(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
H01L 41/047 20060101AFI20220412BHJP
H01L 41/09 20060101ALI20220412BHJP
H01L 41/083 20060101ALI20220412BHJP
H01L 41/187 20060101ALI20220412BHJP
H01L 41/18 20060101ALI20220412BHJP
H01L 41/317 20130101ALI20220412BHJP
H01L 41/293 20130101ALI20220412BHJP
H01L 41/297 20130101ALI20220412BHJP
【FI】
H01L41/047
H01L41/09
H01L41/083
H01L41/187
H01L41/18
H01L41/317
H01L41/293
H01L41/297
(21)【出願番号】P 2018560374
(86)(22)【出願日】2017-12-26
(86)【国際出願番号】 JP2017046573
(87)【国際公開番号】W WO2018128121
(87)【国際公開日】2018-07-12
【審査請求日】2020-09-23
(31)【優先権主張番号】P 2017000165
(32)【優先日】2017-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017000166
(32)【優先日】2017-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017000167
(32)【優先日】2017-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】森本 翔太
(72)【発明者】
【氏名】権 義哲
(72)【発明者】
【氏名】入江 達彦
(72)【発明者】
【氏名】近藤 孝司
【審査官】宮本 博司
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-296049(JP,A)
【文献】特開2016-046953(JP,A)
【文献】特開2010-226949(JP,A)
【文献】特表2011-507221(JP,A)
【文献】国際公開第2016/031137(WO,A1)
【文献】特開2008-277729(JP,A)
【文献】特開2015-189776(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 41/047
H01L 41/09
H01L 41/083
H01L 41/187
H01L 41/18
H01L 41/317
H01L 41/293
H01L 41/297
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧印加により体積変化を生じる圧電物質と内部電極とが交互に積層され、前記内部電極が互い違いに正電極、負電極となるように配置された構造を有する積層型圧電アクチュエータにおいて、正電極どうし、および負電極どうしを接続する側面電極に、伸縮性のある導体組成物を用い
、
前記伸縮性のある導体組成物が、導電性粒子と、エラストマーを90質量%以上含むバインダー樹脂との混合物であり、
前記エラストマーが、天然ゴム(NR)、合成天然ゴム(イソプレンゴム)(IR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、ニトリルゴム(NBR)、エチレン・プロピレンゴム(EPM、EPDM)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(ハイパロン)(CSM)、フッ素ゴム(FKM)、多硫化ゴム(T)から選択される少なくとも一種のゴムを含有する事を特徴とする積層型圧電アクチュエータ。
【請求項2】
前記導電性粒子が、中心径が0.08μm~25μmの範囲にある金属粒子を含む事を特徴とする請求項1
に記載の積層型圧電アクチュエータ。
【請求項3】
前記側面電極を構成する導体組成物が、3~35体積%の自由体積を有する事を特徴とする請求項1
または請求項
2に記載の積層型圧電アクチュエータ。
【請求項4】
対向する一対の電極に誘電弾性体を挟み、該一対の電極間に電圧を印加することにより前記誘電弾性体を変形させる誘電アクチュエータであって、前記電極に伸縮性のある導体組成物を用い
、
前記伸縮性のある導体組成物が、導電性粒子と、エラストマーを90質量%以上含むバインダー樹脂との混合物であり、
前記エラストマーが、天然ゴム(NR)、合成天然ゴム(イソプレンゴム)(IR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、ニトリルゴム(NBR)、エチレン・プロピレンゴム(EPM、EPDM)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(ハイパロン)(CSM)、フッ素ゴム(FKM)、多硫化ゴム(T)から選択される少なくとも一種のゴムを含有することを特徴とする誘電アクチュエータ。
【請求項5】
前記導電性粒子が、中心径が0.08μm~25μmの範囲にある金属粒子を含む事を特徴とする請求項
4に記載の積層型誘電アクチュエータ。
【請求項6】
前記
電極を構成する導体組成物が、3~35体積%の自由体積を有する事を特徴とする請求項
4または請求項
5に記載の積層型誘電アクチュエータ。
【請求項7】
電極と誘電弾性体とが交互に積層され、前記
電極が互い違いに正電極、負電極となるように配置された構造を有する請求項
4から請求項
6のいずれかに記載の誘電アクチュエータ。
【請求項8】
前記、正電極どうし、および負電極どうしを接続する
電極に、伸縮性のある導体組成物を用いた事を特徴とする請求項
4から請求項
7のいずれかに記載の誘電アクチュエータ。
【請求項9】
伸縮性のある導体
組成物で構成されたことを特徴とするインダクタに電流を通じることにより発生する電磁力を用いて、インダクタ自体を変形させ
、
前記伸縮性のある導体組成物が、導電性粒子と、エラストマーを90質量%以上含むバインダー樹脂との混合物であり、
前記エラストマーが、天然ゴム(NR)、合成天然ゴム(イソプレンゴム)(IR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、ニトリルゴム(NBR)、エチレン・プロピレンゴム(EPM、EPDM)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(ハイパロン)(CSM)、フッ素ゴム(FKM)、多硫化ゴム(T)から選択される少なくとも一種のゴムを含有することを特徴とする電磁誘導アクチュエータ。
【請求項10】
前記導電性粒子が、中心径が0.08μm~25μmの範囲にある金属粒子を含む事を特徴とする請求項
9に記載の電磁誘導アクチュエータ。
【請求項11】
前記伸縮性のある導体組成物が、3~35体積%の自由体積を有する事を特徴とする請求項
9または請求項
10に記載の電磁誘導アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアクチュエータに関し、さらに詳しくは電極材料として伸縮性導体組成物を用いたアクチュエータに関し、さらに詳しくは圧電型、誘電型、電磁誘導型から選択される少なくとも一つのアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明における第1の態様は、圧電現象を利用したアクチュエータに関し、さらに詳しくは、圧電物質と内部電極とを交互に積層した積層型圧電アクチュエータに関する。
