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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】サスペンション装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 21/02 20060101AFI20220412BHJP
   B60G 3/20 20060101ALI20220412BHJP
   B60G 11/08 20060101ALI20220412BHJP
【FI】
B62D21/02 A
B60G3/20
B60G11/08
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2017236359
(22)【出願日】2017-12-08
(65)【公開番号】P2019104271
(43)【公開日】2019-06-27
【審査請求日】2020-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(72)【発明者】
【氏名】妹尾 太輔
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 淳史
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/101907(WO,A1)
【文献】実開昭62-072202(JP,U)
【文献】特開平11-105522(JP,A)
【文献】特開2003-341331(JP,A)
【文献】特開2013-209076(JP,A)
【文献】実開平04-062282(JP,U)
【文献】特開平09-272319(JP,A)
【文献】特開平11-105523(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 3/00 - 3/28
B62D 21/02
B60G 7/00 - 7/04
B60G 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前後方向に沿って長尺な左右のサイドメンバの下面に前記サイドメンバの長手方向に沿うように取り付けられた左右の縦メンバと、
左右の前記サイドメンバに跨がる第1のサスクロスメンバと、
前記第1のサスクロスメンバの車幅方向両側に設けられ、前記第1のサスクロスメンバと左右の前記縦メンバとを連結する第1の下側ブラケットと、
前記第1のサスクロスメンバよりも車両前方に配置され、左右の前記サイドメンバに跨がる第2のサスクロスメンバと、
前記第2のサスクロスメンバの車幅方向両側に設けられ、前記第2のサスクロスメンバと左右の前記縦メンバとを連結する第2の下側ブラケットと、
前記サイドメンバの車幅方向外側の側面に取り付けられた上側ブラケットと、
前記上側ブラケットに揺動自在に支持されるとともに車輪のナックルを揺動自在に支持するアッパーアームと、
前記第1のサスクロスメンバに揺動自在に支持されるとともに前記ナックルを揺動自在に支持するロワアームと、
前記上側ブラケットと前記ロワアームとの間に配設される衝撃吸収装置と、
長尺に形成されていて、中間部分が前記第1のサスクロスメンバ内に収容され、両端部で前記ロワアームを押下するリーフスプリングと、
前記第1のサスクロスメンバと前記リーフスプリングとの間に設けられ、前記ロワアームからの上方向への入力を前記第1のサスクロスメンバに伝達する伝達部と
を備え、
前記第1の下側ブラケットは、上下方向に視線を向けて見たときに、左右の前記サイドメンバよりも車幅方向内側で前記第1のサスクロスメンバに接続している
サスペンション装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両の、独立懸架式のサスペンション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両において、車輪の独立懸架の方式の一つである、ダブルウィッシュボーンタイプのサスペンション装置が従来用いられている。この種のサスペンション装置は、車体フレームのサイドメンバに支軸周りに揺動自在に支持されたアッパーアームと、車体側のサスクロスメンバに支軸周りに揺動自在に支持されたロワアームとを備える。これらアッパーアームとロワアームとは車輪のナックルに連結されている。
