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特許7056065ヒートシンクの設計方法、及びヒートシンク
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】ヒートシンクの設計方法、及びヒートシンク
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/36 20060101AFI20220412BHJP
   F21V 29/503 20150101ALI20220412BHJP
   F21V 29/76 20150101ALI20220412BHJP
   F21V 29/77 20150101ALI20220412BHJP
   H01L 33/64 20100101ALI20220412BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20220412BHJP
【FI】
H01L23/36 Z
F21V29/503
F21V29/76
F21V29/77
H01L33/64
H05K7/20 D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2017196359
(22)【出願日】2017-10-06
(65)【公開番号】P2019071343
(43)【公開日】2019-05-09
【審査請求日】2020-08-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000000136
【氏名又は名称】市光工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菊池 和重
(72)【発明者】
【氏名】黒田 和宏
【審査官】井上 和俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-224768(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/36
F21S 41/00
F21V 29/503
F21V 29/76
F21V 29/77
H01L 33/64
H05K 7/20
F21W 102/00
F21Y 115/10
F21Y 115/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状であり、平面状の第1面及び当該第1面の反対側に配置される平面状の第2面を有し、前記第1面に半導体型光源が配置されるベースと、
少なくとも前記ベースの前記第2面に配置される複数のフィンと、
を備え、灯具の光源ユニットに用いられるヒートシンクの設計方法であって、
前記光源ユニットの外形寸法に基づいて前記ベースの形状及び寸法を設定し、前記ベースの前記第2面に放射状に配置される放射配置形状として前記複数のフィンの形状を設定し、前記放射配置形状における前記複数のフィンの枚数、表面積及び前記ヒートシンクの質量を含む諸元を設定する第1ステップと、
前記第1ステップで設定された前記ヒートシンクの形状に対して、前記半導体型光源上の基準点を中心とする球状の突起部を前記ベースの前記第2面に設定し、前記突起部の径を設定する第2ステップと、
前記第1ステップ及び前記第2ステップで設定された前記ヒートシンクに前記半導体型光源を配置して駆動する場合の前記半導体型光源の温度を熱流体解析により算出し、算出結果が所定の許容温度以下となる前記ヒートシンクの形状を理想形状として設定する第3ステップと、
前記理想形状として設定された前記ヒートシンクについて、前記複数のフィンの形状を前記ベースの前記第2面に互いに平行に配置される平行配置形状に変更し、前記平行配置形状における前記諸元を前記放射配置形状における前記諸元と対応させて設定し、前記突起部の形状を直方体状に変更し、直方体状の前記突起部のうち前記複数のフィンによって区画される部分のそれぞれの体積を、球状の前記突起部のうち前記複数のフィンによって区画される対応する部分のそれぞれの体積と同一とする第4ステップと、
前記第4ステップで設定された前記ヒートシンクに前記半導体型光源を配置して駆動した場合についての前記半導体型光源の温度を熱流体解析により算出し、算出結果が前記理想形状として設定された前記ヒートシンクの前記第3ステップにおける前記算出結果に対応する目標温度となる前記諸元を求める第5ステップと
を含むヒートシンクの設計方法。
【請求項2】
前記第1ステップでは、前記平行配置形状における前記諸元の予測値に基づいて、前記放射配置形状における前記諸元を設定する
請求項1に記載のヒートシンクの設計方法。
【請求項3】
前記放射配置形状は、前記基準点を通り前記第2面に直交する軸線を中心として前記複数のフィンが放射状に延び出す形状である
請求項1又は請求項2に記載のヒートシンクの設計方法。
【請求項4】
前記第2ステップでは、前記突起部の径を、平面視で前記ベースのうち前記平行配置形状における前記複数のフィンが並ぶ方向の寸法の0.2倍以上0.8倍以下の値とする
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のヒートシンクの設計方法。
【請求項5】
前記第3ステップを行った後、前記算出結果に応じて、前記第1ステップ及び前記第2ステップの設定を再度行い、当該再度の設定結果に基づいて前記第3ステップを行う
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のヒートシンクの設計方法。
【請求項6】
板状であり、平面状の第1面及び当該第1面の反対側に配置される平面状の第2面を有し、前記第1面に半導体型光源が配置されるベースと、
少なくとも前記ベースの前記第2面に平行に配置される複数のフィンと、
前記ベースの前記第2面のうち、前記半導体型光源に対応する位置に配置される直方体状の突起部と、
を備え、灯具の光源ユニットに用いられるヒートシンクであって、
前記突起部は、前記ベースのうち前記複数のフィンが並ぶ配列方向について対称な形状であり、前記ベースのうち前記配列方向の中央から両側にかけて、前記第2面からの突出量が段階的に減少しており、
前記突起部は、前記複数のフィンによって区画される直方体状の区画部分を有し、前記ベースのうち前記配列方向の中央から両側にかけて、前記区画部分ごとに前記第2面からの突出量が段階的に減少している
ヒートシンク。
【請求項7】
前記突起部は、平面視において、前記半導体型光源上の基準点を基準とした点対称な形状である
請求項6に記載のヒートシンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートシンクの設計方法、及びヒートシンクに関する。
【背景技術】
【0002】
