(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】洗車機
(51)【国際特許分類】
B60S 3/06 20060101AFI20220412BHJP
【FI】
B60S3/06
(21)【出願番号】P 2019021763
(22)【出願日】2019-02-08
【審査請求日】2021-02-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】特許業務法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西濱 淳盛
【審査官】村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-135952(JP,A)
【文献】特開2010-023777(JP,A)
【文献】特開2002-019586(JP,A)
【文献】特開平11-198773(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60S 3/00-13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被洗浄車両に対して前後方向に移動する洗車機本体と、被洗浄車両の形状を検知する形状センサと、被洗浄車両に回転摺動して洗浄を行う回転ブラシと、前記洗車機本体の入口面の外側に配されるとともに洗浄液を噴射する噴射ノズルと、前記噴射ノズルを昇降させる昇降機構部とを備え、
前記昇降機構部が、前記洗車機本体の天井面上を前後方向に移動する可動部と、前記可動部に回動可能に支持されるとともに下面にカム面を形成したアーム部と、前記天井面の前記入口面側の端部に配して前記カム面に摺動する摺動ローラとを有するとともに、前記噴射ノズルが前記アーム部の先端部に取り付けられ、
前記形状センサの検知結果に基づいて前記噴射ノズルが
前記可動部の移動により前記カム面の形状に従って被洗浄車両に沿って昇降することを特徴とする洗車機。
【請求項2】
前記可動部が前記摺動ローラ近傍に配された際に、前記噴射ノズルの噴射方向が前記入口面の方向に傾斜することを特徴とする請求項
1に記載の洗車機。
【請求項3】
前記アーム部の先端部に取り付けられるとともに左右方向に離れて配される投光部と受光部とを有して被洗浄車両を検知する検知センサを備え、前記投光部及び前記受光部が前記噴射ノズルに対して前後方向に所定距離離れて配置され、前記検知センサにより被洗浄車両を検知した際に、前記洗車機本体の前後移動及び前記噴射ノズルの昇降を停止することを特徴とする請求項
1または請求項
2に記載の洗車機。
【請求項4】
前記投光部と前記受光部とが異なる高さに配置されることを特徴とする請求項
3に記載の洗車機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗車機本体の入口面の外側に洗浄液を噴射する噴射ノズルを配した洗車機に関する。
【背景技術】
【0002】
洗車機本体の外側に噴射ノズルを配した洗車機は特許文献1に開示されている。この洗車機は被洗浄車両を跨ぐ門型の洗車機本体に回転ブラシ及び送風ノズルが設けられる。洗車機本体の天井面には予備洗浄装置が取り付けられる。予備洗浄装置は一対のレールの案内により洗車機本体の入口面の外側を前後方向に移動する噴射ノズルを有している。噴射ノズルは高圧水または泡状洗剤から成る洗浄液を噴射する。
【0003】
