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特許7056102蓄電モジュールの製造方法及び蓄電モジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】蓄電モジュールの製造方法及び蓄電モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20220412BHJP
   H01M 50/103 20210101ALI20220412BHJP
   H01G 11/80 20130101ALI20220412BHJP
   H01G 11/12 20130101ALI20220412BHJP
   H01M 50/121 20210101ALI20220412BHJP
   H01M 50/184 20210101ALI20220412BHJP
   H01M 50/186 20210101ALI20220412BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M50/103
H01G11/80
H01G11/12
H01M50/121
H01M50/184 A
H01M50/186
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017229024
(22)【出願日】2017-11-29
(65)【公開番号】P2019102165
(43)【公開日】2019-06-24
【審査請求日】2020-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】西原 寛恭
【審査官】松嶋 秀忠
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-242593(JP,A)
【文献】特開2005-190713(JP,A)
【文献】特開2007-122977(JP,A)
【文献】特表2012-524980(JP,A)
【文献】特開2016-146269(JP,A)
【文献】米国特許第4900643(US,A)
【文献】米国特許第5508131(US,A)
【文献】米国特許第5326656(US,A)
【文献】米国特許第5912090(US,A)
【文献】米国特許第5770331(US,A)
【文献】特開2006-054119(JP,A)
【文献】特開平07-057768(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04-39
H01M 50/40-497
H01G 11/78-80
H01G 11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極板の一方面に正極を有すると共に他方面に負極を有するバイポーラ電極の前記電極板の縁部に樹脂によって形成された一次封止体を配置してなる一次封止体付きバイポーラ電極と、セパレータとを交互に所定数積層して中間積層体を形成する中間積層体形成工程と、
前記中間積層体における前記一次封止体付きバイポーラ電極において前記電極板の縁部から張り出す前記一次封止体の張出部分同士を溶着し、前記中間積層体に一次封止溶着体を形成する一次封止工程と、
前記一次封止溶着体が形成された前記中間積層体に、前記一次封止溶着体が形成された他の中間積層体を積層し、積層方向に隣り合う前記一次封止溶着体間に前記一次封止体同士の溶着部を設けずに電極積層体を形成する電極積層体形成工程と、
前記電極積層体を配置した金型内に溶融樹脂を射出することにより前記電極積層体の側面に二次封止体を形成し、前記中間積層体の前記一次封止溶着体同士が結合されるように前記各一次封止溶着体に前記二次封止体を溶着する二次封止工程と、を備えた蓄電モジュールの製造方法。
【請求項2】
前記中間積層体形成工程において、前記電極板の縁部に配置された前記一次封止体は、当該電極板の縁部に予め溶着されている請求項1記載の蓄電モジュールの製造方法。
【請求項3】
前記電極積層体形成工程では、前記一次封止体付きバイポーラ電極の積層数が互いに異なる前記中間積層体を含めて前記電極積層体を形成する請求項1又は2記載の蓄電モジュールの製造方法。
【請求項4】
前記一次封止工程では、前記一次封止体の張出部分同士の溶着と、前記一次封止体と前記電極板との間の溶着とを同時に実施する請求項記載の蓄電モジュールの製造方法。
【請求項5】
電極板の一方面に正極を有する共に他方面に負極を有する複数のバイポーラ電極と、セパレータとが交互に積層された電極積層体と、
前記電極積層体において積層方向に隣り合う前記バイポーラ電極間を封止する封止体と、を備え、
