(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】予混合圧縮着火式エンジンの制御装置
(51)【国際特許分類】
F02D 19/12 20060101AFI20220412BHJP
F02B 47/02 20060101ALI20220412BHJP
F02M 25/03 20060101ALI20220412BHJP
F02M 25/025 20060101ALI20220412BHJP
F02B 23/10 20060101ALI20220412BHJP
F02D 45/00 20060101ALI20220412BHJP
F02P 3/01 20060101ALI20220412BHJP
F02B 23/08 20060101ALI20220412BHJP
F02D 41/02 20060101ALI20220412BHJP
F02P 5/15 20060101ALI20220412BHJP
F02D 43/00 20060101ALI20220412BHJP
【FI】
F02D19/12 A
F02B47/02
F02M25/03
F02M25/025 S
F02M25/025 T
F02B23/10 320
F02D45/00
F02P3/01 F
F02B23/08 L
F02D41/02
F02P5/15 B
F02D43/00 301J
F02D43/00 301B
F02D43/00 301Z
(21)【出願番号】P 2018033900
(22)【出願日】2018-02-27
【審査請求日】2020-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 達也
(72)【発明者】
【氏名】原田 雄司
【審査官】家喜 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-121410(JP,A)
【文献】特開2010-037947(JP,A)
【文献】特開2017-025773(JP,A)
【文献】特開2012-225214(JP,A)
【文献】実開平06-025530(JP,U)
【文献】特開2007-309160(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 13/00 - 45/00
F02B 23/10
F02P 3/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気行程、圧縮行程、膨張行程及び排気行程を繰り返す燃焼室を有しかつ、前記燃焼室内の混合気が圧縮着火により燃焼するエンジン本体と、
前記燃焼室内に配設された一対の電極の間に電圧を印加することにより、前記燃焼室内にプラズマを生成するプラズマ生成部と、
前記燃焼室内に燃料を
直接噴射する
インジェクタと、
前記燃焼室内に水を供給する水供給部と、を備え、
前記プラズマ生成部は、吸気行程の開始から圧縮行程の終わりまでの期間における所定タイミングで、前記燃焼室内に低温プラズマを生成し、
前記
インジェクタは、前記低温プラズマの生成後に、前記燃焼室内に燃料を
噴射し、
前記水供給部は、前記燃料の供給後に、前記燃焼室内に水を供給し、
前記プラズマ生成部は、前記エンジン本体が所定負荷よりも高負荷で運転しているときには、圧縮行程の後半に低温プラズマを生成すると共に、前記エンジン本体が前記所定負荷以下の低負荷で運転しているときには、吸気行程の終期から圧縮行程の初期の期間内
であって、少なくとも圧縮行程を含む期間内に低温プラズマを生成する
、
但し、前記圧縮行程の後半は、圧縮行程を前半と後半とに二等分したときの後半であり、前記吸気行程の終期は、吸気行程を、初期、中期、及び終期に三等分したときの終期であり、前記圧縮行程の初期は、圧縮行程を初期、中期、及び終期に三等分したときの初期である予混合圧縮着火式エンジンの制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の予混合圧縮着火式エンジンの制御装置において、
前記水供給部は、前記燃焼室内の混合気が着火した後に、前記燃焼室内に水を供給する予混合圧縮着火式エンジンの制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の予混合圧縮着火式エンジンの制御装置において、
前記水供給部は、前記エンジン本体が
前記所定負荷よりも高負荷で運転しているときに、前記燃焼室内に水を供給すると共に、前記エンジン本体が前記所定負荷以下の低負荷で運転しているときに、前記燃焼室内に水を供給しない予混合圧縮着火式エンジンの制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示する技術は、予混合圧縮着火式エンジンの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、リーンバーン運転を行う4ストローク型レシプロエンジンにおいて、電極間に低温プラズマ状態を形成することによって、筒内の流速を計測する技術が記載されている。具体的にこのエンジンでは、電圧制御回路が、点火時期よりも前に、点火プラグに短パルスの電界を与えることによって、電極間に低温プラズマ状態を形成している。