近年、圧電アクチュエータには、低電圧で高い変位を得るために、厚みの小さな圧電セラミックと内部電極層とを交互に多数積層して一体焼成させたセラミック積層体が用いられている。具体的には、圧電セラミックよりなるセラミック層としては、厚みが20~200μmの薄板を用い、内部電極層と交互に積層するセラミック層の枚数は100~700枚程度に達している。
【0003】
かかる構造の圧電アクチュエータにおいては、一体焼成構造であるので、積層数の増加に伴い、作動時に作動方向の動作を妨げる方向の内部応力が増大する。この作動時の内部応力が増大すると、セラミック積層体内部にクラックが発生し、その結果として変位量等の製品特性の低下やショートの発生等による製品信頼性の低下などが生じる場合がある。
特許文献1には、このタイプの積層型圧電アクチュエータの一例が開示されている。外発明には、セラミック積層体の内部応力に起因する問題の対策として、最終積層数よりも積層数の少ないセラミック積層体(ピエゾスタック)を接着剤によって接着する構造、即ち分割接着構造の積層型圧電アクチュエータが開示されている。
【0004】
しかしながら、このようにピエゾスタックを分割した場合でも、圧電アクチュエータの作動に伴い、内部電極層どうしを積層方向に接続するための側面電極に加わる応力低減することは困難であった。
側面電極は一般に焼結型の導電性ペーストないしは熱硬化型の導電性ペーストにて形成されるが、かかるペーストの硬化物は硬く脆いために、繰り返し伸縮応力が加わると、側面電極へのクラック生成、クラックによる導通不良、またクラックから脱落した電極片により、近接する電気回路を短絡するなどのトラブルが懸念される。
また、側面電極が硬く脆いために、圧電アクチュエータ自体の動作を阻害し、アクチュエータの変位を小さく制限してしまう事あった。
【0005】
本発明における第2の態様は、誘電体に電圧を印加した際の誘電体の体積変化を利用したアクチュエータに関する。
弾性誘電材料(弾性絶縁材料)を一対の電極で挟み、電極間へ高電圧を印加すると弾性誘電材料内に分極が発生し、対向する電極表面の一方にプラス電荷が蓄積し、他方にマイナス電荷が蓄積する。これは所謂コンデンサである。プラスとマイナスの電荷の間にはクーロン力により引力が生じる。このクーロン力によって電極同士が引き合って弾性誘電材料の厚さが縮まる方向への変位と収縮応力とが生じる。同時に誘電材料の面方向には伸張する変位と力とが発生する。かかる現象を利用した誘電アクチュエータの例が特許文献2に記載されている。
【0006】
かかる構造の誘電アクチュエータを積層構造とすることによりさらに変位と力を益子とが期待できる。特許文献1に記載されている誘電アクチュエータは、このタイプの基本的な構成を示している。誘電アクチュエータにおいては、電極に蓄積する電荷を増やすことによりクーロン引力を高めることができる。駆動電圧に制限がある場合には、誘電弾性体の誘電率が高めることによって、多くの分極を生じせしめることができ、蓄積電荷を増やすことが出来る。また、印可電圧が高い方が、蓄積電荷は増加し、クーロン力は大きくなる。しかしながら、蓄積電荷の増加は、電極間の絶縁破壊のリスクを高めることに直結する。
当該文献では擬似的に誘電弾性体の誘電率を高めるために導電性カーボンを練り込んだ誘電弾性体を用い、導電性カーボンを練り込む故に低下する絶縁性をカバーするために、別途、層間に高絶縁の弾性体を挟む構造としている。
【0007】
しかしながら、このようにして絶縁性を高めた場合、電極間に低誘電率の層が介在してしまうため、実効的な誘電率は低下してしまう。また、一般に電極材料は金属であるために、誘電弾性体の面方向への変形は電極金属により拘束されており、誘電弾性体内での内部応力は増加するものの、変位量としては制限されてしまい、満足な変位を得ることができなかった。
【0008】
本発明における第3の態様は、インダクタに電流を通ずることにより生じる電磁力による、インダクタ自体の変形を利用したアクチュエータに関する。
電磁誘導アクチュエータは、電流によって生じる磁力を用いるアクチュエータである。この種のアクチュエータは古くから、モーター、インダクタとして応用されてきた。これまでに知られている電磁誘導アクチュエータは、あらかじめ、水平運動ないし回転運動が行えるように設定されたアーマチュアを電磁力により動かすことにより動作する。
電磁力はアーマチュアの駆動だけでなく、電磁力を生じ刺せるコイル自体に対しても応力を生じさせる。通常、かかる電磁力によるコイルの変形は、アクチュエータ自体の構造的な劣化に繋がるため、コイルには変形を抑制するための剛性が求められる。本発明はかかるコイルに加わる電磁力によるコイル自体の変形を積極的に用いるアクチュエータである。このような技術思想によるアクチュエータは実用化されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2008-218864
【文献】特開2010-68667
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は伸縮性導体組成物をアクチュエータの電極ないし導体部分に適用することにより、新規なアクチュエータを提供することにある。
本発明における第1の態様は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、アクチュエータの動作に追随可能で、かつ、アクチュエータの動作を阻害しない側面電極を有する積層型圧電アクチュエータを提供しようとするものである。
本発明における第2の態様はかかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、アクチュエータの動作に追随可能で、かつ、アクチュエータの動作を阻害しない電極を有する誘電アクチュエータを提供しようとするものである。
本発明における第3の態様はかかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、変形自由度が大きい導体材料を用いる事により、通電によりコイル自体を変形させる新規な電磁誘導アクチュエータを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明は以下の構成を有する。
[1] 電圧印加により体積変化を生じる圧電物質と内部電極とが交互に積層され、前記内部電極が互い違いに正電極、負電極となるように配置された構造を有する積層型圧電アクチュエータにおいて、正電極どうし、および負電極どうしを接続する側面電極に、伸縮性のある導体組成物を用いた事を特徴とする積層型圧電アクチュエータ。
[2] 前記伸縮性のある導体組成物が、導電性粒子と、エラストマーを90質量%以上含むバインダー樹脂との混合物である事を特徴とする[1]に記載の積層型圧電アクチュエータ。
[3] 前記エラストマーが、天然ゴム(NR)、合成天然ゴム(イソプレンゴム)(IR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、ニトリルゴム(NBR)、エチレン・プロピレンゴム(EPM、EPDM)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(ハイパロン)(CSM)、アクリルゴム(ACM)、ウレタンゴム(U)、シリコーンゴム(Q)、フッ素ゴム(FKM)、多硫化ゴム(T)から選択される少なくとも一種のゴムを含有することを特徴とする[1]または[2]に記載の積層型圧電アクチュエータ。
