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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】車両の前部車体構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/08 20060101AFI20220412BHJP
   B62D 25/20 20060101ALI20220412BHJP
【FI】
B62D25/08 E
B62D25/20 C
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018059477
(22)【出願日】2018-03-27
(65)【公開番号】P2019171931
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】山内 一樹
(72)【発明者】
【氏名】松岡 秀典
【審査官】米澤 篤
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-31106(JP,A)
【文献】特開2002-337739(JP,A)
【文献】特開2009-137378(JP,A)
【文献】特開2017-171102(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102849121(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0076867(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0146455(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/08
B62D 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車室部における車両前方の隔壁をなすダッシュパネルと、
該ダッシュパネルの両端に連結されるとともに、車両上下方向に延びる左右一対のヒンジピラーと、
前記車室部内で左右の前記ヒンジピラーを車幅方向に連結するインパネメンバと、
前記ダッシュパネルに対して車両前方に所定間隔を隔てた位置に配設されるとともに、フロントサスダンパの上端を支持するサスタワーとを備えた車両の前部車体構造であって、
前記サスタワー、及び前記ダッシュパネルを連結する第1連結部材と、
該第1連結部材の後端近傍における前記ダッシュパネル、及び前記インパネメンバを連結する第2連結部材とを備え
前記第1連結部材は、前記車幅方向に沿った縦断面における断面形状が、車幅方向外側が開口した断面略コ字状の開断面形状に形成されている
車両の前部車体構造。
【請求項2】
前記第1連結部材の下方には、下部連結部材が連結され、該下部連結部材の下端はフロントサイドフレームに連結されるとともに、
前記車幅方向に沿った断面視で、左右一対の前記第1連結部材同士の前記車幅方向の距離は、左右一対のフロントサイドフレーム同士の間隔より狭く設定される
請求項1に記載の車両の前部車体構造。
【請求項3】
平面視において、前記第1連結部材の後端は、前記車幅方向においてフロアトンネルよりも外側に位置するよう配置される
請求項1または請求項2に記載の車両の前部車体構造。
【請求項4】
前記第1連結部材の後端が、
前記サスタワーよりも車幅方向内側における前記ダッシュパネルに連結された
請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の車両の前部車体構造。
【請求項5】
前記ダッシュパネルの上端に連結されるとともに、左右の前記ヒンジピラーを車幅方向に連結するカウルボックスを備え、
前記第1連結部材と前記第2連結部材とが、
前記カウルボックスを介して前記ダッシュパネルに連結された
請求項1から請求項4のいずれか1つに記載の車両の前部車体構造。
【請求項6】
前記カウルボックスが、
閉断面または開断面を車幅方向に延設した形状で構成され、
前記第1連結部材の後端、及び前記第2連結部材の前端における車幅方向の位置と略同じ車幅方向の位置において、前記カウルボックスにおける車両前後方向で対向する内面を連結する第3連結部材を備えた
請求項に記載の車両の前部車体構造。
【請求項7】
前記ダッシュパネルの前面に配置され、前記カウルボックスと接合される閉断面のダッシュパネル補強部材が形成され、
前記第1連結部材の後端は前記ダッシュパネル補強部材に連結される
請求項5または請求項6に記載の車両の前部車体構造。
【請求項8】
前記第1連結部材が、
前記サスタワーと前記ダッシュパネルとの間に遮熱空間を形成する部材である
請求項1から請求項のいずれか1つに記載の車両の前部車体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば車両前部のサスタワーとダッシュパネルとを連結する連結部材を備えたような車両の前部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両には、例えば、路面の凹凸に応じて伸縮することで、車体の上下動を抑制して、乗員に対する乗り心地を確保するフロントサスペンションダンパ(以下、「フロントサスダンパ」と呼ぶ)が、サスタワーを介して車体の骨格部材に連結されている。
【0003】
一般的に、サスタワーには、フロントサスダンパを介して比較的大きな荷重エネルギーが作用し易いため、フロントサスダンパを介して作用する荷重エネルギーによって、サスタワーが撓み変形することがある。このような撓み変形がサスタワーに生じると、操安性の低下、あるいは車室内へ伝達される振動騒音の増加要因となるおそれがあった。
【0004】
そこで、一端がサスタワーに連結された連結部材によって、サスタワーの剛性を向上する車両の車体構造が知られている。
例えば、特許文献1には、フロントサスダンパ(ショックアブソーバ)を支持する左右一対のサスタワー(7)と、ダッシュパネル(6)の前面に設けたダッシュクロスメンバ(11)とを連結する左右一対の補強部材(16)を、車両の前部車体に備えていることが開示されている。
【0005】
