(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】真空断熱材用積層体及びそれを用いた真空断熱材
(51)【国際特許分類】
F16L 59/065 20060101AFI20220412BHJP
F16L 59/02 20060101ALI20220412BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20220412BHJP
B32B 7/12 20060101ALI20220412BHJP
【FI】
F16L59/065
F16L59/02
B32B27/00 A
B32B7/12
(21)【出願番号】P 2018013555
(22)【出願日】2018-01-30
【審査請求日】2020-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山下 香往里
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 隆太
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-149475(JP,A)
【文献】特開2014-214856(JP,A)
【文献】特開2017-133694(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 59/065
F16L 59/02
B32B 27/00
B32B 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱芯材を真空断熱材用積層体で被覆し、内部を脱気し真空状態とした真空断熱材に用いられる真空断熱材用積層体であって、
該真空断熱材用積層体が、少なくとも
第1のガスバリア層と第2のガスバリア層と熱融着層とを
この順に有し、
前記第1のガスバリア層が無機酸化物を蒸着薄膜として設けた透明蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムであり、
前記第2のガスバリア層がアルミニウム蒸着エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルムであり、
前記熱融着層が、環状ポリオレフィン系樹脂を含み、
前記真空断熱材用積層体の揮発成分量が、下記測定条件において、100ng/g以下であることを特徴とする真空断熱材用積層体。
(測定条件)
100mm×100mmの積層体を容量約1Lの真空容器に入れて真空状態とし、90℃で60分加熱した後、前記真空容器内で発生した揮発成分量をガスクロマトフラフィー法により測定する。
【請求項2】
前記
第1のガスバリア層の前記熱融着層が位置する側の面とは反対側の面に、保護層が接着層を介して配置されていることを特徴とする請求項1に記載の真空断熱材用積層体。
【請求項3】
真空断熱材用積層体を用いた真空断熱材において、請求項1または請求項2のいずれかに記載の真空断熱材用積層体を用いてなることを特徴とする真空断熱材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空断熱材用積層体及びそれを用いた真空断熱材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化のため温室効果ガスの削減が推進されており、電気製品や車輌、設備機器ならびに建物等の省エネルギー化が求められている。
【0003】
中でも、消費電力量の低減の観点から、電気製品、車輌、建築等の物品への真空断熱材の採用が進められている。これらの物品に真空断熱材を備えることで、物品全体としての断熱性能を向上させることが可能となり、エネルギー削減効果が期待される。
【0004】
真空断熱材は、芯材を積層体で包み、芯材の周囲を真空状態にし、気体による熱伝導率を限りなくゼロに近づけることにより、断熱性能を高めた断熱材である。
【0005】
真空断熱材は、一般に、対向させた2枚の外装材(積層体)の周縁を熱で融着させて袋体とし、その中に発泡樹脂や繊維材等の芯材を入れ、脱気して内部を真空状態とし、袋体の開口を封止して密閉することで形成されている。
【0006】
真空断熱材は、その内部が高真空状態であることから、内部での空気の対流による熱移動が遮断されるため、高い断熱性能を発揮することができる。
【0007】
真空断熱材の断熱性能を長期間維持するためには、内部の真空状態を保持する必要がある。そのため、真空断熱材に用いられる外装材には、外部からガスが透過することを防止するためのガスバリア性、芯材を覆って密着封止するための熱接着性等の種々の機能が要求され、上記外装材としては、通常、これらの機能を備える複数の機能層の積層体が用いられる。
【0008】
例えば、特許文献1~3には、真空断熱材の芯材側から熱融着層、単層または多層のガスバリア層、および単層または多層の保護層がこの順で積層された外装材が開示されている。
