(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】画像形成装置および制御方法
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20220412BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20220412BHJP
【FI】
G03G15/20 555
G03G15/00 303
(21)【出願番号】P 2018074453
(22)【出願日】2018-04-09
【審査請求日】2020-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大塚 豊
【審査官】小池 俊次
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-186339(JP,A)
【文献】特開2015-036773(JP,A)
【文献】特開2004-333913(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0267644(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源を有し、かつ前記熱源によって生じた熱を用いて記録材上の未定着画像を前記記録材上に定着させる定着装置と、
前記記録材の坪量を検知するセンサーと、
前記定着装置の動作を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記センサーによって検知された前記記録材の坪量を、前記記録材の熱伝導率と前記記録材の厚みとを用いて補正し、
補正後の坪量に基づいて前記定着装置における定着条件を決定し、
決定された前記定着条件で前記定着装置を動作させる、画像形成装置。
【請求項2】
前記定着条件は、前記熱源の設定温度である、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記補正後の坪量が大きい程、前記設定温度が高くなるように、前記定着装置を制御する、請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記熱伝導率が高い程、前記設定温度が高くなるように、前記定着装置を制御する、請求項2または3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記熱伝導率を前記厚みで除したときの値が大きい程、前記設定温度が高くなるように、前記定着装置を制御する、請求項2から4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記補正後の坪量と、前記設定温度とを対応付けて記憶しており、
前記画像形成装置は、ユーザ操作を受け付ける操作部をさらに備え、
前記制御装置は、前記操作部が前記設定温度を変更するためのユーザ操作を受け付けると、前記設定温度を前記ユーザ操作に基づいた値に変更する、請求項2から5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記定着条件は、前記記録材の搬送速度である、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記制御装置は、前記補正後の坪量が大きい程、前記搬送速度が遅くなるように、前記定着装置を制御する、請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記制御装置は、前記熱伝導率が高い程、前記搬送速度が遅くなるように、前記定着装置を制御する、請求項7または8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記制御装置は、前記熱伝導率を前記厚みで除したときの値が大きい程、前記搬送速度が遅くなるように、前記定着装置を制御する、請求項7から9のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記定着装置は、加圧部材をさらに有し、かつ前記加圧部材によって加わる圧力を用いて前記未定着画像を前記記録材上に定着させ、
前記定着条件は、前記圧力の値である、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記制御装置は、前記補正後の坪量が大きい程、前記圧力が高くなるように、前記定着装置を制御する、請求項11に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記制御装置は、前記熱伝導率が高い程、前記圧力が高くなるように、前記定着装置を制御する、請求項11または12に記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記制御装置は、前記熱伝導率を前記厚みで除したときの値が大きい程、前記圧力が高くなるように、前記定着装置を制御する、請求項11から13のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項15】
前記制御装置は、前記熱伝導率を前記厚みで除したときの第1の値を用いて、前記記録材の坪量を補正する、請求項1から14のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項16】
前記制御装置は、前記第1の値を予め定められた第2の値で除したときの第3の値を用いて、前記記録材の坪量を補正する、請求項15に記載の画像形成装置。
