(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】化粧シート及び化粧板並びに化粧シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 33/00 20060101AFI20220412BHJP
E04F 13/07 20060101ALN20220412BHJP
E04F 13/08 20060101ALN20220412BHJP
【FI】
B32B33/00
E04F13/07 B
E04F13/08 E
(21)【出願番号】P 2018007150
(22)【出願日】2018-01-19
【審査請求日】2020-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 裕輝
【審査官】増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-186410(JP,A)
【文献】特開2003-312118(JP,A)
【文献】特開2017-136751(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
E04F 13/08
E04F 13/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層の上に、複数種類のパール顔料を使用したパール柄層、透明樹脂層、及び表面保護層がこの順に積層され、
前記パール柄層は、第1パール顔料
とメジウムとを少なくとも含む第1パール柄層と、第2パール顔料
とメジウムとを少なくとも含む第2パール柄層とが積層されてなり、
前記第1パール柄層は、インキの集合からなり、前記第1パール柄層の単位面積当たりの色の濃淡を256階調に分解した際のヒストグラム平均値が100以上
180以下の範囲内にあり、
且つ前記第2パール柄層は、インキの集合からなり、前記第2パール柄層の単位面積当たりの色の濃淡を256階調に分解した際のヒストグラム平均値が100以上
180以下の範囲内にある
、
または、
前記第1パール柄層は、インキの集合からなり、前記第1パール柄層の単位面積当たりの色の濃淡を256階調に分解した際のヒストグラム平均値が60以上180以下の範囲内にあり、且つ前記第2パール柄層は、インキの集合からなり、前記第2パール柄層の単位面積当たりの色の濃淡を256階調に分解した際のヒストグラム平均値が140以上180以下の範囲内にあり、
前記第1パール柄層に含まれる前記メジウムと、前記第2パール柄層に含まれる前記メジウムは、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、及びアクリルポリオール樹脂のいずれかであり、
前記第1パール顔料と前記第2パール顔料は、マイカ、酸化チタン及び酸化鉄を含む顔料、マイカ、酸化チタン及び酸化スズを含む顔料、及び、マイカ及び酸化鉄を含む顔料のいずれかであり、
前記第1パール顔料及び前記第2パール顔料の各粒径は、1μm以上100μm以下の範囲内であり、
前記第1パール柄層は、前記メジウム100質量部に対して、前記第1パール顔料を0質量部より大きく33質量部以下の範囲内で含み、
前記第2パール柄層は、前記メジウム100質量部に対して、前記第2パール顔料を0質量部より大きく33質量部以下の範囲内で含むことを特徴とする化粧シート。
【請求項2】
前記第1パール柄層の前記ヒストグラム平均値は、前記第2パール柄層の前記ヒストグラム平均値よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。
【請求項3】
前記第1パール柄層及び前記第2パール柄層はそれぞれ、構成するインキの高さ及び底面積を変化させることで階調表現が行われることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の化粧シート。
【請求項4】
前記第1パール柄層の単位面積及び前記第2パール柄層の単位面積はそれぞれ、1cm×1cmであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載
の化粧シート。
【請求項5】
前記第1パール顔料は、マイカ、酸化チタン及び酸化鉄を含む顔料であり、
前記第2パール顔料は、マイカ、酸化チタン及び酸化スズを含む顔料であり、
