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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】ブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 17/04 20060101AFI20220412BHJP
【FI】
B60T17/04 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018113853
(22)【出願日】2018-06-14
(65)【公開番号】P2019214347
(43)【公開日】2019-12-19
【審査請求日】2021-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平田 晴紀
【審査官】保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-267064(JP,A)
【文献】特開平07-315237(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T15/00-17/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1油路と、前記第1油路の軸方向に沿った第1方向に前記第1油路と隣接し、前記第1油路よりも前記軸方向と直交する断面が大きい第2油路と、前記第1油路と繋がる第3油路と、前記第2油路と繋がる第4油路と、が形成されたハウジングと、
前記第1油路に圧入されることにより前記ハウジングに固定され、前記軸方向に貫通した絞りが設けられた絞り部材と、
を備え、
前記第3油路と前記第4油路とは前記絞りを介して繋がっており、
前記絞り部材の前記第1油路への圧入が解除されて前記絞り部材が前記第1方向に移動した場合に、前記第3油路と前記第4油路とが、前記ハウジングの前記第2油路を形成する内周面と前記絞り部材の外周面との間の隙間を介して繋がるよう構成された、ブレーキ装置。
【請求項2】
前記絞り部材は、当該絞り部材のうちで前記軸方向と直交する断面が最も大きく前記第1油路に圧入された圧入部と、前記圧入部よりも前記第1方向に位置された第1接触部と、を有し、
前記ハウジングには、前記圧入部が前記第1油路に圧入された状態の前記絞り部材と前記第1方向に離間した第2接触部を有したストッパが設けられ、
前記圧入部の前記第1方向の反対方向の端と前記第1接触部との間の前記軸方向に沿った第1距離が、前記第1油路と前記第2油路との境界と前記第2接触部との間の前記軸方向に沿った第2距離よりも短く、
前記圧入部の前記第1油路への圧入が解除されて前記絞り部材が前記第1方向に移動し前記第1接触部と前記第2接触部とが接触した状態で、前記第3油路と前記第4油路とが前記隙間を介して繋がるよう構成された、請求項1に記載のブレーキ装置。
【請求項3】
前記絞り部材は、前記第1接触部を有したベース部と、前記ベース部の前記第1方向の端部から前記第1方向に突出した突出部と、を有し、
前記絞りは、前記突出部に設けられた、請求項2に記載のブレーキ装置。
【請求項4】
前記第4油路は、前記ストッパの前記第1方向の反対方向に位置された前記第2油路に開口するとともに、前記軸方向と交差する方向に延び、
前記ストッパは、環状である、請求項2または3に記載のブレーキ装置。
【請求項5】
前記第4油路は、前記ストッパよりも前記第1方向に位置され、
前記圧入部の前記第1油路への圧入が解除されて前記絞り部材が前記第1方向に移動し前記第1接触部と前記第2接触部とが接触した状態で、前記第3油路と前記第4油路とが、前記ストッパと前記絞り部材との両方または前記ストッパおよび前記絞り部材のうちいずれか一方に面した連通路を介して繋がるよう構成された、請求項2または3に記載のブレーキ装置。
【請求項6】
前記第1油路および前記第2油路が設けられた第1部材と、
前記ストッパを有し前記第1部材と結合された第2部材と、
を備えた、請求項2~5のうちいずれか一つに記載のブレーキ装置。
【請求項7】
前記隙間は、絞りとして機能する、請求項1~6のうちいずれか一つに記載のブレーキ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油路が設けられたハウジングと、絞りが設けられハウジングの油路に圧入された絞り部材と、を備えたブレーキ装置がある。この種のブレーキ装置として、絞り部材の絞りが異物によって詰まった場合に、絞り部材が上流側の液圧の増大によって下流側に移動することにより、互いに密接していたハウジングおよび絞り部材の一部の密接状態が解除され、ハウジングと絞り部材との間に微少油路が形成されるものが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-90842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の従来技術では、ハウジングの油路における絞り部材の移動区間の直径が一定であるため、絞り部材が移動し難い。このため、絞り部材の上流側の圧力が高くなりすぎる虞がある。
【0005】
