(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】電気化学デバイス及び電気化学デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 11/72 20130101AFI20220412BHJP
H01G 11/06 20130101ALI20220412BHJP
H01G 11/84 20130101ALI20220412BHJP
H01M 10/0587 20100101ALI20220412BHJP
H01M 50/531 20210101ALI20220412BHJP
H01M 50/572 20210101ALI20220412BHJP
【FI】
H01G11/72
H01G11/06
H01G11/84
H01M10/0587
H01M50/531
H01M50/572
(21)【出願番号】P 2018184074
(22)【出願日】2018-09-28
【審査請求日】2021-01-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100197619
【氏名又は名称】白鹿 智久
(72)【発明者】
【氏名】横島 克典
(72)【発明者】
【氏名】森 広斗
【審査官】田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-009558(JP,A)
【文献】特開2001-118604(JP,A)
【文献】特開2009-245650(JP,A)
【文献】特開2018-106840(JP,A)
【文献】特表2018-525793(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0315308(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 11/72
H01G 11/06
H01G 11/84
H01M 10/0587
H01M 50/531
H01M 50/572
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極、負極及びセパレータを備え、前記正極と前記負極がセパレータを介して積層され、捲回された蓄電素子であって、前記正極又は前記負極に電気的に接続された複数のリード板を有する蓄電素子と、
前記蓄電素子側の第1の主面と、前記第1の主面の反対側の第2の主面を有し、前記第1の主面に、重ねられた前記複数のリード板が溶接された接続プレートと、
前記接続プレートの前記第2の主面に接続されたラプチャーディスクと、
前記第2の主面の外周領域である第1の領域に当接し、前記接続プレートと前記ラプチャーディスクを絶縁するインシュレータと
を具備し、
前記複数のリード板は、前記第1の主面のうち、前記第1の領域の反対側の領域である第2の領域に溶接されている
電気化学デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の電気化学デバイスであって、
前記複数のリード板は、前記第2の領域に含まれる2箇所で前記接続プレートに溶接されている
電気化学デバイス。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電気化学デバイスであって、
前記接続プレートに溶接されている前記複数のリード板は3枚以上である
電気化学デバイス。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の電気化学デバイスであって、
リチウムイオンキャパシタである
電気化学デバイス。
【請求項5】
正極、負極及びセパレータを備え、前記正極と前記負極がセパレータを介して積層され、捲回された蓄電素子であって、前記正極又は前記負極に電気的に接続された複数のリード板を有する蓄電素子と、前記蓄電素子側の第1の主面と、前記第1の主面の反対側の前記第2の主面を有する接続プレートと、前記接続プレートの前記第2の主面に接続されたラプチャーディスクと、前記第2の主面の外周領域である第1の領域に当接し、前記接続プレートと前記ラプチャーディスクを絶縁するインシュレータとを準備し、
前記複数のリード板を重ねて前記第1の主面に当接させ、
前記第1の主面のうち、前記第1の領域の反対側の領域である第2の領域を含む電極当接領域において前記複数のリード板に第1の溶接用電極と第2の溶接用電極を当接させ、前記第1の溶接用電極と前記第2の溶接用電極の間に電流を印加することにより、前記第2の領域において前記複数のリード板を前記接続プレートに溶接する