前記第1パール顔料及び前記第2パール顔料の各粒径は、5μm以上30μm以下の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の化粧シート。
【請求項6】
前記第1パール顔料に占める前記マイカの比率は、44.0以上46.0以下の範囲内であり、
前記第1パール顔料に占める前記酸化チタンの比率は、46以上47.0以下の範囲内であり、
前記第1パール顔料に占める前記酸化鉄の比率は、9.0以上9.5以下の範囲内であり、
前記第2パール顔料に占める前記マイカの比率は、60.0以上62.0以下の範囲内であり、
前記第2パール顔料に占める前記酸化チタンの比率は、37.5以上39.5以下の範囲内であり、
前記第2パール顔料に占める前記酸化スズの比率は、0.5以上2.0以下の範囲内であることを特徴とする請求項5に記載の化粧シート。
【請求項7】
基材と、前記基材の一方の面に形成された請求項1から請求項
6のいずれか1項に記載の化粧シートと、を備えることを特徴とする化粧板。
【請求項8】
基材層の上に、複数種類のパール顔料を使用したパール柄層、透明樹脂層、及び表面保護層をこの順に積層する工程を有し、
前記パール柄層は、第1パール顔料
とメジウムとを少なくとも含む第1パール柄層の上に、第2パール顔料
とメジウムとを少なくとも含む第2パール柄層を積層して形成され、
前記第1パール柄層及び前記第2パール柄層はそれぞれ、へリオ版を用いて形成され、
前記第1パール柄層は、インキの集合からなり、前記第1パール柄層の単位面積当たりの色の濃淡を256階調に分解した際のヒストグラム平均値が100以上
180以下の範囲内にあり、
且つ前記第2パール柄層は、インキの集合からなり、前記第2パール柄層の単位面積当たりの色の濃淡を256階調に分解した際のヒストグラム平均値が100以上
180以下の範囲内にある
、
または、
前記第1パール柄層は、インキの集合からなり、前記第1パール柄層の単位面積当たりの色の濃淡を256階調に分解した際のヒストグラム平均値が60以上180以下の範囲内にあり、且つ前記第2パール柄層は、インキの集合からなり、前記第2パール柄層の単位面積当たりの色の濃淡を256階調に分解した際のヒストグラム平均値が140以上180以下の範囲内にあり、
前記第1パール柄層に含まれる前記メジウムと、前記第2パール柄層に含まれる前記メジウムは、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、及びアクリルポリオール樹脂のいずれかであり、
前記第1パール顔料と前記第2パール顔料は、マイカ、酸化チタン及び酸化鉄を含む顔料、マイカ、酸化チタン及び酸化スズを含む顔料、及び、マイカ及び酸化鉄を含む顔料のいずれかであり、
前記第1パール顔料及び前記第2パール顔料の各粒径は、1μm以上100μm以下の範囲内であり、
前記第1パール柄層は、前記メジウム100質量部に対して、前記第1パール顔料を0質量部より大きく33質量部以下の範囲内で含み、
前記第2パール柄層は、前記メジウム100質量部に対して、前記第2パール顔料を0質量部より大きく33質量部以下の範囲内で含むことを特徴とする化粧シートの製造方法。
【請求項9】
前記第1パール顔料は、マイカ、酸化チタン及び酸化鉄を含む顔料であり、
前記第2パール顔料は、マイカ、酸化チタン及び酸化スズを含む顔料であり、
前記第1パール顔料及び前記第2パール顔料の各粒径は、5μm以上30μm以下の範囲内であることを特徴とする請求項8に記載の化粧シートの製造方法。
【請求項10】
前記第1パール顔料に占める前記マイカの比率は、44.0以上46.0以下の範囲内であり、
前記第1パール顔料に占める前記酸化チタンの比率は、46以上47.0以下の範囲内であり、
前記第1パール顔料に占める前記酸化鉄の比率は、9.0以上9.5以下の範囲内であり、
前記第2パール顔料に占める前記マイカの比率は、60.0以上62.0以下の範囲内であり、
前記第2パール顔料に占める前記酸化チタンの比率は、37.5以上39.5以下の範囲内であり、
前記第2パール顔料に占める前記酸化スズの比率は、0.5以上2.0以下の範囲内であることを特徴とする請求項9に記載の化粧シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧シート及び化粧板並びに化粧シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の化粧シートとしては、例えば、特許文献1に記載の化粧シートがある。この特許文献1に記載の技術では、見る角度や光の加減によって見た目の変化が生じる意匠性を付与するため、化粧シートに対し、パール顔料を使用したパール柄層を設けている。
