(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】蓄電装置
(51)【国際特許分類】
H01M 50/291 20210101AFI20220412BHJP
H01M 50/264 20210101ALI20220412BHJP
H01G 11/78 20130101ALI20220412BHJP
H01G 11/10 20130101ALI20220412BHJP
H01M 50/242 20210101ALI20220412BHJP
H01M 50/209 20210101ALI20220412BHJP
H01M 50/262 20210101ALI20220412BHJP
【FI】
H01M50/291
H01M50/264
H01G11/78
H01G11/10
H01M50/242
H01M50/209
H01M50/262 P
(21)【出願番号】P 2019525333
(86)(22)【出願日】2018-06-05
(86)【国際出願番号】 JP2018021504
(87)【国際公開番号】W WO2018230390
(87)【国際公開日】2018-12-20
【審査請求日】2021-03-08
(31)【優先権主張番号】P 2017115229
(32)【優先日】2017-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100153224
【氏名又は名称】中原 正樹
(72)【発明者】
【氏名】殿西 雅光
【審査官】原 和秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-069004(JP,A)
【文献】国際公開第2016/002178(WO,A1)
【文献】実開平06-036208(JP,U)
【文献】中国実用新案第202495497(CN,U)
【文献】中国実用新案第205752266(CN,U)
【文献】中国実用新案第205723674(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20-50/298
H01G 11/00-11/86
H01M 8/249- 8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に積層配置された複数の蓄電素子と、
前記複数の蓄電素子の前記第1方向の両端に配置されたエンドプレートと、
前記エンドプレートに固定され、前記複数の蓄電素子の前記第1方向の位置を拘束する拘束
部材と
、
前記拘束部材とは別体の多孔部材と、
を備え、
前記
多孔部材は、前記第1方向、及び前記第1方向と交差する第2方向へ二次元的に配置された複数の筒状部を有し、これらの筒状部の軸線が、前記第1方向及び前記第2方向に交差する第3方向に延びるように配置され
、かつ、前記第3方向において前記拘束部材に隣接して配置されている、蓄電装置。
【請求項2】
前記蓄電素子は、電極体と、前記電極体が収容された容器とを有する扁平な電池であり、
前記容器は、前記第2方向および前記第3方向に延びる一対の長側壁と、前記第1方向および前記第2方向に延び、前記長側壁の前記第3方向の寸法よりも前記第1方向の寸法が短い一対の短側壁とを有し、
前記拘束
部材は、前記エンドプレートに固定された固定部を有し、
前記多孔部材は、少なくとも一対の前記固定部間に配置されている、請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項3】
前記多孔部材の前記筒状部は、前記第1方向における1個の前記容器の前記短側壁に1以上配置される大きさである、請求項2に記載の蓄電装置。
【請求項4】
第1方向に積層配置された複数の蓄電素子と、
前記複数の蓄電素子の前記第1方向の両端に配置されたエンドプレートと、
前記エンドプレートに固定され、前記複数の蓄電素子の前記第1方向の位置を拘束する拘束要素と
を備え、
前記拘束要素は、前記第1方向、及び前記第1方向と交差する第2方向へ二次元的に配置された複数の筒状部を有し、これらの筒状部の軸線が、前記第1方向及び前記第2方向に交差する第3方向に延びるように配置された多孔部材を含み、
さらに、前記複数の蓄電素子を収容する外装体と、
一対の前記エンドプレートのうちの少なくとも一方と前記外装体の対向面との間に配置された電気部品と、
前記電気部品と前記外装体の対向面との間に配置され、前記第2方向及び前記第3方向へ二次元的に配置された複数の筒状部を有し、これらの筒状部の軸線が前記第1方向に延びるように配置された第2の多孔部材と
を備える、蓄電装置。
【請求項5】
前記拘束要素は、前記エンドプレートに固定された固定部を有し、
前記固定部は、前記エンドプレートから前記外装体の対向面に向けて突出する突出部を有し、
前記第2の多孔部材は、前記突出部に固定されている、請求項4に記載の蓄電装置。
【請求項6】
前記多孔部材の前記筒状部は断面正六角形状である、請求項1から5のいずれか1項に記載の蓄電装置。
【請求項7】