車両に取り付けられる車両用灯具として、半導体型光源と、当該半導体型光源からの光を出射する光学機器と、当該半導体型光源が配置されるヒートシンクとを有する光学ユニットを備えた構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような光学ユニットにおいて、ヒートシンクは、半導体型光源を支持すると共に、半導体型光源で発生した熱を放熱する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-165703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の光学ユニットにおいて、ヒートシンクを設計する際には、放熱性能に優れた構成を効率的に設計することが求められている。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、放熱性能に優れた構成を効率的に設計することが可能なヒートシンクの設計方法、及びヒートシンクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るヒートシンクの設計方法は、板状であり、平面状の第1面及び当該第1面の反対側に配置される平面状の第2面を有し、前記第1面に半導体型光源が配置されるベースと、少なくとも前記ベースの前記第2面に配置される複数のフィンと、を備え、灯具の光源ユニットに用いられるヒートシンクの設計方法であって、前記光源ユニットの外形寸法に基づいて前記ベースの形状及び寸法を設定し、前記ベースの前記第2面に放射状に配置される放射配置形状として前記複数のフィンの形状を設定し、前記放射配置形状における前記複数のフィンの枚数、表面積及び前記ヒートシンクの質量を含む諸元を設定する第1ステップと、前記第1ステップで設定された前記ヒートシンクの形状に対して、前記半導体型光源上の基準点を中心とする球状の突起部を前記ベースの前記第2面に設定し、前記突起部の径を設定する第2ステップと、前記第1ステップ及び前記第2ステップで設定された前記ヒートシンクに前記半導体型光源を配置して駆動する場合の前記半導体型光源の温度を熱流体解析により算出し、算出結果が所定の許容温度以下となる前記ヒートシンクの形状を理想形状として設定する第3ステップと、前記理想形状として設定された前記ヒートシンクについて、前記複数のフィンの形状を前記ベースの前記第2面に互いに平行に配置される平行配置形状に変更し、前記平行配置形状における前記諸元を前記放射配置形状における前記諸元と対応させて設定し、前記突起部の形状を直方体状に変更し、直方体状の前記突起部のうち前記複数のフィンによって区画される部分のそれぞれの体積を、球状の前記突起部のうち前記複数のフィンによって区画される対応する部分のそれぞれの体積と同一とする第4ステップと、前記第4ステップで設定された前記ヒートシンクに前記半導体型光源を配置して駆動した場合についての前記半導体型光源の温度を熱流体解析により算出し、算出結果が前記理想形状として設定された前記ヒートシンクの前記第3ステップにおける前記算出結果に対応する目標温度となる前記諸元を求める第5ステップとを含む。
【0007】
また、上記のヒートシンクの設計方法において、前記第1ステップでは、前記平行配置状態における前記諸元の予測値に基づいて、前記放射配置形状における前記諸元を設定してもよい。
【0008】
また、上記のヒートシンクの設計方法において、前記放射配置形状は、前記基準点を通り前記第2面に直交する軸線を中心として前記複数のフィンが放射状に延び出す形状であってもよい。
【0009】
また、上記のヒートシンクの設計方法において、前記第2ステップでは、前記突起部の径を、平面視で前記ベースのうち前記平行配置形状における前記複数のフィンが並ぶ方向の寸法の0.2倍以上0.8倍以下の値としてもよい。
【0010】
また、上記のヒートシンクの設計方法において、前記第3ステップを行った後、前記算出結果に応じて、前記第1ステップ及び前記第2ステップの設定を再度行い、当該再度の設定結果に基づいて前記第3ステップを行ってもよい。
【0011】
本発明に係るヒートシンクは、板状であり、平面状の第1面及び当該第1面の反対側に配置される平面状の第2面を有し、前記第1面に半導体型光源が配置されるベースと、少なくとも前記ベースの前記第2面に平行に配置される複数のフィンと、前記ベースの前記第2面のうち、前記半導体型光源に対応する位置に配置される直方体状の突起部と、を備え、灯具の光源ユニットに用いられるヒートシンクであって、前記突起部は、前記ベースのうち前記複数のフィンが並ぶ配列方向について対称な形状であり、前記ベースのうち前記配列方向の中央から両側にかけて、前記第2面からの突出量が段階的に減少している。
【0012】
また、上記のヒートシンクにおいて、前記突起部は、前記複数のフィンによって区画される直方体状の区画部分を有し、前記ベースのうち前記配列方向の中央から両側にかけて、前記区画部分ごとに前記第2面からの突出量が段階的に減少していてもよい。
【0013】
また、上記のヒートシンクにおいて、前記突起部は、平面視において、前記基準点を基準とした点対称な形状であってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、放熱性能に優れた構成を効率的に設計することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本実施形態に係るヒートシンクの一例を示す斜視図である。
図2図2は、本実施形態に係るヒートシンクの一例を示す側面図である。
図3図3は、本実施形態に係るヒートシンクの一例を示す底面図である。
図4図4は、本実施形態に係るヒートシンクの設計方法の一例を示すフローチャートである。
図5図5は、第1ステップにおいて設定されるヒートシンクの一例を示す斜視図である。
図6図6は、第2ステップにおいて設定されるヒートシンクの一例を示す側面図である。
図7図7は、第4ステップにおいて設定されるヒートシンクの一例を示す側面図である。
図8図8は、第4ステップにおいて設定されるヒートシンクの一例を示す側面図である。
図9図9は、実施例1に係るヒートシンクを示す斜視図である。
図10図10は、実施例1に係るヒートシンクを示す側面図である。
図11図11は、実施例2に係るヒートシンクを示す斜視図である。
図12図12は、実施例3に係るヒートシンクを示す斜視図である。
図13図13は、実施例4に係るヒートシンクの一例を示す斜視図である。
図14図14は、実施例4に係るヒートシンクの他の例を示す斜視図である。
図15図15は、実施例4に係るヒートシンクの他の例を示す斜視図である。
図16図16は、実施例5に係るヒートシンクを示す斜視図である。
図17図17は、半導体型光源の発光部中心を基準とした球体の半径とその球体内部に含まれるヒートシンクの総表面積を示すグラフである。
図18図18は、半導体型光源の発光部中心を基準とした球体の半径とその球体内部に含まれるヒートシンクの質量を示すグラフである。
図19図19は、比較例1に係るヒートシンクを示す斜視図である。
図20図20は、比較例2に係るヒートシンクを示す底面図である。
図21図21は、比較例3に係るヒートシンクを示す斜視図である。
図22図22は、比較例4に係るヒートシンクを示す斜視図である。
図23図23は、実施例6に係るヒートシンクを示す斜視図である。
図24図24は、半導体型光源の発光部中心を基準とした球体の半径とその球体内部に含まれるヒートシンクの総表面積を示すグラフである。
図25図25は、実施例7に係るヒートシンクの一例を示す斜視図である。
図26図26は、実施例7に係るヒートシンクの他の例を示す斜視図である。
