(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】水洗大便器
(51)【国際特許分類】
E03D 5/092 20060101AFI20220412BHJP
E03D 5/10 20060101ALI20220412BHJP
【FI】
E03D5/092
E03D5/10
(21)【出願番号】P 2018057086
(22)【出願日】2018-03-23
【審査請求日】2021-01-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】濱本 幸恵
(72)【発明者】
【氏名】小野 博史
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-295353(JP,A)
【文献】特開2004-300814(JP,A)
【文献】特開2000-309974(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0066125(US,A1)
【文献】中国実用新案第200958239(CN,Y)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 5/092
E03D 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚物を受ける便器本体と、
停電時に、停電時洗浄を複数工程で実行させて、前記便器本体から前記汚物を排出させる停電時洗浄機構と
を備え、
前記停電時洗浄機構は、
操作レバーが手動操作によって初期位置から所定位置まで1回操作されることで、前記複数工程を自動的に実行させ
、
前記操作レバーが前記所定位置まで操作され、前記操作レバーが解放された後に、前記複数工程を開始する
ことを特徴とする水洗大便器。
【請求項2】
前記便器本体は、
前記汚物を受け、リム吐水口が形成されるボウル部と、
前記ボウル部に接続され前記汚物を排出するとともに、ゼット吐水口が形成されるトラップ部と
を備え、
前記停電時洗浄機構は、
前記ボウル部を洗浄する洗浄水を前記リム吐水口から吐出させる第1工程と、
前記第1工程の開始後に前記ゼット吐水口からの洗浄水の吐出を開始させる第2工程と、
前記第2工程の開始後に前記リム吐水口から洗浄水を吐出させて、前記トラップ部への封水の形成を開始させる第3工程と
を停電時に前記操作レバーが前記1回操作されることで自動的に実行させる
ことを特徴とする請求項
1に記載の水洗大便器。
【請求項3】
前記停電時洗浄機構は、
前記操作レバーが前記所定位置から前記初期位置まで戻る間に、前記リム吐水口から吐出させる洗浄水の流量、および前記ゼット吐水口から吐出させる洗浄水の流量を制御して前記複数工程を自動的に実行させる
ことを特徴とする請求項
2に記載の水洗大便器。
【請求項4】
前記停電時洗浄機構は、
前記操作レバーを前記所定位置から前記初期位置に戻す方向に付勢する付勢部
を備えることを特徴とする請求項1~
3のいずれか一つに記載の水洗大便器。
【請求項5】
前記停電時洗浄機構は、
前記操作レバーが前記所定位置から前記初期位置まで戻る場合に、前記複数工程に応じて複数のスイッチを作動させる作動部と、
前記操作レバーが前記初期位置から前記所定位置まで操作される場合に、前記作動部を退避させることで、前記複数のスイッチが作動することを防止する退避部と
を備えることを特徴とする請求項1~
4のいずれか一つに記載の水洗大便器。
【請求項6】
前記作動部は、
前記操作レバーとともに回転し、回転に伴って前記複数のスイッチを押すことで、前記複数工程に応じて前記複数のスイッチを作動させる複数のスイッチ押し部を備え、
前記退避部は、
前記操作レバーが前記初期位置から前記所定位置まで操作される場合に、前記複数のスイッチ押し部を押し上げることで、前記複数のスイッチと前記複数のスイッチ押し部との間に隙間を生じさせる
ことを特徴とする請求項
5に記載の水洗大便器。
【請求項7】
前記作動部は、
前記操作レバーの回転軸から偏心した回転軸を中心に回転可能であり、前記複数工程に応じて前記複数のスイッチを作動させる複数のスイッチ押し部と、
前記操作レバーが前記所定位置から前記初期位置まで戻る場合に、前記操作レバーの回転に対する前記複数のスイッチ押し部の相対的な回転を規制する規制部と
を備え、
前記退避部は、
前記操作レバーが前記初期位置から前記所定位置まで操作される場合に、前記操作レバーの回転に対して前記複数のスイッチ押し部を相対的に回転させることで、前記複数のスイッチ押し部を前記複数のスイッチに対して退避させる
ことを特徴とする請求項
5に記載の水洗大便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、水洗大便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、停電時に、手動操作によって汚物をボウル部から排出させる水洗大便器が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、停電時に手動操作によって汚物を排出する場合には、1回の洗浄動作に対して複数工程を手動操作によって行うため、操作が煩雑になるという問題がある。
【0005】
実施形態の一態様は、停電時に、手動操作による洗浄動作を容易にする水洗大便器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の一態様に係る水洗大便器は、汚物を受ける便器本体と、停電時に、停電時洗浄を複数工程で実行させて、前記便器本体から前記汚物を排出させる停電時洗浄機構とを備え、前記停電時洗浄機構は、操作レバーが手動操作によって初期位置から所定位置まで1回操作されることで、前記複数工程を自動的に実行させることを特徴する。
【0007】
これにより、水洗大便器は、停電時に、1回の手動操作で複数工程により汚物を排出することができる。そのため、水洗大便器は、停電時に、使用者に複雑な操作をさせることなく洗浄動作を容易に行うことができる。
【0008】
また、前記停電時洗浄機構は、前記操作レバーが前記所定位置まで操作され、前記操作レバーが解放された後に、前記複数工程を開始することを特徴とする。
【0009】
これにより、水洗大便器は、使用者の操作によって洗浄水の流量が変化することを抑制し、通常時と同様の洗浄を実行することができる。
【0010】
また、前記便器本体は、汚物を受け、リム吐水口が形成されるボウル部と、前記ボウル部に接続され前記汚物を排出するとともに、ゼット吐水口が形成されるトラップ部とを備え、前記停電時洗浄機構は、前記ボウル部を洗浄する洗浄水を前記リム吐水口から吐出させる第1工程と、前記第1工程の開始後に前記ゼット吐水口からの洗浄水の吐出を開始させる第2工程と、前記第2工程の開始後に前記リム吐水口から洗浄水を吐出させて、前記トラップ部への封水の形成を開始させる第3工程とを停電時に前記操作レバーが前記1回操作されることで自動的に実行させることを特徴とする。
【0011】
これにより、水洗大便器は、停電時に、操作レバーが手動操作により1回操作されることで、洗浄工程、排水工程、および封水工程を自動的に実行することができる。そのため、水洗大便器は、停電時に、通常時と同様の洗浄を、複雑な操作によらず実行することができる。
【0012】
また、前記停電時洗浄機構は、前記操作レバーが前記所定位置から前記初期位置まで戻る間に、前記リム吐水口から吐出させる洗浄水の流量、および前記ゼット吐水口から吐出させる洗浄水の流量を制御して前記複数工程を自動的に実行させることを特徴とする。
【0013】
これにより、水洗大便器は、停電時にも、汚物を通常時と同様に排出することができる。
【0014】
また、前記停電時洗浄機構は、前記操作レバーを前記所定位置から前記初期位置に戻す方向に付勢する付勢部を備えることを特徴とする。
【0015】
これにより、水洗大便器は、操作レバーを初期位置まで自動的に戻すことができる。
【0016】
また、前記停電時洗浄機構は、前記操作レバーが前記所定位置から前記初期位置まで戻る場合に、前記複数工程に応じて複数のスイッチを作動させる作動部と、前記操作レバーが前記初期位置から前記所定位置まで操作される場合に、前記作動部を退避させることで、前記複数のスイッチが作動することを防止する退避部とを備えることを特徴とする。
【0017】
これにより、水洗大便器は、操作レバーが初期位置から所定位置まで回転される場合に、各スイッチが押されることを防止することができる。
【0018】
