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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】レーザーマーキング記録媒体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B42D 25/328 20140101AFI20220412BHJP
   B42D 25/30 20140101ALI20220412BHJP
   G02B 5/32 20060101ALN20220412BHJP
   G02B 5/18 20060101ALN20220412BHJP
【FI】
B42D25/328 120
B42D25/30
B42D25/328 100
G02B5/32
G02B5/18
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017193385
(22)【出願日】2017-10-03
(65)【公開番号】P2019064198
(43)【公開日】2019-04-25
【審査請求日】2020-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉野 徹
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-266941(JP,A)
【文献】国際公開第2017/057722(WO,A1)
【文献】特開2018-160048(JP,A)
【文献】特開2012-144011(JP,A)
【文献】特開平08-216515(JP,A)
【文献】特開2013-022782(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42D 15/00
B42D 25/00-25/485
G02B 5/18
G02B 5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー光を透過しないコア基材に、レーザー光の照射により発色する内発色層と、レーザー光を透過する表面材とを順次積層する第一の工程、
前記表面材上からレーザー光を照射して、所定の記録情報に従って前記内発色層を発色させ、前記所定の記録情報を前記内発色層に記録する第二の工程、
前記表面材上に、レーザー光の照射により前記内発色層と異なる色の発色または白濁を発現する外発色層をさらに積層する第三の工程、
を少なくとも有することを特徴とするレーザーマーキング記録媒体の製造方法。
【請求項2】
前記第三の工程が、耐熱性の基材フィルムに少なくとも前記外発色層を積層した熱転写フィルムから、前記外発色層を熱転写する工程であることを特徴とする請求項に記載のレーザーマーキング記録媒体の製造方法。
【請求項3】
前記第三の工程が、前記外発色層をインクジェット方式により積層する工程であることを特徴とする請求項に記載のレーザーマーキング記録媒体の製造方法。
【請求項4】
前記第三の工程に次いで、前記外発色層上にホログラムまたは回折格子またはその両方からなる光学デバイスが形成された光学デバイス層を積層する第四の工程を有することを特徴とする請求項からのいずれかに記載のレーザーマーキング記録媒体の製造方法。
【請求項5】
前記第四の工程が、耐熱性の基材フィルムに少なくとも前記光学デバイス層を積層した熱転写フィルムから、前記光学デバイス層を熱転写する工程であることを特徴とする請求項に記載のレーザーマーキング記録媒体の製造方法。
【請求項6】
前記第三の工程が、耐熱性の基材フィルムに少なくともホログラムまたは回折格子またはその両方からなる光学デバイスが形成された光学デバイス層と前記外発色層が順次積層された熱転写フィルムから、前記表面材側が前記外発色層となるようにして同時に熱転写する工程であることを特徴とする請求項に記載のレーザーマーキング記録媒体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偽造防止処理が施されたレーザーマーキング記録媒体およびその製造方法に関し、記録済みのレーザーマーキング記録に対して改竄が行われたことを容易に視認することができ、偽造改竄防止機能を高めたレーザーマーキング記録媒体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂を主成分とするシートやカードに、可視光域、赤外光域又は紫外光域のレーザー光を照射することにより、文字や記号を印字するレーザーエングレービングまたはレーザーマーキングと称される技術が知られている。本明細書では、合わせてレーザーマーキングと称するものとする。