図27図27は、半導体型光源の発光部中心を基準とした球体の半径とその球体内部に含まれるヒートシンクの総表面積を示すグラフである。
図28図28は、半導体型光源の発光部中心を基準とした球体の半径とその球体内部に含まれるヒートシンクの質量を示すグラフである。
図29図29は、実施例8に係るヒートシンクの一例を示す斜視図である。
図30図30は、実施例8に係るヒートシンクの他の例を示す斜視図である。
図31図31は、実施例9に係るヒートシンクを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るヒートシンクの設計方法、及びヒートシンクの実施形態を図面に基づいて説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0017】
図1は、本実施形態に係るヒートシンク100の一例を示す斜視図である。図2は、本実施形態に係るヒートシンク100の一例を示す側面図である。図3は、本実施形態に係るヒートシンク100の一例を示す底面図である。図1から図3に示すヒートシンク100は、例えば車両用灯具の光源ユニット200に用いられる。なお、光源ユニット200は、所定の方向に光を照射する車両用前照灯等に用いられることがより好ましいが、これに限定されず、他の種類の車両用灯具に用いられてもよい。以下の説明において、ヒートシンク100の方向を説明する場合、前後、左右、上下の各表記を用いる場合がある。その場合、前後、左右、上下の各方向は、車両用灯具が車両に搭載された車両搭載状態における方向であって、運転席から車両の進行方向を見た場合における方向を示す。なお、本実施形態では、上下方向は鉛直方向に平行であり、左右方向は水平方向であるとする。図1から図3に示すように、ヒートシンク100は、ベース10と、複数のフィン20と、突起部30とを備える。
【0018】
ベース10は、板状であり、平面状の第1面11と、当該第1面11の反対側に配置される平面状の第2面12とを有する。本実施形態において、第1面11と第2面12とは平行であるが、これに限定されない。第1面11には、半導体型光源40が配置される。半導体型光源40は、例えばLEDやOEL、OLED(有機EL)などが用いられる。半導体型光源40は、1つ又は複数配置される。各半導体型光源40は、第1面11とは反対側に平面状の発光面41を有する。ヒートシンク100に半導体型光源40が配置されることにより、光源ユニット200が構成される。
【0019】
半導体型光源40は、例えばベース10のうち、第1面11及び第2面12に平行な方向であって互いに直交する第1方向D1及び第2方向D2のそれぞれの中央の位置に配置される。なお、ヒートシンク100が車両に搭載される場合、例えば第1方向D1が前後方向となり、第2方向D2が左右方向となるように搭載することができる。この場合、第1方向D1及び第2方向D2にそれぞれ直交する第3方向D3は、車両搭載状態における上下方向に相当する。
【0020】
ベース10は、第1方向D1の一方(車両搭載状態における前方)の端辺13が直線状であり、他方(車両搭載状態における後方)の端辺14が円弧状であるが、これに限定されない。また、ベース10は、例えば第2方向D2の両側の端辺が直線状であるが、これに限定されない。
【0021】
複数のフィン20は、板状であり、ベース10の第1面11及び第2面12に配置される。複数のフィン20は、第2方向D2に並んだ状態で配置され、互いに平行である。複数のフィン20は、例えば第1面11及び第2面12に対して垂直に配置され、かつ、第1方向D1に平行に配置される。複数のフィン20は、例えばベース10から先端にかけて厚さ(第2方向D2の寸法)が薄くなっているが、これに限定されず、均一な厚さを有していてもよい。複数のフィン20は、第1面11に配置されるフィン21と、第2面12に配置されるフィン22とを有する。なお、フィン21は、配置されなくてもよい。また、第2面12に配置されるフィン22により、ベース10の第2面12側の空間が第2方向D2について区画されている。
【0022】
突起部30は、ベース10の第2面12のうち、半導体型光源40に対応する位置に配置される。突起部30は、第2面12から当該第2面12の法線方向である第3方向D3の一方(図中下方)に突出している。なお、ヒートシンク100を車両に搭載する場合、第3方向D3を車両搭載状態における上下方向とすることができる。
【0023】
なお、図2に示すように、突起部30は、基準点Pを中心として第2方向D2について対称な形状である。突起部30は、第2方向D2の中央から両側にかけて、第2面12からの突出量が段階的に減少している。つまり、突起部30は、第2方向D2の中央から両側にかけて、第3方向D3の寸法(以下、厚さと表記する)が段階的に減少している。
【0024】
図2に示すように、突起部30は、第2方向D2の中央から両側にかけて、区画部分31ごとに厚さが段階的に減少している。例えば、第2方向D2の中央側の区画部分31(31a、31b)の厚さt1よりも、第2方向D2の両側の区画部分31(以下、31c、31dと表記する)の厚さt2の方が薄くなっている。図1では、中央側の区画部分31a、31bと、両側の区画部分31c、31dの2段階の厚さとなっているが、これに限定されず、第2方向D2の中央から両側にかけて、3段階以上に厚さが変化する構成であってもよい。
【0025】
また、図3に示すように、突起部30は、基準点Pを中心として第1方向D1についても対称な構成を有している。したがって、突起部30は、平面視において、基準点Pを中心とした点対称の構成を有している。突起部30は、第1方向D1の中央から両側にかけて、第1方向D1の寸法(以下、長さと表記する)が段階的に短くなっている。図3に示すように、第1方向D1の中央側の区画部分31a、31bの長さh1よりも、第1方向D1の両側の区画部分31c、31dの長さh2の方が短くなっている。図3では、中央側の区画部分31a、31bと、両側の区画部分31c、31dの2段階の長さとなっているが、これに限定されず、第1方向D1の中央から両側にかけて、3段階以上に長さが変化する構成であってもよい。
【0026】
このように、突起部30は、区画部分31a~31dの厚さ(t1、t2)及び長さ(h1、h2)を設定することにより、各区画部分31a~31dの体積を個別に設定可能となっている。上記の例において、突起部30の外形は、第2方向D2の中央から両側にかけて、段階的に厚さが薄く、長さが短くなる構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、突起部30の外形は、第2方向D2の中央から両側にかけて、厚さ及び長さの一方のみが変化する構成であってもよい。
【0027】
[ヒートシンクの設計方法]
次に、上記のように構成されるヒートシンク100の設計方法を説明する。図4は、本実施形態に係るヒートシンク100の設計方法の一例を示すフローチャートである。図4に示すように、車両用灯具用のヒートシンクの設計方法は、以下説明する第1ステップS10、第2ステップS20、第3ステップS30、第4ステップS40、及び第5ステップS50を含む。
【0028】
<第1ステップ>