また、前記作動部は、前記操作レバーとともに回転し、回転に伴って前記複数のスイッチを押すことで、前記複数工程に応じて前記複数のスイッチを作動させる複数のスイッチ押し部を備え、前記退避部は、前記操作レバーが前記初期位置から前記所定位置まで操作される場合に、前記複数のスイッチ押し部を押し上げることで、前記複数のスイッチと前記複数のスイッチ押し部との間に隙間を生じさせることを特徴とする。
【0019】
これにより、水洗大便器は、操作レバーが初期位置から所定位置まで回転される場合に、各スイッチが押されることを防止することができる。
【0020】
また、前記作動部は、前記操作レバーの回転軸から偏心した回転軸を中心に回転可能であり、前記複数工程に応じて前記複数のスイッチを作動させる複数のスイッチ押し部と、前記操作レバーが前記所定位置から前記初期位置まで戻る場合に、前記操作レバーの回転に対する前記スイッチ押し部の相対的な回転を規制する規制部とを備え、前記退避部は、前記操作レバーが前記初期位置から前記所定位置まで操作される場合に、前記操作レバーの回転に対して前記複数のスイッチ押し部を相対的に回転させることで、前記複数のスイッチ押し部を前記複数のスイッチに対して退避させることを特徴とする。
【0021】
これにより、水洗大便器は、操作レバーが初期位置から所定位置まで回転される場合に、各スイッチが押されることを防止することができる。
【発明の効果】
【0022】
実施形態の一態様によれば、停電時に、手動操作による洗浄動作を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、水洗大便器を示す模式側断面図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る便器本体の概略斜視図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る停電時洗浄機構の斜視図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係る停電時洗浄機構の左側面図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態に係る停電時洗浄機構の右側面図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態に係る停電時洗浄機構の正面図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態に係る停電時洗浄機構の一部を示す分解斜視図(その1)である。
【
図8】
図8は、第1実施形態に係る停電時洗浄機構の一部を示す分解斜視図(その2)である。
【
図9】
図9は、第1実施形態に係る停電時洗浄機構の一部の背面図(その1)である。
【
図10】
図10は、第1実施形態に係る停電時洗浄機構の一部の背面図(その2)である。
【
図11】
図11は、第1実施形態に係る停電時洗浄機構の一部の斜め後方斜視図(その1)である。
【
図12】
図12は、第1実施形態に係る停電時洗浄機構の一部の背面図(その3)である。
【
図13】
図13は、プレートずらし部が、プレート押し上げ部を手前側に押し上げた状態を示す図である。
【
図14】
図14は、第1実施形態に係る停電時洗浄機構の一部の斜め後方斜視図(その2)である。
【
図15】
図15は、第1実施形態に係る停電時洗浄機構の一部の背面図(その4)である。
【
図16】
図16は、第1リム用スイッチ押し部がリム用スイッチを押した状態を示す図(その1)である。
【
図17A】
図17Aは、第1リム用スイッチ押し部がリム用スイッチを押した状態を示す図(その2)である。
【
図17B】
図17Bは、ゼット用スイッチ押し部がゼット用スイッチを押した状態を示す図である。
【
図17C】
図17Cは、第2リム用スイッチ押し部がリム用スイッチを押した状態を示す図である。
【
図18】
図18は、第1実施形態に係る停電時洗浄機構の一部の背面図(その5)である。
【
図19】
図19は、第2実施形態に係る便器本体の概略斜視図である。
【
図20】
図20は、第2実施形態に係る停電時洗浄機構の斜視図(その1)である。
【
図21】
図21は、第2実施形態に係る停電時洗浄機構の斜視図(その2)である。
【
図22】
図22は、第2実施形態に係る停電時洗浄機構の分解斜視図である。
【
図23】
図23は、第2実施形態に係る停電時洗浄機構の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する水洗大便器の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0025】
まず、水洗大便器1の全体構成について
図1を参照して説明する。
図1は、水洗大便器1を示す模式側断面図である。
【0026】
図1においては、説明の便宜上、鉛直上向きを正方向とするZ軸を含む3次元の直交座標系を図示している。なお、直交座標系は、他の図においても図示している場合がある。
【0027】
直交座標系は、X軸の正方向視を「右側面」、X軸の負方向視を「左側面」と規定し、X軸の正方向を右側、およびX軸の負方向を左側と規定している。また、直交座標系は、Y軸の正方向視を「正面」と規定し、Y軸の正方向を前側(前方)、およびY軸の負方向を後側(後方)と規定している。また、直交座標系は、Z軸の正方向を上側(上方)、およびZ軸の負方向を下側(下方)と規定している。このため、以下の説明では、X軸方向を左右方向、Y軸方向を前後方向、Z軸方向を上下方向という場合がある。
【0028】
図1に示すように、水洗大便器1は、便器本体2と、便器本体2に使用される洗浄水を貯える洗浄水タンク装置3とを備える。便器本体2は、トイレ室の床面に設置され、洗浄水タンク装置3は、便器本体2の上部に設置される。なお、便器本体2は、床置き式に限らず、壁掛け式であってもよい。また、洗浄水タンク装置3は、便器本体2から離れた場所に設置されてもよい。
【0029】
便器本体2は、汚物を受けるボウル部21と、洗浄水タンク装置3から供給される洗浄水をボウル部21へ導く導水路22と、ボウル部21の下部に入口が接続され、ボウル部21内の汚物を排水管(図示せず)へ排出する排水トラップ管路23とを備える。排水トラップ管路23は、トラップ部を構成する。
【0030】
ボウル部21には、排水トラップ管路23の入口に向けて洗浄水を吐出するゼット吐水口24と、リム部25から洗浄水を吐出してボウル部21内に洗浄水の旋回流を形成するリム吐水口26とが形成される。導水路22は、洗浄水タンク装置3から供給される洗浄水をゼット吐水口24およびリム吐水口26へ導く。
【0031】
排水トラップ管路23は、その入口から上方へ延びる上昇路部分と、上昇路部分の末端から下方に延びて排水管に接続される下降路部分とを備える。ボウル部21から排水トラップ管路23の上昇路部分にかけては、水封状態を形成するための洗浄水が貯留される。なお、以下においては、ボウル部21および排水トラップ管路23の上昇路部分に貯留される洗浄水を「溜水」と記載する。
【0032】
水洗大便器1は、汚物を排出する場合には、まず、リム吐水口26から洗浄水を吐出するリム給水を行い、ボウル部21を洗浄しつつ、汚物をボウル部21の中央付近に集める洗浄工程を行う。次に、水洗大便器1は、ゼット吐水口24から洗浄水を吐出させて、サイホン作用を効率的に発生させつつ、ボウル部21内の汚物を上記サイホン作用を利用して排水トラップ管路23へ引き込んで排出する排出工程を行う。次に、水洗大便器1は、リム吐水口26から洗浄水を吐出するリム給水を行い溜水の水位が所定水位となるように、封水工程を行う。すなわち、封水工程では、洗浄水による封水が形成される。
【0033】
このように、水洗大便器1は、複数工程を実行することで、汚物を排出している。水洗大便器は、通常、複数工程、および複数工程における洗浄水の流量をコントローラ(不図示)によって制御している。なお、複数工程では、前工程が終了する前に次工程が開始されてもよい。
【0034】
水洗大便器1は、停電時には、コントローラによって複数工程を実行して汚物を排出することができないため、停電時に汚物を排出するための停電時洗浄機構を有している。従来の水洗大便器は、停電時には、例えば、使用者が停電時操作レバー(以下、「操作レバー」と称する。)の操作方向を切り替えながら、操作レバーを操作することで、上記した給水工程、排出工程、封水工程を通常時と同様に実行することができる。
【0035】
