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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 13/00 20060101AFI20220412BHJP
【FI】
B60C13/00 C
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018034036
(22)【出願日】2018-02-28
(65)【公開番号】P2019147493
(43)【公開日】2019-09-05
【審査請求日】2020-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】中島 幸一
【審査官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-062200(JP,A)
【文献】特開2008-273505(JP,A)
【文献】特開2007-083604(JP,A)
【文献】特開2012-001031(JP,A)
【文献】特開2005-125937(JP,A)
【文献】特開昭63-106107(JP,A)
【文献】特開平06-340208(JP,A)
【文献】特開2017-087677(JP,A)
【文献】特開2017-210129(JP,A)
【文献】特開平10-086615(JP,A)
【文献】特表2017-520463(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00- 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイドウォール部に、1以上の標章を有する標章表示部が形成されたタイヤであって、
前記標章表示部は、前記サイドウォール部の表面に設けられる基準面と、この基準面に形成される前記標章とを具え、
前記標章は、その表面が前記基準面に対してタイヤ周方向に傾斜し、
かつ前記標章は、前記標章の表面が前記基準面よりも低いタイヤ周方向一方側の凹部と、前記標章の表面が前記基準面よりも高いタイヤ周方向他方側の凸部とを具え
前記標章表示部は、前記サイドウォール部の表面から一定高さで突出する台座部を具え、この台座部の表面が前記基準面を形成しており、
前記凹部の最大深さ部分における前記基準面からの深さは、前記サイドウォール部の表面からの前記台座部の高さ以下である、
タイヤ。
【請求項2】
前記凹部の最大深さ部分における前記基準面からの深さは、前記凸部の最大高さ部分における前記基準面からの高さの0.8~1.2倍である請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記標章表示部は、前記基準面又は前記標章の表面の一方に、複数の小突起部を具えた請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記小突起部は、上端側が小径をなす円錐台状突起である請求項3記載のタイヤ。
【請求項5】
前記円錐台状突起は、最大太さが50~1000μm、突出高さが50~1000μm、かつ隣り合う円錐台状突起間の中心間距離が200~1000μmである請求項4記載のタイヤ。
【請求項6】
前記小突起部は、上端に向かって厚さが減じる断面台形状の板状突起であり、互いに平行又は非平行で配される請求項3記載のタイヤ。
【請求項7】
前記板状突起は、最大厚さが20~1000μm、突出高さが200~500μm、かつ隣り合う板状突起間の隙間が10~800μmである請求項6記載のタイヤ。
【請求項8】
サイドウォール部に、1以上の標章を有する標章表示部が形成されたタイヤであって、
前記標章表示部は、前記サイドウォール部の表面に設けられる基準面と、この基準面に形成される前記標章とを具え、
前記標章は、その表面が前記基準面に対してタイヤ周方向に傾斜し、
かつ前記標章は、前記標章の表面が前記基準面よりも低いタイヤ周方向一方側の凹部と、前記標章の表面が前記基準面よりも高いタイヤ周方向他方側の凸部とを具え、
前記標章の前記表面は、前記凹部から前記凸部まで連続する傾斜面であり、
前記標章表示部は、前記基準面又は前記標章の表面の一方に、複数の小突起部を具えており、
前記小突起部は、上端側が小径をなす円錐台状突起である、
タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイドウォール部に設けた標章の視認性を向上させたタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤのサイドウォール部の表面には、タイヤのメーカ名、ブランド名、サイズ等を表す文字、記号などである標章が形成されている。そして、これら標章の視認性を高めるために、例えば、標章をサイドウォール部の表面よりも一段高く形成するとともに、標章の表面にリッジを設けることなどが行われている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら従来の標章は、高さが一定であるため、例えその表面にリッジを形成した場合にも、外観が単調でありかつコントラストの変化も少ない。そのため視認性を十分に高めることはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平09-86106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、標章の外観に変化を与えて意匠性を高めるとともに、標章の表面と基準面との間のコントラストに大きな差をもたらして視認性を向上させうるタイヤを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、サイドウォール部に、1以上の標章を有する標章表示部が形成されたタイヤであって、
