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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】蓄電素子及び蓄電素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0587 20100101AFI20220412BHJP
   H01G 11/82 20130101ALI20220412BHJP
   H01G 11/84 20130101ALI20220412BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20220412BHJP
   H01M 10/05 20100101ALI20220412BHJP
   H01M 50/531 20210101ALI20220412BHJP
【FI】
H01M10/0587
H01G11/82
H01G11/84
H01M10/04 W
H01M10/05
H01M50/531
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018527599
(86)(22)【出願日】2017-07-10
(86)【国際出願番号】 JP2017025169
(87)【国際公開番号】W WO2018012465
(87)【国際公開日】2018-01-18
【審査請求日】2020-06-23
(31)【優先権主張番号】P 2016140879
(32)【優先日】2016-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100153224
【弁理士】
【氏名又は名称】中原 正樹
(72)【発明者】
【氏名】尾地 克弥
(72)【発明者】
【氏名】上田 尚志
(72)【発明者】
【氏名】山根 良生
(72)【発明者】
【氏名】安房 宏章
【審査官】結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-056742(JP,A)
【文献】特開2016-042433(JP,A)
【文献】特開2008-078008(JP,A)
【文献】特開2010-287513(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/0587
H01M 10/04
H01M 50/531
H01G 11/82
H01G 11/84
H01M 10/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
極板及びセパレータが巻回軸周りに巻回されて形成された電極体と、前記電極体と接合される集電体とを備える蓄電素子であって、
巻回された前記極板及び前記セパレータの最内周は、前記巻回軸の方向から見た場合、第一方向において対向する一対の湾曲部を有する扁平な形状であり、
前記電極体は、前記集電体と接合される部分である接合部を有し、
前記極板の前記最内周側の端縁は、前記第一方向において、前記接合部と前記一対の湾曲部のうちの一方の湾曲部との間に配置されている
蓄電素子。
【請求項2】
さらに、電極端子を備え、
前記集電体は、前記電極端子と接続される端子接続部と、前記端子接続部から延設され、前記電極体の前記接合部と接合される脚部とを有し、
前記極板の前記最内周側の端縁は、前記第一方向において、前記接合部と、前記一対の湾曲部のうちの、前記端子接続部側の湾曲部との間に配置されている
請求項記載の蓄電素子。
【請求項3】
前記極板の、前記接合部において前記集電体と接合された部分から前記端縁までの前記第一方向における距離である突出距離は2mm以上である
請求項記載の蓄電素子。
【請求項4】
前記電極体は、前記極板である負極板と、正極板とがセパレータを介して巻回されて形成されており、
前記正極板の最内周の端縁は、前記第一方向において接合部の範囲内に位置する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の蓄電素子。
【請求項5】
極板及びセパレータが巻回軸周りに巻回されて形成された電極体と、前記電極体と接合された集電体とを備える蓄電素子の製造方法であって、
前記極板及び前記セパレータを巻回する巻回工程と、
巻回された前記極板及び前記セパレータにおける最内周側の、前記極板の端部を、治具によって最内周側から押さえながら、前記電極体と集電体とを接合する接合工程を含む
蓄電素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極板及びセパレータが巻回されて形成された電極体を備える蓄電素子及び蓄電素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)などの動力源として、リチウムイオン二次電池などの蓄電素子が用いられている。このような蓄電素子は、一般的に、電極体及び電極体に接続された集電体等を備えている。
【0003】
蓄電素子が備える電極体は、例えば、正極板及び負極板の間にセパレータが挟み込まれるように層状に配置されたものが巻回されて形成されている。このように、正極板と負極板とが対向して配置された構造を有する電極体内に、例えば金属片または金属粉などの導電性の異物(コンタミネーション)が侵入した場合、微短絡等の不具合が生じる可能性があり、微短絡等の不具合が生じると歩留りが悪くなる。
【0004】
例えば特許文献1に開示された蓄電素子では、端部が熱融着によって接合されたことで袋状になった2枚のセパレータに、正極部材の塗工部を含む部分が収納された状態で、正極部材が、負極部材に積層されている。そのため、負極部材の金属層を集電体に超音波接合する場合などに生ずるコンタミネーションが、2枚のセパレータ間に侵入して、正極部材に接触することを防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-207205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の技術では、例えば、電極体を製造する工程において、2枚のセパレータの端部を熱融着するための各種の作業が必要であり、このことは、電極体の製造効率の向上を阻害する要因ともなる。
【0007】