電気化学デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抵抗溶接により接合された導通経路を有する電気化学デバイス及び電気化学デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオンキャパシタ等の電気化学デバイスには、正極と負極がセパレータによって隔てられた状態で捲回された捲回型のものが多く用いられている。正極と負極はそれぞれリード部材を介して端子に接続されている。
【0003】
電気化学デバイスでは電極を長尺化することにより、高容量化および低抵抗化が可能である。しかしながら、電極を長尺化した場合、電極長の長さから、十分な出力特性を得ることが困難となる。この解消のため、電極に複数のリード部材を接続し、複数のリード部材によって電極と端子を接続することが行われている。
【0004】
例えば特許文献1には、複数枚のリード板を一点で重ね合わせ、その重なり部を封口体に接続した二次電池が開示されている。また、特許文献2には、複数枚のリード板を集電板を介して封口体へ接続する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-335232号公報
【文献】国際公開第2016/174811号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の接続方法による封口体への直接接続は困難であり、実現性に乏しい。また、特許文献2に記載の方法では、部品点数の増加や集電板とリード板の接続抵抗による出力性能の低下を導くおそれがある。
【0007】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、導通経路の抵抗が小さく、高出力特性を得ることが可能な電気化学デバイス及び電気化学デバイスの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る電気化学デバイスは、蓄電素子と、接続プレートと、ラプチャーディスクと、インシュレータとを具備する。
上記蓄電素子は、正極、負極及びセパレータを備え、上記正極と上記負極がセパレータを介して積層され、捲回された蓄電素子であって、上記正極又は上記負極に電気的に接続された複数のリード板を有する。
上記接続プレートは、上記蓄電素子側の第1の主面と、上記第1の主面の反対側の第2の主面を有し、上記第1の主面に、重ねられた上記複数のリード板が溶接されている。
上記ラプチャーディスクは、上記接続プレートの上記第2の主面に接続されている。
上記インシュレータは、上記第2の主面の外周領域である第1の領域に当接し、上記接続プレートと上記ラプチャーディスクを絶縁する。
上記複数のリード板は、上記第1の主面のうち、上記第1の領域の反対側の領域である第2の領域に溶接されている。
【0009】
この構造によれば、接続プレートの第2の主面にはラプチャーディスクが接続されており、第1の主面にリード板を接合するためには、第1の主面側でリード板に当接させた溶接用電極の間で電流を流すシリーズ方式の抵抗溶接を行う必要がある。ここで、溶接するリード板が複数の場合、溶接用電極を強い力で押圧し、接触抵抗を低減する必要がある。上記構造では、第2の主面の外周領域に、接続プレートとラプチャーディスクを絶縁するインシュレータが当接する第1の領域が存在する。このため、第1の主面のうち、第1の領域の反対側の領域である第2の領域において抵抗溶接を行うことより、溶接用電極を強い力で押圧しても接続プレートに破損が生じることが防止されている。したがって、溶接用電極を強い力で押圧し、リード板を接続プレートに確実に接合することが可能である。
【0010】
上記複数のリード板は、上記第2の領域に含まれる2箇所で上記接続プレートに溶接されていてもよい。
【0011】
上記接続プレートに溶接されている上記複数のリード板は3枚以上であってもよい。
【0012】
上記電気化学デバイスは、リチウムイオンキャパシタであってもよい。
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る電気化学デバイスの製造方法は、正極、負極及びセパレータを備え、上記正極と上記負極がセパレータを介して積層され、捲回された蓄電素子であって、上記正極又は上記負極に電気的に接続された複数のリード板を有する蓄電素子と、上記蓄電素子側の第1の主面と、上記第1の主面の反対側の上記第2の主面を有する接続プレートと、上記接続プレートの上記第2の主面に接続されたラプチャーディスクと、上記第2の主面の外周領域である第1の領域に当接し、上記接続プレートと上記ラプチャーディスクを絶縁するインシュレータとを準備する。