【0009】
また、外装材である積層体を構成するこれらの機能層は、通常、層間接着層を介して積層される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2010-255938号公報
【文献】特開2011-89740号公報
【文献】特開2006-194297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、真空断熱材は、100℃以上の高温環境下で長期間使用すると、外装材である積層体の耐熱性が低いことで、上記積層体の劣化により真空断熱材内部の真空状態が維持できなくなり、その結果、長期間、断熱性能を発揮できないという問題がある。
【0012】
中でも、積層体を構成する機能層のうち熱融着層は、他の機能層よりも高温下での長期
暴露により劣化しやすく、構成材料によっては熱分解によりガスを発生する。熱融着層から発生したガスは、真空断熱材の内部に滞留してしまい、内部の真空度の低下を引き起こすこととなり、結果的に真空断熱材としての熱伝導率が向上し、断熱効果の低下を招いていた。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記の課題を解決すべくなされたもので、請求項1に記載の発明は、断熱芯材を真空断熱材用積層体で被覆し、内部を脱気し真空状態とした真空断熱材に用いられる真空断熱材用積層体であって、
該真空断熱材用積層体が、少なくとも第1のガスバリア層と第2のガスバリア層と熱融着層とをこの順に有し、
前記第1のガスバリア層が無機酸化物を蒸着薄膜として設けた透明蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムであり、
前記第2のガスバリア層がアルミニウム蒸着エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルムであり、
前記熱融着層が、環状ポリオレフィン系樹脂を含み、
前記真空断熱材用積層体の揮発成分量が、下記測定条件において、100ng/g以下であることを特徴とする真空断熱材用積層体である。
【0014】
(測定条件)
100mm×100mmの積層体を容量約1Lの真空容器に入れて真空状態とし、90℃で60分加熱した後、前記真空容器内で発生した揮発成分量をガスクロマトフラフィー法により測定する。
【0015】
請求項2に記載の発明は、前記第1のガスバリア層の前記熱融着層が位置する側の面とは反対側の面に、保護層が接着層を介して配置されていることを特徴とする請求項1に記載の真空断熱材用積層体である。
【0016】
請求項3に記載の発明は、真空断熱材用積層体を用いた真空断熱材において、請求項1または請求項2のいずれかに記載の真空断熱材用積層体を用いてなることを特徴とする真空断熱材である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の真空断熱材用積層体においては、層の組成により耐熱性を向上させることができ、高温環境下での長期使用が可能であるといった作用効果を奏する。
【0018】
すなわち、請求項1に記載の発明によれば、本発明の真空断熱材用積層体を用いた真空断熱材を長期間高温環境下で暴露した場合であっても、高い真空度が保持されることにより、低い熱伝導率を維持することが可能となる。
【0019】
また、請求項2に記載の発明によれば、保護層によりガスバリア層や熱融着層等の機能層を保護することができる。
【0020】
更に、請求項3に記載の発明によれば、芯材および上記芯材を覆うように対向して配置される積層体を有し、対向する上記外装材の周縁が封止された真空断熱材であって、対向する上記積層体の少なくとも一方は、ガスバリア層、および熱融着層を少なくとも有する真空断熱材を提供するものであり、真空断熱材が長期間高温下で暴露されても、積層体の劣化が抑制されるため、真空断熱材の全体の耐熱性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明に係る真空断熱材の一実施形態を説明するための断面模式図である。
【
図2】本発明に係る真空断熱材用積層体の一実施形態を説明するための断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施するための形態について、図を参照しながら詳細な説明を加える。
ただし、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0023】
尚、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には全て図面を通じて同一の参照符号を附し、重複する説明は省略する。
【0024】
図1は、本発明に係る真空断熱材の一実施形態を説明するための断面模式図である。芯材(3)は、真空断熱材用積層体(2)で被覆され封入されて、真空断熱材(1)を構成する。