本発明は、上記従来の課題を考慮し、極板及びセパレータが巻回されて形成された電極体を備える蓄電素子であって、信頼性の高い蓄電素子及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る蓄電素子は、極板及びセパレータが巻回軸周りに巻回されて形成された電極体を備える蓄電素子であって、巻回された前記極板及び前記セパレータの最内周は、前記巻回軸の方向から見た場合、第一方向において対向する一対の湾曲部を有する扁平な形状であり、前記極板の前記最内周側の端縁は、前記一対の湾曲部のうちの一方の湾曲部または当該湾曲部の近傍の位置に配置されている。
【0009】
また、本発明の一態様に係る蓄電素子は、極板及びセパレータが巻回軸周りに巻回されて形成された電極体と、前記電極体と接合される集電体とを備える蓄電素子であって、巻回された前記極板及び前記セパレータの最内周は、前記巻回軸の方向から見た場合、第一方向において対向する一対の湾曲部を有する扁平な形状であり、前記電極体は、前記集電体と接合される部分である接合部を有し、前記極板の前記最内周側の端縁は、前記第一方向において、前記接合部と前記一対の湾曲部のうちの一方の湾曲部の頂点との間に配置されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、極板及びセパレータが巻回されて形成された電極体を備える蓄電素子であって、信頼性の高い蓄電素子及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施の形態に係る蓄電素子の外観を示す斜視図である。
図2図2は、実施の形態に係る蓄電素子の容器内に配置されている構成要素を示す斜視図である。
図3図3は、実施の形態に係る集電体の外観を示す斜視図である。
図4図4は、実施の形態に係る電極体の構成概要を示す斜視図である。
図5図5は、実施の形態に係る電極体を巻回軸の方向から見た場合の構成概要を示す図である。
図6図6は、実施の形態に係る電極体における負極板の巻き始め位置の一例を示す図である。
図7図7は、実施の形態に係る電極体における芯材の配置位置を示す図である。
図8図8は、実施の形態に係る電極体と集電体との接合作業の概要を示す図である。
図9図9は、実施の形態に係る電極体を製造する際の巻回工程の一部を示す図である。
図10図10は、電極体における負極板の巻き始め位置の別の一例を示す図である。
図11図11は、負極板の巻き始めの端縁と、電極体の接合部との位置関係の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本願発明者らは、上記従来の技術に関し、さらに以下の問題が生じ得ると考えた。例えば、2枚のセパレータの端部が接合された場合、2枚のセパレータの一方の端部は、他方の端部に拘束される。このように、2枚のセパレータが互いに拘束し合う状態で、電極体を製造した場合、電極体の形状に歪みが生じる場合がある。その結果、例えば、電極体の端部の、正極板または負極板の活物質未塗工部が積層された部分にずれが生じることがある。このことは、例えば、当該端部と集電体との接合強度または接合精度の低下を招き得る。
【0013】
本発明は、上記従来の課題を考慮し、極板及びセパレータが巻回されて形成された電極体を備える蓄電素子であって、信頼性の高い蓄電素子及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る蓄電素子は、極板及びセパレータが巻回軸周りに巻回されて形成された電極体を備える蓄電素子であって、巻回された前記極板及び前記セパレータの最内周は、前記巻回軸の方向から見た場合、第一方向において対向する一対の湾曲部を有する扁平な形状であり、前記極板の前記最内周側の端縁は、前記一対の湾曲部のうちの一方の湾曲部または当該湾曲部の近傍の位置に配置されている。
【0015】
この構成によれば、極板の巻き始めの端縁を含む部分(端部)は、その外側のセパレータを外側に押す。そのため、例えば、極板の端部によって、当該端部の外側のセパレータの浮き(皺の発生)が抑制される。つまり、当該端部よりも外側におけるセパレータの浮きが抑制される。その結果、コンタミネーションの、電極体の内部への侵入が抑制される、という効果が得られる。また、この効果は、極板の巻き始めの位置の工夫により得られるため、上記従来の技術のような、隣り合うセパレータ端部の熱融着等の作業は不要である。また、この効果を得るための別部材も不要である。
【0016】
このように、本態様に係る蓄電素子は、極板及びセパレータが巻回されて形成された電極体を備える蓄電素子であって、信頼性の高い蓄電素子である。
【0017】
また、本発明の一態様に係る蓄電素子では、前記第一方向において、前記巻回軸から当該湾曲部の頂点までの距離をLとした場合、前記極板の前記端縁は、前記第一方向において、前記頂点からL/4までの範囲に配置されているとしてもよい。
【0018】
この構成では、例えば、湾曲部または湾曲部近傍の位置が、湾曲部の頂点からL/4までの範囲として規定される。つまり、極板の巻き始めの端縁がこの範囲内にあることで、極板の端部よりも外側におけるセパレータの浮きの抑制効果をより確実に得ることができる。
【0019】
また、本発明の一態様に係る蓄電素子はさらに、脚部を有する集電体を備え、前記電極体は、前記脚部と接合される部分である接合部を有し、前記極板の前記端縁は、前記第一方向において、前記接合部よりも当該湾曲部の頂点に近い位置に配置されているとしてもよい。
【0020】
この構成によれば、蓄電素子の製造工程において行われる溶接またはかしめ等による接合作業は、例えば極板の端部が治具によって外側に押さえられた状態で行われる。そのため、接合作業においてコンタミネーションが発生した場合であっても、そのコンタミネーションの、電極体の内部への侵入は抑制される。
【0021】
また、本発明の一態様に係る蓄電素子において、前記電極体はさらに、前記最内周に接触して配置された扁平な形状の芯材を有するとしてもよい。
【0022】
この構成によれば、極板の巻き始めの端縁が、最内周の内方に位置する芯材によって外側に押されるため、当該端縁を含む端部よりも外側におけるセパレータの浮きがより確実に抑制される。その結果、コンタミネーションの電極体の内部への侵入の抑制がより確実化される。
【0023】
また、本発明の一態様に係る蓄電素子において、前記極板は、負極板であり、前記電極体はさらに、前記負極板及び前記セパレータとともに巻回された正極板を有し、前記第一方向において、前記巻回軸から当該湾曲部の頂点までの距離をLとした場合、前記負極板の前記端縁は、前記正極板の前記最内周側の端縁よりも、前記第一方向において当該湾曲部の頂点に近い位置に配置され、前記負極板の前記端縁と、前記正極板の前記端縁との距離は、L/2以上であるとしてもよい。