【0003】
特許文献2には、火花点火式のレシプロエンジンにおいて、ピストンの冠面に水を噴射する技術が記載されている。このエンジンは、燃焼期間中に冷却損失として失われる熱によって水を気化させると共に、膨張行程において、気化した蒸気の圧力エネルギを仕事として回収することにより、熱効率を向上させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-141919号公報
【文献】特開2008-175078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1、2に記載されている火花点火式のエンジンとは異なり、燃焼室内に形成した混合気を圧縮着火によって燃焼させるエンジンにおいて、燃焼室内に低温プラズマを生成すると、混合気の着火性を向上させることができる。つまり、低温プラズマ放電によって生成した電子が燃焼室内の酸素や窒素などと化学反応することにより、燃焼室内に、オゾン又はOラジカルなどの化学種を生成する。そして、オゾン又はOラジカルなどの化学種が混合気の低温酸化反応を促進することにより、混合気の着火性が向上する。
【0006】
しかしながら、低温プラズマによって混合気の着火性を向上させると、燃焼が急速に進行してしまう結果、例えばノッキング等の異常燃焼を招く恐れがある。圧縮着火式エンジンにおいては、混合気の着火性の向上と、異常燃焼の回避とを両立させることが求められる。
【0007】
ここに開示する技術は、予混合圧縮着火式エンジンにおいて、混合気の着火性の向上と、異常燃焼の回避とを両立させる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ここに開示する技術は、予混合圧縮着火式エンジンの制御装置に係る。予混合圧縮着火式エンジンの制御装置は、吸気行程、圧縮行程、膨張行程及び排気行程を繰り返す燃焼室を有しかつ、前記燃焼室内の混合気が圧縮着火により燃焼するエンジン本体と、前記燃焼室内に配設された一対の電極の間に電圧を印加することにより、前記燃焼室内にプラズマを生成するプラズマ生成部と、前記燃焼室内に燃料を直接噴射するインジェクタと、前記燃焼室内に水を供給する水供給部と、を備える。
【0009】
そして、前記プラズマ生成部は、吸気行程の開始から圧縮行程の終わりまでの期間における所定タイミングで、前記燃焼室内に低温プラズマを生成し、前記インジェクタは、前記低温プラズマの生成後に、前記燃焼室内に燃料を噴射し、前記水供給部は、前記燃料の供給後に、前記燃焼室内に水を供給する。
【0010】
吸気行程の開始から圧縮行程の終わりまでの期間における所定タイミングで、プラズマ生成部が、燃焼室内に低温プラズマを生成すると、低温プラズマ放電によって生成した電子が燃焼室内の酸素や窒素などと化学反応することにより、燃焼室内に、オゾン又はOラジカルなどの化学種が生成される。
【0011】
低温プラズマの生成後、インジェクタが燃焼室内に燃料を噴射することにより、燃焼室内に混合気が形成される。混合気は、オゾン又はOラジカルなどの化学種によって、低温酸化反応が促進され、混合気の着火性が向上する。混合気は、安定的に、圧縮着火により燃焼する。
【0012】
燃料の供給後に、水供給部が、燃焼室内に水を供給する。燃焼が急速に進行することが抑制され、ノッキング等の異常燃焼が発生することが防止される。よって、混合気の着火性の向上と、異常燃焼の回避とが両立する。
【0013】
また、前記の構成は、燃焼が緩慢になるため、燃焼騒音の低減に有利になると共に、排気エミッション性能の悪化を抑制することができる。
【0014】
さらに、燃焼室内に低温プラズマを生成することにより、高温プラズマを生成した場合とは異なり、燃焼室内のガス温度が高くなることを抑制することができる。燃焼温度が低くなるため、冷却損失が低減する。従って、前記の構成は、エンジンの燃費性能の向上にも有利になる。
【0015】
前記プラズマ生成部は、前記エンジン本体が所定負荷よりも高負荷で運転しているときには、圧縮行程の後半に低温プラズマを生成すると共に、前記エンジン本体が前記所定負荷以下の低負荷で運転しているときには、吸気行程の終期から圧縮行程の初期の期間内であって、少なくとも圧縮行程を含む期間内に低温プラズマを生成する。但し、前記圧縮行程の後半は、圧縮行程を前半と後半とに二等分したときの後半であり、前記吸気行程の終期は、吸気行程を、初期、中期、及び終期に三等分したときの終期であり、前記圧縮行程の初期は、圧縮行程を初期、中期、及び終期に三等分したときの初期である。
【0016】