そこで、本発明の課題の一つは、絞り部材の上流側の圧力が高くなりすぎるのを抑制することができるブレーキ装置を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のブレーキ装置は、第1油路と、前記第1油路の軸方向に沿った第1方向に前記第1油路と隣接し、前記第1油路よりも前記軸方向と直交する断面が大きい第2油路と、前記第1油路と繋がる第3油路と、前記第2油路と繋がる第4油路と、が形成されたハウジングと、前記第1油路に圧入されることにより前記ハウジングに固定され、前記軸方向に貫通した絞りが設けられた絞り部材と、を備え、前記第3油路と前記第4油路とは前記絞りを介して繋がっており、前記絞り部材の前記第1油路への圧入が解除されて前記絞り部材が前記第1方向に移動した場合に、前記第3油路と前記第4油路とが、前記ハウジングの前記第2油路を形成する内周面と前記絞り部材の外周面との間の隙間を介して繋がるよう構成されている。
【0007】
上記の構成では、絞り部材の第1油路への圧入が解除されて絞り部材が第1方向に移動した場合に、第3油路と第4油路とが、ハウジングの第2油路を形成する内周面と絞り部材の外周面との間の隙間を介して繋がる。また、第2油路は、第1油路よりも軸方向と直交する断面が大きい。よって、ハウジングの油路における絞り部材の移動区間の断面が一定の場合に比べて、絞り部材の第1方向への移動がしやすい。よって、上記の構成によれば、絞り部材の上流側の圧力が高くなりすぎるのを抑制することができる。
【0008】
前記ブレーキ装置では、例えば、前記絞り部材は、当該絞り部材のうちで前記軸方向と直交する断面が最も大きく前記第1油路に圧入された圧入部と、前記圧入部よりも前記第1方向に位置された第1接触部と、を有し、前記ハウジングには、前記圧入部が前記第1油路に圧入された状態の前記絞り部材と前記第1方向に離間した第2接触部を有したストッパが設けられ、前記圧入部の前記第1方向の反対方向の端と前記第1接触部との間の前記軸方向に沿った第1距離が、前記第1油路と前記第2油路との境界と前記第2接触部との間の前記軸方向に沿った第2距離よりも短く、前記圧入部の前記第1油路への圧入が解除されて前記絞り部材が前記第1方向に移動し前記第1接触部と前記第2接触部とが接触した状態で、前記第3油路と前記第4油路とが前記隙間を介して繋がるよう構成されている。
【0009】
上記の構成によれば、第1接触部と第2接触部とが接触した状態では、圧入部の全体が第2油路内に位置され隙間が形成される。絞り部材の圧入が解除された場合、第3油路と第4油路とが隙間を介して繋がるため、絞り部材の上流部の圧力が高くなりすぎるのを抑制しつつ、第1接触部と第2接触部とが接触するため、絞り部材の位置決めをすることができる。
【0010】
前記ブレーキ装置では、例えば、前記絞り部材は、前記第1接触部を有したベース部と、前記ベース部の前記第1方向の端部から前記第1方向に突出した突出部と、を有し、前記絞りは、前記突出部に設けられている。
【0011】
上記の構成によれば、ベース部の軸方向の長さおよび第2距離の長さを短くしやすい。よって、絞り部材よりも第1方向の反対方向の第1油路の部分の軸方向の長さを長くしやすい。
【0012】
前記ブレーキ装置では、例えば、前記第4油路は、前記ストッパの前記第1方向の反対方向に位置された前記第2油路に開口するとともに、前記軸方向と交差する方向に延び、前記ストッパは、環状である。
【0013】
上記の構成によれば、第4油路がストッパの第1方向の反対方向に位置された第2油路に開口するとともに、軸方向と交差する方向に延び、ストッパは、環状であるので、隙間を通ったブレーキ液が第4油路に速やかに流れる。
【0014】
前記ブレーキ装置では、例えば、前記第4油路は、前記ストッパよりも前記第1方向に位置され、前記圧入部の前記第1油路への圧入が解除されて前記絞り部材が前記第1方向に移動し前記第1接触部と前記第2接触部とが接触した状態で、前記第3油路と前記第4油路とが、前記ストッパと前記絞り部材との両方または前記ストッパおよび前記絞り部材のうちいずれか一方に面した連通路を介して繋がるよう構成されている。
【0015】
上記の構成によれば、第4油路をストッパの第1方向に設けることができるので、油路のレイアウトの自由度が向上する。
【0016】
前記ブレーキ装置は、例えば、前記第1油路および前記第2油路が設けられた第1部材と、前記ストッパを有し前記第1部材と結合された第2部材と、を備えている。
【0017】
上記の構成によれば、例えば、第1油路および第2油路と、ストッパとが、互いに別部材に設けられているので、ハウジングの加工を容易に行なうことができる。
【0018】
前記ブレーキ装置では、例えば、前記隙間は、絞りとして機能する。
【0019】
上記の構成によれば、前記隙間は、絞りとして機能するので、絞り部材の内部が閉塞されても、絞り部材の第1油路への圧入が解除されて絞り部材が第1方向に移動して、ハウジングの第2油路を形成する内周面と絞り部材の外周面との間に隙間が形成されることにより、絞り機能が継続される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、第1実施形態のブレーキ装置の例示的かつ模式的な構成図である。
図2図2は、第1実施形態のダンパの例示的かつ模式的な断面図である。
図3図3は、図2のダンパの一部の例示的かつ模式的な拡大図である。
図4図4は、第1実施形態の第1油路の断面および第2油路の断面の大小を説明するための説明図である。
図5図5は、図2のV矢視図である。
図6図6は、第1実施形態のダンパの例示的かつ模式的な断面図であって、絞り部材が第2油路内に移動した状態を示す図である。
図7図7は、図6のダンパの一部の例示的かつ模式的な拡大図である。
図8図8は、第2実施形態のダンパの例示的かつ模式的な断面図である。
図9図9は、第2実施形態の環状部材の例示的かつ模式的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用、結果、および効果は、あくまで一例である。本発明は、以下の実施形態に開示される構成以外によっても実現可能である。また、本発明によれば、構成によって得られる種々の効果のうち少なくとも一つを得ることが可能である。