上記構成の洗車機において、洗車が開始されると洗車機本体及び噴射ノズルが前後方向に移動し、噴射ノズルから高圧水または泡状洗剤が噴射される。高圧水の噴射により被洗浄車両の上面の予備洗浄が行われる。また、泡状洗剤の噴射により泡状洗剤で覆われた被洗浄車両に回転ブラシが摺動して洗浄が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-124816号公報(第6頁~第16頁、第7図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上記従来の洗車機によると、噴射ノズルと被洗浄車両との接触を回避するために、噴射ノズルが車高の高いワンボックス車の上面よりも上方に配置される。このため、車高の低い被洗浄車両に対して噴射ノズルから噴射される洗浄液が被洗浄車両に到達する前に飛散し、洗浄が不十分になる問題があった。
【0006】
本発明は、洗車機本体の外側に噴射ノズルを配した洗車機の洗浄力を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明は、被洗浄車両に対して前後方向に移動する洗車機本体と、被洗浄車両の形状を検知する形状センサと、被洗浄車両に回転摺動して洗浄を行う回転ブラシと、前記洗車機本体の入口面の外側に配されるとともに洗浄液を噴射する噴射ノズルと、前記噴射ノズルを昇降させる昇降機構部とを備え、前記形状センサの検知結果に基づいて前記噴射ノズルが被洗浄車両に沿って昇降することを特徴としている。
【0008】
また、本発明は上記構成の洗車機において、前記昇降機構部が、前記洗車機本体の天井面上を前後方向に移動する可動部と、前記可動部に回動可能に支持されるとともに下面にカム面を形成したアーム部と、前記天井面の前記入口面側の端部に配して前記カム面に摺動する摺動ローラとを備え、前記噴射ノズルが前記アーム部の先端部に取り付けられ、前記可動部の移動により前記カム面の形状に従って昇降することを特徴としている。
【0009】
また、本発明は上記構成の洗車機において、前記可動部が前記摺動ローラ近傍に配された際に、前記噴射ノズルの噴射方向が前記入口面の方向に傾斜することを特徴としている。
【0010】
また、本発明は上記構成の洗車機において、前記アーム部の先端部に取り付けられるとともに左右方向に離れて配される投光部と受光部とを有して被洗浄車両を検知する検知センサを備え、前記投光部及び前記受光部が前記噴射ノズルに対して前後方向に所定距離離れて配置され、前記検知センサにより被洗浄車両を検知した際に、前記洗車機本体の前後移動及び前記噴射ノズルの昇降を停止することを特徴としている。
【0011】
また、本発明は上記構成の洗車機において、前記投光部と前記受光部とが異なる高さに配置されることを特徴としている。
【0012】
また、本発明は上記構成の洗車機において、前記噴射ノズルから泡状洗剤が噴射されることを特徴としている。
【0013】
また、本発明は上記構成の洗車機において、前記噴射ノズルから高圧水が噴射されることを特徴としている。
【0014】
また、本発明は上記構成の洗車機において、前記噴射ノズルを複数有し、複数あるうちの一の前記噴射ノズルから泡状洗剤を噴射して他の前記噴射ノズルから高圧水を噴射することを特徴としている。
【0015】
また、本発明は上記構成の洗車機において、前記洗車機本体が被洗浄車両の後方に向かって移動して前記形状センサにより被洗浄車両の形状を検知する第1往路と、前記洗車機本体が被洗浄車両の前方に向かって移動するとともに前記回転ブラシの停止状態で前記噴射ノズルから高圧水を噴射する第1復路と、前記洗車機本体が被洗浄車両の後方に向かって移動するとともに前記噴射ノズルから泡状洗剤を噴射して前記回転ブラシを駆動する第2往路とを有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、洗車機本体の入口面の外側に配した噴射ノズルが昇降機構部により昇降するので、車高の低い被洗浄車両に対して噴射ノズルから噴射される洗浄液の飛散を抑制することができる。従って、洗浄液が被洗浄車両に確実に到達し、洗車機の洗浄力を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図3】本発明の実施形態の洗車機の昇降機構部の要部を示す側面断面図