低温プラズマの生成タイミングを早くすると、燃焼室内の全体に低温プラズマが拡散する。エンジン本体が高負荷で運転しているときに、低温プラズマの生成タイミングを早くすると、過早着火やノッキング等の異常燃焼を招く恐れがある。エンジン本体が高負荷で運転しているときには、低温プラズマの生成タイミングを遅くすることによって、異常燃焼の発生を防止することができる。一方、エンジン本体が低負荷で運転しているときには、過早着火やノッキング等の異常燃焼が発生しにくい一方、低温プラズマの生成タイミングを早くすることにより、燃焼室内の圧力が低くて、電極間において放電しやすい状態で、低温プラズマを生成することができる。低温プラズマの生成に必要な電力消費を抑制して、エンジンの燃費性能の向上に有利になる。
【0017】
前記水供給部は、前記燃焼室内の混合気が着火した後に、前記燃焼室内に水を供給する、としてもよい。
【0018】
低温プラズマを生成することによって混合気が安定的に圧縮着火した後、燃焼が急速に進行してしまうことが、着火後に供給した水によって抑制される。異常燃焼が発生することを、効果的に防止することができる。
【0019】
前記水供給部は、前記エンジン本体が前記所定負荷よりも高負荷で運転しているときに、前記燃焼室内に水を供給すると共に、前記エンジン本体が前記所定負荷以下の低負荷で運転しているときに、前記燃焼室内に水を供給しない、としてもよい。
【0020】
エンジン本体が高負荷で運転しているときには、燃焼室内に供給する燃料量が多いため、急速燃焼になりやすく、異常燃焼が発生しやすい。エンジン本体が高負荷で運転しているときに、水供給部が燃焼室内に水を供給することによって、異常燃焼を効果的に防止することができる。一方、エンジン本体が低負荷で運転しているときには、燃焼室内に供給する燃料量が少ないため、異常燃焼が発生しにくい。エンジン本体が低負荷で運転しているときには、水供給部が燃焼室内に水を供給しなくても、異常燃焼を防止することができる。
【発明の効果】
【0021】
前記の予混合圧縮着火式エンジンの制御装置によると、混合気の着火性の向上と、異常燃焼の回避とが両立する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、エンジンの構成を例示する図である。
【
図2】
図2は、エンジンの制御装置の構成を例示するブロック図である。
【
図3】
図3は、プラズマ生成装置の構成を例示する図である。
【
図4】
図4は、
図3とは異なる構成のプラズマ生成装置を例示する図である。
【
図5】
図5は、燃焼室内において低温プラズマ及び高温プラズマが生成する、放電開始からの時間と、電極間への印加電圧との関係を示す図である。
【
図6】
図6は、低温プラズマを生成する際に電極間に印加する電圧の時間波形を例示する図である。
【
図7】
図7は、パッシェン曲線を例示する図である。
【
図8】
図8は、
図6とは異なる、低温プラズマを生成する際に電極間に印加する電圧の時間波形を例示する図である。
【
図9】
図9は、エンジンの運転領域を例示する図である。
【
図10】
図10の上図は、低負荷の第一運転状態において、筒内圧力の変化曲線と共に、燃焼室内にプラズマを生成するタイミング、及び、燃料を噴射するタイミングを例示する図であり、
図10の下図は、高負荷の第二運転状態において、筒内圧力の変化曲線と共に、燃焼室内にプラズマを生成するタイミング、燃料を噴射するタイミング、及び、水を噴射するタイミングを例示する図であり、
【
図11】
図11は、エンジンの運転に係る制御を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、予混合圧縮着火式エンジンの制御装置の例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、エンジン1の構成を例示する図である。
図2は、エンジンの制御装置の構成を例示するブロック図である。なお、
図1において、吸気側は紙面左側であり、排気側は紙面右側である。
【0024】
エンジン1は、燃焼室17が吸気行程、圧縮行程、膨張行程及び排気行程を繰り返すことにより運転する4ストロークエンジンである。エンジン1は、四輪の自動車に搭載される。自動車は、エンジン1が運転することによって走行する。エンジン1の燃料は、この構成例においてはガソリンである。燃料は、バイオエタノール等を含むガソリンであってもよい。エンジン1の燃料は、少なくともガソリンを含む液体燃料であれば、どのような燃料であってもよい。
【0025】
〈エンジンの構成〉
エンジン1は、
図1では一つのシリンダ11のみを示すが、複数のシリンダ11を有する多気筒エンジンである。このエンジン1は、燃焼室17を有するエンジン本体2を備える。エンジン本体2は、シリンダブロック12と、シリンダブロック12上に載置されるシリンダヘッド13とを備えている。
【0026】