【0022】
また、以下の複数の実施形態には、同様の構成要素が含まれている。それら同様の構成要素には共通の符号が付与されるとともに、重複する説明が省略される。なお、本明細書において、序数は、部品や部位等を区別するために用いられており、順番や優先度を示すものではない。
【0023】
<第1実施形態>
図1は、ブレーキ装置1の例示的かつ模式的な構成図である。ブレーキ装置1は、例えば四輪の車両に設けられる。なお、実施形態の技術は、四輪の車両以外の車両にも適用可能である。
【0024】
図1に示されるように、ブレーキ装置1は、油圧回路10を備えている。ブレーキ装置1は、油圧回路10内のブレーキ液の圧力(液圧)によって、前輪である車輪2FL,2FRと、後輪である車輪2RL,2RRと、の各々に制動力(摩擦制動トルク)を付与することが可能に構成されている。ブレーキ液は、流体とも称されうる。
【0025】
油圧回路10は、圧力発生部32と、ホイールシリンダ38FL,38FR,38RL,38RRと、圧力調整部34FL,34FR,34RL,34RRと、還流機構37と、を備えている。
【0026】
なお、以下では、簡単化のため、車輪2FL,2FR,2RL,2RRを総称して車輪2と記載し、ホイールシリンダ38FL,38FR,38RL,38RRを総称してホイールシリンダ38と記載し、圧力調整部34FL,34FR,34RL,34RRを総称して圧力調整部34と記載する場合がある。
【0027】
圧力発生部32は、車両の運転者によるブレーキペダル31の操作に応じた圧力(液圧)を発生させる機構である。ホイールシリンダ38FL,38FR,38RL,38RRは、それぞれ、摩擦制動部材を加圧することで車輪2FL,2FR,2RL,2RRに制動力を付与する機構である。
【0028】
また、圧力調整部34FL,34FR,34RL,34RRは、それぞれ、ホイールシリンダ38FL,38FR,38RL,38RRに与えられる液圧を調整する機構である。還流機構37は、液圧を発生させる媒体としてのブレーキ液を上流側に、すなわちホイールシリンダ38側から圧力発生部32側に還流させる機構である。
【0029】
圧力発生部32は、マスタシリンダ32aと、リザーバタンク32bと、を有している。マスタシリンダ32aは、運転者によるブレーキペダル31の操作(踏み込み操作)に応じて発生する圧力に基づいて、リザーバタンク32bから補充されるブレーキ液を2つの吐出ポートに吐出する。
【0030】
マスタシリンダ32aの2つの吐出ポートは、それぞれ、開状態と閉状態とが電気的に切り替わる電磁弁33を介して、フロント側の圧力調整部34(34FRおよび34FL)と、リヤ側の圧力調整部34(34RRおよび34RL)と、に接続される。電磁弁33は、制御部(不図示)などから与えられる電気信号に基づいて開閉する。
【0031】
圧力調整部34は、開状態と閉状態とが電気的に切り替わる電磁弁35,36を有している。電磁弁35,36は、電磁弁33と、還流機構37のリザーバ41と、の間に設けられている。電磁弁35は、電磁弁33側に設けられ、電磁弁36は、リザーバ41側に設けられている。
【0032】
電磁弁35と電磁弁36との間には、ホイールシリンダ38が接続されている。これにより、電磁弁35,36は、制御部などから与えられる電気信号に基づいて開閉することで、ホイールシリンダ38の液圧を増圧したり、保持したり、減圧したりすることが可能である。
【0033】
より具体的に、電磁弁35は、通常時において開状態に設定されたいわゆるNO(ノーマルオープン)弁である。したがって、電気信号を受け付けていないオフ状態(通常時)の電磁弁35は、ホイールシリンダ38にブレーキ液を流入させてホイールシリンダ38の液圧を増加させることが可能な増圧弁として機能し、電気信号を受け付けたオン状態(作動時)の電磁弁35は、ホイールシリンダ38へのブレーキ液の流入を阻止してホイールシリンダ38の液圧を保持することが可能な保持弁として機能する。
【0034】
一方、電磁弁36は、通常時において閉状態に設定されたいわゆるNC(ノーマルクローズ)弁である。したがって、電気信号を受け付けていないオフ状態(通常時)の電磁弁36は、ホイールシリンダ38からのブレーキ液の流出を阻止してホイールシリンダ38の液圧を保持することが可能な保持弁として機能し、電気信号を受け付けたオン状態(作動時)の電磁弁36は、ホイールシリンダ38からブレーキ液を流出させてホイールシリンダ38の液圧を減圧することが可能な減圧弁として機能する。
【0035】
還流機構37は、リザーバ41と、ポンプ39と、モータ40と、ダンパ100と、を有している。なお、図1の例では、リザーバ41、ポンプ39、およびダンパ100は、フロント側の圧力調整部34(34FRおよび34FL)と、リヤ側の圧力調整部34(34RRおよび34RL)と、に対してそれぞれ1つずつ設けられている。
【0036】
リザーバ41は、ホイールシリンダ38から流出するブレーキ液を一時的に貯蔵する。
【0037】
ポンプ39は、モータ40に駆動されることで、ブレーキ液をホイールシリンダ38側からマスタシリンダ32a側に汲み上げる。ポンプ39は、例えばギヤポンプ等の容積型ポンプである。ポンプ39は、ギヤポンプ以外の形式のポンプであってもよい。また、ポンプ39は、吐出脈動を生じる。ポンプ39がギヤポンプである場合、1回転につき、外歯の歯数分の回数の脈動が生じる。ポンプ39は、加圧源の一例である。
【0038】
二つのポンプ39は、一つのモータ40によって駆動される。言い換えると、一つのモータ40が、二つのポンプ39の駆動について共用されている。モータ40は、制御部の制御によってポンプ39を駆動する。