ここで、パール顔料を複数種類使用することで、さらに意匠性を向上させることも考えられる。しかしながら、単純にパール柄層を複層重ねると、各パール柄層を構成するインキの塗布量や面積領域の組み合わせ等によっては、密着強度(剥離強度)が低下する可能性がある。そのため、パール柄層で構成される柄等が制約される可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来は、上記密着強度(剥離強度)の低下を回避するために、例えば、各パール柄層のインキの網点の面積比率を制限したり、パール柄層の重なり部分の塗布量を各層50%以下に設定する必要があった。このため、従来技術に係る、複数のパール柄層を備えた化粧シートでは、密着強度を維持しつつ、意匠性を向上させることは困難であった。
本発明は、上記の点に着目したもので、密着強度の低下を抑制しつつ、パール柄層による意匠性を向上可能な化粧シート及び化粧板並びに化粧シートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
課題を解決するために、本発明の一態様である化粧シートは、基材層の上に、複数種類のパール顔料を使用したパール柄層、透明樹脂層、及び表面保護層がこの順に積層され、前記パール柄層は、第1パール顔料を少なくとも含む第1パール柄層と、第2パール顔料を少なくとも含む第2パール柄層とが積層されてなり、前記第1パール柄層は、インキの集合からなり、前記第1パール柄層の単位面積当たりの色の濃淡を256階調に分解した際のヒストグラム平均値が100以上256以下の範囲内にあり、前記第2パール柄層は、インキの集合からなり、前記第2パール柄層の単位面積当たりの色の濃淡を256階調に分解した際のヒストグラム平均値が100以上256以下の範囲内にある。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一態様によれば、第1パール柄層の単位面積当たりのヒストグラム平均値と第2パール柄層の単位面積当たりのヒストグラム平均値とをそれぞれ100以上256以下の範囲内となるように調整したため、第1パール柄層や第2パール柄層が重なるように配置しても、凝集破壊を抑制でき、複数のパール顔料を使用しても密着強度の低下を抑制できる。
更に、本発明の一態様によれば、第1パール柄層と第2パール柄層との重なりを、上記ヒストグラム平均値を用いて制限しているため、従来は、密着低下が懸念され回避されていた高塗布量部を化粧シート中に形成することができる。これにより密着強度を維持しつつ、幅広い階調表現を可能とする意匠性の高い化粧シート及びその化粧シートを用いた化粧板、並びその化粧シートの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施形態に係る化粧シート及び化粧板の構成を示す模式的断面図である。
【
図2】ヘリオ版及びポーシェル版の一例を示す断面説明図である。(a)はヘリオ版の模式的断面図である。(b)はポーシェル版の模式的断面図である。
【
図3】変形例に係る化粧シート及び化粧板の構成を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
ここで、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造等が下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0009】
<化粧シート100>
化粧シート100は、
図1に示すように、下台である基材層1の一方の面(表面)に、ベタ層2、パール柄層3、アンカーコート層4、接着剤層(接着性樹脂層)5、上台である透明樹脂層6、及び表面保護層7、8、9がこの順に積層されている。また、基材層1の他方の面(裏面)に、裏面プライマー層10が形成されている。
【0010】
<化粧板110>
また、化粧板110は、基材20の一方の面に対し、化粧シート100の裏面プライマー層10側の面が接着剤層21を介して貼り付けられる(形成される)ことにより形成される。すなわち、本実施形態に係る化粧板110は、基材20の一方の面側に、接着剤層21、裏面プライマー層10、基材層1、ベタ層2、パール柄層3、アンカーコート層4、接着剤層5、透明樹脂層6、及び表面保護層7、8、9がこの順に積層されている。
