(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】蓄電モジュールの製造方法及び蓄電モジュール
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20220412BHJP
H01G 11/82 20130101ALI20220412BHJP
H01G 11/84 20130101ALI20220412BHJP
H01M 10/28 20060101ALI20220412BHJP
H01M 50/186 20210101ALI20220412BHJP
H01M 50/184 20210101ALI20220412BHJP
H01M 50/103 20210101ALI20220412BHJP
H01M 50/121 20210101ALI20220412BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01G11/82
H01G11/84
H01M10/28 Z
H01M50/186
H01M50/184 Z
H01M50/103
H01M50/121
(21)【出願番号】P 2018155528
(22)【出願日】2018-08-22
【審査請求日】2021-02-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】中村 知広
(72)【発明者】
【氏名】弘瀬 貴之
【審査官】近藤 政克
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-186187(JP,A)
【文献】国際公開第2018/123520(WO,A1)
【文献】特開2018-049801(JP,A)
【文献】特開2017-016825(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04
H01G 11/82
H01G 11/84
H01M 10/28
H01M 50/186
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイポーラ電極の電極板の縁部と、負極終端電極の電極板の縁部と、金属板の縁部とにそれぞれ樹脂部を結合する第1の工程と、
前記樹脂部付き前記バイポーラ電極を複数積層すると共に、前記樹脂部付き前記負極終端電極と前記樹脂部付き前記金属板とを積層する第2の工程と、
前記樹脂部付き前記負極終端電極における前記樹脂部と、前記樹脂部付き前記金属板の前記金属板とを結合し、前記負極終端電極の電極板と前記金属板との間に前記樹脂部による余剰空間を形成する第3の工程と、を有し、
前記第3の工程において、前記負極終端電極の電極板と前記金属板との間の空間を大気圧よりも減圧しながら前記樹脂部付き前記負極終端電極における前記樹脂部と、前記樹脂部付き前記金属板の前記金属板とを結合する、蓄電モジュールの製造方法。
【請求項2】
前記第3の工程では、前記樹脂部の一部を除いて結合した後、前記負極終端電極の電極板と前記金属板との間の空間を減圧しながら前記一部を結合する、請求項1に記載の蓄電モジュールの製造方法。
【請求項3】
前記第3の工程では、前記樹脂部の前記一部を結合する前に、前記樹脂部付き前記負極終端電極と前記樹脂部付き前記金属板とを乾燥させる、請求項2に記載の蓄電モジュールの製造方法。
【請求項4】
複数の前記バイポーラ電極と前記負極終端電極と前記金属板とを含んで構成された電極積層体の側面を囲むように前記樹脂部同士を結合する封止部を形成し、隣り合う電極間に気密の内部空間を形成する第4の工程を更に備え、
前記余剰空間の内圧を、前記内部空間の内圧よりも低くする、請求項1~3の何れか一項に記載の蓄電モジュールの製造方法。
【請求項5】
複数のバイポーラ電極の積層体と、当該積層体の積層方向の一端側に配置された負極終端電極とを含んで構成された電極積層体と、
前記電極積層体の側面を囲むように設けられ、隣り合う電極間に内部空間を形成すると共に当該内部空間を封止する封止体と、
前記内部空間に収容されたアルカリ溶液を含む電解液と、を備え、
前記電極積層体は、前記負極終端電極の電極板に対して前記積層方向の外側に配置された金属板を有すると共に、前記封止体と前記負極終端電極の電極板と前記金属板とによって囲まれた余剰空間を有し、
前記余剰空間の内圧は、大気圧より低くなっている、蓄電モジュール。
【請求項6】