【0003】
レーザーマーキングは、偽造及び改竄並びに変造を防止するための技術として、基材の表面を透過して内側にレーザー光を照射し、基材に加えたレーザー光を吸収する添加剤にレーザー光を吸収させて発色または変色させたり、基材内部を炭化させたり、隠蔽層を除去したりすることで、文字、記号や肖像などの個別の画像情報を基材内部に形成する技術である。これは主にポリカーボネートやPETなどのプラスチック基材に対して施され、近年個人を特定し認証するID情報を含む運転免許証やIDカード、パスポートなどのセキュリティ媒体に広く用いられている。
【0004】
しかし、近年不正なIDカードやパスポートを使用した事件、事故による被害が問題となっており、こういったセキュリティ媒体の偽造や改竄を防ぐ新たな技術が求められている。例えば特許文献1には、カード積層体の内部のカードコアにレーザー光線照射発色層を設け、カード表面を傷つけることなく、カード内部に印字をおこなうことで、カード表面からの改竄をおこなうことを防止する技術が提案されている。
【0005】
しかしながら、近年レーザー光を用いた改竄手法も多岐に亘って公知となってしまっている。例えば基材を表面から切削し、像を物理的に破壊するといった偽造が可能であり、さらには、図9に例示したように、追加のレーザー光を照射して顔写真102に頭髪やひげなどの追加記録104を描き加えて改竄したり、文字等101に改竄(「3」を「8」に)・追記(「FG」を追加)103をしたりすることが可能であるため、偽造防止効果が十分でないとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第四391286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような従来技術における偽造や改竄の問題を解決するためになされたものであり、その課題とするところは、レーザーマーキング記録媒体であって、偽造や改竄のためにレーザー光による追記や書き換えを行ったことが明瞭に視認できることにより、記録の追記や書き換えが行われたことを明らかにできるものとすることにより偽造や改竄を抑止できる記録媒体と、その製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の請求項1に係る発明は、
少なくとも、レーザー光を透過しないコア基材に、レーザー光の照射により発色する内発色層と、レーザー光を透過する表面材とが順次積層された記録媒体であって、
前記表面材上に、レーザー光の照射により前記内発色層と異なる色の発色または白濁を発現する外発色層がさらに積層されてなることを特徴とするレーザーマーキング記録媒体である。
【0009】
また請求項2に係る発明は、
レーザー光の照射により前記外発色層に発現する前記白濁が、発泡により形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載のレーザーマーキング記録媒体である。
【0010】
また請求項3に係る発明は、
前記外発色層上に、ホログラムまたは回折格子またはその両方からなる光学デバイスが形成された光学デバイス層が積層されてなることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のレーザーマーキング記録媒体である。
【0011】
また請求項4に係る発明は、
レーザー光を透過しないコア基材に、レーザー光の照射により発色する内発色層と、レーザー光を透過する表面材とを順次積層する第一の工程、
前記表面材上からレーザー光を照射して、所定の記録情報に従って前記内発色層を発色させ、前記所定の記録情報を前記内発色層に記録する第二の工程、
前記表面材上に、レーザー光の照射により前記内発色層と異なる色の発色または白濁を発現する外発色層をさらに積層する第三の工程、
を少なくとも有することを特徴とするレーザーマーキング記録媒体の製造方法である。
【0012】
また請求項5に係る発明は、
前記第三の工程が、耐熱性の基材フィルムに少なくとも前記外発色層を積層した熱転写フィルムから、前記外発色層を熱転写する工程であることを特徴とする請求項4に記載のレーザーマーキング記録媒体の製造方法である。
