヘテロアルカンの二価のラジカルである)である。言い方を変えれば、ヘテロアルキレンR基は、式-R-[O-R-又は-R-[NH-R-[式中、各R及び各Rは、独立してアルキレンであり、nは1~50、1~40、1~30、1~20、1~10、1~6若しくは1~4の範囲の整数である。]の基を1つ以上有する。好適なR及びRアルキレン基は、多くの場合、1~10個の炭素原子、1~6個の炭素原子、1~4個の炭素原子、又は1~3個の炭素原子を有する。ヘテロアルキレンは、多くの場合、最大30個の炭素原子及び最大16個のヘテロ原子、最大20個の炭素原子及び最大11個のヘテロ原子、又は最大10個の炭素原子及び最大6個のヘテロ原子を有する。このような窒素含有化合物は、式(V-2)及び(V-3)によって表すことができる。
HN-R-[O-R-NHR
(V-2)
HN-R-[NH-R-NHR
(V-3)
いくつかの窒素含有化合物は、Rが水素であり、Rが-O-基を有するヘテロアルキレンであり、Rが水素である、式(V-2)の化合物である。このような窒素含有化合物の例は、ポリエチレングリコールジアミン及びポリプロピレングリコールジアミンなどのポリ(アルキレンオキシド)ジアミンである。更なる窒素含有化合物は、Rが水素であり、Rが-NH-基を有するヘテロアルキレンであり、Rが水素である、式(V-3)の化合物である。このような窒素含有化合物は、例えば、式HN-[(CHNH]-(CHNH[式中、xは1~4の範囲の整数であり、yは1~10の範囲である。]の化合物であることができる。例としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、及びテトラエチレンペンタミンが挙げられる。
【0070】
式(V-1)のR基は、アリーレン基又はアラルキレン基であることもできる。好適なアリーレン(即ち、炭素環式の芳香族化合物の二価のラジカル)R基は、典型的には、6~12個の炭素原子を有し、多くの場合、フェニレン又はジフェニレンである。好適なアラルキレンR基とは、アリール基により置換されたアルキレン基、アルキル基で置換されたアリーレン基、又はアルキレン基に結合したアリーレン基を有する二価の基を指す。アルキレン又はアラルキレンのアルキル部分は、多くの場合、1~10個の炭素原子、1~6個の炭素原子、又は1~4個の炭素原子を有する。アリール又はアラルキレンのアリーレン部分は、多くの場合、6~12個の炭素原子を有し、多くの場合、フェニル又はフェニレンのどちらかである。R及びRの両方が水素であり、Rがアリーレンである式(V-1)の窒素含有化合物の例としては、フェニレンジアミンが挙げられるが、これに限定されない。
【0071】
更に他の窒素含有化合物は、R
式(V-4)にて示すような-(C=NH)-NHである式(V-1)の化合物である。
NH-(C=NH)-HN-R-NHR
(V-4)
例えば、いくつかの化合物では、Rは水素であり、Rはアルキレンである。このような化合物の1つは、アグマチンである。アグマチンは、その他の共鳴構造によっても同様に表すことができるが、式(V-1)及び(V-4)の両方の範囲内であると考えられる。
【0072】
式(V)のその他の実施形態では、Rは-(C=NH)-NH基である。得られる化合物は、式(V-5)の化合物である。
N-(C=NH)-NHR
(V-5)
が水素である場合、この化合物はグアニジンである。
【0073】
その他の好適な窒素含有化合物は、式-NHR[式中、Rは水素又はアルキルである。]の基を少なくとも3つ有するポリアミンである。このような化合物は、式(VI)の化合物であることができる。
-(NHR
(VI)
式(VI)では、Rは上記に定義したとおりであり、変数zは少なくとも3に相当し、最大10、最大8、最大6、又は最大4であることができる。R基は、多くの場合、アルカンのz価基、又はヘテロアルカンのz価基である。好適なアルカンのz価基は、多くの場合、4つの隣接基のうちの少なくとも3つが-CH-である分枝状炭素原子を有する。好適なヘテロアルカンのz価基は、多くの場合、3つの隣接炭素原子(例えば、アルキレン基若しくはアルキル基である3つの隣接基)を有する分枝状窒素原子を有するか、又は4つの隣接原子のうちの少なくとも3つが炭素(即ち、アルキレン基若しくはアルキル基である3つの隣接基)である分枝状炭素原子を有する。これらのヘテロアルカンのz価基は、多くの場合、式-R-[NH-R-[式中、各R及び各Rは、独立してアルキレンであり、pは1~50、1~40、1~30、1~20、1~10、1~6若しくは1~4の範囲の整数である。]の基を1つ以上含む。好適なR及びRアルキレン基は、多くの場合、1~10個の炭素原子、1~6個の炭素原子、1~4個の炭素原子、又は1~3個の炭素原子を有する。アルカンのz価基は、多くの場合、少なくとも2個の炭素原子、少なくとも3個の炭素原子、少なくとも4個の炭素原子、又は少なくとも5個の炭素原子を有し、最大20個の炭素原子、最大16個の炭素原子、最大12個の炭素原子、又は最大8個の炭素原子を有する。ヘテロアルカンのz価基は、多くの場合、最大30個の炭素原子及び最大16個のヘテロ原子、最大20個の炭素原子及び最大11個のヘテロ原子、又は最大10個の炭素原子及び最大6個のヘテロ原子を有する。
【0074】
特定の式R-(NHRのポリアミンとしては、様々なポリイミンが挙げられる。いくつかのポリイミンは、各窒素分枝状原子が式-R-[NH-R-の基3つに結合した、1つ以上の分枝状窒素原子を含む。各分枝状部分の末端基は、多くの場合、-NHなどの式-NHRの基である。例としては、様々な分枝状ポリエチレンイミンが挙げられる。別の特定のポリアミンは、Rがアルカンの三価の基(即ち、炭素分枝状原子が3つの隣接アルキレン基及び1つの隣接メチル基を有する4つの炭素原子に結合している)であり、各Rが水素であり、zが3に相当する、2-(アミノメチル)-2-メチル-1,3-プロパンジアミンである。
【0075】
多くの実施形態では、このような式(V)(式V-1~V-5を含む)、及び式(VI)の化合物などの窒素含有化合物は、2000ダルトン(Da)以下の分子量(又は重量平均分子量)を有する。例えば、分子量(又は重量平均分子量)は、1500Da以下、1000Da以下、750Da以下、500Da以下、又は250Da以下である。
【0076】
窒素含有化合物は、前駆体ポリマー材料中の式(II)のモノマー単位と反応する。この反応により、窒素含有化合物が、反応部位が式(II)のモノマー単位の無水物基(-(CO)-O-(CO)-)であるポリマー材料に共有結合することになる。環状構造は典型的には開かれて、式(VII)、式(VIII)、又はこれらの組み合わせのモノマー単位を形成する。
【化7】
【化8】
式(VII)及び(VIII)では、式(V)の窒素含有化合物が使用される場合、基Aは-NRに相当し、式(VI)の窒素含有化合物が使用される場合、基Aは-NR-R(NHRz-1に相当する。あるいは、環状構造は、場合により、式(IX)[式中、Aは二価の基であり、式(V)の化合物、又は式(VI)の化合物から水素原子を2個除いたものに相当する。]にて示すような形態であり得る。
【化9】
【0077】
いくつかの実施形態では、ポリマー吸着剤は、窒素含有化合物として式(V)の化合物を使用して形成される。
NHR
(V)
が水素である場合、ポリマー吸着剤は式-NHRの窒素含有基を含有する。水素に相当するR基を有するこのようなポリマー吸着剤がアルデヒドR-(CO)-Hに曝露される場合、得られるポリマー材料は、式-NH-CHR-OH、-N(CHR-OH)、-N=CRHの基、又はそれらの組み合わせを有し得る。アルキルに相当するR基を有するこのようなポリマー吸着剤がアルデヒドR-(CO)-Hに曝露される場合、得られるポリマー材料は、式-NR-CHR-OHの基を有することができる。
【0078】
その他の実施形態では、ポリマー吸着剤は、窒素含有化合物として式(V-1)の化合物を使用して形成される。
HN-R-NHR
(V-1)