図5は、第1ステップS10において設定されるヒートシンク100Rの一例を示す斜視図である。第1ステップS10では、光源ユニット200の外形寸法に基づいてベース10Rの形状及び寸法を設定する。また、第1ステップS10では、ベース10Rの第2面12Rに放射状に配置される放射配置形状として複数のフィン20Rの形状を設定し、放射配置形状における複数のフィン20Rの枚数、表面積及び質量を含む諸元を設定する。
【0029】
例えば車両用灯具の形状及び寸法は、車体における車両用灯具周りの形状及び寸法に応じて設定される。車両用灯具の形状及び寸法が設定されると、光源ユニット200の外形寸法(高さ×幅×奥行)が設定可能となる。次に、レンズ、リフレクタ等の光学的な部品配置によって半導体型光源40の位置とヒートシンク100Rの許容寸法が設定され、ヒートシンク100Rの詳細設計が開始される。
【0030】
ヒートシンクの製造のしやすさ等を考慮せずに、純粋に熱の拡散のみに着目した場合、理想的なヒートシンクの形状は球形状となる。厳密には、車両用灯具では光学部品を取り付ける必要があるため、完全な球形状のヒートシンクとはならず、一部分が切り欠かれた形状となる。ただし、ヒートシンクを球形状とする場合、フィンを曲面で構成する必要があるため、設計及び製造が難しく、生産現場での部品の組み付けや取り回しに難点がある。そのため、球形状を除くと、熱の拡散に沿ったフィンの配置は、放射状が最も理想的となる。したがって、第1ステップS10では、光源ユニット200の外形寸法に収まるように放射状に配置した形状のフィン20Rを有するヒートシンク100Rを理想形状と想定する。
【0031】
半導体型光源40を通り第3方向D3に平行な軸線を中心として放射状にフィン20Rを配置すれば、各フィン20Rに均等に熱エネルギーが分配され、良好な放熱性能が得られる。例えば、アルミダイキャスト等によりヒートシンクを製造する場合、フィンには先端に行くほど薄くなるようにテーパが付けられている。このテーパ付のフィンを放射状に配置すると、上記軸線の周囲では当該軸線を中心とした円柱状となり、熱エネルギーを蓄える効果が得られ、フィンへの熱の伝達が促進される。一方、テーパが無い場合及びテーパが小さい場合は、半導体型光源40に対応する位置に球形の突起部を設けることで、同様の効果が得られる。
【0032】
第1ステップS10では、例えばフィン20Rが設けられるベース10Rの形状及び寸法、フィン20Rの枚数、ヒートシンク100Rの総質量、フィン20Rの総表面積等の諸元を設定する。また、第1ステップS10では、過去に作成されたヒートシンクにおけるベースの形状及び寸法、フィン20の諸元等を用いて、ベース10Rの形状及び寸法と、フィン20Rの諸元との予測値を求めてもよい。なお、フィン20Rの枚数については、例えば以下の第3ステップS30の結果に応じて、最も冷却効果の高いフィン20Rの枚数を設定してもよい。
【0033】
フィン20Rの枚数は、ヒートシンク100Rの外形寸法及び半導体型光源40の許容温度によって最終的に設定される。第1ステップS10では、過去に作成されたヒートシンクから推測して、例えば12枚から20枚程度と推測できるが、これに限定されない。フィン20Rの配置角度は、熱の均等な伝達を考慮して、同一の角度間隔とすることができるが、必ずしも半導体型光源40を中心として第1方向D1又は第2方向D2について対称とする必要はない。また、フィン20Rは、当該隣り合うフィン20R同士の間を通過する空気の流れ等を考慮して配置を設定することができる。
【0034】
<第2ステップ>
図6は、第2ステップS20において設定されるヒートシンク100Rの一例を示す側面図である。第2ステップS20では、上記した第1ステップS10で設定されたヒートシンク100Rの形状に対して、半導体型光源40上の基準点Pを中心とする球状の突起部50をベース10Rの第2面12Rに設定し、突起部50の径を設定する。
【0035】
半導体型光源40が発する熱エネルギーをベース10Rからフィン20Rに伝達する際、ベース10Rの厚さが熱の伝達に対して不十分な場合、フィン20Rへ到達する熱量が少なくなり、その結果、ヒートシンク100Rの放熱性能は低下する。一般に半導体型光源40は、ヒートシンク100Rに対して十分小さく点熱源と見なすことができる。このため、半導体型光源40からの熱量は、ヒートシンク100Rの内部に放射状に拡散しようとする。そこで、第2ステップS20では、フィン20Rが取り付けられるベース10Rの第2面12Rに、半導体型光源40の基準点Pを中心とする球状(楕円球を含む)の突起部50を設定し、熱エネルギーの拡散を促進する。なお、突起部50の径については、半導体型光源40の発熱量、許容温度、ヒートシンク100Rの形状に応じて設定することができる。また、突起部50の径が大きくなると、半導体型光源40の裏面側に配置されるフィン20Rの面積が小さくなる。そのため、フィン20Rを第3方向D3に延長してもよい。なお、フィン20Rを十分に延長できない等の制約が生じた場合は、突起部50の球形を非対称とするなどして、半導体型光源40の冷却に必要なフィン20Rの面積を確保する。
【0036】
なお、所定の突起部50の径Rは、例えばベース10Rのうち第1方向D1についての寸法Lの0.2倍以上、0.8倍以下の値とすることができる。つまり、所定の径Rは、0.2L≦R≦0.8Lを満たす。なお、所定の径Rは、当該範囲に限定されず、原則として0<R≦Lの範囲の値であれば、他の値であってもよい。
【0037】
<第3ステップ>
第3ステップS30では、第1ステップS10及び第2ステップS20で設定されたヒートシンク100Rに半導体型光源40を配置して駆動する場合の半導体型光源40の温度を熱流体解析により算出し、算出結果が所定の許容温度以下となるヒートシンク100Rの形状を理想形状として設定する。
【0038】
上記第1ステップS10及び第2ステップS20においてヒートシンク100Rの形状及び寸法が設定された場合、あるいはフィン20Rの枚数が異なる複数のヒートシンク100Rの形状及び寸法が設定された場合、熱流体解析によって半導体型光源40の温度を算出し、周囲空気温度及び半導体型光源40の仕様によって決まる許容温度と比較する。この場合、許容温度は絶対的な上限温度では無く、マージンを見込んだ値である。したがって、算出された半導体型光源40の温度と許容温度との差だけではなく、マージンを検討対象とし、ヒートシンク100Rの理想形状を設定する。また、ヒートシンク100Rの理想形状を設定するに当たり、ヒートシンク100Rの質量を検討対象としてもよい。例えば、複数のヒートシンク100Rについて熱流体解析を行い、算出された半導体型光源40の温度が同様の値である場合、質量が小さい方のヒートシンク100Rの形状を理想形状とすることができる。
【0039】
理想形状として設定されたヒートシンク100Rについての算出結果(半導体型光源40の温度)は、車両用灯具の内部の光源ユニット200の外形寸法において実現できる最も低い温度であるとみなし、以降の第4ステップS40及び第5ステップS50における目標温度とする。
【0040】