【0025】
この時、内部は脱気され真空状態となっている。また、真空断熱材用積層体(2)は、熱融着層同士を対向する形で重ねて熱融着させて用いる。
【0026】
図2は、本発明に係る真空断熱材用積層体の一実施形態を説明するための断面模式図である。
【0027】
ここに示した発明を実施するための形態の例においては、ガスバリア層(21)として、ガスバリア層A(21A)と、ガスバリア層B(21B)とを、接着剤(24)を介して積層した2層構成とした例を示している。
【0028】
ガスバリア層(21)の一方の面には、接着剤(24)を介して、熱融着層(22)が設けられており、他方の面には、接着剤(24)を介して、保護層(23)が設けられている。
【0029】
真空断熱材用積層体は、内部の真空状態を維持するためにガスバリア性が求められる。そのために、真空断熱材用積層体を構成する層中にガスバリア層を設けて、ガスバリア性を付与するが、ガスバリア層としては、アルミニウムなどの金属箔を用いることもでき、また表面にガスバリア層を設けたガスバリアフィルムを用いることもできる。
【0030】
ガスバリアフィルムは、例えば、プラスチック材料からなるフィルムを用い、その片面に蒸着薄膜を設けて形成されるが、蒸着薄膜層と被膜層を順次積層したものを用いても良い。
【0031】
プラスチック材料は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステルフィルム、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、ポリイミドフィルム、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)フィルム、ポリビニルアルコールフィルム等を用いることができる。
【0032】
これらは、機械的強度や寸法安定性を有するものであれば、延伸されたものでも未延伸のものでも構わない。
【0033】
通常、これらのものをフィルム状に加工して用いられる。特に耐熱性等の観点から二軸方向に任意に延伸されたポリエチレンテレフタレートフィルムやポリアミドフィルムが好ましく用いられる。
【0034】
また、フィルムの蒸着薄膜層が設けられる面と反対側の表面に、周知の種々の添加剤や安定剤、例えば帯電防止剤、紫外線防止剤、可塑剤、滑剤などが使用されていても良い。
【0035】
また、蒸着薄膜層との密着性を良くするために、基材の積層面側を前処理としてコロナ
処理、低温プラズマ処理、イオンボンバード処理、薬品処理、溶剤処理などのいずれかの処理を施しても良い。
【0036】
フィルムの厚さは、特に限定されるものではなく、またフィルムとしての適性を考慮して、単体フィルム以外の異なる性質のフィルムを積層したフィルムを使用することもできる。加工性を考慮すれば、3~200μmの範囲が好ましく、特に6~30μmがより好ましい。
【0037】
また、量産性を考慮すれば、連続的に各層を形成できる長尺の連続フィルムとすることが望ましい。
【0038】
次に、蒸着薄膜層は、金属、例えばアルミニウム、銅、銀など、もしくは無機酸化物、例えばイットリウムタンタルオキサイド、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウムあるいはそれらの混合物の蒸着膜からなり、酸素、水蒸気等のガスバリア性を有する。
【0039】
これらの中では、特にアルミニウム、酸化アルミニウム及び酸化ケイ素、酸化マグネシウムが好ましい。
【0040】
尚、上述の金属及び無機酸化物に限定されず、酸素、水蒸気等のガスバリア性を有する材料であれば用いることができる。
【0041】
蒸着薄膜層の厚さは、用いられる化合物の種類・構成により最適条件が異なるが、5~300nmの範囲内が望ましく、その厚さは適宜選択することができる。これは、膜厚が5nm未満の場合は、均一な膜が得られず、十分な機能を発揮することができないためであり、また無機酸化物の場合、膜厚が300nmを超える場合は、フレキシビリティを発揮することができず、成膜後の折り曲げや引っ張りなどの外的要因により、薄膜に亀裂を生じる恐れがあるためである。より好ましくは、10~150nmの範囲内とすることができる。
【0042】
蒸着薄膜層をフィルム上に形成する方法としては、通常の真空蒸着法により形成することがきる。また、その他の薄膜形成方法として、スパッタリング法やイオンプレーティング法、プラズマ気相成長法(PCVD)などを用いることも可能である。生産性を考慮すれば、現時点では真空蒸着法が最も優れるといえる。
【0043】
真空蒸着法の加熱手段としては、電子線加熱方式や抵抗加熱方式、誘導加熱方式のいずれかが、好ましい。
【0044】
また、蒸着薄膜層と基材の密着性及び蒸着薄膜層の緻密性を向上させるために、プラズマアシスト法やイオンビームアシスト法を用いて蒸着することも可能である。
【0045】