【0013】
また請求項6に係る発明は、
前記第三の工程が、前記外発色層をインクジェット方式により積層する工程であることを特徴とする請求項4に記載のレーザーマーキング記録媒体の製造方法である。
【0014】
また請求項7に係る発明は、
前記第三の工程に次いで、前記外発色層上にホログラムまたは回折格子またはその両方からなる光学デバイスが形成された光学デバイス層を積層する第四の工程を有することを特徴とする請求項4から6のいずれかに記載のレーザーマーキング記録媒体の製造方法である。
【0015】
また請求項8に係る発明は、
前記第四の工程が、耐熱性の基材フィルムに少なくとも前記光学デバイス層を積層した熱転写フィルムから、前記光学デバイス層を熱転写する工程であることを特徴とする請求項7に記載のレーザーマーキング記録媒体の製造方法である。
【0016】
また請求項9に係る発明は、
前記第三の工程が、耐熱性の基材フィルムに少なくともホログラムまたは回折格子またはその両方からなる光学デバイスが形成された光学デバイス層と前記外発色層が順次積層された熱転写フィルムから、前記表面材側が前記外発色層となるようにして同時に熱転写する工程であることを特徴とする請求項5に記載のレーザーマーキング記録媒体の製造方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の請求項1の発明によれば、レーザー光を透過する表面材を通して内発色層にレーザー光を照射してレーザーマーキングにより文字、画像、記号その他の所定の情報(以下、合わせて記録情報という)を主に黒色や濃灰色などで記録を行ったレーザーマーキング記録媒体(以下、単に記録媒体ということがある)に、さらに表面材上にレーザー光の照射により前記内発色層と異なる色の発色または白濁を発現する特性を有する外発色層を積層した構成の記録媒体とすることにより、記録媒体の偽造や改竄のため、内発色層に記録された黒色や濃灰色などの無彩色の記録情報に改竄、追加、修正などを加えようとレーザー光を追加照射したとき、外発色層を例えば赤、青などその発色特性に応じた内発色層とは異なる色の発色、または白濁を発現することにより追記や改竄のためにレーザー光の追加照射が行われたことが容易に視認できる状態となり、偽造や改竄が行われたことが容易に視認できる記録媒体が得られる。
【0018】
また請求項2の発明によれば、外発色層に発現する白濁が発泡により形成されるため、色だけでなく外発色層のその部分が膨れるなどして性状が変化することにより、例えば下地色があったり、表面に複雑な印刷パターンが設けられたりした記録媒体であっても、より容易にレーザー光の追加照射が行われたことが視認できる記録媒体が得られる。
【0019】
また請求項3の発明によれば、前記外発色層上にさらにホログラムまたは回折格子またはその両方からなる光学デバイスが形成された光学デバイス層が積層されていることにより、外発色層を削り取るなどの方法により、レーザー光の追加照射が行われた際に例えば有彩色に発色する外発色層が発色しない様にして、偽造や改竄を行ったことを隠蔽しようとする場合でも、さらに上層に積層された光学デバイス層が同時に削り取られてしまうことにより削り取られたことが容易に視認できるため、偽造や改竄を隠蔽することが困難な記録媒体を提供できる。
【0020】
また請求項4の発明によれば、レーザー光を透過しないコア基材に積層した内発色層に、レーザー光を透過する表面材側からレーザー光を照射して、記録情報を例えば黒色などの無彩色で記録した後に、表面材上に、レーザー光の照射により内発色層とは異なる色、例えば有彩色を発現する外発色層を積層することにより、内発色層に記録された各情報を改竄したり、情報を追記したりするためにレーザー光を追加照射すると、より上層に位置する外発色層が発色して追記や改竄が行われたことが容易に視認できる記録媒体が通常の積層工程で特殊な工程を必要とせずに製造できる製造方法が得られる。
【0021】
また請求項5の発明によれば、耐熱性の基材フィルム上に形成した外発色層をサーマルヘッドやヒートローラーなどの公知の手段で熱転写することで形成できるため、均一な膜厚の外発色層を乾燥工程などが不要なドライプロセスで容易に形成することができる。
【0022】
また請求項6の発明によれば、外発色層を比較的小型の装置で実現できるインクジェット方式で形成することで、外発色層をパターン状に設けることが可能で、また複数のインクジェットノズルを用いることでそれぞれ異なる色に発色する複数のインクを使用して設けることも可能で、より多様な態様で外発色層を設けることができる。