前記複数のリード板を重ねて上記第1の主面に当接させる。
上記第1の主面のうち、上記第1の領域の反対側の領域である第2の領域を含む電極当接領域において上記リード板に第1の溶接用電極と第2の溶接用電極をそれぞれ当接させ、上記第1の溶接用電極と上記第2の溶接用電極の間に電流を印加することにより、上記第2の領域において上記複数のリード板を上記接続プレートに溶接する。
【発明の効果】
【0014】
以上のように本発明によれば、導通経路の抵抗が小さく、高出力特性を得ることが可能な電気化学デバイス及び電気化学デバイスの製造方法を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る電気化学デバイスの斜視図である。
【
図2】同電気化学デバイスの一部構成の斜視図である。
【
図3】同電気化学デバイスが備える蓄電素子の斜視図である。
【
図7】同蓄電素子の負極リード板及び正極リード板の模式図である。
【
図8】同蓄電素子の容器との電気的接続の態様を示す模式図である。
【
図9】本発明の実施形態に係る電気化学デバイスが備える封口体の断面図である。
【
図10】同電気化学デバイスが備える封口体の平面図である。
【
図11】同封口体が備える接続プレートの断面図である。
【
図12】同封口体が備える接続プレートの平面図である。
【
図13】本発明の実施形態に係る電気化学デバイスにおける、正極リード板と接続プレートの抵抗溶接の手法を示す模式図である。
【
図14】同電気化学デバイスにおける、正極リード板と接続プレートの抵抗溶接の手法を示す模式図である。
【
図15】同電気化学デバイスにおける、正極リード板と接続プレートが溶接された状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る電気化学デバイスについて説明する。
【0017】
[電気化学デバイスの構成]
図1は本実施形態に係る電気化学デバイス100の斜視図であり、
図2は電気化学デバイス100の一部構成の斜視図である。なお、以下の図においてX、Y及びZ方向は相互に直交する3方向である。
【0018】
電気化学デバイス100は、充電及び放電が可能なデバイスであればよく、リチウムイオンキャパシタ、電気二重層キャパシタ及びリチウムイオン二次電池等の各種電気化学デバイスのいずれであってもよい。
【0019】
図1及び
図2に示すように、電気化学デバイス100は、蓄電素子110及び容器120を備える。電気化学デバイス100は円柱形状を有し、例えば直径(X-Y方向)18mm、長さ(Z方向)65mmとすることができる。
【0020】
図1に示すように、容器120は、外装缶121及び封口体122を備える。
【0021】
外装缶121は金属からなり、缶底部121aと側壁部121bを有する。缶底部121aは円板形状を有する。側壁部121bは、缶底部121aの周縁に連続する円筒形状を有する。側壁部121bは絶縁性フィルムによって被覆されている。
【0022】
封口体122は金属からなり、側壁部121bに接合され、外装缶121の内部空間を封止する。封口体122の構成については後述する。
【0023】
図2に示すように、外装缶121に蓄電素子110及び図示しない電解液が収容され、封口体122によって封止されることにより、電気化学デバイス100が形成されている。
【0024】
図3は、蓄電素子110の斜視図であり、
図4は蓄電素子110の拡大断面図である。これらの図に示すように、蓄電素子110は、負極130、正極140及びセパレータ150を有し、これらが積層された積層体が捲回されて構成されている。
【0025】
負極130は、
図4に示すように、負極集電体131及び負極活物質層132を有する。負極集電体131は、導電性材料からなり、銅箔等の金属箔であるものとすることができる。負極集電体131は表面が化学的あるいは機械的に粗面化された金属箔や、貫通孔が形成された金属箔が好適である。
【0026】
負極活物質層132は、負極集電体131の表裏両面上に形成されている。負極活物質層132の材料は、負極活物質がバインダ樹脂と混合されたものとすることができ、さらに導電助材を含んでもよい。負極活物質は、例えばハードカーボン、グラファイト又はソフトカーボン等の炭素系材料等とすることができる。
【0027】
