(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】ワイヤハーネス配索部材
(51)【国際特許分類】
B60R 16/02 20060101AFI20220412BHJP
H02G 3/04 20060101ALI20220412BHJP
B60K 1/04 20190101ALI20220412BHJP
H01B 7/00 20060101ALI20220412BHJP
【FI】
B60R16/02 623T
H02G3/04
B60R16/02 620A
B60K1/04
H01B7/00 301
(21)【出願番号】P 2018242445
(22)【出願日】2018-12-26
【審査請求日】2021-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 晃司
(72)【発明者】
【氏名】平井 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】岡本 怜也
(72)【発明者】
【氏名】柳田 泰次
【審査官】佐々木 智洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-124080(JP,A)
【文献】特開2016-155454(JP,A)
【文献】特開2017-196942(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
H02G 3/04
B60K 1/04
H01B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に複数の電線を配索するワイヤハーネス配索部材であって、
車室のフロアパネルの下方に配されるベースプレートと、
前記ベースプレートに固定された前記複数の電線を有するワイヤハーネスと
、を備え、
前記複数の電線のうちの少なくとも1本の前記電線は、
一端が前記ベースプレートの表面に配され、他端が前記ベースプレートの前端部から前方に延出して前記車両のフロントスペースに配される一続きの一続き電線、
一端が前記ベースプレートの表面に配され、他端が前記ベースプレートの後端部から後方に延出して前記車両のリアスペースに配される一続きの一続き電線、もしくは
一端が前記ベースプレートの前端部から前方に延出して前記車両のフロントスペースに配され、他端が前記ベースプレートの後端部から後方に延出して前記車両のリアスペースに配される一続きの一続き電線とされているワイヤハーネス配索部材。
【請求項2】
前記一続き電線は、一端が前記ベースプレートの表面に配され、他端が前記ベースプレートの端部から延出して前記車両のフロントスペースもしくは前記車両のリアスペースに配される一続きの第1電線とされている請求項1に記載のワイヤハーネス配索部材。
【請求項3】
前記一続き電線は、両端が前記ベースプレートの端部から延出して前記フロントスペースもしくは前記リアスペースに配された一続きの第2電線とされている請求項1に記載のワイヤハーネス配索部材。
【請求項4】
前記複数の電線は、複数の前記一続き電線を含み、
前記複数の一続き電線は、前記ベースプレートの表面に沿うように平らに並んで固定されている請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のワイヤハーネス配索部材。
【請求項5】
前記ベースプレートは、前記車両の前記フロアパネルの下方に組み付けられる蓄電装置の蓄電カバー部材である請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のワイヤハーネス配索部材。
【請求項6】
前記蓄電装置は、複数の蓄電モジュールと、複数の蓄電モジュールを一括して覆う前記蓄電カバー部材と
、を備えて構成されており、
前記複数の電線は、複数の前記一続き電線を含み、
前記複数の一続き電線は、前記蓄電カバー部材の前記蓄電モジュール側の表面
である下面に固定されている請求項5に記載のワイヤハーネス配索部材。
【請求項7】
前記蓄電カバー部材は、導電性を有する金属によって形成されている請求項6に記載のワイヤハーネス配索部材。
【請求項8】
前記蓄電装置は、前記車両の車両フレームの下部に組み付けられるようになっており、
前記蓄電装置は、前記車両フレームに組み付けられると、前記車両フレームの側部よりも内側に配置される請求項5から請求項7のいずれか一項に記載のワイヤハーネス配索部材。
【請求項9】
前記複数の電線は、高圧電源線と、前記高圧電源線以外の他の電線と、前記他の電線を冗長化するための補助電線と、を有し、
前記他の電線は前記高圧電源線の両側の一方において前記高圧電源線と平行となるように前記ベースプレートに固定され、前記補助電線は前記高圧電源線の両側の他方において前記高圧電源線と平行となるように前記ベースプレートに固定されている請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のワイヤハーネス配索部材。
【請求項10】
前記複数の電線の配索経路に沿って
前後方向に真っ直ぐ延びる
帯状に形成された保持部材
を備え、
前記ベースプレートの前端部に前側導出部が形成され、前記ベースプレートの後端部に後側導出部が形成され、
前記前側導出部から前方に引き出された前記他の電線、および前記後側導出部から後方に引き出された前記他の電線は、前記保持部材に固定されてい
る請求項
9に記載のワイヤハーネス配索部材。
【請求項11】
前記保持部材は、形状を保持可能な剛性を有している請求項10に記載のワイヤハーネス配索部材。
【請求項12】
前記保持部材は、前記ベースプレート側の端部が屈曲可能とされており、