【
図4】本発明の実施形態の洗車機の昇降機構部の要部を示す正面断面図
【
図5】本発明の実施形態の洗車機の昇降機構部の要部を示す上面図
【
図6】本発明の実施形態の洗車機の第1復路開始時の状態を示す側面断面図
【
図7】本発明の実施形態の洗車機の第1復路開始時の状態を示す正面図
【
図8】本発明の実施形態の洗車機の第1復路を示す側面断面図
【
図9】本発明の実施形態の洗車機の第1復路を示す側面断面図
【
図10】本発明の実施形態の洗車機の第1復路を示す側面断面図
【
図11】本発明の実施形態の洗車機の第1復路を示す側面断面図
【
図12】本発明の実施形態の洗車機の第2往路を示す側面断面図
【
図13】本発明の実施形態の洗車機の第2往路を示す正面図
【
図14】本発明の実施形態の洗車機の第2復路を示す側面断面図
【
図15】本発明の実施形態の洗車機の第3往路を示す側面断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1、
図2は一実施形態の洗車機1を示す側面断面図及び正面図である。洗車機1は洗車機本体2及びリモートパネル65を備えている。洗車機本体2は左右の対向する2つのスタンド部3と、スタンド部3の上端を連結する天井部4とを有した門型に形成される。天井部4の上面には洗浄液噴射装置30が設けられる。
【0019】
地面G上には左右一対のレール66が敷設され、スタンド部3の底面に設けた車輪2cがレール66上に配される。これにより、洗車機本体2はレール66上に立設し、走行モータ(不図示)の駆動によりレール66上を走行して被洗浄車両70に対して前後方向に移動する。
【0020】
リモートパネル65は洗車機本体2に対する被洗浄車両70の進入経路に沿って配される。リモートパネル65は複数のボタンを有し、洗車条件を設定する。洗車条件として、洗浄方法(水洗い、シャンプー洗い、泡洗浄、ワックス・コーティングの有無等)、装備品(フロントガード、フェンダーポール、サイドアンダーミラー、リアワイパー、ルーフスポイラ、ルーフキャリア等)の有無等を設定することができる。
【0021】
洗車機本体2の一方のスタンド部3の正面には操作パネル8が配される。操作パネル8はリモートパネル65と同様に洗車条件を設定することができる。
【0022】
洗車機本体2のスタンド部3の入口面2a側の端部には形状センサ9が設けられる。形状センサ9はスタンド部3に縦方向に並設された複数の光電センサにより形成される。一方のスタンド部3に設けた投光部と他方のスタンド部3に設けた受光部との間を被洗浄車両70が通過して遮光することで被洗浄車両70の形状が検知される。形状センサ9を他の超音波センサ等により形成してもよい。
【0023】
洗車機本体2には被洗浄車両70上に回転摺動してブラッシングする複数の回転ブラシが設けられる。回転ブラシとして、トップブラシ5及びサイドブラシ6が設けられる。トップブラシ5は天井部4に昇降可能に設けられて水平な回転軸で回転し、被洗浄車両70の上面に摺動して洗浄を行う。サイドブラシ6は左右一対設けられて上下に延びる回転軸で回転し、被洗浄車両70の前後面及び両側面に摺動して洗浄を行う。
【0024】
洗車機本体2の上部には気流を発生するブロア20が配される。ブロア20には被洗浄車両70に向けて送風する複数の送風ノズルが接続される。送風ノズルとして、トップ送風ノズル21及びサイド送風ノズル22が設けられる。
【0025】
トップ送風ノズル21は天井部4に昇降可能に設けられ、被洗浄車両70の上面及び後面に沿って移動して送風により被洗浄車両70の前面、上面及び後面を乾燥させる。サイド送風ノズル22は両スタンド部3にそれぞれ設けられ、送風により被洗浄車両70の側面を乾燥させる。
【0026】