【0003】
このようなサスペンション装置の一例が特許文献1に開示されている。特許文献1の、サスペンション装置は、ボールジョイントを介してナックルに連結された上記アッパーアーム及び上記ロワアームを備える。更に、そのサスペンション装置は、ロワアームと車体フレームに固設されたばね受との間に設けられたコイルばねと、このコイルばねの中心に延びるショックアブソーバと、車幅方向に横置きに配置されて両端がそれぞれ対応するロワアームに連結されているリーフスプリングとを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平7-112607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のサスペンション装置において種々の改良を行うことが考えられる。例えば各種構成要素間の関係性の改善を試みることで、設計の自由度を高めることが考えられる。しかし、そのような改善を図れたとしても、その強度(剛性)が大幅に低下したりすることは避け、車輪側からの入力(例えば振動)に対して十分な剛性を有する必要がある。
【0006】
本開示の技術は、剛性面で優れる、サスペンション装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本開示の技術は、車輪のナックルを揺動自在に支持するように設けられるとともに車両前後方向に延びるサイドメンバに揺動自在に支持されるように構成されたアッパーアームと、前記ナックルを揺動自在に支持するように設けられるとともに車幅方向に延びるサスクロスメンバに揺動自在に支持されるように構成されたロワアームと、該ロワアームと前記サイドメンバとの間に配設される衝撃吸収装置と、車幅方向に延在するように配置されて端部が前記ロワアームに配置されるリーフスプリングとを備えた、サスペンション装置であって、前記衝撃吸収装置が前記サイドメンバの車幅方向外側に接続するように構成された第1ブラケットと、前記サスクロスメンバと前記リーフスプリングとの間に設けられ、前記リーフスプリングと前記サスクロスメンバとの間で力を伝達可能に構成されている、伝達部と、前記リーフスプリングの弾性力を前記伝達部を介して前記サイドメンバに伝達可能に、前記リーフスプリングと前記サイドメンバとの間の、前記サイドメンバの鉛直方向下側に配設される、前記第1ブラケットから独立した第2ブラケットとを備える、サスペンション装置を提供する。
【0008】
好ましくは、前記リーフスプリングは、前記サスクロスメンバの主クロスメンバの内側を通して配置されていて、前記伝達部は、前記主クロスメンバの内側に設けられていて、
前記第2ブラケットは、車幅方向において前記サイドメンバの内側に前記主クロスメンバとの接続領域を有する。
【0009】
前記サスクロスメンバが、車幅方向に延在する前記主クロスメンバと、車幅方向に延在する副クロスメンバと、前記主クロスメンバ及び前記副クロスメンバとを連結するように車両前後方向に延在する縦メンバとを備える場合、前記第2ブラケットは、前記主クロスメンバと前記縦メンバとの間に設けられることができる。
【発明の効果】
【0010】
本開示の上記技術によるサスペンション装置によれば、上記構成を備えるので、優れた剛性を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の技術の一実施形態に係るサスペンション装置の構成図であり、車両側方側からの図である。
図2図1のサスペンション装置の片方の車輪側の構成図であり、一部断面図である。
図3図1のサスペンション装置のロワアームとリーフスプリングとを説明するための図である。
図4】従来のサスペンション装置における組付けの説明図である。
図5図1のサスペンション装置における組付けの説明図である。
図6図2のサスペンション装置の模式的な説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の技術に係る実施形態を添付図に基づいて説明する。同一の部品(又は構成)には同一の符号を付してあり、それらの名称及び機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0013】