前記余剰空間の内圧は、前記内部空間の内圧よりも低くなっている、請求項5に記載の蓄電モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電モジュールの製造方法及び蓄電モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の蓄電モジュールとして、電極板の一方面に正極が形成され、他方面に負極が形成されたバイポーラ電極を備えるバイポーラ電池が知られている(特許文献1参照)。バイポーラ電池は、セパレータを介して複数のバイポーラ電極を積層してなる積層体を備えている。積層体の側面には、積層方向に隣り合うバイポーラ電極間を封止する封止体が設けられており、バイポーラ電極間に形成された内部空間に電解液が収容されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述したような蓄電モジュールでは、電極積層体の積層方向の一端に、電極積層体の内側に負極が形成された負極終端電極が配置されている。この負極終端電極の電極板についても封止体によって封止されているが、電解液がアルカリ溶液を含んでいる場合、いわゆるアルカリクリープ現象により、電解液が負極終端電極の電極板の表面を伝わり、封止体と当該電極板との間を通って蓄電モジュールの外部に滲み出てしまうことが生じ得る。電解液が蓄電モジュールの外部に漏れ出て拡散すると、例えば蓄電モジュールに接して配置された導電板の腐食や、蓄電モジュールと拘束部材との短絡等が生じるおそれがあり、信頼性を低下させる要因となり得る。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、アルカリクリープ現象によって電解液が蓄電モジュールの外部に滲み出ることを抑制可能な蓄電モジュールの製造方法及び蓄電モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る蓄電モジュールの製造方法は、バイポーラ電極の電極板の縁部と、負極終端電極の電極板の縁部と、金属板の縁部とにそれぞれ樹脂部を結合する第1の工程と、樹脂部付きバイポーラ電極を複数積層すると共に、樹脂部付き負極終端電極と樹脂部付き金属板とを積層する第2の工程と、樹脂部付き負極終端電極における樹脂部と、樹脂部付き金属板の金属板とを結合し、負極終端電極の電極板と金属板との間に樹脂部による余剰空間を形成する第3の工程と、を有し、第3の工程において、負極終端電極の電極板と金属板との間の空間を大気圧よりも減圧しながら樹脂部付き負極終端電極における樹脂部と、樹脂部付き金属板の金属板とを結合する。
【0007】
この蓄電モジュールの製造方法は、樹脂部付き負極終端電極における樹脂部と、樹脂部付き金属板の金属板とを結合し、負極終端電極の電極板と金属板との間に樹脂部による余剰空間を形成する第3の工程を有し、第3の工程において、負極終端電極の電極板と金属板との間の空間を大気圧よりも減圧しながら樹脂部付き負極終端電極における樹脂部と、樹脂部付き金属板の金属板とを結合する。このように、減圧しながら第3の工程を行うことにより、金属板、負極終端電極、及び樹脂部によって形成される余剰空間内の圧力が大気圧より低くなる。これにより、余剰空間内において、アルカリクリープ現象を加速させる要因となる水分を含む空気が除去されるので、余剰空間内の水分の量が低減される。したがって、電解液が負極終端電極の電極板と樹脂部との間から余剰空間内に滲み出ることが抑制されるので、アルカリクリープ現象によって電解液が蓄電モジュールの外部に滲み出ることを抑制できる。
【0008】
第3の工程では、樹脂部の一部を除いて結合した後、負極終端電極の電極板と金属板との間の空間を減圧しながら一部を結合してもよい。この構成によれば、樹脂部の一部のみが金属板に結合されていない状態で減圧を行うので、金属板と負極終端電極との間の空間の減圧を容易に行うことができる。
【0009】
第3の工程では、樹脂部の一部を結合する前に、樹脂部付き負極終端電極と樹脂部付き金属板とを乾燥させてもよい。この構成によれば、金属板、負極終端電極、及び樹脂部が乾燥された状態で第3の工程が行われるので、余剰空間内に含まれる水分の量を更に低減できる。したがって、アルカリクリープ現象によって電解液が蓄電モジュールの外部に滲み出ることをより効果的に抑制できる。
【0010】
複数のバイポーラ電極と負極終端電極と金属板とを含んで構成された電極積層体の側面を囲むように樹脂部同士を結合する封止部を形成し、隣り合う電極間に気密の内部空間を形成する第4の工程を更に備え、余剰空間の内圧を、内部空間の内圧よりも低くしてもよい。このように、余剰空間の内圧が内部空間の内圧よりも低くすることにより、余剰空間内の水分の量が低減され、電解液が負極終端電極の電極板と樹脂部との間から余剰空間内に滲み出ることをより効果的に抑制できる。