バインダ樹脂は、負極活物質を接合する合成樹脂であり、例えばカルボキシメチルセルロース、スチレンブタジエンゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、芳香族ポリアミド、フッ素系ゴム、ポリビニリデンフルオライド、イソプレンゴム、ブタジエンゴム及びエチレンプロピレン系ゴム等とすることができる。
【0028】
導電助剤は、導電性材料からなる粒子であり、負極活物質の間での導電性を向上させる。導電助剤は、例えば、黒鉛やカーボンブラック等の炭素材料が挙げられる。これらは単独でもよいし、複数種が混合されてもよい。なお、導電助剤は、電気化学的に安定かつ導電性を有する材料であれば、金属材料あるいは導電性高分子などであってもよい。
【0029】
図5は捲回前の負極130を示す平面図である。同図に示すように、負極集電体131の表面の大部分には負極活物質層132が積層されている。また、負極集電体131の裏面にも同様に図示しない負極活物質層132が積層されている。
【0030】
さらに、負極130は複数の負極リード板133を備える。負極リード板133は、負極集電体131の一部が突出して形成されている。負極リード板133は、後述するように外装缶121に接続され、外装缶121と負極130を電気的に接続させる。
【0031】
なお、負極リード板133は、負極集電体131の一部が突出して形成されたものに限られず、負極集電体131に電気的に接続された、負極集電体131とは別の板状又は箔状部材であってもよい。負極リード板133の数は
図5に示す7つに限られず、1つ以上の任意の数とすることができる。
【0032】
正極140は、
図4に示すように、正極集電体141及び正極活物質層142を有する。正極集電体141は、導電性材料からなり、アルミニウム箔等の金属箔であるものとすることができる。正極集電体141は表面が化学的あるいは機械的に粗面化された金属箔や、貫通孔が形成された金属箔が好適である。
【0033】
正極活物質層142は、正極集電体141の表裏両面上に形成されている。正極活物質層142の材料は、正極活物質がバインダ樹脂と混合されたものとすることができ、さらに導電助材を含んでもよい。正極活物質は、例えば活性炭又はPAS(Polyacenic Semiconductor:ポリアセン系有機半導体)等とすることができる。
【0034】
バインダ樹脂は、正極活物質を接合する合成樹脂であり、例えばカルボキシメチルセルロース、スチレンブタジエンゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、芳香族ポリアミド、フッ素系ゴム、ポリビニリデンフルオライド、イソプレンゴム、ブタジエンゴム及びエチレンプロピレン系ゴム等とすることができる。
【0035】
導電助剤は、導電性材料からなる粒子であり、正極活物質の間での導電性を向上させる。導電助剤は、例えば、黒鉛やカーボンブラック等の炭素材料が挙げられる。これらは単独でもよいし、複数種が混合されてもよい。なお、導電助剤は、電気化学的に安定かつ導電性を有する材料であれば、金属材料あるいは導電性高分子などであってもよい。
【0036】
図6は捲回前の正極140を示す平面図である。同図に示すように、正極集電体141の表面の大部分には正極活物質層142が積層されている。また、正極集電体141の裏面にも同様に図示しない正極活物質層142が積層されている。
【0037】
さらに、正極140は正極リード板143を備える。正極リード板143は、板状又は箔状の金属からなり、正極集電体141上において正極活物質層142が塗布されていない領域に接続されている。正極リード板143は、正極集電体141と同一材料からなり、例えばアルミニウムからなるものとすることができる。正極リード板143は、後述するように封口体122に接続され、封口体122と正極140を電気的に接続させる。
【0038】
なお、正極リード板143は、正極集電体141の一部が突出して形成されたものであってもよい。正極リード板143の数は
図5に示す3つに限られず、2つ以上であればよい。
【0039】
セパレータ150は負極130と正極140の間に配置され、負極130と正極140を絶縁すると共に電解液中に含まれるイオンを透過する。セパレータ150は、織布、不織布、ガラス繊維、セルロース繊維又はプラスチック繊維等からなる多孔質シートとすることができる。
【0040】
電気化学デバイス100は以上のように構成されている。蓄電素子110と共に容器120に収容される電解液は、電気化学デバイス100の種類に応じて任意に選択することが可能である。
【0041】
[蓄電素子と外装缶の電気的接続について]