前記一続き電線は、前記車両に配索される前の状態では、前記保持部材の前記端部を屈曲させることで折り畳み可能とされている請求項10または請求項11に記載のワイヤハーネス配索部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、車両にワイヤハーネスを配索するワイヤハーネス配索部材に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両におけるワイヤハーネスの配索構造として、特開平9-109799号公報(特許文献1)に記載のものが知られている。このワイヤハーネスの配索構造は、複数のワイヤハーネスを複数箇所においてコネクタなどによって接続することにより、エンジンルームなどが配された車両のフロントスペースからリアスペースまで車両全体にワイヤハーネスを配索している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種のワイヤハーネスの配索構造は、車室内に基幹ハーネスが配索されており、車室を構成するフロントパネルやリアパネルに設けられた貫通孔の位置にコネクタなどを設けてフロントハーネスやリアハーネスを基幹ハーネスにコネクタ接続している。
【0005】
ところが、コネクタ接続箇所は、車両の振動などの影響によって接点が摩耗する虞があり、接点が摩耗すると各機器間の接続信頼性が低下してしまう。また、上記の構成によると、各パネルに対して貫通孔を設ける作業、貫通孔へのコネクタの取り付け作業、コネクタの接続作業などが必要となると共に、貫通孔におけるシール部材の取り付けも必要となるため、作業工数や部品点数が大幅に増加してしまう。
【0006】
本明細書では、各機器間の接続信頼性を確保すると共に、電線の配索作業を簡易化する技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書によって開示される技術は、車両に複数の電線を配索するワイヤハーネス配索部材であって、車室のフロアパネルの下方に配されるベースプレートと、前記ベースプレートに固定された前記複数の電線を有するワイヤハーネスとを備え、前記複数の電線のうちの少なくとも1本の前記電線は、一端が前記ベースプレートの表面、または前記ベースプレートの端部から延出して前記車両のフロントスペースもしくは前記車両のリアスペースに配され、他端が前記ベースプレートの端部から延出して前記車両のフロントスペースもしくは前記車両のリアスペースに配される一続きの一続き電線とされている構成とした。
【0008】
前記一続き電線は、一端が前記ベースプレートの表面に配され、他端が前記ベースプレートの端部から延出して前記車両のフロントスペースもしくは前記車両のリアスペースに配される一続きの第1電線とされている構成とした。
【0009】
前記一続き電線は、両端が前記ベースプレートの端部から延出して前記フロントスペースもしくは前記リアスペースに配された一続きの第2電線とされている構成とした。
【0010】
このようなワイヤハーネス配索部材によると、一続き電線もしくは第1電線がベースプレート位置からフロントスペースもしくはリアスペース位置まで一続きに構成されている。また、一続き電線もしくは第2電線がフロントスペースの位置からリアスペース位置まで一続きに構成、もしくは、一続き電線もしくは第2電線がベースプレートを介してフロントスペースからフロントスペースまでなど一続きに構成されている。すなわち、このような構成によると、例えば、複数箇所においてコネクタによって接続されたワイヤハーネスのように接点が摩耗する虞がなく、各機器間の接続信頼性が低下することを防ぐことができる。
【0011】
また、上記の構成によると、フロアパネルの下方に配されるベースプレートに一続き電線、第1電線、もしくは第2電線が固定されているから、フロアパネルに対して貫通孔を設ける作業、貫通孔へのコネクタを取り付ける作業、コネクタの接続作業など行う必要がなく、作業工数や部品点数が増加することを防ぐことができる。これにより、車両における複数の電線の配索作業を簡易化することができる。
【0012】
本明細書によって開示されるワイヤハーネス配索部材は、以下の構成としてもよい。
【0013】
前記複数の電線は、複数の前記一続き電線を含み、前記複数の一続き電線は、前記ベースプレートの表面に沿うように平らに並んで固定されている構成にしてもよい。
このような構成によると、ベースプレートの表面に対して複数の一続き電線が平らに固定されているから、例えば、複数の一続き電線を束ねた電線束をベースプレートに固定する場合に比べて、ワイヤハーネスが配索される領域を小さくし、ワイヤハーネス配索部材の配置スペースをさらに小さくすることができる。
【0014】
前記ベースプレートは、前記車両の前記フロアパネルの下方に組み付けられる蓄電装置の蓄電カバー部材である構成としてもよい。
このような構成によると、車両のフロアパネルの下方に組み付けられる蓄電装置の蓄電カバー部材に複数の一続き電線を固定して車両にワイヤハーネスを配索することができる。これにより、蓄電装置とは別にベースプレートを設ける場合に比べて、部品点数やワイヤハーネスの配置スペースを小型化することができる。
【0015】
前記蓄電装置は、複数の蓄電モジュールと、複数の蓄電モジュールを一括して覆う前記蓄電カバー部材とを備えて構成されており、前記複数の電線は、複数の前記一続き電線を含み、前記複数の一続き電線は、前記蓄電カバー部材の前記蓄電モジュール側の表面に固定されている構成にしてもよい。
【0016】
このような構成によると、複数の一続き電線を有するワイヤハーネスが蓄電装置内に配索されることになるから、例えば、複数の一続き電線からなるワイヤハーネスを蓄電カバー部材の外面に配索する場合に比べて、他の部材が複数の一続き電線に接触することを防ぐことができる。つまり、ワイヤハーネスが他の部材に接触することに起因して破損することを防ぐことができる。