これにより、特許文献1は、サスタワー(7)の剛性を向上できるとともに、サスタワーに作用する荷重エネルギーを、補強部材(16)を介して前部車体に分散伝達して、左右のサスタワー(7)間の剛性を確保できるとされている。
【0006】
しかしながら、特許文献1は、サスタワーに作用する荷重エネルギーを、主に前部車体に分散伝達させているため、前部車体に作用する荷重エネルギーと後部車体とに作用する荷重エネルギーとの差が大きくなり、例えば、車体が捩れるような違和感を乗員に与えるおそれがあった。このため、特許文献1のような車体構造は、サスタワーに作用する荷重エネルギーの伝達において改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2017-171102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述の問題に鑑み、サスタワーに作用する荷重エネルギーを、車両の車体全体に効率よく分散伝達できる車両の前部車体構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、車両の車室部における車両前方の隔壁をなすダッシュパネルと、該ダッシュパネルの両端に連結されるとともに、車両上下方向に延びる左右一対のヒンジピラーと、前記車室部内で左右の前記ヒンジピラーを車幅方向に連結するインパネメンバと、前記ダッシュパネルに対して車両前方に所定間隔を隔てた位置に配設されるとともに、フロントサスダンパの上端を支持するサスタワーとを備えた車両の前部車体構造であって、前記サスタワー、及び前記ダッシュパネルを連結する第1連結部材と、該第1連結部材の後端近傍における前記ダッシュパネル、及び前記インパネメンバを連結する第2連結部材とを備え、前記第1連結部材は、前記車幅方向に沿った縦断面における断面形状が、車幅方向外側が開口した断面略コ字状の開断面形状に形成されていることを特徴とする。
【0010】
この発明により、サスタワーに作用する荷重エネルギーを、車両の車体全体に効率よく分散伝達することができる。
具体的には、サスタワーとダッシュパネルとが第1連結部材を介して連結されているため、車両の前部車体構造は、サスタワーから第1連結部材、及びダッシュパネルをとおって左右のヒンジピラーへ向かう荷重エネルギー伝達経路を、前部車体に構成することができる。
【0011】
さらに、第1連結部材の後端とインパネメンバとが、ダッシュパネル、及び第2連結部材を介して連結されているため、車両の前部車体構造は、サスタワーから第1連結部材、第2連結部材、及びインパネメンバをとおって左右のヒンジピラーへ向かう荷重エネルギー伝達経路を、前部車体に構成することができる。
【0012】
このため、車両の前部車体構造は、サスタワーに作用する荷重エネルギーを、ダッシュパネルをとおってヒンジピラーへ向かう荷重エネルギー伝達経路と、インパネメンバをとおって左右のヒンジピラーへ向かう荷重エネルギー伝達経路とに分散して伝達することができる。
【0013】
これにより、車両の前部車体構造は、サスタワーに作用する荷重エネルギーを、左右のヒンジピラーから、フロントピラー、及びサイドシルを介して、後部車体へ向けて効率よく分散伝達することができる。
従って、車両の前部車体構造は、第1連結部材、及び第2連結部材によって、サスタワーに作用する荷重エネルギーを、車両の車体全体に効率よく分散伝達することができる。
【0014】
この発明の態様として、前記第1連結部材の下方には、下部連結部材が連結され、該下部連結部材の下端はフロントサイドフレームに連結されるとともに、前記車幅方向に沿った断面視で、左右一対の前記第1連結部材同士の前記車幅方向の距離は、左右一対のフロントサイドフレーム同士の間隔より狭く設定されてもよい。
またこの発明の態様として、平面視において、前記第1連結部材の後端は、前記車幅方向においてフロアトンネルよりも外側に位置するよう配置されてもよい。
【0015】
またこの発明の態様として、前記第1連結部材の後端が、前記サスタワーよりも車幅方向内側における前記ダッシュパネルに連結されてもよい。
この発明により、車両の前部車体構造は、サスタワーとダッシュパネルとを車両前後方向に沿って略直線的に延びる第1連結部材で連結した場合に比べて、一方のサスタワーに作用する荷重エネルギーを、他方のサスタワー側に位置するヒンジピラーへ向けて積極的に伝達することができる。
【0016】
これにより、車両の前部車体構造は、サスタワーに作用する荷重エネルギーを、サスタワーに対して車両の対角方向で対向する後部車体へ向けて効率よく分散伝達することができる。
従って、車両の前部車体構造は、サスタワーよりも車幅方向内側におけるダッシュパネルに連結された第1連結部材によって、サスタワーに作用する荷重エネルギーを、車両の車体全体により効率よく分散伝達することができる。
【0017】
またこの発明の態様として、前記ダッシュパネルの上端に連結されるとともに、左右の前記ヒンジピラーを車幅方向に連結するカウルボックスを備え、前記第1連結部材と前記第2連結部材とが、前記カウルボックスを介して前記ダッシュパネルに連結されてもよい。
上記カウルボックスは、閉断面を車幅方向に延設した形状、あるいは閉断面の一部を開口した開断面を車幅方向に延設した形状などを含むものとする。
【0018】
この発明により、車両の前部車体構造は、カウルボックスによってダッシュパネルの剛性を確保できるとともに、サスタワーから第1連結部材、及びカウルボックスをとおって左右のヒンジピラーへ向かう荷重エネルギー伝達経路を構成することができる。
【0019】
このため、車両の前部車体構造は、サスタワーに作用する荷重エネルギーを、ダッシュパネルをとおってヒンジピラーへ向かう荷重エネルギー伝達経路と、インパネメンバをとおってヒンジピラーへ向かう荷重エネルギー伝達経路と、カウルボックスをとおってヒンジピラーへ向かう荷重エネルギー伝達経路とに分散して伝達することができる。
【0020】
これにより、車両の前部車体構造は、サスタワーに作用する荷重エネルギーを、左右のヒンジピラーから、フロントピラー、及びサイドシルを介して、後部車体へ向けてより効率よく分散伝達することができる。
【0021】