各シリンダ11内には、ピストン3が摺動自在に内挿されている。ピストン3は、コネクティングロッド14を介して、図示を省略するクランクシャフトに連結されている。ピストン3は、シリンダ11及びシリンダヘッド13と共に燃焼室17を区画する。ここで、「燃焼室」は、ピストン3が圧縮上死点に至ったときの空間の意味に限定されない。「燃焼室」の語は広義で用いる場合がある。つまり、「燃焼室」は、ピストン3の位置に関わらず、ピストン3、シリンダ11及びシリンダヘッド13によって形成される空間を意味する場合がある。「燃焼室」は、「シリンダ11の内部」と言い換えることも可能である。
【0027】
シリンダヘッド13の下面、つまり燃焼室17の天井面は、いわゆるペントルーフ形状である。ピストン3の上面は、燃焼室17の天井面に向かって隆起している。エンジン本体2の幾何学的圧縮比は、15以上且つ30以下に設定されている。後述するように、エンジン本体2は、高い幾何学的圧縮比を利用して、燃焼室17内の混合気を、圧縮着火により燃焼させる。
【0028】
シリンダヘッド13には、シリンダ11毎に、吸気ポート18が形成されている。吸気ポート18は、燃焼室17に連通している。吸気ポート18には、吸気弁21が設けられている。吸気弁21は、燃焼室17と吸気ポート18との間で吸気ポート18を開閉する。エンジン本体2には、吸気弁21の動弁機構23(
図2参照)が設けられている。吸気弁21は、動弁機構23によって所定のタイミングで開閉する。吸気弁21の動弁機構23は、バルブタイミング及び/又はバルブリフトを可変にする可変動弁機構とすればよい。
【0029】
シリンダヘッド13にはまた、シリンダ11毎に、排気ポート19が形成されている。排気ポート19は、燃焼室17に連通している。排気ポート19には、排気弁22が設けられている。排気弁22は、燃焼室17と排気ポート19との間で排気ポート19を開閉する。エンジン本体2には、排気弁22の動弁機構24(
図2参照)が設けられている。排気弁22は、動弁機構24によって所定のタイミングで開閉する。排気弁22の動弁機構24は、バルブタイミング及び/又はバルブリフトを可変にする可変動弁機構とすればよい。
【0030】
シリンダヘッド13には、シリンダ11毎に、インジェクタ6が取り付けられている。インジェクタ6は、燃焼室17の中に燃料を直接噴射するように構成されている。インジェクタ6は、燃料供給部の一例である。インジェクタ6は、
図1の構成例においては、シリンダ11の中心付近に配設されている。インジェクタ6の配設箇所は、
図1の構成例に限定されるものではない。インジェクタ6は、詳細な図示は省略するが、例えば複数の噴口を有する多噴口型の燃焼噴射弁によって構成されている。インジェクタ6は、外開弁式の燃料噴射弁によって構成してもよい。
【0031】
シリンダヘッド13にはまた、シリンダ11毎に、水噴射弁61が取り付けられている。水噴射弁61は、燃焼室17の中に水を噴射するよう構成されている。水噴射弁61は、水供給部の一例である。
図1の構成例においては、水噴射弁61は、シリンダ11の中心付近に配設されている。インジェクタ6と水噴射弁61とは、例えばシリンダ列の方向に位置がずれていてもよい。尚、水噴射弁61の配設位置は、
図1の構成例に限定されない。水噴射弁61は、詳細な図示は省略するが、インジェクタ6と同様に、例えば多噴口型の噴射弁によって構成してもよい。また、水噴射弁61は、例えば外開弁式の噴射弁によって構成してもよい。
【0032】
シリンダヘッド13には、シリンダ11毎に、放電電極4が取り付けられている。本構成例において、放電電極4は、燃焼室17で、インジェクタ6よりも排気側に配置されている。詳細は後述するが、放電電極4は、放電を行うことにより、燃焼室17の中においてプラズマを生成する。放電電極4は、燃焼室17内に配設された一対の電極の一例である。
【0033】
放電電極4は、例えば
図3に例示するように、中心電極41と、接地電極42と、中心電極41と接地電極42との間に介在する絶縁体43とを、有している。中心電極41と絶縁体43とは、筒体44に収容されている。接地電極42は、側面視でL字状に構成されている。接地電極42の根元は、筒体44の下端面に、導通状態で固定されている。接地電極42の先端は、中心電極41に対向している。放電電極4は、火花点火用の一般的な点火プラグと同様の構成を有している。
【0034】
放電電極4の中心電極41と接地電極42との間のギャップは、燃焼室17の中に臨んでおり、且つ燃焼室17の天井面の付近に位置している。
【0035】
放電電極4は、このエンジン1において、燃焼室17内に低温プラズマを生成するプラズマ生成装置49を構成する。プラズマ生成装置49は、例えば
図3に示すように、放電電極4と、放電電極4に電圧を印加する印加部45とを備えている。
図3に例示する印加部45は、交流式に構成されている。印加部45は、所望の周波数の交流電流を発生する周波数発生回路451と、周波数発生回路451が発生させた所望の周波数の交流電流を、所望の電圧まで昇圧する昇圧回路452と、を有している。印加部45は、後述するECU10からの制御信号に従って、放電電極4の電極間に、所定の周波数でかつ、所定の電圧を印加する。印加部45は、ECU10と共に、電極の間に電圧を印加する制御部を構成する。プラズマ生成装置49は、プラズマ生成部の一例である。