前記封止体は、樹脂によって形成され、前記バイポーラ電極を構成する電極板の縁部に設けられた一次封止体と、溶融樹脂の射出成形体によって前記電極積層体の側面に形成され、前記積層方向に隣り合う前記一次封止体に結合された二次封止体と、を有し、
前記一次封止体は、前記電極板の縁部から張り出す張出部分を有し、
前記電極積層体には、前記積層方向に隣り合う前記一次封止体の張出部分同士が溶着されてなる複数の一次封止溶着体が設けられ、
前記二次封止体は、前記一次封止溶着体同士が結合されるように前記各一次封止溶着体に溶着され、前記積層方向に隣り合う前記一次封止溶着体間には、前記一次封止体同士の溶着部が設けられていない蓄電モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電モジュールの製造方法及び蓄電モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の蓄電モジュールとして、例えば特許文献1に記載の蓄電モジュールがある。この蓄電モジュールは、電極板の一方面に正極が形成され、他方面に負極が形成されたバイポーラ電極を備えた、いわゆるバイポーラ型の蓄電モジュールである。かかる蓄電モジュールは、セパレータを介して複数のバイポーラ電極を積層してなる電極積層体を備えている。電極積層体の側面には、積層方向に隣り合うバイポーラ電極間を封止する封止体が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-204386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した封止体の形成にあたっては、例えばバイポーラ電極を構成する電極板の縁部に一次封止体を配置し、当該一次封止体を有するバイポーラ電極を積層して電極積層体を形成する。その後、各バイポーラ電極の一次封止体同士を二次封止体によって結合することにより、封止体が形成される。
【0005】
しかしながら、上述の形成工程を経て封止体を形成する場合、電極板の寸法公差、電極板の縁部における一次封止体の配置精度、一次封止体付き電極板の積層精度などに起因して、電極積層体において積層方向に隣り合う一次封止体同士に位置ずれが生じることが考えられる。また、例えば二次封止体の形成の際に一次封止体に変形が生じることも考えられる。一次封止体の位置ずれや変形が生じると、二次封止体による一次封止体の結合不良に起因するバイポーラ電極間の封止不良が生じ、蓄電モジュールの製造歩留まりの低下を招くおそれがある。
【0006】
本発明は、上記課題の解決のためになされたものであり、バイポーラ電極間の封止不良に起因する製造歩留まりの低下を抑制できる蓄電モジュールの製造方法及び蓄電モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係る蓄電モジュールの製造方法は、バイポーラ電極を構成する電極板の縁部に一次封止体を配置してなる一次封止体付きバイポーラ電極を所定数積層して中間積層体を形成する中間積層体形成工程と、中間積層体における一次封止体付きバイポーラ電極の一次封止体同士を溶着し、中間積層体に一次封止溶着体を形成する一次封止工程と、中間積層体を含む電極積層体を形成する電極積層体形成工程と、電極積層体において一次封止溶着体を含む一次封止体同士を二次封止体によって封止する二次封止工程と、を備える。
【0008】
この蓄電モジュールの製造方法では、二次封止工程で一次封止体同士を二次封止体で封止する前に、一次封止工程において電極積層体の一次封止体同士を溶着して一次封止溶着体を形成する。一次封止溶着体を予め形成しておくことで、電極積層体において積層方向に隣り合う一次封止体同士の位置ずれの影響が緩和される。また、一次封止溶着体では、個々の一次封止体に比べて強度を十分に確保できるため、二次封止体を形成する際の一次封止体の変形も抑制できる。したがって、この蓄電モジュールの製造方法では、二次封止体による一次封止体の結合不良に起因するバイポーラ電極間の封止不良を抑制でき、製造歩留まりの低下を抑えることが可能となる。
【0009】
また、一次封止体付きバイポーラ電極において、電極板の縁部から張り出す張出部分を一次封止体に設け、一次封止工程では、中間積層体における一次封止体の張出部分同士を溶着してもよい。これにより、一次封止体同士の溶着を簡便かつ確実に実施できる。
【0010】
また、電極積層体形成工程では、中間積層体を複数積層して電極積層体を形成してもよい。この場合、電極積層体において積層方向に隣り合う一次封止体同士の位置ずれの影響の緩和、及び二次封止体を形成する際の一次封止体の変形の抑制をより確実に実現できる。
【0011】