図1に、本開示の技術の一実施形態に係るサスペンション装置10の一部の概略構成を示す。図2に、サスペンション装置10の片方の車輪側の構成を示し、その一部を断面で示す。サスペンション装置10は、ここでは車両の前輪に適用されていて、図2の符号「12」は左前輪(不図示)を支持するハブである。図1は、(左前輪のハブ及びナックルを除いて表した)図2におけるサスペンション装置10の、左前輪の側方側からの図である。なお、図示しない右前輪側は、図1及び図2の構成と左右対称な構成を実質的に有するので、以下では実質的にその説明を省略する。また、車幅方向は図1において紙面に略直交する方向であるとともに図2において紙面に略平行な方向であり、車両前後方向は図1において紙面に略平行な方向であるとともに図2において紙面に略直交する方向である。
【0014】
サスペンション装置10は、独立懸架方式のサスペンション装置として構成されている。サスペンション装置10は、平面形状が略V形又は略A形をなすアッパーアーム14と、平面形状が略V形又は略A形をなすロワアーム16とを備える。車輪のナックル18は、その上方部分を介して、アッパーアーム14に、特にその車幅方向外方の端部(基部)14aに、ボールジョイント20を介して枢支され、つまり揺動自在に支持されている。また、車輪のナックル18は、その下方部分を介して、ロワアーム16に、特にその車幅方向外方の端部(基部)16aに、ボールジョイント22を介して揺動自在に支持されている。
【0015】
アッパーアーム14の上記基部14aから車幅方向内方に二股に分かれた2つのアーム部14bのそれぞれのアーム端部14cはブラケット24のアッパーアームブラケット25aに連結されている。それにより、アッパーアーム14はブラケット25aの支軸周りに揺動自在に支持されている。ブラケット24は、車両前後方向に延在して配置されるサイドメンバ26に固定される。サイドメンバ26は、図示しない車体フレームBFの構成要素であり、車両の両サイドに配置される。なお、サスペンション装置10では、図1に示すように、ブラケット24は、W形状に配置した5つのボルトBで、サイドメンバ26に固定される。しかし、ブラケット24を固定するためのボルトの数、配置などは、これに限定されるものではない。
【0016】
車体フレームBFの左右のサイドメンバ26(図1及び図2では車両左側のサイドメンバ26のみを図示)の鉛直方向下側つまり下方に、サスクロスメンバ(サスペンションクロスメンバ)28が車幅方向に配置されている。サスクロスメンバ28は、車両前後方向にある程度の幅を有し、車幅方向に延びる複数の部材及びこれらをつなぐように設けられる車両前後方向に延びる複数の部材を備える。具体的には、サスクロスメンバ28は、車幅方向に延在する主クロスメンバ30と、車幅方向に延在する副クロスメンバ32と、車両前後方向に延びる縦メンバ34とを備える。ここでは、主クロスメンバ30の車両前方側に、主クロスメンバ30から離して副クロスメンバ32が略平行に配置される。そして、それら主クロスメンバ30と副クロスメンバ32とに亘って縦メンバ34が設けられている。ここでは、サスクロスメンバの構成要素は概して鉄鋼材料で作製され、それらは溶接により一体化されるが、材料、接合方法はこれらに限定されるものではない。また、このようなサスクロスメンバ28の構成は、本開示においてサスクロスメンバが主クロスメンバのみから構成されることを排除するものではない。なお、図1及び図2に示すように、サスペンション装置10では、サスクロスメンバ28がサイドメンバ26に取り付け固定されるとき、縦メンバ34がサイドメンバ26に当接する。また、主クロスメンバ30と副クロスメンバ32とにより、それらの間にステアリングギヤボックスSUが支持されている。
【0017】