前記蓄電素子は、電極シートを有する電極体と、前記電極体が収容された容器とを有する扁平な電池であり、
前記電極シートは、前記第2方向および前記第3方向に延びる平面を有する、請求項1から6のいずれか1項に記載の蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、一方向に積層配置した複数の蓄電素子と、これら蓄電素子の積層方向の両端に配置されたエンドプレートと、これらエンドプレートに固定された拘束部材とを備える蓄電装置が開示されている。この蓄電装置では、拘束部材によって蓄電素子の積層方向の位置を拘束することで、蓄電素子の積層方向の強度向上を図っている。また、拘束部材の一部には開口部が設けられ、この開口部の周囲にリブが設けられている。これにより、拘束部材を軽量化しつつ、拘束部材の剛性低下を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の蓄電装置では、蓄電素子の積層方向に交差する方向の外力が加わると、拘束部材が変形して蓄電素子にも負荷が加わるため、蓄電素子が破損する可能性がある。よって、特許文献1の蓄電装置では、蓄電素子の積層方向に交差する方向の強度について、改善の余地がある。
【0005】
本発明は、外力が加わることによる蓄電素子の破損を抑制できる蓄電装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、第1方向に積層配置された複数の蓄電素子と、前記複数の蓄電素子の前記第1方向の両端に配置されたエンドプレートと、前記エンドプレートに固定され、前記複数の蓄電素子の前記第1方向の位置を拘束する拘束要素とを備え、前記拘束要素は、前記第1方向、及び前記第1方向と交差する第2方向へ二次元的に配置された複数の筒状部を有し、これらの筒状部の軸線が、前記第1方向及び前記第2方向に交差する第3方向に延びるように配置された多孔部材を含む、蓄電装置を提供する。
【0007】
複数の筒状部からなる多孔部材は、筒状部の軸線が延びる第3方向の剛性が非常に強い。よって、蓄電素子を積層した第1方向に沿って多孔部材を配置することで、外部からの負荷に対する蓄電素子の耐圧壊性を効果的に向上できる。また、多孔部材は複数の筒状部からなるため、軽量である。よって、複数の蓄電素子を備える蓄電装置の軽量化と強度向上の両立を図ることができる。
【0008】
前記蓄電素子は、電極体と、前記電極体が収容された容器とを有する扁平な電池であり、前記容器は、前記第2方向および前記第3方向に延びる一対の長側壁と、前記第1方向および前記第2方向に延び、前記長側壁の前記第3方向の寸法よりも前記第1方向の寸法が短い一対の短側壁とを有し、前記拘束要素は、前記エンドプレートに固定された固定部を有し、前記多孔部材は、少なくとも一対の前記固定部間に配置されていてもよい。
【0009】
リチウムイオン電池は、鉛蓄電池と比較して、軽量であるという利点を有するが、安全性の観点から耐圧壊性が求められる。近年、自動車を含む乗り物に搭載される蓄電装置では、安全性の向上が強く求められ、それに伴い耐圧壊性の性能要求が高まっている。ここでいう耐圧壊性とは、瞬間的又は継続的に圧力が加わっても変形が極端に少ないという、外力に対する壊れにくさのことである。本発明は、この様な新たな要求を実現するためになされたものである。
【0010】
短側壁が第1方向に並ぶように配置され、この短側壁側に多孔部材が配置されている。よって、長側壁が第1方向に並ぶように配置され、この長側壁側に多孔部材を配置する場合と比較して、多孔部材の全長を短くすることができる。その結果、蓄電装置を軽量化と強度向上の両立を図ることができる。
【0011】
前記多孔部材の前記筒状部は、前記第1方向における1個の前記容器の前記短側壁に1以上配置される大きさであってもよい。
【0012】
1個の蓄電素子の短側壁に1以上の筒状部が対向するため、第3方向の強度を確実に向上できる。
【0013】
前記複数の蓄電素子を収容する外装体と、一対の前記エンドプレートのうちの少なくとも一方と前記外装体の対向面との間に配置された電気部品と、前記電気部品と前記外装体の対向面との間に配置され、前記第2方向及び前記第3方向へ二次元的に配置された複数の筒状部を有し、これらの筒状部の軸線が前記第1方向に延びるように配置された第2の多孔部材とをさらに備えてもよい。
【0014】
外装体自体の剛性や、外装体とエンドプレートの間の緩衝空間に依存していた蓄電素子の保護を、第2の多孔部材によって行うことができる。よって、外装体の外部からの負荷に対する蓄電素子の耐圧壊性を効果的に向上できる。また、エンドプレートと第2の多孔部材との間には空間が形成され、この空間にリレーやヒューズ等の電気部品を配置しているため、第2の多孔部材によって電気部品も保護できる。
【0015】
前記拘束要素の前記固定部は、前記エンドプレートから前記外装体の対向面に向けて突出する突出部を有し、前記第2の多孔部材は、前記突出部に固定されていてもよい。
【0016】
追加部品を用いることなく、第2の多孔部材を固定できるとともに、電気部品を配置するための空間を確保できる。