【0023】
また請求項7の発明によれば、外発色層を削り取るなどの方法により、レーザー光の追加照射が行われた際に外発色層が発色しないようして、偽造や改竄を試みたことを隠蔽しようとする場合でも、削り取られたことが容易に視認できることで偽造や改竄を隠蔽することが困難な記録媒体を公知の積層工程により容易に製造できる。
【0024】
また請求項8の発明によれば、耐熱性の基材フィルム上に形成した光学デバイス層をサ
ーマルヘッドやヒートローラーなどの公知の手段で熱転写することで形成できるため、均一な膜厚の光学デバイス層を乾燥工程などが不要なドライプロセスで容易に形成することができる。
【0025】
また請求項9の発明によれば、耐熱性の基材フィルム上に形成した光学デバイス層と外発色層をサーマルヘッドやヒートローラーなどの公知の手段で同時に熱転写することで形成できるため、均一な膜厚の光学デバイス層と外発色層を乾燥工程などが不要なドライプロセスで1回の工程で容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明のレーザーマーキング記録媒体の第1の実施形態の構成と、記録情報の記録の態様の説明図である。
図2】本発明のレーザーマーキング記録媒体の第1の実施形態で追記や改竄を行ったときの態様の説明図である。
図3】本発明のレーザーマーキング記録媒体の第1の実施形態で追記や改竄を行ったときの別の態様の説明図である。
図4】本発明のレーザーマーキング記録媒体の第2の実施形態の構成の説明図である。
図5】本発明のレーザーマーキング記録媒体の第2の実施形態で追記や改竄を行ったときの態様の説明図である。
図6】本発明のレーザーマーキング記録媒体の第2の実施形態で外発色層を削り取る改竄を行ったときの態様の説明図である。
図7】本発明のレーザーマーキング記録媒体の第3の実施形態の構成と、記録情報の記録の態様の説明図である。
図8】本発明のレーザーマーキング記録媒体の第1の実施形態の別構成の記録媒体で追記や改竄を行ったときの態様の説明図である。
図9】従来のレーザーマーキング記録媒体と該記録媒体に改竄を行う様子の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。なお本発明は以下の実施形態に限定して解釈されるものではない。また以下において、同等のものには同じ番号、記号を付して説明を省略することがある。
【0028】
図1は、本発明のレーザーマーキング記録媒体の第1の実施形態の構成と、情報の記録の態様の説明図である。記録媒体10はまず図1(a)に示すように、コア基材1の両面に、レーザー光の照射により主に黒色や灰色などの無彩色を発現する内発色層2、その表面側にレーザー光を透過する樹脂からなる表面材3が積層された態様であり、ここに、図1(b)に示すように、表面材3側からレーザー光30を照射して内発色層2に所定の文字、記号、画像などの記録情報21が形成される。なお内発色層2および表面材3は、片側面にのみ設けられた態様であっても良いことは言うまでもない。
【0029】
続いて、図1(c)に示すように、レーザー光の照射により内発色層2とは異なる色、例えば有彩色である赤色を発現する外発色層4を耐熱性の基材フィルム6上に熱転写可能に形成した熱転写リボン50を表面材3側に重ね、サーマルヘッドやヒートローラーなど公知の熱源(図示せず)により外発色層4を熱転写することで図1(d)に示すような積層構成とする。なお記録媒体10および熱転写リボン50には図示した以外に、必要に応じて、接着剤層、剥離層、印刷層などを適宜設けることもできる。
【0030】
上記のように構成された記録媒体10に、後からレーザー光を照射して記録を不正に改竄・追記しようとした場合の態様を図2に示す。コア基材1はレーザー光を透過しないの
で、記録の改竄や追記をするためのレーザー光40を外発色層4側から照射することになるが、レーザー光40が内発色層2に達する前に外発色層4を通過するため、外発色層4にはレーザー光40を吸収して赤色に発色した発色部41が形成される。
【0031】
これを表面材3側から平面視したのが図2(b)であり、内発色層2に記録された正規の記録情報21が黒色、黒灰色などで記録されているのに対し、後から改竄や追記をするためにレーザー光が照射されて文字の改竄(「3」→「8」に)や追記(「FG」)、毛髪や髭が描き加えられた部位は、外発色層4の発色部41となって赤色が見える態様となり、容易に不正な追加記録が行われたことを視認することができる。