しかしながら、従来の水洗大便器は、使用者が、操作レバーを複数回、所定間隔で操作することで、通常時の複数工程を停電時に実行している。例えば、従来の水洗大便器は、操作レバーが初期位置から一方向に第1所定時間回転されることで、給水工程を実行し、その後、操作レバーが一方向とは逆方向の他方向に第2所定時間回転されることで、排水工程を実行している。そして、従来の水洗大便器は、排水工程後、操作レバーが一方向に第3所定時間回転されることで、封水工程を実行している。
【0036】
このように、使用者が、操作レバーを手動操作することで通常時の複数工程による洗浄を行うには、操作レバーの操作方向と操作時間とを使用者が調整しなければならず、通常時と同様の洗浄を行うことが困難であった。
【0037】
本実施形態に係る水洗大便器1は、停電時の洗浄操作を容易にする。以下において、本実施形態に係る水洗大便器1について詳しく説明する。
【0038】
(第1実施形態)
第1実施形態に係る水洗大便器1について
図2~
図8を参照し説明する。
図2は、第1実施形態に係る便器本体2の概略斜視図である。
図3は、第1実施形態に係る停電時洗浄機構4の斜視図である。
図4は、第1実施形態に係る停電時洗浄機構4の左側面図である。
図5は、第1実施形態に係る停電時洗浄機構4の右側面図である。
図6は、第1実施形態に係る停電時洗浄機構4の正面図である。
図7は、第1実施形態に係る停電時洗浄機構4の一部を示す分解斜視図(その1)である。
図8は、第1実施形態に係る停電時洗浄機構4の一部を示す分解斜視図(その2)である。なお、
図2~
図8は、停電時洗浄機構4が使用者によって操作されていない初期状態を示している。
【0039】
また、以下では、板状の部材などでは、左側の面、すなわち左側面図において正面となる面を表面とし、表面とは逆側の面を裏面として説明することがある。また、X軸の負方向を手前側、X軸の正方向を奥側として説明することがある。
【0040】
水洗大便器1は、便器本体2と、洗浄水タンク装置3(
図1参照)と、停電時洗浄機構4とを備える。便器本体2、および洗浄水タンク装置3は、
図1と同様の構成であり、ここでの詳しい説明は省略する。
【0041】
停電時洗浄機構4は、便器本体2の左後方に設けられたケース5に収容される。停電時洗浄機構4では、使用者が操作可能となるように、操作レバー40のハンドル部45がケース5に形成された円弧状の孔5aからケース5の外側に突出している。なお、停電時洗浄機構4は、便器本体2に収容され、蓋部などによって覆われてもよい。この場合、停電時には、蓋部を開くことで、操作レバー40が操作可能となる。
【0042】
停電時洗浄機構4は、使用者によって操作レバー40が初期位置から動作開始位置(所定位置)まで回転されて、操作レバー40が解放されると、複数工程を自動的に実行する。動作開始位置は、予め設定された位置であり、例えば、操作レバー40が初期位置から90度回転した位置である。なお、動作開始位置は、複数工程を開始する際に余裕代を設けてもよい。
【0043】
停電時洗浄機構4は、支持部10と、回転部11と、プレートずらし部12と、スイッチ部13と、減速部14とを備える。
【0044】
支持部10は、上面視において、U字状に形成され、回転部11を回転可能に支持する。支持部10は、第1支持部15と、第2支持部16と、接続部17とを備える。第1支持部15は、板状に形成される。第1支持部15は、円形部30と、円形部30の周縁から後方に向けて延びる第1フランジ31と、円形部30の周縁から前方斜め上に向けて延びる第2フランジ32とを備える。
【0045】
円形部30は、左右方向に延びる回転部11の回転軸を中心として円形に形成される。円形部30には、回転軸と同軸であり、回転部11の軸部となるネジ33が挿入される孔30aが形成される。また、円形部30には、回転軸を中心とした円弧状であり、プレート押し上げ部42のアーム59が挿入される孔30bが形成される。また、円形部30の表面には、孔30aと孔30bとの間に、アーム59の先端に設けられた摺動部59aが摺動可能な摺動溝30cが形成される。摺動溝30cは、回転軸と同軸であり、環状に形成される。
【0046】
また、円形部30の裏面には、奥側へ向けて突出する突出部30dが形成される。突出部30dは、孔30aの周囲に形成される。突出部30dは、操作レバー40とともに、渦巻きバネ47を挟持する。また、円形部30の裏面には、奥側へ向けて突出し、渦巻きバネ47の一端が係止される係止部30eが形成される。
【0047】
第2支持部16は、板状に形成される。第2支持部16は、第1支持部15よりも奥側に配置され、第1支持部15と向かい合うように形成される。第2支持部16の表面には、プレートずらし部12が、回転可能に取り付けられる。
【0048】
また、第2支持部16の裏面には、奥側に向けて突出し、スイッチ部13を保持する保持枠16aが形成される。保持枠16aは、スイッチ部13の外形形状に合わせて形成され、例えば、矩形状に形成される。
【0049】
第2支持部16には、スイッチ部13のリム用スイッチ13aが挿入される孔16b、およびゼット用スイッチ13bが挿入される孔16cが形成される。孔16b、16cは、前後方向に並んで形成される。また、第2支持部16には、プレートずらし部12の取付部68が挿入される孔16dが形成される。
【0050】
接続部17は、左右方向に沿って形成され、第1支持部15と第2支持部16とを接続する。接続部17は、第1支持部15の第1フランジ31の上端と、第2支持部16の上端とを接続する第1接続部17aと、第1フランジ31の下端と、第2支持部16の下端とを接続する第2接続部17bとを備える。第2接続部17bには、上方に向けて突出するストッパー17cが形成される。ストッパー17cは、プレートずらし部12の回転を規制する。
【0051】
回転部11は、操作レバー40と、プッシュプレート41と、プレート押し上げ部42とを備える。回転部11の大部分は、支持部10の第1支持部15と第2支持部16との間に配置される。
【0052】
操作レバー40は、板状に形成される。操作レバー40は、円形部44と、円形部44の周縁から下方に向けて延びるハンドル部45とを備える。操作レバー40は、ネジ33やナット34などによって第1支持部15に対して回転可能となるように取り付けられる。
【0053】
円形部44の前方の周縁には、ギア44aが形成される。ギア44aは、減速部14の第1ギア14aと噛み合う。また、円形部44の表面には、手前側に突出し、渦巻きバネ47の他端が係止される係止部44bが形成される。
【0054】
円形部44には、ネジ33が挿入される孔44cと、プッシュプレート41のピン50a~50cが挿入される孔44d~44fとが形成される。また、円形部44には、圧縮コイルバネ54a、54b、61の一端が挿入される孔44g~44iが形成され、圧縮コイルバネ54a、54b、61の一端が係止される。
【0055】
円形部44と第1支持部15の突出部30dとの間には、一対のバネ保持板46a、46bによって挟まれた渦巻きバネ47が配置される。渦巻きバネ47は、操作レバー40が初期位置から、例えば、90度回転して動作開始位置まで操作され、操作レバー40が解放された場合に、操作レバー40などの回転部11が初期位置に戻るように付勢力を発生させる。渦巻きバネ47は、付勢部を構成する。
【0056】
ハンドル部45は、クランク状に形成され、一部が手前側に突出するように形成される。ハンドル部45の手前側に突出する部位は、ケース5の孔5aに挿入される。すなわち、ハンドル部45の一部は、孔5aからケース5の外側(手前側)に突出するように設けられる。なお、ハンドル部45は、クランク状に限定されず、使用者が操作可能となるようにケース5の外側に突出すればよく、例えば、L字状であってもよい。
【0057】
プッシュプレート41は、第2支持部16と、操作レバー40の円形部44との間に配置される。プッシュプレート41は、扇状に形成される。
【0058】
プッシュプレート41の表面には、手前側(操作レバー40側)に向けて突出する3本のピン50a~50cが形成される。ピン50a~50cは、円柱状であり、操作レバー40の円形部44に形成された孔44d~44fに挿入される。なお、ピン50a~50cは、孔44d~44fを貫通するように形成される。
【0059】
プッシュプレート41は、ピン50a~50cが操作レバー40の円形部44の孔44d~44fに挿入されることで、操作レバー40の円形部44と一体的に回転する。また、ピン50a~50cは、孔44d~44fに対して左右方向に摺動可能である。すなわち、プッシュプレート41は、操作レバー40と一体的に回転し、かつ操作レバー40に対して左右方向へ移動可能である。