より詳しくは、主クロスメンバ30は、ブラケット36を介して、縦メンバ34に取り付けられている。サスクロスメンバ28における主クロスメンバ30の上部には、ブラケット36が取り付けられる。ブラケット36は、図1に示すように主クロスメンバ30を上側から覆うように設けられるとともに、図2に示すように主クロスメンバ30の(車幅方向の)端部に対してその上部に設けられる。そして、図1及び図2に示すように、前述の縦メンバ34は、ブラケット36の上部にまたがるように配置される。このように、サスペンション装置10では、ブラケット36はサスクロスメンバ28の内部に組み込まれている。しかし、ブラケット36はサスクロスメンバ28の外部に取り付けられてもよい(つまり、ブラケット36を介してサスクロスメンバ28がサイドメンバ26に取り付けられてもよい)。なお、これらの態様のいずれでも、サスクロスメンバ28は車体フレームBF(サイドメンバ26)の鉛直方向下側に接続され、そのときサスクロスメンバ28はその内部に又はその上側にブラケット36を伴う。以下では、このブラケット36を上記ブラケット24と区別するべく、上記ブラケット24を上側ブラケットと称し、ブラケット36を下側ブラケットと称する。なお、上側ブラケット24は本開示の技術における第1ブラケットに相当し、下側ブラケット36は本開示の技術における第2ブラケットに相当する。
【0018】
副クロスメンバ32も、支持ブラケット33を介して、縦メンバ34に取り付けられている。副クロスメンバ32の車幅方向両端部のそれぞれには略鉛直方向(略上下方向)に延びる支持ブラケット33の下端部が上側から覆うように接合されている。そして、このようにして副クロスメンバ32に接合された支持ブラケット33の上端部が縦メンバ34に接合されることで、副クロスメンバ32は縦メンバ34に取り付けられている。
【0019】
サスクロスメンバ28は、ロワアームブラケット38を更に有する。ロワアームブラケット38には、ロワアーム16の上記基部16aから車幅方向内方に二股に分かれた2つのアーム部16bのそれぞれのアーム端部16cが連結される。これにより、ロワアーム16はブラケット38の支軸周りに揺動自在に支持されている。ここでは、ロワアームブラケット38は、図1に示すように、車両前後方向において主クロスメンバ30を挟むように設けられる。ここでは、車両前方側のロワアームブラケット38は、副クロスメンバ32の車幅方向外側端部に接合される上記支持ブラケット33としても構成されている。したがって、車両前方側のロワアームブラケット38は、支持ブラケット33としての役割を担う。車両後方側のロワアームブラケット38は、主クロスメンバ30の延出部30Eに連結され、更にその上端側が縦メンバ34に取り付けられて固定されている。このように、ロワアーム16は下側ブラケット36に直接的に接続されておらず、下側ブラケット36は、ロワアーム16から離れている。
【0020】
サスペンション装置10では、車幅方向に延在するように横置きにリーフスプリング40が配置される。リーフスプリング40は、サスクロスメンバ28のうちの主クロスメンバ30の内部空洞30sを通して配置される。そして、リーフスプリング40の一端部40aは、左前輪側(図2のハブ12側)のロワアーム16の支持部44に後述するように配置され、その他端部は、同様に図示しない右前輪側のロワアーム16の支持部44に配置される。
【0021】
支持部44は、ロワアーム16の基部16aとそこから二股に延びるアーム部16bとの間に形成される略三角形領域の鉛直方向上側つまり上方に車両において略水平となるように形成されている。リーフスプリング40は、概して、車幅方向に延在し、鉛直方向上側に僅かに凸に湾曲した形状を有する。リーフスプリング40の中間部分40bは、サスクロスメンバ28内に収容されている。より具体的には、中間部分40bは、サスクロスメンバ28のうちの主クロスメンバ30内に収容されていて、ブッシュ部材47で主クロスメンバ30に対して支持されている。詳しくは、リーフスプリング40の中間部分40bは、左前輪側のブッシュ部材47(上ブッシュ48及び下ブッシュ50)と、右前輪側の不図示のブッシュ部材(上ブッシュ及び下ブッシュ)とにより、主クロスメンバ30に対して支持されている。ブッシュ部材47は、リーフスプリング40の鉛直方向上側に位置付けられて主クロスメンバ30の内面に接続する上ブッシュ48と、リーフスプリング40の鉛直方向下側に位置付けられて主クロスメンバ30の内面に接続する下ブッシュ50とを含む。リーフスプリング40は、上ブッシュ48により、ロワアーム16の支持部44に押し付けられるようにして設けられている。