なお、第3ステップS30を行った後、算出結果(半導体型光源40の温度)に応じて、第1ステップS10及び第2ステップS20の設定を再度行い、当該再度の設定結果に基づいて第3ステップS30を行ってもよい。例えば、第3ステップS30において、半導体型光源40の温度が所定温度以下の温度となるヒートシンク100Rが存在しない場合、第1ステップS10及び第2ステップS20において諸元を変更した後、第3ステップS30を行ってもよい。
【0041】
<第4ステップ>
図7及び図8は、第4ステップS40において設定されるヒートシンク100Sの一例を示す側面図である。第4ステップS40では、図7に示すように、理想形状として設定されたヒートシンク100Rについて、複数のフィン20Rの形状をベース10Rの第2面12Rに互いに平行に配置される平行配置形状に変更し、平行配置形状における複数のフィン20Sの諸元を放射配置形状における複数のフィン20Rの諸元と対応させて設定する。また、第4ステップS40では、図8に示すように、突起部50の形状を直方体状の突起部30に変更し、直方体状の突起部30のうち複数のフィン20Sによって区画される区画部分31のそれぞれの体積を、球状の突起部50のうち複数のフィン20Sによって区画される対応する区画部分51のそれぞれの体積と同一とする。
【0042】
放射配置形状のフィン20R自体は製造可能であるが、ヒートシンク100Rの形状の複雑化が避けられないため、設計及び製造がより容易な平行配置形状のフィン20Sによるヒートシンク形状とする必要がある。そこで、理想形状としたヒートシンク100Rを基に平行配置形状のフィン20Sによるヒートシンク100Sの形状を求める。この場合、ベース10Rの形状は変化させず、フィン20Sの表面積及びヒートシンク100Sの質量がフィン20Rの表面積及びヒートシンク100Rの質量と同一又はほぼ同一となるように、フィン20Sの枚数を決定する。
【0043】
また、球状の突起部50は、同様に設計及び製造を容易にするため、フィン20Sで区切られる区画部分51ごとに、同一の体積の直方体状の区画部分31に置き換える。なお、突起部30は、各区画部分31の体積が対応する区画部分51の体積と同一であれば、極端に形状を変えない限り、熱エネルギーを蓄える熱容量は等しくなる。
【0044】
また、平行配置形状とした場合の隣り合うフィン20S同士の間の空間は、冷却空気の通路となっている。自然対流の場合は、フィン20Sの表面で徐々に発達する流れ及び温度の境界層(実質的に流路が狭くなる)を考慮して、一定の間隔(例えば、10mm程度)を保持する必要がある。ただし、フィン20Sの総面積はフィン20Sの枚数に比例するため、隣り合うフィン20S同士の間隔がより狭い場合でも、冷却効果が高まる場合が考えられる。そのため、フィン20Sの枚数については、以下の第5ステップS50の算出結果に基づいて、最適な値を設定してもよい。
【0045】
<第5ステップ>
第5ステップS50では、第4ステップS40で設定されたヒートシンク100Sに半導体型光源40を配置して駆動した場合についての半導体型光源40の温度を熱流体解析により算出し、算出結果が目標温度となる複数のフィン20Sの諸元を求める。ここで、目標温度とは、理想形状として設定されたヒートシンク100Rの第3ステップS30における算出結果に対応する温度である。例えば、目標温度は、第3ステップS30における算出結果と等しい温度であってもよいし、当該算出結果を含んで設定される所定範囲内の温度であってもよい。
【0046】
第5ステップS50では、平行配置形状のフィン20Sによる実用的なヒートシンク100Sの形状が決まった段階で熱流体解析を実施し、半導体型光源40の温度を算出する。このとき、半導体型光源40の温度が許容温度を大きく超える場合は、突起部30の形状及び寸法を変更する修正、あるいはフィン20Sの面積を増加させる修正を行うことにより、算出結果を低減させるようにする。この場合、半導体型光源40からの熱エネルギーを蓄えるのに十分な体積の突起部30を配置し、熱を空気中に放出するフィン20Sの面積を十分に確保することを考慮して行う。この修正により、目標温度に対応する温度、つまり目標温度又は目標温度に近い温度が得られた場合、ヒートシンク100Sの形状に製造上の問題点が無ければ、当該ヒートシンク100Sの形状を、ヒートシンク100の最適形状として、設計を終了する。
【0047】
なお、ヒートシンク100の最適形状を求めた後、車両用灯具の設計の進行に応じて、ヒートシンク100の形状を変える必要が生じる場合も考えられる。その場合には、質量(熱容量)の変化とフィン20の面積(放熱面積)の変化の両面から形状変化が与える影響を検討し、両者の変動が小さい場合は決定した理想形状に対する温度変化で、形状変更の影響を評価する。一方、質量と面積が大きく変化し、光学ユニット200の外形寸法が変わる場合は、第1ステップS10に戻って再度設計を行うこともできる。
【0048】
以上のように、本実施形態によれば、板状であり、平面状の第1面11及び当該第1面11の反対側に配置される平面状の第2面12を有し、第1面11に半導体型光源40が配置されるベース10と、少なくともベースの第2面12に配置される複数のフィン20と、を備え、灯具の光源ユニット200に用いられるヒートシンク100の設計方法であって、第1ステップS10と、第2ステップS20と、第3ステップS30と、第4ステップS40と、第5ステップS50とを含むものである。これにより、放熱性能に優れた構成を効率的に設計することが可能となる。
【0049】
また、本実施形態に係るヒートシンクの設計方法において、第1ステップS10では、平行配置状態における諸元の予測値に基づいて、放射配置形状における諸元を設定する。これにより、放射配置形状における諸元を効率的に設定することができる。
【0050】
また、本実施形態に係るヒートシンクの設計方法において、放射配置形状は、基準点Pを通り第2面12に直交する軸線を中心として複数のフィン20が放射状に延び出す形状である。このように、複数のフィン20の形状を、発熱源の中心から放射方向に伝達する熱の伝達方向に沿った形状とすることにより、純粋に熱の拡散のみに着目した場合の理想に近い状態とすることができる。
【0051】
また、本実施形態に係るヒートシンクの設計方法において、第2ステップS20では、球状の突起部50の径を、平面視でベース10のうち第2方向D2の寸法の0.2倍以上0.8倍以下の値とする。これにより、突起部50をベース10内に確実に収めることができる。
【0052】
また、本実施形態に係るヒートシンクの設計方法において、第3ステップを行った後、算出結果に応じて、第1ステップ及び第2ステップの設定を再度行い、当該再度の設定結果に基づいて第3ステップを行う。これにより、放熱性能に優れたヒートシンク100を設計することができる。
【0053】
本実施形態に係るヒートシンク100は、板状であり、平面状の第1面11及び第2面12を有し、第1面11に半導体型光源40が配置されるベース10と、少なくともベース10の第2面12に平行に配置される複数のフィン20と、ベース10の第2面12のうち、半導体型光源40に対応する位置に配置される直方体状の突起部30と、を備え、灯具の光源ユニット200に用いられるヒートシンク100であって、突起部30は、ベース10のうち複数のフィン20が並ぶ配列方向について対称な形状であり、ベース10のうち配列方向の中央から両側にかけて、第2面12からの突出量が段階的に減少している。これにより、半導体型光源40からの熱を突起部30からフィン20へと確実に伝達することができる。