一方のスタンド部3内には分配配管部19が設けられる。分配配管部19は洗車機本体2の出口面2bの外側に配した貯水タンク(不図示)に接続されるとともに、複数の貯液タンク(不図示)を収納する。分配配管部19によって貯水タンクに貯水した水道水及び各貯液タンクからの洗剤や液剤(ワックス、コーティング剤等)が分配される。貯水タンクに水道水以外の水(例えば、井戸水、地下水、河川水、回収水)を貯水してもよい。
【0027】
天井部4、スタンド部3及び洗浄液噴射装置30には複数の噴射ノズルが設けられる。噴射ノズルとして、低圧水ノズル11、12、洗剤ノズル13、高圧水ノズル51、泡ノズル52が設けられる。
【0028】
低圧水ノズル11は入口面2a側の端部の天井部4及びスタンド部3に配され、低圧水の洗浄液を噴射する。低圧水ノズル12は出口面2b側の端部の天井部4に配され、低圧水の洗浄液を噴射する。洗剤ノズル13は低圧水ノズル11とトップブラシ5との間の天井部4に配され、洗剤を含む洗浄液を噴射する。
【0029】
高圧水ノズル51及び泡ノズル52は詳細を後述するように洗浄液噴射装置30に設けられ、それぞれ高圧水の洗浄液及び泡状洗剤の洗浄液を噴射する。尚、図示しないが、ワックスの水溶液やコーティング剤を噴射する噴射ノズルが天井部4に配される。
【0030】
低圧水は貯水タンク内の水道水を低圧ポンプ(不図示)により送出して低圧水ノズル11、12に供給される。高圧水は貯水タンクの水道水を高圧ポンプ(不図示)により送出して高圧水ノズル51に供給される。洗剤を含む洗浄液は低圧水に貯液タンク内の洗剤を混合して洗剤ノズル13に供給される。泡状洗剤は低圧水に洗剤を混合した後にエアポンプ(不図示)から圧縮空気を供給して泡ノズル52に送られる。
【0031】
洗浄液噴射装置30は高圧水ノズル51及び泡ノズル52を有した噴射部50と、噴射部50を昇降させる昇降機構部31とを備えている。昇降機構部31はレール33、可動部40、アーム部46、モータ36及び摺動ローラ39を備えている。
【0032】
図3、
図4、
図5は昇降機構部31の要部を示す側面断面図、正面図及び上面図である。左右一対のレール33は天井部4の上面に前後方向に延びて取り付けられる。レール33は断面形状をS字状に形成され、内面側を開放して上部に配される溝部33aと、外面側を開放して下部に配される空間部33bとを有している。レール33の断面形状をS字状に形成することにより、レール33の強度を高くすることができる。
【0033】
可動部40は対向する溝部33a間に配され、走行ローラ41、42、43を有している。走行ローラ41は可動部40の上面に左右一対取り付けられ、可動部40上の出口面2b(
図1参照)側の端部に配される。走行ローラ42は可動部40の下面に左右一対取り付けられ、可動部40上の入口面2a(
図1参照)側の端部に配される。走行ローラ43は可動部40の上面の左右の端部に取り付けられ、前後方向の2箇所にそれぞれ並設される。
【0034】
走行ローラ43は溝部33aの側壁33e上を転動する。また、可動部40は後述するアーム部46及び噴射部50の自重によって走行ローラ42を支点に傾斜し、出口面2b側が持ち上げられる。このため、走行ローラ41、42はそれぞれ溝部33aの上壁33c、底壁33d上を転動する。これにより、可動部40がレール33により前後方向に案内される。
【0035】
可動部40の前後の両端部にはチェーン35を接続する接続部材44が取り付けられる。チェーン35は天井部4の前後端に配したスプロケット37、38(
図1参照)に噛合し、一方のスプロケット37に接続されるモータ36(
図1参照)の駆動により周回する。これにより、可動部40はモータ36の駆動によって洗車機本体2の天井面上を前後方向に移動する。
【0036】
可動部40の上面の入口面2a(