また、電極積層体形成工程では、一次封止体付きバイポーラ電極の積層数が互いに異なる中間積層体を含めて電極積層体を形成してもよい。この場合、積層数が互いに異なる中間積層体の組み合わせにより、蓄電モジュールの容量を容易に調整することができる。
【0012】
また、一次封止工程では、一次封止体同士の溶着と、一次封止体と電極板との間の溶着とを同時に実施してもよい。これにより、蓄電モジュールの製造工程の一層の簡単化が図られる。
【0013】
また、本発明の一側面に係る蓄電モジュールは、複数のバイポーラ電極が積層された電極積層体と、電極積層体において積層方向に隣り合うバイポーラ電極間を封止する封止体と、を備え、封止体は、バイポーラ電極を構成する電極板の縁部に設けられた一次封止体と、一次封止体同士を結合する二次封止体と、を有し、電極積層体には、積層方向に隣り合う一次封止体同士が溶着されてなる一次封止溶着体が設けられ、一次封止溶着体を含む一次封止体同士が二次封止体によって封止されている。
【0014】
この蓄電モジュールでは、一次封止溶着体により、電極積層体において積層方向に隣り合う一次封止体同士の位置ずれの影響が緩和される。また、一次封止溶着体では、個々の一次封止体に比べて強度を十分に確保できるため、二次封止体を形成する際の一次封止体の変形も抑制できる。したがって、この蓄電モジュールでは、二次封止体による一次封止体の結合不良に起因するバイポーラ電極間の封止不良を抑制でき、製造歩留まりの低下を抑えることが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、バイポーラ電極間の封止不良に起因する製造歩留まりの低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】蓄電装置の一実施形態を示す概略図である。
図2】蓄電装置を構成する蓄電モジュールの一実施形態を示す概略断面図である。
図3】封止体の構成の一例を示す要部拡大概略図である。
図4】蓄電モジュールの製造方法の一実施形態を示すフローチャートである。
図5】中間積層体形成工程及び一次封止工程の一例を示す概略図である。
図6】電極積層体形成工程の一例を示す概略図である。
図7】電極積層体形成工程の別例を示す概略図である。
図8】一次封止工程の別例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の一側面に係る蓄電モジュールの製造方法及び蓄電モジュールの好適な実施形態について詳細に説明する。
【0018】
図1は、蓄電装置の一実施形態を示す概略断面図である。同図に示される蓄電装置1は、例えばフォークリフト、ハイブリッド自動車、電気自動車等の各種車両のバッテリとして用いられる装置である。蓄電装置1は、複数の蓄電モジュール4を積層してなる蓄電モジュール積層体2と、蓄電モジュール積層体2に対して積層方向に拘束荷重を付加する拘束部材3とを備えて構成されている。
【0019】
蓄電モジュール積層体2は、複数(本実施形態では3体)の蓄電モジュール4と、複数(本実施形態では4枚)の導電板5とによって構成されている。蓄電モジュール4は、例えば後述するバイポーラ電極14を備えたバイポーラ電池であり、積層方向から見て矩形状をなしている。蓄電モジュール4は、例えばニッケル水素二次電池、リチウムイオン二次電池等の二次電池、又は電気二重層キャパシタである。以下の説明では、ニッケル水素二次電池を例示する。
【0020】
蓄電モジュール積層体2において、積層方向に隣り合う蓄電モジュール4,4同士は、導電板5を介して電気的に接続されている。導電板5は、積層方向に隣り合う蓄電モジュール4,4間と、積層端に位置する蓄電モジュール4の外側とにそれぞれ配置されている。積層端に位置する蓄電モジュール4の外側に配置された一方の導電板5には、正極端子6が接続されている。積層端に位置する蓄電モジュール4の外側に配置された他方の導電板5には、負極端子7が接続されている。正極端子6及び負極端子7は、例えば導電板5の縁部から積層方向に交差する方向に引き出されている。正極端子6及び負極端子7により、蓄電装置1の充放電が実施される。
【0021】
各導電板5の内部には、空気等の冷媒を流通させる複数の流路5aが設けられている。各流路5aは、例えば積層方向と、正極端子6及び負極端子7の引き出し方向とにそれぞれ直交する方向に互いに平行に延在している。これらの流路5aに冷媒を流通させることで、導電板5は、蓄電モジュール4,4同士を電気的に接続する接続部材としての機能のほか、蓄電モジュール4で発生した熱を放熱する放熱板としての機能を併せ持つ。なお、図1の例では、積層方向から見た導電板5の面積は、蓄電モジュール4の面積よりも小さくなっているが、放熱性の向上の観点から、導電板5の面積は、蓄電モジュール4の面積と同じであってもよく、蓄電モジュール4の面積よりも大きくなっていてもよい。