[4] 前記導電性粒子が、中心径が0.08μm~25μmの範囲にある金属粒子を含む事を特徴とする[1]から[3]のいずれかに記載の積層型圧電アクチュエータ。
[5] 前記側面電極を構成する導体組成物が、3~35体積%の自由体積を有する事を特徴とする[1]から[4]のいずれかに記載の積層型圧電アクチュエータ。
【0012】
[6] 対向する一対の電極に誘電弾性体を挟み、該一対の電極間に電圧を印加することにより前記誘電弾性体を変形させる誘電アクチュエータであって、前記電極に伸縮性のある導体組成物を用いたことを特徴とする誘電アクチュエータ。
[7] 前記伸縮性のある導体組成物が、導電性粒子と、エラストマーを90質量%以上含むバインダー樹脂との混合物である事を特徴とする[6]に記載の積層型誘電アクチュエータ。
[8] 前記エラストマーが、天然ゴム(NR)、合成天然ゴム(イソプレンゴム)(IR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、ニトリルゴム(NBR)、エチレン・プロピレンゴム(EPM、EPDM)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(ハイパロン)(CSM)、アクリルゴム(ACM)、ウレタンゴム(U)、シリコーンゴム(Q)、フッ素ゴム(FKM)、多硫化ゴム(T)から選択される少なくとも一種のゴムを含有することを特徴とする[6]または[7]に記載の積層型誘電アクチュエータ。
[9] 前記導電性粒子が、中心径が0.08μm~25μmの範囲にある金属粒子を含む事を特徴とする[6]から[8]のいずれかに記載の積層型誘電アクチュエータ。
[10] 前記側面電極を構成する導体組成物が、3~35体積%の自由体積を有する事を特徴とする[6]から[9]のいずれかに記載の積層型誘電アクチュエータ。
[11] 電極と誘電弾性体とが交互に積層され、前記内部電極が互い違いに正電極、負電極となるように配置された構造を有する[6]から[10]のいずれかに記載の誘電アクチュエータ。
[12] 前記、正電極どうし、および負電極どうしを接続する側面電極に、伸縮性のある導体組成物を用いた事を特徴とする[6]から[11]のいずれかに記載の誘電アクチュエータ。
【0013】
[13] 伸縮性のある導体材料で構成されたことを特徴とするインダクタに電流を通じることにより発生する電磁力を用いて、インダクタ自体を変形させることを特徴とする電磁誘導アクチュエータ。
[14] 前記伸縮性のある導体組成物が、導電性粒子と、エラストマーを90質量%以上含むバインダー樹脂との混合物である事を特徴とする[13]に記載の電磁誘導アクチュエータ。
[15] 前記エラストマーが、天然ゴム(NR)、合成天然ゴム(イソプレンゴム)(IR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、ニトリルゴム(NBR)、エチレン・プロピレンゴム(EPM、EPDM)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(ハイパロン)(CSM)、アクリルゴム(ACM)、ウレタンゴム(U)、シリコーンゴム(Q)、フッ素ゴム(FKM)、多硫化ゴム(T)から選択される少なくとも一種のゴムを含有することを特徴とする[13]または[14]に記載の電磁誘導アクチュエータ。
[16] 前記導電性粒子が、中心径が0.08μm~25μmの範囲にある金属粒子を含む事を特徴とする[13]から[15]のいずれかに記載の電磁誘導アクチュエータ。
[17] 前記伸縮性のある導体組成物が、3~35体積%の自由体積を有する事を特徴とする[13]から[16]のいずれかに記載の電磁誘導アクチュエータ。
【0014】
さらに本発明は以下の構成を有することが好ましい。
[18] 伸縮性のある導体からなる層と伸縮性のある絶縁体からなる層が、ロール形状に共巻きされた構造を有する[13]から[17]のいずれかに記載の電磁誘導アクチュエータ。
[19] 伸縮性のある導体からなる層と伸縮性のある絶縁体からなる層が、鉄心を中心に共巻きされた構造を有する[13]から[18]のいずれかに記載の電磁誘導アクチュエータ。
【発明の効果】
【0015】
本発明における第1の態様では、積層型圧電アクチュエータの側面電極に伸縮性のある導体組成物(伸縮性導体と短縮表記する)、好ましくは導電性粒子とエラストマーの複合体である伸縮性導体、さらに好ましくは内部に自由体積を有する伸縮性導体を採用することにより、側面電極の耐久性を改善し、さらに側面電極が積層型圧電アクチュエータの動作を阻害しないために、積層型圧電アクチュエータの動作域の改善も同時に実現するものである。
【0016】
伸縮性導体内部に自由体積を有する事により、伸縮性導体に圧縮歪みが加わった際に見かけの体積収縮を生じせしめることができ、伸縮性導体に加わる内部応力を低減することができる。側面電極である伸縮性導体の内部応力は、積層型圧電アクチュエータの動作阻害に直結するため、側面導体の収縮時の内部応力低減の意味合いは大きい。
かかる自由体積を内部圧縮することによる収縮は、側面電極が導電性粒子とエラストマーの複合体で構成される事により実現される。このような複合導体における電気伝導は、導電性粒子の接触連鎖によって実現されているため、導電性粒子に金属粒子を使った場合でも、バルク金属に比較すると1桁ないし2桁以上、比抵抗が高くなることが技術常識である。したがって側面電極の抵抗値も高めになる点は避けられないが、電圧駆動であり、電流が流れない、すなわち入力インピーダンスが極めて高い素子である圧電素子にとっては問題にならない。
【0017】
本発明における第2の態様では誘電アクチュエータの電極に伸縮性のある導体組成物(伸縮性導体と短縮表記する)、好ましくは導電性粒子とエラストマーの複合体である伸縮性導体、さらに好ましくは内部に自由体積を有する伸縮性導体を採用することにより、電極の耐久性を改善し、さらに電極が誘電アクチュエータの動作を阻害しないために、誘電アクチュエータの動作域の改善も同時に実現するものである。
さらに本発明では、誘電アクチュエータを積層した構造を有する積層型誘電アクチュエータにおいて、層間電極および、または側面電極に伸縮性のある導体組成物(伸縮性導体と短縮表記する)、好ましくは導電性粒子とエラストマーの複合体である伸縮性導体、さらに好ましくは内部に自由体積を有する伸縮性導体を採用することにより、側面電極の耐久性を改善し、さらに側面電極が積層型誘電アクチュエータの動作を阻害しないために、積層型誘電アクチュエータの動作域の改善も同時に実現するものである。
【0018】
伸縮性導体内部に自由体積を有する事により、伸縮性導体に圧縮歪みが加わった際に見かけの体積収縮を生じせしめることができ、伸縮性導体に加わる内部応力を低減することができる。電極(層間電極およびまたは側面電極の場合を含む)である伸縮性導体の内部応力は、誘電アクチュエータの動作阻害に直結するため、導体の収縮時の内部応力低減の意味合いは大きい。
【0019】