【0017】
前記蓄電カバー部材は、導電性を有する金属によって形成されている構成にしてもよい。
このような構成によると、複数の一続き電線を有するワイヤハーネスが金属製の蓄電カバー部材によって覆われることになるから、ワイヤハーネスを編組線などのシールド部材によって別途覆わなくてもワイヤハーネスを電磁的にシールドすることができる。これにより、部品点数やシールド部材の取付作業の工数が増加することを抑制すると共に、ワイヤハーネス配索部材の配置スペースを小型化することができる。
【0018】
前記蓄電装置は、前記車両の車両フレームの下部に組み付けられるようになっており、前記蓄電装置は、前記車両フレームに組み付けられると、前記車両フレームの側部よりも内側に配置される構成としてもよい。
【0019】
例えば、車両を操作するために重要な電力や信号を送電する一続き電線の場合、一続き電線が断線すると、車両を操作することができなくなるなど不具合が生じてしまう。ところが、このような構成によると、複数の一続き電線が、車両フレームの側部よりも内側に配された蓄電装置の蓄電カバー部材に固定されているから、側方から他の車両などが衝突したとしても、一続き電線が断線することを防ぐことができる。
【0020】
前記ワイヤハーネスは、前記一続き電線の冗長化となるように前記一続き電線と異なる経路に配された少なくとも1本の補助電線を有する構成としてもよい。
【0021】
一続き電線が車両を操作するために重要な電力や信号を送電する場合、一続き電線が断線すると、車両を操作することができなくなるなど不具合が生じてしまう。
【0022】
ところが、このような構成によると、一続き電線の冗長化となる補助電線が第1電線と異なる経路に配されているから、仮に一続き電線が断線した場合でも、車両を操作するために重要な電力や信号を補助電線とによって確保することができる。
【0023】
前記ベースプレートから延出した前記一続き電線は、配索経路に沿って延びる保持部材に固定されている構成としてもよい。
このような構成によると、ワイヤハーネス配索部材を車両に配置する前に、保持部材によって一続き電線を配索経路に沿うように事前に配置しておくことができるから、車両に対する電線の配索作業性を向上させることができる。また、一続き電線が保持部材に固定されることによって補強されるから、一続き電線が引っ張られるなどして断線することを抑制することができる。
【0024】
前記保持部材は、形状を保持可能な剛性を有している構成としてもよい。
このような構成にすると、一続き電線の立体的な配索経路に合わせた形状に一続き電線の形状を構成することができる。つまり、車両に対して保持部材を配置することで電線の配索をほぼ完了させることができるから、電線の配索作業性をさらに向上させることができる。
【0025】
前記保持部材は、前記ベースプレート側の端部が屈曲可能とされており、前記一続き電線は、前記車両に配索される前の状態では、前記保持部材の前記端部を屈曲させることで折り畳み可能とされている構成してもよい。
【0026】
車両のフロントスペースからリアスペースまで、ワイヤハーネスを配索するワイヤハーネス配索部材は、非常に大型となってしまう。しかしながら、ワイヤハーネス配索部材を搬送するためには、少しでも嵩張らず、小型であることが望ましい。
【0027】
ところが、上記の構成によると、蓄電カバー部材から延出された一続き電線を、保持部材における蓄電カバー部材側の屈曲部を屈曲させて保持部材と共に一続き電線を折り畳むことができる。
【0028】
すなわち、ワイヤハーネス配索部材が車両に取り付けられる前の状態では、ワイヤハーネス配索部材を蓄電カバー部材とほぼ同じ大きさまで小型化することができるから、例えば、蓄電カバー部材から延出された部分を折り畳むことができない場合に比べて、ワイヤハーネス配索部材の搬送作業を容易にすることができる。
【発明の効果】
【0029】
本明細書によって開示される技術によれば、各機器間の接続信頼性を確保すると共に、電線の配索作業を簡易化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】実施形態に係るワイヤハーネス配索部材が組み付けられた車両の縦断面図
【
図2】車両フレームに蓄電装置を組み付けた状態を示す斜視図
【
図3】車両フレームに蓄電装置を組み付ける前の状態を示す分解斜視図
【
図6】保持部材を折り畳んだ状態を示すワイヤハーネス配索部材の斜視図
【
図7】保持部材を折り畳んだ状態を示すワイヤハーネス配索部材の平面図
【
図8】保持部材を折り畳んだ状態を示すワイヤハーネス配索部材の側面図
【発明を実施するための形態】
【0031】
<実施形態>
本明細書に開示された技術における一実施形態について
図1から
図8を参照して説明する。
本実施形態は、ワイヤハーネス配索部材10が組み付けられた車両Cを例示している。
【0032】
車両Cは、金属製の車両フレーム20、車両フレーム20上に搭載されるボディパネル30、車両フレーム20の下部に組み付けられる蓄電装置40などを含んで構成されている。なお、以下の説明において、前後方向とは、
図1および
図5における左右方向を基準とし、F側を前側、B側を後側とする。また、左右方向とは、
図2および
図5における左斜め前側(L側)を左側、右斜め後側(R側)を右側として説明する。
【0033】
車両フレーム20は、
図2に示すように、前後方向に延びる一対のサイドフレーム21と、一対のサイドフレーム21の前端部を連結するフロントフレーム22と、一対のサイドフレーム21の間を左右方向に連結する複数のクロスフレーム23とを備えてはしご型に形成されており、いわゆるラダーフレームとされている。
【0034】