【0024】
この構成によれば、負極板の巻き始めの端縁と、正極板の巻き始めの端縁との距離が比較的に長い。そのため、仮に、負極板の端部よりも外側において、セパレータの浮きが生じ、その浮きが生じた部分からコンタミネーションが侵入した場合であっても、コンタミネーションが正極板に到達し難い。
【0025】
また、本発明の一態様に係る蓄電素子の製造方法は、極板及びセパレータが巻回軸周りに巻回されて形成された電極体と、前記電極体と接合された集電体とを備える蓄電素子の製造方法であって、前記極板及び前記セパレータを巻回する巻回工程と、巻回された前記極板及び前記セパレータにおける最内周側の、前記極板の端部を、治具によって最内周側から押さえながら、前記電極体と集電体とを接合する接合工程を含む。
【0026】
この製造方法によれば、溶接またはかしめ等による接合作業は、極板の端部が治具によって外側に押さえられた状態で行われる。つまり、電極体は、極板の端部よりも外側におけるセパレータの浮きが抑制された状態で、集電体と接合される。そのため、接合作業においてコンタミネーションが発生した場合であっても、そのコンタミネーションが電極体の内部に侵入する可能性は低い。従って、本態様に係る蓄電素子の製造方法によれば、極板及びセパレータが巻回されて形成された電極体を備える蓄電素子であって、信頼性の高い蓄電素子を製造することができる。
【0027】
また、本発明の一態様に係る蓄電素子は、極板及びセパレータが巻回軸周りに巻回されて形成された電極体と、前記電極体と接合される集電体とを備える蓄電素子であって、巻回された前記極板及び前記セパレータの最内周は、前記巻回軸の方向から見た場合、第一方向において対向する一対の湾曲部を有する扁平な形状であり、前記電極体は、前記集電体と接合される部分である接合部を有し、前記極板の前記最内周側の端縁は、前記第一方向において、前記接合部と前記一対の湾曲部のうちの一方の湾曲部の頂点との間に配置されている。
【0028】
この構成によれば、巻回型の電極体における極板の最内周側の端縁の位置が、第一方向において接合部と離間した位置にある。つまり、セパレータの浮きが生じやすい位置である極板の端縁の位置と、コンタミネーションが生じやすい接合部の位置とが、第一方向においてずらされている、その結果、仮に、極板の端縁の付近においてセパレータの浮きが生じた場合であっても、その浮きが生じた部分からコンタミネーションが侵入する可能性が低減される。このように、極板の最内周側の端縁の位置を、接合部の位置との関係で規定することでも、信頼性の高い蓄電素子を得ることができる。
【0029】
また、本発明の一態様に係る蓄電素子はさらに、電極端子を備え、前記集電体は、前記電極端子と接続される端子接続部と、前記端子接続部から延設され、前記電極体の前記接合部と接合される脚部とを有し、前記極板の前記最内周側の端縁は、前記第一方向において、前記接合部と、前記一対の湾曲部のうちの、前記端子接続部側の湾曲部の頂点との間に配置されているとしてもよい。
【0030】
ここで、蓄電素子は、その製造時及び使用時において、一般に、電極端子が配置された側を上方に向けた姿勢にされる場合が多い。蓄電素子がこの姿勢された場合、上記構成によれば、極板の最内周側の端縁は、接合部よりも上方に位置することとなる。つまり、極板の当該端縁の付近にセパレータの浮きが生じた場合であっても、その位置は、コンタミネーションが生じやすい接合部よりも上方である。従って、本態様の蓄電素子によれば、コンタミネーションの電極体の内部への侵入の可能性をより低減させることができる。
【0031】
また、本発明の一態様に係る蓄電素子において、前記極板の、前記接合部において前記集電体と接合された部分から前記端縁までの距離である突出距離は2mm以上であるとしてもよい。
【0032】
この構成によれば、例えば、極板の最内周側の端縁が、接合部から上方に2mm以上離れた位置に配置される。つまり、極板の巻き始めの端縁がこの範囲内にあることで、当該端縁の付近におけるコンタミネーションの侵入抑制効果をより確実に得ることができる。
【0033】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態に係る蓄電素子について説明する。なお、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示したものではない。
【0034】
また、以下で説明する実施の形態は、本発明の一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、製造工程の順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0035】
まず、図1図3を用いて、実施の形態に係る蓄電素子10の全般的な説明を行う。
【0036】
図1は、実施の形態に係る蓄電素子10の外観を示す斜視図である。図2は、実施の形態に係る蓄電素子10の容器100内に配置されている構成要素を示す斜視図である。具体的には、図2は、蓄電素子10を、容器100の蓋体110と本体111とを分離して示す斜視図である。図3は、実施の形態に係る集電体120の外観を示す斜視図である。
【0037】
蓄電素子10は、電気を充電し、また、電気を放電することのできる二次電池であり、より具体的には、リチウムイオン二次電池などの非水電解質二次電池である。例えば、蓄電素子10は、EV、HEV、またはPHEV等の各種自動車に適用される。なお、蓄電素子10は、非水電解質二次電池には限定されず、非水電解質二次電池以外の二次電池であってもよいし、キャパシタであってもよい。また、蓄電素子10は、使用者が充電をしなくても蓄えられている電気を使用できる一次電池であってもよい。
【0038】
図1に示すように、蓄電素子10は、容器100と、負極端子200と、正極端子300とを備えている。また、図2に示すように、容器100の内部には、負極側の集電体120と、正極側の集電体130と、電極体400とが収容されている。
【0039】
なお、蓄電素子10は、上記の構成要素の他、集電体120及び130の側方に配置されるスペーサ、容器100内の圧力が上昇したときに当該圧力を開放するためのガス排出弁、または、電極体400等を包み込む絶縁フィルムなどを備えてもよい。また、蓄電素子10の容器100の内部には電解液(非水電解質)などの液体が封入されているが、当該液体の図示は省略する。なお、容器100に封入される電解液としては、蓄電素子10の性能を損なうものでなければその種類に特に制限はなく、様々なものを選択することができる。