【0039】
また、各ポンプ39の吐出側から延びる吐出油路42には、ポンプ39への逆流を防止する逆止弁29が設けられている。吐出油路42は、ポンプ39と、電磁弁33および電磁弁35の間と、を接続している。吐出油路42は、油圧回路10の油路の一例である。
【0040】
ダンパ100は、吐出油路42における逆止弁29の下流側に設けられている。よって、ダンパ100には、ポンプ39から吐出され逆止弁29を通過したブレーキ液が流入する。ダンパ100は、ポンプ39の吐出脈動を低減するように構成されている。ダンパ100の詳細は、後述する。
【0041】
制御部は、例えば、プロセッサやメモリなどといったコンピュータ資源を備えたECU(Electronic Control Unit)等によって構成されている。制御部は、車両の各種状態量を検出するセンサ(不図示)の検出結果等に基づいて、油圧回路10を制御する。車両の各種状態量を検出するセンサは、例えば、ブレーキペダル31のストローク量を検出するセンサ、マスタシリンダ32a内の圧力を検出するセンサ、車輪2の回転速度(回転数)を検出するセンサ、車両の加速度(減速度)を検出するセンサ等である。
【0042】
制御部は、アンチロックブレーキ制御等の各種のブレーキ制御を行う。アンチロック制御は、例えば急な制動時や、路面抵抗が比較的低い路面上での制動時などにおいて発生しうる車輪2のロック(車輪速と実際の車速との乖離、スリップ)を抑制するための制御である。アンチロック制御は、例えば、モータ40を作動させ、ホイールシリンダ38側からマスタシリンダ32a側へのブレーキ液の還流を断続的に行うように電磁弁35,36を制御し、ホイールシリンダ38の圧力の減圧、保持、および増圧を適宜切り替えながら実施することで、車輪速と実際の車速との乖離を小さくする。
【0043】
図2は、ダンパ100の例示的かつ模式的な断面図である。図3は、図2のダンパ100の一部の例示的かつ模式的な拡大図である。図4は、第1油路101fの断面および第2油路101gの断面の大小を説明するための説明図である。図5は、図2のV矢視図である。図6は、ダンパ100の例示的かつ模式的な断面図であって、絞り部材102が第2油路101g内に移動した状態を示す図である。図7は、図6のダンパ100の一部の例示的かつ模式的な拡大図である。
【0044】
図2に示されるように、ダンパ100は、ハウジング101と、絞り部材102と、フィルタ103と、シール部材104と、を有している。
【0045】
ハウジング101は、例えば、アルミニウム合金や、鉄系材料等の金属材料によって構成されている。ハウジング101には、吐出油路42を構成する有底の孔101aが設けられている。孔101aは、外周面に段差が設けられ中心軸Ax1を中心とした円柱状に形成され、ハウジング101の外面101bに開口している。以下では、特に断らない限り、中心軸Ax1の軸方向を単に軸方向と称する場合がある。また、本実施形態では、軸方向に沿う第1方向D1が定義されている。第1方向D1は、孔101aの底部から孔101aの開口端部(外面101b)に向かう方向である。
【0046】
また、ハウジング101には、孔101aの上流側の吐出油路42を構成する上流側孔101cと、孔101aの下流側の吐出油路42を構成する下流側孔101dとが設けられている。上流側孔101cは、孔101aよりも径が小さい有底の円柱状に形成されている。上流側孔101cは、孔101aの底部に開口し孔101aと繋がっている。下流側孔101dは、孔101aの外周面に開口し孔101aと繋がっている。下流側孔101dは、軸方向と交差する方向、具体的には直交する方向に延びている。上流側孔101cは、第3油路の一例であり、下流側孔101dは、第4油路の一例である。
【0047】
また、ハウジング101には、孔101aを形成する内周面101eが設けられている。すなわち、内周面101eは、孔101aを囲んだ状態で孔101aと面している。内周面101eは、中心軸Ax1を中心とした段付きの円筒状に形成されている。
【0048】
孔101aは、第1油路101fおよび第2油路101gを含む。第1油路101fは、中心軸Ax1を中心とした円柱状に形成されている。第1油路101fの直径は、軸方向における当該第1油路101fの全範囲で一定である。ここで、中心軸Ax1の軸方向は、第1油路101fの軸方向である。
【0049】
第2油路101gは、第1油路101fの第1方向D1に、第1油路101fと隣接して設けられている。第2油路101gは、中心軸Ax1を中心とした円柱状に形成されている。詳細には、図3に示されるように、第2油路101gは、第1部分101gaと第2部分101gbとを有している。
【0050】
第1部分101gaは、第1油路101fと軸方向に離間して位置されている。第1部分101gaは、中心軸Ax1を中心とした円柱状に形成されている。第1部分101gaの直径は、軸方向における当該第1部分101gaの全範囲で一定である。図4には、第1油路101fの軸方向と直交する断面と第2油路101gの第1部分101gaの軸方向と直交する断面とが示されている。図3および図4に示されるように、第1部分101gaの直径は、第1油路101fの直径よりも大きい。この第1部分101gaに、下流側孔101dが開口している(図2)。
【0051】
図3に示されるように、第2部分101gbは、第1油路101fと第1部分101gaとの間に設けられ、第1油路101fと第1部分101gaとを接続している。第2部分101gbは、第1方向D1に進むにつれて直径が大きくなるよう中心軸Ax1を中心とした円錐台状に形成されている。すなわち、第2部分101gbは、第1方向D1の反対方向である第2方向D2に進むにつれて直径が小さくなるテーパ状に形成されている。