本実施形態は、一対のサイドフレーム21の間に5本のクロスフレーム23を有している。5本のクロスフレーム23のうち最前に配されるクロスフレーム23および最後に配されるクロスフレーム23の左右方向両側には車輪Hが配されており、中央に配された3本のクロスフレーム23は、一対のサイドフレーム21と共にボディパネル30を下方から支持する支持フレーム25とされている。
【0035】
ボディパネル30は、
図3に示すように、車室RMを構成するものであって、車両フレーム20の上方に配置されるフロアパネル32と、フロアパネル32の前縁部に設けられたフロントパネル34とを備えて構成されている。
フロアパネル32は、平板状に形成されており、フロアパネル32の前縁部にフロントパネル34が連なるように立設されている。
【0036】
蓄電装置40は、
図1から
図4に示すように、車両フレーム20の下部に下方から組み付けられるようになっている。蓄電装置40は、車両フレーム20に組み付けられると、蓄電装置40は、3本の支持フレーム25のうち前側に配された支持フレーム25よりもやや前側の位置から後側に配された支持フレーム25の間の領域に配置される。
【0037】
蓄電装置40は、
図2および
図3に示すように、前後方向に長い平面視略矩形の扁平な箱形状に形成されており、蓄電装置40は、複数の蓄電モジュール50と、マルチボックスMと、蓄電モジュール50およびマルチボックスMを一括して覆う蓄電カバー部材(「ベースプレート」の一例)70とを備えて構成されている。
【0038】
複数の蓄電モジュール50は、複数の蓄電モジュール50のうち相対的に電圧が低い低電圧蓄電モジュール51と、相対的に電圧が高い高電圧蓄電モジュール60とを含んでいる。本実施形態の蓄電装置40は、
図3に示すように、2種類の低電圧蓄電モジュール51と、1種類の高電圧蓄電モジュール60とを含んでいる。
【0039】
高電圧蓄電モジュール60は、
図3に示すように、上方から見た状態において蓄電装置40の2/3程度の大きさとされており、平面視略矩形の扁平な箱形状に形成されている。高電圧蓄電モジュール60は、
図4に示すように、複数の蓄電素子61からなる蓄電素子群62と、蓄電素子群62に接続されたジャンクションボックス63と、蓄電素子群62およびジャンクションボックス63を収容するロアケース64と、蓄電素子群62およびジャンクションボックス63を上方から一括して覆うようにしてロアケース64に固定されるアッパケース65とを備えて構成されている。
【0040】
ロアケース64は、金属製であって、上方に向けて略矩形状に開口した形態とされており、
図4に示すように、ロアケース64内に複数の蓄電素子61を並べて蓄電素子群62を構成している。蓄電素子群62の上部には、隣り合う蓄電素子61同士を接続する図示しない接続モジュールが組み付けられている。
【0041】
ジャンクションボックス63は、略矩形の箱形状をなしており、ジャンクションボックス63内には、電流遮断用のリレーなどの図示しない保護部材が収容されている。ジャンクションボックス63からは図示しない電線が引き出されており、電線の端末には、後述するアッパケース65に設けられた貫通孔68に挿通される図示しない高圧コネクタが設けられている。
【0042】
アッパケース65は、金属製であって、
図3および
図4に示すように、ロアケース64よりもやや大きめの下方に開口する平面視略矩形の箱形状に形成されている。アッパケース65の中央には、上下方向に貫通する貫通孔68が設けられており、貫通孔68には、ジャンクションボックス63から引き出された電線の高圧コネクタが挿通された状態で固定されている。アッパケース65は、図示しない固定機構によってロアケース64に固定されるようになっている。なお、アッパケース65とロアケース64との間は、図示しないシール部材によってシールされている。
【0043】
各低電圧蓄電モジュール51は、
図3に示すように、複数の蓄電素子によって構成される図示しない蓄電素子群を小型ケース内に収容して形成されている。
各低電圧蓄電モジュール51は、高電圧蓄電モジュール60よりも高さ寸法が僅かに大きく形成されているものの、高電圧蓄電モジュール60よりも前後左右方向に小さい形態とされている。また、低電圧蓄電モジュール51は、高電圧蓄電モジュール60の左右方向に延びる前側の短辺部分に隣接するように前後方向に並んで配置されている。2種類の低電圧蓄電モジュール51のうち1種類は12V系の低電圧蓄電モジュール51とされており、もう1種類は48V系の低電圧蓄電モジュール51とされている。
【0044】
マルチボックスMは、
図3に示すように、低電圧蓄電モジュール51に対して左右方向に隣接すると共に、高電圧蓄電モジュール60の短辺部分に隣接するように前後方向に2つ並んで配置されている。マルチボックスMは、例えば、高圧ジャンクションボックス、複数のDC-DCコンバータ、充電器などを収容して構成されている。マルチボックスMは、低電圧蓄電モジュール51と同様に、いずれも高電圧蓄電モジュール60よりも高さ寸法が僅かに大きく設定されており、
図4に示すように、高電圧蓄電モジュール60よりも上方に突出した形態とされている。
【0045】
蓄電カバー部材70は、導電性を有する金属によって形成されている。蓄電カバー部材70は、
図3および
図4に示すように、複数の蓄電モジュール50およびマルチボックスMに上方から組み付けられるようになっており、蓄電装置40が車両フレーム20に下方から組み付けられると、蓄電カバー部材70は一対のサイドフレーム21の間に配置されるようになっている。言い換えると、蓄電カバー部材70は、車両フレーム20の両側部に配された一対のサイドフレーム21よりも内側に配置されるようになっている。
【0046】
また、蓄電カバー部材70は、