得られるポリマー吸着剤は、式-NR-R-NHR、-NR-R-NHRの窒素含有基、又はその両方を有することができる。式-NR-R-NHRの基の末端Rが水素である場合、アルデヒドR-(CO)-Hに曝露後のポリマー吸着剤は、式-NR-R-NH-CHR-OH、-NR-R-N(CHR-OH)、-NR-R-N=CRHの基、又はそれらの混合物を有することができる。同様に、式-NR-R-NHRの基の末端Rが水素である場合、アルデヒドR-(CO)-Hに曝露後のポリマー吸着剤は、式-NR-R-NH-CHR-OH、-NR-R-N(CHR-OH)、-NR-R-N=CRHの基、又はそれら混合物を有することができる。式-NR-R-NHRの基の末端Rがアルキルである場合、アルデヒドR-(CO)-Hに曝露後のポリマー吸着剤は、式-NR-R-NR-CHR-OHの基を有することができる。同様に、式-NR1-R-NHR6の基の末端R6がアルキルである場合、アルデヒドR-(CO)-Hに曝露後のポリマー吸着剤は、式-NR1-R-NR6-CHR-OHの基を有することができる。更なる量のアルデヒドが、任意の残存する一級アミノ基又は二級アミノ基と反応することができる。
【0079】
更に他の実施形態では、ポリマー吸着剤は、窒素含有化合物として式(V-4)の化合物を使用して形成される。
NH-(C=NH)-HN-R-NHR
(V-4)
得られるポリマー吸着剤は、式-NH-(C=NH)-NH-R-NHR、-NR-R-NH-(C=NH)-NHの窒素含有基、又はその両方を有することができる。式-NH-(C=NH)-NH-R-NHRの基の末端Rが水素である場合、アルデヒドR-(CO)-Hに曝露後のポリマー吸着剤は、式-NH-(C=NH)-NH-R-NH-CHR-OH、-NH-(C=NH)-NH-R-N(CHR-OH)、-NH-(C=NH)-NH-R-N=CRHの基、又はそれらの混合物を有することができる。式-NH-(C=NH)-NH-R-NHRの基の末端Rがアルキルである場合、アルデヒドR-(CO)-Hに曝露後のポリマー吸着剤は、式-NH-(C=NH)-NH-R-NR-CHR-OHの基を有することができる。ポリマー吸着剤が式-NR-R-NH-(C=NH)-NHの基を有する場合、アルデヒドR-(CO)-Hに曝露後のポリマー吸着剤は、式-NR-R-NH-(C=NH)-NH-CHR-OH、-NR-R-NH-(C=NH)-N(CHR-OH)、-NR-R-NH-(C=NH)-N=CRHの基、又はそれらの混合物を有することができる。更なる量のアルデヒドが、任意の残存する一級アミノ基又は二級アミノ基と反応することができる。
【0080】
更に他の実施形態では、ポリマー吸着剤は、窒素含有化合物として式
(V-5)
N-(C=NH)-NHR
(V-5)
の化合物を使用して形成される。得られるポリマー吸着剤は、式-NH-(C=NH)-NHR、-NR-(C=NH)-NHの窒素含有基、又はその両方を有することができる。式-NH-(C=NH)-NHRの基の末端Rが水素である場合、アルデヒドR-(CO)-Hに曝露後のポリマー吸着剤は、式-NH-(C=NH)-NH-CHR-OH、-NH-(C=NH)-N(CHR-OH)、-NH-(C=NH)-N=CRHの基、又はそれらの混合物を有することができる。式-NH-(C=NH)-NHRの基の末端Rがアルキルである場合、アルデヒドR-(CO)-Hに曝露後のポリマー吸着剤は、式-NH-(C=NH)-NR-CHR-OHの基を有することができる。ポリマー吸着剤が式-NR-(C=NH)-NHの基を有する場合、アルデヒドR-(CO)-Hに曝露後のポリマー吸着剤は、式-NR-(C=NH)-NH-CHR-OH、-NR-(C=NH)-N(CHR-OH)、-NR-(C=NH)-N=CRHの基、又はそれらの混合物を有することができる。更なる量のアルデヒドが、任意の残存する一級アミノ基又は二級アミノ基と反応することができる。
【0081】
更に他の実施形態では、ポリマー吸着剤は、窒素含有化合物として式(VI)の化合物を使用して形成される。
-(NHR
(VI)
得られるポリマー吸着剤は、式-NR-R-(NHRz-1の窒素含有基を有することができる。式-NR-R-(NHRz-1の基の末端Rが水素である場合、アルデヒドR-(CO)-Hに曝露後のポリマー吸着剤は、式-NR-R-(NHRz-2(NH-CHROH)、-NR-R-(NHRz-2(N(CHROH))、-NR-R-(NHRz-2(N=CRH)基、又はそれらの混合物を有することができる。式-NR-R-(NHRz-1の基の末端Rのうちの1つがアルキルである場合、アルデヒドR-(CO)-Hに曝露後のポリマー吸着剤は、式-NR-R-(NHRz-2(NR-CHROH)の基を有することができる。これらの実施形態のいくつかでは、2つ以上の末端-NHR基がアルデヒドと反応することができる。末端基に加えて、アルデヒドは、ポリマー吸着剤上の任意のその他の一級及び/又は二級アミノ基と反応することができる。
【0082】
前駆体ポリマー材料中の式(II)のモノマー単位の各モルに対して、最大2モルの窒素含有化合物を添加することができた。即ち、最大200モル%の窒素含有化合物は、式(II)のモノマー単位の総モルに基づいて、前駆体ポリマー材料と反応することができる。いくつかの実施形態では、添加される窒素含有化合物の量は、前駆体ポリマー材料中の式(II)のモノマー単位の総モルに対して、最大175モル%、最大150モル%、最大125モル%、又は最大100モル%である。窒素含有化合物の量は、前駆体ポリマー材料中の式(II)のモノマー単位の総モルに対して、少なくとも1モル%、少なくとも2モル%、少なくとも5モル%、少なくとも10モル%、少なくとも20モル%、少なくとも50モル%、少なくとも75モル%、又は少なくとも100モル%であることができる。いくつかの実施形態では、窒素含有化合物の量は、前駆体ポリマー材料中の式(II)のモノマー単位の総モルに対して、1~200モル%の範囲、10~200モル%の範囲、50~200モル%の範囲、50~150モル%の範囲、75~150モル%の範囲、75~125モル%の範囲、又は100~200モル%の範囲である。
【0083】
窒素含有化合物を前駆体ポリマー材料と反応させるために、多くの場合、窒素含有化合物を水及び/又は好適な有機溶媒中に溶解させるが、他の方法が使用されてもよい。好適な有機溶媒は、窒素含有化合物を溶解するが、窒素含有化合物と反応しないようなものである。例示的な有機溶媒としては、アルコール、例えばテトラヒドロフラン及びジエチルエーテルなどのエーテル、並びに例えばメチレンクロリド及びクロロホルムなどの様々な塩素系溶媒が挙げられるが、これらに限定されない。水及び/又は有機溶媒中の窒素含有化合物の濃度は、窒素含有化合物の溶解度に応じて任意の好適な量であることができる。いくつかの実施形態では、水及び/又は有機溶媒中の窒素含有化合物の濃度は、1~40重量%の範囲、1~30重量%の範囲、1~20重量%の範囲、又は1~10重量%の範囲である。
【0084】
窒素含有化合物の溶液を前駆体ポリマー材料と混合する。窒素含有化合物と式(II)のモノマー単位との間の反応は、室温で行うことができるか、又は混合物を室温より高い温度まで加熱することによって行うことができる。例えば、30℃~120℃の範囲の温度にて、数時間~数日の間、混合物を加熱することができる。いくつかの実施形態では、懸濁液は、30℃~100℃の範囲、40℃~90℃の範囲、50℃~90℃の範囲、又は60℃~80℃の範囲の温度で12~24時間加熱される。
【0085】
ポリマー吸着剤は、典型的には、前駆体ポリマー材料よりも低いBET比表面積を有する。式(VII)及び(VIII)のモノマー単位を形成するための無水物基の開環により、主鎖の立体配座の自由度は十分に大きくなり、多孔度は低下し得る。加えて、式(VII)、(VIII)及び(IX)のモノマー単位中の窒素含有基間の水素結合は、場合により、細孔へのアクセスを制限又はブロックする可能性がある。このような低下のため、多くの場合、最も高い可能性のBET比表面積を有するが、窒素含有化合物と反応するのに充分な無水物基を有する前駆体ポリマー材料を調製することが望ましい。
【0086】