【0011】
<基材層1>
基材層1は、樹脂フィルムから構成される。樹脂フィルムとしては、例えば、着色ポリプロピレン樹脂を使用できる。基材層1の厚さは、例えば、30μm以上200μm以下とする。
<ベタ層2>
ベタ層2は、基材層1とパール柄層3との接着性を向上するための層である。ベタ層2としては、例えば、二液ウレタン樹脂と、塩酢ビ樹脂(塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体の樹脂)とを混合した樹脂を使用できる。樹脂には、着色のために有機顔料が添加されている。ベタ層2は、例えば、基材層1の上にベタ層2構成用の樹脂を塗工して形成する。乾燥後の塗布量は、例えば、2g/m2とする。なお、ベタ層2は絵柄層としてもよい。また、ベタ層2を絵柄層とした場合には、絵柄層に表現される絵柄はヘリオ版を用いて表現されてもよい。
【0012】
<パール柄層3>
パール柄層3は、複数種類のパール顔料を用いて形成される。具体的には、パール柄層3は、第1パール顔料を少なくとも含む第1パール柄層3Aと、第2パール顔料を少なくとも含む第2パール柄層3Bとが積層されている。なお、第1パール柄層3A及び第2パール柄層3Bはそれぞれ、メジウムを含んでいてもよい。
第1パール顔料は、例えば、マイカ、酸化チタン及び酸化鉄を含む金色のパール顔料である。
第1パール顔料に占めるマイカの比率は、例えば、44.0以上46.0以下とする。
第1パール顔料に占める酸化チタンの比率は、例えば、46以上47.0以下とする。
第1パール顔料に占める酸化鉄の比率は、例えば、9.0以上9.5以下とする。
【0013】
また、第2パール顔料は、例えば、マイカ、酸化チタン及び酸化スズを含む銀色のパール顔料である。
第2パール顔料に占めるマイカの比率は、例えば、60.0以上62.0以下とする。
第2パール顔料に占める酸化チタンの比率は、例えば、37.5以上39.5以下とする。
第2パール顔料に占める酸化スズの比率は、例えば、0.5以上2.0以下とする。
これにより、第1パール柄層3Aで構成される柄、つまり第1パール顔料(金色のパール顔料)の柄と、第2パール柄層3Bで構成される柄、つまり第2パール顔料(銀色のパール顔料)の柄とを合成でき、パール柄層3による意匠性の向上効果を増大することができる。
【0014】
上記の説明では、第1パール顔料を金色のパール顔料とし、第2パール顔料を銀色のパール顔料とした場合を例示した。第1パール顔料と第2パール顔料とは、粒径が同じものであれば、第1パール顔料を銀色のパール顔料とし第2パール顔料を金色のパール顔料としてもよいし、第1パール顔料と第2パール顔料の両方をともに、銀色のパール顔料若しくは金色のパール顔料としてもよい。また、各パール柄層のパール顔料として、銀色のパール顔料や金色のパール顔料以外のパール顔料を採用してもよい。例えば、マイカ、酸化鉄からなる赤色のパール顔料などであってもよい。
【0015】
第1パール柄層3Aで構成される柄と第2パール柄層3Bで構成される柄とは重なっていることが好ましい。重なっているとは、例えば相対的に幅が狭い側の柄が、他方の柄に対し、50%以上の面積で重なっていればよい。
第1パール柄層3Aで構成される柄と第2パール柄層3Bで構成される柄とが重なっている場合、より奥行きのある立体的なパール柄の表現が可能となる。
本実施形態では、第1パール柄層3Aがベタ層2側に位置し、第2パール柄層3Bがアンカーコート層4側に位置している。第2パール柄層3Bと第1パール柄層3Aとのそれぞれは、例えば、メジウムにパール顔料を含有してなる塗工液(インキ)を印刷で塗工して形成される。
【0016】
また、第1パール柄層3A及び第2パール柄層3Bのパール顔料(第1パール顔料及び第2パール顔料)の粒径は、1μm以上100μm以下、好ましくは5μm以上50μm以下の範囲に設定する。第1パール柄層3A及び第2パール柄層3Bそれぞれの厚さは、例えば、5μm以上50μm以下とする。
また、メジウムとしては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、アクリルポリオール樹脂等を使用できる。また、必要に応じて、イソシアネート系の硬化剤、シリコンオイル等の滑剤やワックス等の耐摩強化剤を1%以上5%以下添加してもよい。
【0017】
ここで、第1パール柄層3Aは、メジウム100質量部に対して、第1パール顔料を0質量部より大きく33質量部以下含み、第2パール柄層3Bは、メジウム100質量部に対して、第2パール顔料を0質量部より大きく33質量部以下含むようにしてもよい。