図1参照)側の端部にはアーム部46を軸支する支持部45が取り付けられる。支持部45により、アーム部46は回動軸46aを中心に上下方向に回動可能に支持される。アーム部46は入口面2aから突出し、先端部に噴射部50が取り付けられる。これにより、高圧水ノズル51及び泡ノズル52は入口面2aの外側に配される。
【0037】
アーム部46の下面には所定形状のカム面46bが形成される。天井部4の入口面2a側の端部にはカム面46bに摺動する摺動ローラ39が配される。これにより、可動部40が前後移動した際に、高圧水ノズル51及び泡ノズル52を有した噴射部50がカム面46bの形状に従って昇降する。
【0038】
図1、
図2において、噴射部50は支持部材(不図示)を介してアーム部46の先端に連結され、パイプ51a、52aを有している。パイプ51aはホース(不図示)を介して分配配管部19に接続され、高圧水が流通する。パイプ52aはホース(不図示)を介して分配配管部19に接続され、泡状洗剤が流通する。
【0039】
パイプ51a、52aは左右方向に水平に延び、両側端が下方に屈曲する。高圧水ノズル51は水流によって回転するスピンノズルにより形成される。また、高圧水ノズル51は複数設けられ、パイプ51aの水平部分及び下方に屈曲した部分に設けられる(本実施形態では4箇所)。泡ノズル52は複数設けられ、パイプ52aの水平部分及び下方に屈曲した部分に設けられる(本実施形態では4箇所)。これにより、被洗浄車両70の上面及び側面に向けて高圧水及び泡状洗剤が噴射される。
【0040】
また、後述する
図6に示すように可動部40を摺動ローラ39の近傍に配した際に、パイプ51a、52aの水平部分に配した高圧水ノズル51及び泡ノズル52の噴射方向が入口面2aの方向に傾斜する。これにより、被洗浄車両70の後面に向けて高圧水及び泡状洗剤を噴射することができる。
【0041】
アーム部46に連結した噴射部50の支持部材(不図示)には検知センサ56~59が取り付けられる。検知センサ56、57はパイプ51a、52aに対して前後方向に所定距離離れて入口面2a側に配される。検知センサ56と検知センサ57とは上下方向に離れて配される。検知センサ58、59はパイプ51a、52aに対して前後方向に所定距離離れて入口面2aの反対側に配される。検知センサ58と検知センサ59とは上下方向に離れて配される。
【0042】
検知センサ56~59はそれぞれパイプ51a、52aよりも左右方向の両外側に配される一対の投光部及び受光部を有している。各検知センサ56~59の投光部と受光部との間が被洗浄車両70により遮光されると、洗車機本体2の前後移動及び昇降機構部31による昇降動作を停止する。これにより、高圧水ノズル51または泡ノズル52と被洗浄車両70との接触を防止することができる。
【0043】
この時、各検知センサ56~59の投光部と受光部とは異なる高さに配置される。即ち、検知センサ56、57の光軸が交差し、検知センサ58、59の光軸が交差する。これにより、投光部からの光が被洗浄車両70のサイドガラスを透過することによる検知センサ56~59の誤検知を防止することができる。
【0044】
尚、検知センサ56、57の一方を省いてもよく、検知センサ58、59の一方を省いてもよい。これにより、洗車機1の部品点数を削減することができる。
【0045】
上記構成の洗車機1において、被洗浄車両70がリモートパネル65の面前で停車すると洗車条件の設定が行われる。リモートパネル65の操作により、水洗いコース、シャンプーコース、泡洗浄コース等の洗車コースが選択される。
【0046】
水洗いコースは回転ブラシを回転して低圧水ノズル11から水道水を噴射し、被洗浄車両70を水洗いする。シャンプーコースは回転ブラシを回転して洗剤ノズル13から洗剤を含む洗浄液を噴射し、被洗浄車両70を洗剤により洗浄する。泡洗浄コースは回転ブラシを回転して泡ノズル52から泡状洗剤を噴射し、被洗浄車両70を洗剤により洗浄する。
【0047】
また、洗車条件の選択により、被洗浄車両70の洗浄後にワックスまたはコーティング剤を被洗浄車両70に塗布することができる。