【0052】
上記構成の第2油路101g(第1部分101ga、第2部分101gb)の軸方向と直交する断面は、第1油路101fの軸方向と直交する断面よりも大きい。
【0053】
また、図2に示されるように、ハウジング101は、孔101a(第1油路101f、第2油路101g)、上流側孔101c、下流側孔101d、および内周面101eが設けられた構成部材105を有している。なお、ハウジング101は、構成部材105以外の他の構成部材を更に有していてもよい。構成部材105は、第1部材の一例である。
【0054】
図2および図3に示されるように、絞り部材102は、第1油路101fに圧入されることによりハウジング101に固定されている。詳細には、絞り部材102は、孔101aの開口端部から孔101aの第2油路101g内に入れられ、第1油路101fに第2方向D2に押し込まれることで、第1油路101fに固定されている。絞り部材102には、当該絞り部材102を貫通した絞り102aが設けられており、当該絞り102aを介して上流側孔101cと下流側孔101dとが繋がっている。絞り部材102は、例えば、アルミニウム合金や、鉄系材料等の金属材料によって構成されている。
【0055】
絞り部材102は、ベース部102bと、絞り102aが設けられた突出部102cと、を有している。
【0056】
図3に示されるように、ベース部102bは、中心軸Ax1を中心とした円筒状に形成されている。ベース部102bは、第2方向D2の一端部102dと、第1方向D1の他端部102eと、外周面102fと、を有している。一端部102dは、第2方向D2を向いた一端面102daを含み、他端部102eは、第1方向D1を向いた他端面102eaを含む。
【0057】
外周面102fは、中心軸Ax1を中心とした円筒状に形成され、一端面102daと他端面102eaとに渡っている。外周面102fは、絞り部材102の外周面102pに含まれる。
【0058】
また、ベース部102bは、圧入部102gを有している。圧入部102gは、中心軸Ax1を中心として円筒状に形成されている。圧入部102gの外径は、当該圧入部102gの軸方向の全域において一定である。圧入部102gは、絞り部材102の他の部分よりも外径が大きい。すなわち、圧入部102gは、絞り部材102のうちで軸方向と直交する断面が最も大きい。圧入部102gは、一端面102daと他端面102eaとの間に、一端面102daと他端面102eaとから離間して設けられている。すなわち、他端面102eaが、圧入部102gよりも第1方向D1に位置されている。圧入部102gは、第1油路101fに圧入されており、第1油路101fを形成する内周面101eと接触している。また、圧入部102gのうち下流側の端部は、第2油路101g内に位置されている。他端面102eaは、第1接触部の一例である。圧入部102gは、最大外形部とも称されうる。
【0059】
突出部102cは、ベース部102bの他端面102eaから第1方向D1に突出している。突出部102cは、中心軸Ax1を中心とした円筒状に形成されている。突出部102cの外径は、ベース部102bの最小の外径よりも小さい。突出部102cの第1方向D1の先端面は、絞り部材102の第1方向D1の他端面102hを構成している。
【0060】
また、絞り部材102には、一端面102daから第1方向D1に凹んだ凹部102iが設けられている。凹部102iは、第1方向D1に進むにつれて段階的に直径が小さくなうように形成されている。凹部102iは、絞り部材102の内周面102jに囲まれている。また、内周面102jは、突出部102cに設けられたテーパ面102kを有している。テーパ面102kは、第1方向D1に進むにつれて直径が小さくなるように形成されている。
【0061】
図3に示されるように、絞り102aは、突出部102cに設けられている。絞り102aは、絞り部材102におけるテーパ面102kと他端面102hとの間の部分を貫通している。すなわち、絞り102aは、テーパ面102kと他端面102hとに開口している。絞り102aは、中心軸Ax1を中心とした円柱状に形成されている。
【0062】
また、図2に示されるように、孔101aにおける第1油路101fのうち絞り部材102の上流側の部分は、ダンパ室101aaを構成している。
【0063】
図3に示されるように、フィルタ103は、絞り部材102の凹部102i内に配置されている。すなわち、フィルタ103は、絞り102aの上流側に配置されている。
【0064】
図3および図5に示されるように、フィルタ103は、濾過部材103aと、濾過部材103aを支持した支持部材103bと、を有している。濾過部材103aは、円板状に形成され、ブレーキ液を濾過する。支持部材103bは、濾過部材103aの外周面を囲繞した円環状に形成されている。支持部材103bは、絞り部材102の内周面102jに設けられた取付面102mと、絞り部材102に設けられた複数の爪102nとに挟まれることで、絞り部材102に固定されている。
【0065】
図2に示されるように、シール部材104は、ハウジング101の孔101a内において絞り部材102の第1方向D1に配置されて、孔101aに嵌められている。すなわち、シール部材104は、ハウジング101の構成部材105と結合されている。シール部材104は、第2油路101gと面しており、内周面101eとによって第2油路101gを形成している。シール部材104は、例えばアルミニウム合金や鉄系材料等の金属であるプラグによって構成されている。シール部材104は、第2部材の一例である。