【0054】
また、本実施形態に係るヒートシンク100は、車両用灯具の光源ユニット200に用いられる。この場合、ヒートシンク100は、光源ユニット200の周囲の構造により、ほぼ閉空間内部での放熱となる。本実施形態に係るヒートシンクの設計方法によってヒートシンク100を設計することにより、放熱性能に優れた構成を効率的に設計することが可能となるため、閉空間内部においても放熱性能に優れたヒートシンク100を有する光源ユニット200を車両用灯具に搭載できる。
【0055】
また、本実施形態に係るヒートシンク100において、突起部30は、複数のフィン20によって区画される直方体状の区画部分31を有し、ベース10のうち配列方向の中央から両側にかけて、区画部分31ごとに第2面12からの突出量が段階的に減少している。この場合、突起部30を容易に設計及び製造することができる。
【0056】
また、本実施形態に係るヒートシンク100において、突起部30は、平面視において、基準点Pを基準とした点対称な形状である。これにより、突起部30をより容易に設計及び製造することができる。
【0057】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。例えば、上記実施形態では、車両用灯具に用いられる光源ユニット200のヒートシンク100を設計する場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、車両用灯具とは異なる種類の灯具に用いられる光源ユニットのヒートシンクを設計する場合についても適用可能である。
【実施例1】
【0058】
以下、本実施形態に係るヒートシンクの設計方法に従ってヒートシンクの設計を行った実施例を説明する。なお、ヒートシンクの各部の構成及び方向については、上記実施形態に記載のヒートシンク101の構成及び第1方向D1~第3方向D3に対応させて説明する。
【0059】
図9は、実施例1に係るヒートシンク101を示す斜視図である。図10は、実施例1に係るヒートシンク100を示す側面図である。
【0060】
図9及び図10に示すように、ベース110の形状は円形状とした。本実施例1では、ベース110の直径は90mmとし、ベース110の厚さ(第3方向D3の寸法)を3mmとし、フィン120(第2面112側のフィン122)の高さ(第3方向D3の寸法)を50mmとした。また、フィン122の厚さ(第2方向D2の寸法)については、ベース110側を2.5mmとし、勾配1°で先端に向けて薄くなる形状とした。なお、フィン122の先端の形状は0.75mmとした。なお、この構成では、半導体型光源140の直下において、フィン122が交差して円柱形状となる。
【0061】
このように設定したヒートシンク101について、半導体型光源140の消費電力を19Wとし、外気温度を25℃とし、半導体型光源140の温度検出点における温度(以下ケース温度Tcと表記)の目標値を68℃以下とし、ヒートシンク101の熱伝導率を119W/m-Kとして、熱流体解析を行った。なお、以下の各実施例においても、熱流体解析を行う場合、実施例1と同一条件で行っている。そのため、以下の各実施例では、熱流体解析の条件の説明を省略する。
【0062】
表1は、フィン122の枚数を変化させた場合において、当該熱流体解析によるケース温度Tc及びヒートシンク101の質量の関係を示す。
【0063】
【表1】
【0064】
表1により、ケース温度Tcが最も低くなるのは、フィン122の枚数が20枚の場合(質量237g)であり、68.6℃であった。また、フィン122の枚数が16枚の場合(質量202g)には、ケース温度Tcが68.9℃であった。フィン122の枚数が16枚の場合の結果は、フィン122の枚数が20枚の場合の結果と比較して、ケース温度Tcの差は0.3℃と小さいが、ヒートシンク101の質量を軽量化できるため、フィン122が16枚の場合の結果を最適形状とした。
【実施例2】
【0065】
図11は、実施例2に係るヒートシンク102を示す斜視図である。図11に示すように、実施例2に係るヒートシンク102は、実施例1の最適形状としたヒートシンク101(フィン122が16枚の場合の形状)に対して、ベース110の第1面111にフィン121を5枚追加配置した形状(質量214g)を設計した。
【0066】
このように設定したヒートシンク102について、熱流体解析を行った結果、ケース温度Tcは、68℃となり、目標温度を満たす結果が得られた。
【実施例3】
【0067】
図12は、実施例3に係るヒートシンク103を示す斜視図である。ヒートシンクのベースの形状は、光学部品等を取り付けたユニットを車両用灯具の内部に設置する際に光漏れを防ぐ、等の理由で、ベースの前端は直線状であることが望ましい。したがって、図12に示すように、実施例3に係るヒートシンク103は、実施例2のヒートシンク102に対して、ベース110のうち第1方向D1の一方側(車両搭載状態における前側)を直線状に切り欠いた形状(直線部113)とした。
【0068】
このように設定したヒートシンク103について、熱流体解析を行った結果、ケース温度Tcは、68.3℃となった。
【0069】
表2は、実施例2に係るヒートシンク102と実施例3に係るヒートシンク103との間で、ケース温度Tc及びフィン120の総面積を比較して示すものである。
【0070】
【表2】
【0071】
一般に、層流における垂直加熱平面と水平加熱平面の熱伝達率hは、以下の式から求められる。
h = Nu・λ/L ・・・(1)
ここで、λ:空気の熱伝導率
L:代表長さ、
Nu:ヌセルト数
また、
Nu=C( Gr・Pr )0.25 ・・・(2)
ここで、Gr:グラスホフ数
Pr: プラントル数
C=0.59 垂直平板
C=0.54 上面加熱水平平板
C=0.27 下面加熱水平平板
式(1)より、代表長さLが同一であれば、ヒートシンク表面の熱伝達率は、面の方向のみによって決まる。そこで、ヒートシンクの表面積を面の方向(垂直、水平上面加熱、水平下面加熱)に分けて算出し、垂直面にはC=0.95を、水平面にはそれぞれの係数Cを垂直平板の係数Cで除した値を乗じて垂直面積相当に換算した等価表面積を求めた(表3に示す)。
【0072】
【表3】
【0073】
表3より、実施例3のヒートシンク103の総等価表面積は、実施例2のヒートシンク102に比べて約1%小さくなっており、そのためケース温度Tcが0.3℃上昇したと考えられるが、その差は僅かなため、ベース形状変更の影響は小さいと考える。なお、等価表面積では係数Cが大きい垂直平板と上面水平平板の面積が全体の96%を占めているため、以下に述べるヒートシンクの評価では、等価表面積ではなく表面積の合計である総表面積を対象とする。
【実施例4】
【0074】
図13図15は、実施例4に係るヒートシンクの一例を示す斜視図である。図13図15では、ベース110の第1面111側のフィン121の図示を省略している。
【0075】