【0032】
図8は、外発色層4に後から改竄や追記をするためにレーザー光40が照射されたときに発泡して白濁する層としたときの例である。記録媒体13の表面材3側からレーザー光40を照射すると、その熱により外発色層4内でガス泡が発生し、その気泡が外発色層4内に閉じ込められた形となり、発泡して白濁した部位である隆起43を形成する態様となる。外発色層4をこのような態様とすると、白濁した状態でガス泡を内封した態様となって見た目も変化するため視認しやすく、特に、下地が着色されていたり印刷層などが設けられていたりする場合は、コントラストが高くなりより視認しやすくなる。
【0033】
図3は、レーザー光を照射して記録情報を不正に改竄・追記しようとした場合の別の態様を示したもので、追記や改竄をするためのレーザー光40をより強力なものとし、外発色層4を通過してさらに内発色層2に到達させて、内発色層2にレーザーマーキング記録22を追記したものである。このような場合、内発色層2にレーザーマーキング記録することが可能と想定されるが、同時に強力なレーザー光40は外発色層4でもより強く作用して外発色層4をより広い範囲に亘って発色させることになる。
【0034】
これを表面材3側から平面視したのが図3(b)であり、追記や改竄をするためのレーザー光40が照射された部位は、内発色層2にレーザーマーキング記録22が行われると共に、外発色層4がより広い領域に亘って内発色層2とは異なる色、例えば赤色に発色するため、レーザーマーキング記録22に重なって、さらにその周りを縁取るように赤色の発色部42が形成され、追記や改竄のためにレーザー光40が照射されたことがやはり容易に視認できる。
【0035】
図4は、本発明のレーザーマーキング記録媒体の第2の実施形態の構成の説明図である。記録媒体11はまず、図1に示したものと同様に、コア基材1の両面に、内発色層2、表面材3が積層された態様であり、ここに図1で説明したのと同様に表面材3側からレーザー光が照射されて内発色層2に所定の文字、記号、画像などの記録情報21が黒色で形成されている。
【0036】
続いて、光学デバイス層5、外発色層4が耐熱性の基材フィルム6上に順次熱転写可能に形成された熱転写リボン51を表面材3側に重ね、サーマルヘッドやヒートローラーなど公知の熱源(図示せず)により光学デバイス層5および外発色層4を熱転写することで図4の下方図に示すような積層構成とする。
【0037】
上記のように構成された記録媒体11に、後からレーザー光を照射して記録を不正に改竄・追記しようとした場合の態様を図5に示す。コア基材1はレーザー光を透過しないので、外発色層4側から記録の改竄や追記をするためにレーザー光40を照射すると、レーザー光40が内発色層2に達する前に外発色層4を通過するため、外発色層4にはレーザー光40を吸収して内発色層2とは異なる色、例えば赤色に発色した発色部41が形成されるのは第1の実施形態と同様である。
【0038】
従って、内発色層2に記録された正規の記録情報21が黒色、黒灰色などで記録されているのに対し、後から改竄や追記をするためにレーザー光が照射された部位は、外発色層4の発色部位41となって赤色の色が見える態様となり、第1の実施形態と同様に容易に不正な追加記録が行われたことが分かる。記録の改竄や追記をするためのレーザー光をより強力なものとして、内発色層2にレーザーマーキング記録が形成される様にした場合も第1の実施形態と同様に容易に視認できる。
【0039】
さらに、本実施形態の記録媒体11に対し、後から改竄や追記をするためにレーザー光を照射したときに外発色層4が発色して追記や改竄が行われたことを視認されないようにするため、図6に示したように外発色層4自体を削り取ってしまってから、不正な追加記録22を内発色層2に記録しようと試みることも想定できる。
【0040】
その場合においては、図6に示すように外発色層4を削り取る際に同時に上層にある光学デバイス層5も削り取られてしまうため、光学デバイス層に形成されたホログラムや回折格子などによる光学パターンが目視できなくなることで、不正な削り取りが行われたことが容易に視認でき、よりセキュリティ性の高い記録媒体が得られる。
【0041】