従って、車両の前部車体構造は、第1連結部材と第2連結部材とが、カウルボックスを介してダッシュパネルに連結されたことにより、サスタワーに作用する荷重エネルギーを、車両の車体全体により確実に効率よく分散伝達することができる。
【0022】
またこの発明の態様として、前記カウルボックスが、閉断面または開断面を車幅方向に延設した形状で構成され、前記第1連結部材の後端、及び前記第2連結部材の前端における車幅方向の位置と略同じ車幅方向の位置において、前記カウルボックスにおける車両前後方向で対向する内面を連結する第3連結部材を備えてもよい。
【0023】
この発明により、車両の前部車体構造は、カウルボックスを介した第1連結部材から第2連結部材への荷重エネルギー伝達効率を、第3連結部材を設けていない場合に比べて向上することができる。このため、車両の前部車体構造は、サスタワーに作用する荷重エネルギーを、車両の車体全体にさらに効率よく分散伝達することができる。
またこの発明の態様として、前記ダッシュパネルの前面に配置され、前記カウルボックスと接合される閉断面のダッシュパネル補強部材が形成され、前記第1連結部材の後端は前記ダッシュパネル補強部材に連結されてもよい。
【0024】
またこの発明の態様として、前記第1連結部材が、前記サスタワーと前記ダッシュパネルとの間に遮熱空間を形成する部材であってもよい。
上記遮熱空間は、ダッシュパネルよりも車両前方の空間内に、保温や遮熱のために設けられた空間であって、車載部品や補機類が配設可能な大きさの空間のことをいう。
【0025】
この発明により、車両の前部車体構造は、遮熱機能と、サスタワーに作用する荷重エネルギーをダッシュパネルに伝達する機能とを、第1連結部材に統合することができる。
このため、車両の前部車体構造は、遮熱空間を形成する部材を第1連結部材とは別体で設けた場合に比べて、前部車体における部品点数の増加を抑えることができるとともに、例えばエンジンを配置するスペースが、別体で設けた遮熱空間を形成する部材によって圧迫されることを防止できる。
【0026】
従って、車両の前部車体構造は、サスタワーに作用する荷重エネルギーを、車両の車体全体に効率よく分散伝達できるとともに、重量増加を抑えて遮熱空間を容易に形成することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明により、サスタワーに作用する荷重エネルギーを、車両の車体全体に効率よく分散伝達できる車両の前部車体構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】車両の前部車体における外観を示す平面図。
図2】車両の前部車体における車両前方上方からの外観を示す外観斜視図。
図3図1中のA-A矢視断面図。
図4図1中のB-B矢視における要部の断面を示す要部断面図。
図5】A-A矢視における車両左側要部の断面を示す要部断面図。
図6】車両の前部車体における要部の外観を示す平面図。
図7図6中のC-C矢視における要部の断面を示す要部断面図。
図8】別の実施形態における車両の前部車体を示す平面図。
図9】別の実施形態における前部車体の要部を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
なお、図1は車両1の前部車体における外観の平面図を示し、図2は車両1の前部車体における車両前方上方からの外観斜視図を示し、図3図1中のA-A矢視断面図を示し、図4図1中のB-B矢視における要部の要部断面図を示し、図5はA-A矢視における車両左側要部の要部断面図を示し、図6は車両1の前部車体における要部の平面図を示し、図7図6中のC-C矢視における要部の要部断面図を示している。
【0030】
また、図示を明確にするため、図2中において、車両左側のサイドシル7のサイドシルアウタ、及びヒンジピラー9のヒンジピラーアウタの図示を省略するとともに、車両左側のフロントピラー8、サスタワー5、エプロンレインフォースメント4、及び遮熱部材アウタ61の図示を省略している。
さらに、図示を明確にするため、図6中において、カウルボックス13のカウルアッパ132の図示を省略している。
【0031】
また、図中において、矢印Fr及びRrは前後方向を示しており、矢印Frは前方を示し、矢印Rrは後方を示している。
さらに、矢印Rh及びLhは幅方向を示しており、矢印Rhは右方向を示し、矢印Lhは左方向を示している。加えて、矢印INは車幅方向内側を示し、矢印OUTは車幅方向外側を示している。
【0032】
本実施形態における車両1の車体構造は、図1及び図2に示すように、乗員が乗り込む車室部2と、車室部2よりも車両前方に配設された左右一対のフロントサイドフレーム3、左右一対のエプロンレインフォースメント4、左右一対のサスタワー5、及び左右一対の遮熱部材6とで構成されている。
【0033】
車室部2は、図1及び図2に示すように、車幅方向に所定間隔を隔てた位置で車両前後方向に延びる左右一対のサイドシル7と、サイドシル7よりも車両上方に配設された左右一対のフロントピラー8と、サイドシル7の前端、及びフロントピラー8の前端を車両上下方向に連結するヒンジピラー9と、左右のサイドシル7の間で車室部2の床面をなすフロアパネル10と、フロアパネル10の下面を車両前後方向に延びる左右一対のフロアフレーム11と、車室部2の前壁をなすダッシュパネル12、及びカウルボックス13と、左右のヒンジピラー9を連結するインパネメンバ14とで構成されている。
【0034】
左右のサイドシル7は、詳細な図示を省略するが、車幅方向内側に配設されたサイドシルインナ7aと、サイドシルインナ7aに対して車幅方向外側に配設されたサイドシルアウタとで、車幅方向に沿った縦断面における断面形状が閉断面をなすよう構成されている。
【0035】
例えば、サイドシル7は、図2に示すように、車幅方向に沿った縦断面における断面形状が、車幅方向内側に突出した断面略ハット状のサイドシルインナ7aと、車幅方向に沿った縦断面における断面形状が、車幅方向外側に突出した断面略ハット状のサイドシルアウタとを車幅方向で当接させるとともに、互いに接合することで、車幅方向に沿った縦断面における断面形状が閉断面をなすよう構成されている。
【0036】