【0040】
容器100は、矩形筒状で底を備える本体111と、本体111の開口を閉塞する板状部材である蓋体110とで構成されている。また、容器100は、電極体400等を内部に収容後、蓋体110と本体111とが溶接等されることにより、内部を密封する構造を有している。なお、蓋体110及び本体111の材質は、特に限定されないが、例えばステンレス鋼、アルミニウム、またはアルミニウム合金など溶接可能な金属であるのが好ましい。
【0041】
電極体400は、正極板と負極板とセパレータとを備え、電気を蓄えることができる部材である。電極体400の詳細な構成については、図4等を用いて後述する。
【0042】
負極端子200は、集電体120を介して電極体400の負極と電気的に接続された電極端子である。正極端子300は、集電体130を介して電極体400の正極と電気的に接続された電極端子である。負極端子200及び正極端子300は、電極体400の上方に配置された蓋体110に、絶縁性を有するガスケット(図示せず)を介して取り付けられている。
【0043】
集電体120は、電極体400の負極と容器100の本体111の壁面との間に配置され、負極端子200と電極体400の負極とに電気的に接続される導電性と剛性とを備えた部材である。
【0044】
集電体130は、電極体400の正極と容器100の本体111の壁面との間に配置され、正極端子300と電極体400の正極とに電気的に接続される導電性と剛性とを備えた部材である。
【0045】
具体的には、集電体120及び130は、蓋体110に固定されている。また、集電体120は、電極体400の負極側端部に接合され、集電体130は、電極体400の正極側端部に接合されている。電極体400は、容器100の内部において、集電体120及び130により、蓋体110から吊り下げられた状態で保持される。
【0046】
本実施の形態では、集電体120及び130のそれぞれは、電極体400と、超音波接合によって接合されている。そのため、図1に示すように、集電体120には溶接痕120aが形成され、集電体130には溶接痕130aが形成されている。
【0047】
ここで、本実施の形態では、集電体120及び集電体130の形状および取り付け構造等は、実質的に同一である。そのため、以下では、主として、負極側の集電体120及びその周辺に関する事項について説明し、正極側の集電体130側の部材に関する事項についてはその説明を適宜省略する。
【0048】
本実施の形態における集電体120は、図3に示すように、電極体400と接合される脚部122を有している。より具体的には、集電体120は、電極体400の負極側端部を両側から挟むように配置された一対の脚部122を有する。一対の脚部122は、集電体120が有する端子接続部121の端部から延設された長尺状の部分である。端子接続部121は、負極端子200と接続される部分である。例えば、負極端子200に設けられたリベットが、端子接続部121の貫通孔121aを貫通した状態でかしめられることで、負極端子200と集電体120とが接続される。また、一対の脚部122は、電極体400の負極側端部と接合される。これにより、集電体120は、電極体400の負極に電気的に接続される。
【0049】
なお、電極体400の負極側端部は、電極体400が有する負極板の露出した金属箔(活物質未塗工部421a)の層によって形成されている。また、電極体400は、集電体120の脚部122と接合された部分である接合部425(図2参照)を有している。より詳細には、電極体400は、集電体120の一対の脚部122それぞれに対応する位置に、接合部425を有している。接合部425は、電極体400の一部であって、例えば、集電体120における接合痕(本実施の形態では溶接痕120a)に対向する部分である。
【0050】
次に、以上のように構成された蓄電素子10が備える電極体400の構成について、図4を用いて説明する。図4は、実施の形態に係る電極体400の構成概要を示す斜視図である。なお、図4では、積層されて巻回された極板等の要素を一部展開して図示している。また、図4において符号Wが付された一点鎖線は、電極体400の巻回軸を表している。巻回軸Wは、極板等を巻回する際の中心軸となる仮想的な軸であり、本実施の形態では、電極体400の中心を通るX軸に平行な直線である。つまり、本実施の形態において、「巻回軸Wの方向」は、「X軸方向」と同義である。
【0051】
電極体400は、極板及びセパレータが巻回軸W周りに巻回されて形成された電極体の一例である。本実施の形態では、図4に示すように、電極体400は、セパレータ450と、負極板420と、セパレータ430と、正極板410とがこの順に積層され、かつ、巻回されることで形成されている。また、図4に示すように、電極体400は、巻回軸Wと直交する方向(本実施の形態ではZ軸方向)に扁平な形状である。つまり、電極体400は、巻回軸Wの方向から見た場合に、全体として長円形状であり、長円形状の直線部分が平坦な形状となり、長円形状の曲線部分が湾曲した形状となる。このため、電極体400は、対向する一対の湾曲部(巻回軸Wを挟んでY軸方向で対向する部分)と、一対の湾曲部の間の部分である一対の中間部(巻回軸Wを挟んでZ軸方向で対向する部分)とを有している。
【0052】
本実施の形態において、正極板410は、アルミニウムからなる長尺帯状の金属箔(正極基材層411)の表面に、正極活物質を含む正極合材層414が形成されたものである。負極板420は、銅からなる長尺帯状の金属箔(負極基材層421)の表面に、負極活物質を含む負極合材層424が形成されたものである。正極活物質及び負極活物質の例については後述する。
【0053】
また、本実施の形態では、セパレータ430及び450は、樹脂からなる微多孔性のシートを基材として有している。
【0054】
このように構成された電極体400において、より具体的には、正極板410と負極板420とは、セパレータ430または450を介し、巻回軸Wの方向に互いにずらして巻回されている。そして、正極板410及び負極板420は、それぞれのずらされた方向の端部に、基材層の、活物質が塗工されていない部分である活物質未塗工部を有する。
【0055】