【0048】
洗車条件として泡洗浄コースが選択された際の洗車の動作を説明する。洗車条件を設定した後、ユーザの運転により被洗浄車両70が所定の洗浄開始位置まで移動して停車すると泡洗浄コースが開始される。
【0049】
泡洗浄コースが開始されると第1往路が行われる。第1往路では洗車機本体2が矢印D1(
図1参照)に示すように被洗浄車両70の後方に向かって所定の移動速度(例えば、5m/min)で移動する。これにより、洗車機本体2の入口面2a側の端部に配置される形状センサ9によって被洗浄車両70の形状が検知される。
【0050】
被洗浄車両70の後端まで形状を検知すると洗車機本体2が停止し、
図6~
図11に示す第1復路が行われる。第1復路では回転ブラシを停止し、高圧水ノズル51から高圧水A1を噴射して被洗浄車両70を洗浄する。
【0051】
図6、
図7は第1復路の開始時の状態を示す側面断面図及び正面図である。第1復路の開始時に、洗浄液噴射装置30の可動部40が摺動ローラ39の近傍に配され、噴射部50が降下する。この時、高圧水ノズル51の噴射方向が入口面2aの方向に傾斜するため、被洗浄車両70の後面に向けて高圧水A1が噴射される。そして、可動部40が出口面2b側に移動して高圧水ノズル51が上昇し、被洗浄車両70の後面の洗浄が行われる。
【0052】
被洗浄車両70の後面の洗浄が終了すると、洗車機本体2が矢印D2(
図8参照)に示すように被洗浄車両70の前方に向かって所定の移動速度(例えば、5m/min)で移動する。
図8~
図11はこの時の洗車機1の側面断面図を示している。噴射部50は洗車機本体2の移動に伴って前後方向に移動するとともに、第1往路の形状センサ9の検知結果に基づいて可動部40が移動して被洗浄車両70の上面に沿って昇降する。これにより、被洗浄車両70の上面及び側面が高圧水ノズル51から噴射される高圧水A1により洗浄される。
【0053】
また、
図11に示すように、被洗浄車両70の前部を洗浄する際に、高圧水ノズル51はフロントウィンドウよりも前方でアーム部46の回動により降下する。この時、高圧水ノズル51の噴射方向が入口面2aの方向に傾斜するため、被洗浄車両70の前端まで高圧水A1を確実に噴射することができる。
【0054】
尚、被洗浄車両70の前端面がフロントウィンドウ等により急峻に立上がる場合は、被洗浄車両70の前部を洗浄する際に高圧水ノズル51が被洗浄車両70のルーフよりも高い位置に配され、高圧水A1が略真下方向に噴射される。これにより、洗車機本体2の移動によって被洗浄車両70の前端まで高圧水A1により洗浄することができる。
【0055】
被洗浄車両70の前端まで高圧水による洗浄が行われると、第2往路が行われる。第2往路では前述の
図6~
図11と逆方向に洗車機本体2が前後方向に移動して噴射部50が昇降する。そして、
図12、
図13の側面断面図及び正面図に示すように、泡ノズル52から泡状洗剤A2を噴射し、トップブラシ5及びサイドブラシ6が被洗浄車両70に回転摺動する。
【0056】
即ち、第2往路では洗車機本体2が矢印D1(
図12参照)に示すように被洗浄車両70の後方に向かって所定の移動速度(例えば、5m/min)で移動する。噴射部50は洗車機本体2の移動に伴って前後方向に移動するとともに、第1往路の形状センサ9の検知結果に基づいて可動部40が移動して被洗浄車両70の上面に沿って昇降する。
【0057】
被洗浄車両70の前端近傍にサイドブラシ6が配されると洗車機本体2が停止し、サイドブラシ6が左右方向に移動する。被洗浄車両70の前面には第1復路で高圧水ノズル51から噴射された水道水が流下して残留し、サイドブラシ6が被洗浄車両70の前面に回転摺動して洗浄を行う。
【0058】