【0066】
図3に示されるように、シール部材104は、ハウジング101に固定され孔101aを閉塞したベース部104aと、ベース部104aと接続されたストッパ104bと、を有している。
【0067】
ストッパ104bは、ベース部104aの第2方向D2の端部から第2方向D2に突出している。ストッパ104bは、中心軸Ax1を中心とした円筒状に形成されている。ストッパ104bの内径は、絞り部材102の突出部102cの外径よりも大きい。ストッパ104bは、第2方向D2の端面104cを有している。端面104cは、圧入部102gが第1油路101fに圧入された状態の絞り部材102の他端面102eaと第1方向D1に離間している。すなわち、端面104cと他端面102eaとは、軸方向に対向している。
【0068】
端面104cには、複数の溝部104dが設けられている。複数の溝部104dは、中心軸Ax1回りに互いに間隔を空けて設けられている。複数の溝部104dは、それぞれ中心軸Ax1の径方向に延びている。複数の溝部104dは、それぞれ、端面104cから第1方向D1に凹むとともに、ストッパ104bの内周面および外周面に開口している。すなわち、端面104cは、複数の溝部104dによって複数の領域に分割されている。端面104cは、第2接触部の一例である。溝部104dは、油路や連通路とも称されうる。
【0069】
また、シール部材104には、凹部104eが設けられている。凹部104eは、端面104cから第1方向D1に凹んでおり、ストッパ104bの内周面に囲まれている。
【0070】
また、図3に示されるように、絞り部材102における圧入部102gの第2方向D2の端102gaと他端面102eaとの間の軸方向に沿った第1距離L1は、第1油路101fと第2油路101gとの境界106と、ストッパ104bの端面104cとの間の軸方向に沿った第2距離L2よりも短い。
【0071】
上記の構成のダンパ100では、図2から分かるように、ポンプ39から上流側孔101cに送られたブレーキ液は、ダンパ室101aa、絞り部材102、および絞り部材102とシール部材104との間を、この順に通過して、下流側孔101dに流出する。このように、ダンパ100内をブレーキ液が通過することにより、ポンプ39の吐出脈動が低減される。また、絞り部材102では、ブレーキ液は、フィルタ103を通過した後に絞り102aを通過する。
【0072】
ブレーキ液がフィルタ103を通過する過程で、ブレーキ液中の異物がフィルタ103によって除去される。フィルタ103を通過するほど小さな異物は絞り102aを通過する。フィルタ103を通過しない異物によってフィルタ103が閉塞することで内圧が上昇する。詳しくは、ダンパ室101aaおよび絞り部材102の凹部102iのうちフィルタ103の上流側の部分の液圧が上昇する。この上昇した液圧が閾値を超えると、当該液圧によって、絞り部材102が第1方向D1に移動して、圧入部102gの全体が第1油路101fから抜け出る。すなわち、圧入部102gの第1油路101fへの圧入が解除される。その後、図6に示されるように、絞り部材102が、更に第1方向D1に移動して、最終的に絞り部材102の他端面102eaがストッパ104bの端面104cと接触して、絞り部材102が停止する。この状態では、絞り部材102の突出部102cがストッパ104bの内側、すなわち凹部104e内に位置される。このとき、突出部102cは、シール部材104と離間している。また、絞り部材102の圧入が解除された場合、上流側孔101cと下流側孔101dとが後述の隙間107を介して繋がるため、絞り部材102の上流部の圧力が高くなりすぎるのを抑制しつつ、絞り部材102の他端面102eaとストッパ104bの端面104cとが接触するため、絞り部材102の位置決めをすることができる。
【0073】
図7に示されるように、上記のように、絞り部材102の圧入部102gの第1油路101fへの圧入が解除されて絞り部材102が第1方向D1に移動した場合には、第2油路101gを形成する内周面101eと絞り部材102の外周面102pとの間に隙間107が形成される。すなわち、絞り部材102の外周面102pとハウジング101との間に隙間107が形成される。隙間107は、第2油路101gに含まれ絞り部材102の外周面102pに面して形成される。隙間107は、中心軸Ax1を中心とした円筒状である。隙間107は、絞り部材102におけるベース部102bの他端面102eaとストッパ104bの端面104cとが接触した状態で形成されている。この状態では、図6から分かるように、上流側孔101cと下流側孔101dとが隙間107を介して繋がる。したがって、ポンプ39から上流側孔101cに送られたブレーキ液は、ダンパ室101aaから隙間107を通って下流側孔101dに流出する。また、このとき、ブレーキ液の一部は、隙間107、ストッパ104bのある溝部104d、突出部102cとシール部材104との間、および別の溝部104dを通って、下流側孔101dに流出する。隙間107は、環状油路とも称されうる。
【0074】
隙間107は、絞りとして機能する。例えば、隙間107は、絞り102aと同等の絞り機能を有する。すなわち、隙間107の圧力損失Δ2は、絞り102aの圧力損失Δ1と同じである。ここで、絞り102aの圧力損失Δ1および隙間107の圧力損失Δ2は、公知の計算式によって求めることができる。絞り102aの圧力損失Δ1は、絞り102aの直径に応じた値となり、隙間107の圧力損失Δ2は、圧入部102gの外径や第2油路101gの第1部分101gaの直径(第1部分101gaを形成する内周面101eの直径)に応じた値となる。したがって、絞り102aの圧力損失Δ1および隙間107の圧力損失Δ2を同じにするには、例えば、絞り102aの直径や圧入部102gの外径、第2油路101gの第1部分101gaの直径を適宜設定すればよい。