本発明における第3の態様では、変形自由度の大きい導体を用いてコイルを構成することにより、通電によりコイル自体が変形することを利用したアクチュエータである。本発明は好ましくは導電性粒子とエラストマーの複合体である伸縮性導体、さらに好ましくは内部に自由体積を有する伸縮性導体を採用することにより、通電によりコイルが収縮した際に十分な変形自由度。特に圧縮変形自由度を確保できる。従来の導体材料には圧縮変形自由度が乏しいため、コイル自体の電磁収縮力を実用的なアクチュエータとして利用することはできない。
伸縮性導体内部に自由体積を有する事により、伸縮性導体に圧縮歪みが加わった際に見かけの体積収縮を生じせしめることができ、伸縮性導体に加わる内部応力を低減することができる。
【0020】
本発明のアクチュエータは、一般に金属部材が用いられる事が多い導体部分に伸縮性導体組成物を用いている。アクチュエータはその動作に伴って、かかる金属部分が動くことにより、振動ないし動作音を発するが、本発明では伸縮性導体組成物に振動吸収機能があるため、低振動で無騒音のアクチュエータを実現する事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明における積層型圧電アクチュエータの構成を示す概略模式図である。
【
図2】は、本発明における誘電アクチュエータ(単層)の構成を示す概略模式図である。
【
図3】は、本発明における積層型誘電アクチュエータの構成を示す概略模式図である。
【
図4】
図4は、本発明における電磁誘導アクチュエータの一例(円筒型)の構成を示す概略模式図である。
【
図5】
図5は、本発明における電磁誘導型アクチュエータの一例(平面コイル型)の構成を示す概略模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の第1の態様を
図1により説明する。
本発明の第1の態様における積層型圧電アクチュエータは、
図1に示すように電圧印加により体積変化を生じる1.圧電体(圧電物質)と2.内部電極(層間電極)とが交互に積層され、前記内部電極が互い違いに正電極、負電極となるように配置された構造を有する積層型圧電アクチュエータである。
本発明の第1の態様の電圧印加により体積変化を生じる圧電物質(圧電体)としては、ベルリナイト(燐酸アルミニウム:AlPO4)、蔗糖、石英(水晶)(SiO2)、ロッシェル塩(酒石酸カリウム-ナトリウム)(KNaC4H4O6)、トパーズ(黄玉、ケイ酸塩)(Al2SiO4(F,OH)2)、電気石(トルマリン)グループ鉱物、オルト(正)燐酸ガリウム(GaPO4)、ランガサイト(La3Ga5SiO14)、ペロフスカイト(perovskite チタン酸カルシウム:CaTiO3)、タングステン-青銅構造を持つセラミックス、チタン酸バリウム(BaTiO3)、チタン酸鉛(PbTiO3)、PZT:チタン酸ジルコン酸鉛(ジルコニウム酸-チタン酸鉛)(Pb[ZrxTi1-x]O3 0<x<1 混晶)、ニオブ酸カリウム(KNbO3)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、タングステン酸ナトリウム(NaXWO3)、酸化亜鉛(ZnO、Zn2O3)、Ba2NaNb5O5、Pb2KNb5O15、リチウムテトラボレート(Li2B4O7)、 ニオブ酸ナトリウムカリウム((K,Na)NbO3)、ビスマスフェライト(BiFeO3)、ニオブ酸ナトリウム(NaNbO3)、チタン酸ビスマス(Bi4Ti3O12)、チタン酸ビスマスナトリウム(Na0.5Bi0.5TiO3)、ポリフッ化ビニリデン(1,1-2フッ化エタン重合体、PVDF)、窒化アルミニウム(AlN)、リン酸ガリウム(GaPO4)、ガリウム砒素(GaAs)などを例示することができる。
かかる圧電物質(ピエゾ物質)のなかでもチタン酸バリウム、PZT(ジルコン酸チタン酸鉛)等の圧電セラミックスの使用が好ましい。
【0023】
本発明の第1の態様における内部電極層としては、導電性の金属電極を採用することができる。使用できる金属としては、銅、アルミ、ニッケル、金、銀、クロム、ニッケル-クロム合金、タングステン、モリブデン、黄銅、青銅、白銅、プラチナ、ロジウム、などの箔ないしは真空薄膜導体、あるいは粉体焼結による厚膜導体を用いる事ができる。また、積層圧電体の製造プロセスにおいて比較的高温を用いない場合には、導電粒子とバインダー樹脂からなるポリマー型厚膜導体を用いても良い。
【0024】
本発明における第2の態様を図により説明する。
図2は本発明の第2の態様における誘電アクチュエータに基本構成である。すなわち誘電弾性体11を電極10にて挟んだ形で有り、所謂平行片晩方のコンデンサと同じ構造である。
図3は本発明の第2の態様において、誘電アクチュエータを積層構造とした積層型誘電アクチュエータの構成図である。電圧印加により体積変化を生じる誘電弾性体11は、内部電極(層間電極)により交互に挟まれており、前記内部電極が互い違いに正電極、負電極となるように配置されており、それぞれが側面電極13と側面電極14にて連結されている。
【0025】
本発明の第2の態様の電圧印加により体積変化を生じる誘電物質(誘電体)としては、ゴム弾性を示すエラストマーを用いる事ができる。本発明の第2の態様におけるエラストマーとしては、天然ゴム(NR)、合成天然ゴム(イソプレンゴム)(IR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、ニトリルゴム(NBR)、エチレン・プロピレンゴム(EPM、EPDM)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(ハイパロン)(CSM)、アクリルゴム(ACM)、ウレタンゴム(U)、シリコーンゴム(Q)、フッ素ゴム(FKM)、多硫化ゴム(T)などを用いる事ができる。本発明の第2の態様では、例示されたエラストマーから選択される少なくとも一種のゴムを含有することが好ましい。
本発明の第2の態様では、これらエラストマーの中でも、ニトリル基含有ゴム、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴムが好ましく、ニトリル基含有ゴムが特に好ましい。本発明の第2の態様で好ましい弾性率の範囲は2~480MPaであり、さらに好ましく3~240MPa、なお好ましくは4~120MPaの範囲である。これらのゴム材料は、ニトリル基あるいはハロゲン基により大きな分極を有するため比誘電率が高い。
【0026】
本発明の第2の態様では、エラストマーにさらに強誘電体のフィラーを配合することにより、実効的な誘電率を高めることが出来る。本発明の第2の態様において用いられる強誘電体としては、ベルリナイト(燐酸アルミニウム:AlPO4)、蔗糖、石英(水晶)(SiO2)、ロッシェル塩(酒石酸カリウム-ナトリウム)(KNaC4H4O6)、トパーズ(黄玉、ケイ酸塩)(Al2SiO4(F,OH)2)、電気石(トルマリン)グループ鉱物、オルト(正)燐酸ガリウム(GaPO4)、ランガサイト(La3Ga5SiO14)、ペロフスカイト(perovskite チタン酸カルシウム:CaTiO3)、タングステン-青銅構造を持つセラミックス、チタン酸バリウム(BaTiO3)、チタン酸鉛(PbTiO3)、PZT:チタン酸ジルコン酸鉛(ジルコニウム酸-チタン酸鉛)(Pb[ZrxTi1-x]O3 0<x<1 混晶)、ニオブ酸カリウム(KNbO3)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、タングステン酸ナトリウム(NaXWO3)、酸化亜鉛(ZnO、Zn2O3)、Ba2NaNb5O5、Pb2KNb5O15、リチウムテトラボレート(Li2B4O7)、 ニオブ酸ナトリウムカリウム((K,Na)NbO3)、ビスマスフェライト(BiFeO3)、ニオブ酸ナトリウム(NaNbO3)、チタン酸ビスマス(Bi4Ti3O12)、チタン酸ビスマスナトリウム(Na0.5Bi0.5TiO3)、ポリフッ化ビニリデン(1,1-2フッ化エタン重合体、PVDF)、窒化アルミニウム(AlN)、リン酸ガリウム(GaPO4)、ガリウム砒素(GaAs)などを例示することができる。