図3に示すように、平面視略矩形状をなす天板72を有しており、天板72は、複数の蓄電モジュール50およびマルチボックスMを上方から一括して覆う大きさとされている。天板72の側縁部には、
図3および
図4に示すように、下方に向かって延出された4枚の側板73が設けられており、隣り合う側板73は互いに周方向に連結されることで、蓄電カバー部材70は下方に開口する扁平な箱形状に形成されている。
【0047】
また、各側板73の上下方向の高さ寸法は、
図1および
図4に示すように、低電圧蓄電モジュール51やマルチボックスMの高さ寸法の約半分とされており、蓄電カバー部材70が蓄電モジュール50およびマルチボックスMに組み付けられると、低電圧蓄電モジュール51、高電圧蓄電モジュール60およびマルチボックスMの上半分を覆うことで、低電圧蓄電モジュール51、高電圧蓄電モジュール60およびマルチボックスMの上部を電磁シールドする機能を有している。
【0048】
さて、蓄電カバー部材70の天板72には、
図3から
図8に示すように、ワイヤハーネス80が固定されており、蓄電カバー部材70とワイヤハーネス80とによってワイヤハーネス配索部材10が構成される。なお、
図3では、ワイヤハーネス80を分かりやすくするために、天板72を図示省略して示している。
【0049】
ワイヤハーネス80は、天板72に固定された複数の電線Wと、天板72から延出された複数の電線Wが固定された保持部材90とを備えて構成されている。
複数の電線Wは、
図4および
図5に示すように、いずれの電線Wも途中で切断されずに一続きに形成された一続き電線とされており、天板72の表面である下面72Dにおいて天板72に沿うように平らに並んで固定されている。
【0050】
ここで、天板72に対して複数の電線Wを平らに並べて固定する固定方法としては、電線Wの被覆を天板72の下面72Dに融着させてもよく、複数の電線Wを平らに並べて融着もしくは縫い付けた図示しない融着シートを天板72に融着させてもよい。また、複数の電線Wは、天板72の下面72Dに塗布した接着剤によって固定されてもよく、天板72の下面72Dに両面テープなどによって固定されるなど、公知の固定方法によって固定されてもよい。
【0051】
また、複数の電線Wは、線種によって剛性は異なるものの、可撓性を有しており、複数の高電圧電源線WHと、複数の低電圧電源線WLと、複数の信号線WSと、複数の低電圧補助線(「補助電線」の一例)WLBと、複数の補助信号線(「補助電線」の一例)WSBとを含んでいる。
【0052】
高電圧電源線WHは、複数の電線Wのうち相対的に高い電圧の電流を送電する電線Wであって、
図5に示すように、天板72の左右方向略中央部に固定されている。高電圧電源線WHは、例えば、高電圧蓄電モジュール60とマルチボックスM、車両CのリアスペースRSに搭載されたインバータなどの図示しない高電圧機器と高電圧蓄電モジュール60とを接続する電線Wとされている。複数の高電圧電源線WHのうち一端が蓄電カバー部材70の天板72の下面72Dにおいて大型コネクタCLを介して高電圧蓄電モジュール60の高圧コネクタに接続され、他端が蓄電カバー部材70の端部から延出されてリアスペースRSまで延出した高電圧電源線WHは、長尺高圧線(「第1電線」の一例)WH1とされている。
【0053】
低電圧電源線WLは、複数の電線Wのうち相対的に低い電圧の電流を送電する電線Wであって、
図5に示すように、高電圧電源線WHの側方において高電圧電源線WHと平行となるように天板72に固定されている。本実施形態では、複数の低電圧電源線WLは、高電圧電源線WHの右側方に配置されており、例えば、低電圧蓄電モジュール51とマルチボックスM、車両CのフロントスペースFSもしくはリアスペースRSに搭載されたオーディオやセンサなどの図示しない低電圧機器と低電圧蓄電モジュール51とを接続する電線Wとされている。
【0054】
低電圧補助線WLBは、低電圧電源線WLと同様に、複数の電線Wのうち相対的に低い電圧の電流を送電する電線Wであって、低電圧電源線WLが接続された低電圧蓄電モジュール51、マルチボックスM、低電圧機器などと接続されているものの、低電圧電源線WLとは異なる経路に配置されている。本実施形態では、複数の低電圧補助線WLBは、高電圧電源線WHの左側方において高電圧電源線WHと平行となるように天板72に固定されている。
つまり、低電圧補助線WLBは、低電圧電源線WLを冗長化するための電線Wであって、仮に低電圧電源線WLが断線した場合でも低電圧補助線WLBが低電圧電源線WLのバックアップとして機能するようになっている。
【0055】
複数の低電圧電源線WLおよび複数の低電圧補助線WLBのうち一端が蓄電カバー部材70における天板72の下面72Dにおいて小型コネクタCSを介して低電圧蓄電モジュール51に接続され、他端が蓄電カバー部材70の天板72から延出されてフロントスペースFSもしくはリアスペースRSまで延出した低電圧電源線WLおよび低電圧補助線WLBは、長尺低圧線(「第1電線」の一例)WL1とされている。
【0056】
信号線WSは、車両Cに搭載されるセンサやECUなどの図示しない電気機器間の信号を送信する電線Wであって、
図5に示すように、低電圧電源線WLや低電圧補助線WLBと同様に、高電圧電源線WHの側方において高電圧電源線WHと平行となるように天板72に固定されている。
【0057】
本実実施形態では、複数の信号線WSは、高電圧電源線WHの右側方に配置されており、例えば、フロントスペースFSもしくはリアスペースRSに搭載された図示しない電気機器と蓄電モジュール50に設けられた図示しない管理ユニット、フロントスペースFSもしくはリアスペースRSに搭載された電気機器とマルチボックスM、フロントスペースFSもしくはリアスペースRSに搭載された電気機器同士を接続する電線Wとされている。
【0058】