この上ブッシュ48は、リーフスプリング40からの力をサスクロスメンバ28に伝達可能に設けられている伝達部に相当する。また、下ブッシュ50は、リーフスプリング40に種々の役目又は機能を担わせることを可能にするように、例えばスタビライザーとしての役目も担わせることを可能にするように、リーフスプリング40を支持するように設けられている。下ブッシュ50をも設けることで、リーフスプリング40は、左右の前輪に異なる力が生じるとき、例えば、左前輪は上側に持ち上げられるが右前輪が下側に下がるようなとき、略S字状に湾曲することができ、左右前輪の両方に対して作用することができる。
【0022】
図3に示すように、ロワアーム16は、上記支持部44を有するとともに、支持部44の鉛直方向上側を覆うように設けられるロワアームカバー部16eを有する。なお、このカバー部16eとの区別を明瞭にするように、上で述べた基部16a及びそこから二股に延在するアーム部16bを含む本体部16dをロワアーム本体部と称し得る。
【0023】
ロワアーム16では、ロワアーム本体部16dに、リーフスプリング40の端部を支持するための上記支持部44が設けられている。支持部44は、ロワアーム16に載るように設けられ、ロワアーム16に対して取り外したり交換したりすることができるように設けられている。支持部44は、ロワアーム16と同じく、金属材料のうちの、鉄鋼材料で作製されている。支持部44の下側には、弾性体44aが設けられている。この弾性体44aは、支持部44に大きな力が作用したときの緩衝能を高めるように、また、ロワアーム16の回転軌跡とリーフスプリング40の回転軌跡による差を吸収するように、設けられている。そして、ロワアーム本体部16dにカバー部16eが取り付けられたロワアーム16は、車幅方向内側に開口する開口部16fを有する。リーフスプリング40は開口部16fを通してロワアーム16内の空間に延在し、リーフスプリング40の端部はロワアーム16の支持部44に支持される。このようにロワアーム16は空間を有するが、所定レベル以上の強度又は剛性を有するように、カバー部16eは、所定補強形状を有する。具体的には、ロワアーム16において、カバー部16eは、開口部16fにおいて略アーチ形状(略U字形状)を有する。なお、図1及び図2において、リーフスプリング40は、カバー部16eの内面から離れている。
【0024】
上記構成のロワアーム16とサイドメンバ26との間に延びるように、衝撃吸収装置であるショックアブソーバ46が設けられている。ショックアブソーバ46の一端部46aはロワアーム16に接続されている。ショックアブソーバ46のロワアーム16への接続部16gは、ロワアーム16のカバー部16eの鉛直方向上側の面に設けられ、概ねロワアーム16の基部16a近傍上側に位置する。ショックアブソーバ46の他端部46bは、上側ブラケット24における、2つのアッパーアームブラケット25a間の接続部25bに連結されている。
【0025】
さて、上記構成のサスペンション装置10においては、上記説明及び図面から明らかなように、サイドメンバ26の車幅方向外側に接続される上側ブラケット24は、サイドメンバ26の鉛直方向下側に接続されるサスクロスメンバ28から独立して離れている。これに対して、従来のサスペンション装置では、サスクロスメンバとサイドメンバとをつなぐブラケットはサイドメンバ26の車幅方向外側にまで延びる。例えば、特許文献1のサスペンション装置では、サスクロスメンバとサイドメンバとをつなぐブラケットが、ショックアブソーバが中心に延びるコイルばね周囲も覆うように設けられていて、そのばね受けと一体にされている。したがって、特許文献1のサスペンション装置では、構成部材間の設計上の関係性が非常に強い。このような従来のサスペンション装置に比べて、サスペンション装置10は、上記構成を備えるので、高い設計の自由度を有する。そして、主クロスメンバ30の端部を上側から覆うように設けられてサイドメンバ26の鉛直方向下側つまり下方に位置する下側ブラケット36からも、上側ブラケット24は独立している。これにより、上側ブラケット24に接続するアッパーアーム14及びショックアブソーバ46は、下側ブラケット36に対して直接的には接続しておらず、つまり非接続状態にある。したがって、サスペンション装置10は、更に高い設計の自由度を有する。このように、サスペンション装置10は、上側ブラケット24と下側ブラケット36とが独立した構成を有する。