具体的には、正極板410は、巻回軸Wの方向の一端(図4ではX軸方向プラス側の端部)に、正極活物質が塗工されていない活物質未塗工部411aを有している。また、負極板420は、巻回軸Wの方向の他端(図4ではX軸方向マイナス側の端部)に、負極活物質が塗工されていない活物質未塗工部421aを有している。
【0056】
つまり、正極板410の露出した金属箔(活物質未塗工部411a)の層によって正極側端部が形成され、負極板420の露出した金属箔(活物質未塗工部421a)の層によって負極側端部が形成されている。正極側端部は集電体130と接合され、負極側端部は集電体120と接合される。本実施の形態では、これら接合の手法として、上述のように、超音波接合が採用されている。なお、電極体400と集電体120及び130との接合の手法として、超音波接合以外に、抵抗溶接またはクリンチ接合等の手法が採用されてもよい。
【0057】
以上のように構成された電極体400において、極板(本実施の形態では負極板420)の巻き始めの端縁が、最内周における湾曲部またはその近傍に位置しており、これにより、電極体400では、当該端縁を含む端部よりも外側におけるセパレータの浮きが抑制されている。この構造について、以下、図5図7を用いて説明する。
【0058】
図5は、実施の形態に係る電極体400を巻回軸Wの方向から見た場合の構成概要を示す図である。図6は、実施の形態に係る電極体400における負極板420の巻き始め位置の一例を示す図である。図7は、実施の形態に係る電極体400における芯材480の配置位置を示す図である。なお、図6では、芯材480の図示は省略されている。また、図7では、負極板420については、端縁420aを含む巻き始めの一部のみを図示し、セパレータ(430、450)及び正極板410については、図示が省略されている。
【0059】
図5に示すように、電極体400は巻回軸Wの方向から見た場合にZ軸方向に扁平な長円形状である。このような形状は、負極板420等の、電極体400を構成する要素(以下、「電極体要素」ともいう。)を巻回した後に、Z軸方向に圧縮されることで形成される。また、本実施の形態では、電極体400は芯材480を有しており、芯材480も、Z軸方向に扁平な形状を有している。
【0060】
芯材480は、巻回された電極体要素の最内周401の内方に配置された絶縁性の部材である。具体的には、芯材480は、ポリプロピレンまたはポリエチレンなどの樹脂製の巻芯である。つまり、芯材480の周りに、電極体要素である、セパレータ430、負極板420、セパレータ450、及び正極板410が巻回されることで、電極体400が形成される。
【0061】
なお、芯材480は、樹脂シートを巻くことにより形成される巻シート輪であってもよいし、扁平な形状に成形された部材であってもよい。また、芯材480は、一体に形成された部材であってもよいし、複数の部材から形成されていてもよい。また、芯材480の材料は特に限定されない。例えば、最も芯材480に近い位置にセパレータを配置する場合、及び、正極または負極のいずれか一方の電位を芯材480に落とす場合は、導電性の材料を用いてもよい。また、芯材480は、電極体400に必須の要素ではなく、芯材480なしで、セパレータ430及び負極板420等の電極体要素を巻回することで、電極体400が形成されてもよい。
【0062】
このように、芯材480を中心として巻回された負極板420等の電極体要素の最内周401は、電極体400と同じく、Z軸方向に扁平な形状(例えば、円形をZ軸方向に圧縮した形状)である。本実施の形態では、電極体400の最内周401は、図6に示すように、1回以上巻かれたセパレータ430の内面によって形成されている。
【0063】
具体的には、巻回された極板(410、420)及びセパレータ(430、450)の最内周401は、巻回軸Wの方向から見た場合、第一方向において対向する一対の湾曲部402a及び402bを有する扁平な形状である。なお、本実施の形態では、巻回軸Wの方向はX軸方向であり、第一方向はY軸方向である。
【0064】
また、負極板420の最内周401側の端縁420a、つまり、負極板420の巻き始めの端縁420aは、湾曲部402aまたは湾曲部402aの近傍の位置に配置されている。言い換えると、負極板420の端縁420aは、湾曲部402a、または、中間部(一対の湾曲部(402a、402b)の間の部分)の長手方向の端部に配置されている。
【0065】
ここで、最内周401における湾曲部(402a、402b)及び湾曲部(402a、402b)の外側に位置する電極体要素は、折り返すように曲げられた部分であり、巻回される際に、巻回軸Wから離れる方向に比較的に大きな力がかかる部分である。言い換えると、セパレータ430及び負極板420等の、隣り合う電極体要素同士が密着しやすい部分である。
【0066】
そのため、負極板420の巻き始めの端縁420aが、湾曲部402aまたはその近傍の位置に配置されていることで、例えば、端縁420aを含む部分(負極板420の端部)が、当該端部の外側のセパレータ450を外側に押す。これにより、負極板420の端部の外側におけるセパレータ450の浮き(皺の発生)が抑制される。つまり、負極板420の端部の外側における、セパレータ450とセパレータ430との隙間の発生が抑制される。その結果、正極板410の端縁410a付近における隙間の発生が抑制される。これにより、コンタミネーションの電極体400の内部への侵入が抑制され、その結果、例えば、コンタミネーションが正極板410に接触する可能性が低減される。すなわち、コンタミネーションが正極板410に接触することによる不具合(内部短絡等)の発生が抑制される。
【0067】
さらに、電極体400は、その製造工程において、上述のように、Z軸方向に圧縮され、このときの圧縮力は、最内周401における湾曲部(402a、402b)を、外側に移動させるように作用する。この場合、負極板420の端部は、当該端部の内側のセパレータ430によって外側に押される。このことによっても、負極板420の端部よりも外側におけるセパレータ450の浮きが抑制され、これにより、コンタミネーションの電極体400の内部への侵入が抑制される。
【0068】
ここで、本実施の形態では、上記の、コンタミネーションの電極体400の内部への侵入抑制効果を、負極板420の巻き始めの位置の工夫により得ている。従って、例えば隣り合うセパレータの端縁を溶着することで塞ぐような煩雑な作業は不要である。また、当該効果を得るための別部材も不要である。
【0069】