被洗浄車両70の前面の洗浄が終了すると洗車機本体2が矢印D1に示すように移動する。これにより、被洗浄車両70の上面及び側面が泡ノズル52から噴射される泡状洗剤A2により覆われ、トップブラシ5及びサイドブラシ6により洗浄される。また、トップブラシ5及びサイドブラシ6に後行する低圧水ノズル12から低圧水A3が噴射され、被洗浄車両70に残留する泡状洗剤が洗い流される。
【0059】
洗車機本体2の外側で泡ノズル52から泡状洗剤A2が噴射されるため、泡状洗剤A2の塗布の進行を周囲から容易に視認することができる。このため、泡洗浄の演出効果を発揮することができる。
【0060】
また、第1復路と同様に、
図11に示すように被洗浄車両70の前部を洗浄する際に、泡ノズル52はフロントウィンドウよりも前方でアーム部46の回動により降下する。この時、泡ノズル52の噴射方向が入口面2aの方向に傾斜するため、被洗浄車両70の前端まで泡状洗剤A2を確実に噴射することができる。
【0061】
被洗浄車両70の前端面がフロントウィンドウ等により急峻に立上がる場合は、被洗浄車両70の前部を洗浄する際に泡ノズル52が被洗浄車両70のルーフよりも高い位置に配され、泡状洗剤A2が略真下方向に噴射される。
【0062】
尚、噴射部50は上昇する際にアーム部46の回動によって被洗浄車両70の後方にシフトする。このため、被洗浄車両70が急峻に立上がるフロントウィンドウ等を有すると、噴射部50の上昇時に洗車機本体2が一時的に被洗浄車両70の前方に向かって移動する。これにより、噴射部50と被洗浄車両70との干渉を防止することができる。
【0063】
噴射部50は被洗浄車両70の後端を通過すると前述の
図6、
図7と同様に降下し、泡ノズル52から被洗浄車両70の後面に向かって泡状洗剤A2が噴射される。その後、洗車機本体2が停止し、サイドブラシ6が左右方向に移動して被洗浄車両70の後面に回転摺動する。これにより、被洗浄車両70の後面が洗浄される。
【0064】
泡状洗剤A2により被洗浄車両70の後面まで洗浄されると、洗車機本体2が反転して第2復路が行われる。
図14は第2復路の洗車機1の側面断面図を示している。第2復路では洗車機本体2が矢印D2に示すように被洗浄車両70の前方に向かって所定の速度(例えば、5m/min)で移動する。また、低圧水ノズル11、12から低圧水が噴射され、トップブラシ5及びサイドブラシ6が回転する。
【0065】
被洗浄車両70の後面近傍にサイドブラシ6が配されると洗車機本体2が停止し、サイドブラシ6が左右方向に移動して被洗浄車両70の後面に回転摺動する。これにより、被洗浄車両70の後面のすすぎ洗浄が行われる。
【0066】
被洗浄車両70の後面のすすぎ洗浄が終了すると洗車機本体2が矢印D2に示すように移動する。トップブラシ5及びサイドブラシ6は被洗浄車両70の上面及び側面に回転摺動し、被洗浄車両70の上面及び側面のすすぎ洗浄が行われる。
【0067】
被洗浄車両70の前面近傍にサイドブラシ6が配されると洗車機本体2が停止し、サイドブラシ6が左右方向に移動して被洗浄車両70の前面に回転摺動する。これにより、被洗浄車両70の前面のすすぎ洗浄が行われる。
【0068】
被洗浄車両70の前面のすすぎ洗浄が終了すると第3往路が行われる。
図15は第3往路の洗車機1の側面断面図を示している。第3往路では洗車機本体2が矢印D1に示すように被洗浄車両70の後方に向かって所定の速度(例えば、5m/min)で移動する。また、回転ブラシが停止され、トップ送風ノズル21及びサイド送風ノズル22から気流A4が送出される。これにより、被洗浄車両70の乾燥が行われる。そして、被洗浄車両70の後端まで乾燥されると洗車が終了し、被洗浄車両70が前進して退場する。
【0069】
本実施形態によると、洗車機本体2の入口面2aの外側に配される噴射ノズル(高圧水ノズル51及び泡ノズル52)が昇降機構部31により昇降する。これにより、車高の低い被洗浄車両70に対して高圧水ノズル51から噴射される高圧水及び泡ノズル52から噴射される泡状洗剤から成る洗浄液の飛散を抑制することができる。従って、洗浄液が被洗浄車両70に確実に到達し、洗車機1の洗浄力を向上することができる。