これにより、第1パール柄層3Aや第2パール柄層3Bの凝集破壊を抑制でき、密着強度(剥離強度)を向上できる。
更に、本実施形態では、第1パール柄層3Aは、例えば
図2(a)に示すようなヘリオ版を用いて形成される。第1パール柄層3Aは、インキの集合からなり、第1パール柄層3Aの単位面積当たりの色の濃淡を0から256までの256階調に分解した際のヒストグラム平均値が100以上256以下の範囲内となっていて、例えば、構成するインキの高さ及び底面積を変化させることで階調表現が行われている。この第1パール柄層3Aの柄は、例えば木目導管などからなる。
【0018】
また、第2パール柄層3Bは、第1パール柄層3Aと同様に、例えば
図2(a)に示すようなヘリオ版を用いて形成される。第2パール柄層3Bは、インキの集合からなり、第2パール柄層3Bの単位面積当たりの色の濃淡を0から256までの256階調に分解した際のヒストグラム平均値が100以上256以下の範囲内となっていて、例えば、構成するインキの高さ及び底面積を変化させることで階調表現が行われている。
なお、上記「単位面積」とは、例えば、1cm×1cmの面積をいう。また、対象となる柄を画像処理において横軸をパール輝度、縦軸を画素数としてヒストグラムを作成する際、各画素を8ビットで処理することで、対象となる柄を256階調で表現する。こうして、1cm
2当たりの平均値、即ちヒストグラム平均値を出して、対象となる柄の濃淡を算出する。
【0019】
第1パール柄層3A及び第2パール柄層3Bはそれぞれ、上述したヘリオ版を用いて形成してもよいし、例えば
図2(b)に示すようなポーシェル版を用いて形成されてもよい。ポーシェル版を用いる場合には、第1パール柄層3A及び第2パール柄層3Bを構成する各インキの高さが同じであるため、第1パール柄層3A及び第2パール柄層3Bはそれぞれ、構成するインキの底面積を変化させることで階調表現が行われる。
また、第1パール柄層3Aはヘリオ版を用いて形成され、第2パール柄層3Bはポーシェル版を用いて形成されてもよい。また、第1パール柄層3Aはポーシェル版を用いて形成され、第2パール柄層3Bはヘリオ版を用いて形成されてもよい。
ここで、ポーシェル版の各セルは、例えば深さが同じで角柱などの柱状となっていて、例えば底面積を変化させることで階調表現を行うことができる。一方、ヘリオ版の各セルは、例えば、四角柱などの錐体形状となっていて、例えば高さと底面積を変化させることで階調表現を行うことができる。
【0020】
なお、一般に、ヘリオ版を使用した場合に比べて、ポーシェル版を使用した方が、単位面積当たりの塗布量が増大するため、ポーシェル版をヘリオ版と組み合わせることで、輝度感などの意匠表現の幅を広げることができる。
また、塗布量(体積)については、例えば、ポーシェル版の各セルを四角柱形状とし、ヘリオ版の各セルを四角錐形状とし、100%の領域でセルの縦及び横の長さがセルの高さと等しい場合、ポーシェル版の塗布量は、ヘリオ版の塗布量に対し、10%の領域では30倍、30%の領域では10倍、50%の領域では6倍、100%の領域では3倍となる。
【0021】
<アンカーコート層4>
アンカーコート層4は、パール柄層3と透明樹脂層6との接着性を向上させるための層である。アンカーコート層4としては、例えば、二液ウレタン樹脂を使用できる。アンカーコート層4は、例えば、パール柄層3(第2パール柄層3B)の上にアンカーコート層4用の二液ウレタン樹脂を塗工して形成する。乾燥後の塗布量は、例えば、1.2g/m2とする。
【0022】
<接着剤層5>
接着剤層5は、透明な接着剤からなる層である。透明な接着剤としては、例えば、酸変性ポリプロピレン樹脂を使用できる。接着剤層5の厚さは、例えば、12μmとする。
<透明樹脂層6>
透明樹脂層6は、パール柄層3で構成される柄が透けて見える、透明な樹脂からなる層である。透明な樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂を使用できる。例えば、ポリオレフィン(PP)樹脂がある。透明樹脂層6の厚さは、例えば、68μmとする。
【0023】
<表面保護層7、8、9>