前記標章表示部は、前記サイドウォール部の表面に設けられる基準面と、この基準面に形成される前記標章とを具え、
前記標章は、その表面が前記基準面に対してタイヤ周方向に傾斜し、
かつ前記標章は、前記標章の表面が前記基準面よりも低いタイヤ周方向一方側の凹部と、前記標章の表面が前記基準面よりも高いタイヤ周方向他方側の凸部とを具える。
【0007】
本発明に係るタイヤでは、前記標章表示部は、前記サイドウォール部の表面から一定高さで突出する台座部を具え、この台座部の表面が前記基準面を形成するのが好ましい。
【0008】
本発明に係るタイヤでは、前記凹部の最大深さ部分における前記基準面からの深さは、前記サイドウォール部の表面からの前記台座部の高さ以下であるのが好ましい。
【0009】
本発明に係るタイヤでは、前記凹部の最大深さ部分における前記基準面からの深さは、前記凸部の最大高さ部分における前記基準面からの高さの0.8~1.2倍であるのが好ましい。
【0010】
本発明に係るタイヤでは、前記標章表示部は、前記基準面又は前記標章の表面の一方に、複数の小突起部を具えるのが好ましい。
【0011】
本発明に係るタイヤでは、前記小突起部は、上端側が小径をなす円錐台状突起であっても良い。
【0012】
本発明に係るタイヤでは、前記円錐台状突起は、最大太さが50~1000μm、突出高さが50~1000μm、かつ隣り合う円錐台状突起間の中心間距離が200~1000μmであるのが好ましい。
【0013】
本発明に係るタイヤでは、前記小突起部は、上端に向かって厚さが減じる断面台形状の板状突起であり、互いに平行又は非並行で配されても良い。
【0014】
本発明に係るタイヤでは、前記板状突起は、最大厚さが20~1000μm、突出高さが200~500μm、かつ隣り合う板状突起間の隙間が10~800μmであるのが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、基準面に形成される標章の表面が、基準面に対してタイヤ周方向に傾斜している。そしてこの傾斜により、標章に、基準面よりも低い凹部と高い凸部とが形成される。そのため標章の外観に変化を与えることができ、意匠性を高めうる。
【0016】
又標章は、その表面が傾斜することで、基準面との間で光の反射の仕方を相違させることができ、コントラストを高めうる。しかも標章は、凹部と凸部とにより、陰影に大きな変化をもたらすとともに、立体感を高めることができる。そしてこれらの相乗効果によって、標章の視認性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明のタイヤの一実施例を示す部分斜視図である。
図2】標章を拡大して示す部分斜視図である。
図3】標章を拡大して示す図2のA-A線断面図である。
図4】(A)は小突起部が円錐台状突起である場合の配列状態を示す部分平面図、(B)は円錐台状突起の断面図である。
図5】(A)、(B)は小突起部が板状突起である場合の配列状態をその断面とともに示す部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態のタイヤ1は、少なくとも一方のサイドウォール部2に、1以上の標章表示部3が配される。
【0019】
標章表示部3は、サイドウォール部2の表面2sに設けられる基準面Xと、この基準面Xに形成される1以上の標章4とを具える。本例では、標章表示部3は、サイドウォール部2の表面2sから一定の高さH5で段差状に突出する台座部5を具え、この台座部5の表面5sが前記基準面Xを形成する。
【0020】
標章4は、タイヤのメーカ名、ブランド名、サイズ等を表すための文字、記号、図形などであり、本例では、基準面Xに、複数の標章4からなるブランド名が形成されている場合が示される。
【0021】
図2、3に示すように、標章4の表面4sは、基準面Xに対してタイヤ周方向に傾斜する。そしてこの傾斜により、標章4には、表面4sが基準面Xよりも低くなる凹部6と、表面4sが基準面Xよりも高くなる凸部7とが設けられる。凹部6は、タイヤ周方向一方側(図では左側)に配され、凸部7は、タイヤ周方向他方側(図では右側)に配される。凹部6と凸部7との境界8は、基準面Xと同高さである。本例では、前記境界8はタイヤ半径方向にのびる。
【0022】
このように標章4の表面4sが傾斜し、かつ凹部6と凸部7とが形成されることにより、標章4の一部が台座部5に埋まったような新規なデザインとなり、標章4の外観に変化を与え、意匠性を高めることができる。又標章4の表面4sが傾斜することで、基準面Xとの間で光の反射の仕方を相違させることができ、コントラスト(明暗の差)を高めうる。しかも標章4は、凹部6と凸部7とにより、陰影に大きな変化をもたらすとともに、立体感を高めることができる。そしてこれらの相乗効果によって、標章4の視認性を向上させることができる。
【0023】
図3に示すように、本例では、凹部6の最大深さ部分6eにおける基準面Xからの深さD6は、サイドウォール部2の表面2sからの台座部5の高さH5以下である。本例では D6<H5 の場合が示される。これにより、最大深さ部分6eにおけるサイドウォールゴムのゲージ厚さを、標章表示部3以外の部分におけるサイドウォールゴムのゲージ厚さ以上に確保することができ、凹部6に起因する損傷を抑制することができる。
【0024】