ポリマー吸着剤は、典型的には、少なくとも25m/gと等しいBET比表面積を有する。いくつかの実施形態では、BET比表面積は、少なくとも50m/g、少なくとも75m/g、又は少なくとも100m/gである。BET比表面積は、最大700m/g若しくはそれ以上、最大600m/g、最大500m/g、最大400m/g、最大300m/g、又は最大200m/gであることができる。いくつかの実施形態では、BET比表面積は、25~600m/gの範囲、25~500m/gの範囲、25~400m/gの範囲、25~300m/gの範囲、50~300m/gの範囲、50~200m/gの範囲、75~200m/gの範囲、又は50~100m/gの範囲である。
【0087】
BET比表面積は、ポリマー吸着剤中のミクロ細孔及び/又はメソ細孔の存在に少なくとも一部起因するものである。ポリマー吸着剤のアルゴン吸着等温線(77Kにて)は、0.1よりも低い相対圧力において相当量のアルゴン吸着があることを示しており、これはミクロ細孔が存在することを示唆するものである。0.1~約0.95の相対圧力で、吸着は徐々に増大する。この増大は、メソ細孔が広くサイズ分布していることを示すものである。
【0088】
いくつかの実施形態では、ポリマー吸着剤のBET比表面積の少なくとも20%は、ミクロ細孔及び/又はメソ細孔が存在することに起因する。ミクロ細孔及び/又はメソ細孔が存在することに起因し得るBET比表面積の比率は、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、又は少なくとも60%であり得る。いくつかの実施形態では、ミクロ細孔及び/又はメソ細孔が存在することに起因し得るBET比表面積の比率は、最大90%若しくはそれ以上、最大80%若しくはそれ以上、又は最大75%若しくはそれ以上とすることができる。
【0089】
多孔質ポリマー吸着剤は、少なくとも0.05cm/gに相当する総細孔容積を有する。総細孔容積は、液体窒素温度(77K)にて、約0.98(例えば、0.98±0.01)に相当する相対圧力(p/p°)での吸着アルゴン量から算出される。いくつかの実施形態では、総細孔容積は、少なくとも0.075cm/g、少なくとも0.10cm/g、少なくとも0.15cm/g、少なくとも0.20cm/g、少なくとも0.25cm/g、又は少なくとも0.30cm/gである。総細孔容積は、最大1.0cm/g若しくは更にそれ以上、最大0.9cm/g、最大0.8cm/g、最大0.7cm/g、最大0.6cm/g、最大0.5cm/g、最大0.4cm/g、最大0.3cm/g、又は最大0.2cm/gであることができる。細孔容積は、多くの場合、0.05~1cm/gの範囲、0.05~0.8cm/gの範囲、0.05~0.6cm/gの範囲、0.05~0.4cm/gの範囲、0.05~0.2cm/gの範囲、又は0.075~0.2cm/gの範囲である。
【0090】
ジビニルベンゼン/無水マレイン酸ポリマー材料の構造は、多孔質ポリマー吸着剤用の前駆体ポリマー材料としての使用に特によく適している。スチレン型モノマーからの式(IV)のモノマー単位の含有量が低いのであれば、ジビニルベンゼン/無水マレイン酸前駆体ポリマー材料は、ジビニルベンゼン及び無水マレイン酸からの交互モノマー単位を有する。この構造は高い架橋をもたらし、多孔質ポリマー材料、特にミクロ細孔及び/又はメソ細孔の含有量が高い多孔質ポリマー材料の形成に寄与する。
【0091】
いくつかの実施形態では、ポリマー吸着剤は、酸塩基比色指示薬(colorimetric indicator)を更に含む。酸塩基比色指示薬(即ち、酸性形態から塩基性形態に変化するときに色が変わる染料(典型的には有機染料))は、窒素含有化合物と同時に、又は窒素含有化合物を添加後、添加することができる。酸塩基比色指示薬は、典型的には、窒素含有化合物のpK未満のpKを有するように選択される。即ち、酸塩基比色指示薬は、ポリマー吸着剤上の利用可能な窒素含有基の全部又は大部分がアルデヒドと反応した場合に、第1の色から第2の色に変わるように選択される。色の変化は、ポリマー吸着剤がアルデヒドを吸着する容量の限度に達するか、又は限度に近いことを知らせる。本明細書で使用する場合、「限度に近い」という用語は、容量の限度の少なくとも60%又はそれ以上に達する(即ち、利用可能な吸着部位の少なくとも60%又はそれ以上がアルデヒドの吸着に使用されている)ことを指す。例えば、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%の吸着部位が、アルデヒドの吸着に使用されている。
【0092】
窒素含有化合物のpKを知ることで、当業者は、より低いpK値を有する酸塩基比色指示薬を容易に選択することができる。いくつかの用途では、窒素含有化合物のpK値と、酸塩基比色指示薬のpKとの間の差が、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、又は少なくとも4である。酸塩基比色指示薬のpKは、多くの場合、3~10の範囲である。
【0093】
酸塩基比色指示薬の例としては、メチルレッド、ブロモキシレノールブルー、パラローザニリン、クリソイジン、チモールブルー、メチルイエロー、ブロモフェニルブルー(bromophenyl blue)、コンゴレッド、メチルオレンジ、ブロモクレゾールグリーン、アゾリトミン、ブロモクレゾールパープル、ブロモチモールブルー、フェノールレッド、ニュートラルレッド、ナフトールフタレイン、クレゾールレッド、フェノールフタレイン、及びチモールフタレインが挙げられるが、これらに限定されない。
【0094】
酸塩基比色指示薬は、任意の好適な方法を使用してポリマー吸着剤に添加することができる。いくつかの実施形態では、ポリマー吸着剤を、酸塩基比色指示薬の溶液中に少なくとも10分間、少なくとも20分間、少なくとも30分間、少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも4時間、又は少なくとも8時間、浸漬する。酸塩基比色指示薬の溶液は、多くの場合、5~10mg/mLの範囲の濃度である。多くの場合、約0.5gのポリマー吸着剤を、約10mLの溶液中に浸漬する。
【0095】
ポリマー吸着剤は、捕捉剤の含浸に基づいて吸着剤に優る異なる利点を提供する。補捉剤は、典型的には、例えば、活性炭などのマトリックス材料上で単純に吸着する。即ち、補捉剤は、通常、マトリックス材料に共有結合しておらず、移動することができる。対照的に、本明細書に記載されるポリマー吸着剤は、アルデヒドと相互作用し、移動しない共有結合した窒素含有基を有する。
【0096】
バインダー
バインダーをポリマー吸着剤と組み合わせて、複合顆粒を調製する。バインダーは、有機材料(例えば、セルロース樹脂など)、無機材料(例えば、金属ケイ酸塩など)、又はそれらの組み合わせ(例えば、無機部分と有機部分とを有する化合物、例えば金属カルボン酸塩など)であってよい。多くの実施形態では、バインダーは、塩又はポリマー材料である。
【0097】
ある特定の実施形態では、バインダーは、高分子電解質材料である。任意の好適な高分子電解質材料を、有機又は無機の対イオンを含むものを含めて使用することができる。好適な高分子電解質材料は、天然ポリマー又は変性天然ポリマーから誘導される。例示的な高分子電解質材料としては、ポリアミン、ポリアミド、ポリアルコール、多糖類、ポリアクリルアミド、ポリアクリレート、フミン酸、タンパク質、塩化ポリジアリルジメチルアンモニウムなどのポリジアリルジメチルアンモニウム塩、ポリアミン-塩化ポリジアリルジメチルアンモニウムのブレンド、ポリ四級アミン、無機物-ポリアミンのブレンド、並びに無機物-塩化ポリジアリルジメチルアンモニウムのブレンド、カチオン性デンプン、カチオン性ポリメチルメタクリレート、ビニルイミダゾリウムメトクロライドとビニルピロリドンとのコポリマー、四級化ビニルピロリドン/ジメチルアミノエチルメタクリレートコポリマー、ポリエチレンイミン、及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態では、高分子電解質材料は、カチオン性デンプンを含む。
【0098】