表面保護層7、8、9は、透明樹脂層6やパール柄層3等を保護するために化粧シート100の表層に設けられる透明な樹脂層である。表面保護層7(以下、「第1表面保護層7」とも呼ぶ)は、透明樹脂層6側に位置し、表面保護層9(以下、「第3表面保護層9」とも呼ぶ)は、表層側に位置し、表面保護層8(以下、「第2表面保護層8」とも呼ぶ)は、第1表面保護層7と第3表面保護層9との間に位置している。ここで、第1表面保護層7はアンカー層として機能し、第2表面保護層8はプライマー層として機能してもよい。
第1表面保護層7と第2表面保護層8とのそれぞれは、例えば、二液ウレタン樹脂を使用できる。乾燥後の塗布量は、例えば、3g/m2とする。また、第3表面保護層9としては、例えば、紫外線硬化型樹脂を使用できる。乾燥後の塗布量は、例えば、6g/m2とする。
【0024】
<裏面プライマー層10>
裏面プライマー層10は、基材層1と基材20との接着性を向上させるためのアンカー層である。裏面プライマー層10としては、例えば、二液ウレタン樹脂を使用できる。
<接着剤層21>
接着剤層21は、接着剤からなる層である。接着剤としては、例えば、水性ビニルウレタン樹脂を使用できる。乾燥後の塗布量は、例えば、6g/m2とする。
<基材20>
基材20としては、例えば、合板、MDF(中密度繊維板)、パーティクルボード層、金属板、無機質系基材を使用できる。基材20の厚さは、例えば、5mmとする。
【0025】
<本実施形態の効果>
本実施形態に係る発明は、以下の効果を奏する。
(1)本実施形態に係る化粧シート100は、基材層1の上に、複数種類のパール顔料を使用したパール柄層3、透明樹脂層6、及び表面保護層7、8、9がこの順に積層され、パール柄層3は、第1パール顔料を少なくとも含む第1パール柄層3Aと、第2パール顔料を少なくとも含む第2パール柄層3Bとが積層されてなり、第1パール柄層3Aは、インキの集合からなり、第1パール柄層3Aの単位面積当たりの色の濃淡を256階調に分解した際のヒストグラム平均値が100以上256以下の範囲内にあり、第2パール柄層3Bは、インキの集合からなり、第2パール柄層3Bの単位面積当たりの色の濃淡を256階調に分解した際のヒストグラム平均値が100以上256以下の範囲内にある。
【0026】
このような構成であれば、第1パール柄層3Aの単位面積当たりのヒストグラム平均値と第2パール柄層3Bの単位面積当たりのヒストグラム平均値とを調整したため、第1パール柄層3Aや第2パール柄層3Bが重なっても凝集破壊を抑制でき、密着強度の低下を抑制できる。
更に、本実施形態に係る化粧シート100であれば、第1パール柄層3Aと第2パール柄層3Bとの重なりを、ヒストグラム平均値を用いて制限しているため、従来は、密着低下が懸念され回避されていた高塗布量部を化粧シート中に形成することができる。これにより、幅広い階調表現が可能となり、化粧シートの意匠性を高めることができる。
【0027】
(2)また、本実施形態に係る化粧シート100は、第1パール柄層3Aのヒストグラム平均値が第2パール柄層3Bのヒストグラム平均値より小さくてもよい。
このような構成であれば、第1パール柄層3Aと第2パール柄層3Bとの密着強度の低下をさらに抑制できる。
(3)本実施形態に係る化粧シート100は、第1パール柄層3A及び第2パール柄層3Bを構成するインキの高さ及び底面積をそれぞれ変化させることで階調表現が行われていてもよい。
このような構成であれば、第1パール柄層3A及び第2パール柄層3Bの階調表現をそれぞれ高く設定することで、より奥行き感が増大する。
【0028】
(4)本実施形態に係る化粧シート100は、第1パール顔料及び第2パール顔料はそれぞれ、少なくともマイカを含み、第1パール柄層3A及び第2パール柄層3Bはそれぞれ、少なくともメジウムを含んでもよい。
このような構成であれば、パール柄層3による意匠性の向上効果を増大できる。
(5)本実施形態に係る化粧シート100は、第1パール柄層3Aで構成される柄と第2パール柄層3Bで構成される柄とが重なっていてもよい。
このような構成であれば、パール柄が重なることで奥行き感がでて、パール柄層3による意匠性の向上効果を増大できる。
(6)本実施形態に係る化粧シート100は、第1パール柄層3Aの単位面積及び第2パール柄層3Bの単位面積はそれぞれ、1cm×1cmであってもよい。
このような構成であれば、パール柄層3による意匠性の向上効果を確実に増大できる。
【0029】
(7)本実施形態に係る化粧板110は、基材20と、基材20の一方の面に形成された化粧シート100と、を備えている。