また、蒸着薄膜層の透明性を向上させるために、蒸着の際に酸素ガスなどを吹き込む反応蒸着を行っても良い。
【0046】
さらに、ガスバリア層を形成するために、蒸着薄膜層に重ねて、コーティングによる被膜層が設けられてあっても良い。
【0047】
コーティングによる被膜層を形成する場合には、例えば、水溶性高分子と、(a)1種以上のアルコキシドまたはその加水分解物、またはその両者、あるいは(b)塩化錫の少なくともいずれか1つを含む水溶液、あるいは水/アルコール混合溶液を主剤とするコー
ティング剤を用いて形成することができる。
【0048】
例えば、水溶性高分子と塩化錫を水系(水あるいは水/アルコール混合)溶媒で溶解させた溶液、あるいはこれに金属アルコシキドを直接、あるいは予め加水分解させるなど処理を行なったものを混合した溶液を調整してコーティング剤とし、このコーティング剤を無機酸化物からなる蒸着薄膜層の上にコーティング後、加熱乾燥し形成される。
【0049】
コーティング剤に用いられる水溶性高分子は、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0050】
特に、ポリビニルアルコール(PVA)を用いると、ガスバリア性が最も優れる。このPVAは、一般にポリ酢酸ビニルを鹸化して得られるものであり、酢酸基が数十%残存している、いわゆる部分鹸化PVAから、酢酸基が数%しか残存していない完全PVA等までを含み、特に限定されない。
【0051】
また、コーティング剤に用いられる塩化錫は、塩化第一錫(SnCl2)、塩化第二錫(SnCl4)、あるいはそれらの混合物であっても良い。
【0052】
更に、コーティング剤に用いられる金属アルコキシドは、一般式、M(OR)n(M:Si,Ti,Al,Zr等の金属、R:CH3、C2H5等のアルキル基)で表せる化合物である。
【0053】
具体的には、テトラエトキシシラン〔Si(OC2H5)4〕、トリイソプロポキシアルミニウム〔Al(O-2’-C3H7)3〕などが挙げられ、中でもテトラエトキシシラン、トリイソプロポキシアルミニウムが加水分解後、水系の溶媒中において比較的安定であるので好ましい。
【0054】
コーティング剤のガスバリア性を損なわない範囲で、イソシアネート化合物、シランカップリング剤、あるいは分散剤、安定化剤、粘度調整剤、着色剤などの公知の添加剤を必要に応じて加えることができる。
【0055】
例えば、コーティング剤に加えられるイソシアネート化合物としては、その分子中に2個以上のイソシアネート基を有するものが好ましい。例えば、トリレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネートなどのモノマー類と、これらの重合体、誘導体が挙げられる。
【0056】
コーティング剤の塗布方法は、通常用いられるディッピング法、ロールコーティング法、スクリーン印刷法、スプレー法、グラビア印刷法などの従来公知の手段を用いることができる。
【0057】
被膜層の厚さは、コーティング剤の種類や加工機、加工条件によって異なる。乾燥後の厚さが、0.01μm未満の場合は、均一な塗膜が得られず十分なガスバリア性を得られない場合があるので、好ましくない。また厚さが50μmを超える場合は膜にクラックが生じ易くなるため問題がある。
【0058】
従って、好ましくは0.01~50μmの範囲とすることができるが、より好ましくは0.1~10μmの範囲である。
【0059】
なお、蒸着薄膜層、被膜層上にさらに蒸着薄膜層、被膜層を同様に設けることも可能で
あり、必要に応じて複数層を積層して設けることができる。
【0060】
真空断熱材用積層体の各層を、接着剤(24)を用いて積層する方法としては、従来公知の接着剤ならびに積層方法を用いることができ、例えば2液硬化型ウレタン系接着剤を用いたドライ・ラミネーションによる方法や、エクストルージョンラミネーションによる方法などが採用できるが、特に指定するものではない。
【0061】
図2に示すようなガスバリア層(21)の構成例としては、例えば、無機酸化物を蒸着薄膜として設けた透明蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムをガスバリア層A(21A)とし、接着剤(24)であるドライラミネート層を介して、アルミニウム蒸着エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルムをガスバリア層B(21B)として積層し、ガスバリア層(21)とする構成などを挙げることができる。
【0062】
熱融着層(22)の材質としては、環状ポリオレフィン系樹脂を含むものである。熱融着層(22)は、通常、本発明の真空断熱材用積層体の積層方向の一方において最表層を担う層である。
【0063】
環状ポリオレフィン系樹脂は、低吸水性・非晶質で脂環構造を持つ炭化水素系ポリマーであり、一般的なポリオレフィン樹脂に比べて、耐熱安定性が高く、高温下で長時間使用するような用途に適した材料であると言える。