ある特定の実施形態では、バインダーは、金属水酸化物、金属酸化物、金属塩、有機金属化合物、又はそれらの組み合わせを含む。好適な金属酸化物、金属水酸化物、及び金属塩バインダーは、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、又は鉄(ポリ硫酸アルミニウム及びポリ塩化アルミニウムを含む)から誘導される。他の例示的なバインダーは、ポリオルガノジルコネート、ポリオルガノアルミネート、ポリシロキサン、ポリシラン、ポリシラザン、ポリカルボシラン、ポリボロシラン、ジルコニウムジメタクリレート、ジルコニウムテトラメタクリレート、ジルコニウム2-エチルヘキサノエート、アルミニウムブトキシド、アルミニウムジイソプロポキシドエチルアセトアセテート、テトラメチルジシロキサン、トリストリメチルシリルホスフェート、トリストリメチルシロキシボロン、及びそれらの組み合わせである。いくつかの例示的な金属塩は、金属カルボン酸塩、例えば10~20個の炭素原子を有する金属カルボン酸塩(例えばステアリン酸マグネシウム)である。他の例示的な無機バインダーは、ケイ酸塩(例えば、金属ケイ酸塩)である。例示的な金属ケイ酸塩としては、ケイ酸ナトリウム(例えば、メタケイ酸ナトリウム)、ケイ酸カリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、及びそれらの組み合わせが挙げられる。ある特定の実施形態では、ケイ酸塩は、メタケイ酸ナトリウムである。
【0099】
他の例示的なバインダーとしては、熱可塑性ポリマーが挙げられる。熱可塑性ポリマーは、例えば、ポリアミド(例えば、ナイロン)、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、例えば、LDPE、LLDPE、HDPE、他のポリオレフィンとのポリエチレンコポリマー、及びポリプロピレン)、ポリ塩化ビニル(可塑化及び非可塑化の両方)、フルオロカーボン樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン)、ポリスチレン、アクリル系樹脂(例えば、ポリアクリレート及びポリメタクリレート)、スチレンコポリマー(例えば、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン及びアクリロニトリル-スチレン)、ポリカーボネート、ポリ酢酸ビニル、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリオキシメチレン、ポリホルムアルデヒド、ポリアセタール、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート)、ポリエーテルエーテルケトン、及びフェノール-ホルムアルデヒド樹脂(例えば、レゾール及びノボラック)、及びそれらの組み合わせから選択することができる。
【0100】
更に他の例としては、熱硬化性ポリマーが挙げられる。熱硬化性ポリマーは、例えば、ポリウレタン、シリコーン、フルオロシリコーン、フェノール樹脂、メラミン樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、及び尿素ホルムアルデヒド樹脂から選択される。
【0101】
更に他の例示的なバインダーとしては、エラストマーが挙げられる。ある特定の実施形態では、エラストマーは、天然ゴム、合成ゴム(例えば、スチレン-ブタジエンゴム、ポリクロロプレン(ネオプレン)、ニトリルゴム、及びブチル系ゴム)、シリコーン、ポリウレタン、アルキル化クロロスルホン化ポリエチレン、ポリオレフィン、クロロスルホン化ポリエチレン、ペルフルオロエラストマー、エチレン-プロピレン-ジエンターポリマー、塩素化ポリエチレン、フルオロエラストマー、及びそれらの混合物から選択される。
【0102】
ある特定の実施形態では、バインダーとしては、天然由来のポリマーが挙げられる。例示的な天然由来のポリマーは、セルロース、コラーゲン、有機酸、及びそれらの組み合わせから選択することができる。例えば、天然由来のポリマーは、生分解性ポリマーであってもよい。好適な生分解性ポリマーは、ポリエチレングリコール、ポリ乳酸、ポリビニルアルコール、セルロース系樹脂(例えば、セルロースアセテートブチレート、カルボキシメチルセルロース、及びヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロースエーテル)、アルギン酸、海藻から単離されたカラギーナン、多糖類、ペクチン、キサンタン、デンプン、ポリラクチドグリコライドのコポリマー、及びそれらの組み合わせから選択することができる。いくつかの実施形態では、生分解性ポリマーは、ポリエチレングリコール、ポリ乳酸、ポリビニルアルコール、ポリラクチドグリコライドのコポリマー、及びそれらの混合物から選択される。
【0103】
ある特定の実施形態では、バインダーとしては、導電性ポリマーが挙げられる。例示的な導電性ポリマーは、ドープされたポリアニリン及びポリチオフェンから選択することができる。
【0104】
ある特定の実施形態では、バインダーとしては、ゲル化材、吸収性材料、又はそれらの組み合わせが挙げられる。例示的な吸収性バインダー材料は、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリアルコール、ポリアミン、ポリエチレンオキシド、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース、キチン、ゼラチン、デンプン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリロニトリル、アルギン酸、海藻から単離されたカラギーナン、多糖類、ペクチン、キサンタン、塩化ポリジアリルジメチルアンモニウム、ポリビニルピリジン、ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウム塩、ポリ酢酸ビニル、ポリ乳酸、及びそれらの組み合わせなどの超吸収性材料とすることができる。
【0105】
複合顆粒を製造する方法
別の態様では、複合顆粒を調製する方法が提供される。方法は、前駆体ポリマー材料を用意する工程を含む。前駆体ポリマー材料は、重合性組成物の重合生成物を含み、重合性組成物は、(1)重合性組成物中のモノマーの総重量に基づいて8~65重量%の無水マレイン酸と、(2)重合性組成物中のモノマーの総重量に基づいて30~85重量%のジビニルベンゼンと、(3)重合性組成物中のモノマーの総重量に基づいて0~40重量%のスチレン型モノマーであって、スチレン、アルキル置換スチレン、又はこれらの組み合わせである、スチレン型モノマーと、を含む。方法は、前駆体ポリマー材料を、アンモニア、単一の一級アミノ基(-NH)を有する化合物、又は式-NHR[式中、Rは水素若しくはアルキルである。]のアミノ基を少なくとも2つ有する化合物から選択される窒素含有化合物と反応させる工程を更に含む。反応は、共有結合した窒素含有基を有するポリマー吸着剤の形成をもたらす。本方法は、ポリマー吸着剤をバインダーと配合して、配合材料を形成する工程と、この配合材料から複合顆粒を調製する工程とをなお更に含む。
【0106】
本複合顆粒は、多くの場合、複合顆粒の総重量に基づいて、少なくとも1重量%、少なくとも2重量%、少なくとも5重量%、又は少なくとも10重量%の量のバインダーを含有する。ある特定の実施形態では、バインダーは、複合顆粒の総重量に基づいて、最大30重量%、最大25重量%、又は最大20重量%の量で複合顆粒中に存在する。
【0107】
複合顆粒は、多くの場合、複合顆粒の総重量に基づいて、少なくとも70重量%、少なくとも75重量%、又は少なくとも80重量%の量でポリマー吸着剤を含有する。ある特定の実施形態では、ポリマー吸着剤は、複合顆粒の総重量に基づいて、最大90重量%、最大95重量%、最大98重量%、又は最大99重量%の量で複合顆粒中に存在する。
【0108】
いくつかの実施形態では、複合顆粒は、複合顆粒の総重量に基づいて、1~30重量%のバインダーと、70~99重量%のポリマー吸着剤とを含有する。例えば、本複合顆粒は、5~30重量%のバインダーと70~95重量%のポリマー吸着剤、10~30重量%のバインダーと70~90重量%のポリマー吸着剤、1~25重量%のバインダーと75~99重量%のポリマー吸着剤、5~25重量%のバインダーと75~95重量%のポリマー吸着剤、10~25重量%のバインダーと75~90重量%のポリマー吸着剤、1~20重量%のバインダーと80~99重量%のポリマー吸着剤、5~20重量%のバインダーと80~95重量%のポリマー吸着剤、又は10~20重量%のバインダーと80~90重量%のポリマー吸着剤を含有することができる。