【請求項17】
前記制御装置は、前記記録材のベック平滑度に基づき前記熱伝導率を算出する、請求項1から16のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項18】
熱を用いて記録材上の未定着画像を前記記録材上に定着させる定着装置と、前記定着装置の動作を制御する制御装置とを備えた画像形成装置の制御方法であって、
センサーによって、前記記録材の坪量を検知するステップと、
前記センサーによって検知された前記記録材の坪量を、前記記録材の熱伝導率と前記記録材の厚みとを用いて補正するステップと、
補正後の坪量に基づいて前記定着装置における定着条件を決定するステップと、
決定された前記定着条件で前記定着装置を動作させるステップとを備える、制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置および画像形成装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機、プリンタ、ファクシミリまたはそれらの複合機である画像形成装置が知られている。この画像形成装置は、用紙等の記録材に形成されたトナー像を加熱溶融することにより、画像を定着させる定着装置を備える。
【0003】
たとえば、特許文献1には、このような定着装置の温度制御方法が開示されている。具体的には、特許文献1には、記録媒体の未定着画像面側から記録媒体を加熱する定着部材と、非画像面から記録媒体を加圧する加圧部材と、定着部材の長手方向に分割された複数の加熱源および加圧部材温度を検知する温度検知部材とを有する定着装置の温度制御方法が開示されている。
【0004】
この温度制御方法では、加圧部材温度に基づいて定着部材設定温度をフィードバック制御しつつ、記録媒体の画像領域に応じて該加熱源を選択的に通電することにより、定着後記録媒体の画像領域のみを所望の温度に制御される。より詳しくは、この温度制御方法では、フィードバック制御の際、記録媒体のニップ時間、坪量、熱伝導率、比熱、および含水率のいずれか1つの因子を用いて、定着部材設定温度が補正される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、たとえば坪量と熱伝導率とを用いて定着部材設定温度(定着温度)を補正しても、用紙種類によっては、所望の定着強度が得られない。このため、定着アンダーによりオフセットが発生する場合がある。また、同じ定着温度と同じ搬送速度との条件設定下において、たとえ同じ坪量の用紙であっても、用紙の熱伝導率および用紙の厚みによって、得られる定着強度が異なる。
【0007】
本願発明は、上記の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、所望の定着強度を得ることが可能な画像形成装置および画像形成装置における制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある局面に従うと、画像形成装置は、熱源を有し、かつ熱源によって生じた熱を用いて記録材上の未定着画像を記録材上に定着させる定着装置と、定着装置の動作を制御する制御装置とを備える。制御装置は、記録材の坪量を、記録材の熱伝導率と記録材の厚みとを用いて補正する。制御装置は、補正後の坪量に基づいて定着装置における定着条件を決定する。制御装置は、決定された定着条件で定着装置を動作させる。
【0009】
好ましくは、定着条件は、熱源の設定温度である。
好ましくは、制御装置は、補正後の坪量が大きい程、設定温度が高くなるように、定着装置を制御する。
【0010】
好ましくは、制御装置は、熱伝導率が高い程、設定温度が高くなるように、定着装置を制御する。
【0011】
好ましくは、制御装置は、熱伝導率を厚みで除したときの値が大きい程、設定温度が高くなるように、定着装置を制御する。
【0012】
好ましくは、制御装置は、補正後の坪量と、設定温度とを対応付けて記憶している。画像形成装置は、ユーザ操作を受け付ける操作部をさらに備える。
【0013】
制御装置は、操作部が設定温度を変更するためのユーザ操作を受け付けると、設定温度をユーザ操作に基づいた値に変更する。
【0014】
好ましくは、定着条件は、記録材の搬送速度である。
好ましくは、制御装置は、補正後の坪量が大きい程、搬送速度が遅くなるように、定着装置を制御する。
【0015】
好ましくは、制御装置は、熱伝導率が高い程、搬送速度が遅くなるように、定着装置を制御する。
【0016】
好ましくは、制御装置は、熱伝導率を厚みで除したときの値が大きい程、搬送速度が遅くなるように、定着装置を制御する。
【0017】
好ましくは、定着装置は、加圧部材をさらに有し、かつ加圧部材によって加わる圧力を用いて未定着画像を記録材上に定着させる。定着条件は、圧力の値である。
【0018】
好ましくは、制御装置は、補正後の坪量が大きい程、圧力が高くなるように、定着装置を制御する。
【0019】
好ましくは、制御装置は、熱伝導率が高い程、圧力が高くなるように、定着装置を制御する。
【0020】
好ましくは、制御装置は、熱伝導率を厚みで除したときの値が大きい程、圧力が高くなるように、定着装置を制御する。
【0021】
好ましくは、制御装置は、熱伝導率を厚みで除したときの第1の値を用いて、記録材の坪量を補正する。
【0022】
好ましくは、制御装置は、第1の値を予め定められた第2の値で除したときの第3の値を用いて、記録材の坪量を補正する。
【0023】
好ましくは、制御装置は、記録材のベック平滑度に基づき熱伝導率を算出する。