図7は、本発明のレーザーマーキング記録媒体の第3の実施形態の断面図である。ここではコア基材1、内発色層2、表面材3のみを示している。本実施形態の記録媒体12においては、内発色層2は黒色層25と隠蔽層26の2層で構成されている。内発色層2に文字、画像等の記録を行うには、前述の各実施形態と同様に、表面材3側からレーザー光を照射することにより、図7(b)に示すように、隠蔽層26がレーザー光30の熱エネルギーにより凝縮が起こるなどしてエングレービング加工(刻み込み)されるため、下地となっている黒色層25が露呈することにより、黒色の記録部27が発現するものである。
【0042】
なお、外発色層や光学デバイス層は省略しているが、第1または第2の実施形態と同様に積層することで形成することができる。従って、記録の改竄や追記のためにレーザー光の照射が行われた場合には、第1、第2の実施形態同様に容易に視認することができる。
【0043】
以上説明した各実施形態では、コア基材に対して片面側に記録画像を設ける場合について説明したが、内発色層および外発色層および光学デバイス層を両面に設けることも同様に可能であり、従って両面に画像記録を行う場合であっても全く同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0044】
以下に、本発明のレーザーマーキング記録媒体の構成についてさらに詳細に説明する。
【0045】
<記録媒体>
本発明のレーザーマーキング記録媒体は、コア基材1、レーザー光線の照射により主に黒色や濃灰色を発現する内発色層2を含む複数のシート基材により構成することができる。
【0046】
(シート基材)
コア基材1、内発色層2、表面材3などのシート基材は、紙類でも良いが、カード形状とすることを想定すると樹脂を主成分とするシート基材を用いるのが好ましい。
このようなものとして例えばポリカーボネート(PC)、植物由来ポリカーボネート(バイオPC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、非晶質ポリエチレンテレフタレート(PETG)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ABS樹脂などがあげられる。 また、シート基材の膜厚は、10~500μmの範囲内が好適である。
【0047】
(内発色層)
レーザー光線の照射により無彩色を発現する内発色層2は、レーザー光照射により黒色や濃灰色などの無彩色に発色または変色可能なもの好ましいが、これに限定するものではない。このようなものとして例えば、前項に例示した各樹脂に、用いるレーザー光の波長域に吸収のある添加剤を加えたものを用いることができる。レーザー光の波長域に吸収のある添加剤(レーザー光吸収剤)としては、レーザー光を吸収して熱エネルギーに変換できる材料を用いることができる。レーザー光を吸収して熱エネルギーに変換できる材料を用いることで、レーザー光吸収剤の周囲の樹脂を炭化させることで黒く発色させることができる。
【0048】
レーザー光を吸収して熱エネルギーに変換できる材料としては、例えば、染料と珪素含有無機化合物、珪素を含有する染料、金属珪酸塩等の放射線吸収物質、水和アルミナ等の無機質充填剤、燐酸塩を含む顔料、非白色のチタン酸金属塩、黒色有機染料、非黒色の無機鉛化合物、黒鉛、カーボンブラック、グラファイト、金属水酸化物又は/及び金属含水化合物と着色剤を含有したものなどがあげられる。これらの材料は用いるレーザーの波長域や樹脂との相性により適宜選択することができ、また添加量は、エネルギーの吸収効率、内発色層のシート基材の物性への影響を考慮し適宜設定できる。
【0049】
なお、第3の実施形態において示したように、黒色層と隠蔽層の2層で構成する場合は、例えば、黒色層を上記に例示した各種樹脂に上記に例示したレーザー光を吸収して熱エネルギーに変換できる材料のうちカーボンブラック、グラファイト等の黒色を呈する材料を含有させて形成し、隠蔽層を公知のバインダー樹脂に酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化亜鉛などの白色顔料を分散したインキを積層塗工することで形成できる。
【0050】
レーザー光としては、ルビーレーザー、チタンサファイアレーザー、YAGレーザー(Nd:YAGレーザーは赤外)等の固体レーザー、炭酸ガスレーザー(赤外)やヘリウムネオンレーザー(赤色)、アルゴンイオンレーザー(主に青色または緑色)、エキシマレーザー(主に紫外)等のガスレーザー、半導体レーザー等があげられる。中でも赤外域のレーザーを用いることが好ましい。レーザー光の出力は目的に応じて適宜設定できる。