【0011】
本発明の一側面に係る蓄電モジュールは、複数のバイポーラ電極の積層体と、当該積層体の積層方向の一端側に配置された負極終端電極とを含んで構成された電極積層体と、電極積層体の側面を囲むように設けられ、隣り合う電極間に内部空間を形成すると共に当該内部空間を封止する封止体と、内部空間に収容されたアルカリ溶液を含む電解液と、を備え、電極積層体は、負極終端電極の電極板に対して積層方向の外側に配置された金属板を有すると共に、封止体と負極終端電極の電極板と金属板とによって囲まれた余剰空間を有し、余剰空間の内圧は、大気圧より低くなっている。
【0012】
この蓄電モジュールの電極積層体は、負極終端電極の電極板に対して積層方向の外側に配置された金属板を有すると共に、封止体と負極終端電極の電極板と金属板とによって囲まれた余剰空間を有し、余剰空間の内圧は、大気圧より低くなっている。このように、負極終端電極の近傍に位置する余剰空間が減圧されていることにより、余剰空間内において、アルカリクリープ現象を加速させる要因となる水分の量が低減されている。これにより、内部空間内の電解液が負極終端電極の電極板と封止体との間から余剰空間内に滲み出ることが抑制される。したがって、アルカリクリープ現象によって電解液が蓄電モジュールの外部に滲み出ることを抑制できる。
【0013】
余剰空間の内圧は、前記内部空間の内圧よりも低くなっていてもよい。このように、余剰空間の内圧が内部空間の内圧よりも低いことにより、電解液が負極終端電極の電極板と封止体との間から余剰空間内に滲み出ることをより効果的に抑制できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、アルカリクリープ現象によって電解液が蓄電モジュールの外部に滲み出ることを抑制可能な蓄電モジュール及び蓄電モジュールの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】一実施形態に係る蓄電装置を示す概略断面図である。
【
図2】
図1に示された蓄電モジュールの内部構成を示す概略断面図である。
【
図3】
図2の蓄電モジュールの一部を示す拡大断面図である。
【
図4】
図2の蓄電モジュールの製造方法を説明するための図である。
【
図5】
図2の蓄電モジュールの製造方法を説明するための図である。
【
図6】
図2の蓄電モジュールの製造方法を説明するための図である。
【
図7】
図2の蓄電モジュールの製造方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明の一側面に係る蓄電モジュールの好適な実施形態について詳細に説明する。
【0017】
図1は、蓄電装置の一実施形態を示す概略断面図である。
図1に示される蓄電装置1は、例えばフォークリフト、ハイブリッド自動車、電気自動車等の各種車両のバッテリとして用いられる。蓄電装置1は、積層された複数の蓄電モジュール4を含むモジュール積層体2と、モジュール積層体2に対してモジュール積層体2の積層方向に拘束荷重を付加する拘束部材3とを備えている。
【0018】
モジュール積層体2は、複数(ここでは3つ)の蓄電モジュール4と、複数(ここでは4つ)の導電板5とを含む。蓄電モジュール4は、バイポーラ電池であり、積層方向から見て矩形状をなしている。蓄電モジュール4は、例えばニッケル水素二次電池、リチウムイオン二次電池等の二次電池、又は電気二重層キャパシタ等である。以下の説明では、ニッケル水素二次電池を例示する。
【0019】
積層方向に互いに隣り合う蓄電モジュール4同士は、導電板5を介して電気的に接続されている。導電板5は、積層方向に互いに隣り合う蓄電モジュール4間と、積層端に位置する蓄電モジュール4の外側とにそれぞれ配置されている。積層端に位置する蓄電モジュール4の外側に配置された一方の導電板5には、正極端子6が接続されている。積層端に位置する蓄電モジュール4の外側に配置された他方の導電板5には、負極端子7が接続されている。正極端子6及び負極端子7は、例えば導電板5の縁部から積層方向に交差する方向に引き出されている。正極端子6及び負極端子7により、蓄電装置1の充放電が実施される。
【0020】
導電板5の内部には、空気等の冷媒を流通させる複数の流路5aが設けられている。流路5aは、例えば積層方向と、正極端子6及び負極端子7の引出方向と、にそれぞれ交差(直交)する方向に沿って延在している。導電板5は、蓄電モジュール4同士を電気的に接続する接続部材としての機能のほか、これらの流路5aに冷媒を流通させることにより、蓄電モジュール4で発生した熱を放熱する放熱板としての機能を併せ持っている。なお、