かかる誘電物質(ピエゾ物質)のなかでもチタン酸バリウム、PZT(ジルコン酸チタン酸鉛)等の誘電セラミックスの使用が好ましい。
本発明の第2の態様ではこれらの強誘電体を中心径が0.1~10μm程度の粉体フィラーとし、エラストマー樹脂と強誘電物質の比が、3~70質量部/97~30質量部とんるように混練配合して、ハイブリッド化して用いる事ができる。
【0027】
本発明の第2の態様の誘電弾性体の弾性率は、好ましくは1MPa以上1000MPa以下である。
本発明の第2の態様に用いられる誘電弾性体は、好ましくは強誘電体粒子と柔軟性樹脂、好ましくはエラストマーを90質量%以上含むバインダー樹脂、必要に応じて加えられる溶剤を混練混合しペースト化した後に印刷、ディップコート、ディスペンスなどで所定の形状を付与し、乾燥硬化することによって得ることができる。またあらかじめペースト化した後に、フィルム状ないしシート状に成型し、得られたフィルムないしシートに所定形状を与えた後に貼り付けるなどの方法によっても得ることができる。
【0028】
本発明の第2の態様において、特に誘電弾性体の厚さ方向への変位を主として用いるアクチュエータの場合には電極、ないし内部電極としては、導電性の金属電極を採用することができる。使用できる金属としては、銅、アルミ、ニッケル、金、銀、クロム、ニッケル-クロム合金、タングステン、モリブデン、黄銅、青銅、白銅、プラチナ、ロジウム、などの箔ないしは真空薄膜導体、あるいは粉体焼結による厚膜導体を用いる事ができる。また、積層誘電体の製造プロセスにおいて比較的高温を用いない場合には、導電粒子とバインダー樹脂からなるポリマー型厚膜導体を用いても良い。
【0029】
本発明の第3の態様を図により説明する。
図4は伸縮性のある導体からなる層と伸縮性のある絶縁体からなる層を、ロール状に共巻きすることにより構成された円筒型の電磁誘導アクチュエータの一例である。本構成では通電により円筒の直径方向への収縮と高さ方向での収縮が生じる。よって、たとえば円筒の内側にホース状空間を設けてチューブを通ずれば、通電時にチューブを圧縮して脈状流動を作ることができる。また内部の空間を袋状として非圧縮性の液体を満たせば、通電によりた袋内の液体を吐出するポンプとして応用することができる。もちろんアクチュエータ自体の直径方向ないし高さ方向への収縮を直接的に機械駆動に利用することもできる。
【0030】
図5は伸縮性のある基材上に、伸縮性のある導体にて平面上にコイルを形成した平面コイル型電磁誘導アクチュエータである。かかる構成では、通電によりコイルの面方向への収縮が顕著に生じる。平面コイル型の場合はアクチュエータ自体をシートと見なせるため、シートに見なしたアクチュエータを対象物に巻き付けることにより締め付け、ないし圧縮などの変形を加えることが可能となる。
円筒型、平面コイル型、いずれも近接して、好ましくはコイル中心に鉄芯を入れることにより変形量を増やすことができる。
【0031】
本発明の特徴は、電極ないしコイル、配線に伸縮性導体瀬尾生物を用いる事にある。
本発明の第一の態様における積層型圧電アクチュエータの特徴は側面電極に伸縮性導体を用いる事にある。
本発明の第2の態様における誘電アクチュエータの特徴は、誘電アクチュエータの電極としては伸縮性導体を用いる事、また積層型誘電アクチュエータの場合の層間電極並にに側面電極はとしては好ましくは伸縮性導体を用いる事である。
本発明における電磁誘導アクチュエータの特徴は導体材料、特にコイルの導体材料として伸縮性導体を用いる事にある。
【0032】
本発明における伸縮性導体としては10%以上の伸張、ないし3%以上の圧縮時にも導電性を維持する導体を云う。本発明の伸縮性導体は、好ましくは、少なくとも金属粒子、引張弾性率が1MPa以上1000MPa以下の柔軟性樹脂、から構成される。
本発明に用いられる伸縮性導体は、導電性粒子と柔軟性樹脂、好ましくはエラストマーを90質量%以上含むバインダー樹脂、必要の応じて加えられる溶剤を混練混合しペースト化した後に印刷、ディップコート、ディスペンスなどで所定の形状を付与し、乾燥硬化することによって得ることができる。またあらかじめペースト化した後に、フィルム状ないしシート状に成型し、得られたフィルムないしシートに所定形状を与えた後に貼り付けるなどの方法によっても得ることができる。
本発明では柔軟性樹脂として好ましくはエラストマーを90質量%以上含むバインダー樹脂を用いる事ができる。エラストマーとはゴム弾性を示す高分子材料の総称である。
【0033】
本発明の導電性粒子は、比抵抗が1×10-1Ωcm以下の物質からなる、粒子径が100μm以下の粒子である。比抵抗が1×10-1Ωcm以下の物質としては、金属、合金、カーボン、黒鉛、グラファイト、カーボンナノ粒子、フラーレン、カーボンナノチューブ、グラフェン片、ドーピングされた半導体、導電性高分子などを例示することができる。本発明で好ましく用いられる導電性粒子は銀、金、白金、パラジウム、銅、ニッケル、アルミニウム、亜鉛、鉛、錫などの金属、黄銅、青銅、白銅、半田などの合金粒子、銀被覆銅のようなハイブリッド粒、さらには金属メッキした高分子粒子、金属メッキしたガラス粒子、金属被覆したセラミック粒子などを用いることができる。
【0034】
本発明ではフレーク状銀粒子ないし不定形凝集銀粉を主体に用いることが好ましい。なお、ここに主体に用いるとは導電性粒子の90質量%以上用いることである。不定形凝集粉とは球状もしくは不定形状の1次粒子が3次元的に凝集したものである。不定形凝集粉およびフレーク状粉は球状粉などよりも比表面積が大きいことから低充填量でも導電性ネートワークを形成できるので好ましい。不定形凝集粉は単分散の形態ではないので、粒子同士が物理的に接触していることから導電性ネートワークを形成しやすいので、さらに好ましい。
【0035】
フレーク状粉の粒子径は特に限定されないが、動的光散乱法により測定した平均粒子径(50%D)が0.5~20μmであるものが好ましい。より好ましくは3~12μmである。平均粒子径が15μmを超えると微細配線の形成が困難になり、スクリーン印刷などの場合は目詰まりが生じる。平均粒子径が0.5μm未満の場合、低充填では粒子間で接触できなくなり、導電性が悪化する場合がある。
【0036】
不定形凝集粉の粒子径は特に限定されないが、光散乱法により測定した平均粒子径(50%D)が1~20μmであるものが好ましい。より好ましくは3~12μmである。平均粒子径が20μmを超えると分散性が低下してペースト化が困難になる。平均粒子径が1μm未満の場合、凝集粉としての効果が失われ、低充填では良導電性を維持できなくなる場合がある。
【0037】
本発明における非導電性粒子とは、有機ないし無機の絶縁性物質からなる粒子である。本発明の無機粒子は印刷特性の改善、伸縮特性の改善、塗膜表面性の改善を目的に添加され、シリカ、酸化チタン、タルク、アルミナ、硫酸バリウム等の無機粒子、樹脂材料からなるマイクロゲル等を利用できる。
【0038】