【0070】
また、昇降機構部31が洗車機本体2の天井面上を前後方向に移動する可動部40と、可動部40に軸支してカム面46bを有したアーム部46と、入口面2a側の端部に配してカム面46bに摺動する摺動ローラ39とを備える。高圧水ノズル51及び泡ノズル52(噴射ノズル)は可動部40の移動によりカム面46bの形状に従って昇降する。
【0071】
これにより、高圧水ノズル51及び泡ノズル52を昇降させる昇降機構部31を容易に実現することができる。また、上下方向に延びるレールをスタンド部3に設けて噴射部50を昇降させるよりも洗車機本体2を前後方向に短く形成することができる。従って、洗車機1の設置スペースを小さくすることができる。
【0072】
また、可動部40が摺動ローラ39近傍に配された際に、高圧水ノズル51及び泡ノズル52の噴射方向が入口面2aの方向に傾斜する。これにより、被洗浄車両70の後面に向けて洗浄液を確実に噴射することができる。
【0073】
また、高圧水ノズル51及び泡ノズル52に対して前後方向に所定距離離れて配置される検知センサ56~59を備える。そして、検知センサ56~59により被洗浄車両70を検知した際に、洗車機本体2の前後移動及び昇降機構部31による昇降動作を停止する。これにより、高圧水ノズル51または泡ノズル52と被洗浄車両70との接触を防止することができる。
【0074】
また、検知センサ56~59の投光部と受光部とが異なる高さに配置されるので、光がサイドガラスを透過することによる検知センサ56~59の誤検知を防止することができる。
【0075】
また、入口面2aの外側に配した泡ノズル52から泡状洗剤A2を噴射して高圧水ノズル51から高圧水A1を噴射するので、高圧水による予備洗浄後に泡状洗剤による洗浄を行うことができる。従って、洗車機1の洗浄力をより向上することができる。
【0076】
尚、高圧水ノズル51を省き、低圧水ノズル11、12より被洗浄車両70の表面に水道水を噴射した後に泡ノズル52から泡状洗剤を噴射して洗浄を行ってもよい。また、泡ノズル52を省き、高圧水ノズル51から高圧水を噴射して予備洗浄を行った後に、洗剤ノズル13から洗剤を含む洗浄液を噴射して洗浄を行ってもよい。
【0077】
また、第1往路で形状センサ9により被洗浄車両70の形状を検知し、第1復路で回転ブラシの停止状態で高圧水ノズル51から高圧水を噴射して第2往路で泡ノズル52から泡状洗剤を噴射して回転ブラシを駆動する。これにより、被洗浄車両70の形状に沿って高圧水ノズル51及び泡ノズル52を容易に昇降して洗浄を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明によると、被洗浄車両を洗車する洗車機に広く利用することができる。
【符号の説明】
【0079】
1 洗車機
2 洗車機本体
2a 入口面
2b 出口面
3 スタンド部
4 天井部
5 トップブラシ
6 サイドブラシ
8 操作パネル
9 形状センサ
11、12 低圧水ノズル
13 洗剤ノズル
19 分配配管部
20 ブロア
21 トップ送風ノズル
22 サイド送風ノズル
30 洗浄液噴射装置
31 昇降機構部
33 レール
33a 溝部
33c 上壁
33d 底壁
33e 側壁
35 チェーン
36 モータ
37、38 スプロケット
39 摺動ローラ
40 可動部
41、42、43 走行ローラ
44 接続部材
45 支持部
46 アーム部
46b カム面
50 噴射部
51 高圧水ノズル
51a、52a パイプ
52 泡ノズル
56~59 検知センサ
65 リモートパネル
66 レール
70 被洗浄車両
A1 高圧水
A2 泡状洗剤
A3 低圧水
A4 気流
G 地面