【0036】
尚、放電電極は、
図3に示す構成に限定されない。例えば
図4は、放電電極の変形例を例示している。この放電電極40は、L字状の接地電極を省略し、絶縁体43を囲む筒体44が、接地電極を構成している。放電電極40は、いわゆる沿面型の点火プラグによって構成してもよい。
【0037】
また、印加部は、
図3に示す交流式に構成することに限らず、例えば
図4に示すように、直流式の印加部46に構成してもよい。直流式の印加部46は、所望の高電圧の直流電流を発生させる高電圧発生回路461と、高電圧の直流電流を、所望の周波数のパルス波形に変換するスイッチング回路462と、を有している。印加部46も、後述するECU10からの制御信号に従って、放電電極40の電極間に、所定の周波数でかつ、所定の電圧を印加する。印加部46は、ECU10と共に、電極の間に電圧を印加する制御部を構成する。
【0038】
尚、
図3に示す放電電極4と、
図4に示す印加部46とを組み合わせること、及び、
図3に示す印加部45と、
図4に示す放電電極40とを組み合わせることもそれぞれ可能である。
【0039】
エンジン本体2の吸気ポート18には、図示を省略する吸気通路が接続される。吸気通路には、スロットル弁51が介設している(
図2を参照)。また、エンジン本体2の排気ポート19には、図示を省略する排気通路が接続される。排気通路には、燃焼室17から排出された排気ガスを浄化する触媒コンバーターが配設されている。また、排気通路及び吸気通路にはそれぞれ、排気ガスの一部を吸気通路に還流させるEGR通路が接続される。EGR通路には、排気ガスの還流量を調整するEGR弁52が介設している(
図2を参照)。
【0040】
エンジン1は、エンジン本体2を運転するためのECU(Engine Control Unit)10を備えている。ECU10は、周知のマイクロコンピュータをベースとするコントローラーである。ECU10は、
図4に示すように、プログラムを実行する中央演算処理装置(Central Processing Unit:CPU)101と、例えばRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)により構成されてプログラム及びデータを格納するメモリ102と、電気信号の入出力をする入出力バス103とを備えている。
【0041】
前記のスロットル弁51、EGR弁52、インジェクタ6、プラズマ生成装置49、水噴射弁61、吸気動弁機構23、及び、排気動弁機構24はそれぞれ、ECU10に接続されている。ECU10にはまた、少なくともセンサ71~74が接続されている。センサ71~74はそれぞれ、検知信号をECU10に出力する。
【0042】
当該センサには、吸気通路に配置されたエアフローセンサ71が含まれる。エアフローセンサ71は、吸気通路を流れる新気の流量を検知する。
【0043】
前記センサには、エンジン本体2に取り付けられた水温センサ72、及び、クランク角センサ73が含まれる。水温センサ72は、冷却水の温度を検知する。クランク角センサ73は、クランクシャフトの回転角を検知する。
【0044】
前記センサには、アクセルペダル機構に取り付けられたアクセル開度センサ74が含まれる。アクセル開度センサ74は、アクセル開度を検知する。
【0045】
ECU10は、これらの検知信号に基づいて、エンジン本体2の運転状態を判断すると共に、各デバイスの制御量を計算する。ECU10は、計算した制御量に係る制御信号をスロットル弁51、EGR弁52、インジェクタ6、プラズマ生成装置49、水噴射弁61、吸気動弁機構23、及び、排気動弁機構24に出力する。
【0046】
〈エンジンの運転制御〉
図9は、エンジン回転数(横軸)とエンジン負荷(縦軸)とによって定まるエンジン1の運転領域を例示している。このエンジン1は、運転領域の全域において、燃焼室17内の混合気を圧縮着火により燃焼させるよう構成されている。エンジン1は、混合気が安定的に圧縮着火するように、燃焼室17内において低温プラズマを生成する。低温プラズマ放電によって生成した電子が燃焼室17内の酸素や窒素などと化学反応することにより、燃焼室17内に、オゾン又はOラジカルなどの化学種が生成される。そして、オゾン又はOラジカルなどの化学種が混合気の低温酸化反応を促進することにより、混合気の着火性が向上する。
【0047】
ここで、燃焼室17内の中心電極41と接地電極42との間のギャップにおいて高温プラズマを生成すると、燃焼室17の中の中心電極41と接地電極42との間のギャップ付近のガス温度が高くなって、燃焼温度が高くなってしまう。燃焼室17内において低温プラズマを生成すると、燃焼室17の中の中心電極41と接地電極42との間のギャップ付近のガス温度が高くなることが抑制され、燃焼温度を低くすることができる。これは、冷却損失の低減に有利になる。