【0026】
上側ブラケット24と下側ブラケット36とが独立した構成を有するので、サスペンション装置10は、車体フレームBFの組付け性の点で優れる。ここで、従来のサスペンション装置についてまず説明する。図4では左右のサイドメンバ26を備える車体フレームBFと、特許文献1に記載のブラケットのように略L字状断面を有するブラケットBを備えるサスクロスメンバ28´とを模式的に表す。図4から理解できるように、従来のサスペンション装置では、ブラケットBを備えたサスクロスメンバ28´を車体フレームBFに組付けるとき、それらの間での前後左右、水平方向などの精密な位置決めを必要とする。
【0027】
これに対して、本実施形態に係るサスペンション装置10では、上で説明したように、上側ブラケット24と下側ブラケット36(つまりサスクロスメンバ28)とが分離独立している。つまり、上側ブラケット24はサスクロスメンバ28に固定されておらず、サスクロスメンバ28から独立して離れている。そして、この構成により、上側ブラケット24はサイドメンバ26にサスクロスメンバとは別個に取り付けられ得、下側ブラケット36を備えるサスクロスメンバ28はサイドメンバ26に上側ブラケット24とは別個に取り付けられ得る。上側ブラケット24には、アッパーアーム14やショックアブソーバ46が取り付けられる。そして、下側ブラケット36を含むサスクロスメンバ28が組み立てられる。上側ブラケット24とサスクロスメンバ28とはショックアブソーバ46及びロワアーム16を介して連結されているが、上側ブラケット24とサスクロスメンバ28との間での位置が固定的に定まるものではない。これは、ロワアーム16がサスクロスメンバ28に揺動自在に取り付けられ、またショックアブソーバ46の端部46aが支軸周りに回動可能(揺動可能)であることから容易に理解されよう。したがって、図5に模式的に示すように、サスクロスメンバ28を車体フレームBFに取り付けるとき、従来のサスペンション装置ほどの精密な位置決めを必要とせずに、それらの間での前後左右、水平方向の大雑把な位置決めを行うことで、互いに当接する当接状態にし、その後位置関係を微調整することができる。そして、下側ブラケット36を伴ってサスクロスメンバ28を車体フレームBF(特にサイドメンバ26)に固定した状態で、上側ブラケット24をサイドメンバ26にしっかりと固定することができる。このように、上側ブラケット24と下側ブラケット36(つまりサスクロスメンバ28)とを分離独立させた上記構成を採用することで、サスペンション装置10では、各構成要素の、特にサスクロスメンバ28の車体フレームBF(主にサイドメンバ26)への組付け性の向上を図ることができる。
【0028】
上記サスペンション装置10は、その耐衝撃性等を高めるように、下側ブラケット36に設けられたバンプラバー52等を備える。更に、サスペンション装置10は、以下に図2及び図6に基づいて説明するように強度又は剛性の面でも優れる。なお、図6は、図2のサスペンション装置の模式図である。
【0029】
まず、上で説明したように、ショックアブソーバ46の一端部46aはロワアーム16に接続され、その他端部46bは上側ブラケット24に接続されている。車幅方向において、ショックアブソーバ46のロワアーム16への接続部は、上側ブラケット24よりも外側にある。そして、上側ブラケット24は、車幅方向において外側からサイドメンバ26に接続する。したがって、ショックアブソーバ46は、車幅方向において、車両の外側から内側への力をサイドメンバ26に及ぼすことができる。このように車幅方向外側からサイドメンバ26への力の第1伝達ルートが形成されている。
【0030】
そして、車幅方向外側からサイドメンバ26への力の第1伝達ルートとは別個の力の第2伝達ルートが、サイドメンバ26の鉛直方向下側に形成されている。第2伝達ルートには、上ブッシュ48、及び、上側ブラケット24から独立した下側ブラケット36が存在する。第2伝達ルートでは、リーフスプリング40からの力を上ブッシュ48、主クロスメンバ30、下側ブラケット36、縦メンバ34を順に介して、サイドメンバ26に付与することができる。