本発明の他の局面に従うと、制御方法は、熱を用いて記録材上の未定着画像を記録材上に定着させる定着装置と、定着装置の動作を制御する制御装置とを備えた画像形成装置で実行される。制御方法は、記録材の坪量を、記録材の熱伝導率と記録材の厚みとを用いて補正するステップと、補正後の坪量に基づいて定着装置における定着条件を決定するステップと、決定された定着条件で定着装置を動作させるステップとを備える。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、所望の定着強度を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】画像形成装置の内部構造の一例を示す概略図である。
【
図2】定着装置の内部構造の一例を示す側面図である。
【
図3】本体部のハードウェア構成を説明するためのブロック図である。
【
図6】
図5に示した8個のデータを、坪量以外の用紙物性値を横軸としてプロットし直したものである。
【
図7】
図5に示した8個のデータを、坪量以外の用紙物性値を横軸としてプロットし直したものであり、かつ
図6のデータのプロット状態を考慮したものである。
【
図8】本体部の機能的構成を説明するための図である。
【
図9】本体部で実行される処理の流れを説明するためのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
実施の形態における画像処理装置について、以下、図を参照しながら説明する。以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本開示の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。同一の部品、相当部品に対しては、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。図面においては、実際の寸法の比率に従って図示しておらず、構造の理解を容易にするために、構造が明確となるように比率を変更して図示している箇所がある。
【0027】
<A.装置概要>
(a1.画像形成装置)
図1は、画像形成装置1000の内部構造の一例を示す概略図である。
【0028】
図1を参照して、画像形成装置1000は、本体部10と、後処理装置20とを備えている。
【0029】
後処理装置20は、パンチ処理装置220と、平綴じ処理部250と、中綴じ処理部260と、排出トレイ271,272,273とを備える。
【0030】
本体部10は、画像形成ユニット11と、スキャナユニット12と、自動原稿搬送ユニット13と、給紙部14と、搬送路15と、メディアセンサー16と、反転搬送路17とを備えている。
【0031】
本体部10は、画像形成装置1000の動作を制御する制御装置31をさらに備えている。なお、本例では、本体部10は、いわゆるタンデム方式のカラープリンタである。本体部10は、印刷設定に基づいて画像形成を実行する。
【0032】
自動原稿搬送ユニット13は、原稿台上に載置された原稿を、原稿読取部の読取位置に自動的に搬送する。スキャナユニット12は、自動原稿搬送ユニット13により搬送された原稿の画像を読み取り、読取データを生成する。
【0033】
給紙部14は、給紙ローラー141と、給紙カセット142とを有する。給紙カセット142には、用紙Pが収容される。給紙カセット142は、本体部10から引き出し可能に構成されている。給紙ローラー141は、用紙Pを搬送路15に沿って上方へ送る。
【0034】
搬送路15は、片面印刷および両面印刷のときに使用される。反転搬送路17は、両面印刷のときに使用される。
【0035】
排紙ローラー18は、定着装置120より搬送路15のさらに下流側に配置されている。排紙ローラー18から排出された用紙Pは、水平搬送部290に送られる。
【0036】
画像形成ユニット11は、スキャナユニット12が生成した読取データ、または、図示しないクライアントPCから取得した印刷データに基づいて、給紙部14により供給される用紙Pに対し画像形成を行なう。
【0037】
画像形成ユニット11は、中間転写ベルト101と、レジストローラー102,103と、イエローの画像形成部104Yと、マゼンタの画像形成部104Mと、シアンの画像形成部104C,ブラックの画像形成部104Kと、画像濃度センサ105と、1次転写装置111と、2次転写装置115と、定着装置120とを有している。
【0038】
メディアセンサー16は、搬送路15に設置される。メディアセンサー16は、典型的には、給紙ローラー141と、2次転写装置115との間に設置される。より詳しくは、メディアセンサー16は、給紙ローラー141と、図示しないタイミングローラーとの間に設置される。メディアセンサー16によって、紙種自動検知機能が実現される。
【0039】
メディアセンサー16は、用紙Pの属性(紙種等の特性)を検出する。メディアセンサー16は、たとえば、用紙の属性を数値として出力する。メディアセンサー16による検出結果は、制御装置31に送信される。
【0040】
一例として、メディアセンサー16は、用紙Pに光を照射する発光部と、用紙Pにて反射した反射光を受光する受光部とを有する。メディアセンサー16は、この反射光の電圧値から、用紙Pの坪量等を判定できる。
【0041】
(a2.定着装置)
定着装置120は、自身を通過する用紙Pを加圧および加熱する。定着装置120は、制御装置31からの制御信号に従って、用紙Pの加熱度合いや、用紙Pに加える圧力(定着圧力)、用紙Pの搬送速度などを制御する。定着装置120が用紙Pを加熱および加圧することで、トナー像が用紙Pに定着する。その後、用紙Pは、排出トレイ271~273のいずれかに排紙される。