また、左右のフロントピラー8は、詳細な図示を省略するが、車幅方向内側に配設されたフロントピラーインナと、フロントピラーインナに対して車幅方向外側に配設されたフロントピラーアウタとで、車幅方向に沿った縦断面が閉断面をなすよう構成されている。このフロントピラー8は、図1及び図2に示すように、前端に対して後端が車両後方上方に位置するよう配設されている。
【0037】
例えば、フロントピラー8は、車幅方向に沿った水平断面における断面形状が、車幅方向内側に突出した断面略ハット状のフロントピラーインナと、車幅方向に沿った水平断面における断面形状が、車幅方向外側に突出した断面略ハット状のフロントピラーアウタとを車幅方向で当接させるとともに、互いに接合することで、車幅方向に沿った縦断面における断面形状が閉断面をなすよう構成されている。
【0038】
また、左右のヒンジピラー9は、詳細な図示を省略するが、車幅方向内側に配設されたヒンジピラーインナ9aと、ヒンジピラーインナ9aに対して車幅方向外側に配設されたヒンジピラーアウタとで、車両前後方向に沿った水平断面が閉断面をなすよう構成されている。
【0039】
例えば、ヒンジピラー9は、図2に示すように、略平板状のサイドシルインナ7aと、車両前後方向に沿った水平断面における断面形状が、車幅方向外側に突出した断面略ハット状のヒンジピラーアウタとを車幅方向で当接させるとともに、互いに接合することで、車幅方向に沿った水平断面における断面形状が閉断面をなすよう構成されている。
なお、ヒンジピラーインナ9aは、図2に示すように、サイドシル7の前端、及び後述するダッシュパネル12よりも車両前方に前縁が位置する大きさで形成されている。
【0040】
また、フロアパネル10は、図1及び図2に示すように、左右のサイドシル7を連結して、車室部2の床面をなすパネル部材であって、その車幅方向略中央に車両上方へ向けて膨出するとともに、車両前後方向に延びるフロアトンネル10aが形成されている。このフロアパネル10の前端縁は、ダッシュパネル12(後述するダッシュパネル本体15)に接合されている。
【0041】
また、左右のフロアフレーム11は、図2に示すように、サイドシル7とフロアトンネル10aとの間にそれぞれ配設されている。このフロアフレーム11は、車幅方向に沿った縦断面における断面形状が、車両下方に突出した断面略ハット状であって、フロアパネル10の下面に接合されることで、車幅方向に沿った縦断面における断面形状が閉断面をなすよう形成されている。
【0042】
また、ダッシュパネル12は、図2から図4に示すように、車室部2の前壁をなすダッシュパネル本体15と、ダッシュパネル本体15の前面に接合された左右一対のトルクボックス16、ダッシュクロスメンバ17、及びダッシュパネル補強部材18とで構成されている。
【0043】
ダッシュパネル本体15は、図2から図4に示すように、車両前後方向に所定の厚みを有するパネル部材であって、車幅方向の両端がそれぞれ左右のヒンジピラー9に接合されている。さらに、ダッシュパネル12は、車両後方へ向けて折り返した下端が、フロアパネル10の前端下面に接合されている。
【0044】
なお、ダッシュパネル本体15における車幅方向略中央近傍の下端は、図3に示すように、正面視において、フロアパネル10のフロアトンネル10aに沿うように、車両上方へ略逆U字状に突出した形状に形成されている。このフロアトンネル10aに沿った形状に形成された部分を、トンネル対応部分15aとする。
【0045】
トルクボックス16は、図3に示すように、ダッシュパネル本体15の下部前面に接合されるとともに、サイドシル7の前端と、フロアフレーム11における車幅方向外側の側面とを車幅方向に連結している。
【0046】
より詳しくは、トルクボックス16は、図3及び図5に示すように、サイドシル7の前端と、サイドシル7に対して車幅方向内側で隣接するダッシュパネル12の下部前面と、フロアフレーム11の前端近傍の側面とで、車両前後方向に沿った水平断面における断面形状が閉断面をなす略ボックス状に形成されている。
【0047】
ダッシュクロスメンバ17は、図2から図4に示すように、トルクボックス16よりも車両上方のダッシュパネル本体15の下部前面に接合されるとともに、左右のヒンジピラー9のヒンジピラーインナ9aを車幅方向に連結している。
【0048】
このダッシュクロスメンバ17は、図2から図4に示すように、車両前後方向に沿った縦断面において、車両前方へ突出した断面略ハット状の開断面を、ダッシュパネル本体15の下部前面に沿って延設した形状に形成されている。このため、ダッシュクロスメンバ17は、ダッシュパネル本体15の下部前面とで、車両前後方向に沿った縦断面における断面形状が閉断面をなすよう構成されている。
【0049】
より詳しくは、ダッシュクロスメンバ17は、図3に示すように、正面視において、ダッシュパネル本体15のトンネル対応部分15aに沿うように車両上方へ突出した略逆U字状の正面視略門型形状のメンバ門型形状部17aと、メンバ門型形状部17aの下端からそれぞれ左右のヒンジピラーインナ9aへ向けて車幅方向内側に延設された左右一対のメンバ水平部17bとで一体形成されている。
【0050】
ダッシュパネル補強部材18は、図2及び図3に示すように、ダッシュクロスメンバ17のメンバ門型形状部17aよりも車両上方のダッシュパネル本体15の前面に配設されるとともに、下端がダッシュクロスメンバ17に接合され、上端が後述するカウルボックス13に接合されている。
【0051】
このダッシュパネル補強部材18は、図2及び図3に示すように、車両下方が開口した正面視略門型形状の補強部材本体181と、補強部材本体181で囲われた部分を覆う略平板状の平板部182とで一体形成されている。
補強部材本体181は、図3及び図4に示すように、車両前後方向に沿った縦断面における断面形状が、車両前方へ突出した断面略ハット状であって、断面略ハット状の開断面を正面視略門型状に延設した形状に形成されている。
【0052】
より詳しくは、補強部材本体181は、図3に示すように、正面視において、ダッシュクロスメンバ17のメンバ門型形状部17aにおける頂部を挟んで、車幅方向に所定間隔を隔てた位置で車両上下方向に延びる脚部181aと、脚部181aの上端を車幅方向に連結する橋架部181bとで正面視略門型形状に形成されている。
【0053】