このように、本実施の形態に係る蓄電素子10は、電極体400を備え、電極体400は、構造上の工夫により、コンタミネーションの内部への侵入が抑制されている。従って、蓄電素子10は、信頼性の高い蓄電素子である。
【0070】
なお、本実施の形態では、Y軸方向において巻回軸Wから湾曲部402aの頂点(Y軸方向における、湾曲部402aの、巻回軸Wからの最遠点)Pまでの距離をLとした場合、負極板420の端縁420aは、Y軸方向において、頂点PからL/4までの範囲に配置されている。つまり、湾曲部402aの頂点Pから負極板420の端縁420aまでの距離をDとした場合、D≦L/4である。
【0071】
このように、本実施の形態では、湾曲部402aまたは湾曲部402a近傍の位置が、湾曲部402aの頂点PからL/4までの範囲として規定される。すなわち、負極板420の巻き始めの端縁420aがこの範囲内にあることで、端縁420aを含む端部よりも外側におけるセパレータ450の浮きを抑制する効果をより確実に得ることができる。
【0072】
具体的には、本願発明者らは、負極板420の端縁420aの位置が互いに異なる蓄電素子について、コンタミネーション(銅の小片)の内部への侵入抑制効果を検証するための検証実験を行った。
【0073】
より詳細には、負極板420の端縁420aの位置が、(a)Y軸方向において巻回軸Wと略一致する場合、(b)Y軸方向において巻回軸Wから湾曲部402aの頂点Pに近づく方向にL1だけ離れた場合、(c)Y軸方向において巻回軸Wから湾曲部402aの頂点Pに近づく方向にL2(>L1)だけ離れた場合、の3つの場合について検証実験が行われた。
【0074】
また、この検証実験では、複数のコンタミネーション(銅の小片)を容器100内に封入し、かつ、電極体400の負極側端部が上向きになる姿勢で所定の期間放置した。その後、蓄電素子を解体し、最内周401に近い位置において内部に侵入したコンタミネーションの数を計測した。
【0075】
上記検証実験の結果、計測されたコンタミネーションの数は、(a)の場合が最も多く、(b)の場合、(c)の場合の順に少なくなった。これは、上述のように、負極板420の端縁420aが、最内周401の湾曲部(本実施の形態では、湾曲部402a)の頂点Pに近いほど、端縁420aが外側に押さえられる効果が高いためと考えられる。
【0076】
本願発明者らは、上記検証実験の結果等に基づいて、負極板420の端縁420aが、Y軸方向において頂点PからL/4までの範囲に配置されていることで、コンタミネーションの電極体400の内部への侵入抑制効果を実質的に得ることができる、との結論を得た。
【0077】
なお、負極板420の端縁420aの、Y軸方向における位置は、湾曲部402aの頂点PからL/6までの範囲であることがより好ましい。
【0078】
また、本実施の形態では、電極体400が有する芯材480が、コンタミネーションの電極体400の内部への侵入抑制効果の向上に寄与している。
【0079】
具体的には、本実施の形態において、電極体400は、例えば図7に示すように、最内周401に接触して配置された扁平な形状の芯材480を有する。なお、図7では、電極体400における最内周401と、芯材480との位置関係を明確にするために、芯材480と最内周401との間に隙間を設けて図示している。しかし、実際には、芯材480は、最内周401における湾曲部402a及び402bに挟まれた状態で配置されており、外周のほぼ全域において、最内周401と接触した状態である。
【0080】
このように、電極体400において、最内周401の内方に芯材480が配置されている場合、芯材480は、負極板420の巻き始めの端縁420aを外側に押す部材としても機能する。この機能は、例えば、電極体400の形を整えるために、電極体400がZ軸方向に圧縮された場合に顕著となる。これにより、端縁420aよりも外側におけるセパレータ450の浮きが、より確実に抑制される。その結果、コンタミネーションの電極体400の内部への侵入の抑制がより確実化される。
【0081】
なお、例えば、電極体の端部(負極側端部または正極側端部)の開口が閉じられた状態で当該端部と集電体とが接合される場合や、芯材が中実で硬い場合は、極板の最内周側の端縁の近傍におけるセパレータの浮きの問題は生じ難いと言える。従って、本実施の形態に係る電極体400の構成は、巻回中心に、外部に開口する空洞を有する巻回型の電極体に有用である。
【0082】
また、本実施の形態に係る電極体400では、図6に示すように、負極板420の端縁420aは、正極板410の、最内周401側の端縁410aよりも、Y軸方向において湾曲部402aの頂点Pに近い位置に配置されている。また、負極板420の端縁420aと正極板410の端縁410aとの距離Sは、L/2以上である。
【0083】
この構成によれば、負極板420の巻き始めの端縁420aと、正極板410の巻き始めの端縁410aとの距離が比較的に長い。そのため、仮に、負極板420の端部の外側のセパレータ450と430との間に隙間が生じ、その隙間にコンタミネーションが侵入した場合であっても、コンタミネーションが正極板410に到達し難い。すなわち、コンタミネーションが正極板410に接触することによる不具合(内部短絡等)の発生が抑制される。
【0084】
以上の構成を有する電極体400は、上述のように、集電体120及び130に接合されるが、この接合作業は、電極体400の一部を治具で押さえながら行われる。この接合作業に関する事項を、図8を用いて説明する。
【0085】
図8は、実施の形態に係る電極体400と集電体120との接合作業の概要を示す図である。図8に示すように、本実施の形態に係る蓄電素子10は、脚部122を有する集電体120を備え、電極体400は、脚部122と接合される部分である接合部425を有する。具体的には、接合部425は、図8に示す網掛け部分に含まれる負極板420の端部(活物質未塗工部421aの積層部分)により形成される。このように、集電体120と接合される電極体400において、負極板420の端縁420aは、Y軸方向において、接合部425よりも湾曲部402aの頂点Pに近い位置に配置されている。
【0086】
この構成によれば、本実施の形態において超音波接合である接合作業は、図8に示すように、負極板420の端部を治具500によって外側(図8では下方)に押さえた状態で行うことができる。言い換えると、負極板420の巻き始めの端縁420aが、湾曲部402aまたはその近傍の位置に配置されていることで、負極板420の端縁420aを含む端部を、治具500で押さえながら、電極体400と集電体120との接合作業を行うことができる。すなわち、本実施の形態に係る蓄電素子10の製造方法は、例えば以下のように表現される。