【0042】
図2は、定着装置120の内部構造の一例を示す側面図である。
図2を参照して、定着装置120は、加熱回転体129と、加圧ローラー124と、ヒーター125と、サーミスタ126とを備える。加熱回転体129は、加熱ローラー121と、定着ローラー122と、定着ベルト123とで構成されている。
【0043】
加熱ローラー121の内部には、ヒーター125が設けられている。ヒーター125の数は、任意である。ヒーター125は、たとえば、ハロゲンヒーターである。ヒーター125は、加熱回転体129と加圧ローラー124との接触部分を通過する用紙Pに熱が伝わるように加熱回転体129を加熱する。より具体的には、ヒーター125は、加熱ローラー121を加熱することで、定着ベルト123に熱を伝える。加熱された定着ベルト123は、回転することにより定着ローラー122に熱を伝え、搬送路15上を搬送されている用紙Pに熱を伝える。用紙Pが加熱されることで、用紙P上のトナー像Gが融解する。その結果、トナー像Gは、用紙Pに定着する。
【0044】
定着装置120には、加圧ローラー124が設けられている。加圧ローラー124は、加熱回転体129に接触して設けられている。加圧ローラー124は、加熱回転体129と加圧ローラー124との接触部分(ニップ領域)を通過する用紙Pを定着ローラー122に加圧する。
【0045】
サーミスタ126は、加熱回転体129の温度を測定する。詳しくは、サーミスタ126は、定着ベルト123の表面温度を測定する。より詳しくは、サーミスタ126は、加熱ローラー121と接触している定着ベルト123の表面温度を測定する。測定された温度の情報は、制御装置31にフィードバックされる。
【0046】
(a3.制御装置)
制御装置31は、メディアセンサー16による検知結果に基づき、用紙Pが、コート紙、普通紙、上質紙のいずれであるかを判別する。また、制御装置31は、当該検知結果によって、用紙の坪量を判定する。さらに、制御装置31は、当該検知結果によって、用紙Pが、OHP(Overhead Projector)フィルム、封筒、インデックス紙のいずれであるかも判別する。たとえば、用紙Pの坪量によって、制御装置31は、用紙の種類が、薄紙、普通紙、厚紙のいずれであるかを判別する。
【0047】
また、制御装置31は、メディアセンサー16による検知結果に基づき、制御装置31は、用紙Pの平滑度(表面性)を示す指数であるベック平滑度[sec]を算出する。制御装置31は、ベック平滑度に基づき、用紙Pの熱伝導率を算出する。詳しくは、制御装置31は、ベック平滑度の対数(以下、「ベックlog」とも称する)をとる。制御装置は、ベックlogに基づき、用紙Pの熱伝導率を算出する。熱伝導率の具体的な算出方法については、後述する。
【0048】
さらに、制御装置31は、メディアセンサー16による検知結果を利用して、定着装置120の定着条件を設定する。定着条件として、たとえば、定着温度、用紙の搬送速度(ニップ領域における速度)、加圧ローラー124によって加えられる定着圧力、1分間当たりのプリント枚数(PPM:Print Per Minuites)等が挙げられる。
【0049】
具体的には、制御装置31は、測定される温度が制御装置31によって設定された定着温度(設定温度、目標温度)となるように、ヒーター125の動作を制御する。詳しくは、制御装置31は、フィードバックされた温度の情報を利用して、測定される温度が制御装置31によって設定された温度となるように、ヒーター125の動作を制御する。
【0050】
また、制御装置31は、加熱回転体129の回転速度を制御することにより、ニップ領域を通過する用紙Pの搬送速度を制御する。さらに、制御装置31は、加圧ローラー124の位置を制御することにより、用紙Pに対して加える定着圧力を変化させる。
【0051】
(a4.本体部のハードウェア構成)
図3は、本体部10のハードウェア構成を説明するためのブロック図である。
【0052】
図3を参照して、本体部10は、少なくとも、制御装置31と、操作パネル32と、メディアセンサー16と、定着装置120とを備えている。
【0053】
操作パネル32は、タッチスクリーン320を含んでいる。タッチスクリーン320は、ディスプレイ322と、ディスプレイ322に重畳して配置されるタッチパネル321とで構成される。
【0054】
制御装置31は、プログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)311と、データを不揮発的に格納するROM(Read Only Memory)312と、データを揮発的に格納するRAM(Random Access Memory)313と、フラッシュメモリ314と、通信IF315とを有する。制御装置31は、通信IF315によって、メディアセンサー16と、操作パネル32と、後処理装置20と通信可能となっている。
【0055】
フラッシュメモリ314は、不揮発性の半導体メモリである。フラッシュメモリ314は、CPU311が実行するオペレーティングシステムおよび各種のプログラム、各種のコンテンツおよびデータを格納している。また、フラッシュメモリ314は、画像形成装置1000が生成したデータ、画像形成装置1000の外部装置から取得したデータ等の各種データを揮発的に格納する。
【0056】
制御装置31は、メディアセンサー16の検知結果を取得する。制御装置31は、上述したように、メディアセンサー16による検知結果を利用して、定着装置120の定着条件を設定する。