【0022】
拘束部材3は、蓄電モジュール積層体2を積層方向に挟む一対のエンドプレート8,8と、エンドプレート8,8同士を締結する締結ボルト9及びナット10とによって構成されている。エンドプレート8は、積層方向から見た蓄電モジュール4及び導電板5の面積よりも一回り大きい面積を有する矩形の金属板である。エンドプレート8の内側面(蓄電モジュール積層体2側の面)には、電気絶縁性を有するフィルムFが設けられている。このフィルムFにより、エンドプレート8と導電板5との間が電気的に絶縁されている。
【0023】
エンドプレート8の縁部には、蓄電モジュール積層体2よりも外側となる位置に挿通孔8aが設けられている。締結ボルト9は、一方のエンドプレート8の挿通孔8aから他方のエンドプレート8の挿通孔8aに向かって通され、他方のエンドプレート8の挿通孔8aから突出した締結ボルト9の先端部分には、ナット10が螺合されている。これにより、蓄電モジュール4及び導電板5がエンドプレート8,8によって挟持されて蓄電モジュール積層体2としてユニット化されると共に、蓄電モジュール積層体2に対して積層方向に拘束荷重が付加される。
【0024】
次に、蓄電モジュール4の構成について説明する。図2は、蓄電モジュールの一実施形態を示す概略断面図である。同図に示すように、蓄電モジュール4は、電極積層体11と、電極積層体11を封止する樹脂製の封止体12とを備えている。
【0025】
電極積層体11は、セパレータ13を介して複数のバイポーラ電極14が積層されることによって構成されている。本実施形態では、電極積層体11の積層方向と蓄電モジュール積層体2の積層方向とが一致している。電極積層体11は、積層方向に延びる側面11aを有している。バイポーラ電極14は、電極板15、電極板15の一方面15aに設けられた正極16、電極板15の他方面15bに設けられた負極17を含んでいる。
【0026】
正極16は、正極活物質が塗工されてなる正極活物質層である。負極17は、負極活物質が塗工されてなる負極活物質層である。電極積層体11において、一のバイポーラ電極14の正極16は、セパレータ13を挟んで積層方向に隣り合う一方のバイポーラ電極14の負極17と対向している。電極積層体11において、一のバイポーラ電極14の負極17は、セパレータ13を挟んで積層方向に隣り合う他方のバイポーラ電極14の正極16と対向している。
【0027】
電極積層体11において、積層方向の一端には、負極終端電極18が配置されている。また、積層方向の他端には、正極終端電極19が配置されている。負極終端電極18は、電極板15と、電極板15の他方面15bに設けられた負極17とを含んでいる。負極終端電極18の負極17は、セパレータ13を介して積層方向の一端のバイポーラ電極14の正極16と対向している。負極終端電極18の電極板15の一方面15aには、蓄電モジュール4に隣接する一方の導電板5が接触している。正極終端電極19は、電極板15と、電極板15の一方面15aに設けられた正極16とを含んでいる。正極終端電極19の電極板15の他方面15bには、蓄電モジュール4に隣接する他方の導電板5が接触している。正極終端電極19の正極16は、セパレータ13を介して積層方向の他端のバイポーラ電極14の負極17と対向している。
【0028】
電極板15は、例えばニッケルからなる金属箔、或いはニッケルメッキ鋼板からなり、矩形状をなしている。電極板15の縁部15cは、正極活物質及び負極活物質が塗工されない未塗工領域となっている。正極16を構成する正極活物質としては、例えば水酸化ニッケルが挙げられる。負極17を構成する負極活物質としては、例えば水素吸蔵合金が挙げられる。本実施形態では、電極板15の他方面15bにおける負極17の形成領域は、電極板15の一方面15aにおける正極16の形成領域に対して一回り大きくなっている。
【0029】
セパレータ13は、例えばシート状に形成されている。セパレータ13としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルム、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、メチルセルロース等からなる織布又は不織布等が例示される。セパレータ13は、フッ化ビニリデン樹脂化合物で補強されたものであってもよい。なお、セパレータ13は、シート状に限られず、袋状のものを用いてもよい。
【0030】