補助信号線WSBは、信号線WSと同様に、車両Cに搭載されるセンサやECUなどの電気機器間の信号を送信する電線Wであって、信号線WSが接続された低電圧蓄電モジュール51の管理ユニット、マルチボックスM、低電圧機器などと接続さているものの、信号線WSとは異なる経路に配置されている。
【0059】
本実施形態では、複数の補助信号線WSBは、高電圧電源線WHの左側方において高電圧電源線WHと平行となるように天板72に固定されている。つまり、補助信号線WSBは、信号線WSを冗長化するための電線Wであって、仮に信号線WSが断線した場合でも補助信号線WSBが信号線WSのバックアップとして機能するようになっている。
【0060】
複数の信号線WSおよび複数の補助信号線WSBのうち両端が蓄電カバー部材70の天板72から延出されてフロントスペースFSもしくはリアスペースRSまで延出した信号線WSおよび補助信号線WSBは、
図3および
図5に示すように、長尺信号線(「第2電線」の一例)WS1とされている。
【0061】
したがって、長尺高圧線WH1、長尺低圧線WL1、長尺信号線WS1のいずれの電線Wも蓄電カバー部材70の天板72の前後両側の端部から延出されているものの、途中で切断されずに一続きの電線Wとされている。
【0062】
複数の長尺高圧線WH1は、
図5に示すように、天板72の後端部における左右方向略中央部よりもやや左寄りの位置から後方に延出されており、複数の長尺高圧線WH1において天板72から延出された部分は、コルゲートチューブなどの樹脂プロテクタPに一括して覆われている。複数の長尺高圧線WH1の端末には高圧線コネクタCN1が組み付けられており、この高圧線コネクタCN1はインバータなどの図示しない高電圧機器に接続されるようになっている。
【0063】
複数の長尺低圧線WL1および複数の長尺信号線WS1は、
図5に示すように、天板72の前端部においては、左右方向略中央部の位置と、左右方向略中央部よりもやや右寄りの位置と、左側端部よりもやや右寄り位置の合計3箇所の前側導出部74から前方に引き出されており、天板72の後端部においては、左右方向両端部の2箇所の後側導出部75から後方に引き出されている。
【0064】
前側導出部74および後側導出部75から前後方向に引き出された複数の長尺低圧線WL1および複数の長尺信号線WS1の端末には、
図2、
図3および
図5に示すように、長尺低圧線WL1と長尺信号線WS1が導入される機器側コネクタCN2が取り付けられており、前側導出部74および後側導出部75から前後方向に引き出された複数の長尺低圧線WL1および複数の長尺信号線WS1は、保持部材90に固定されている。
【0065】
保持部材90は、合成樹脂製であって、
図2、
図3および
図5に示すように、前後方向に真っ直ぐ延びる帯状に形成されており、帯状の形態を保持可能な剛性を有している。そして、保持部材90の上下両面に長尺低圧線WL1および長尺信号線WS1が固定されている。つまり、長尺低圧線WL1および長尺信号線WS1は、可撓性を有するものの、保持部材90に固定されることで車両Cにおける立体的な配索経路に沿った配置にすることができると共に、形状を立体的な形態に保持することができるようになっている。
【0066】
なお、保持部材90に対する長尺低圧線WL1および長尺信号線WS1の固定方法は、長尺低圧線WL1および長尺信号線WS1の被覆を保持部材90の表面に融着させてもよく、保持部材90の表面に塗布した接着剤によって固定してもよい。また、長尺低圧線WL1および長尺信号線WS1を両面テープなど公知の固定方法によって保持部材90に固定してもよい。
【0067】
また、保持部材90は、前側導出部74および後側導出部75側の端部が上下方向に屈曲可能な可撓性を有する屈曲部91とされており、屈曲部91を上方に向けて屈曲させることで、
図6から
図8に示すように、長尺低圧線WL1および長尺信号線WS1が固定された保持部材90を折り畳んで蓄電カバー部材70の上面側に配置することができるようになっている。
【0068】
本実施形態は、以上のような構成であって、続いて、蓄電カバー部材70を有する蓄電装置40の作用および効果について説明する。
【0069】
従来、車両に配索されるワイヤハーネスは、複数のワイヤハーネスを複数箇所においてコネクタなどによって接続することにより、エンジンルームなどが配された車両のフロントスペースからリアスペースまで車両全体にワイヤハーネスを配索する。しかしながら、このようにしてワイヤハーネスを配索する場合、車室内に配索されるワイヤハーネスとフロントスペースやリアスペースに配索されるワイヤハーネスとを接続するために、車室とフロントスペースやリアスペースとの間に貫通孔を設けてコネクタなどによって接続しなければならない。また、ワイヤハーネス同士をコネクタによって接続する場合、部品点数や接続作業などの作業工数が増加すると共に、車両の振動などの影響によって接続箇所において接点の摩耗が生じる場合があり、各機器間の接続信頼性が低下してしまう。
【0070】
そこで、本発明者らは、上記の課題を解決するため、鋭意検討を行った結果、本実施形態の構成を見出した。すなわち、本実施形態は、
図1から
図5に示すように、車両Cに複数の電線Wを配索するワイヤハーネス配索部材10であって、車室RMのフロアパネル32の下方に配される蓄電装置40の蓄電カバー部材(ベースプレート)70と、蓄電カバー部材70に固定された複数の電線Wを有するワイヤハーネス80とを備え、複数の電線Wのうちの少なくとも1本の電線Wは、一端が蓄電カバー部材70の表面に配され、他端が蓄電カバー部材70の端部から延出して車両CのフロントスペースFSもしくはリアスペースRSに配される一続きの長尺高圧線WH1および長尺低圧線WL1(電線)とされ、複数の電線Wのうちの少なくとも1本の電線Wは、両端が蓄電カバー部材70の端部から延出してフロントスペースFSもしくはリアスペースRSに配された一続きの長尺信号線WS1とされているワイヤハーネス配索部材10である。