【0057】
<B.定着条件の決定>
図4は、坪量と定着条件との関係を表した図である。
【0058】
図4に示すように、データテーブルD4では、坪量に対して、定着条件として、定着温度と、搬送速度と、定着圧力と、PPMとが対応付けられている。典型的には、坪量を複数の範囲に区分し、各区分に対して、定着温度と、搬送速度と、定着圧力と、PPMとが対応付けられている。
【0059】
本実施の形態では、メディアセンサー16によって検知された坪量を、後述する関数(数式)を用いて補正する。制御装置31は、補正後の坪量に基づいて定着装置120における定着条件を決定する。典型的には、制御装置31は、補正後の坪量に対応付けられた定着条件を、予め規定された条件の中から選択する。制御装置31は、決定(選択)された定着条件で定着装置120を動作させる。
【0060】
たとえば、メディアセンサー16によって検知された坪量が、110g/m2であったとする。また、補正後の坪量が、125g/m2となったとする。この場合、制御装置31は、定着温度を170度に設定するのではなく、定着温度を155度に設定する。また、制御装置31は、搬送速度を135mm/sに設定するのではなく、搬送速度を68mm/sに設定する。この場合、定着装置120は、これらの設定に基づいて動作する。
【0061】
<C.坪量補正の具体例>
制御装置31は、定着条件の決定にあたり、以下の演算処理を行う。
【0062】
(c1.用紙Pの熱伝導率の算出)
制御装置31は、以下の数式(1)で示す演算を行うことにより、検知対象となる用紙Pの熱伝導率λtを算出する。
【0063】
λt=λ0×(logγt/logγ0) … (1)
数式(1)において、γ0は、基準となる用紙(以下、「用紙Q」とも称する)のベック平滑度である。γtは、検知対象となる用紙Pのベック平滑度である。λ0は、基準となる用紙Qの熱伝導率である。なお、γtは、メディアセンサー16によって、用紙毎に算出される。γ0およびλ0は、制御装置31に予め格納されている既知の値である。
【0064】
たとえば、γ0が90.2[sec]であり、λ0が0.15[W/m・K]であるとする。さらに、検知対象となる用紙Pのベック平滑度γtが19.5[sec]であったとする。この場合、検知対象となる用紙Pの熱伝導率λtは、数式(1)により、約0.1(=0.15×(log(19.5)/log(90.2)))となる。
【0065】
なお、log(19.5)の値は、1.29であり、log(90.2)の値は、1.955である。
【0066】
(c2.補正後の坪量の算出)
上記の数式(1)によって、知対象となる用紙Pの熱伝導率λtが算出されると、制御装置31は、以下の数式(2)で示す演算を行うことにより、検知対象となる用紙Pの補正後の坪量(以下、「補正坪量Vc」とも称する)を算出する。
【0067】
Vc=Vt+{(λt/δt)/(λ0/δ0)-1}×C … (2)
数式(2)において、Vtは、メディアセンサー16で検知された用紙Pの坪量である。δtは、検知対象となる用紙Pの厚み(紙厚)である。δ0は、基準となる用紙Qの厚みである。Cは、所定の定数である。なお、δtは、メディアセンサー16によって、用紙毎に算出される。δ0は、制御装置31に予め格納されている既知の値である。
【0068】
本実施例では、定数Cの値を40g/m2に設定している。また、以下では、用紙Qの厚みδ0を、0.08mmとする。なお、上述したように、用紙Pの熱伝導率λtは0.1であり、用紙Qの熱伝導率λ0は0.15である。
【0069】
メディアセンサー16による検知の結果、Vt、δtが、それぞれ、たとえば80g/m2、0.16mmであったとする。この場合、補正後の坪量Vcは、数式(2)より、約53(=80+{(0.1/0.16)/(0.15/0.08)-1}×40)となる。
【0070】
この例の場合、補正前の坪量が80g/m2であるのに対し、補正後の坪量が53g/m2となっている。したがって、制御装置31は、データテーブルD4を参照して、坪量が59g/m2以下の区分の定着条件を選択する。
【0071】
(c3.小括)
(1)以上のように、制御装置31は、検出された坪量Vtを、用紙Pの熱伝導率λtと用紙Pの厚みδtとを用いて補正する。詳しくは、制御装置31は、数式(2)に示すように、熱伝導率λtを厚みδtで除したときの第1の値(λt/δt)を用いて、用紙Pの坪量Vtを補正する。さらに詳しくは、制御装置31は、第1の値(λt/δt)を予め定められた第2の値(λ0/δ0)で除したときの第3の値((λt/δt)/(λ0/δ0))を用いて、用紙Pの坪量Vtを補正する。このような補正により、所望の定着強度を得ることが可能となる。
【0072】
(2)制御装置31は、用紙Pのベック平滑度γtに基づき熱伝導率λtを算出する。詳しくは、制御装置31は、数式(1)に示すように、ベック平滑度γtの対数(ベックlogγt)を用いて、熱伝導率λtを算出する。
【0073】
(3)データテーブルD4の定着温度に着目すると、制御装置31は、以下の処理を行なうと言える。
【0074】
制御装置31は、補正後の坪量Vcが大きい程、定着温度(設定温度)が高くなるように、定着装置120を制御する。また、制御装置31は、熱伝導率λtが高い程、定着温度が高くなるように、定着装置120を制御する。さらに、制御装置31は、熱伝導率λtを厚みδtで除したときの値(λt/δt)が大きい程、定着温度が高くなるように、定着装置120を制御する。これらの制御により、定着強度が弱くなってしまうことを防止することができる。
【0075】