図1の例では、積層方向から見た導電板5の面積は、蓄電モジュール4の面積よりも小さくなっているが、放熱性の向上の観点から、導電板5の面積は、蓄電モジュール4の面積と同じであってもよく、蓄電モジュール4の面積よりも大きくなっていてもよい。
【0021】
拘束部材3は、モジュール積層体2を積層方向に挟む一対のエンドプレート8と、エンドプレート8同士を締結する締結ボルト9及びナット10とによって構成されている。エンドプレート8は、積層方向から見た蓄電モジュール4及び導電板5の面積よりも一回り大きい面積を有する矩形の金属板である。エンドプレート8におけるモジュール積層体2側の面には、電気絶縁性を有するフィルムFが設けられている。フィルムFにより、エンドプレート8と導電板5との間が絶縁されている。
【0022】
エンドプレート8の縁部には、モジュール積層体2よりも外側となる位置に挿通孔8aが設けられている。締結ボルト9は、一方のエンドプレート8の挿通孔8aから他方のエンドプレート8の挿通孔8aに向かって通され、他方のエンドプレート8の挿通孔8aから突出した締結ボルト9の先端部分には、ナット10が螺合されている。これにより、蓄電モジュール4及び導電板5がエンドプレート8によって挟持されてモジュール積層体2としてユニットされると共に、モジュール積層体2に対して積層方向に拘束荷重が付加される。
【0023】
次に、蓄電モジュール4の構成について詳細に説明する。
図2は、
図1に示された蓄電モジュールの内部構成を示す概略断面図である。
図3は、
図2の蓄電モジュールの一部を示す拡大断面図である。
図2及び
図3に示されるにように、蓄電モジュール4は、電極積層体11と、電極積層体11を封止する樹脂製の封止体12とを備えている。電極積層体11は、セパレータ13を介して蓄電モジュール4の積層方向Dに沿って積層された複数の電極によって構成されている。これらの電極は、複数のバイポーラ電極14の積層体と、負極終端電極18と、正極終端電極19とを含む。
【0024】
バイポーラ電極14は、一方面15a及び一方面15aの反対側の他方面15bを含む電極板15と、一方面15aに設けられた正極16と、他方面15bに設けられた負極17とを有している。正極16は、正極活物質が電極板15に塗工されることにより形成される正極活物質層である。負極17は、負極活物質が電極板15に塗工されることにより形成される負極活物質層である。電極積層体11において、一のバイポーラ電極14の正極16は、セパレータ13を挟んで積層方向Dの一方に隣り合う別のバイポーラ電極14の負極17と対向している。電極積層体11において、一のバイポーラ電極14の負極17は、セパレータ13を挟んで積層方向Dの他方に隣り合う別のバイポーラ電極14の正極16と対向している。なお、セパレータ13は、後述の第1封止部21に接するほど積層方向Dに交差する方向に延びていることが好ましい。これにより、電極同士の短絡を抑制することができる。
【0025】
負極終端電極18は、電極板15と、電極板15の他方面15bに設けられた負極17とを有している。負極終端電極18は、他方面15bが電極積層体11における積層方向Dの中央側を向くように、積層方向Dの一端に配置されている。負極終端電極18の電極板15の一方面15aは、電極積層体11の積層方向Dにおける一方の外側面を構成し、蓄電モジュール4に隣接する一方の導電板5(
図1参照)と電気的に接続されている。負極終端電極18の電極板15の他方面15bに設けられた負極17は、セパレータ13を介して積層方向Dの一端のバイポーラ電極14の正極16と対向している。
【0026】
正極終端電極19は、電極板15と、電極板15の一方面15aに設けられた正極16とを有している。正極終端電極19は、一方面15aが電極積層体11における積層方向Dの中央側を向くように、積層方向Dの他端に配置されている。正極終端電極19の一方面15aに設けられた正極16は、セパレータ13を介して、積層方向Dの他端のバイポーラ電極14の負極17と対向している。正極終端電極19の電極板15の他方面15bは、電極積層体11の積層方向における他方の外側面を構成し、蓄電モジュール4に隣接する他方の導電板5(
図1参照)と電気的に接続されている。
【0027】
電極板15は、例えば、ニッケル又はニッケルメッキ鋼板といった金属からなる。一例として、電極板15は、ニッケルからなる矩形の金属箔である。電極板15の縁部15cは、矩形枠状をなし、正極活物質及び負極活物質が塗工されない未塗工領域となっている。正極16を構成する正極活物質としては、例えば水酸化ニッケルが挙げられる。負極17を構成する負極活物質としては、例えば水素吸蔵合金が挙げられる。本実施形態では、電極板15の他方面15bにおける負極17の形成領域は、電極板15の一方面15aにおける正極16の形成領域に対して一回り大きくなっている。