【0071】
このようなワイヤハーネス配索部材10によると、長尺高圧線WH1および長尺低圧線WL1が蓄電カバー部材70の位置からフロントスペースFSもしくはリアスペースRSの位置まで一続きに構成されており、長尺信号線WS1がフロントスペースFSの位置からリアスペースRSの位置まで、また、蓄電カバー部材70を介してフロントスペースFSからフロントスペースFSまでなど一続きに構成されている。すなわち、例えば、複数箇所においてコネクタによって接続されたワイヤハーネスのように接点が摩耗する虞がなく、各機器間の接続信頼性が低下することを防ぐことができる。
【0072】
また、本実施形態によると、フロアパネル32の下方に配される蓄電カバー部材70に電線Wが固定されているから、フロアパネル32に対して貫通孔を設けたり、貫通孔へのコネクタを取り付けたりする作業や、コネクタの接続作業など行う必要がなく、作業工数や部品点数が増加することを防ぐことができる。これにより、これにより、車両における複数の電線Wの配索作業を簡易化することができる。
【0073】
また、蓄電カバー部材(ベースプレート)70は、車両Cのフロアパネル32の下方に組み付けられる蓄電装置40の蓄電カバー部材70である。
つまり、車両Cのフロアパネル32の下方に組み付けられる蓄電装置40の蓄電カバー部材70に複数の電線Wを固定して車両Cにワイヤハーネス80を配索することができる。これにより、蓄電装置40とは別にベースプレートを設ける場合に比べて、部品点数やワイヤハーネス80の配置スペースを小型化することができる。
【0074】
また、本実施形態の複数の電線Wは、
図4および
図5に示すように、蓄電カバー部材70の表面に沿うようにして平らに並んで固定されている。本実施形態では、蓄電カバー部材70の表面に対して複数の電線Wが平らに固定されているから、例えば、複数の電線を束ねた電線束を蓄電カバー部材に固定する場合に比べて、ワイヤハーネス80が配される領域を上下方向に小さくすることができる。ひいてはワイヤハーネス配索部材10の配置スペースをさらに小さくすることができる。
【0075】
また、蓄電装置40は、複数の蓄電モジュール50と、複数の蓄電モジュール50を一括して覆う蓄電カバー部材70とを備えて構成されており、複数の電線Wは、
図4に示すように、蓄電カバー部材70の蓄電モジュール50側の表面である下面72Dに固定されている。
【0076】
すなわち、本実施形態によると、複数の電線Wからなるワイヤハーネス80が蓄電装置40内に配索されることになるから、例えば、複数の電線からなるワイヤハーネスを蓄電カバー部材の外面に配索する場合に比べて、他の部材が複数の電線Wに接触することを防ぐことができる。これにより、ワイヤハーネス80が他の部材に接触することに起因して破損することを防ぐことができる。
【0077】
また、蓄電カバー部材70は、導電性を有する金属によって形成されている。すなわち、複数の電線Wが導電性を有する金属製の蓄電カバー部材70によって覆われることになるから、複数の電線Wを編組線などのシールド部材によって別途覆わなくても複数の電線Wを電磁的にシールドすることができる。これにより、部品点数やシールド部材の取付作業の工数が増加することを抑制すると共に、ワイヤハーネス配索部材10の配置スペースを小型化することができる。
【0078】
また、本実施形態によると、蓄電装置40は、
図2に示すように、車両Cの車両フレーム20の下部に組み付けられるようになっており、蓄電装置40は、車両フレーム20に組み付けられると、車両フレーム20の側部に設けられたサイドフレーム21よりも内側に配置される。
【0079】
例えば、車両を操作するために重要な電力や信号を送電する電線の場合、電線が断線した場合、車両を操作することができなくなるなど不具合が生じてしまう。
ところが、本実施形態によると、複数の電線Wを有するワイヤハーネス80は、車両フレーム20の側部に設けられたサイドフレーム21よりも内側に配された蓄電装置40の蓄電カバー部材70に固定されているから、側方から他の車両などが衝突したとしても、電線Wが断線することを防ぐことができる。
【0080】
また、本実施形態のワイヤハーネス80は、
図5に示すように、低電圧電源線WLの冗長化となるように低電圧電源線WLと異なる経路に配された少なくとも1本の低電圧補助線WLBと、信号線WSの冗長化となるように信号線WSと異なる経路に配された少なくとも1本の補助信号線WSBとを有する。
【0081】
低電圧電源線WLや信号線WSが車両Cを操作するために重要な電力や信号を送る電線Wの場合、低電圧電源線WLや信号線WSが断線すると、車両Cを操作することができなくなるなど不具合が生じてしまう。
【0082】
ところが、本実施形態によると、低電圧電源線WLの冗長化となる低電圧補助線WLBが低電圧電源線WLと異なる経路に配され、信号線WSの冗長化となる補助信号線WSBが信号線WSと異なる経路に配されているから、仮に低電圧電源線WLや信号線WSが断線した場合でも、車両Cを操作するために重要な電力や信号を低電圧補助線WLBと補助信号線WSBとによって確保することができる。
【0083】
また、本実施形態では、蓄電カバー部材(ベースプレート)70から延出した長尺低圧線WL1および長尺信号線WS1(電線)は、
図5から
図8に示すように、配索経路に沿って延びる保持部材90に固定されている。
【0084】