【0060】
プッシュプレート41と操作レバー40の円形部44との間のピン50a、50bの周囲には、圧縮コイルバネ54a、54bが配置される。プッシュプレート41は、圧縮コイルバネ54a、54bによって奥側(第2支持部16側)に向けて付勢されている。圧縮コイルバネ54a、54bの一端は、操作レバー40の円形部44に係止され、圧縮コイルバネ54a、54bの他端は、プッシュプレート41に係止される。
【0061】
また、プッシュプレート41の裏面には、奥側に向けて突出するスイッチ押し部51が形成される。スイッチ押し部51は、回転部11の回転軸を中心として円弧状に形成される。スイッチ押し部51は、停電時に複数工程の洗浄を実行可能となるように複数形成される。具体的には、スイッチ押し部51は、第1リム用スイッチ押し部51aと、第2リム用スイッチ押し部51bと、ゼット用スイッチ押し部51cとを備える。スイッチ押し部51は、作動部を構成する。
【0062】
第1リム用スイッチ押し部51a、および第2リム用スイッチ押し部51bは、略同一径であり、かつ周方向に離れて形成される。第1リム用スイッチ押し部51aは、洗浄工程を実行する場合に、リム用スイッチ13aを押すように形成される。第2リム用スイッチ押し部51bは、封水工程を実行する場合に、リム用スイッチ13aを押すように形成される。
【0063】
ゼット用スイッチ押し部51cは、第1リム用スイッチ押し部51a、および第2リム用スイッチ押し部51bよりも径方向内側に形成される。ゼット用スイッチ押し部51cは、排出工程を実行する場合に、ゼット用スイッチ13bを押すように形成される。
【0064】
なお、各スイッチ押し部51a~51cの突出量や、周方向の長さは、各工程における洗浄水の流量、すなわち各工程のシーケンスに応じて設定される。
【0065】
プッシュプレート41では、第1リム用スイッチ押し部51a、および第2リム用スイッチ押し部51bが、ゼット用スイッチ13bよりも径方向外側に形成されることで、第1リム用スイッチ押し部51a、および第2リム用スイッチ押し部51bの周方向の長さを調整することが容易となる。そのため、複数工程中に2回押されるリム用スイッチ13aの押し時間、すなわち洗浄水の流量の調整が容易となる。
【0066】
プレート押し上げ部42は、フレーム部56と、押し上げ部57と、取付部58と、アーム59とを備える。プレート押し上げ部42は、取付部58を介してプッシュプレート41に取り付けられ、プッシュプレート41と一体的に移動する。すなわち、プレート押し上げ部42は、プッシュプレート41とともに操作レバー40と一体的に回転し、かつプッシュプレート41とともに操作レバー40に対して左右方向へ移動可能である。プレート押し上げ部42は、退避部を構成する。
【0067】
フレーム部56は、プッシュプレート41と第1支持部15との間に配置される。フレーム部56は、回転部11の回転軸を中心とした円弧状に形成される。
【0068】
押し上げ部57は、フレーム部56から奥側に向けて延出して形成される。押し上げ部57は、回転部11の回転軸を中心とした円弧状に形成される。
【0069】
押し上げ部57には、周方向における先端側、具合的には、操作レバー40が初期位置から動作開始位置まで回転する方向における押し上げ部57の先端側に、テーパ面57aが形成される。また、押し上げ部57には、テーパ面57aから周方向に沿って、プレートずらし部12の突出部66に摺動する摺動面57bが形成される。押し上げ部57は、摺動面57bがプレートずらし部12の突出部66に摺動することで手前側に押し出される。
【0070】
押し上げ部57は、操作レバー40が初期位置から動作開始位置まで回転される場合に、プッシュプレート41の各スイッチ押し部51a~51cが、各スイッチ13a、13bに当接することを防止するように形成される。
【0071】
摺動面57bの周方向の長さは、操作レバー40が初期位置から動作開始位置まで回転される場合に、各スイッチ押し部51a~51cが、手前側に押し上げられ、各スイッチ13a、13bとの間に隙間を形成した状態で、各スイッチ13a、13bの手前側を通過するように設定される。
【0072】
取付部58は、フレーム部56の手前側の端から径方向内側に向けて延出して形成される。取付部58には、取付孔58aが形成され、取付孔58aに取付部材60を介してプッシュプレート41のピン50cが取り付けられ、固定される。例えば、取付部材60は、取付孔58aに接着され、または圧入されて固定される。また、例えば、ピン50cは、取付部材60に接着され、または圧入されて固定される。
【0073】
これにより、プレート押し上げ部42は、プッシュプレート41とともに回転し、プッシュプレート41とともに操作レバー40に対して左右方向に移動可能となる。
【0074】
また、取付部58と操作レバー40との間のピン50cの周囲には、圧縮コイルバネ61が配置される。プレート押し上げ部42、およびプッシュプレート41は、圧縮コイルバネ61によって、手前側に向けて付勢される。圧縮コイルバネ61の一端は、取付部58に係止され、圧縮コイルバネ61の他端は、操作レバー40に係止される。
【0075】
なお、圧縮コイルバネ54a、54bと、圧縮コイルバネ61とは、操作レバー40に対して逆側に配置されており(
図13参照)、圧縮コイルバネ54a、54bは、プッシュプレート41およびプレート押し上げ部42を奥側に付勢し、圧縮コイルバネ61は、プッシュプレート41およびプレート押し上げ部42を手前側に付勢する。
【0076】
圧縮コイルバネ54a、54b、61のバネ定数は、プレートずらし部12によって、プッシュプレート41およびプレート押し上げ部42が手前側に押し上げられていない場合、例えば、操作レバー40が初期位置にある場合や、操作レバー40が動作開始位置から初期位置に戻る場合には、プレート押し上げ部42およびプッシュプレート41が奥側に付勢されるように設定されている。
【0077】
アーム59は、取付部58の径方向内側の端から手前側に向けて突出し、L字状に形成される。アーム59は、第1支持部15の孔30bに挿入される。アーム59の手前側の先端には、奥側に向けて摺動部59aが形成される。摺動部59aは、球状に形成される。プレート押し上げ部42が手前側に押し上げられていない場合には、摺動部59aが、摺動溝30cに当接することで、プレート押し上げ部42およびプッシュプレート41の奥側への移動が規制される。
【0078】
プレートずらし部12は、取付部68を介して第2支持部16に回転可能に取り付けられる。プレートずらし部12は、ケース65と、突出部66と、ねじりコイルバネ67とを備える。プレートずらし部12は、退避部を構成する。
【0079】
ケース65は、環状であり、第2支持部16側に開口部65aが形成され、ねじりコイルバネ67を収容する。ケース65の外周壁には、操作レバー40が初期位置から動作開始位置まで回転される場合に、ストッパー17cに当接し、プレートずらし部12の回転を規制する突起部65bが形成される。
【0080】
プレートずらし部12は、プレートずらし部12の初期位置から回転した場合には、プレートずらし部12の初期位置に向けてねじりコイルバネ67によって付勢される。プレートずらし部12の初期位置は、操作レバー40が初期位置から動作開始位置まで回転される場合に、突出部66が押し上げ部57のテーパ面57aに当接可能な位置である。
【0081】
突出部66は、プレートずらし部12の表面から手前側に向けて突出して形成される。突出部66の表面には、操作レバー40が初期位置から動作開始位置に向けて回転される場合に、プレート押し上げ部42のテーパ面57aと摺動するテーパ面66aと、プレート押し上げ部42の摺動面57bと摺動する摺動面66bとが形成される。
【0082】
スイッチ部13は、リム用スイッチ13aと、ゼット用スイッチ13bとを備える。リム用スイッチ13aおよびゼット用スイッチ13bは、前後方向に並んで配置される。すなわち、スイッチ部13は、前後方向に、リム用スイッチ13aとゼット用スイッチ13bとが配置される縦置きのスイッチである。リム用スイッチ13aは、ゼット用スイッチ13bよりも後方に配置される。
【0083】
リム用スイッチ13aは、第1リム用スイッチ押し部51a、および第2リム用スイッチ押し部51bによって押された場合に、リム吐水口26から洗浄水を吐水させる機械式のスイッチである。ゼット用スイッチ13bは、ゼット用スイッチ押し部51cによって押された場合に、ゼット吐水口24から洗浄水を吐水させる機械式のスイッチである。