【0048】
従って、燃焼室17内の中心電極41と接地電極42との間のギャップにおいて低温プラズマを生成することにより、圧縮着火燃焼による熱効率の向上と共に、冷却損失が低減し、エンジン1の熱効率を大幅に向上させることができる。
【0049】
〈低温プラズマの生成〉
図5は、燃焼室17内が、大気圧又は大気圧以上であるときに、低温プラズマ及び高温プラズマが生成する、放電開始からの時間(横軸)と、電極間に印加した電圧(縦軸)との関係を示している。低温プラズマは、
図5に破線で囲んだ領域5Aのように、放電開始からの時間を短くする(つまり、超短パルスの電圧を電極間に印加する)、及び/又は、高電圧を電極間に印加することによって生成することが可能であるが、それを実現するためのプラズマ生成装置は、コストが増大してしまうと共に、消費電力も増大してしまう。自動車の燃費性能の向上のために、燃焼室17内の中心電極41と接地電極42との間のギャップに低温プラズマを生成させようとしたときに、超短パルスの電圧を電極間に印加する、及び/又は、高電圧を電極間に印加するプラズマ生成装置は、自動車への搭載に不利である。
【0050】
図5に破線で囲んだ領域5Bのように、低温プラズマは、放電開始からの時間が比較的長い、及び/又は、電圧が比較的低いときにも生成することが可能であるが、この条件では、低温プラズマを安定的に生成することは難しい。
【0051】
そこで、ここに開示するプラズマの生成方法は、燃焼室17内の中心電極41と接地電極42との間のギャップにおいて先ず高温プラズマを生成する(
図5の符号5Cの領域参照)。このことにより、電極間に、熱電子や高温のラジカルを残留させ、その状態で、符号5Bで示すように、電極間に、所定の高周波の比較的低い電圧を印加することにより、低温プラズマを生成する(
図5の白抜きの矢印参照)。
【0052】
こうすることで、超短パルスの電圧を電極間に印加したり、高電圧を電極間に印加したりしなくても、低温プラズマを安定的に生成することができる。また、超短パルスの電圧を電極間に印加したり、高電圧を電極間に印加したりする必要がなくなるから、プラズマ生成装置のコストが下がる。さらに、低温プラズマの生成時の消費電力が低くなるから、自動車へ搭載したときに、燃費性能が低下することが回避される。
【0053】
具体的に、
図6は、印加部45が放電電極4の電極間に印加する電圧の時間波形を例示している。印加部45は、
図6に例示するように、最初に、所定電圧よりも高い第一電圧を、放電電極4の電極間に印加する(つまり、第1ステップ)。ここで、所定電圧は、パッシェン(Paschen)の法則によって定まる電圧である。パッシェンの法則は、電極間に絶縁破壊が発生する電圧に関する実験側であり、
図7に示すように、パッシェンの法則によって定まる所定電圧は、電極間の距離(つまり、ギャップ長)と燃焼室17内の圧力との積の関数である。パッシェン曲線によると、電極間の距離が長い、及び/又は、圧力が高いと、所定電圧は高くなる。パッシェンの法則によって定まる電圧以上の第一電圧を電極間に印加することによって(
図5の5C参照)、電極間に絶縁破壊が生じ、高温プラズマを、燃焼室17内に生成することができる。第一電圧は、幾何学的圧縮が15以上に設定されかつ、後述するように、圧縮行程の後半の期間に第一電圧を電極間に印加する場合は、例えば5kV以上としてもよい。
【0054】
次に、第一電圧を電極間に印加した後に続けて、印加部45は、第一電圧よりも低い第二電圧を、所定の高周波で、放電電極4の電極間に印加する(つまり、第2ステップ)。第二電圧は、低温プラズマが生成される電圧でかつ、所定の高周波も、低温プラズマが生成される周波数である。第二電圧は、第一電圧よりも0.5kV以上低い電圧としてもよい。また、所定の高周波は、10kHz以上、1000kHz以下の周波数としてもよい。第二電圧を、所定の高周波で電極間に印加することにより、燃焼室17内に低温プラズマを生成することができる(
図5の5B参照)。第二電圧の印加は、所定の期間、継続してもよい。
【0055】
第一電圧は、少なくとも一回、電極間に印加すればよい。ここで、燃焼室17内の圧力が高いと、電極間において放電がし難くなる。そのため、燃焼室17内の圧力に応じて、圧力が高いときには、
図6に二点鎖線で例示するように、第一電圧を印加する回数を、二回以上にしてもよい。こうすることで、燃焼室17内の中心電極41と接地電極42との間のギャップに高温プラズマを安定的に生成することができ、その後、第二電圧を電極間に印加することによって、低温プラズマを安定的に生成することが可能になる。第一電圧を印加する回数を、二回以上にする場合に、第一電圧の印加周波数は、第二電圧の印加周波数と同じ、又は、略同じにしてもよいし、第二電圧の印加周波数よりも低い周波数にしてもよい。
【0056】