【0017】
前記多孔部材の前記筒状部は断面正六角形状であってもよい。
【0018】
多孔部材が単なる格子構造ではなくハニカム構造であるため、筒状部の軸線が延びる第3方向だけでなく、第1方向と第2方向の強度も向上できる。
【0019】
前記蓄電素子は、電極シートを有する電極体と、前記電極体が収容された容器とを有する扁平な電池であり、前記電極シートは、前記第2方向および前記第3方向に延びる平面を有していてもよい。
【0020】
電極シートが第2方向および第3方向に延びる平面を有する電極体に対して多孔部材を備えるため、短絡の一因となる電極シートの端部の変形を抑制することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の蓄電装置では、蓄電素子を積層した第1方向に沿って多孔部材を配置することで、外部からの負荷に対する蓄電素子の耐圧壊性を効果的に向上できる。また、多孔部材は軽量であるため、蓄電装置の軽量化と強度向上の両立を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図2】蓋体を外した第1実施形態の蓄電装置の断面図。
【
図3】第1実施形態の蓄電モジュールの分解斜視図。
【
図9】蓋体を外した第2実施形態の蓄電装置の断面図。
【
図10】第2実施形態の蓄電モジュールの分解斜視図。
【
図12】蓋体を外した第3実施形態の蓄電装置の断面図。
【
図13】第3実施形態の蓄電モジュールの分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0024】
(第1実施形態)
図1から
図6は、本発明の第1実施形態に係る蓄電装置10を示す。この蓄電装置10は、外装体12と、外装体12の内部に収容された電池モジュール24とを備える。電池モジュール24は、蓄電素子としての複数(本実施形態では12個)の電池セル26を備える。本実施形態では、拘束要素60によって外部からの負荷に対する外装体12の強度を向上し、外力が加わることによる電池セル26の破損を効果的に抑制する。
【0025】
以下の説明では、外装体12の長手方向であり、電池セル26の短手方向である第1方向をX方向という。また、外装体12と電池セル26の高さ方向である第2方向をY方向という。また、外装体12の短手方向であり、電池セル26の長手方向である第3方向をZ方向という。
【0026】
(蓄電装置の概要)
図1及び
図2に示すように、外装体12は、1つの面(Y方向の上面)に開口部15を有する樹脂製の本体14と、本体14の開口部15を塞ぐ蓋体20とを備える。本体14は、XY平面に沿って延びる一対の長側壁16,16と、YZ平面に沿って延びる一対の短側壁17,17と、ZX平面に沿って延びる底壁18とを備える箱体である。短側壁17のZ方向の寸法は、長側壁16のX方向の寸法よりも短い。蓋体20は、本体14の開口部15に液密に取り付けられている。蓋体20は、電池モジュール24に電気的に接続された正極外部端子22Aと負極外部端子22Bを備える。
【0027】
図3を参照すると、電池モジュール24は、樹脂製のスペーサ45を介して、X方向に沿って電池セル26を積層配置したものである。電池セル26としては、リチウムイオン電池等の非水電解質二次電池が用いられている。但し、リチウムイオン電池以外にも、キャパシタを含む種々の電池セル26も適用できる。
【0028】
図4に示すように、個々の電池セル26は、容器27、電極体36、集電体41A,41B、及び端子43A,43Bを備える。
【0029】
容器27は、1つの面(Y方向の上面)を開口した扁平な容器本体28と、容器本体28の開口を塞ぐ蓋34とを備える。容器本体28は、YZ平面に沿って延びる一対の長側壁29,29と、XY平面に沿って延びる一対の短側壁30,30と、ZX平面に沿って延びる底壁31とを備える箱体である。短側壁30のX方向の寸法は、長側壁29のZ方向の寸法よりも短い。蓋34は、容器本体28の開口に液密に取り付けられている。容器本体28と蓋34はいずれもアルミニウム製又はステンレス製であり、溶接により封止されている。
【0030】
電極体36は、Y方向およびZ方向に延びる平面を有する正極電極シート37、負極電極シート38、及び2枚のセパレータ39,39を備え、これらを積層した状態で軸周りに巻回した扁平な巻回体である。電極体36は、巻回軸が容器27の長手方向(Z方向)に沿う姿勢で、容器27内に収容されている。これにより、電極体36は、X方向に電極シート37,38とセパレータ39,39を積層した状態で、外装体12内に収容される。
【0031】
正極集電体41Aは、正極電極シート37が突出する端部に配置され、正極電極シート37に電気的に接続されている。負極集電体41Bは、負極電極シート38が突出する端部に配置され、負極電極シート38に電気的に接続されている。正極集電体41Aはアルミニウム等の金属によって成形されてもよく、負極集電体41Bは銅等の金属によって成形されてもよい。
【0032】