【0084】
減速部14は、ガバナである。減速部14は、操作レバー40が手動操作によって初期位置から動作開始位置まで回転されて、操作レバー40が解放された場合に、渦巻きバネ47の付勢力に対して、予め設定された回転速度で、操作レバー40が初期位置まで戻るように制動力を発生させる。
【0085】
減速部14は、第1支持部15の第2フランジ32に回転可能に支持される。減速部14は、操作レバー40の円形部44に形成されたギア44aに噛み合う第1ギア14aと、第1ギア14aよりも歯数が多い第2ギア14bと、棒テンプ14cとを備える。第2ギア14bは、例えば、ケース5に設けた内歯車(不図示)に噛み合う。
【0086】
なお、減速部14は、上記構成に限定されることはなく、操作レバー40が動作開始位置まで回転され、操作レバー40が解放された場合に、渦巻きバネ47の付勢力に対して、操作レバー40が予め設定された回転速度で初期位置まで戻るように制動力を発生させればよい。
【0087】
停電時洗浄機構4では、各スイッチ押し部51a~51cの周方向の長さや、操作レバー40が初期位置に戻る際の回転速度などを調整することで、各工程の洗浄水の流量、すなわち各工程のシーケンスを調整し、制御することができる。
【0088】
次に、停電時洗浄機構4の動作について
図9~
図18を参照し説明する。なお、
図9~
図18では、一部の構成を説明のため省略している。
【0089】
図9は、第1実施形態に係る停電時洗浄機構4の一部の背面図(その1)である。
図10は、第1実施形態に係る停電時洗浄機構4の一部の背面図(その2)である。
図11は、第1実施形態に係る停電時洗浄機構4の一部の斜め後方斜視図(その1)である。
図12は、第1実施形態に係る停電時洗浄機構4の一部の背面図(その3)である。
【0090】
図13は、プレートずらし部12が、プレート押し上げ部42を手前側に押し上げた状態を示す図である。
図14は、第1実施形態に係る停電時洗浄機構4の一部の斜め後方斜視図(その2)である。
図15は、第1実施形態に係る停電時洗浄機構4の一部の背面図(その4)である。
【0091】
図16は、第1リム用スイッチ押し部51aがリム用スイッチ13aを押した状態を示す図(その1)である。
図17Aは、第1リム用スイッチ押し部51aがリム用スイッチ13aを押した状態を示す図(その2)である。
図17Bは、ゼット用スイッチ押し部51cがゼット用スイッチ13bを押した状態を示す図である。
図17Cは、第2リム用スイッチ押し部51bがリム用スイッチ13aを押した状態を示す図である。
図18は、第1実施形態に係る停電時洗浄機構4の一部の背面図(その5)である。
【0092】
停電時洗浄機構4は、操作レバー40が操作されておらず、初期位置にある場合には、
図9に示すように、プレート押し上げ部42は、プレートずらし部12とは離れており、プレート押し上げ部42は、手前側に押し上げられない。また、各スイッチ13a、13bは、プレート押し上げ部42によって押されることはない。なお、プレートずらし部12は、プレートずらし部12の初期位置にある。
【0093】
操作レバー40が初期位置から動作開始位置に向けて回転されると、プレート押し上げ部42のテーパ面57aが、
図10に示すように、プレートずらし部12の突出部66のテーパ面66aに当接する。テーパ面57a、66a同士が当接した状態でさらに操作レバー40が回転されると、プレートずらし部12は、
図11において矢印で示すように、ねじりコイルバネ67の付勢力に抗して、プレートずらし部12の初期位置から回転する。
【0094】
操作レバー40がさらに動作開始位置に向けて回転されると、プレートずらし部12の突起部65b(
図8参照)がストッパー17c(
図7参照)に当接し、プレートずらし部12の回転が規制される。そして、操作レバー40がさらに動作開始位置に向けて回転されると、プレート押し上げ部42が、プレートずらし部12の突出部66に乗り上げ、
図12において矢印で示すように、手前側に押し上げられる。プレートずらし部12の突出部66に乗り上げた後は、プレート押し上げ部42は、摺動面57bをプレートずらし部12の突出部66の摺動面66bに摺動させながら、操作レバー40とともに回転する。
【0095】
また、プレート押し上げ部42が手前側に押し上げられることで、
図13に示すように、プッシュプレート41は、圧縮コイルバネ54a、54bの付勢力に抗して手前側に押し上げられる。
【0096】
プッシュプレート41が、手前側に押し上げられることで、プッシュプレート41の各スイッチ押し部51a~51cは、各スイッチ13a、13bよりも手前側に押し上げられる。この状態では、左右方向において、各スイッチ押し部51a~51cと、各スイッチ13a、13bとの間に、隙間が形成される。そして、操作レバー40が回転されると、各スイッチ押し部51a~51cは、各スイッチ13a、13bとの間に隙間を形成した状態で、各スイッチ13a、13bの手前側を通過する。そのため、各スイッチ13a、13bが、各スイッチ押し部51a~51cによって押されることはない。
【0097】
すなわち、プレートずらし部12は、操作レバー40が初期位置から動作開始位置まで回転される場合に、各スイッチ押し部51a~51cを手前側に退避させることで、各スイッチ13a、13bが作動することを防止する。
【0098】
このように、操作レバー40が初期位置から動作開始位置まで回転される場合に、各スイッチ押し部51a~51cは、各スイッチ13a、13bに当接せず、各スイッチ13a、13bが押されることはない。
【0099】
操作レバー40がさらに動作開始位置に向けて回転され、各スイッチ押し部51a~51cが、各スイッチ13a、13bの手前側を通過した後に、プレート押し上げ部42の摺動面57bは、プレートずらし部12の突出部66の摺動面66bに摺動しなくなる。これにより、プレートずらし部12は、ねじりコイルバネ67の付勢力により、
図14において矢印で示すように、回転する。
【0100】
また、プッシュプレート41(
図13参照)、およびプレート押し上げ部42は、圧縮コイルバネ54a、54b(
図13参照)の付勢力によって、
図15において矢印で示すように、奥側に移動する。
【0101】
なお、
図13に示すように、プレート押し上げ部42の取付部58と、操作レバー40との間に圧縮コイルバネ61が設けられており、プッシュプレート41、およびプレート押し上げ部42が奥側に移動する際に、圧縮コイルバネ61が収縮することで制動力が作用する。そのため、プレート押し上げ部42が、圧縮コイルバネ54a、54bの付勢力によって奥側に勢いよく移動することが抑制され、停電時洗浄機構4が劣化することを抑制することができる。
【0102】
操作レバー40が動作開始位置まで回転された後に、使用者が操作レバー40を放し、操作レバー40が解放された場合には、渦巻きバネ47の付勢力によって、操作レバー40は、初期位置に向けて回転する。なお、操作レバー40は、減速部14によって初期位置までの回転速度が調整され、回転する。
【0103】
操作レバー40が初期位置に向けて回転すると、操作レバー40とともにプッシュプレート41が回転する。そして、第1リム用スイッチ押し部51aが、
図16、および
図17Aに示すように、リム用スイッチ13aを押し、洗浄工程か実行される。洗浄工程は、第1リム用スイッチ押し部51aが、リム用スイッチ13aを押している間、実行される。
【0104】
第1リム用スイッチ押し部51aの周方向の長さ、および操作レバー40の回転速度は、洗浄工程においてリム吐水口26から吐出される洗浄水の流量が、通常時の流量と等しくなるように設定されている。
【0105】
さらに、操作レバー40が初期位置に向けて回転すると、第1リム用スイッチ押し部51aがリム用スイッチ13aから離れ、
図17Bに示すように、ゼット用スイッチ押し部51cが、ゼット用スイッチ13bを押し、排出工程が実行される。排出工程は、ゼット用スイッチ押し部51cが、ゼット用スイッチ13bを押している間、実行される。
【0106】
ゼット用スイッチ押し部51cの周方向の長さ、および操作レバー40の回転速度は、排出工程においてゼット吐水口24から吐出される洗浄水の流量が、通常時の流量に等しくなるように設定されている。
【0107】
さらに、操作レバー40が初期位置に向けて回転すると、ゼット用スイッチ押し部51cがゼット用スイッチ13bから離れ、