電気化学デバイス100では、蓄電素子110は容器120に電気的に接続され、容器120を介して蓄電素子110の充電及び放電が行われる。
【0042】
図7は蓄電素子110の模式的な断面図である。同図に示すように、負極130及び正極140はセパレータ150によって隔てられた状態で捲回されている。同図に示すように、捲回中心の孔を中心孔Sとする。負極リード板133は負極130から蓄電素子110の片側(
図7中、下方)に突出し、正極リード板143は正極140から反対側(
図7中、上方)に突出する。
【0043】
図8は、蓄電素子110と容器120との電気的接続を示す模式図である。同図に示すように、負極リード板133は外装缶121に接合され、正極リード板143は封口体122に接合される。これにより、外装缶121の缶底部121aは負極端子として機能し、封口体122は正極端子として機能する。
【0044】
ここで、正極リード板143と封口体122の接合は、後述するようにシリーズ方式の抵抗溶接によって行われる。
【0045】
[封口体の構成]
図9は封口体122の断面図であり、
図10は封口体122の蓄電素子110側から見た平面図である。
【0046】
これらの図に示すよう、封口体122は、枠部材161、外部端子162、接続プレート163、ラプチャーディスク164及びインシュレータ165を備える。
【0047】
枠部材161は、外装缶121に嵌合し、封口体122を外装缶121に対して固定する。枠部材161は円環形状とすることができる。
【0048】
外部端子162は、枠部材161に固定され、電気化学デバイス100の正極端子として機能する。
【0049】
接続プレート163は、円板形状を有し、封口体122において蓄電素子110側(図中下方)に配置され、正極リード板143が接合される部分である。
【0050】
図11は接続プレート163の断面図である。同図に示すように、接続プレート163は、第1主面163a及び第2主面163bを有する。第1主面163aは蓄電素子110側の面であり、第2主面163bは第1主面163aの反対側の面である。
【0051】
また、
図10に示すように接続プレート163は、貫通孔163c及び凹部163dを有する。貫通孔163cは第1主面163a及び第2主面163bに連通し、蓄電素子110に異常が生じた場合に、発生するガスが通過する孔である。貫通孔163cの数及び形状は特に限定されないが、後述する溶接対象領域を空けて配置されている。
【0052】
凹部163dは、接続プレート163の厚みが薄くなっている部分であり、第2主面163bの中央部に設けられ、ラプチャーディスク164が接続される部分である。
【0053】
ラプチャーディスク164は、第2主面163bにおいて凹部163dに接続され、接続プレート163と外部端子162を電気的に接続する。ラプチャーディスク164は、蓄電素子110からガスが発生した場合に凹部163dとの接続箇所が破断し、接続プレート163と外部端子162を絶縁する。
【0054】
インシュレータ165は、ラプチャーディスク164と接続プレート163の間に配置され、両者を絶縁する。インシュレータ165は円環形状を有し、
図11に示すように第2主面163bの外周領域に当接する。第2主面163bにおいてインシュレータ165が当接する領域を第1領域163eとする。
【0055】
図12は、第1主面163a上の領域を示す模式図である。
図11及び
図12に示すように、第1主面163bにおいて、第1領域163eの反対側の領域を第2領域163fとし、第2領域163fを含み、かつ貫通孔163cから離間した領域を電極当接領域163gとする。
【0056】
さらに、電極当接領域163gの内周側の領域であって、凹部163dの周囲の領域を第3領域163hとする。
【0057】
枠部材161、外部端子162、接続プレート163及びラプチャーディスク164は金属材料からなり、同一の材料からなるものが好適である。これらの材料としてはアルミニウム、アルミニウムを含む合金及びステンレス等を挙げることができる。インシュレータ165は樹脂等の絶縁性材料からなる。
【0058】
[正極リード板の接続プレートへの溶接について]
上述のように正極リード板143は封口体122へ電気的に接続される。具体的には正極リード板143は、抵抗溶接によって接続プレート163に溶接される。
図13は、正極リード板143を接続プレート163に溶接する際の断面図であり、
図14はこの際の平面図である。
【0059】