【0075】
以上のように、本実施形態のブレーキ装置1は、例えば、ハウジング101と、絞り部材102と、を備えている。ハウジング101は、第1油路101fと、第1油路101fの軸方向に沿った第1方向D1に第1油路101fと隣接し、第1油路101fよりも軸方向と直交する断面が大きい第2油路101gと、第1油路101fと繋がる上流側孔101c(第3油路)、第2油路101gと繋がる下流側孔101d(第4油路)と、が形成されている。絞り部材102は、第2油路101gに圧入されることによりハウジング101に固定されている。絞り部材102には、軸方向に貫通した絞り102aが設けられている。上流側孔101cと下流側孔101dとは、絞り102aを介して繋がっている。絞り部材102の第1油路101fへの圧入が解除されて絞り部材102が第1方向D1に移動した場合に、上流側孔101cと下流側孔101dとが、ハウジング101の内周面101eと絞り部材102の外周面102pとの間の隙間107を介して繋がる。
【0076】
よって、本実施形態によれば、ハウジングの孔における絞り部材の移動区間の断面が一定の場合に比べて、絞り部材102の第1方向D1への移動がしやすい。よって、本実施形態によれば、絞り部材102の上流側、すなわちダンパ室101aa、の圧力が高くなりすぎるのを抑制することができる。
【0077】
また、本実施形態では、絞り部材102は、第1油路101fに圧入されて第1油路101fと接触した圧入部102gと、圧入部102gよりも第1方向D1に位置された他端面102ea(第1接触部)と、を有している。ハウジング101には、圧入部102gが第1油路101fに圧入された状態の絞り部材102と第1方向D1に離間した端面104c(第2接触部)を有したストッパ104bが設けられている。圧入部102gの第2方向D2の端102gaと他端面102eaとの間の軸方向に沿った第1距離L1が、第1油路101fと第2油路101gとの境界106と端面104cとの間の軸方向に沿った第2距離L2よりも短い。圧入部102gの第1油路101fへの圧入が解除されて絞り部材102が第1方向D1に移動し他端面102eaと端面104cとが接触した状態で、上流側孔101cと下流側孔101dとが隙間107を介して繋がる。よって、本実施形態によれば、他端面102eaと端面104cとが接触した状態では、絞り部材102の圧入部102gの全体が第2油路101g内に位置され隙間107が形成される。
【0078】
また、本実施形態では、絞り部材102は、他端面102eaを有したベース部102bと、ベース部102bの第1方向D1の他端部102eから第1方向D1に突出した突出部102cと、を有している。絞り102aは、突出部102cに設けられている。よって、本実施形態によれば、ベース部102bの軸方向の長さおよび第2距離L2の長さを短くしやすい。よって、第1油路101fにおける絞り部材102よりも第2方向D2の部分(ダンパ室101aa)の軸方向の長さを長くしやすい。
【0079】
また、本実施形態では、下流側孔101dは、ストッパ104bの第2方向D2に位置された第2油路101gに開口するとともに、軸方向と交差する方向に延びている。ストッパ104bは、円環状である。よって、本実施形態によれば、隙間107を通ったブレーキ液が下流側孔101dに速やかに流れる。
【0080】
また、本実施形態では、ブレーキ装置1は、第1油路101fおよび第2油路101gが設けられた構成部材105(第1部材)と、ストッパ104bを有し構成部材105と結合されたシール部材104(第2部材)と、を有している。よって、本実施形態によれば、第1油路101fおよび第2油路101gと、ストッパ104bとが、互いに別部材に設けられているので、ハウジング101の加工を容易に行なうことができる。
【0081】
また、本実施形態では、隙間107は、絞りとして機能する。よって、本実施形態によれば、絞り部材102において102aの上流側に設けられたフィルタ103が閉塞されても、すなわち絞り部材102の内部が閉塞されても、絞り部材102の第1油路101fへの圧入が解除されて絞り部材102が第1方向D1に移動して、ハウジング101の内周面101eと絞り部材102の外周面102pとの間に隙間107が形成されることにより、絞り機能が継続される。
【0082】
<第2実施形態>
図8は、ダンパ100Aの例示的かつ模式的な断面図である。図9は、環状部材110の例示的かつ模式的な平面図である。
【0083】
図8に示されるように、本実施形態のダンパ100Aは、第1実施形態のダンパ100と同様の構成を有している。よって、本実施形態によっても、第1実施形態と同様の構成に基づく同様の効果が得られる。ただし、本実施形態は、第1実施形態のシール部材104に替えて環状部材110が設けられている。また、本実施形態では、第1実施形態のフィルタ103が設けられていない。なお、本実施形態においても、第1実施形態と同様にフィルタ103が設けられていてもよい。
【0084】
環状部材110は、ハウジング101の孔101a内において絞り部材102の第1方向D1に配置されている。環状部材110は、孔101aに嵌められている。すなわち、環状部材110は、ハウジング101の構成部材105と結合されている。環状部材110は、第2部材の一例である。
【0085】
図8および図9に示されるように、環状部材110は、ハウジング101に固定された円環状のベース部110aと、ベース部110aと接続された複数のストッパ110bと、を有している。なお、図9では、四つのストッパ110bが設けられた例が示されているが、ストッパ110bの数は、四つ以外であってもよい。