このような構成であれば、第1パール柄層3Aの単位面積当たりのヒストグラム平均値と第2パール柄層3Bの単位面積当たりのヒストグラム平均値とを調整したため、第1パール柄層3Aや第2パール柄層3Bが重なっても凝集破壊を抑制でき、化粧板における密着強度の低下を抑制できる。
更に、本実施形態に係る化粧板110であれば、第1パール柄層3Aと第2パール柄層3Bとの重なりを、ヒストグラム平均値を用いて制限しているため、従来は、密着低下が懸念され回避されていた高塗布量部を化粧板中に形成することができる。これにより、幅広い階調表現が可能となり、化粧板の意匠性を高めることができる。
【0030】
(8)本実施形態に係る化粧シート100の製造方法は、基材層1の上に、複数種類のパール顔料を使用したパール柄層3、透明樹脂層6、及び表面保護層7、8、9をこの順に積層する工程を有し、パール柄層3は、第1パール顔料を少なくとも含む第1パール柄層3Aの上に、第2パール顔料を少なくとも含む第2パール柄層3Bを積層して形成され、第1パール柄層3A及び第2パール柄層3Bはそれぞれ、へリオ版を用いて形成され、第1パール柄層3Aは、インキの集合からなり、第1パール柄層3Aの単位面積当たりの色の濃淡を256階調に分解した際のヒストグラム平均値が100以上256以下の範囲内にあり、第2パール柄層3Bは、インキの集合からなり、第2パール柄層3Bの単位面積当たりの色の濃淡を256階調に分解した際のヒストグラム平均値が100以上256以下の範囲内にある。
【0031】
このような構成であれば、第1パール柄層3Aの単位面積当たりのヒストグラム平均値と第2パール柄層3Bの単位面積当たりのヒストグラム平均値とを調整したため、第1パール柄層3Aや第2パール柄層3Bが重なっても凝集破壊を抑制でき、化粧シートにおける密着強度の低下を抑制できる。
更に、本実施形態に係る製造方法により製造された化粧シート100であれば、第1パール柄層3Aと第2パール柄層3Bとの重なりを、ヒストグラム平均値を用いて制限しているため、従来は、密着低下が懸念され回避されていた高塗布量部を化粧板中に形成することができる。これにより、幅広い階調表現が可能となり、化粧シートの意匠性を高めることができる。
【0032】
(変形例)
本実施形態では、ベタ層2上にパール柄層3を形成する例を示したが、他の構成を採用することもできる。例えば、
図3に示すように、ベタ層2を省略してもよい。
[実施例]
以下に、本実施形態の実施例及び比較例を示す。なお、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
(実施例1:ベタ層2有り)
実施例1では、着色ポリプロピレン樹脂を用いて基材層1を形成した。基材層1の厚さは70μmとした。
続いて、基材層1の一方の面に、二液ウレタン樹脂と塩酢ビ樹脂とを混合した樹脂に有機顔料を添加した塗工液を塗工してベタ層2を形成した。乾燥後の塗布量は2g/m
2とした。
【0033】
続いて、ベタ層2上に、ヘリオ版(150線/25.4mm)を用いた、メジウムを主成分とする透明な樹脂に、マイカ、酸化チタン及び酸化鉄を含む第1パール顔料を含む塗工液を塗工して、金色の第1パール柄層3Aを形成した。第1パール顔料としては、日本光研工業(株)のMC302を使用した。第1パール顔料の粒径は、5μm以上30μm以下とした。また、ヘリオ版を用いて形成された第1パール柄層3Aの単位面積(1cm×1cm)当たりの色の濃淡を256階調に分解した際のヒストグラム平均値は、100以上256以下とした。
【0034】
続いて、第1パール柄層3A上に、ヘリオ版(150線/25.4mm)を用いた、メジウムを主成分とする透明な樹脂に、マイカ、酸化チタン及び酸化スズを含む第2パール顔料を含む塗工液を塗工して、銀色の第2パール柄層3Bを形成した。第2パール顔料としては、日本光研工業(株)のMF100RNを使用した。第2パール顔料の粒径は、5μm以上30μm以下とした。また、ヘリオ版を用いて形成された第2パール柄層3Bの単位面積(1cm×1cm)当たりの色の濃淡を256階調に分解した際のヒストグラム平均値は、100以上256以下とした。なお、第1パール柄層3A及び第2パール柄層3Bの各単位面積(1cm×1cm)当たりの色の濃淡を256階調に分解した際の「0」は「濃(黒)」に対応し、「256」は「淡(白)」に対応する。
【0035】
このように、ベタ層2上に、第1パール柄層3Aと、第2パール柄層3Bとをこの順に積層することにより、パール柄層3を形成した。
続いて、パール柄層3上に、二液ウレタン樹脂を塗工してアンカーコート層4を形成した。乾燥後の塗布量は1.2g/m2とした。