【0109】
ポリマー吸着剤及び結着剤は、水又は有機溶媒などのいかなる液体も使用することなく、一緒に配合されることが多い。次いで、配合材料は、ペレット又はディスクに押圧され、これが続いてすりつぶされ又は粉砕され、その後に篩分けされて、所望のサイズの複合顆粒を得ることができる(例えば、所望のサイズの複合顆粒は、篩上に保持される)。篩を通過するいかなる材料も、追加のペレット又はディスクに押圧することによって回収し再利用することができる。
【0110】
任意の好適な圧力が、ペレット又はディスクを形成するために使用され得る。配合材料は、ペレット又はディスクを形成する過程で任意に加熱することができる。いくつかの実施形態では、配合材料は、バインダーの融点近く(しかしながら、多くの場合それ未満)の温度まで加熱することができる。圧力及び温度は、破壊されるとき、粉々に砕けない(若しくは粉々に砕けるのが最小限である)ペレット又はディスクをもたらすように選択される。ペレット又はディスクは、例えば、0.5~3センチメートル、1~3センチメートル、又は2~3センチメートルなどの任意の好適なサイズを有することができる。
【0111】
ペレット又はディスクを形成するために選択された圧力は、典型的には、6,000ポンド毎平方インチ(psi)~60,000psi又は更にそれ以上の範囲にある。例えば、圧力は、多くの場合、少なくとも6,000psi、少なくとも6,400psi、少なくとも6,500psi、少なくとも10,000psi、少なくとも20,000psi、又は少なくとも25,000psiであり、最大60,000psi、最大50,000psi、最大40,000psi、又は最大30,000psiとすることができる。放置時間(dwell time)(力がかかる時間)は、数秒から数分に変化することができる。例えば、放置時間は、1秒~10分の範囲とすることができる。
【0112】
アルデヒドを吸着させる方法及びそれから得られる組成物
更に別の態様では、アルデヒドを吸着させる(すなわち、捕捉する)方法が提供される。本方法は、上記のようにバインダーとポリマー吸着剤とを含む複合顆粒を用意する工程を含む。本方法は、複合顆粒をアルデヒドに曝露する工程と、アルデヒドをポリマー吸着剤上に吸着させる工程と、を更に含む。アルデヒドは、式(I)のアルデヒド:
-(CO)-H
(I)
[式中、Rは水素、アルキル、ビニル、アリール、又はアルキルで置換されたアリールである。]である。好適なアルキル基は、典型的には、1~10個の炭素原子、1~6個の炭素原子、1~4個の炭素原子、1~3個の炭素原子、又は1個の炭素原子を有する。アリール基は、最大12個の炭素原子、又は最大6個の炭素原子を有することができる。アリール基は、多くの場合、フェニルである。アリール基は、1~4個の炭素原子、又は1~3個の炭素原子を有するアルキル基などのアルキル基で置換可能である。式(I)のアルデヒドの分子量は、典型的には、200g/モル以下である。アルデヒドは、ポリマー吸着剤上に存在する任意の一級アミノ基又は二級アミノ基と反応することができる。
【0113】
更に別の態様では、アルデヒドと複合顆粒との反応生成物を含む組成物が提供される。本複合顆粒は、上記のようにバインダーとポリマー吸着剤とを含有する。アルデヒドは、上述するように式(I)のアルデヒドである。アルデヒドは、複合粒子中に含まれるポリマー吸着剤の窒素含有基と反応する。
【0114】
アルデヒドは、複合顆粒のポリマー吸着剤部分によって吸着されたときに蒸気の形態である。したがって、アルデヒドの分子量は、典型的には、200g/mol以下、150g/mol以下、100g/mol以下、75g/mol以下、又は50g/mol以下である。好適なアルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、ペンタナール(バレルアルデヒド)、イソバレルアルデヒド、ヘキサナール、ベンズアルデヒド、2,5-ジメチルベンズアルデヒド、2,4-ジメチルベンズアルデヒド、2,3-ジメチルベンズアルデヒド、トルアルデヒド(オルト-トルアルデヒド、メタ-トルアルデヒド、パラ-トルアルデヒド、及びこれらの混合物)、アクロレイン、並びにクロトンアルデヒドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0115】
アルデヒドは、室温にて、又は-30℃~150℃、-30℃~100℃の範囲、若しくは-20℃~50℃の範囲などの任意の所望の温度にて、吸着させることができる。
【0116】
室温(例えば25℃)及び標準圧力にてポリマー吸着剤により吸着されたアルデヒドの量は、多くの場合、少なくとも0.5mmol/g(即ち、ポリマー吸着剤1gにつき少なくとも0.5mmolのアルデヒド)である。例えば、吸着されたアルデヒドの量は、少なくとも1mmol/g、少なくとも1.5mmol/g、少なくとも2mmol/g、少なくとも2.5mmol/g、少なくとも3mmol/g、少なくとも3.5mmol/g、少なくとも4mmol/g、少なくとも4.5mmol/g、又は少なくとも5mmol/gであることができる。吸着された量は、最大12mmol/g又は更にそれ以上、最大10mmol/g、最大9mmol/g、最大8mmol/g、又は最大7mmol/gであることができる。吸着された量は、多くの場合、0.5~12mmol/gの範囲、1~12mmol/gの範囲、2~12mmol/gの範囲、1~10mmol/gの範囲、2~10mmol/gの範囲、3~12mmol/gの範囲、3~10mmol/gの範囲、又は3~8mmol/gの範囲である。
【0117】
室温で複合顆粒が吸着するアルデヒドの量は、ポリマー吸着剤に組み込まれた窒素含有基の量に関連する。複合顆粒が吸着するアルデヒドの量は、少なくとも0.35mmol/gであり、10mmol/g以上であってもよい。多くの実施形態において、吸着される量は、少なくとも1mmol/g、少なくとも2mmol/g、又は少なくとも3mmol/gである。吸着される量は、例えば、最大9mmol/g、最大8mmol/g、最大7mmol/g、最大6mmol/g、又は最大5mmol/gであることができる。
【0118】
例示的な実施形態
複合顆粒、複合顆粒を調製する方法、アルデヒドを複合顆粒上へ吸着させる方法、又は吸着されたアルデヒドを有する複合顆粒である、様々な実施形態が提供される。
【0119】
実施形態1Aは、バインダーとポリマー吸着剤とを含む複合顆粒であって、ポリマー吸着剤が(a)前駆体ポリマー材料と(b)窒素含有化合物との反応生成物である、複合顆粒である。前駆体ポリマー材料は、重合性組成物の重合生成物を含み、重合性組成物は、(1)重合性組成物中のモノマーの総重量に基づいて8~65重量%の無水マレイン酸と、(2)重合性組成物中のモノマーの総重量に基づいて30~85重量%のジビニルベンゼンと、(3)重合性組成物中のモノマーの総重量に基づいて0~40重量%のスチレン型モノマーであって、スチレン、アルキル置換スチレン、又はこれらの組み合わせである、スチレン型モノマーと、を含む。窒素含有化合物は、アンモニア、単一の一級アミノ基(-NH)を有する化合物、又は式-NHR[式中、Rは水素若しくはアルキルである。]のアミノ基を少なくとも2つ有する化合物から選択される。
【0120】
実施形態2Aは、バインダーが、金属水酸化物、金属酸化物、又はそれらの組み合わせを含む、実施形態1Aに記載の複合顆粒である。
【0121】
実施形態3Aは、バインダーが、塩(例えば、金属塩)又はポリマーを含む、実施形態1Aに記載の複合顆粒である。
【0122】
実施形態4Aは、バインダーが、ケイ酸塩(例えば、金属ケイ酸塩)を含む、実施形態1Aに記載の複合顆粒である。
【0123】