本発明におけるエラストマーとしては、天然ゴム(NR)、合成天然ゴム(イソプレンゴム)(IR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、ニトリルゴム(NBR)、エチレン・プロピレンゴム(EPM、EPDM)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(ハイパロン)(CSM)、アクリルゴム(ACM)、ウレタンゴム(U)、シリコーンゴム(Q)、フッ素ゴム(FKM)、多硫化ゴム(T)などを用いる事ができる。本発明では、例示されたエラストマーから選択される少なくとも一種のゴムを含有することが好ましい。
本発明では、これらエラストマーの中でも、ニトリル基含有ゴム、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴムが好ましく、ニトリル基含有ゴムが特に好ましい。本発明で好ましい弾性率の範囲は2~480MPaであり、さらに好ましく3~240MPa、なお好ましくは4~120MPaの範囲である。
【0039】
ニトリル基を含有するゴムは、ニトリル基を含有するゴムやエラストマーであれば特に限定されないが、ニトリルゴムと水素化ニトリルゴムが好ましい。ニトリルゴムはブタジエンとアクリロニトリルの共重合体であり、結合アクリロニトリル量が多いと金属との親和性が増加するが、伸縮性に寄与するゴム弾性は逆に減少する。従って、アクリロニトリルブタジエン共重合体ゴム中の結合アクリロニトリル量は18~50質量%が好ましく、40~50質量%が特に好ましい。
【0040】
本発明では導電性粒子とエラストマーを90質量%以上含むバインダー樹脂、必要の応じて加えられる溶剤を混練混合し伸縮性導体形成用ペーストとしたのちに側面電極に加工することが好ましい。なおエラストマーのパーセンテージはバインダー樹脂の質量に対するエラストマーの質量非から求める。
本発明のバインダー樹脂にはエポキシ樹脂を配合できる。エポキシ樹脂とはエポキシ期を有する有機化合物で有り、好ましくはビスフェノールA型樹脂ないしはフェノールノボラック型樹脂を用いる事ができる。エポキシ化合物には硬化剤を配合できる。硬化剤としては公知のアミン化合物、ポリアミン化合物などを用いればよい。硬化剤を配合する場合、エポキシ樹脂とはエポキシ基含有化合物と硬化剤の総量とする。
また本発明のバインダー樹脂にはポリエステル樹脂、非架橋のポリエステルウレタン樹脂、フェノキシ樹脂、ガラス転移温度が20℃以下のアクリル樹脂、などを配合することができる。
これらエラストマー以外の樹脂成分はバインダー樹脂に対して10質量%未満に留めることが好ましく、さらに好ましくは5質量%未満である。
【0041】
本発明に用いられる伸縮性導体形成用ペーストは、必要に応じて溶剤を含有する。本発明における溶剤は、水または有機溶剤である。溶剤の含有量は、ペーストに求められる粘性によって適宜調査されるべきであるため、特に限定はされないが、概ね導電性粒子と柔軟性樹脂の合計質量を100した場合に30~80質量比が好ましい
本発明に使用される有機溶剤は、沸点が100℃以上、300℃未満であることが好ましく、より好ましくは沸点が130℃以上、280℃未満である。有機溶剤の沸点が低すぎると、ペースト製造工程やペースト使用に際に溶剤が揮発し、導電性ペーストを構成する成分比が変化しやすい懸念がある。一方で、有機溶剤の沸点が高すぎると、乾燥硬化塗膜中の残溶剤量が多くなり、塗膜の信頼性低下を引き起こす懸念がある。
【0042】
本発明における有機溶剤としては、シクロヘキサノン、トルエン、キシレン、イソホロン、γ-ブチロラクトン、ベンジルアルコール、エクソン化学製のソルベッソ100,150,200、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ターピオネール、ブチルグリコールアセテート、ジアミルベンゼン、トリアミルベンゼン、n-ドデカノール、ジエチレングリコール、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノアセテート、トリエチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコール、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコール、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレートなどが挙げられる。また、石油系炭化水素類としては、新日本石油社製のAFソルベント4号(沸点:240~265℃)、5号(沸点:275~306℃)、6号(沸点:296~317℃)、7号(沸点:259~282℃)、および0号ソルベントH(沸点:245~265℃)なども挙げられ、必要に応じてそれらの2種以上が含まれてもよい。このような有機溶剤は、伸縮性導体形成用ペーストが印刷などに適した粘度となるように適宜含有される。
【0043】
本発明に用いられる伸縮性導体形成用ペーストは、材料である導電性粒子、硫酸バリウム粒子、伸縮性樹脂、溶剤をディゾルバー、三本ロールミル、自公転型混合機、アトライター、ボールミル、サンドミルなどの分散機により混合分散することにより得ることができる。
【0044】
本発明に用いられる伸縮性導体形成用ペーストには、発明の内容を損なわない範囲で、印刷適性の付与、色調の調整、レベリング、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの公知の有機、無機の添加剤を配合することができる。
【0045】
本発明における伸縮性導体組成物は、3~35体積%の自由体積を有する事が好ましい。
ここに自由体積は伸縮性導体層の断面像から、ボイド部分、非ボイド部分の面積から得られる全断面積に対するボイド面積%を三次元に拡張し、厚さを単位長さと仮定して体積%に換算する。すなわち面積%の数値をそのまま体積%と読み替えることによって得られる。
自由体積は10~35体積%が好ましく、15~35体積%がさらに好ましい。かかる自由体積は、特に伸縮性導体に圧縮歪みが加わった際に見かけの体積収縮を生じせしめることができ、伸縮性導体に加わる内部応力を低減する作用を有する。
【0046】
本発明におけるエラストマーの配合量は、導電粒子と、好ましくは加えられる非導電性粒子と柔軟性樹脂の合計に対して7~35質量%であり、好ましくは9~28質量%、さらに好ましくは12~20質量%である。特に非球状の導電粒子であるフレーク状、ないしは凝集塊状の導電粒子をエラストマーをかかる配合比でペースト化することにより、所定の自由体積を伸縮性導体内に形成することが可能となる。
【0047】
本発明の第1の態様である積層型圧電アクチュエータ、別名ピエゾアクチュエータ、本発明の第2の態様である誘電アクチュエータ、本発明の第3の態様である電磁誘導アクチュエータは、半導体. 露光装置の極微動用ステージ、精密位置決めプローブ、走査. トンネル顕微鏡(STM)や原子間力顕微鏡(AFM)などのプロー. ブ駆動用など、主に精密位置制御を必要とする産業機器を中心に使用されている。また最近では 携帯電話やデジタルカメラのカメラモジュール (オートフォーカス機構、ズーム機構、手振れ補正機構)、ハードディスクドライブ (ヘッド位置制御)、光学機器 (光軸調整、焦点調整)、モーター (インパクトリニアモーター、超音波リニアモーター)としても使用されている。これらの他、超精密微細研磨ツール、小型タイプメカトランス、高速角度調整機構、微小荷重載荷・検出装置、与圧機構、ポンプ、位置決めステージ機構、パンチングマシン、インクジェットのヘッド、燃料などの液体のイジェクタなどとしても使用されている。