【0028】
セパレータ13は、例えばシート上に形成されている。セパレータ13としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルム、ポリプロピレン、ポリプロピレン、メチルセルロース等からなる織布又は不織布等が例示される。セパレータ13は、フッ化ビニリデン樹脂化合物で補強されたものであってもよい。なお、セパレータ13は、シート状に限られず、袋状のものを用いてもよい。
【0029】
封止体12は、例えば絶縁性の樹脂によって、全体として矩形の筒状に形成されている。封止体12は、電極板15の縁部15cを包囲するように電極積層体11の側面11aに設けられている。封止体12は、側面11aにおいて縁部15cを保持している。封止体12は、電極板15の縁部15cに結合された複数の第1封止部21(樹脂部)と、側面11aに沿って第1封止部21を外側から包囲し、第1封止部21のそれぞれに結合された第2封止部22(封止部)とを有している。第1封止部21及び第2封止部22は、例えば、耐アルカリ性を有する絶縁性の樹脂である。第1封止部21及び第2封止部22の構成材料としては、例えばポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)などが挙げられる。
【0030】
第1封止部21は、電極板15の一方面15aにおいて縁部15cの全周にわたって連続的に設けられ、積層方向Dから見て矩形環状をなしている。第1封止部21は、例えば超音波又は熱によって電極板15の一方面15aに溶着され、気密に接合されている。第1封止部21は、例えば積層方向Dに所定の厚さを有するフィルムである。第1封止部21の内側は、積層方向Dに互いに隣り合う電極板15の縁部15c同士の間に位置している。第1封止部21の外側は、電極板15の縁よりも外側に張り出しており、その先端部分は、第2封止部22に保持されている。積層方向Dに沿って互いに隣り合う第1封止部21同士は、互いに離間していてもよく、接していてもよい。
【0031】
電極板15の一方面15aにおける縁部15cと第1封止部21とが重なる領域は、電極板15と第1封止部21との結合領域Kとなっている。結合領域Kにおいて、電極板15の表面は、粗面化されている。粗面化された領域は、結合領域Kのみでもよいが、本実施形態では電極板15の一方面15aの全体が粗面化されている。粗面化は、例えば電解メッキによる複数の突起の形成により実現し得る。一方面15aに複数の突起が形成されうることにより、一方面15aにおける第1封止部21との接合界面では、溶融状態の樹脂が粗面化により形成された複数の突起間に入り込み、アンカー効果が発揮される。これにより、電極板15と第1封止部21との間の結合強度を向上させることができる。粗面化の際に形成される突起は、例えば基端側から先端側に向かって先太りとなる形状を有している。これにより、隣り合う突起の間の断面形状がアンダーカット形状となり、アンカー効果を高めることが可能となる。
【0032】
第2封止部22は、電極積層体11及び第1封止部21の外側に設けられ、蓄電モジュール4の外壁(筐体)を構成している。第2封止部22は、例えば樹脂の射出成形によって形成され、積層方向Dに沿って電極積層体11の全長にわたって延在している。第2封止部22は、積層方向Dを軸方向として延在する矩形の筒状(環状)を呈している。第2封止部22は、例えば射出成形時の熱によって第1封止部21の外表面に溶着されている。
【0033】
第1封止部21及び第2封止部22は、隣り合う電極の間に内部空間Vを形成すると共に内部空間Vを封止する。より具体的には、第2封止部22は、第1封止部21と共に、積層方向Dに沿って互いに隣り合うバイポーラ電極14の間に、積層方向Dに沿って互いに隣り合う負極終端電極18とバイポーラ電極14との間、及び積層方向Dに沿って互いに隣り合う正極終端電極19とバイポーラ電極14との間をそれぞれ封止している。これにより、隣り合うバイポーラ電極14の間、負極終端電極18とバイポーラ電極14との間、及び正極終端電極19とバイポーラ電極14との間には、それぞれ気密に仕切られた内部空間Vが形成されている。この内部空間Vには、例えば水酸化カリウム水溶液等のアルカリ溶液を含む電解液(不図示)が収容されている。電解液は、セパレータ13、正極16、及び負極17内に含浸されている。
【0034】