これらの図に示すように、溶接時には、正極リード板143を第1主面163a上に重ねて配置し、正極リード板143上に2本の溶接用電極301を押圧する。この状態で2本の溶接用電極301の間に電流を印加する。これにより、矢印で示すように正極リード板143及び接続プレート163を介して2本の溶接用電極301の間に電流が流れ、正極リード板143の間及び正極リード板143と接続プレート163の間が溶接(抵抗溶接)される。
【0060】
上記のように、接続プレート163の第2主面163b側にはラプチャーディスク164及び外部端子162が設けられており、第2主面163b側に溶接用電極を配置することができない。このため、第1主面163a側に2本の溶接用電極301を当接させ、両電極の間に電流を流して抵抗溶接(シリーズ方式抵抗溶接)を行う必要がある。
【0061】
ここで、溶接する正極リード板143が1枚の場合には、2本の溶接用電極301を第3領域163h(
図12参照)に押圧して、抵抗溶接を行うことも可能である。しかしながら、溶接する正極リード板143が2枚以上の場合、溶接用電極301との接触抵抗を低減するため、溶接用電極301を強い力(例えば20N以上)で正極リード板143に押圧する必要がある。この際、第3領域163hの裏面側は空間であるため、接続プレート163が変形するおそれがある。
【0062】
これに対して本発明では、2本の溶接用電極301を、電極当接領域163g上において正極リード板143に押圧し、第2領域163g内に溶接箇所が形成されるように抵抗溶接を行う。電極当接領域163gは裏面である第2主面163bにインシュレータ165が当接する第1領域163eが存在するため、溶接用電極301を強い力で正極リード板143に押圧しても、押圧力がインシュレータ165によって受け止められる。
【0063】
これにより、接続プレート163に変形が生じることが防止されており、溶接用電極301を強い力で押圧し、溶接用電極301との接触抵抗を低減して複数の正極リード板143を確実に接続プレート163に溶接することが可能である。溶接用電極301は、正極リード板143の枚数が多いほど強い力で押圧する必要がある。溶接する正極リード板143が3枚以上の場合、本発明は特に有効である。
【0064】
なお、一般には接続プレートの外周領域には一周にわたって貫通孔が配置される。本実施形態に係る封口体122では、接続プレート163の外周領域に貫通孔163cが存在しない部分を形成し、電極当接領域163gを確保している。特にリチウムイオンキャパシタではリチウムイオン二次電池等に比べて異常時のガス発生量が小さく、貫通孔163cの大きさを小さくすることが可能である。
【0065】
また、上記のように電極当接領域163gは、第2領域163fに一致した領域でなくてもよく、第2領域163fを含み、第2領域163fから一定程度内周側に広がった領域とすることができる。これは、溶接用電極301は一定の太さを有するため、電極当接領域163gに溶接用電極301を当接させても、第2領域163gに溶接箇所を形成することができるためである。
【0066】
図15は、正極リード板143が接続プレート163に溶接された状態を示す模式図である。同図に示すように、第2領域163f上において、正極リード板143の間、及び正極リード板143と接続プレート163の間で溶接部Rが形成されている。
【0067】
封口体122は、正極リード板143が接続プレート163に溶接された後、外装缶121に接合される。また、正極リード板143の溶接前又は溶接後に、負極リード板133を外装缶121に溶接することができる。これにより、
図8に示すように、負極130及び正極140の容器120への電気的接続がなされる。
【0068】
[変形例]
上記説明では、正極リード板143を封口体122に抵抗溶接によって接合する構成について説明したが、正極リード板143に代えて負極リード板133を上記手法によって封口体122に接合してもよい。この場合、正極リード板143は外装缶121に接合する構成とすることができる。
【符号の説明】
【0069】
100…電気化学デバイス
110…蓄電素子
120…容器
121…外装缶
122…封口体
130…負極
131…負極集電体
132…負極活物質層
133…負極リード板
140…正極
141…正極集電体
142…正極活物質層
143…正極リード板
150…セパレータ
161…枠部材
162…外部端子
163…接続プレート
163a…第1主面
163b…第2主面
163c…貫通孔
163d…凹部
163e…第1領域
163f…第2領域
163g…電極当接領域
163h…第3領域
164…ラプチャーディスク
165…インシュレータ