そして、補強部材本体181の脚部181aは、図3に示すように、その下端が、ダッシュクロスメンバ17のメンバ門型形状部17aにおける頂部よりも車幅方向外側の部分に接合され、脚部181aの下端から上端に至る範囲が、ダッシュパネル12の前面に接合されている。一方、補強部材本体181の橋架部181bは、図3及び図4に示すように、その下端が、ダッシュパネル12の前面に接合され、上端が、後述するカウルボックス13のロア前壁部131bに接合されている。
【0054】
平板部182は、図3及び図4に示すように、補強部材本体181における左右の脚部181a、及び橋架部181bで囲われた部分を覆う略平板状部材であって、ダッシュパネル12の前面に接合されている。なお、平板部182の下部前面には、ダッシュクロスメンバ17におけるメンバ門型形状部17aの上端が接合されている。
【0055】
さらに、平板部182には、図3及び図4に示すように、車両上下方向に所定間隔を隔てた位置で、車両前方へ向けて突出するとともに、車幅方向に延びる2つのビード182aが形成されている。なお、2つのビード182aは、車幅方向の両端が、左右の脚部181aに連結するように形成されている。
換言すると、ダッシュパネル補強部材18は、車両上下方向に所定間隔を隔てた位置で、補強部材本体181における左右の脚部181aを連結する連結部分として、2つのビード182aが形成されている。
【0056】
また、カウルボックス13は、図1及び図2に示すように、平面視において、車幅方向略中央が車両前方へ突出した平面視略円弧状であって、左右のヒンジピラー9を車幅方向に連結するとともに、ダッシュパネル12の上端に接合されている。
【0057】
このカウルボックス13は、図4に示すように、ダッシュパネル12の上端に接合されたカウルロア131と、カウルロア131を車両上方から覆うカウルアッパ132とで、車両前後方向に沿った縦断面における断面形状が閉断面をなすよう形成されている。
【0058】
より詳しくは、カウルロア131は、図4に示すように、車両上下方向に所定の厚みを有するロア前縁部131aと、ロア前縁部131aから車両後方下方へ延設されたロア前壁部131bと、ロア前壁部131bの下端から車両後方へ向けて延設されたカウル底部131cと、カウル底部131cから車両後方上方へ向けて僅かに延設したのち、車両後方へ向けて延設されたロア後縁部131dとで一体形成されている。
【0059】
一方、カウルアッパ132は、図4に示すように、車両上下方向に厚みを有する略平板状のアッパ前縁部132aと、アッパ前縁部132aの後端から車両上方へ僅かに延設したのち、車両後方上方へ向けて延設したアッパ前壁部132bと、アッパ前壁部132bの上端から車両後方へ延設されたカウル天板部132cと、カウル天板部132cの後端から車両後方下方へ延設されたアッパ後壁部132dと、アッパ後壁部132dの下端から車両後方へ延設されたアッパ後縁部132eとで一体形成されている。
【0060】
そして、カウルボックス13は、図4に示すように、ロア前縁部131aとアッパ前縁部132aとを接合するとともに、ロア後縁部131dとアッパ後縁部132eとを接合することで、車両前後方向に沿った縦断面における断面形状が閉断面となすよう形成されている。
【0061】
また、インパネメンバ14は、図1図2、及び図7に示すように、所定の内外径を有する略円筒状であって、カウルボックス13に対して車両後方に所定間隔を隔てた位置で、ヒンジピラー9の上部を車幅方向に連結している。このインパネメンバ14は、詳細な図示を省略するが、例えば、ステアリングシャフトや、車両1の車載機器、あるいは車載機器同士を電気的に接続するワイヤーハーネスを支持する支持部材として配設されている。
【0062】
また、左右のフロントサイドフレーム3は、図1及び図2に示すように、平面視において、ヒンジピラー9よりも車幅方向内側、かつフロアトンネル10aよりも車幅方向外側の位置に配設されるとともに、その後端がフロアフレーム11の前端に接合されている。
【0063】
より詳しくは、フロントサイドフレーム3は、詳細な図示を省略するが、車幅方向内側に配設されたフロントサイドフレームインナと、フロントサイドフレームインナに対して車幅方向外側に配設されたフロントサイドフレームアウタとで、車幅方向に沿った縦断面における断面形状が閉断面をなすよう形成されている。
【0064】
例えば、フロントサイドフレーム3は、車幅方向に沿った縦断面における縦断面形状が、車幅方向内側に突出した断面略ハット状のフロントサイドフレームインナと、車幅方向に沿った縦断面における縦断面形状が、車幅方向外側に突出した断面略ハット状のフロントサイドフレームアウタとを車幅方向で当接させるとともに、互いに接合することで、車幅方向に沿った縦断面における断面形状が閉断面をなすよう構成されている。
【0065】
そして、フロントサイドフレーム3の後端は、図2に示すように、フロアフレーム11の前端、及びダッシュクロスメンバ17のメンバ水平部17bにおける車幅方向内側の端部近傍に接合されている。なお、フロントサイドフレーム3の前端には、図示を省略したクラッシュカンが連結される。
【0066】
また、左右のエプロンレインフォースメント4は、図1及び図2に示すように、フロントサイドフレーム3よりも車幅方向外側、かつ車両上方の位置に配設されている。より詳しくは、エプロンレインフォースメント4は、ヒンジピラー9の上端から車両前方、やや車幅方向内側へ向けて延設した形状に形成されている。
【0067】
また、左右のサスタワー5は、図1及び図2に示すように、ダッシュパネル12に対して車両前方に所定間隔を隔てた所望位置において、フロントサスペンションにおけるフロントサスダンパ(図示省略)の上端を支持可能な形状に形成されている。
【0068】
より詳しくは、サスタワー5は、図2に示すように、サスダンパの上端が挿入される挿入開口が設けられたタワー上面部5aと、タワー上面部5aにおける車幅方向内側から車両下方へ延設されたタワー側壁部5bと、タワー上面部5aの後端から車両下方へ延設されたタワー後面部分とで一体形成されている。
そして、サスタワー5は、タワー側壁部5bの下端がフロントサイドフレーム3に接合され、タワー上面部5aにおける車幅方向外側の縁端が、エプロンレインフォースメント4に接合されている。