ここで、電極積層体11は、金属板20を更に有している。金属板20は、負極終端電極18の電極板15に対して積層方向Dの外側に配置されている。金属板20は、負極終端電極18の電極板15の一方面15aに対向する他方面20bと、他方面20bの反対側の一方面20aとを有している。金属板20の一方面20a及び他方面20bには、正極活物質及び負極活物質が塗工されておらず、一方面20a及び他方面20bの全面が未塗工領域となっている。すなわち、本実施形態において、金属板20は正極16及び負極17のいずれも設けられていない未塗工電極板である。また、金属板20は、負極終端電極18側に窪むと共に負極終端電極18の電極板15に接触する矩形状の接触部Cを有する。より具体的に、接触部Cにおいて、金属板20の他方面20bは、負極終端電極18の電極板15の一方面15aに接触し、金属板20の一方面20aは導電板5(
図1参照)に接触している。これにより、負極終端電極18は、金属板20を介して導電板5と電気的に接続されている。金属板20は、電極板15と同様に、例えば、ニッケル又はニッケルメッキ鋼板といった金属からなる。
【0035】
金属板20の一方面20a及び他方面20bにおける縁部20cと第1封止部21とが重なる領域は、電極板15の表面と同様に粗面化されている。粗面化された領域は、縁部20cと第1封止部21が結合した領域のみでもよいが、本実施形態では金属板20の一方面20a及び他方面20bの全体が粗面化されている。金属板20の一方面20a及び他方面20bにおける縁部20cには、それぞれ第1封止部21が結合されている。これにより、第1封止部21と負極終端電極18の電極板15と金属板20とによって、電解液が収容されていない余剰空間VAが形成されている。積層方向Dから見て、余剰空間VAは接触部Cの周囲を囲むように形成されている。また、積層方向Dに沿った断面から見て、余剰空間VAは、第1封止部21側から接触部C側へ向かうにつれて高さ(積層方向Dに沿った寸法)が小さくなる略三角形状をなしている。余剰空間VAの内部は減圧されており、その内圧は大気圧より低くなっている。また、余剰空間VAの内圧は、電解液が収容された内部空間Vの内圧よりも低くなっている。一例として、余剰空間VAの内圧は、0Pa以上0.1MPa未満とすることができ、内部空間Vの内圧は0.1MPa以上1MPa以下とすることができる。本実施形態では、内部ガスが発生しない状態において内部空間Vの内圧は大気圧程度である。
【0036】
次に、
図4~
図7を参照して、蓄電モジュール4の製造方法について説明する。まず、複数のバイポーラ電極14、負極終端電極18、正極終端電極19、及び金属板20を準備する。次に、
図4に示されるように、バイポーラ電極14の電極板15の縁部15cと、負極終端電極18の電極板15の縁部15cと、金属板20の縁部20cとにそれぞれ第1封止部21を結合する(第1の工程)。このとき、第1封止部21は、各電極の電極板15の一方面15a、及び金属板20の一方面20aに結合される。なお、第1の工程において、正極終端電極19の電極板15の縁部15cにも第1封止部21を結合するが、
図4においては正極終端電極19を省略している。各電極の電極板15及び金属板20に第1封止部21を結合する方法としては、例えば超音波又は熱による溶着が挙げられる。
【0037】
次に、
図5に示されるように、第1封止部21が結合されたバイポーラ電極14(樹脂部付きバイポーラ電極)を複数積層すると共に、第1封止部21が結合された負極終端電極18(樹脂部付き負極終端電極)と第1封止部21が結合された金属板20(樹脂部付き金属板)とを積層する(第2の工程)。この工程により、複数のバイポーラ電極14の積層体が形成される。
【0038】
次に、
図6に示されるように、負極終端電極18に結合された第1封止部21と、第1封止部21が結合された金属板20とを結合し、負極終端電極18の電極板15と金属板20との間に、第1封止部21による余剰空間VAを形成する(第3の工程)。より具体的には、第1封止部21が結合されていない金属板20の他方面20bに、負極終端電極18の電極板15の一方面15aに結合された第1封止部21を結合する。
【0039】
第3の工程では、負極終端電極18の電極板15と金属板20との間の空間を大気圧よりも減圧しながら負極終端電極18に結合された第1封止部21と、金属板20とを結合する。より具体的には、