【0087】
本実施の形態に係る蓄電素子10の製造方法は、極板(410、420)及びセパレータ(430、450)が巻回軸W周りに巻回されて形成された電極体400と、電極体400と接合された集電体120とを備える蓄電素子10の製造方法であって、極板(410、420)及びセパレータ(430、450)を巻回する巻回工程と、巻回された極板(410、420)及びセパレータ(430、450)における最内周401側の、負極板420の端部を、治具500によって最内周401側から押さえながら、電極体400と集電体120とを接合する接合工程を含む。
【0088】
この製造方法によれば、電極体400は、負極板420の端部よりも外側におけるセパレータ450の浮きが抑制された状態で、集電体120と接合される。そのため、例えば、接合作業の際に活物質未塗工部421aの一部がはがれることでコンタミネーションが発生した場合であっても、そのコンタミネーションが、負極板420の端部の外側に位置するセパレータ450と430との隙間に侵入する可能性は低い。従って、本実施の形態に係る蓄電素子10の製造方法によれば、極板(410、420)及びセパレータ(430、450)が巻回されて形成された電極体400を備える蓄電素子10であって、信頼性の高い蓄電素子10を製造することができる。
【0089】
なお、上記巻回工程では、負極板420の巻き始めの端縁420aを、湾曲部402aまたはその近傍の位置に配置するため、巻回装置によって巻き取られるセパレータ430及び450の間の奥に、負極板420の端縁420aを挟み込んでいる。
【0090】
図9は、実施の形態に係る電極体400を製造する際の巻回工程の一部を示す図である。図9に示すように、本実施の形態に係る巻回工程では、巻回装置600が用いられる。巻回装置600では、巻回軸Wを中心に回転する回転体610によって、セパレータ430等の電極体要素が巻き取られる。より詳細には、回転体610は、芯材480(図9では図示せず)を回転させることで、芯材480を中心として、セパレータ430等の電極体要素を巻き取る。
【0091】
このようにして実行される巻回工程において、負極板420の回転体610による巻き取りを開始する場合、図9に示すように、回転体610の長手方向の端部の近傍であって、セパレータ430とセパレータ450とが接触している箇所に、負極板420の端縁420aを位置させる。
【0092】
具体的には、ガイド装置700が有するガイド部710に、負極板420の端縁420aを含む端部を支持させながら、セパレータ430とセパレータ450とが接触している箇所に、負極板420の端縁420aを位置させ、その後、回転体610を回転させる。これにより、負極板420の端縁420aが、セパレータ430とセパレータ450との間に挟みこまれ、セパレータ430及び450とともに巻回される。その結果、電極体400における負極板420の端縁420aの位置は、例えば図6に示すように、湾曲部402aまたは湾曲部402aの近傍の位置となる。
【0093】
なお、巻回工程において、負極板420の巻き始めの端縁420aを、図9に示すように、回転体610の長手方向の端部(ガイド装置700から遠い方の端部)の近傍に導く場合、ガイド装置700が、下方のセパレータ450と干渉しやすい状態となる。そのため、例えば、セパレータ450と回転体610とのなす角度の調整等を行うことで、ガイド装置700とセパレータ430及び450との干渉が防止される。
【0094】
(他の実施の形態)
以上、本発明に係る蓄電素子及びその製造方法について、実施の形態に基づいて説明した。しかしながら、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を上記実施の形態に施したものも、あるいは、上記説明された複数の構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【0095】
例えば、電極体400における負極板420の端縁420aの位置は、図6等に示す位置には限定されない。例えば、図10に示すように、湾曲部402aの頂点Pを越えた位置であってもよい。この場合であっても、負極板420の端縁420a含む端部は、構造上、外側のセパレータ450を押圧する位置に存在する。そのため、負極板420の端縁420aを含む端部よりも外側におけるセパレータ450の浮きを抑制する効果を得ることができる。このことは、負極板420の端縁420aの位置が、例えば図6における右側の湾曲部402bまたは湾曲部402bの近傍の位置に配置された場合、及び、電極体400が芯材480を有しない場合についても同じである。
【0096】
また、負極板420の端縁420aの位置であって、端縁420aの付近からのコンタミネーションの侵入を抑制するための位置を、接合部425との位置関係で規定することもできる。
【0097】
図11は、負極板420の巻き始めの端縁420aと、電極体400の接合部との位置関係の一例を示す図である。なお、図11に示す電極体400aは、上記の電極体400に換えて蓄電素子10に備えられる電極体の一例である。
【0098】
図11に示す電極体400aは、極板(410、420)及びセパレータ(430、450)が巻回されて形成されている。電極体400aには、集電体120が接合されている。巻回された極板(410、420)及びセパレータ(430、450)の最内周401は、巻回軸Wの方向から見た場合、第一方向(Y軸方向)において対向する一対の湾曲部402a及び402bを有する扁平な形状である。電極体400aは、集電体120と接合される部分である接合部425を有し、負極板420の最内周401側の端縁420aは、第一方向(Y軸方向)において、接合部425と一対の湾曲部402a及び402bのうちの一方の湾曲部(図11では、湾曲部402a)の頂点Pとの間に配置されている。
【0099】
このように、図11に示す電極体400aでは、巻回型の電極体400aにおける負極板420の最内周401側の端縁420aの位置が、Y軸方向において接合部425と離間した位置にある。
【0100】
つまり、図11に示す電極体400aでは、セパレータ450の浮きが生じやすい位置である、負極板420の端縁420aの位置と、コンタミネーションが生じやすい接合部425の位置とが、Y軸方向においてずらされている。これにより、仮に、負極板420の端縁420aの付近においてセパレータ450の浮きが生じた場合であっても、その浮きが生じた部分からコンタミネーションが侵入する可能性が低減される。その結果、コンタミネーションが正極板410に接触することによる不具合(内部短絡等)の発生が抑制される。