【0051】
(外発色層)
外発色層4は、シート基材にレーザー光を照射することにより照射部分(及びその近傍)が内発色層とは異なる色に発色するものを用いることができる。異なる色としては有彩色とすると内発色層の発色との識別性が高くなり好ましいが、有彩色を発色するためには、外発色層を形成する樹脂材料に、市販の、例えばレーザーマーキングコンパウンド(大日精化工業製)などを含有させることで得られ、赤、青、黄などの発色が得られる。なお、レーザー光を照射することにより照射部分が発色するのは、外発色層中に含まれる顔料の金属イオンの結晶構造がレーザー光のエネルギーで変化するなどして化学的変化が起こり、発色または変色が起こるためであることが知られている。
【0052】
さらに、レーザー光を吸収して発色する材料として、炭酸鉛、硫酸鉛、ステアリン酸鉛、鉛白、酢酸銀、蓚酸コバルト、炭酸コバルト、黄色酸化鉄、塩基性酢酸ビスマス、酸化ビスマス、水酸化ビスマス、ニッケルアセチルアセテート、乳酸ニッケル、クエン酸銅、炭酸銅等のビスマス、ニッケル、銅、鉛、マンガン、クロム、アンチモン、鉄、コバルト及び錫等の金属を含有する従来レーザー光線の照射により発色することの知られている化合物から適宜選択しても良い。また、ロイコ染料を用いることもできる。材料およびその添加量の選択においては、用いるレーザー光の波長域や樹脂との相性その他を考慮して適宜選択および設定をすれば良い。
【0053】
また、外発色層の発色はレーザー光が追加照射されたことが容易に視認できるようにするためであり、容易に視認できるのであれば有彩色の発色以外にも、発泡するなどして白
濁したり、見た目の性状が変化するような態様であっても良い。例えば記録媒体の下地が着色されていたり、模様などが印刷されている場合は、白濁したり発泡したりするほうが視認性が良い場合がある。
【0054】
(光学デバイス層)
光学デバイス層5は、透明樹脂にホログラム、回折格子などの光学デバイスのパターンをエンボス加工した層に、高屈折率の透明~半透明の無機物質蒸着層を薄く積層し、さらに保護樹脂層を設けたものである。エンボス加工する樹脂層および保護樹脂層の材質としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線あるいは電子線硬化性樹脂等が使用できる。熱可塑性樹脂では、アクリレート樹脂系、ポリウレタン系、アクリルポリオール樹脂などが例示できるが、その他の層との相性なども考慮して使用可能な範囲で任意の樹脂を用いることができる。
【0055】
また、無機物質蒸着層には、透明または淡色透明なものが好ましく、TiO2、SiO、ZnS等を用いると良い。無機物質蒸着層の厚みとしては100Å~1000Åが好ましい。また前述の各層以外にも、必要に応じて接着層、剥離層などを適宜設けても良い。
【0056】
<熱転写リボン>
熱転写リボン50、51の基材フィルム6は、適度な耐熱性と強度があるものであれば特に制限はないが、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、二軸延伸ポリプロピレン、セロファン、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、不飽和ポリエステル、ポリメタクリル酸メチル等の合成樹脂のフィルム、およびコンデンサー紙、パラフィン紙などの紙類等を単独、又は組み合わされた複合体が例示できる。中でも、物性面、加工性、コスト面などを考慮するとポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。また、その厚さは、2μm以上100μm以下の範囲のものが好適に使用できる。
【符号の説明】
【0057】
1・・・コア基材
2・・・内発色層
3・・・表面材
4・・・外発色層
5・・・光学デバイス層
6・・・基材フィルム
10、11、12、13・・・記録媒体
21・・・記録情報
22・・・追記や改竄されたレーザーマーキング記録
30・・・レーザー光
40・・・追記や改竄をするためのレーザー光
41、42・・・外発色層の発色部
43・・・隆起(発泡して白濁した部位)
50、51・・・熱転写リボン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図9