図7に示されるように、第1封止部21の一部を除いて結合した後、負極終端電極18の電極板15と金属板20との間の空間を減圧しながら残りの一部を結合する。本実施形態では、まず、矩形枠状の第1封止部21の4つの縁部21a,21b,21c,21dのうち、3つの縁部21a,21b,21cにおいて金属板20と第1封止部21とを結合する。その後、まだ結合されていない残りの縁部21dと金属板20との間から負極終端電極18の電極板15と金属板20との間の空間を減圧しながら、この縁部21dにおいて第1封止部21と金属板20とを結合する。縁部21dにおける第1封止部21と金属板20との結合には、例えば真空シーラ(不図示)等の装置が用いられ得る。この場合、結合されていない縁部21d側を真空シーラの吸引部に挿入した状態で、負極終端電極18の電極板15と金属板20との間の空間を真空引きする。そして、当該空間の真空度が所定の値になった後に、縁部21dにおいて第1封止部21と金属板20と加熱すると共に加圧して第1封止部21と金属板20とを溶着する。これにより、金属板20の接触部Cと負極終端電極18の電極板15とが接触し、金属板20と負極終端電極18とが電気的に接続された状態となっている。
【0040】
また、蓄電モジュール4の製造方法の第3の工程では、第1封止部21の縁部21dを金属板20と結合する前に、第1封止部21が結合された負極終端電極18と、第1封止部21が結合された金属板20とを乾燥させる乾燥工程を行う。これにより、負極終端電極18、金属板20、及び第1封止部21に付着した水分が除去され、負極終端電極18の電極板15と金属板20との間の空間に含まれる水分を更に低減することができる。負極終端電極18、金属板20、及び第1封止部21の乾燥には、例えば乾燥炉等が用いられ得る。一例として、乾燥温度は100℃以上150℃以下とすることができ、乾燥時間は1時間以上24時間以下とすることができる。なお、本実施形態では、第1封止部21の縁部21dを金属板20と結合する直前(すなわち、第3の工程の途中)に乾燥工程を行っているが、第3の工程よりも前に乾燥工程を行ってもよい。また、より効果的に水分を除去する観点から、乾燥工程は真空(0.1MPa以下)環境下で行うことが望ましい。
【0041】
次に、積層された複数のバイポーラ電極14と、結合された負極終端電極18及び金属板20とを射出成形の金型(不図示)内に配置し、射出成形を行うことにより、第1封止部21を包囲するように第2封止部22を形成する。これにより、電極積層体11の側面11aに封止体12が形成され、隣り合う電極と封止体12とによって内部空間Vが形成された状態となる。第2封止部22を形成する工程では、前述の第3の工程のように真空シーラ等を用いて真空引きを行っていないので、内部空間Vの内圧は、例えば大気圧程度となる。したがって、余剰空間VAの内圧は内部空間Vの内圧より低くなっている。その後、バイポーラ電極14,14間の内部空間Vに電解液を注入する。これにより、蓄電モジュール4が得られる。
【0042】
以上説明したように、蓄電モジュール4の製造方法は、第1封止部21付き負極終端電極18における第1封止部21と、第1封止部21付き金属板20の金属板20とを結合し、負極終端電極18の電極板15と金属板20との間に第1封止部21による余剰空間VAを形成する第3の工程を有し、第3の工程において、負極終端電極18の電極板15と金属板20との間の空間を大気圧よりも減圧しながら第1封止部21付き負極終端電極18における第1封止部21と、第1封止部21付き金属板20の金属板20とを結合する。
【0043】
一般的に、蓄電モジュールでは、いわゆるアルカリクリープ現象により、内部空間Vに存在する電解液が負極終端電極18の電極板15の表面を伝わり、結合領域Kにおける電極板15と第1封止部21との間の隙間を通って蓄電モジュールの外部に滲み出ることがある。これに対し、本実施形態に係る蓄電モジュール4の製造方法のように、減圧しながら第3の工程を行うことにより、金属板20、負極終端電極18、及び第1封止部21によって形成される余剰空間VA内の圧力が大気圧より低くなる。これにより、余剰空間VA内において、アルカリクリープ現象を加速させる要因となる水分を含む空気が除去されるので、余剰空間内の水分の量が低減される。したがって、電解液が負極終端電極18の電極板15と第1封止部21との間から余剰空間VA内に滲み出ることが抑制されるので、アルカリクリープ現象によって電解液が蓄電モジュール4の外部に滲み出ることを抑制できる。
【0044】
また、減圧しながら第3の工程を行うことにより、負極終端電極18の電極板15と金属板20との間の空間の圧力が大気圧より低くなっているので、接触部Cにおいて金属板20と負極終端電極18の電極板15とがより確実に接触した状態となる。したがって、金属板20と負極終端電極18との接触抵抗の低下を図ることができる。
【0045】