【0101】
このように、負極板420の最内周401側の端縁420aの位置を、接合部425の位置との関係で規定することでも、信頼性の高い蓄電素子10を得ることができる。
【0102】
より具体的には、集電体120は、電極端子と接続される端子接続部121と、端子接続部121から延設され、電極体400aの接合部425と接合される脚部122とを有している。負極板420の最内周401側の端縁420aは、第一方向(Y軸方向)において、接合部425と、一対の湾曲部402a及び402bのうちの、端子接続部121側の湾曲部402aの頂点Pとの間に配置されている。
【0103】
ここで、蓄電素子10は、その製造時及び使用時において、一般に、電極端子(200、300)が配置された側を上方に向けた姿勢(例えば図1に示す姿勢)にされる場合が多い。蓄電素子10がこの姿勢にされた場合、上記構成によれば、負極板420の最内周401側の端縁420aは、接合部425よりも上方に位置することとなる。
【0104】
より詳細には、負極板420の端縁420aは上向きであり、つまり、負極板420は、巻き始めの位置において、上から下に向けて(端子接続部121から離れる方向に)巻かれている。この場合、端縁420aよりも上の位置にセパレータ450の浮きが生じやすい。
【0105】
そのため、負極板420の端縁420aの付近にセパレータ450の浮きが生じた場合であっても、その位置は、コンタミネーションが生じやすい接合部425よりも上方である。従って、電極体400a備える蓄電素子10によれば、コンタミネーションの電極体400aの内部への侵入の可能性をより低減させることができる。
【0106】
なお、電極体400aの、集電体120の脚部122と接合された部分がY軸方向に分散して複数存在する場合、これら複数の部分全体のY軸方向における一端から他端までが、1つの接合部425のY軸方向における存在領域として規定される。
【0107】
また、上記の電極体400aの構成は、図11に示すように、負極板420の端縁420aが、電極体400と集電体120とを接合する際に用いる治具500に届かない場合に有用である。つまり、治具500によって負極板420の端縁420aがしっかりと押さえられない場合であっても、負極板420の端縁420aをY軸方向において接合部425から離すことで、コンタミネーションの電極体400aの内部への侵入抑制効果を得ることができる。
【0108】
具体的には、本願発明者らは、負極板420の端縁420aと接合部425との距離を変えながら、端縁420aの付近におけるコンタミネーションの侵入個数を調べる試験を行った。その結果、当該距離が2mm以上あれば、コンタミネーションがほぼ侵入しないとの結論を得た。
【0109】
つまり、負極板420の、接合部425において集電体120と接合された部分から端縁420aまでのY軸方向の距離である突出距離M(図11参照)は、2mm以上であることが好ましい。
【0110】
つまり、負極板420の巻き始めの端縁420aがこの範囲内にあることで、負極板420の端縁420aの付近におけるコンタミネーションの侵入抑制効果をより確実に得ることができる。
【0111】
なお、電極体400aにおいて、負極板420の端縁420aが下向きである場合、つまり、負極板420が、巻き始めの位置において下から上に向けて(端子接続部121に近づく方向に)巻かれている場合を想定する。この場合、負極板420の端縁420aよりも上方に、または、負極板420の端縁420aよりも上方にある最内周401の湾曲部の頂点を越えた位置に、正極板410の巻き始めの端縁が存在することになる。そのため、仮に、負極板420の端縁420aの付近からコンタミネーションが侵入したとしても、そのコンタミネーションは正極板410に到達し難い。
【0112】
従って、図11に示す、負極板420の端縁420aの位置をY軸方向において接合部425と離間させる構成は、電極体400の、接合部425が存在する側において、負極板420が、上から下に向けて(端子接続部121から離れる方向に)巻かれている場合に有用である。つまり、この場合に、負極板420の端縁420aの位置をY軸方向において接合部425と離間させることで、端縁420aの付近から侵入するコンタミネーションに起因する微短絡等の発生を抑制する効果が得られる。
【0113】
また、本実施の形態では、蓄電素子10を、電極体400を1つのみ備えているが、蓄電素子10が備える電極体400の数は2以上であってもよい。例えば、蓄電素子10が電極体400を2つ備える場合、集電体120は、2つの電極体400と接合される4つの脚部122を有してもよい。
【0114】
また、集電体120が有する脚部122の数は2には限定されない。集電体120は、電極体400の負極側端部と接合される少なくとも1つの脚部122を有すれよい。
【0115】
また、上記実施の形態に記載された構成を任意に組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【0116】
また、本発明は、上記説明された蓄電素子として実現することができるだけでなく、当該蓄電素子が備える電極体400としても実現することができる。また、本発明は、当該蓄電素子を複数備える蓄電装置としても実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明は、リチウムイオン二次電池などの蓄電素子等に適用できる。
【符号の説明】
【0118】
10 蓄電素子
100 容器
110 蓋体
111 本体
120、130 集電体
120a、130a 溶接痕
121 端子接続部
121a 貫通孔
122 脚部
200 負極端子
300 正極端子
400、400a 電極体
401 最内周
402a、402b 湾曲部
410 正極板
410a、420a 端縁
411 正極基材層
411a、421a 活物質未塗工部
414 正極合材層
420 負極板
421 負極基材層
424 負極合材層
425 接合部
430、450 セパレータ
480 芯材
500 治具
600 巻回装置
610 回転体
700 ガイド装置
710 ガイド部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11