図17Cに示すように、第2リム用スイッチ押し部51bがリム用スイッチ13aを押し、封水工程が実行される。封水工程は、第2リム用スイッチ押し部51bがリム用スイッチ13aを押している間、実行される。
【0108】
第2リム用スイッチ押し部51bの周方向の長さ、および操作レバー40の回転速度は、封水工程においてリム吐水口26から吐出される洗浄水の流量が、通常時の流量に等しくなるように設定されている。
【0109】
このように、操作レバー40が動作開始位置まで回転された後に、操作レバー40が解放されると、洗浄工程、排水工程、および封水工程が自動的に実行される。また、各工程における洗浄水の流量は、停電時洗浄機構4による機械的な動作により、制御されている。
【0110】
なお、操作レバー40が初期位置に向けて回転する場合には、プレートずらし部12がプレートずらし部12の初期位置に向けて回転した場合でも、
図18に示すように、プレートずらし部12の突出部66は、プレート押し上げ部42の押し上げ部57の外周壁に当接し、操作レバー40が初期位置に向けて回転することが妨げられることはない。
【0111】
また、例えば、操作レバー40が初期位置に向けて回転する前に、プレートずらし部12がねじりコイルバネ67の付勢力によって、プレートずらし部12の初期位置まで戻った場合には、プレートずらし部12の突出部66は、プレート押し上げ部42の押し上げ部57によって押され、
図14において矢印に示す方向へ回転する。そのため、操作レバー40が初期位置に向けて回転することが妨げられることはない。
【0112】
停電時洗浄機構4は、停電時に、操作レバー40が手動操作により1回操作されることで、複数工程を自動的に実行する。これにより、水洗大便器1は、停電時に、使用者に複雑な操作をさせることなく洗浄動作を容易に行うことができる。
【0113】
また、停電時洗浄機構4は、停電時に、操作レバー40が手動操作により1回操作されることで、洗浄工程、排水工程、および封水工程を自動的に実行する。これにより、水洗大便器1は、停電時に、使用者に複雑な操作をさせることなく、通常時と同様の洗浄を実行することができる。
【0114】
例えば、使用者が操作レバー40を初期位置から回転させている途中で、複数工程を開始すると、使用者の操作レバーの操作時間に応じて洗浄水の流量が変わり、汚物が排出されないおそれがある。
【0115】
これに対し、停電時洗浄機構4は、操作レバー40が初期位置から動作開始位置まで回転され、操作レバー40が解放された後に、複数工程を開始する。これにより、水洗大便器1は、使用者の操作によって洗浄水の流量が変わることを抑制することができ、汚物を通常時と同様に排出することができ、通常時と同様の洗浄を実行することができる。
【0116】
停電時洗浄機構4は、洗浄工程、および封水工程におけるリム吐水口26から吐出させる洗浄水の流量、および排出工程におけるゼット吐水口24から吐出させる洗浄水の流量を制御し、洗浄工程、排水工程、および封水工程を自動的に実行する。これにより、停電時にも、汚物を通常時と同様に排出することができる。
【0117】
停電時洗浄機構4は、操作レバー40を動作開始位置から初期位置まで戻す方向に渦巻きバネ47により付勢する。これにより、操作レバー40を初期位置まで自動的に戻すことができる。
【0118】
停電時洗浄機構4は、操作レバー40が初期位置から動作開始位置まで回転される場合に、各スイッチ押し部51a~51cを手前側に押し上げ、各スイッチ押し部51a~51cと各スイッチ13a、13bとの間に隙間を生じさせる。これにより、操作レバー40が初期位置から動作開始位置まで回転される場合に、各スイッチ13a、13bが押されることを防止することができる。
【0119】
(第2実施形態)
次に第2実施形態の水洗大便器1について
図19~
図23を参照し説明する。第2実施形態の水洗大便器1は、停電時洗浄機構4が、第1実施形態とは異なっており、ここでは、停電時洗浄機構4について説明する。
図19は、第2実施形態に係る便器本体2の概略斜視図である。
図20は、第2実施形態に係る停電時洗浄機構4の斜視図(その1)である。
図21は、第2実施形態に係る停電時洗浄機構4の斜視図(その2)である。
図22は、第2実施形態に係る停電時洗浄機構4の分解斜視図である。
図23は、第2実施形態に係る停電時洗浄機構4の正面図である。なお、
図20~
図22では、減速部72を省略している。また、
図21、
図23では、支持ケース70の一部を省略している。
【0120】
停電時洗浄機構4は、水洗大便器1の左後方に設けられる。停電時洗浄機構4は、支持ケース70と、回転部71と、スイッチ部13と、減速部72とを備える。なお、停電時洗浄機構4は、便器本体2に収容され、蓋部などによって覆われてもよい。
【0121】
支持ケース70は、回転部71の一部を収容する。左右方向に向かい合う支持ケース70の壁70a、70bには、回転部71の回転軸部76が挿入される孔70c、70dが形成される。支持ケース70は、回転部71を回転可能に支持する。支持ケース70の後方の壁70eには、リム用スイッチ13aが挿入される孔70f、およびゼット用スイッチ13bが挿入される孔70gが形成される。孔70f、70gは、左右方向に並んで形成される。
【0122】
また、支持ケース70には、後方に向けて突出し、スイッチ部13を保持する保持枠70hが形成される。なお、支持ケース70は、複数の部材によって形成されてもよく、支持ケース70は、例えば、上下方向に分かれた2つの部材によって形成されてもよい。
【0123】
回転部71は、操作レバー75と、回転軸部76と、スイッチ押し部77とを備える。操作レバー75は、支持ケース70よりも手前側に配置される。
【0124】
回転軸部76は、円柱状であり、操作レバー75の基端部に取り付けられる。例えば、回転軸部76は、操作レバー75の基端部に形成された凹部(不図示)に接着され、または圧入されることで、操作レバー75に取り付けられる。これにより、回転軸部76と操作レバー75とは一体となり、回転する。
【0125】
回転軸部76の奥側の端部には、全周にわたり溝部78が形成される。支持ケース70よりも奥側の溝部78には、ストッパー79が配置される。ストッパー79は、C字状に形成され、支持ケース70に当接し、支持ケース70から回転軸部76が抜けることを防止する。また、回転軸部76には、奥側の端部に減速部72が取り付けられる。
【0126】
回転軸部76には、第1切欠部80と、第2切欠部81と、第3切欠部82とが形成される。回転軸部76には、手前側から奥側にかけて、第2切欠部81、第1切欠部80、第3切欠部82が形成される。第1切欠部80、第2切欠部81および第3切欠部82は、退避部を構成する。
【0127】
第1切欠部80は、リム用スイッチ13aと向かい合うように形成される。第1切欠部80には、第1リム用スイッチ押し部77aが設けられる。第1切欠部80は、左右方向に向かう合う側壁80a、80bと、側壁80a、80bの間に形成され、第1リム用スイッチ押し部77aを下方から支持可能な支持壁80c(
図24B参照)と、側壁80a、80bの間に形成され、支持壁80cに接続する背面壁80d(
図24B参照)とにより形成される。
【0128】
支持壁80cは、操作レバー75が動作開始位置から初期位置に向けて回転する場合に、第1リム用スイッチ押し部77aを下方から支持し、操作レバー75に対する第1リム用スイッチ押し部77aの相対的な回転を規制する。支持壁80cは、操作レバー75が動作開始位置から初期位置に向けて回転する場合に、第1リム用スイッチ押し部77aがリム用スイッチ13aを押して、洗浄工程を実行するように形成される。支持壁80cは、規制部を構成する。
【0129】
背面壁80dは、操作レバー75が初期位置から動作開始位置に向けて回転され、第1リム用スイッチ押し部77aが、リム用スイッチ13aの上端に当接した場合に、第1リム用スイッチ押し部77aが、操作レバー75の回転に対して相対的に回転可能となるように形成される。具体的には、背面壁80dは、第1リム用スイッチ押し部77aが、リム用スイッチ13aを押さずに、操作レバー75の回転に対して相対的に回転し、退避可能となるように形成される。
【0130】
第2切欠部81は、リム用スイッチ13aと向かい合うように形成される。第2切欠部81には、第2リム用スイッチ押し部77bが設けられる。第2切欠部81は、左右方向に向かう合う側壁81a、81bと、側壁81a、81bの間に形成され、第2リム用スイッチ押し部77bを下方から支持可能な支持壁81c(