(4)データテーブルD4の搬送速度に着目すると、制御装置31は、以下の処理を行なうと言える。
【0076】
制御装置31は、補正後の坪量Vcが大きい程、搬送速度が遅くなるように、定着装置120を制御する。また、制御装置31は、熱伝導率λtが高い程、搬送速度が遅くなるように、定着装置120を制御する。さらに、制御装置31は、熱伝導率λtを厚みで除したときの値(λt/δt)が大きい程、搬送速度が遅くなるように、定着装置120を制御する。これらの制御により、定着強度が弱くなってしまうことを防止することができる。
【0077】
(5)データテーブルD4の定着圧力に着目すると、制御装置31は、以下の処理を行なうと言える。
【0078】
制御装置31は、前記補正後の坪量Vcが大きい程、定着圧力が高くなるように、定着装置120を制御する。また、制御装置31は、前記熱伝導率λtが高い程、定着圧力が高くなるように、定着装置120を制御する。さらに、制御装置31は、前記熱伝導率λtを前記厚みδtで除したときの値(λt/δt)が大きい程、定着圧力が高くなるように、定着装置120を制御する。これらの制御により、定着強度が弱くなってしまうことを防止することができる。
【0079】
<D.熱伝導率と厚みとを用いた坪量補正を行う理由>
以下では、上述したように、坪量Vtを用紙Pの熱伝導率λtと用紙Pの厚みδtとを用いて補正する理由と、数式(2)における定数Cの決定の仕方とを説明する。
【0080】
(d1.比較例)
まず、
図5および
図6に基づいて、本例に対する比較例を説明する。
【0081】
図5は、坪量と定着強度との関係を表した図である。詳しくは、
図5は、予め定めた定着条件でトナーを用紙に定着させたときの定着強度(%)のデータをプロットしたグラフである。なお、
図5における坪量に対しては上述した補正は行われていない。
【0082】
図5を参照して、グラフの横軸が坪量で、縦軸が定着強度である。なお、定着強度とは、擦り試験による値である。定着強度は、擦る前のトナー濃度(Zb)に対する、擦った後のトナー濃度(Za)の比(Za/Zb)に、さらに100を掛けることにより得られる数値である。
【0083】
坪量が大きいほど用紙に奪われる熱量が増えるため、同じ定着条件で定着強度が低くなる。したがって、坪量が大きいほど、定着温度を高くするか、定着装置120における用紙の搬送速度を遅くするか、あるいは、定着圧力を高くする必要があると考えられる。
【0084】
坪量と定着強度との関係は、図示された実線Lを想定している。しかしながら、実線Lに対して上下にずれている部分(データ)がある。坪量のみを考慮して定着条件を決める場合は、用紙によっては、熱量を与えすぎて過定着になったり、熱量不足で定着アンダーオフセットが発生する場合がある。これは、坪量以外の用紙物性値が定着強度に影響しているためである。
【0085】
図6は、
図5に示した8個のデータを、坪量以外の用紙物性値を横軸としてプロットし直したものである。なお、
図6の各図(
図6(A)~(E))においては、縦軸は
図5と同じく定着強度である。
【0086】
図6(A)は、横軸を用紙の厚み(紙厚)としたグラフである。
図6(A)を参照して、同じ坪量では、厚みが大きいほど、同じ定着条件で定着強度が高くなる傾向がある。用紙の厚みが大きいほど、定着温度を低くするか、搬送速度を速くするか、あるいは、定着圧力を低くする必要があると考えられる。このように、用紙の厚みのみで定着条件を決めると、定着強度の過不足が生じる。
【0087】
図6(B)は、横軸を用紙の熱伝導率としたグラフである。
図6(B)を参照して、熱伝導率が高いほど、定着温度を高くするか、搬送速度を遅くするか、あるいは、定着圧力を高くする必要がある。このように、熱伝導率のみで定着条件を決めると、定着強度の過不足が生じる。
【0088】
図6(C)は、横軸を用紙の密度としたグラフである。
図6(C)を参照して、密度が高いほど、定着温度を高くする、もしくは、定着部搬送速度を遅くする、もしくは、定着圧力を高くする必要がある。このように、密度のみで定着条件を決めると、定着強度の過不足が生じる。
【0089】
図6(D)は、横軸を、用紙の熱伝導率を用紙の厚みで除したもの(λ/δ)としたグラフである。
図6(D)を参照して、熱伝導率を厚みで除した値が大きいほど、定着温度を高くするか、搬送速度を遅くするか、あるいは、定着圧力を高くする必要がある。このように、熱伝導率を厚みで除した値のみで定着条件を決めると、定着強度の過不足が生じる。
【0090】
図6(E)は、横軸を、用紙の厚みの逆数(1/δ)としたグラフである。
図6(E)を参照して、用紙の厚みの逆数が大きいほど、定着温度を高くするか、搬送速度を遅くするか、あるいは、定着圧力を高くする必要がある。このように、用紙の厚みの逆数のみで定着条件を決めると、定着強度の過不足が生じる。
【0091】
(d2.本例)
次に、
図7に基づいて、本例を説明する。
【0092】
図7は、
図5に示した8個のデータを、坪量以外の用紙物性値を横軸としてプロットし直したものであり、かつ
図6のデータのプロット状態を考慮したものである。
【0093】
図7を参照して、8つのデータは、熱伝導率を厚みで除した値を用いて坪量を補正し、かつ補正後の坪量により定着条件を決めた場合を表している。より詳しくは、上述した数式(2)を用いて坪量を補正した場合を表している。
【0094】
図5では、実線Lの付近(上下)にデータがプロットされている。それゆえ、坪量は、概ね定着強度と関係があるといえる。
図6においては、データのプロット位置は、横軸の各々の物性値に対して、大まかには傾向はあるもの、いずれもプロット位置は上下に幅をもって広がっている。この広がりは、たとえば