【0069】
また、左右の遮熱部材6は、図1及び図3に示すように、ダッシュパネル12とサスタワー5との間に、保温または遮熱のための遮熱空間Sを形成する構造体である。この遮熱部材6は、図3に示すように、車幅方向外側に配設された左右一対の遮熱部材アウタ61と、遮熱部材アウタ61に対して車幅方向内側に配設されるとともに、サスタワー5とダッシュパネル12とを連結する左右一対の遮熱部材インナ62とで構成されている。
【0070】
左右の遮熱部材アウタ61は、図1及び図3に示すように、例えば、車載バッテリなどが載置固定される部材であって、車幅方向に沿った縦断面における断面形状が断面略L字状になるように形成されている。
【0071】
より詳しくは、遮熱部材アウタ61は、図3に示すように、車両上下方向に所定の厚みを有する略平板状で、フロントサイドフレーム3の上面に接合されるアウタ底部61aと、アウタ底部61aにおける車幅方向外側から車両上方へ延設されるとともに、ヒンジピラー9のヒンジピラーインナ9aに接合されるアウタ側壁部61bとで一体形成されている。
【0072】
左右の遮熱部材インナ62は、図1から図3に示すように、遮熱部材インナ62の上部を構成する遮熱インナ上部621と、遮熱部材インナ62の下部を構成する遮熱インナ下部622とで構成されている。
【0073】
左右の遮熱インナ上部621は、図1及び図2に示すように、平面視において、サスタワー5の上部と、サスタワー5よりも車幅方向内側におけるダッシュパネル12の前面(ダッシュパネル補強部材18)とを連結している。この遮熱インナ上部621は、図3及び図5に示すように、車幅方向に沿った縦断面における断面形状が、車幅方向外側が開口した断面略コ字状の開断面形状に形成されている。
【0074】
より詳しくは、遮熱インナ上部621は、図3及び図5に示すように、車幅方向に沿った縦断面において、車両上下方向に所定の厚みを有するとともに、遮熱インナ上部621における上面部分をなす上面部621aと、上面部621aにおける車幅方向内側から車両下方へ延設された側壁部621bと、側壁部621bの下端から車幅方向外側へ延設された下面部621cとで一体形成されている。
【0075】
なお、遮熱インナ上部621の後端近傍は、車幅方向内側へ向けて屈曲するとともに、ダッシュパネル補強部材18における補強部材本体181の外形に沿った形状に形成されている。
この遮熱インナ上部621は、図6に示すように、平面視において、側壁部621bの前端に対して側壁部621bの後端が、車幅方向内側に位置するように配設されている。
【0076】
すなわち、遮熱インナ上部621は、平面視において、車幅方向内側の縁辺が車両後方ほど車幅方向内側に位置するように傾斜するように配設されている。
そして、遮熱インナ上部621は、図3及び図7に示すように、前端がサスタワー5に接合され、後端近傍の屈曲した部分が、ダッシュパネル補強部材18における脚部181aの上部に接合されている。換言すると、遮熱インナ上部621は、ダッシュパネル補強部材18を介してダッシュパネル本体15に連結されている。
【0077】
一方、左右の遮熱インナ下部622は、図1及び図2に示すように、平面視において、サスタワー5の下部と、ダッシュパネル補強部材18よりも車幅方向外側のダッシュパネル本体15とを連結するとともに、サスタワー5の下部とフロントサイドフレーム3の後端とを連結している。
【0078】
なお、図3中において、車両右側の遮熱インナ下部622と、車両左側の遮熱インナ下部622とが異なる形状に形成されているが、本実施形態では、略同一形状として車両左側の遮熱インナ下部622を用いて説明する。
【0079】
より詳しくは、遮熱インナ下部622は、図3及び図5に示すように、車幅方向に沿った縦断面において、車両上下方向に厚みを有するとともに、遮熱インナ下部622の上面部分をなす上面部622aと、上面部622aの車幅方向外側からフロントサイドフレーム3の上面へ向けて延設された側壁部622bと、フロントサイドフレーム3における車幅方向内側の側面に沿うように、側壁部622bの下端からさらに車両下方へ延設された下端部622cとで一体形成されている。
【0080】
この遮熱インナ下部622には、図2に示すように、上面部622aの後端、及び側壁部622bの後端から車両上方、及び車幅方向外側へ延設されたフランジ状部分が形成されている。そして、遮熱インナ下部622のフランジ状部分が、ダッシュパネル本体15の前面に接合されている。
【0081】
さらに、遮熱インナ下部622の下端部622cは、図3及び図5に示すように、ダッシュクロスメンバ17におけるメンバ水平部17bの前面からフロントサイドフレーム3における車幅方向内側の側面に亘って湾曲した形状に形成されている。そして、この遮熱インナ下部622の下端部622cは、図2及び図3に示すように、ダッシュクロスメンバ17、及びフロントサイドフレーム3の双方に接合されている。
【0082】
加えて、遮熱インナ下部622の下端部622cには、図2図3、及び図5に示すように、ダッシュクロスメンバ17とフロントサイドフレーム3との接合箇所を跨ぐように、車幅方向内側へ平面視略三角形状に膨出した膨出部分622dが形成されている。このため、遮熱インナ下部622の膨出部分622dは、車幅方向に沿った水平断面、及び縦断面において、ダッシュクロスメンバ17とフロントサイドフレーム3とで閉断面をなしている。
【0083】
このような車両1の前部車体には、図6及び図7に示すように、カウルボックス13とインパネメンバ14とを連結する左右一対のインパネ連結部材19、及びカウルボックス13の内部に配設された左右一対の連結補助部材20を備えている。
【0084】
左右のインパネ連結部材19は、図6及び図7に示すように、車両前後方向に長い平面視略矩形で、インパネ連結部材19の上面部分をなす連結上面部19aと、連結上面部19aの車幅方向両端からそれぞれ車両下方へ延設された左右の連結側面部19bとで、車幅方向に沿った縦断面における断面形状が断面略門型形状になるように構成されている。
なお、インパネ連結部材19の連結上面部19aは、前端近傍がカウルボックス13の下面に当接可能に形成され、後端がインパネメンバ14の上部に当接可能に形成されている。
【0085】