本発明のアクチュエータは、これらの用途はもちろんのこと、さらに大きな変位を必要とする用途にも応用が可能である。
【実施例】
【0048】
以下、実施例を示し、本発明をより詳細かつ具体的に説明する。なお実施例中の評価結果などは以下の方法にて測定した。
【0049】
<ニトリル量>
得られた柔軟性樹脂をNMR分析して得られた組成比から、モノマーの質量比による質量%に換算した。
<ムーニー粘度>
島津製作所製 SMV-300RT「ムーニービスコメータ」を用いてムーニー粘度を測定した。
<弾性率>
樹脂材料(エラストマー)を厚さ200±20μmのシート状に加熱圧縮成形し、次いでISO 527-2-1Aにて規定されるダンベル型に打ち抜き、試験片とした。ISO 527-1に規定された方法で引っ張り試験を行って弾性率を求めた。
<平均粒子径>
堀場製作所製の光散乱式粒径分布測定装置LB-500を用いて平均粒子径を測定した。
【0050】
<比抵抗>
伸縮性導体をシート化し、幅10mm、長さ140mmにカットして試験片を作製した。自然状態(伸長率0%)の伸縮性導体シート試験片のシート抵抗と膜厚を測定し、比抵抗を算出した。膜厚はシックネスゲージ SMD-565L(TECLOCK社製)を用い、シート抵抗はLoresta-GP MCP-T610(三菱化学アナリテック社製)を用いて試験片4枚について測定し、その平均値を用いた。比抵抗は以下の式により算出した。
比抵抗(Ω・cm)=Rs(Ω□)×t(cm)
ここで、Rsはシート抵抗、tは膜厚を示す。
<空隙率>
積層型圧電アクチュエータをエポキシ樹脂にて包埋し、伸縮性導体からなる側面電極部分の断面観察できるようにカットし、カット面を研磨した後に、SEMによる断面観察を実施し、断面像から、伸縮性胴体部分のボイド部分の面積%を求め、厚さを単位長さと仮定して体積%を求めた。すなわち面積%をそのまま体積%に読み替えた。
【0051】
<変位>
電圧印可時のアクチュエータの動作を高速度カメラで撮影し、初期寸法に対する最大変化を測定し、初期寸法に対する%にて表示した。
<電極間絶縁抵抗>
アジレントテクノロジー社製高抵抗測定装置にて500V印可時、60秒後の電流値より、抵抗を求めた。
<静音特性>
以下の被験者による官能評価とした
年齢24才の健康な女性
年齢35才の健康な男性
年齢41才の健康な女性
年齢56才の健康な男性
いずれの被験者も健康診断に於ける聴覚試験では異常なしと診断されている。
【0052】
[製造例]
<柔軟性樹脂(合成ゴム材料)の重合>
攪拌機、水冷ジャケットを備えたステンレス鋼製の反応容器に、
ブタジエン 54質量部
アクリロニトリル 46質量部
脱イオン水 270質量部
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 0.5質量部
ナフタレンスルホン酸ナトリウム縮合物 2.5質量部
t-ドデシルメルカプタン 0.3質量部
トリエタノールアミン 0.2質量部
炭酸ナトリウム 0.1質量部
を仕込み、窒素を流しながら浴温度を15℃に保ち、静かに攪拌した。次いで過硫酸カリウム0.3質量部を脱イオン水19.7質量部に溶解した水溶液を30分間かけて滴下し、さらに20時間反応を継続した後、ハイドロキノン0.5質量部を脱イオン水19.5質量部に溶解した水溶液を加えて重合停止操作を行った。
【0053】
次いで、未反応モノマーを留去させるために、まず反応容器内を減圧し、さらにスチームを導入して未反応モノマーを回収し、NBRからなる合成ゴムラテックス(L1)を得た。
得られたラテックスに食塩と希硫酸を加えて凝集・濾過し、樹脂に対する体積比20倍量の脱イオン水を5回に分けて樹脂を脱イオン水に再分散、濾過を繰り返すことで洗浄し、空気中にて乾燥して柔軟性樹脂(エラストマー)(R1)を得た。(R1)の評価結果を表1に示す。
【0054】
以下仕込み原料、重合条件、洗浄条件などを変えて同様に操作を行い、表1に示す柔軟性樹脂(エラストマー)(R2)及び(R3)を得た。なお、表中の略号は以下の通りである。
NBR:アクロニトリルブタジエンゴム
SBR:スチレンブタジエンゴム(スチレン/ブタジエン=50/50質量%)
【0055】
【0056】
<凝集銀粒子>
凝集銀粒子(A)として不定形凝集銀粉(DOWAエレクトロニクス社製 G-35、平均粒子径6.0μm)を用いた。
フレーク銀粒子(B)としてAGC-A(福田金属箔粉工業社製、平均粒子径3.1μm)を用いた。
【0057】
<伸縮性導体シート形成用ペーストの調製>
表2の通りに、各成分を配合した後、3本ロールミルにて混練し伸縮性導体形成用ペースト[P1]~[P8]を得た。
同様に蘇生を変更して表2に示す、誘電弾性体形成用ペーストD1、伸縮性絶縁体形成用ペーストE1を得た。
なお、表2中、エポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂エピコート1001と硬化剤(脂肪族ポリアミン)の9/1(質量比)混合物である。
また添加剤のレベリング剤はBYK社製BYKETOL-OKである。
【0058】
得られた伸縮性導体形成用ペースト[P1]~[P8]をポリテトラフルオロエチレン樹脂製シート上にアプリケーターによりコーティングして製膜し、120℃で20分間乾燥し、厚さ50μmの伸縮性導体シートを形成した。得られた伸縮性導体シートについて比抵抗を求めた。結果を表2.に示す。
【0059】
【0060】
<実施例1>
以下のプロセスにより、
図1の構成を有する積層型圧電アクチュエータを製作した。
まず、圧電物質(圧電体)の主原料となる酸化鉛、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ニオブ、炭酸ストロンチウム等の粉末を所望の組成となるように秤量し、最終的な組成がPZT(ジルコン酸チタン酸鉛)となるように調製した。調製においては常法に従って、鉛の蒸発を考慮して、上記の混合比組成の化学量論比よりも鉛成分が1~2%過剰になるように調合した。調合された原料を混合機にて乾式混合し、その後800~950℃で仮焼し、仮焼粉を得た。
【0061】
次いで、仮焼粉に、イオン交換水、分散剤を加えて予備混合した後に、遊星型ボールミルにより湿式粉砕して粉砕粉としたする。粉砕粉を乾燥した後、溶剤、バインダー、可塑剤、分散剤等を加えて、ボールミルにより混合してスラリー化し、さらにスラリーを真空装置内で攪拌機により攪拌しながら真空脱泡および粘度調整を行った。
真空脱泡、粘度調整後のスラリーをドクターブレード装置により一定の厚みのグリーンシートに成形後、グリーンシート上に、焼成により内部電極(層間電極)となる銀・ラジウム焼成ペーストを所定のパターンにスクリーン印刷し、プレス機で打ち抜いて、所定の大きさ及び形状に成形し、電極層付きグリーンシートを得た。
【0062】
得られた電極層付きグリーンシートを所定枚数、
図1の構成に積層し、熱圧着後、脱脂し、温度900~1200℃のもとで焼成し、所望の形状に研磨して、厚さ方向に分極制御された積層圧電子を得た。得られた積層圧電子に
図1.の構成となるように、伸縮性導体形成用ペースト[P1]を塗布し、120℃にて30分間乾燥硬化し側面電極を形成し、積層型圧電アクチュエータ[A1]を得た。なお、同条件(同ロット)にて30個のアクチュエータを製作した。
【0063】
得られたアクチュエータ[A1]をエポキシ樹脂に包埋し、側面電極部の断面観察を行い、空隙率を求めた。結果を表3.に示す。