図6(A)において楕円で囲った坪量群に起因している。
図5および
図6において、プロット位置の上下の広がりをみると、
図6から坪量以外を入力とするよりも、
図5の坪量を入力とした方が定着強度との関係が直線に近いことが分かる。
図6(A)に示すように、同じ坪量では、用紙の厚みについて、定着強度に右肩あがりの傾向がある。そこで、補正では、
図6(E)にも示したように、用紙の厚みの逆数を利用することとした。
【0095】
また、同じ坪量であれば、厚みが変わると密度が変わる。単純に横軸を密度とした場合の定着強度のグラフ(
図6(C))と、横軸を厚みの逆数とした場合の定着強度のグラフ(
図6(E))とを比較すると、
図6(E)のグラフの方がよりよく、
図5における各坪量の縦の広がりを表現できている。
【0096】
図5において、理想ライン(実線L)からのプロット位置の広がり方の傾向をみると、80g/m
2と256g/m
2との広がり傾向は表現できている。しかしながら、44g/m
2は、もう少し左の位置に、133g/m
2は、もう少し右の位置にあった方が、
図5の実線Lにデータのプロット位置を近づける補正ができる。すなわち、44g/m
2のプロット位置と133g/m
2のプロット位置とをこのように移動させると、計算の結果、各データのプロット位置を、理想ラインである実線Lに近づけることができる。
【0097】
そこで、
図6(B)の熱伝導率に着目した。そして、熱伝導率に対して、厚みの逆数を掛けたものを横軸としたのが
図6(D)のグラフである。このグラフでは、
図5における各坪量の縦の広がりを表現できている。熱伝導率だけでは所望とする補正(理想ラインに沿った補正)は実現できず、厚みのみでも所望とする補正は実現できない。坪量を基本として、熱伝導率と厚みとの両方を用いることにより、所望となる補正を行うことができる。
【0098】
定着強度を高くするには、トナーの温度を高くする必要がある。用紙表面の繊維に入り込んだトナーも溶かす必要がある。定着ベルト123とニップ領域に入ってきたトナー表面との温度差により、定着ベルト123からトナーに熱が移動し、トナー温度が上昇する。用紙の熱伝導率が高いと用紙裏面側に熱が移動するので、トナーと用紙との界面付近の温度は下がってしまう。用紙の厚みがある方が、断熱効果が大きくなる。断熱効果を考える場合、熱伝導率のみでなく、厚みを考慮する必要がある。
【0099】
以上の理由により、坪量V
tを用紙Pの熱伝導率λ
tと用紙Pの厚みδ
tとを用いて補正する。また、数式(2)における定数Cとして、補正後の各坪量に対応するデータ(定着強度の値)が理想ラインである実線L(
図5参照)に近づくような値(係数)を選択しておく。このような定数Cの値の選択(設定)は、典型的には、画像形成装置1000の設計段階等で行われる。
【0100】
<E.機能的構成>
図8は、画像形成装置1000の本体部10の機能的構成を説明するための図である。
【0101】
図8を参照して、本体部10は、上述したように、メディアセンサー16と、制御装置31と、定着装置120と、操作パネル32とを備える。
【0102】
メディアセンサー16は、坪量検出部16Aと、紙厚検出部16Bと、ベック平滑度検出部16Cとを備えている。制御装置31は、坪量補正部351と、熱伝導率算出部352と、定着条件決定部353と、通信インターフェイス部354とを備えている。定着条件決定部353は、データテーブルD4(
図4参照)を格納している。
【0103】
坪量検出部16Aは、用紙Pの坪量を検出する。坪量検出部16Aは、検出された坪量を示す信号を、制御装置31の坪量補正部351に対して出力する。
【0104】
紙厚検出部16Bは、用紙Pの厚みを検出する。紙厚検出部16Bは、検出された厚みを示す信号を、坪量補正部351に対して出力する。
【0105】
ベック平滑度検出部16Cは、用紙Pのベック平滑度を検出する。ベック平滑度検出部16Cは、検出されたベック平滑度を示す信号を、制御装置31の熱伝導率算出部352に対して出力する。
【0106】
熱伝導率算出部352は、ベック平滑度にもとづき、用紙Pの熱伝導率λtを算出する。具体的には、熱伝導率算出部352は、上述した数式(1)を用いて、用紙Pの熱伝導率λtを算出する。熱伝導率算出部352は、算出された熱伝導率λtを、坪量補正部351に送る。
【0107】
坪量補正部351は、坪量Vtを用紙Pの熱伝導率λtと用紙Pの厚みδtとを用いて補正する。具体的には、坪量補正部351は、上述した数式(2)を用いて坪量Vtを補正し、補正後の坪量Vcを得る。坪量補正部351は、算出された補正後の坪量Vcを、定着条件決定部353に送る。
【0108】
定着条件決定部353は、データテーブルD4を参照し、補正後の坪量Vcに基づき定着条件を決定する。たとえば、補正前の坪量Vtが80g/m2であるのに対し、補正後の坪量Vcが53g/m2となった場合、定着条件決定部353は、データテーブルD4を参照して、坪量が59g/m2以下の区分の定着条件を選択する。
【0109】
定着条件決定部353は、決定した定着条件(定着温度、搬送速度、定着圧力等)を、通信インターフェイス部354を介して、定着装置120に送信する。これにより、定着装置120は、制御装置31から指示された定着条件で定着処理を実行する。
【0110】