図24A参照)と、側壁81a、81bの間に形成され、支持壁81cに接続する背面壁81d(
図24A参照)とにより形成される。
【0131】
支持壁81cは、操作レバー75が動作開始位置から初期位置に向けて回転する場合に、第2リム用スイッチ押し部77bを下方から支持し、操作レバー75に対する第2リム用スイッチ押し部77bの相対的な回転を規制する。支持壁81cは、操作レバー75が動作開始位置から初期位置に向けて回転する場合に、第2リム用スイッチ押し部77bがリム用スイッチ13aを押して、封水工程を実行するように形成される。支持壁81cは、規制部を構成する。
【0132】
支持壁81cは、第2リム用スイッチ押し部77bが、第1リム用スイッチ押し部77aよりも遅いタイミングでリム用スイッチ13aに当接するように形成される。
【0133】
背面壁81dは、操作レバー75が初期位置から動作開始位置に向けて回転され、第2リム用スイッチ押し部77bが、リム用スイッチ13aの上端に当接した場合に、第2リム用スイッチ押し部77bが、操作レバー75の回転に対して相対的に回転可能となるように形成される。具体的には、背面壁81dは、第2リム用スイッチ押し部77bが、リム用スイッチ13aを押さずに、操作レバー75の回転に対して相対的に回転し、退避可能となるように形成される。
【0134】
第3切欠部82は、ゼット用スイッチ13bと向かい合うように形成される。第3切欠部82には、ゼット用スイッチ押し部51cが設けられる。第3切欠部82は、左右方向に向かう合う側壁82a、82bと、側壁82a、82bの間に形成され、後述するゼット用スイッチ押し部77cを下方から支持可能な支持壁82c(
図24C参照)と、側壁82a、82bの間に形成され、支持壁82cに接続する背面壁82d(
図24C参照)とにより形成される。
【0135】
支持壁82cは、操作レバー75が動作開始位置から初期位置に向けて回転する場合に、ゼット用スイッチ押し部77cを下方から支持し、操作レバー75に対するゼット用スイッチ押し部77cの相対的な回転を規制する。支持壁82cは、操作レバー75が動作開始位置から初期位置に向けて回転した場合に、ゼット用スイッチ押し部77cがゼット用スイッチ13bを押して、排出工程を実行するように形成される。支持壁82cは、規制部を構成する。
【0136】
支持壁82cは、操作レバー75が初期位置から動作開始位置に向けて回転する場合に、第1リム用スイッチ押し部77aがリム用スイッチ13aに当接するタイミングよりも遅く、かつ第2リム用スイッチ押し部77bがリム用スイッチ13aに当接するタイミングよりも早い、タイミングでゼット用スイッチ13bに当接するように形成される。
【0137】
背面壁82dは、操作レバー75が初期位置から動作開始位置に向けて回転され、ゼット用スイッチ押し部77cが、ゼット用スイッチ13bの上端に当接した場合に、ゼット用スイッチ押し部77cが、操作レバー75の回転に対して相対的に回転可能となるように形成される。具体的には、背面壁82dは、ゼット用スイッチ押し部77cが、ゼット用スイッチ13bを押さずに、操作レバー75の回転に対して相対的に回転し、退避可能となるように形成される。
【0138】
なお、回転軸部76は、複数の部材を接続することで形成されてもよく、例えば、左右方向に分かれた複数の部材によって形成されてもよい。
【0139】
押し部77は、第1リム用スイッチ押し部77aと、第2リム用スイッチ押し部77bと、ゼット用スイッチ押し部77cとを備える。
【0140】
第1リム用スイッチ押し部77aは、第1切欠部80に配置され、軸部85によって回転可能に支持される。軸部85は、左右方向に延び、回転軸部76に形成された孔76aに挿入される。軸部85は、第1リム用スイッチ押し部77aの回転軸が、回転軸部76、すなわち操作レバー75の回転軸よりも後方となるように設けられる。
【0141】
第2リム用スイッチ押し部77bは、第2切欠部81に配置され、軸部86によって回転可能に支持される。軸部86は、左右方向に延び、回転軸部76に形成された孔76bに挿入される。軸部86は、第1リム用スイッチ押し部77aの回転軸が、操作レバー75の回転軸よりも後方となるように設けられる。
【0142】
ゼット用スイッチ押し部77cは、第3切欠部82に配置され、軸部87によって回転可能に支持される。軸部87は、左右方向に延び、回転軸部76に形成された孔76cに挿入される。軸部87は、ゼット用スイッチ押し部77cの回転軸が、操作レバー75の回転軸よりも後方となるように設けられる。
【0143】
各スイッチ押し部77a~77cは、操作レバー75の回転軸から偏心する回転軸を中心に回転する。各スイッチ押し部77a~77cは、回転軸部76の回転に対して、相対的に回転可能である。各スイッチ押し部77a~77cは、下方から支持壁80c~82cによって支持された状態では、先端側が各切欠部80~82から突出するように設けられる。
【0144】
各スイッチ押し部77a~77cは、操作レバー75が初期位置から動作開始位置まで回転される場合に、各スイッチ13a、13bを押すことなく、各スイッチ13a、13bの下方まで回転するように設けられる。
【0145】
スイッチ部13は、リム用スイッチ13aと、ゼット用スイッチ13bとを備える。リム用スイッチ13aおよびゼット用スイッチ13bは、左右方向に並んで配置される。すなわち、スイッチ部13は、左右方向に、リム用スイッチ13aとゼット用スイッチ13bとが配置される横置きのスイッチである。リム用スイッチ13aは、ゼット用スイッチ13bよりも手前側に配置される。
【0146】
リム用スイッチ13aの前端面13cは、下端側が後方となるように傾斜したテーパ状に形成される。また、ゼット用スイッチ13bの前端面13dは、下端側が後方となるように傾斜したテーパ状に形成される。
【0147】
減速部72は、回転軸部76に取り付けられ、操作レバー75が動作開始位置まで回転されて解放された場合に、バネ(不図示)によって回転部71を初期位置に向けて付勢するとともに、予め設定された回転速度で初期位置まで戻るように制動力を発生させる。
【0148】
停電時洗浄機構4では、各スイッチ押し部77a~77cの長さや、各切欠部80~82の形状や、操作レバー75が初期位置に戻る際の回転速度などを調整することで、各工程の洗浄水の流量、すなわち各工程のシーケンスを調整し、制御することができる。
【0149】
次に、第2実施形態に係る停電時洗浄機構4の動作について
図24A~
図32Cを参照し説明する。
【0150】
【0151】
また、
図24A~
図32Cにおいて、同一の図番、例えば、「
図24A~
図24C」は、操作レバー75の位置が同じ位置における各断面(A-A断面、B-B断面、C-C断面)を示している。
【0152】
操作レバー75(
図23参照)が初期位置にある場合には、
図24A~
図24Cに示すように、各スイッチ押し部77a~77cは、各スイッチ13a、13bに当接しておらず、各スイッチ13a、13bは押されない。
【0153】
操作レバー75が初期位置から動作開始位置に向けて回転されると、第2リム用スイッチ押し部77bが回転し、リム用スイッチ13aの上端に当接する。第2リム用スイッチ押し部77bは、軸部86の回転軸を中心に、操作レバー75に対して相対的に回転可能であり、操作レバー75の回転方向とは逆方向への回転が規制されていない。そのため、第2リム用スイッチ押し部77bは、
図25Aに示すように、リム用スイッチ13aの上端に当接した状態で、軸部86の回転軸を中心に背面壁81d側に回転する。従って、リム用スイッチ13aは、第2リム用スイッチ押し部77bによって押されることはない。
【0154】
また、
図25Cに示すように、ゼット用スイッチ押し部77cが回転し、ゼット用スイッチ13bの上端に当接する。ゼット用スイッチ押し部77cは、第2リム用スイッチ押し部77bと同様に、操作レバー75に対して相対的に回転可能であり、操作レバー75の回転方向とは逆方向への回転が規制されていない。そのため、ゼット用スイッチ13bは、ゼット用スイッチ押し部77cによって押されることはない。
【0155】
なお、
図25Bに示すように、第1リム用スイッチ押し部77aは、リム用スイッチ13aには当接していない。
【0156】
操作レバー75がさらに初期位置から動作開始位置に向けて回転されると、
図26Bに示すように、第1リム用スイッチ押し部77aが回転し、リム用スイッチ13aの上端に当接する。第1リム用スイッチ押し部77aは、操作レバー75に対して相対的に回転可能であり、操作レバー75の回転方向とは逆方向への回転が規制されていない。そのため、リム用スイッチ13aは、第1リム用スイッチ押し部77aによって押されることはない。