尚、第一電圧の印加回数は、燃焼室17内の圧力が所定圧力よりも高いときに、所定圧力以下のときよりも第一電圧の印加回数が多くなるよう、燃焼室17内の圧力の高低に対して段階的に変更してもよい。尚、第一電圧の印加回数を変更する段階数は、任意である。また、第一電圧の印加回数は、燃焼室17内の圧力が高くなるに従って多くなるよう、燃焼室17の圧力の高低に対して連続的に変更してもよい。
【0057】
また、燃焼室17内の圧力が高いときには、第一電圧を印加する回数を増やす代わりに、又は、増やすと共に、第一電圧をさらに高くしてもよい。こうすることでも、燃焼室17内に高温プラズマを安定的に生成することができ、その後、第二電圧を電極間に印加することによって、低温プラズマを安定的に生成することが可能になる。
【0058】
尚、第一電圧は、燃焼室17内の圧力が所定圧力よりも高いときに、所定圧力以下のときよりも高くなるよう、燃焼室17内の圧力の高低に対して段階的に変更してもよい。尚、第一電圧を変更する段階数は、任意である。また、第一電圧は、燃焼室17内の圧力が高くなるに従って高くなるよう、燃焼室17の圧力の高低に対して連続的に変更してもよい。
【0059】
また、低温プラズマの生成に際し、プラズマ生成装置49は、
図6に示したように、電極間に印加する電圧を、第一電圧から第二電圧に切り替えて印加するようにしてもよいし、例えば
図8に例示するように、電極間に印加する電圧を、第一電圧から前記第二電圧まで、徐々に下げるようにしてもよい。電圧を下げる移行期間を設けることでも、燃焼室17内に生成するプラズマを、高温プラズマから低温プラズマへと移行させることができる。
【0060】
〈エンジン運転時の、プラズマ生成、並びに、燃料及び水の供給〉
次に、エンジンの運転時における、プラズマの生成タイミング、燃料の噴射タイミング、及び、水噴射のタイミングについて
図9及び
図10を参照しながら説明をする。前述したように、このエンジン1は、運転領域の全域において、燃焼室17内の混合気を圧縮着火により燃焼させるよう構成されている。
【0061】
図10の横軸はクランク角を示している。
図10の上図及び下図はそれぞれ、クランク角の進行に伴う燃焼室17内の圧力の変化を例示している。
図10の上図は、相対的に低負荷かつ、中回転の第一運転状態(
図9参照、所定負荷以下の低負荷で運転しているときの低負荷運転時に相当)でエンジン1が運転しているときの、プラズマの生成タイミング、及び、燃料の噴射タイミングを例示している、
図10の下図は、相対的に高負荷かつ、中回転の第二運転状態(所定負荷よりも高い高負荷で運転しているときの高負荷運転時に相当)でエンジン1が運転しているときの、プラズマの生成タイミング、燃料の噴射タイミング、及び、水の噴射タイミングを例示している。
【0062】
先ず、第一運転状態でエンジン1が運転しているときには、負荷が相対的に低いため、燃焼室内に供給する燃料量が少ない。そのため、過早着火やノッキング等の異常燃焼は生じにくい。そこで、第一運転状態でエンジン1が運転しているときには、プラズマの生成タイミングを、後述する高負荷時よりも早くする。具体的に、プラズマ生成装置49は、吸気行程の終期から圧縮行程の初期の期間内の任意のタイミングで、燃焼室17内に低温プラズマを生成する。ここで、吸気行程の終期は、吸気行程を初期、中期、及び終期に三等分したときの終期としてもよい(つまり、-240°~-180°ATDC)。また、圧縮行程の初期は、圧縮行程を初期、中期、及び終期に三等分したときの初期としてもよい(つまり、-180°~-120°ATDC)。比較的早いタイミングで燃焼室17内に低温プラズマを生成することにより、低温プラズマは燃焼室17内の全体に拡散する。
【0063】
インジェクタ6は、低温プラズマの生成後に、圧縮上死点の付近において燃焼室17内に燃料を噴射する。燃料の噴射時期を圧縮上死点の近くにまで遅らせることにより、異常燃焼の発生を回避することができる。前述したように、燃焼室17内に低温プラズマを生成することにより、混合気の低温酸化反応が促進されるため、混合気の着火性が高まる。その結果、混合気は、圧縮上死点付近において、安定的に圧縮着火により燃焼をする。
【0064】
エンジン1が第一運転状態で運転しているときには、水噴射弁61による水の噴射を行わない。エンジン1の負荷が低いときには異常燃焼が発生し難いため、水の噴射により異常燃焼の発生を防止する必要性に乏しいためである。
【0065】
これに対し、第二運転状態でエンジン1が運転しているときには、負荷が相対的に高いため、過早着火やノッキング等の異常燃焼が生じやすい。そこで、第二運転状態でエンジン1が運転しているときには、プラズマの生成タイミングを、低負荷時よりも遅くする。具体的に、プラズマ生成装置49は、圧縮行程の後半に、燃焼室17内にプラズマを生成する。ここで、圧縮行程の後半とは、圧縮行程を前半と後半とに二等分したときの後半の期間を意味する(つまり、-90°~0°ATDC)。異常燃焼を回避するために、プラズマ生成装置49は、