【0086】
図9に示されるように、複数のストッパ110bは、ベース部110aの内周面から中心軸Ax1に向かって突出している。複数のストッパ110bは、中心軸Ax1回りに互いに間隔を空けて並べられている。中心軸Ax1回りに隣り合う二つのストッパ110bの間には、ストッパ110bに面した連通路111が形成されている。連通路111は、油路とも称されうる。
【0087】
図8に示されるように、ストッパ110bは、第2方向D2の端面110cを有している。端面110cは、圧入部102gが第1油路101fに圧入された状態の絞り部材102と第1方向D1に離間している。端面110cは、第2接触部の一例である。
【0088】
また、図8に示されるように、本実形態では、環状部材110に対して絞り部材102の反対側に位置された孔101aの下流側部分101abが油路となっている。すなわち、下流側部分101abは、ストッパ110bよりも第1方向D1に位置されている。下流側部分101abは、第4油路の一例である。また、本実施形態では、絞り部材102に突出部102cは設けられていない。なお、本実施形態においても突出部102cが設けられていてもよい。
【0089】
以上の構成のダンパ100Aでは、ブレーキ液中の異物によって絞り102aが閉塞した場合、第1実施形態と同様に、内圧が上昇する。詳しくは、ダンパ室101aaおよび絞り部材102の凹部102iの液圧が上昇する。この上昇した液圧が閾値を超えると、当該液圧によって、絞り部材102が第1方向D1に移動して、圧入部102gの全体が第1油路101fから抜け出る(不図示)。すなわち、圧入部102gの第1油路101fへの圧入が解除される。その後、絞り部材102が、更に第1方向D1に移動して、最終的に絞り部材102の他端面102eaがストッパ110bの端面110cと接触して、絞り部材102が停止する(不図示)。このように、絞り部材102の他端面102eaとストッパ110bの端面110cとが接触した状態で、上流側孔101c(図2)と下流側部分101abとが隙間107(図7)および複数のストッパ110bの間の連通路111を介して繋がる。したがって、ポンプ39から上流側孔101cに送られたブレーキ液は、ダンパ室101aaから隙間107および連通路111を通って下流側部分101abに流出する。
【0090】
このように、本実施形態によれば、隙間107を通ったブレーキ液を複数のストッパ110bの間の連通路111を介して第1方向D1に流すことができる。よって、第4油路(下流側部分101ab)をストッパ110bの第1方向D1に設けることができるので、油路のレイアウトの自由度が向上する。
【0091】
なお、第2実施形態では、複数のストッパ110bが設けられた例が示されたが、これに限定されない。例えば、ストッパは、一つであってもよい。この場合、例えば、ストッパは、第1実施形態のストッパ104bと同様に環状に形成され、溝部104dと同様の溝部が形成されたものであってもよい。このような構成においては、圧入部102gの第1油路101fへの圧入が解除されて絞り部材102が第1方向D1に移動し絞り部材102の他端面102eaとストッパの端面とが接触した状態で、上流側孔101cと下流側部分101abとが隙間107およびストッパの溝部を介して繋がる。すなわち、当該構成では、ストッパの溝部が、連通路の一例である。なお、溝部は、絞り部材102の他端面102ea(第1接触部)に形成されていてもよいし、絞り部材102の他端面102eaおよびストッパの端面(第2接触部)の両方に形成されていてもよい。また、連通路は、ストッパや絞り部材102を貫通した孔であってもよい。すなわち、連通路は、ストッパと絞り部材との両方またはストッパおよび絞り部材のうちいずれか一方に面していてよい。上記構成によっても、第2実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。
【0092】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上述した実施形態はあくまで一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上述した新規な実施形態は、様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、または変更を行うことができる。また、上述した実施形態およびその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。例えば、第1油路や第2油路、絞り部材、絞りの断面形状は多角形等であってもよい。
【符号の説明】
【0093】
1…ブレーキ装置、10…油圧回路、42…吐出油路(油路)、101…ハウジング、101ab…下流側部分(第4油路)、101e…内周面、101f…第1油路、101g…第2油路、101c…上流側孔(第3油路)、101d…下流側孔(第4油路)、102…絞り部材、102a…絞り、102b…ベース部、102c…突出部、102e…他端部(端部)、102ea…他端面(第1接触部)、102g…圧入部、102ga…端、102p…外周面、104c…端面(第2接触部)、104b,110b…ストッパ、110c…端面(第2接触部)、104…シール部材(第2部材)、105…構成部材(第1部材)、106…境界、107…隙間、110…環状部材、111…連通路、D1…第1方向、L1…第1距離、L2…第2距離。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9