得られた積層型圧電アクチュエータ[A1]に、振幅50V、周波数20kHzの正弦交番電界を印加し、12時間のアクチュエータの連続動作試験を行い、試験後のアクチュエータの動作、および顕微鏡観察による側面電極の状態について表3.に示す。
【0064】
<実施例2~8、比較例1>
以下、伸縮性導体形成用ペースト[P1]を順次[P2]~[P9]に代えて積層型圧電アクチュエータ[A2]~[A9]を作製し、評価した。結果を表3.に示す。
表3に示すように、本発明の伸縮性導体を側面電極に用いた積層型圧電アクチュエータは、長時間の連続使用に耐える良好な特性を示すことが解る。一方で比較例においては、短時間で側面電極にクラックが生じ、実用性に乏しいことが理解される。
【0065】
【0066】
<実施例10>
以下のプロセスにより、
図2の構成を有する単層の誘電アクチュエータを製作した。
まず離型処理を行ったポリエステルフィルムを仮基材とし、先の製造例にて得られた伸縮性導体形成用ペーストP5を用いて、スクリーン印刷にて所定のパターンを印刷し乾燥硬化した。次いで得られた伸縮性導体層の上に誘電弾性体形成用ペーストD1を用いて印刷乾燥硬化を行い誘電弾性体層を形成し、さらに伸縮性導体形成用ペーストP5を用いて印刷乾燥硬化を行い電極層を形成し、三層構造のコンデンサを形成した。得られたコンデンサを離型ポリエステルフィルムから剥離し、所定形状となるように裁断し単層の誘電アクチュエータX0を得た。得られた誘電アクチュエータX0において、最初に形成した伸縮性導体層の厚さは15μm、誘電弾性体の層の厚さは22μm、最後に形成した伸縮性導体層の厚さは13μmであった。誘電アクチュエータA0の表裏の電極間の絶縁抵抗は>1×10
12 であった。当該誘電アクチュエータに、0~1000vの電圧を印加し、動作を確認した。
【0067】
<実施例11>
以下のプロセスにより、
図3に示す積層型の誘電アクチュエータを試作した。
製造例にて得られた誘電弾性体形成用ペーストを離型処理されたポリエステルフィルム上にドクターブレード装置により一定の厚みとなるようにコーティングし、乾燥工程を経て誘電弾性体グリーンシートを得たとなるようにに成形後、グリーンシート上に、内部電極(層間電極)となる伸縮性導体形成用ペーストP1を所定のパターンにスクリーン印刷し、プレス機で打ち抜いて、所定の大きさ及び形状に成形し、電極層付きグリーンシートを得た。
【0068】
得られた電極層付きグリーンシートを所定枚数、
図3の構成に積層し、熱圧着後、脱脂し、温度120℃にて追乾燥と熱処理を行い、所望の形状に成型して、厚さ方向に積層された積層コンデンサを得た。得られた積層コンデンサに
図3.の構成となるように、伸縮性導体形成用ペースト[P1]を塗布し、120℃にて30分間乾燥硬化し側面電極を形成し、積層型誘電アクチュエータ[X1]を得た。なお、同条件(同ロット)にて30個のアクチュエータを製作した。
【0069】
得られたアクチュエータ[X1]をエポキシ樹脂に包埋し、電極部の断面観察を行い、空隙率を求めた。結果を表4.に示す。
得られた積層型誘電アクチュエータ[X1]に、振幅500V、周波数5kHzの正弦交番電界を印加し、5時間のアクチュエータの連続動作試験を行い、試験後のアクチュエータの動作、および顕微鏡観察による電極の状態について表4.に示す。
【0070】
<実施例2~8、比較例>
以下、伸縮性導体形成用ペースト[P1]を順次[P2]~[P9]に代えて積層型誘電アクチュエータ[X2]~[X9]を作製し、評価した。結果を表4.に示す。
表4に示すように、本発明の伸縮性導体を側面電極に用いた積層型誘電アクチュエータは、大きな変位を示し、また長時間の連続使用に耐える良好な特性を示すことが解る。一方で比較例においては、変位が小さく、短時間で側面電極にクラックが生じ、実用性に乏しいことが理解される。
【0071】
【0072】
<実施例21>
以下のプロセスにより、
図4の構成を有する円筒型の電磁誘導アクチュエータを製作した。
まず離型処理を行ったポリエステルフィルムを仮基材とし、先の製造例にて得られた伸縮性導体形成用ペーストP1を用いて、スクリーン印刷にて所定のパターンを印刷し乾燥硬化した。次いで得られた伸縮性導体層の上に伸縮性絶縁体形成用ペーストE1を用いて印刷乾燥硬化を行い伸縮性絶縁体を形成し、伸縮性導体と伸縮性絶縁体の二層構造のシートを形成した。得られたシートを離型ポリエステルフィルムから剥離し、所定幅にスリット成形下のち、所定部分にリード線を取り付けて円筒形に巻き取り、電磁誘導アクチュエータ[Z1]を得た。得られた電磁誘導アクチュエータZ1において、伸縮性導体層の厚さは18μm、伸縮性絶縁体の層の厚さは12μmである。伸縮性絶縁体の絶縁抵抗は1×10
12Ω以上であった。当該電磁誘導アクチュエータに、0~1000vの電圧を印加し、動作を確認した。
【0073】
<実施例22~28、比較例3>
以下、伸縮性導体形成用ペースト[P1]を順次[P2]~[P9]に代えて電磁誘導アクチュエータ[Z2]~[Z9]を作製し、評価した。結果を表3.に示す。
表3に示すように、本発明の伸縮性導体を側面電極に用いた電磁誘導アクチュエータは、大きな変位を示した。一方で比較例においては、変位が小さくアクチュエータとしての実用性に乏しいことが示された。
【0074】
【0075】
<実施例29>
以下のプロセスにより、
図5に示す平面コイル型の電磁誘導アクチュエータを試作した。
製造例にて得られた伸縮性絶縁体形成用ペーストE1を離型処理されたポリエステルフィルム上にドクターブレード装置により一定の厚みとなるようにコーティングし、乾燥工程を経て伸縮性基材を得た。得られた伸縮性基材上に伸縮性導体形成用ペーストP5を用いてスクリーン印刷法により所定の平面コイルを印刷し乾燥硬化し、伸縮性基材事離型PETフィルムから剥離して、
図5の構成を有する電磁誘導アクチュエータ[Z10]を得た。得られた電磁誘導アクチュエータ「Z10]について評価を行った結果を表3に示す。
【産業上の利用可能性】
【0076】
以上、示してきたように、本発明におけるアクチュエータは、極めて静音性に優れ、長時間の連続使用に耐え、半導体. 露光装置の極微動用ステージ、精密位置決めプローブ、走査. トンネル顕微鏡(STM)や原子間力顕微鏡(AFM)などのプロー. ブ駆動用など、主に精密位置制御を必要とする産業機器を中心に使用されている。また最近では 携帯電話やデジタルカメラのカメラモジュール (オートフォーカス機構、ズーム機構、手振れ補正機構)、ハードディスクドライブ (ヘッド位置制御)、光学機器 (光軸調整、焦点調整)、モーター (インパクトリニアモーター、超音波リニアモーター)としても使用されている。これらの他、超精密微細研磨ツール、小型タイプメカトランス、高速角度調整機構、微小荷重載荷・検出装置、与圧機構、ポンプ、位置決めステージ機構、パンチングマシン、インクジェットのヘッド、燃料などの液体のイジェクタなどとしても使用できる。さらに本発明の積層型圧電アクチュエータは、長時間使用されるスピーカーとしても十分適応が可能である。
【符号の説明】
【0077】
1:圧電物質(圧電体)
2:内部電極(層間電極)
3:側面電極
4:側面電極
10:電極
11:誘電弾性体
12:内部電極(層間電極)
13:側面電極
14:側面電極
100:伸縮性のある絶縁基材(基材)
101:伸縮性のある導体材料(伸縮性導体)
102:伸縮性のある電磁誘導体材料(伸縮性絶縁体あるいは伸縮性電磁誘導体)