続いて、アンカーコート層4上に、酸変性ポリプロピレン樹脂を用いて接着剤層5を形成した。接着剤層5の厚さは、12μmとした。
続いて、接着剤層5上に、ポリオレフィン(PP)樹脂を用いて透明樹脂層6を形成した。透明樹脂層6の厚さは、68μmとした。
【0036】
続いて、透明樹脂層6の上に、二液ウレタン樹脂を塗工して第1表面保護層7を形成した。乾燥後の塗布量は、3g/m2とした。
続いて、第1表面保護層7の上に、二液ウレタン樹脂を塗工して第2表面保護層8を形成した。乾燥後の塗布量は、3g/m2とした。
続いて、第2表面保護層8の上に、紫外線硬化型樹脂を塗工して第3表面保護層9を形成した。乾燥後の塗布量は、6g/m2とした。
また、基材層1の他方の面、つまり、ベタ層2と反対側の面に、二液ポリエステルポリオールとセルロース樹脂とを配合した塗工液を塗工して裏面プライマー層10を形成した。乾燥後の塗布量は、1.2g/m2とした。
【0037】
このように、基材層1の一方の面に、ベタ層2、パール柄層3、アンカーコート層4、接着剤層5、透明樹脂層6、及び表面保護層7、8、9をこの順に積層し、基材層1の他方の面に、裏面プライマー層10を形成することで、化粧シート100を形成した。
続いて、裏面プライマー層10の上に、水性ビニルウレタン樹脂を塗工して接着剤層21を形成した。乾燥後の塗布量は、6g/m2とした。続いて、接着剤層21を介して、化粧シート100に基材20を貼り付けた。これにより、化粧板110を形成した。
【0038】
(実施例2:ベタ層2無し)
実施例2では、ベタ層2を省略した。それ以外は実施例1と同様の構成とした。
(評価判定)
以上の実施例1及び実施例2の化粧板について、次の評価を実施した。
[密着強度]
密着強度の測定に用いるサンプル版(サンプル化粧板)として、実施例1及び実施例2の各実施例では、第1パール柄層3A及び第2パール柄層3Bの各単位面積(1cm×1cm)当たりのヒストグラム平均値、即ち階調設定を60、100、140、180とし、第1パール柄層3A及び第2パール柄層3Bがそれぞれ重なるように多面付けしたものを用いた。また、各実施例では、サンプル版(サンプル化粧板)について、常態(常温)、及び60℃、80℃、40℃/湿度90%の各条件下でそれぞれ2000時間を経過させた状態で密着強度の測定を実施した。
【0039】
密着強度の測定は、多面付けしたサンプル版(サンプル化粧板)の端部を1インチ巾(幅)で人為的に基材20から剥離し、常温で引張試験機により引張荷重を加えて、剥離時の荷重を測定した。引張速度は50mm/分とした。また、各階調領域において、密着強度を3点測定した。そして、測定した全ての点において密着強度(剥離時の荷重)が19.6N/インチ以上となる階調領域を合格(○)とし、それ未満を不合格(×)とした。
密着強度の評価結果を表1に示す。なお、表1では、横軸に第1パール柄層(金のパール柄層)3Aの上記各階調を示し、縦軸に第2パール柄層(銀のパール柄層)3Bの上記各階調を示している。ここで、横軸における「なし」とは、階調がないことを意味する。
また、密着強度の実測値を表2に示す。なお、表2には、各階調領域で測定した3点の密着強度(剥離時の荷重)と、その平均値を記載した。また、表2に示した各番号は、表1に示した各階調領域の領域番号に対応している。
【0040】
【0041】
【0042】
表1から分かるように、本発明の範囲のヒストグラム平均値であれば、目的の剥離強度が確保されていることが分かる。
なお、実施例2においても、実施例1よりも若干剥離強度が小さくなったが、実施例1とほぼ同等の密着強度があり、実施例2の密着強度の評価は、表1と同じであった。よって、ここでは、その説明を省略する。
【0043】
以上、特定の実施形態を参照して本発明を説明したが、これらの説明によって発明を限定することを意図するものではない。本発明の説明を参照することにより、当業者には、開示された実施形態の種々の変形例とともに本発明の別の実施形態も明らかである。したがって、特許請求の範囲は、本発明の範囲及び要旨に含まれるこれらの変形例又は実施形態も網羅すると解すべきである。
【符号の説明】
【0044】
100…化粧シート
110…化粧板
1…基材層
2…ベタ層
3…パール柄層
3A…第1パール柄層
3B…第2パール柄層
4…アンカーコート層
5…接着剤層
6…透明樹脂層
7、8、9…表面保護層
10…裏面プライマー層
20…基材
21…接着剤層