図13に示すヒートシンク104Aは、実施例3の放射配置形状のフィン120をより製造し易い平行配置形状のフィンに置き換えた構成を示している。隣り合うフィン120同士の間隔は、例えば11mmとした。フィン120を平行配置状態とする場合、半導体型光源140からの熱を蓄積して各フィン120に伝達する部分がベース110の第2面112側に無い。そのため、熱の拡散を促進する目的で、ベース110の第2面112に突起部を設ける必要がある。
【0076】
図14に示すヒートシンク104Bは、ベース110の第2面112に突起部150を設けた構成を示している。実施例4においては、図14に示すヒートシンク104Bのように、半導体型光源140の基準点Pを中心とし、径Rが50mmである球状の突起部150を有する構成とした。突起部150は、フィン120で区画された区画部分151を有している。また、フィン120のうち、突起部150に対応する第2方向D2の中央の3つのフィン122Bについては、表面積を確保するため、先端部が図中下方に延長された構成とした。
【0077】
図15に示すヒートシンク104Cは、図14に示すヒートシンク104Bの球状の突起部150を、直方体状の突起部130に置き換えた構成を示している。図15に示すヒートシンク104Cのように、突起部130は、フィン120で区画された区画部分131を有している。実施例4では、各区画部分131の体積を、ヒートシンク104Bにおいて対応する区画部分151の体積と同一の体積とした。また、フィン120のうち、突起部130に対応する第2方向D2の中央の3つのフィン122Cについては、表面積を確保するため、先端部が図中下方に延長された構成とした。
【0078】
このように設定したヒートシンク104A~104Cについて、熱流体解析を行った。その結果を表4に示す。
【0079】
【表4】
【0080】
表4に示すように、突起部150、130を設けることにより、突起部150、130を設けない構成に比べて、ケース温度Tcが低下していることが確認された。
【実施例5】
【0081】
図16は、実施例5に係るヒートシンク105を示す斜視図である。図16に示すように、実施例5に係るヒートシンク105は、実施例4のヒートシンク104Cに対して、ベース110の第1面111にフィン121を5枚追加配置した形状とした。なお、実施例5に係るヒートシンク105は、上記した実施形態に係るヒートシンク100と同一構成である。
【0082】
このように設定したヒートシンク105について、熱流体解析を行った結果、ケース温度Tcは実施例2に係るヒートシンク102と同様、68℃となった。その結果を表4に示す。表4に示すように、突起部150、130を設けることにより、突起部150、130を設けない構成に比べて、ケース温度Tcが低下していることが確認された。ただし、実施例5に係るヒートシンク105は、実施例2に係るヒートシンク102に比べて、表面積が7%小さく、質量が7%大きくなっている。
【0083】
一般的に、自然対流下において平行配置形状のフィンを有するヒートシンクは、半導体型光源から発生した熱量を半導体型光源の近傍の体積(熱容量)の大きな領域に蓄積した後に各フィンに伝達して、フィン表面より外部空気に放出する構造となっている。従って、ヒートシンクの冷却性能の評価に関しては、発熱部からのヒートシンクの体積と表面積の変化も考慮すべきである。
【0084】
図17は、実施例2に係るヒートシンク102及び実施例5に係るヒートシンク105について、半導体型光源の発光部中心を基準とした球体の半径とその球体内部に含まれるヒートシンクの総表面積を示すグラフである。図17において、横軸が球体の半径を示し、縦軸が表面積を示す。図18は、実施例2に係るヒートシンク102及び実施例5に係るヒートシンク105について、半導体型光源の発光部中心を基準とした球体の半径とその球体内部に含まれるヒートシンクの質量を示すグラフである。図18において、横軸が球体の半径を示し、縦軸が質量を示す。
【0085】
図17及び図18に示すように、表面積の増加は、実施例2に係るヒートシンク102の方が大きい。一方、半導体型光源140の近傍の質量(熱容量)の増加は、実施例5に係るヒートシンク105の方が大きい。この2つのパラメータの増減により、両者のケース温度Tcが同じになったと考えられる。
【実施例6】
【0086】
図19は、比較例1に係るヒートシンク106Aを示す斜視図である。図19に示すように、比較例1に係るヒートシンク106Aは、実施例5のヒートシンク105に対して、ベース110のうち円弧状であった部分を複数の直線部115で構成した形状としている。また、第2面112側のフィン122の高さ(第3方向D3の寸法)をすべて等しい高さ(50mm)とした。この結果、ヒートシンク106Aの総表面積は、実施例5に係るヒートシンク105の総表面積よりも6%減少して739cmとなった。このように設定したヒートシンク106Aについて、熱流体解析を行った結果、ケース温度Tcは69℃となった。
【0087】
図20は、比較例2に係るヒートシンク106Bを示す底面図である。図20に示すように、比較例2に係るヒートシンク106Bは、比較例1のヒートシンク106Aに対して、突起部135の寸法を大きくした構成となっている。突起部135は、第2方向D2の中央部から両側にかけてそれぞれ3つの区画に配置されている(区画部分136)。また、各区画部分136は、第1方向D1についても範囲が拡大されている。このように設定したヒートシンク106Bについて、熱流体解析を行った結果、ケース温度Tcは68.6℃となり、ヒートシンク106Aに比べて0.4℃減少した。
【0088】
図21は、比較例3に係るヒートシンク106Cを示す斜視図である。図21に示すように、比較例3に係るヒートシンク106Cは、比較例1のヒートシンク106Aに対して、ベース110の第2面112側において、第2方向D2の中央部に配置される3枚のフィン122の厚さt3(第2方向D2の寸法)を厚く設定した。つまり、ヒートシンク106Aでは、フィン122のうちベース110の付け根部分の厚さが2.5mmであったのに対して、比較例3に係るヒートシンク106Cでは、ベース110の付け根部分の厚さt3を4.5mmとした。このように設定したヒートシンク106Cについて、熱流体解析を行った結果、ケース温度Tcは69.2℃となり、0.2℃上昇した。
【0089】
図22は、比較例4に係るヒートシンク106Dを示す斜視図である。図22に示すように、比較例4に係るヒートシンク106Dは、比較例1のヒートシンク106Aに対して、ベース110の第2面112側において、第2方向D2の中央部ほど隣り合うフィン122同士の間隔を狭くなるようにした。比較例4では、フィン122の枚数とベース110の第2方向D2の寸法とを一定とし、フィン122の間隔を等比数列によって増加率を1.2として求めた。このように設定したヒートシンク106Dについて、熱流体解析を行った結果、ケース温度Tcは69.2℃となり、0.2℃上昇した。
【0090】
図23は、実施例6に係るヒートシンク106Eを示す斜視図である。図23に示すように、実施例6に係るヒートシンク106Eは、比較例1のヒートシンク106Aに対して、ベース110の第2面112側のフィン122の枚数を増加させた構成とした。つまり、ヒートシンク106Aでは、第2面112側のフィン122の枚数が9枚であったのに対して、実施例6に係るヒートシンク106Eでは、第2面112側のフィン122の枚数を11枚とした。この結果、隣り合うフィン122同士の間隔は、11mmから9mmとなった。このように設定したヒートシンク106Eについて、熱流体解析を行った結果、ケース温度Tcは目標値の68℃となった。