【0064】
熱融着層(22)の厚さとしては、所望の接着力を有することができる厚さであれば良く、例えば、20μm~100μmの範囲内、中でも25μm~90μmの範囲内、特に30μm~80μmの範囲内が好ましい。
【0065】
熱融着層(22)の厚さが上記範囲よりも大きいと、本発明の真空断熱材用積層体全体としてのガスバリア性や外観等が悪化する場合があり、一方、上記範囲よりも小さいと、所望の接着力が得られず、高温下で長時間使用する間に剥離が生じる場合がある。
【0066】
熱融着層(22)は、市販のフィルムやシートを用いても良く、あるいは熱融着層の組成物を塗布して形成しても良い。
【0067】
保護層(23)は、真空断熱材(1)を形成した際に、最外層ともなる層であり、保護層(23)としては、機械的、物理的および化学的等において優れた性質を有し、強度に優れると共に、耐熱性や防湿性、耐ピンホール性、耐突き刺し性等に優れたプラスチックフィルムを用いることができる。
【0068】
このようなプラスチックとしては、例えば、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリアミド(ナイロン-6、ナイロン-66等)、ポリイミドなどが使用でき、用途に応じて適宜選択される。
【0069】
中でも、例えば、ポリアミドフィルムなどを用いた場合には、真空断熱材を被覆する最外層の材料として、強度の点でより好ましいと言える。
【0070】
上述のようにして得られた真空断熱材用積層体(2)は、高温環境下に保持した際に発生する揮発成分の少ないことが重要であり、これにより、真空断熱材(1)を作製した際に、真空断熱材(1)内部の真空度の低下を防ぎ、低い熱伝導率を維持することが可能となる。
【0071】
具体的には、真空断熱材用積層体(2)を100mm×100mmのサイズにカットし、容量が約1Lの真空容器である真空捕集瓶に入れて真空状態とし、90℃で60分間加熱した後、真空捕集瓶内に発生した揮発成分量をガスクロマトグラフィー法などにより測定した時、揮発成分量が、100ng/g以下であることが望ましく、より好ましくは、50ng/g以下であり、更に好ましくは、20ng/g以下であることが望ましい。
【0072】
本発明における真空断熱材用積層体(2)は、熱融着層(22)が芯材(3)と接するようにして配置される。また、芯材(3)を覆うように対向して配置される真空断熱材用積層体(2)は、両方が優れた耐熱性を示すことから、本発明の真空断熱材(1)が高温環境下において長時間曝されても、上記真空断熱材(1)の端部や積層体の層間での剥離の発生や劣化を抑制することができ、本発明の真空断熱材(1)の内部を長時間にわたり高真空状態に維持できる。
【0073】
なお、上記真空断熱材用積層体(2)の透明性の有無は問わない。
【0074】
本発明における芯材(3)は、対向する真空断熱材用積層体(2)により覆われて内包されるものである。
【0075】
芯材(3)の材料としては、一般に真空断熱材の芯材に使用される材料であれば、いずれも用いることができる。例えば、シリカ等の粉体、ウレタンポリマー等の発泡体、グラスウール等の繊維状態等の多孔質体が挙げられる。
【0076】
なお、上記多孔質体は、空隙率が50%以上、中でも90%以上であることが好ましい。これにより、真空断熱材(1)中に封入され、減圧された際に、熱伝導率の低い芯材(3)とすることができるからである。
【0077】
芯材(3)は、外部から侵入する微量のガスを吸着するためのゲッター剤を含んでいても良い。ゲッター剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、ゼオライト、活性炭等の真空断熱材に使用される一般的な材料が挙げられる。
【0078】
芯材(3)の厚さとしては、所望の断熱効果を発揮できる厚さであれば特に限定されず、例えば、減圧後の状態で1mm~30mmの範囲であることが好ましい。
【0079】
本発明の真空断熱材(1)の内部の真空度としては、5Pa以下であることが好ましい。真空断熱材(1)内部の空気の対流を遮断し、断熱性能を向上させることができるからである。
【0080】
本発明の真空断熱材(1)の熱伝導率(初期熱伝導率)としては、例えば25℃環境下で10mW・m-1・K-1以下、中でも5mW・m-1・K-1以下、特に3mW・m-1・K-1以下であることが好ましい。
【0081】
真空断熱材(1)が熱を外部に伝導しにくくなることから、高い断熱効果を奏することができるからである。なお、上記熱伝導率は、JIS-A-1412-3に従い、熱伝導率測定装置(英弘精機(株)製 HC-074)を用いた熱流計法により測定された値である。
【0082】
本発明の真空断熱材(1)の製造方法は、少なくとも一方の外装材として上述した真空断熱材用積層体(2)を用いて芯材(3)を封入し、内部を脱気して真空状態にして密閉することが可能な方法であれば特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