【0031】
このようなサスペンション装置10において、例えばハブ12が鉛直方向上側に持ち上げられるような力Fが車輪に作用したとき、第1伝達ルートにおけるロワアーム16及びショックアブソーバ46を介して、サイドメンバ26には、図6中に模式的に示すような車両外方から車両内方へのモーメントM1が作用し得る。一方で、そのような力Fが車輪(ハブ12)に作用したとき、ロワアーム16からリーフスプリング40に力が伝達され、そして、リーフスプリングからの力つまり弾性力は上ブッシュ48を介して主クロスメンバ30に伝達される。その結果、(上側ブラケットから独立した)下側ブラケット36がサイドメンバ26の鉛直方向下側に配置されているので、サイドメンバ26には、図6中に模式的に示すような車両内方から車両外方へのモーメントM2を作用させることができる。図6から理解できるように、これらのモーメントM1、M2は互いに打ち消しあうような向きの力である。つまり、車輪(ハブ12)に力Fが作用するときには、特許文献1のサスペンション装置では、サイドメンバ26にモーメントM1に相当するようなモーメントのみが作用するところ、本実施形態のサスペンション装置10では、互いに打ち消すような向きのモーメントM1、M2をサイドメンバ26に作用させることができる。したがって、本実施形態のサスペンション装置10は、サイドメンバを肉厚にすることなど、重量増を伴う構成変化を必要としないで、力Fに対して、剛性面で優れる。
【0032】
また、サスペンション装置10では、下側ブラケット36は、車幅方向において、サイドメンバ26よりも車両の内側に、主クロスメンバ30との接続領域を実質的に有する(図2図6参照)。この接続領域は、(車幅方向においてサイドメンバ26よりも内側にある)上ブッシュ48の鉛直方向上側にまで延在する。したがって、図2及び図6に示すように、下側ブラケット30は、鉛直方向下側部分よりも鉛直方向上側部分が、車幅方向で外側に位置するように形成されている。それ故に、車輪に上記力Fが作用するときには、下側ブラケット36は、リーフスプリング40から主クロスメンバ30を介して伝達された上向きの力をより好適にサイドメンバ26に付与し、上記モーメントM2を生じさせることができる。このように、下側ブラケット36は、主クロスメンバ30や上ブッシュ48などを介してのリーフスプリング40とサイドメンバ26との間での力の伝達を担う力伝達部材として機能し得る。
【0033】
なお、本開示は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜に変形して実施することができる。
【0034】
例えば、上記実施形態では、アッパーアームとショックアブソーバとは単一の上側ブラケット24に接続された。しかし、上側ブラケット24は、単一の部材であることに限定されず、2つ以上の部材から構成されてもよい。例えば、上側ブラケット24は、アッパーアームの接続用の2つの離間したアッパーアームブラケットと、それらの間に設けられるショックアブソーバ接続用ブラケットとから構成されてもよい。これら3つのブラケットは、完全に分離独立してもよいが、好ましくは、一体として形成され、又は一体に統合される。
【0035】
なお、本開示の技術の各構成要素は、(上記の如き材料で作製されることに限定されず)種々の材料から作製され得る。例えば、支持部44は鉄鋼材料で作製されることに限定されず、その他の材料、例えば非鉄金属材料や樹脂材料から作製されてもよい。また、支持部44は、ロワアームと異なる材料から作製されてもよい。
【0036】
また、本開示の技術は、車両の前輪に対して適用されることに限定されず、後輪に対して適用されてもよい。
【符号の説明】
【0037】
10 サスペンション装置
14 アッパーアーム
16 ロワアーム
18 ナックル
24 上側ブラケット(第1ブラケット)
26 サイドメンバ
28 サスクロスメンバ
30 主クロスメンバ
32 副クロスメンバ
34 縦メンバ
36 下側ブラケット(第2ブラケット)
40 リーフスプリング
46 ショックアブソーバ(衝撃吸収装置)
47 ブッシュ部材
48 上ブッシュ
50 下ブッシュ
図1
図2
図3
図4
図5
図6