封止体12は、例えば絶縁性の樹脂によって矩形の筒状に形成されている。封止体12は、積層方向に延びる電極積層体11の側面11aにおいて電極板15の縁部15cを保持すると共に、側面11aを取り囲むように構成されている。封止体12は、各バイポーラ電極14の電極板15の縁部15cに沿ってそれぞれ設けられた一次封止体21と、一次封止体21の全体を外側から包囲するように設けられた二次封止体22とによって構成されている。
【0031】
一次封止体21は、例えば樹脂の射出成形によって形成され、電極板15の一方面15a側の縁部15c(未塗工領域)において、電極板15の全ての辺にわたって連続的に設けられている。一次封止体21は、積層方向に隣り合うバイポーラ電極14,14の電極板15,15間のスペーサとしての機能を有している。電極板15,15間には、積層方向の一次封止体21,21の間隔によって規定される内部空間Vが形成されている。当該内部空間Vには、例えば水酸化カリウム水溶液等のアルカリ溶液からなる電解液Eが収容されている。
【0032】
一次封止体21は、電極板15の縁部15cに重なる重なり部分21aと、電極板15の縁よりも外側に張り出す張出部分21bとを有している。重なり部分21aの少なくとも一部は、例えば超音波又は熱を用いた溶着により、縁部15cに対して強固に結合している。一次封止体21と電極板15との結合にあたって、電極板15における一次封止体21との結合面は、複数の微細突起が設けられた粗化メッキ面となっている。本実施形態では、正極16が設けられている電極板15の一方面15aの全面が粗化メッキ面となっている。微細突起は、例えば電極板15に対する電解メッキによって形成された突起状の析出金属(付与物を含む)である。粗化メッキ面においては、一次封止体21を構成する樹脂材料が微細突起間の隙間に入り込むことでアンカー効果が生じ、電極板15と一次封止体21との間の結合強度及び液密性の向上が図られる。
【0033】
電極積層体11には、図3に示すように、積層方向に隣り合う一次封止体21,21同士が溶着されてなる一次封止溶着体31が設けられている。一次封止溶着体31は、例えば超音波又は熱を用いた溶着によって積層方向に隣り合う複数層の一次封止体21の張出部分21bが互いに結合してなる結合体である。図3の例では、電極積層体11において、3層の一次封止体21の張出部分21bが互いに溶着されてなる一次封止溶着体31が電極積層体11の積層方向に配列されている。
【0034】
二次封止体22は、例えば樹脂の射出成形によって形成され、電極積層体11における積層方向の全長にわたって延在している。二次封止体22は、例えば射出成型時の熱により、一次封止溶着体31の外表面に溶着されている。また、二次封止体22は、積層方向に隣り合う一次封止溶着体31,31の間にも進入し、一次封止溶着体31に対して強固に結合している。このような構成により、内部空間Vに収容された電解液Eは、積層方向に隣り合う一次封止溶着体31,31間を通り得るが、一次封止溶着体31と二次封止体22との溶着部分で封止されている。
【0035】
一次封止体21を構成する樹脂材料としては、例えば酸変性ポリプロピレン、変性ポリフェニレンエーテル、ポリプロピレン、ゴム成分とポリプロピレンとを混合した熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。また、二次封止体22を構成する材料としては、例えば変性ポリフェニレンエーテルが挙げられる。
【0036】
続いて、蓄電モジュール4の製造方法について説明する。図4は、上述した蓄電モジュールの製造方法の一実施形態を示すフローチャートである。同図に示すように、この蓄電モジュールの製造方法は、中間積層体形成工程(ステップS01)と、一次封止工程(ステップS02)と、電極積層体形成工程(ステップS03)と、二次封止工程(ステップS04)とを含んで構成されている。
【0037】
中間積層体形成工程では、図5(a)に示すように、バイポーラ電極14を構成する電極板15の縁部15cに一次封止体21を予め配置してなる一次封止体付きバイポーラ電極32を用いる。一次封止体付きバイポーラ電極32では、一次封止体21の重なり部分21aの少なくとも一部が予め電極板15の一方面15aの縁部15cに溶着されている。図5(a)の例では、セパレータ13を介して3層の一次封止体付きバイポーラ電極32を積層する。一次封止体付きバイポーラ電極32の積層により、中間積層体Kが形成される。
【0038】
一次封止工程では、図5(a)に示すように、一対のヒータ33を用いて3層の一次封止体付きバイポーラ電極32における一次封止体21の張出部分21bを挟持し、張出部分21b同士を溶着する。これにより、図5(b)に示すように、一次封止体21の張出部分21b同士が結合し、中間積層体Kにおいて一次封止溶着体31が形成される。中間積層体形成工程及び一次封止工程を繰り返し実施することで、一次封止溶着体31を有する中間積層体Kを必要数に応じて形成する。