【0157】
また、第2リム用スイッチ押し部77bの軸部86は、操作レバー75とともに回転する。第2リム用スイッチ押し部77bは、先端側がリム用スイッチ13aの上端に当接しており、操作レバー75の回転に対して軸部86の回転軸を中心に相対的に回転する。そのため、第2リム用スイッチ押し部77bは、リム用スイッチ13aの上端との当接位置が変化し、
図26Aに示すように、先端側でリム用スイッチ13aの上端と当接するようになる。なお、リム用スイッチ13aは、第2リム用スイッチ押し部77bによって押されることはない。
【0158】
このように、操作レバー75が動作開始位置に向けて回転されることで、第2リム用スイッチ押し部77bと、リム用スイッチ13aの上端との当接位置は、徐々に第2リム用スイッチ押し部77bの先端側に移動する。
【0159】
また、ゼット用スイッチ押し部77cも、同様に、
図26Cに示すように、先端側でゼット用スイッチ13bの上端と当接するようになる。なお、ゼット用スイッチ13bは、ゼット用スイッチ押し部77cによって押されることはない。
【0160】
操作レバー75がさらに動作開始位置に向けて回転されると、第2リム用スイッチ押し部77bと、リム用スイッチ13aの上端との当接位置とは、第2リム用スイッチ押し部77bの先端側となり、やがて第2リム用スイッチ押し部77bの先端が、リム用スイッチ13aの上端に当接しなくなる。
【0161】
これにより、第2リム用スイッチ押し部77bは、自重によって軸部86の回転軸を中心に、支持壁81c側に回転し、
図27Aに示すように、支持壁81cに当接する。なお、リム用スイッチ13aの前端面13cは、テーパ状になっているため、第2リム用スイッチ押し部77bは、リム用スイッチ13aを押すことなく、回転する。
【0162】
また、第1リム用スイッチ押し部77aは、
図27Bに示すように、リム用スイッチ13aの上端との当接位置が、第1リム用スイッチ押し部77aの先端側となる。また、ゼット用スイッチ押し部77cは、
図27Cに示すように、ゼット用スイッチ13bの上端との当接位置が、ゼット用スイッチ押し部77cの先端側となる。なお、これらの状態でも、リム用スイッチ13aは、第1リム用スイッチ押し部77aに押されることはなく、ゼット用スイッチ13bは、ゼット用スイッチ押し部77cに押されることはない。
【0163】
操作レバー75がさらに動作開始位置に向けて回転されると、ゼット用スイッチ押し部77cが、ゼット用スイッチ13bの上端に当接しなくなり、ゼット用スイッチ押し部77cが、自重により、軸部87の回転軸を中心に回転し、支持壁82cに当接する。また、同様に、第1リム用スイッチ押し部77aが、リム用スイッチ13aの上端に当接しなくなり、第1リム用スイッチ押し部77aが、自重により、軸部85の回転軸を中心に回転し、支持壁80cに当接する。
【0164】
このように、操作レバー75が動作開始位置まで回転された状態では、
図28Aに示すように、第2リム用スイッチ押し部77bは、支持壁81cに当接し、
図28Bに示すように、第1リム用スイッチ押し部77aは、支持壁80cに当接する。また、
図28Cに示すように、ゼット用スイッチ押し部77cは、支持壁82cに当接する。
【0165】
操作レバー75が動作開始位置まで回転された後に、操作レバー75が解放されると、回転部71は、減速部72によって回転速度が調整されつつ、初期位置に向けて回転する。
【0166】
操作レバー75が初期位置に向けて回転すると、
図29Bに示すように、第1リム用スイッチ押し部77aが、下方を支持壁80cに支持された状態、すなわち、下方への移動を支持壁80cによって規制された状態で、操作レバー75とともに回転し、リム用スイッチ13aの前端面13cに当接する。
【0167】
なお、第2リム用スイッチ押し部77bは、
図29Aに示すように、下方を支持壁81cに支持された状態で、操作レバー75とともに回転する。また、ゼット用スイッチ押し部77cは、
図29Cに示すように、下方を支持壁82cに支持された状態で、操作レバー75とともに回転する。
【0168】
操作レバー75がさらに初期位置に向けて回転すると、第1リム用スイッチ押し部77aが、下方を支持壁80cに支持された状態で回転するため、
図30Bに示すように、リム用スイッチ13aが第1リム用スイッチ押し部77aによって押される。これにより、洗浄工程が実行される。洗浄工程は、リム用スイッチ13aが第1リム用スイッチ押し部77aによって押されている間、実行される。
【0169】
なお、第2リム用スイッチ押し部77bは、
図30Aに示すように、リム用スイッチ13aに当接していない。また、ゼット用スイッチ押し部77cは、
図30Cに示すように、下方を支持壁82cに支持された状態で、ゼット用スイッチ13bの前端面13dに当接する。
【0170】
さらに、操作レバー75が初期位置に向けて回転すると、第1リム用スイッチ押し部77aは、
図31Bに示すように、下方を支持壁80cに支持された状態で回転し、リム用スイッチ13aの前端面13cに当接しなくなり、洗浄工程が終了する。
【0171】
また、ゼット用スイッチ押し部77cが、下方を支持壁82cに支持された状態で回転するため、
図31Cに示すように、ゼット用スイッチ13bが、ゼット用スイッチ押し部77cに押される。これにより、排出工程が実行される。排出工程は、ゼット用スイッチ13bがゼット用スイッチ押し部77cによって押されている間、実行される。
【0172】
また、第2リム用スイッチ押し部77bは、
図31Aに示すように、下方を支持壁81cに支持された状態で、リム用スイッチ13aの前端面13cに当接する。
【0173】
さらに、操作レバー75が初期位置に向けて回転すると、ゼット用スイッチ押し部77cは、
図32Cに示すように、下方を支持壁82cに支持された状態で回転し、ゼット用スイッチ13bの前端面13dに当接しなくなり、排出工程が終了する。
【0174】
また、第2リム用スイッチ押し部77bは、下方を支持壁81cに支持された状態で回転するため、
図32Aに示すように、リム用スイッチ13aが、第2リム用スイッチ押し部77bに押される。これにより、封水工程が実行される。封水工程は、リム用スイッチ13aが第2リム用スイッチ押し部77bによって押されている間、実行される。なお、第1リム用スイッチ押し部77aは、
図32Bに示すように、支持壁80cによって下方を支持された状態で、回転する。
【0175】
さらに、操作レバー75が初期位置に向けて回転すると、第2リム用スイッチ押し部77bが、下方を支持壁81cによって支持された状態で回転し、リム用スイッチ13aの前端面13cに当接しなくなり、封水工程が終了する。
【0176】
停電時洗浄機構4は、操作レバー75が初期位置から動作開始位置まで操作される場合に、操作レバー75の回転に対して各スイッチ押し部77a~77cを相対的に回転させて退避させる。これにより、操作レバー75が初期位置から動作開始位置まで回転される場合に、各スイッチ13a、13bが押されることを防止することができる。
【0177】
また、停電時洗浄機構4は、操作レバー75が動作開始位置から初期位置に向けて回転する場合に、操作レバー75の回転に対する各スイッチ押し部77a~77cの相対的な回転を規制することで、洗浄工程、排水工程、および封水工程を自動的に実行することができる。
【0178】
なお、複数工程は、洗浄工程、排出工程、封水工程に限られることない。例えば、複数工程は、異なるリム吐水口から洗浄水を吐出させる工程であってもよい。
【0179】
また、洗浄工程と封水工程との間で、リム吐水口26から、洗浄工程などよりも少ない流量の洗浄水を吐出させてもよい。
【0180】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0181】
1 水洗大便器
2 便器本体
4 停電時洗浄機構
11 回転部
12 プレートずらし部
13 スイッチ部
13a リム用スイッチ
13b ゼット用スイッチ
21 ボウル部
23 排水トラップ管路
24 ゼット吐水口
26 リム吐水口
40 操作レバー
41 プッシュプレート
42 プレート押し上げ部
47 渦巻きバネ
51 スイッチ押し部
51a 第1リム用スイッチ押し部
51b 第2リム用スイッチ押し部
51c ゼット用スイッチ押し部
80 第1切欠部
80c 支持壁
81 第2切欠部
81c 支持壁
82 第3切欠部
82c 支持壁