実施形態5Aは、ケイ酸塩が、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、メタケイ酸ナトリウム、又はそれらの混合物を含む、実施形態4Aに記載の複合顆粒である。
【0124】
実施形態6Aは、ケイ酸塩が、メタケイ酸ナトリウムを含む、実施形態5Aに記載の複合顆粒である。
【0125】
実施形態7Aは、バインダーが、ポリオルガノジルコネート、ポリオルガノアルミネート、ポリシロキサン、ポリシラン、ポリシラザン、ポリカルボシラン、ポリボロシラン、ジルコニウムジメタクリレート、ジルコニウムテトラメタクリレート、ジルコニウム2-エチルヘキサノエート、アルミニウムブトキシド、アルミニウムジイソプロポキシドエチルアセトアセテート、テトラメチルジシロキサン、トリストリメチルシリルホスフェート、トリストリメチルシロキシボロン、又はそれらの組み合わせを含む、実施形態1Aに記載の複合顆粒である。
【0126】
実施形態8Aは、バインダーが、カルボン酸塩を含む、実施形態1Aに記載の複合顆粒である。
【0127】
実施形態9Aは、カルボン酸アニオンが、少なくとも10個の炭素原子を有する、実施形態8Aに記載の複合顆粒である。
【0128】
実施形態10Aは、カルボン酸塩が、ステアリン酸マグネシウムを含む、実施形態8A又は9Aのいずれか1つに記載の複合顆粒である。
【0129】
実施形態11Aは、バインダーが、熱可塑性ポリマーを含む、実施形態1Aに記載の複合顆粒である。
【0130】
実施形態12Aは、バインダーが、熱硬化性ポリマーを含む、実施形態1Aに記載の複合顆粒である。
【0131】
実施形態13Aは、バインダーが、エラストマーを含む、実施形態1Aに記載の複合顆粒である。
【0132】
実施形態14Aは、バインダーが、天然由来のポリマーを含む、実施形態1Aに記載の複合顆粒である。
【0133】
実施形態15Aは、天然由来のポリマーがセルロース系樹脂である、実施形態14Aに記載の複合顆粒である。
【0134】
実施形態16Aは、バインダーが、導電性ポリマーを含む、実施形態1Aに記載の複合顆粒である。
【0135】
実施形態17Aは、バインダーが、ゲル化材、吸収性材物、又はそれらの混合物を含む、実施形態1Aに記載の複合顆粒である。
【0136】
実施形態18Aは、バインダーが、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリアルコール、ポリアミン、ポリエチレンオキシド、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース、キチン、ゼラチン、デンプン、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、アルギン酸、海藻から単離されたカラギーナン、多糖類、ペクチン、キサンタン、塩化ポリジアリルジメチルアンモニウム、ポリビニルピリジン、ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウム塩、ポリ酢酸ビニル、ポリ乳酸、及びそれらの混合物を含む超吸収性材料を含む、実施形態17Aに記載の複合顆粒である。
【0137】
実施例19Aは、重合性組成物が、15~65重量%の無水マレイン酸、30~85重量%のジビニルベンゼン、及び0~40重量%のスチレン型モノマーを含む、実施形態1A~18Aのいずれか1つに記載の複合顆粒である。
【0138】
実施例20Aは、重合性組成物が、25~65重量%の無水マレイン酸、30~75重量%のジビニルベンゼン、及び1~20重量%のスチレン型モノマーを含む、実施形態1A~19Aのいずれか1つに記載の複合顆粒である。
【0139】
実施例21Aは、重合性組成物が、30~65重量%の無水マレイン酸、30~70重量%のジビニルベンゼン、及び1~20重量%のスチレン型モノマーを含む、実施形態1A~20Aのいずれか1つに記載の複合顆粒である。
【0140】
実施形態22Aは、窒素含有化合物が、式(V)の化合物:
NHR
(V)
である、実施形態1A~21Aのいずれか1つに記載の複合顆粒である。
式(V)では、Rは水素又はアルキルであり、Rは水素、アルキル、式-R-NHRの基、又は-(C=NH)-NHであり、Rは、共有結合、アルキレン、アリーレン、アラルキレン、1つ以上のオキシ(-O-)基を有するヘテロアルキレン、又は1つ以上の-NH-基を有するヘテロアルキレンであり、Rは水素、アルキル、又は-(C=NH)-NHである。
【0141】
実施例23Aは、式(V)の窒素含有化合物が、2000ダルトン以下の分子量を有する、実施形態22Aに記載の複合顆粒である。
【0142】
実施形態24Aは、式(V)の窒素含有化合物が、式(V-1)の化合物である、実施形態22A又は23Aに記載のポリマー吸着剤である。
HN-R-NHR
(V-1)
式(V-1)では、Rは水素又はアルキルであり、Rは、共有結合、アルキレン、アリーレン、アラルキレン、1つ以上のオキシ(-O-)基を有するヘテロアルキレン、又は1つ以上の-NH-基を有するヘテロアルキレンであり、Rは水素、アルキル、又は-(C=NH)-NHである。
【0143】
実施形態25Aは、Rがヘテロアルキレンであり、窒素含有化合物が式(V-2)又は式(V-3)の化合物である、実施形態22A又は23Aに記載のポリマー吸着剤である。
HN-R-[O-R-NHR
(V-2)
HN-R-[NH-R-NHR
(V-3)
これらの式では、Rはアルキレンであり、Rはアルキレンであり、nは1~50の範囲の整数である。
【0144】
実施形態26Aは、式(V-1)の窒素含有化合物が、式(V-4)の化合物:
NH-(C=NH)-HN-R-NHR
(V-4)
[式中、Rはアルキレンである。]である、実施形態24Aに記載のポリマー吸着剤である。
【0145】
実施形態27Aは、式(V)の窒素含有化合物が、式(V-5)の化合物である、実施形態22A又は23Aに記載のポリマー吸着剤である。
N-(C=NH)-NHR
(V-5)
【0146】
実施形態28Aは、窒素含有化合物が、式(VI)の化合物:
-(NHR
(VI)
[式中、
は、アルカンのz価ラジカル、又はヘテロアルカンのz価ラジカルであり、
zは、3~10の範囲の整数である。]である、実施形態1A~21Aのいずれか1つに記載の複合顆粒である。
【0147】
実施形態29Aは、ポリマー吸着剤が、酸塩基比色指示薬を更に含む、実施形態1A~28Aのいずれか1つに記載の複合顆粒である。
【0148】
実施形態30Aは、酸塩基比色指示薬が、窒素含有化合物よりも低いpKを有する、実施形態29Aに記載の複合顆粒である。
【0149】
実施形態31Aは、窒素含有化合物のpKと、酸塩基指示薬のpKとの間の差が、少なくとも2に相当する、実施形態28A又は29Aに記載の複合顆粒である。
【0150】
実施形態32Aは、ポリマー吸着剤が、少なくとも25m/gと等しいBET比表面積を有する、実施形態1A~31Aのいずれか1つに記載の複合顆粒である。
【0151】
実施形態33Aは、複合顆粒が、複合顆粒の総重量に基づいて、1~30重量%のバインダーと、70~99重量%のポリマー吸着剤とを含む、実施形態1A~32Aのいずれか1つに記載の複合顆粒である。
【0152】
実施形態34Aは、複合顆粒が、複合顆粒の総重量に基づいて、1~25重量%のバインダーと、75~99重量%のポリマー吸着剤とを含む、実施形態1A~32Aのいずれか1つに記載の複合顆粒である。
【0153】
実施形態35Aは、複合顆粒が、複合顆粒の総重量に基づいて、1~20重量%のバインダーと、80~99重量%のポリマー吸着剤とを含む、実施形態1A~32Aのいずれか1つに記載の複合顆粒である。
【0154】
実施形態1Bは、アルデヒドを吸着させる(すなわち、捕捉する)方法である。本方法は、バインダーとポリマー吸着剤とを含有する複合顆粒を用意する工程を含む。ポリマー吸着剤は、(a)前駆体ポリマー材料と(b)窒素含有化合物との反応生成物である。前駆体ポリマー材料は、重合性組成物の重合生成物を含み、重合性組成物は、(1)重合性組成物中のモノマーの総重量に基づいて8~65重量%の無水マレイン酸と、(2)重合性組成物中のモノマーの総重量に基づいて30~85重量%のジビニルベンゼンと、(3)重合性組成物中のモノマーの総重量に基づいて0~40重量%のスチレン型モノマーであって、スチレン、アルキル置換スチレン、又はこれらの組み合わせである、スチレン型モノマーと、を含む。窒素含有化合物は、アンモニア、単一の一級アミノ基(-NH)を有する化合物、又は式-NHR[式中、Rは水素若しくはアルキルである。]のアミノ基を少なくとも2つ有する化合物から選択される。本方法は、複合顆粒をアルデヒドに曝露する工程と、アルデヒドをポリマー吸着剤上に吸着させる工程と、を更に含む。アルデヒドは、式(I)のアルデヒド:
-(CO)-H
(I)
[式中、Rは、水素、アルキル、ビニル、又はアリールである。]である。式(I)のアルデヒドの分子量は、典型的には、200g/モル以下である。
【0155】
実施形態2Bは、複合顆粒が実施形態2A~35Aのいずれか1つに記載のものである、実施形態1Bに記載の方法である。
【0156】
実施形態3Bは、Rが、水素又はメチルである、実施形態1B又は2Bに記載の方法である。
【0157】
実施形態4Bは、ポリマー吸着剤が、複合顆粒の重量に基づいて、1g当たり0.35~10mmolの範囲の量のアルデヒドを吸着する、実施形態1B~3Bのいずれか1つに記載の方法である。
【0158】
実施形態5Bは、ポリマー吸着剤が酸塩基比色指示薬を更に含み、酸塩基比色指示薬は、ポリマー吸着剤のアルデヒド吸着容量が限度に達するか又は限度に近い場合に変色する、実施形態1B~4Bのいずれか1つに記載の方法である。
【0159】
実施形態1Cは、バインダーとポリマー吸着剤とを含有する複合顆粒とアルデヒドとの反応生成物を含む組成物である。ポリマー吸着剤は、(a)前駆体ポリマー材料と(b)窒素含有化合物との反応生成物である。前駆体ポリマー材料は、重合性組成物の重合生成物を含み、重合性組成物は、(1)重合性組成物中のモノマーの総重量に基づいて8~65重量%の無水マレイン酸と、(2)重合性組成物中のモノマーの総重量に基づいて30~85重量%のジビニルベンゼンと、(3)重合性組成物中のモノマーの総重量に基づいて0~40重量%のスチレン型モノマーであって、スチレン、アルキル置換スチレン、又はこれらの組み合わせである、スチレン型モノマーと、を含む。窒素含有化合物は、アンモニア、単一の一級アミノ基(-NH)を有する化合物、又は式-NHR[式中、Rは水素若しくはアルキルである。]のアミノ基を少なくとも2つ有する化合物から選択される。アルデヒドは、式(I)のアルデヒド:
-(CO)-H
(I)
[式中、Rは、水素、アルキル、ビニル、又はアリールである。]である。式(I)のアルデヒドの分子量は、典型的には、200g/モル以下である。
【0160】
実施形態2Cは、複合顆粒が実施形態2A~35Aのいずれか1つに記載のものである、実施形態1Cに記載の組成物である。
【0161】
実施形態3Cは、Rが、水素又はメチルである、実施形態1Cに記載の組成物である。
【0162】
実施形態4Cは、ポリマー吸着剤が、複合顆粒の重量に基づいて、1g当たり0.35~10mmolの範囲の量のアルデヒドを吸着する、実施形態1C~3Cのいずれか1つに記載の方法である。
【0163】
実施形態1Dは、複合顆粒を調製する方法である。方法は、前駆体ポリマー材料を用意する工程を含む。前駆体ポリマー材料は、重合性組成物の重合生成物を含み、重合性組成物は、(1)重合性組成物中のモノマーの総重量に基づいて8~65重量%の無水マレイン酸と、(2)重合性組成物中のモノマーの総重量に基づいて30~85重量%のジビニルベンゼンと、(3)重合性組成物中のモノマーの総重量に基づいて0~40重量%のスチレン型モノマーであって、スチレン、アルキル置換スチレン、又はこれらの組み合わせである、スチレン型モノマーと、を含む。方法は、前駆体ポリマー材料を、アンモニア、単一の一級アミノ基(-NH)を有する化合物、又は式-NHR[式中、Rは水素若しくはアルキルである。]のアミノ基を少なくとも2つ有する化合物から選択される窒素含有化合物と反応させる工程を更に含む。反応は、共有結合した窒素含有基を有するポリマー吸着剤の形成をもたらす。本方法は、ポリマー吸着剤をバインダーと配合して、配合材料を形成する工程と、この配合材料から複合顆粒を調製する工程とをなお更に含む。
【0164】
実施形態2Dは、ポリマー吸着剤が実施形態2A~35Aのいずれか1つに記載のものである、実施形態1Dに記載の方法である。
【0165】
実施形態3Dは、複合顆粒を調製する工程が、配合材料からペレット又はディスクを形成する工程と、ペレット又はディスクを粉砕して粉砕生成物を形成する工程と、粉砕生成物を篩分けして、篩分けされた生成物を回収する工程とを含む、実施形態1D又は2Dに記載の方法である。
【実施例
【0166】
材料
材料及びそれらの供給元は、表1に列挙されたとおりであった。別段の指示がない限り、全ての材料は民間の供給元から入手し、受領した状態で使用した。
【表1】
【0167】
ガス吸着分析
Micromeritics Instrument Corporation(Norcross,GA)製のAccelerated Surface Area and Porosimetry(高効率比表面積/細孔分布測定)(ASAP)2020システムを使用して、多孔度及びガス吸着実験を行った。吸着質は、超高純度のものであった。以下は、例示されている材料内部の多孔度を特性評価するために使用した典型的な方法である。Micromeriticsの直径1/2インチ(1.3センチメートル(cm))の試料管内で、ASAP2020の分析ポート上で超高真空下(3~7μmHg)で加熱することによって50~250mgの材料を脱気して、残留溶媒及び他の吸着質を除去した。前駆体ポリマー材料のための脱気手順は、150℃にて3時間であった。
【0168】
0.1未満の相対圧力(p/p°)の低圧印加量を用い(5cm/g(cm/g))、かつ0.1~0.98の範囲のp/p°の間で等間隔で設けられた圧力点の圧力テーブルを使用して、77Kでのアルゴン吸着等温線を得た。全ての等温線のための方法に、以下の平衡化時間間隔を用いた。10-5未満のp/p°で90秒、10-5~0.1の範囲のp/p°で40秒、及び0.1を超えるp/p°で20秒。アルゴン吸着分析後、周囲温度及び77Kの両方にてヘリウムを使用して、フリースペースを求めた。複数点Brunauer-Emmett-Teller(BET)分析により、アルゴン吸着データから、BET比表面積(SABET)を算出した。非線形密度汎関数理論(NLDFT)モデルにより炭素スリット細孔で77Kにおいてアルゴンを使用して、密度汎関数理論(DFT)分析によってアルゴン吸着データから見かけのミクロ細孔分布を算出した。約0.98に相当するp/p°において吸着したアルゴンの総量から総細孔容積を算出した。BET、DFT及び総細孔容積分析は、Micromeritics MicroActive Version 4.00ソフトウェアを使用して実施した。
【0169】
ホルムアルデヒド容量試験
単純な特注の貫流送達系を使用して、既知の濃度のホルムアルデヒドを測定用試料に送達した。送達系全体にプラスチック管を使用したが、ホルムアルデヒドが生成される箇所より下流部分にはフルオロポリマー管を使用した。パラホルムアルデヒド4.86重量%の溶液を2.5ミリリットル(mL)GASTIGHT注射器(製品番号81420、Hamilton Company,Reno,NV)を用いて水中に送達することにより、ホルムアルデヒドを生成した。このシリンジは、シリンジポンプ、モデル780200-V(KD Scientific,Holliston,MA)によって特定の速度で操作した。溶液中のパラホルムアルデヒド濃度及びシリンジの断面積がわかっていることにより、正確な速度でパラホルムアルデヒド溶液を送達できた。この溶液を、パラホルムアルデヒドを分解し、生じたホルムアルデヒドを蒸発させるためのフラスコ中の一片の熱した金箔上に送達した。このフラスコを介して、250mL/分の窒素ガスを通過させ、アナログ質量流量コントローラ、モデルGFC17(Aalborg,Orangeburg,NY)により、0~500mL/分の範囲で制御した。コントローラの出力において20~6000mLの較正セルを有するモデル800286 GILIBRATOR平衡石鹸泡流量計を配置することにより、このコントローラを較正した。GILIBRATOR流量計を使用して、検量線を作成するために使用した各フローコントローラからの一定範囲のフローを測定した。ホルムアルデヒドの蒸発により、窒素中に250百万分率(ppm)の濃度のホルムアルデヒドが生成した。水もまた窒素中に蒸発させ、これにより、気流を約50%相対湿度まで加湿した。これらの検量線を使用して、質量流量コントローラを、所望のホルムアルデヒド濃度及び湿度を所望のガス流量で送達するように設定した。