一方、インパネ連結部材19の連結側面部19bは、図7に示すように、側面視において、側面視略三角形の略平板における前端上部を車両前方へ延設した形状に形成されている。さらに、インパネ連結部材19の連結側面部19bは、図7に示すように、側面視において、その後端が、インパネメンバ14の周面に沿った形状に形成されている。
【0086】
このインパネ連結部材19は、図6及び図7に示すように、遮熱部材インナ62における遮熱インナ上部621の後端と略同じ車幅方向の位置、かつ遮熱インナ上部621の後端と略同じ車両上下方向の位置に前端が位置するよう配設されている。換言すると、インパネ連結部材19の前端は、遮熱部材インナ62における遮熱インナ上部621の後端に対して、ダッシュパネル12を挟んで車両前後方向に所定間隔を隔てた位置に対向配置されている。
【0087】
そして、インパネ連結部材19は、その後部がインパネメンバ14の外周面に接合され、連結上面部19aの先端近傍が、カウルボックス13のカウル底部131c、及びロア後縁部131dに車両下方から接合されている。つまり、インパネ連結部材19は、カウルボックス13を介して、ダッシュパネル12に連結されている。
【0088】
一方、左右の連結補助部材20は、図6及び図7に示すように、車両前後方向に延びる略円筒状体であって、カウルボックス13の内部で車両前後方向に対向する内面、すなわち、カウルロア131のロア前壁部131bと、カウルアッパ132のアッパ後壁部132dとに接合されている。
【0089】
より詳しくは、連結補助部材20は、図6及び図7に示すように、その前端が、遮熱部材インナ62における遮熱インナ上部621の後端と略同じ車幅方向の位置において、カウルロア131のロア前壁部131bに接合され、後端が、インパネ連結部材19の前端と略同じ車幅方向の位置において、カウルアッパ132のアッパ後壁部132dに接合されている。
【0090】
以上のように、車両1の車室部2における車両前方の隔壁をなすダッシュパネル12と、ダッシュパネル12の両端に連結されるとともに、車両上下方向に延びる左右一対のヒンジピラー9と、車室部2内で左右のヒンジピラー9を車幅方向に連結するインパネメンバ14と、ダッシュパネル12に対して車両前方に所定間隔を隔てた位置に配設されるとともに、フロントサスダンパの上端を支持するサスタワー5とを備えた車両1の前部車体構造は、サスタワー5、及びダッシュパネル12を連結する遮熱インナ上部621と、遮熱インナ上部621の後端近傍におけるダッシュパネル12、及びインパネメンバ14を連結するインパネ連結部材19とを備えたことにより、サスタワー5に作用する荷重エネルギーを、車両1の車体全体に効率よく分散伝達することができる。
【0091】
具体的には、サスタワー5とダッシュパネル12とが遮熱インナ上部621を介して連結されているため、車両1の前部車体構造は、サスタワー5から遮熱インナ上部621、及びダッシュパネル12をとおって左右のヒンジピラー9へ向かう荷重エネルギー伝達経路を、前部車体に構成することができる。
【0092】
さらに、遮熱インナ上部621の後端とインパネメンバ14とが、ダッシュパネル12、及びインパネ連結部材19を介して連結されているため、車両1の前部車体構造は、サスタワー5から遮熱インナ上部621、インパネ連結部材19、及びインパネメンバ14をとおって左右のヒンジピラー9へ向かう荷重エネルギー伝達経路を、前部車体に構成することができる。
【0093】
このため、車両1の前部車体構造は、サスタワー5に作用する荷重エネルギーを、ダッシュパネル12をとおってヒンジピラー9へ向かう荷重エネルギー伝達経路と、インパネメンバ14をとおって左右のヒンジピラー9へ向かう荷重エネルギー伝達経路とに分散して伝達することができる。
【0094】
これにより、車両1の前部車体構造は、サスタワー5に作用する荷重エネルギーを、左右のヒンジピラー9から、フロントピラー8、及びサイドシル7を介して、後部車体へ向けて効率よく分散伝達することができる。
従って、車両1の前部車体構造は、遮熱インナ上部621、及びインパネ連結部材19によって、サスタワー5に作用する荷重エネルギーを、車両1の車体全体に効率よく分散伝達することができる。
【0095】
また、遮熱インナ上部621の後端が、サスタワー5よりも車幅方向内側におけるダッシュパネル12に連結されたことにより、車両1の前部車体構造は、サスタワー5とダッシュパネル12とを車両前後方向に沿って略直線的に延びる遮熱インナ上部で連結した場合に比べて、車両右側のサスタワー5に作用する荷重エネルギーを、車両左側のヒンジピラー9へ向けて積極的に伝達することができる。
【0096】
同様に、車両1の前部車体構造は、サスタワー5とダッシュパネル12とを車両前後方向に沿って略直線的に延びる遮熱インナ上部で連結した場合に比べて、車両左側のサスタワー5に作用する荷重エネルギーを、車両右側のヒンジピラー9へ向けて積極的に伝達することができる。
【0097】
これにより、車両1の前部車体構造は、左右のサスタワー5に作用する荷重エネルギーを、それぞれ、サスタワー5に対して車両1の対角方向で対向する後部車体へ向けて効率よく分散伝達することができる。
従って、車両1の前部車体構造は、サスタワー5よりも車幅方向内側におけるダッシュパネル12に連結された遮熱インナ上部621によって、サスタワー5に作用する荷重エネルギーを、車両1の車体全体により効率よく分散伝達することができる。
【0098】
また、ダッシュパネル12の上端に連結されるとともに、左右のヒンジピラー9を車幅方向に連結するカウルボックス13を備え、遮熱インナ上部621とインパネ連結部材19とが、カウルボックス13を介してダッシュパネル12に連結されたことにより、車両1の前部車体構造は、カウルボックス13によってダッシュパネル12の剛性を確保できるとともに、サスタワー5から遮熱インナ上部621、及びカウルボックス13をとおって左右のヒンジピラー9へ向かう荷重エネルギー伝達経路を構成することができる。
【0099】
このため、車両1の前部車体構造は、サスタワー5に作用する荷重エネルギーを、ダッシュパネル12をとおってヒンジピラー9へ向かう荷重エネルギー伝達経路と、インパネメンバ14をとおってヒンジピラー9へ向かう荷重エネルギー伝達経路と、カウルボックス13をとおってヒンジピラー9へ向かう荷重エネルギー伝達経路とに分散して伝達することができる。