図10に図示するように、圧縮行程の終期に、低温プラズマを生成してもよい。ここで、圧縮行程の終期とは、圧縮行程を初期、中期、終期とに三等分したときの終期の期間を意味する(つまり、-60°~0°ATDC)。圧縮行程においてピストン3が上死点に向かって上昇するに従い、燃焼室17内の圧力は次第に高くなるから、プラズマの生成タイミングを遅くすると、燃焼室17内に生成した低温プラズマは、放電電極の近く、言い換えると、燃焼室17内の中央部に集まる。異常燃焼を回避する上で有利になる。
【0066】
但し、圧縮行程において、プラズマの生成開始タイミングが遅すぎると、燃焼室17内の圧力が高いため、放電には不利になる。特に、このエンジン1は、幾何学的圧縮比が高いため、圧縮上死点に近づくと燃焼室17内の圧力は、かなり高くなる。
【0067】
そのため、プラズマの生成開始は、-30°ATDCよりも遅くならないようにしてもよい。プラズマの生成開始を、-30°ATDC以前にすると、燃焼室17内の圧力が比較的低いときに高温プラズマを生成することができ、その後、低温プラズマを生成することができる。そして電極間への第二電圧の印加を、そのまま継続すれば、クランク角の進行に伴い燃焼室17内の圧力が高くなっても、比較的低い電圧の印加によって低温プラズマの生成を継続することができる。
【0068】
プラズマ生成装置49はまた、圧縮上死点(TDC)よりも所定期間前に、低温プラズマの生成を終了してもよい。前述の通り、このエンジン1は、燃焼室17内に低温プラズマ放電による電子を生成することにより、オゾン又はOラジカルなどの化学種を生成して、混合気の低温酸化反応を促進する。そのため、低温プラズマは、燃焼室17内に燃料を供給する前に生成する。プラズマ生成装置49は、例えば、-10°ATDCまでに、低温プラズマの生成を終了してもよい。
【0069】
インジェクタ6は、低温プラズマの生成後に、燃焼室17内に燃料を噴射する。燃焼室17内に低温プラズマを生成することにより、混合気の低温酸化反応が促進されるため、混合気の着火性が高まる。その結果、混合気は、圧縮上死点付近において、安定的に圧縮着火し、燃焼する。
【0070】
水噴射弁61は、インジェクタ6による燃料噴射後に、燃焼室17内に水を噴射する。水噴射弁61は、混合気が着火した後に、燃焼室16内に水を噴射してもよい。
図10の下図に例示するように、水噴射弁61は、圧縮上死点後に、燃焼室17内に水を噴射してもよい。水の噴射によって燃焼が急速に進行することが抑制され、ノッキング等の異常燃焼が発生することが防止される。よって、エンジン1が高負荷で運転しているときに、混合気の着火性の向上と、異常燃焼の回避とが両立する。
【0071】
図11は、エンジン1の運転時の、プラズマ生成、燃料噴射及び水噴射に係る制御フローを示している。制御フローは、ECU10が実行する。スタート後のステップS1において、ECU10は、各センサ等の検知信号を読み込んで、エンジン1の運転状態を判断する。続くステップS2において、エンジン1の運転状態が第一運転状態であれば、制御プロセスはステップS3に進み、エンジン1の運転状態が第二運転状態であれば、制御プロセスはステップS5に進む。
【0072】
ステップS3においてECU10は、吸気行程の終期から圧縮行程の初期にかけての期間内における任意のタイミングで、プラズマ生成装置49によって、燃焼室17内において低温プラズマを生成する。その後のステップS4においてECU10は、圧縮上死点前に、インジェクタ6によって燃料を燃焼室17内に噴射する。燃焼室17内に形成された混合気は、オゾン又はOラジカルなどの化学種により低温酸化反応が促進される結果、所定のタイミングで安定的に着火及び燃焼する。
【0073】
一方、ステップS5においてECUは、圧縮行程の終期における任意のタイミングで、プラズマ生成装置49によって、燃焼室17内において低温プラズマを生成する。その後のステップS6においてECU10は、圧縮上死点前に、インジェクタ6によって燃料を燃焼室17内に噴射する。このときも、燃焼室17内に形成された混合気は、オゾン又はOラジカルなどの化学種により低温酸化反応が促進される結果、所定のタイミングで安定的に着火及び燃焼する。
【0074】
そして、ステップS7においてECU10は、燃焼開始後に、水噴射弁61によって、燃焼室17内に水を噴射する。急速燃焼が防止され、ノッキング等の異常燃焼が発生することが防止される。
【0075】
尚、ここに開示する技術は、前記の構成に限定されるものではない。前述したプラズマ生成装置は、自動車に搭載したエンジン1の燃焼室17内において低温プラズマを生成する用途に限らず、その他の用途にも広く適用することが可能である。
【符号の説明】
【0076】
1 エンジン
17 燃焼室
2 エンジン本体
4 放電電極(電極)
40 放電電極(電極)
49 プラズマ生成装置(プラズマ生成部)
6 インジェクタ(燃料供給部)
61 水噴射弁(水供給部)