【0170】
充填後の試験管内の層の厚さ(bed depth)が1.0cmになるまで、篩分けした試験材料粒子を計量済み試験管に加えることによって、試験材料のホルムアルデヒド除去能力を測定した。試験管の内径は、1.0cmであった。次いで、試験管中の試験材料の重量を量ることによって、試験材料の質量を測定した。次いで、試験管をシステムと直列につなぎ、250ppmのホルムアルデヒド気流が試験材料を通って流れるようにした。試験管の下流側に、ガスクロマトグラフ計器(SRI 8610C、SRI Instruments,Torrance,CA)まで続く管材を接続した。ホルムアルデヒドガス流が試験試料を通過しはじめたときに試験が開始されたものとみなし、タイマーをスタートさせた。ガスクロマトグラフは、ガスストリームを周期的にサンプリングし、取り込まれた各データポイントのタイムスタンプを記録し、この試料をRT-U-BOND 30メートルカラム(Restek Corporation,Bellefonte,PA)を通過させた。
【0171】
次いで、このカラムからの流出物を、水素炎イオン化検出器(FID)を装備したメタナイザに通した。メタナイザは、ホルムアルデヒドをメタンに変換し、次いで、メタンがイオン化され、FIDにより検出された。その後、シグナルは、装置付属のデータ収集ソフトウェアに報告され、記録された。ガスクロマトグラフにより気流を6秒間サンプリングしたところ、ホルムアルデヒド蒸気が良好に検出されたため、試料を144秒間カラムを通過させ、その後、分析する次の試料の気流を引き込む前に気流の試料を60秒間流出させた。
【0172】
試験の前に、ガスクロマトグラフのソフトウェアを較正するために、窒素ガス流中に異なる速度のホルムアルデヒドを送達させた。このようにして、シグナル-濃度曲線を作成することができ、ガスクロマトグラフ上の任意の強度のシグナルについてホルムアルデヒド濃度との相関をとることができた。
【0173】
試験材料の床を通過したホルムアルデヒド溶出物が、1ppmに相当する信号を超える信号をFID検出器において生成したときに相当する時点を、ホルムアルデヒド用量試験の終わりと定義した。各試験材料の性能は、前述の試験を行いながら1ppmのブレークスルーが観察されるまでの時間(分単位)として報告した。加えて、1ppmブレークスルーまでのブレークスループロットの曲線下面積を、この一定容積試験において使用された試験材料の既知の質量と共に使用して、最小二乗式の和を用いて各試験材料についてミリモル/グラム(mmol/g)の容量を算出した。
【0174】
調製実施例1:前駆体ポリマー材料の調製
2リットル(L)のParrステンレス鋼圧力容器において、177.11g(1.09mol)のジビニルベンゼン、240.05g(2.45mol)の無水マレイン酸(MA)、及び4.17g(16.8mmol)のVAZO 52を、625.92gの酢酸エチル(EtOAc)中に溶解させた。重合性組成物は、EtOAc中に40.0重量%の固形分を含んでおり、モノマー混合物(34.0重量%のDVB、57.5重量%のMA、及び8.5重量%のスチレン型モノマー)及び1重量%のVAZO 52(モノマーの総重量に基づいて)を含有していた。この重合性組成物を窒素で15分間バブリングした。次いで、圧力容器を密閉し、60℃の水浴に入れた。この高温で18時間、重合性組成物を加熱した。形成した白色の沈澱物を真空濾過によって単離し、EtOAcで洗浄した。固体を4L三角フラスコに入れ、このフラスコに2.0LのEtOAcを添加した。固体をEtOAc中、室温で1時間静置した。真空濾過により固体を再び単離し、EtOAcで洗浄した。固体を再び4Lの三角フラスコに入れ、このフラスコに2.0LのEtOAcを添加した。固体をEtOAc中で一晩静置した。真空濾過により固体を再び単離し、EtOAcで洗浄した。次いで、固体を100℃のバッチ式オーブン中で18時間乾燥した。アルゴン吸着によって測定したこの前駆体ポリマー材料のSABETは320.8メートル/グラム(m/g)であり、総細孔容積は0.250cm/g(p/p°=0.977)であった。
【0175】
調製実施例2:ポリマー吸着剤の調製
調製実施例1に記載の前駆体ポリマー材料を、エチレンジアミン(EDA)で処理した。より具体的には、1Lの広口瓶内で、57mL(854mmol)のEDAを、230mLのエチルアルコール(EtOH)と合わせた。この混合物に、USA標準試験用の120番及び170番のワイヤメッシュ篩(ASTM E-11標準;Hogentogler and Co.,Inc.,Columbia,MD)を利用して単離することによって、120×170のメッシュの粒径範囲に篩分けされた上記の前駆体ポリマー材料35gを添加し、Meinzer II篩振盪器(CSC Scientific Company,Inc.,Fairfax,VA)を15分間作動させて、その後分離材料を回収した。
【0176】
次いで、広口瓶に蓋をして80℃のサンドバス中に入れた。この高温で18時間、この懸濁液を加熱した。固体を真空濾過により単離し、EtOHで洗浄した。次いで、この固体を8オンス(oz.)の広口瓶に入れ、100mLのEtOHを添加した。固体をEtOH中で4時間静置した。真空濾過により固体を再び単離し、EtOHで洗浄した。次いで、固体を120℃のオーブン中で4時間真空下で乾燥した。
【0177】
実施例1~6
実施例1~6についての試料を、20mLのバイアル内で、調製実施例2で調製したポリマー吸着剤1.25gを以下の表2に列挙した種類及び量のバインダーと組み合わせることによって調製した。
【表2】
【0178】
次いで、各試料を、Carver,Inc.(Wabash,IN)による25mmの内径のペレットダイに個別に添加した。次いで、ペレットダイを、Carver,Inc.(Wabash,IN)による230ボルトの温度コントローラ、モデル4389を備えた熱プレスされたベンチトップの2つの圧盤の間に配置した。その後、ベンチトッププレスを用いて、38,000ポンド毎平方インチ(psi)の圧力及び100℃の温度で、一度に一つずつ試料を5分間圧縮した。
【0179】
その後、ベンチトッププレスを用いて、試料をペレットダイから排出した。一旦排出されると、今圧縮された材料の錠剤を、IKA(Wilmington,NC)による、2.0mmの篩スクリーンを備えた回転ハンマーミルを用いて、破壊し、破砕させた。次いで破砕材料を、USA標準試験用の40番のワイヤメッシュ篩(ASTM E-11標準;Hogentogler and Co.,Inc.,Columbia,MD)を利用して篩分けして、40メッシュ未満である全ての材料を単離し、Meinzer II篩振盪器(CSC Scientific Company,Inc.,Fairfax,VA)を15分間作動させて、その後分離材料を回収した。40メッシュ未満の材料を、新しい清潔な20mLのバイアルに回収した。表3は、篩分け後にどの程度の材料が回収されたか、及び実施例1~6についての収率を列記している。篩分け後に、試料を再び、90℃のオーブン内で高真空下で、一晩乾燥させた。残っている微細な材料(40メッシュ以上の材料)を、再度押圧してペレット状にして、すりつぶし、篩分けして、最終的にほぼ100%に近い複合顆粒を得ることができた。
【表3】
【0180】
複合顆粒(40メッシュ未満の材料)を使用して、上記のようにホルムアルデヒドの容量試験を行い、実施例1~6の複合顆粒のホルムアルデヒド容量を測定した。実施例1~6についての各試験で持続した分数及び算出されたmmol/gの容量を表4で見出すことができる。
【表4】