【0083】
本発明の真空断熱材(1)は、電化機器用真空断熱材、建築用真空断熱材、保冷保温箱体用真空断熱材、自動車用真空断熱材等として、断熱を必要とするあらゆる場所に用いることができる。
【実施例】
【0084】
以下、実施例1および比較例1~2に基づいて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、これらの例にのみ限定されるものではない。
【0085】
(実施例1)
材料構成は、下記の通りであって、
図2を参照しながら説明する。
【0086】
保護層(23)として厚さ25μmのポリアミドフィルム(興人フィルム&ケミカルズ株式会社製 製品名:ボニールRX)を用意し、これに対して、ガスバリア層A(21A)として厚さ12μmの透明蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム(凸版印刷株式会社製 製品名:GL-EDC)を、接着剤(24)であるウレタン系接着剤をドライラミネート層として用いて、積層、接着した。
【0087】
次いで、透明蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムの外面に、ガスバリア層B(21B)として厚さ12μmのアルミニウム蒸着エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルム(株式会社クラレ製 製品名:VM-XL)を、ウレタン系接着剤をドライラミネート層として用いて貼りあわせた。
【0088】
さらに、アルミニウム蒸着エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルムの外面に、ウレタン系接着剤をドライラミネート層として用いて、熱融着層(22)として厚さ30μmの環状ポリオレフィンフィルム(倉敷紡績株式会社製 製品名:ME-1)を貼りあわせ、真空断熱材用積層体(2)を得た。
【0089】
次に、上述のようにして作製した真空断熱材用積層体(2)を用い、真空断熱材を構成する三方袋を作成した(200mm×200mm)。
【0090】
この三方袋に、芯材としてガラス繊維(190mm×190mm)を封入し、真空包装装置にて袋内の圧力を1.0Paとした後、包装袋の開口部を加熱融着し、厚さ5mm、縦200mm、横200mmの真空断熱材(1)を得た。
【0091】
(比較例1)
熱融着層(22)を厚さ30μmの環状ポリオレフィンフィルムに代えて、ポリプロピレンフィルム(三井化学東セロ株式会社製 製品名:SC)を使用した以外は実施例1と同様にして、真空断熱材用積層体(2)及び真空断熱材(1)を得た。
【0092】
(比較例2)
熱融着層(22)を厚さ30μmの環状ポリオレフィンフィルムに代えて、直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(三井化学東セロ株式会社製 製品名:FCD-NP)を使用した以外は実施例1と同様にして、真空断熱材用積層体(2)及び真空断熱材(1)を得た。
【0093】
(評価)
<揮発性成分の分析>
約1リットルの真空捕集瓶内に真空断熱材用積層体(2)の各試料100mm×100mmを入れて、真空状態とした。上記真空捕集瓶をオーブン内で90℃×60分加熱した後に取り出し、室温まで静置させた。
【0094】
その後、真空を開放し、エアーサンプラーを用いて、真空瓶内に発生した揮発性成分を捕集し、ガスクロマトグラフィー質量分析(GC/MS)法により分析した。
【0095】
<熱伝導率の測定>
JIS-A-1412-3に準じて測定を行なった。
【0096】
真空断熱材を温度90℃で8週間保持し、熱伝導率測定装置(英弘精機株式会社製 HC-074)を用いて、その間の熱伝導率を測定した。
【0097】
(評価結果)
実施例1および比較例1、2の評価結果を表1に示す。
【0098】
【0099】
表1から実施例1は、比較例1、2に比べて、揮発性成分が少ないことが判った。すなわち、環状ポリオレフィンフィルムは、ポリプロピレンフィルムや直鎖状低密度ポリエチレンなどに比べて、高温環境下における安定性が高く、揮発成分の発生を抑えられることが判った。
【0100】
その結果、実施例1は、比較例1、2に比べて90℃保管後の熱伝導率が低く、断熱性能が保たれているものと考えることができる。
【0101】
以上のように、本発明の真空断熱材用積層体ならびにそれを用いた真空断熱材を使用することにより、高温環境下で長期間保持されても低い熱伝導率を保持することが可能な真空断熱材を提供することができる。
【符号の説明】
【0102】
1 … 真空断熱材
2 … 真空断熱材用積層体
3 … 芯材
21 … バリア層
21A… バリア層A
21B… バリア層B
22 … 熱融着層
23 … 保護層
24 … 接着剤