【0039】
電極積層体形成工程では、図6に示すように、一次封止溶着体31を有する中間積層体Kを必要数に応じて複数積層し、電極積層体11を形成する。二次封止工程では、電極積層体11を射出成型用の金型内に配置する。そして、金型内に溶融樹脂を射出し、電極積層体11の一次封止溶着体31を覆うように二次封止体22を形成する。これにより、一次封止溶着体31,31同士が二次封止体22によって結合し、電極積層体11の側面11aに封止体12が形成される。
【0040】
以上説明したように、この蓄電モジュールの製造方法では、二次封止工程で一次封止体21,21同士を二次封止体22で封止する前に、一次封止工程において電極積層体11の一次封止体21,21同士を溶着して一次封止溶着体31を形成する。一次封止溶着体31を予め形成しておくことで、電極積層体11において積層方向に隣り合う一次封止体21,21同士の位置ずれの影響が緩和される。また、一次封止溶着体31では、個々の一次封止体21に比べて強度を十分に確保できるため、射出成形時に金型内に射出される溶融樹脂に対する耐圧が高まり、二次封止体22を形成する際の一次封止体21の変形も抑制できる。したがって、この蓄電モジュールの製造方法では、二次封止体22による一次封止体21の結合不良に起因するバイポーラ電極14,14間の封止不良を抑制でき、製造歩留まりの低下を抑えることが可能となる。
【0041】
また、本実施形態では、一次封止体付きバイポーラ電極32において、電極板15の縁部15cから張り出す張出部分21bを一次封止体21に設け、一次封止工程では、中間積層体Kにおける一次封止体21の張出部分21b,21b同士を溶着している。これにより、一次封止体21,21同士の溶着を簡便かつ確実に実施できる。
【0042】
なお、図3等では、一次封止溶着体31の外側面を模式的に平坦に描いているが、中間積層体Kにおける一次封止体21の位置ずれの程度によっては、溶着後の一次封止溶着体31の外側面に凹凸が生じることも考えられる。しかしながら、かかる一次封止溶着体31の外側面の凹凸は、二次封止体22による一次封止溶着体31の結合には影響せず、製造歩留まりの低下につながることはない。また、一次封止溶着体31においては、一次封止体21の張出部分21bの少なくとも一部同士が溶着していればよく、必ずしも張出部分21bの全体同士が溶着している必要はない。例えば張出部分21bの内縁側同士のみが溶着され、張出部分21bの外縁側が溶着されていない状態であってもよい。
【0043】
また、本実施形態では、電極積層体形成工程において中間積層体Kを複数積層して電極積層体11を形成している。この場合、電極積層体11において積層方向に隣り合う一次封止体21,21同士の位置ずれの影響の緩和、及び二次封止体22を形成する際の一次封止体21の変形の抑制をより確実に実現できる。本実施形態では、一次封止体付きバイポーラ電極32の積層数が同一の中間積層体Kを積層して電極積層体11を形成している。したがって、蓄電モジュール4の部品点数の増加も回避できる。
【0044】
本発明は、上記実施形態に限られるものではない。例えば上記実施形態では、電極積層体形成工程において中間積層体Kを複数積層して電極積層体11を形成しているが、中間積層体Kの積層数は任意であってよい。例えば一又は複数の中間積層体Kと一又は複数の一次封止体付きバイポーラ電極32とを組み合わせて電極積層体11を形成してもよい。また、図7に示すように、一次封止体付きバイポーラ電極32の積層数が互いに異なる中間積層体Kを含めて電極積層体11を形成してもよい。これらの構成によれば、蓄電モジュール4の容量を容易に調整することができる。
【0045】
また、例えば上記実施形態では、一次封止工程において一次封止体21が予め電極板15に溶着された一次封止体付きバイポーラ電極32を用い、一次封止体21の張出部分21b,21b同士の溶着を実施しているが、例えば図8に示すように、ヒータ33,33による一次封止体21の挟持範囲をより一次封止体21の内縁側に拡張し、一次封止体21の張出部分21b,21b同士の溶着と、一次封止体21の重なり部分21aと電極板15の一方面15aの縁部15cとの間の溶着とを同時に実施してもよい。これにより、蓄電モジュール4の製造工程の一層の簡単化が図られる。
【符号の説明】
【0046】
4…蓄電モジュール、11…電極積層体、14…バイポーラ電極、15…電極板、15c…縁部、21…一次封止体、21b…張出部分、22…二次封止体、31…一次封止溶着体、32…一次封止体付きバイポーラ電極、K…中間積層体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8