【0091】
以上の結果から、ケース温度Tcを下げるには、フィン122の枚数を増やし、表面積を大きくする対策が最も効果的であることが判明した。また、ベース110の第2面112側の突起部130を大きくして熱容量を増加させる構成についても、ケース温度Tc低下の効果が認められた。一方、フィン122の厚さを厚くしてフィン自体の熱容量を増加させた場合や、半導体型光源140に近い部分のフィン122の数を多くして熱量の伝達経路を短くする場合では、冷却効果を低下させる結果となった。
【0092】
図24は、比較例1に係るヒートシンク106Aと、実施例6に係るヒートシンク106Eとについて、半導体型光源の発光部中心を基準とした球体の半径とその球体内部に含まれるヒートシンクの総表面積を示すグラフである。図24において、横軸が球体の半径を示し、縦軸が表面積を示す。
【0093】
図24に示すように、表面積の増加は、実施例6に係るヒートシンク106Eの方が比較例1に係るヒートシンク106Aに比べて大きい。このため、実施例6に係るヒートシンク106Eの方が、蓄積された熱エネルギーの放出が促進されることが看取される。
【実施例7】
【0094】
図25は、実施例7に係るヒートシンク107Aを示す斜視図である。図25に示すように、実施例7に係るヒートシンク107Aは、実施例1に係るヒートシンク101に対して、ベース110の形状を長方形とした構成である。ベース110は、第1方向D1の寸法を60mmとし、第2方向D2の寸法を110mmとした。ベース110の面積は、実施例1に係るヒートシンク101のベース110の面積とほぼ同じとした。
【0095】
第1面111側のフィン121の枚数は5枚とし、第2面112側のフィン122の枚数は17枚とした。また、第2面112には、半導体型光源140の基準点Pを中心とし、半径50mmの球状の突起部を配置した。
【0096】
図26は、実施例7に係るヒートシンク107Bを示す斜視図である。図26に示すように、実施例7に係るヒートシンク107Bは、上記のヒートシンク107Aの構成に対して、第2面112側のフィン122を平行配置形状とした。フィン122の枚数は11枚とし、第2方向D2に隣り合うフィン122同士の間隔を11mmとした。
【0097】
このように設定したヒートシンク107A、107Bについて、熱流体解析を行った結果を表5に示す。
【0098】
【表5】
【0099】
表5に示すように、ヒートシンク107Aについては、ケース温度Tcが67.5℃となった。ヒートシンク107Bについては、ケース温度Tcが67.6℃となった。
【0100】
図27は、実施例7に係るヒートシンク107A、107Bについて、半導体型光源の発光部中心を基準とした球体の半径とその球体内部に含まれるヒートシンクの総表面積を示すグラフである。図27において、横軸が球体の半径を示し、縦軸が表面積を示す。図28は、実施例7に係るヒートシンク107A、107Bについて、半導体型光源の発光部中心を基準とした球体の半径とその球体内部に含まれるヒートシンクの質量を示すグラフである。図28において、横軸が球体の半径を示し、縦軸が質量を示す。
【0101】
図27及び図28に示すように、実施例7に係るヒートシンク107A、107Bは、フィン122の形状に違いはあるが、総表面積及び質量の変化が同様となっている。このように、ベース110の形状が長方形のヒートシンク107A、107Bについても、理想形状として設定することが可能である。
【実施例8】
【0102】
図29は、実施例8に係るヒートシンク108Aを示す斜視図である。図29に示すように、実施例8に係るヒートシンク108Aは、実施例7に係るヒートシンク107Bに対して、フィン122の並ぶ方向を第1方向D1としたものである。また、フィン122の枚数は6枚とした。ヒートシンク108Aは、総表面積、質量ともに、ヒートシンク107Bと同様である。
【0103】
図30は、実施例8に係るヒートシンク108Bを示す斜視図である。図30に示すように、実施例8に係るヒートシンク108Bは、上記したヒートシンク108Aに対して、フィン122の枚数を7枚(1枚増加)とし、第1方向D1に隣り合うフィン122同士の間隔を狭くした構成である。
【0104】
このように設定したヒートシンク108A、108Bについて、熱流体解析を行った結果を表6に示す。
【0105】
【表6】
【0106】
表6に示すように、ヒートシンク108Aについては、ケース温度Tcが67.3℃となった。ヒートシンク108Bについては、ケース温度Tcが66.9℃となった。
【0107】
このように、実施例8に係るヒートシンク108A、108Bのように、フィン122を第1方向D1に並べて第2方向D2に平行に配置した構成の方が、上記各実施形態に係るヒートシンクに比べて、放熱効果が高くなっている。ヒートシンク108Bは、ヒートシンク108Aに比べて総表面積が13%増加し、質量が9%増加しているが、ケース温度Tcの低下は0.4℃に留まっている。このため、総表面積及び質量を考慮に入れた場合、ヒートシンク108Aを理想形状として設定することが可能である。
【実施例9】
【0108】
図31は、実施例9に係るヒートシンク109を示す斜視図である。ヒートシンクの製造のしやすさ等を考慮せずに、純粋に熱の拡散のみに着目した場合、理想的なヒートシンクの形状は球形状となる。図31に示すように、実施例9に係るヒートシンク109は、理想的なヒートシンクの形状に沿うように球形状の構成となっている。また、フィン120の形状については、半導体型光源40の基準点Pを中心とした熱の拡散方向に沿った形状としている。なお、ヒートシンク109は、光源ユニットの他の部品を配置するため、完全な球形状とはならず、一部分が切り欠かれた形状となっている。なお、ベース110は、第1方向D1の一方(図中左手前側)が図中の下方に向けて傾いた状態である。
【0109】
このように設定したヒートシンク109について、熱流体解析を行った結果、フィン120の形状を半導体型光源40の基準点Pを中心として熱の拡散方向に沿った形状とすることにより、冷却性能が高められることが判明した。
【符号の説明】
【0110】
D1…第1方向、D2…第2方向、D3…第3方向、P…基準点、100,100R,100S,101,102,103,104A,104B,104C,105,106,106A,106B,106C,106D,106E,107A,107B,108A,108B…ヒートシンク、10,10R,110…ベース、11,111…第1面、12,12R,112…第2面、13,14…端辺、20,20R,20S,21,22,120,121,122,122B,122C…フィン、30,50,130,135,150…突起部、31,31a,31b,31c,31d,51,131,136,151…区画部分、40,140…半導体型光源、41…発光面、113、115…直線部、200…光源ユニット
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