また、第3の工程では、第1封止部21の一部(縁部21d)を除いて結合した後、負極終端電極18の電極板15と金属板20との間の空間を減圧しながら一部(縁部21d)を結合する。これにより、第1封止部の一部のみが金属板20に接合されていない状態で減圧を行うので、金属板20と負極終端電極18との間の空間の減圧を容易に行うことができる。
【0046】
また、蓄電モジュール4の製造方法の第3の工程では、第1封止部21の一部(縁部21d)を結合する前に、第1封止部21付き負極終端電極18と第1封止部21付き金属板20とを乾燥させる。これにより、金属板20、負極終端電極18、及び第1封止部21が乾燥された状態で第3の工程が行われるので、余剰空間VA内に含まれる水分の量を更に低減できる。したがって、アルカリクリープ現象によって電解液が蓄電モジュール4の外部に滲み出ることをより効果的に抑制できる。
【0047】
また、電極積層体11の側面11aを囲むように第1封止部21同士を結合する第2封止部22を形成し、隣り合う電極間に気密の内部空間Vを形成する第4の工程を更に備え、余剰空間VAの内圧を内部空間Vの内圧よりも低くする。このように、余剰空間VAの内圧が内部空間Vの内圧よりも低くすることにより、余剰空間VA内の水分の量が低減され、電解液が負極終端電極18の電極板15と第1封止部21との間から余剰空間VA内に滲み出ることをより効果的に抑制できる。
【0048】
この蓄電モジュール4の電極積層体は、負極終端電極18の電極板15に対して積層方向Dの外側に配置された金属板20を有すると共に、封止体12と負極終端電極18の電極板15と金属板20とによって囲まれた余剰空間VAを有し、余剰空間VAの内圧は、大気圧より低くなっている。このように、負極終端電極18の近傍に位置する余剰空間VAが減圧されていることにより、余剰空間VA内において、アルカリクリープ現象を加速させる要因となる水分の量が低減されている。これにより、内部空間V内の電解液が負極終端電極18の金属板20と封止体12との間から余剰空間VA内に滲み出ることが抑制される。したがって、アルカリクリープ現象によって電解液が蓄電モジュール4の外部に滲み出ることを抑制できる。
【0049】
また、余剰空間VAが減圧されていることにより、接触部Cにおいて金属板20と負極終端電極18の電極板15とがより確実に接触した状態となる。したがって、金属板20と負極終端電極18との接触抵抗の低下を図ることができる。
【0050】
また、余剰空間VAの内圧は、内部空間Vの内圧よりも低くなっている。このように、余剰空間VAの内圧が内部空間Vの内圧よりも低いことにより、電解液が負極終端電極18の電極板15と封止体12との間から余剰空間VA内に滲み出ることをより効果的に抑制できる。
【0051】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は上記の実施形態に限定されず、種々の変更を行うことができる。例えば、上記の実施形態では、第3の工程において、第1封止部21の一部(縁部21d)を除いて結合した後、負極終端電極18の電極板15と金属板20との間の空間を減圧しながら一部(縁部21d)を結合する例について説明したが、例えば真空容器内で負極終端電極18に結合された第1封止部21と、金属板20とを一度に結合してもよい。
【0052】
また、上記の実施形態では、第3の工程の途中で第1封止部21付き負極終端電極18と第1封止部21付き金属板20とを乾燥させる例について説明したが、第1封止部21付き負極終端電極18と第1封止部21付き金属板20とを乾燥させなくてもよい。
【0053】
また、上記の実施形態では、余剰空間VAの内圧を内部空間Vの内圧よりも低くする例について説明したが、余剰空間VAの内圧を内部空間Vの内圧よりも低くしなくてもよい。
【0054】
また、正極終端電極19の電極板15の他方面15b側にも矩形枠状の第1封止部21が結合されていてもよい。この第1封止部21も、第2封止部22によって他の第1封止部21と結合され得る。また、正極終端電極19の電極板15の他方面15b側に結合された第1封止部21の縁部と、正極終端電極19の電極板15の一方面15a側の第1封止部21の縁部とは、熱板溶着等によって結合されていてもよい。
【符号の説明】
【0055】
4…蓄電モジュール、11…電極積層体、11a…側面、12…封止体、13…セパレータ、14…バイポーラ電極、15…電極板、15a…一方面、15b…他方面、15c…縁部、18…負極終端電極、20…金属板、21…第1封止部(樹脂部)、22…第2封止部(封止部)、D…積層方向、V…内部空間、VA…余剰空間。