前記深さD6は、凸部7の最大高さ部分7eにおける基準面Xからの高さH7の0.8~1.2倍、即ちD6とH7とがほぼ等しいことが好ましい。これにより凹部6と凸部7との配分をバランス化し、視認性の向上効果を高めうる。同様の理由により、前記境界8は、標章4におけるタイヤ周方向一方側の端部EAからのタイヤ周方向距離LAが、タイヤ周方向他方側の端部EBからのタイヤ周方向距離LBの0.8~1.2倍であるのも好ましい。
【0025】
ここで、前記端部EAは、標章4のうちで最もタイヤ周方向一方側に位置する端部を意味し、端部EBは、標章4のうちで最もタイヤ周方向他方側に位置する端部を意味する。また凹部6の最大深さ部分6eは、前記端部EAの位置に形成され、凸部7の最大高さ部分7eは、前記端部EBの位置に形成される。
【0026】
標章4の表面4sは、平面であるのが好ましいが、例えばタイヤ周方向に円弧状に湾曲してのびる曲面であっても良い。
【0027】
又標章表示部3では、図4(A)、(B)に示すように、基準面X又は標章4の表面4sのうちの一方の面Sに、この面Sから突出する複数の小突起部15を具えることが好ましい。本例では、小突起部15が、上端側が小径をなす円錐台状突起16である場合が示される。この円錐台状突起16では、最大太さD1が50~1000μm、前記面Sからの突出高さH1が50~1000μm、かつ隣り合う小突起部15、15間の中心間距離L1が200~1000μmであるのが好ましい。
【0028】
このような円錐台状突起16は、光を乱反射させ、前記面S(基準面X又は標章4の表面4s)を黒く見せることができる。その結果、標章4の輪郭形状をより明確化でき、標章4の視認性をさらに高めることができる。本発明者の研究の結果、円錐台状突起16の最大太さD1、突出高さH1、及び中心間距離L1が前記範囲を外れると、面Sが光の反射によって白っぽく見え、標章4と基準面Xとのコントラスト差が減じる傾向を招く。なお、小突起部15が円錐台状とすることで、円柱状に比して強度を高めつつ光の反射をさらに抑えることができる。
【0029】
本例では円錐台状突起16が、碁盤目状に配列する場合が示されるが、千鳥状の配列でも良く、又中心間距離L1が前記範囲を満たすならばランダムに配列することもできる。
【0030】
図5(A)、(B)に示すように、小突起部15の他の例を示す。本例では、小突起部15が、上端に向かって厚さが減じる断面台形状の板状突起17でる場合が示される。板状突起17は、図5(A)に示すように互いに平行に配することもでき、又図5(B)に示すように平行でない配置(非並行)で配することもできる。この板状突起17では、最大厚さD2が20~1000μm、突出高さH2が200~500μm、かつ隣り合う板状突起間の隙間L2が10~800μmであるのが好ましい。なお板状突起17が非平行で配列する場合には、隙間L2の最大値L2max と最小値L2minとの平均値が前記10~800μmの範囲であるのが好ましい。
【0031】
この板状突起17も円錐台状突起16と同様、光を乱反射させ、面S(基準面X又は標章4の表面4s)を黒く見せることができる。その結果、標章4の輪郭形状をより明確化でき、標章4の視認性をさらに高めることができる。本発明者の研究の結果、板状突起17の最大厚さD2、突出高さH2、及び隙間L2が前記範囲を外れると、面Sが光の反射によって白っぽく見え、標章4と基準面Xとのコントラスト差が減じる傾向を招く。なおコントラストの観点からは、板状突起17が非平行で配列するのがより好ましい。
【0032】
標章表示部3では、台座部5を設けることなく、サイドウォール部2の表面2sに標章4を直接に形成することもできる。この場合、サイドウォール部2の表面2sが、基準面Xを構成する。このとき標章表示部3を他の領域と区別するため、サイドウォール部2の表面2sに、標章表示部3の周囲を囲む小高さのリブなどを設けることが好ましい。
【0033】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【実施例
【0034】
サイドウォール部の表面に標章表示部を表1の仕様で形成したタイヤを試作し、標章の視認性を比較した。台座部の高さは、各タイヤとも同一であり、又標章の台座部の表面(基準面X)からの突出高さ(標章の表面が傾斜する場合は、最大の突出高さ)は、各タイヤとも同一である。
【0035】
比較例1において、標章は、台座部からの高さが一定である。比較例2において、標章の表面は傾斜しているが、標章全体が台座部から突出している。実施例1~6において、凹部の最大深さ部分における深さD6は、台座部の高さH5以下である。
【0036】
比較例1、2、実施例1~3、5、6において、標章の表面に小突起部を形成している。比較例1、2、実施例1~3では、小突起部は円錐台状突起であり、その最大太さD1は320μm、突出高さH1は500μm、中心間距離L1は400μmであった。実施例5、6では、小突起部は板状突起であり、その最大厚さD2は160μm、突出高さH2は200μm、隙間L2は200μmであった。
【0037】
視認性は、目視による官能評価により比較例1を100とする指数で評価した。数値が大なほど優れている。
【0038】
【表1】
【0039】
表1の如く実施例は、標章の視認性に優れているのが確認できる。
【符号の説明】
【0040】
1 タイヤ
2サイドウォール部
2s 表面
3 標章表示部
4 標章
4s 表面
5 台座部
5s 表面
6 凹部
6e 最大深さ部分
7 凸部
7e 最大高さ部分
15 小突起部
16 円錐台状突起
17 板状突起
X 基準面
図1
図2
図3
図4
図5