操作パネル32は、制御装置31による制御に基づき、ユーザが定着温度を調整(典型的には微調整)するための画面を表示する。ユーザが当該画面において定着温度を変更するための指示を入力すると、当該指示は通信インターフェイス部354を介して、定着条件決定部353に送られる。この場合、定着条件決定部353は、受信した指示に基づき、定着温度の設定を変更する。具体的には、定着条件決定部353は、データテーブルD4の定着温度の値を変更する。詳しくは、本体部10では、坪量の区分毎に定着温度の変更が可能に構成されている。
【0111】
<F.制御構造>
図9は、本体部10で実行される処理の流れを説明するためのフロー図である。
【0112】
図9を参照して、ステップS1において、メディアセンサー16が用紙Pの坪量V
tの検出が行われる。ステップS2において、メディアセンサー16が用紙Pの厚みδ
tを検出する。ステップS3において、メディアセンサー16が用紙Pのベック平滑度を検出する。
【0113】
ステップS4において、制御装置31が、検出されたベック平滑度に基づき、用紙Pの熱伝導率λtを算出する。ステップS5において、制御装置31が、坪量Vtを、用紙Pの熱伝導率λtと用紙Pの厚みδtとを用いて補正する。ステップS6において、定着装置120が、補正後の坪量Vcに対応する定着条件で定着処理を実行する。
【0114】
なお、ステップS1,S2,S3の順序はこれに限定されるものではなく、各ステップが並行して行われてもよいし、たとえばステップS2またはステップS3がステップS1の前に実行されてもよい。
【0115】
<G.変形例>
(1)上述した画像形成装置の構成は一例であって、画像形成装置の構成は、これに限定されるものではない。
【0116】
たとえば、上記においては、メディアセンサー16が、用紙Pの様々な属性を検出する構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。本体部10は、メディアセンサー16の代わりに、用紙Pの坪量を検出するセンサ、用紙Pの厚み(紙厚)を検出するセンサ、用紙Pのベック平滑度を検出するセンサ等の各々を個別に有していてもよい。
【0117】
(2)上述した定着装置の構成は一例であって、定着装置の構成は、これに限定されるものではない。
【0118】
(3)制御装置31が、用紙種別毎に、ベック平滑度および厚みを事前にメモリ(記憶部)を予め記憶している構成としてもよい。この場合、制御装置31は、ベック平滑度および厚みの算出は不要となる。すなわち、制御装置31は、用紙種別を判別することにより、判別された用紙種別に対応付けられたベック平滑度および厚みをメモリから読み出せばよい。
【0119】
(4)制御装置31は、定着における消費電力量を計算し、想定される消費電力量からはずれる場合は、補正後の坪量に対して更に補正を掛けてもよい。たとえば、メディアセンサー16の故障等による誤検知が原因で消費電力量が想定よりも大きくなる場合がある。このような場合には、制御装置31は、補正後の坪量Vcをさらに大きくする補正を行う。これによれば、誤検知による影響によって適切な定着処理がなされないことを防止できる。
【0120】
(5)定着温度を用紙(記録材、メディア)の情報によってのみ決めるのではなく、ニップ幅、ニップ領域の温まり具合、加熱部の温まり具合、機内温湿度、用紙カセット部温度、濃度およびオブジェクト等の画像情報を用いて決定してもよい。
【0121】
(6)定着条件として、
図4のデータテーブルD4に示したように、定着温度と搬送速度と定着圧力とPPMとの各項目を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。定着条件を表したデータテーブルの項目の欄に、紙間、ヒーター制御のDUTYパラメータ、印字開始時の待ち時間、印字後の設定温度、空回転速度および時間、ウォームアップ時の圧接状態および速度等を含める構成としてもよい。
【0122】
(7)上記においては、数式(2)における補正前の坪量Vtを画像形成装置1000が検知する構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。ユーザが、操作パネル32を利用して入力する構成であってもよい。
【0123】
(8)上述した処理は、モノクロの複写機、カラーの複写機、プリンタ、FAXやこれらの複合機などの各種の画像形成装置に適用できる。
【0124】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0125】
10 本体部、11 画像形成ユニット、12 スキャナユニット、13 自動原稿搬送ユニット、14 給紙部、15 搬送路、16 メディアセンサー、16A 坪量検出部、16B 紙厚検出部、16C ベック平滑度検出部、17 反転搬送路、18 排紙ローラー、20 後処理装置、31 制御装置、32 操作パネル、101 中間転写ベルト、102,103 レジストローラー、104C,104K,104M,104Y 画像形成部、105 画像濃度センサ、111 1次転写装置、115 2次転写装置、120 定着装置、121 加熱ローラー、122 定着ローラー、123 定着ベルト、124 加圧ローラー、125 ヒーター、126 サーミスタ、129 加熱回転体、141 給紙ローラー、142 給紙カセット、220 パンチ処理装置、250 平綴じ処理部、260 中綴じ処理部、271,272,273 排出トレイ、290 水平搬送部、314 フラッシュメモリ、320 タッチスクリーン、321 タッチパネル、322 ディスプレイ、351 坪量補正部、352 熱伝導率算出部、353 定着条件決定部、354 通信インターフェイス部、1000 画像形成装置、D4 データテーブル、G トナー像、315 通信IF、P,Q 用紙。