【0100】
これにより、車両1の前部車体構造は、サスタワー5に作用する荷重エネルギーを、左右のヒンジピラー9から、フロントピラー8、及びサイドシル7を介して、後部車体へ向けてより効率よく分散伝達することができる。
【0101】
従って、車両1の前部車体構造は、遮熱インナ上部621とインパネ連結部材19とが、カウルボックス13を介してダッシュパネル12に連結されたことにより、サスタワー5に作用する荷重エネルギーを、車両1の車体全体により確実に効率よく分散伝達することができる。
【0102】
また、遮熱インナ上部621の後端、及びインパネ連結部材19の前端における車幅方向の位置と略同じ車幅方向の位置において、カウルボックス13における車両前後方向で対向する内面を連結する連結補助部材20を備えたことにより、車両1の前部車体構造は、カウルボックス13を介した遮熱インナ上部621からインパネ連結部材19への荷重エネルギー伝達効率を、連結補助部材20を設けていない場合に比べて向上することができる。このため、車両1の前部車体構造は、サスタワー5に作用する荷重エネルギーを、車両1の車体全体にさらに効率よく分散伝達することができる。
【0103】
また、遮熱インナ上部621が、サスタワー5とダッシュパネル12との間に遮熱空間Sを形成する遮熱部材6であることにより、車両1の前部車体構造は、遮熱機能と、サスタワー5に作用する荷重エネルギーをダッシュパネル12に伝達する機能とを、遮熱インナ上部621に統合することができる。
【0104】
このため、車両1の前部車体構造は、遮熱空間Sを形成する遮熱部材を遮熱インナ上部621とは別体で設けた場合に比べて、前部車体における部品点数の増加を抑えることができるとともに、例えばエンジンを配置するスペースが、別体で設けた遮熱空間Sを形成する遮熱部材によって圧迫されることを防止できる。
従って、車両1の前部車体構造は、サスタワー5に作用する荷重エネルギーを、車両1の車体全体に効率よく分散伝達できるとともに、重量増加を抑えて遮熱空間Sを容易に形成することができる。
【0105】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の第1連結部材は、実施形態の遮熱部材6の遮熱インナ上部621に対応し、
以下同様に、
第2連結部材は、インパネ連結部材19に対応し、
第3連結部材は、連結補助部材20に対応し、
遮熱空間を形成する部材は、遮熱部材6に対応するが、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【0106】
例えば、上述した実施形態において、トンネル対応部分15aを有するダッシュパネル本体15としたが、これに限定せず、フロアトンネル10aを備えていないフロアパネル10の前端に対応して、トンネル対応部分15aを備えていないダッシュパネル本体としてもよい。この場合、ダッシュクロスメンバ17もメンバ門型形状部17aを備えていないものとする。
【0107】
また、カウルロア131とカウルアッパ132とで車両前後方向に沿った縦断面における断面形状が閉断面をなすカウルボックス13としたが、これに限定せず、連結補助部材20の前端、及び後端が接合される内面を有する形状であれば、例えば、車両前後方向に沿った縦断面における断面形状が、車両上方が開口した開断面形状であってもよい。
【0108】
また、正面視略門型形状のダッシュパネル補強部材18としたが、これに限定せず、正面視略逆U字状、正面視略逆V字状、あるいは正面視略M字状のダッシュパネル補強部材としてもよい。
また、遮熱インナ上部621と遮熱インナ下部622とが別体で構成された遮熱部材6の遮熱部材インナ62としたが、これに限定せず、遮熱インナ上部621と遮熱インナ下部622とが一体形成された遮熱部材インナとしてもよい。
【0109】
また、車幅方向に延びる略円筒状のインパネメンバ14としたが、これに限定せず、インパネメンバにおける車両左側部分と車両右側部分とが車両前後方向でオフセットした形状であってもよい。
【0110】
より詳しくは、別の実施形態における車両1の前部車体における平面図を示す図8のように、左右のヒンジピラー9を連結するインパネメンバ21が、左端が車両左側のヒンジピラー9に接合された略円筒状の左円筒部211と、左円筒部211に対して車両後方にオフセットするとともに、右端が車幅方向右側のヒンジピラー9に接合された略円筒状の右円筒部212と、左円筒部211の右端、及び右円筒部212の左端を連結する連結部材213とで構成されてもよい。
【0111】
また、左右一対のインパネ連結部材19、及び左右一対の連結補助部材20としたが、これに限定せず、車室部2におけるレイアウトの制限によっては、図8に示すように、車両右側、あるいは車両左側のいずれか一方だけに、インパネ連結部材19、連結補助部材20を備えた構成としてもよい。
【0112】
また、平面視において、車幅方向外側から車幅方向内側、かつ車両後方へ向けて延びる遮熱部材インナ62の遮熱インナ上部621に対して、車両前後方向に延びるインパネ連結部材19、及び連結補助部材20としたが、これに限定せず、別の実施形態における前部車体の平面図を示す図9のように、平面視において、車幅方向外側から車幅方向内側、かつ車両後方へ向けて延びる遮熱インナ上部621の延長線上に沿うように、インパネ連結部材19、及び連結補助部材20を車両前後方向に対して傾斜した状態で配置した構成してもよい。
【0113】
この場合であっても、車両の前部車体構造は、例えば、車両左側のサスタワー5に作用する荷重エネルギーを、ダッシュパネル12、及びインパネメンバ14を介して、車両右側のヒンジピラー9へ向けて積極的に伝達することができる。
【符号の説明】
【0114】
1…車両
2…車室部
5…サスタワー
6…遮熱部材
9…ヒンジピラー
12…ダッシュパネル
13…カウルボックス
14…インパネメンバ
19…インパネ連結部材
20…連結補助部材
21…インパネメンバ
621…遮熱インナ上部
S…遮熱空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9