本実施形態によると、ワイヤハーネス配索部材10を車両Cに配置する前に、保持部材90によって長尺低圧線WL1および長尺信号線WS1を配索経路に沿うように事前に配置しておくことができるから、車両Cに長尺低圧線WL1および長尺信号線WS1を配索する配索作業性を向上させることができる。また、長尺低圧線WL1および長尺信号線WS1が保持部材90によって補強されるから、長尺低圧線WL1および長尺信号線WS1が引っ張られるなどして断線することを抑制することができる。
【0085】
また、本実施形態の保持部材90は、形状を保持可能な剛性を有している。すなわち、車両Cの立体的な配索経路に合わせて長尺低圧線WL1および長尺信号線WS1の形状を構成することができる。つまり、車両Cに対して保持部材90を配置することで長尺低圧線WL1および長尺信号線WS1の配索をほぼ完了させることができる。これにより、長尺低圧線WL1および長尺信号線WS1の配索作業性をさらに向上させることができる。
【0086】
また、本実施形態の保持部材90は、
図6から
図8に示すように、蓄電カバー部材(ベースプレート)70側の屈曲部(端部)91が屈曲可能とされており、長尺低圧線WL1および長尺信号線WS1(電線)は、車両Cに配索される前の状態では、保持部材90の屈曲部91を屈曲させることで折り畳み可能とされている。
【0087】
一般に、車両CのフロントスペースFSからリアスペースRSまで、ワイヤハーネス80を配索するワイヤハーネス配索部材10は、前後方向に非常に大型となってしまう。しかしながら、ワイヤハーネス配索部材10を搬送するためには、少しでも嵩張らず、小型であることが望ましい。
【0088】
ここで、本実施形態のワイヤハーネス配索部材10は、蓄電カバー部材70から延出された長尺低圧線WL1および長尺信号線WS1を、保持部材90における蓄電カバー部材70側の屈曲部91を屈曲させて保持部材90と共に長尺低圧線WL1および長尺信号線WS1を折りたたむことができる。
【0089】
すなわち、ワイヤハーネス配索部材10が車両Cに取り付けられる前の状態では、ワイヤハーネス配索部材10の前後左右の大きさを蓄電カバー部材70とほぼ同じ大きさまで小型化することができる。これにより、例えば、蓄電カバー部材から延出された部分を折りたたむことができない場合に比べて、ワイヤハーネス配索部材10の搬送作業を容易にすることができる。
【0090】
<他の実施形態>
本明細書で開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような種々の態様も含まれる。
(1)上記実施形態では、蓄電装置40の蓄電カバー部材70にワイヤハーネス80を固定する構成とした。しかしながら、これに限らず、蓄電カバー部材とは異なる板状のプレート部材を別に設け、プレート部材に対してワイヤハーネスを固定する構成にしてもよい。
【0091】
(2)上記実施形態では、複数の長尺低圧線WL1および複数の長尺信号線WS1が蓄電カバー部材70の天板72から前後に延出された構成とした。しかしながら、これに限らず、蓄電カバー部材から延出される長尺低圧線および長尺信号線は、1本でもよく、複数の電線を束ねた電線束に構成してもよい。
【0092】
(3)上記実施形態では、ワイヤハーネス80が蓄電カバー部材70における天板72の下面72Dに固定されるように構成した。しかしながら、これに限らず、ワイヤハーネスは、蓄電カバー部材の天板の上面である外面に配索溝を設けて配索溝内に配索するように構成してもよい。
【0093】
(4)上記実施形態では、蓄電装置40を車両フレーム20の一対のサイドフレーム21の内側に配置する構成とした。しかしながら、これに限らず、蓄電装置が剛性の高い蓄電フレームなどによって覆われるなど蓄電装置が強固に保護されていれば、蓄電装置を一対のサイドフレームの内側に配置しない構成であってもよい。
【0094】
(5)上記実施形態では、蓄電カバー部材70における天板72の下面72Dに低電圧電源線WLの冗長化として低電圧補助線WLBを配置すると共に、信号線WSの冗長化として補助信号線WSBを配置する構成にした。しかしながら、これに限らず、低電圧補助線と信号補助線を蓄電カバー部材の天板の上面に配置する構成にしてもよい。
【0095】
(6)上記実施形態では、保持部材90を前後方向に直線的に延びる帯状に構成した。しかしながら、これに限らず、保持部材を、長尺低圧線や長尺信号線の配索経路に応じて屈曲させたり、板状に大きい形態にしたりしてもよい。
(7)上記実施形態では、蓄電カバー部材70の天板72に固定されたワイヤハーネス80は、いずれも一続きの一続き電線として形成された、複数の高電圧電源線WHと、複数の低電圧電源線WLと、複数の信号線WSと、複数の低電圧補助線WLBと、複数の補助信号線WSBとを含んでいる構成とした。しかしながら、これに限らず、天板に固定されるワイヤハーネスは、高電圧電源線と低電圧電源線と信号線のいずれかの電線のみによって構成されてもよく、これらの電線のうちのいずれかの電線の組合せによって構成されてもよい。
(8)上記実施形態では、蓄電カバー部材70の天板72に固定されたワイヤハーネス80の全ての電線が一続きの一続き電線として形成されている構成とした。しかしながら、これに限らず、天板に固定されるワイヤハーネスは、少なくとも1本が一続きの一続き電線であればよく、他の電線が一続きになっていない電線として構成されてもよい。
【符号の説明】
【0096】
10:ワイヤハーネス配索部材
20:車両フレーム
32:フロアパネル
40:蓄電装置
50:蓄電モジュール
70:蓄電カバー部材(「ベースプレート」の一例)
80:ワイヤハーネス
90:保持部材
C:車両
FS:フロントスペース
RM:車室
RS:リアスペース
W:電線(「一続き電線」の一例)
WH1:長尺高圧線(「第1電線」の一例)
WL1:長尺低圧線(「第1電線」の一例)
WLB:低電圧補助線(「補助電線」の一例)
WS1:長尺信号線(「第2電線」の一例)
WSB:補助信号線(「補助電線」の一例)