正極端子43Aは蓋34のZ方向の一端側に設けられ、負極端子43Bは蓋34のZ方向の他端側に設けられている。正極端子43Aは、正極集電体41Aに電気的に接続され、この正極集電体41Aを介して電極体36に電気的に接続されている。負極端子43Bは、負極集電体41Bに電気的に接続され、この負極集電体41Bを介して電極体36に電気的に接続されている。
【0033】
図1及び
図3に示すように、隣接する電池セル26,26の正極端子43A及び負極端子43Bには、導電部材としてのバスバー48が溶接により接続されている。並列接続の場合、定められた電池セル26,26の正極端子43A,43A同士が電気的に接続され、定められた電池セル26,26の負極端子43B,43B同士が電気的に接続される。直列接続の場合、定められた電池セル26の正極端子43Aと、定められた電池セル26の負極端子43Bとが電気的に接続される。
【0034】
図1から
図3では、12個の電池セル26のうち、3個の電池セル26を並列に接続し、その並列接続した3個1組の電池セル26を4組直列に接続した態様を一例として示している。
図1において右側端に位置する第1組の電池セル26では、正極端子43Aに接続されたバスバー48Aが、蓋体20の正極外部端子22Aに電気的に接続されている。
図1において左側端に位置する第4組の電池セル26では、負極端子43Bに接続されたバスバー48Bが、蓋体20の負極外部端子22Bに電気的に接続されている。これにより、それぞれの電池セル26は、正極外部端子22Aと負極外部端子22Bを介して、電気の充電と、電気の放電が可能になっている。
【0035】
個々の電池セル26は、X方向に膨張することがある。この電池セル26の膨張は、例えば過充電等により容器27内に充填された電解液が分解され、容器27内にガスが発生するという、意図しない異常により生じる。電池セル26が膨張すると、電池セル26のX方向の寸法が初期よりも大きくなるため、その内圧によって外装体12も変形する。
【0036】
また、電池セル26としてのリチウムイオン電池は、鉛蓄電池と比較して、軽量であるという利点を有する。しかし、リチウムイオン電池には、安全性の観点から耐圧壊性が求められる。近年、自動車を含む乗り物に搭載される蓄電装置10では、安全性の向上が強く求められ、瞬間的又は継続的に圧力が加わっても変形が極端に少ないという耐圧壊性(外力に対する壊れにくさ)の性能要求が高まっている。
【0037】
本実施形態の電池モジュール24には、電池セル26の膨張を抑制しつつ、外装体12への外力に対する耐圧壊性を確保して、電池セル26の破損を抑制するために、拘束要素60が配置されている。
【0038】
(拘束要素の詳細)
図1から
図3に示すように、電池モジュール24のX方向の両端には、エンドプレート50,50が配置されている。このエンドプレート50,50には拘束要素60が固定されており、この拘束要素60によって、複数の電池セル26のX方向の位置が拘束されている。
【0039】
エンドプレート50は、両端の電池セル26,26の長側壁29を覆うように、YZ平面に沿って配置されている。このエンドプレート50のY方向の下端には、ZX平面に沿って延びる固定部51が設けられている。固定部51は、一対の第1ボルト孔52,52を備え、図示しないボルトによって外装体12の底壁18に固定されている。これにより電池モジュール24は、外装体12内のX方向の定められた位置に保持される。また、エンドプレート50のZ方向の両側には、拘束要素60を固定するための第2ボルト孔53が設けられている。本実施形態では、エンドプレート50と電池セル26の間にも、スペーサ45が配置されている。
【0040】
一対のエンドプレート50,50のうちの一方には、電気部品55が配置されている。この電気部品55は、バスバー48に電気的に接続されるヒューズやリレーであってもよい。電気部品55は、専用の保護ケース56に収容された状態で、エンドプレート50にボルト止めによって固定されている。
【0041】
拘束要素60は、金属製の拘束板62と、多数の筒状部73を有する多孔部材70を備える。
図1に最も明瞭に示すように、拘束要素60は、スペーサ45に設けられた段部46上に配置されている。この段部46は、Z方向外向き突出されており、外装体12の絞り部12aの内側に位置する。拘束板62は、外装体12の絞り部12a上の拡がった拡開部12bの内側に配置されている。
【0042】
拘束板62は、拘束板本体63と、一対の固定部65,65とを備え、これらをプレス加工により一体成形したものである。
【0043】
拘束板本体63は、XY平面に沿って延びており、電池モジュール24のX方向の一端から他端にかけて延びる全長である。拘束板本体63には、複数(本実施形態では三行四列で12個)の開口部64が設けられている。
【0044】
固定部65は、YZ平面に沿って延びるように、拘束板本体63に対して屈曲されている。この固定部65には、エンドプレート50の第2ボルト孔53に一致する挿通孔66が設けられている。固定部65をエンドプレート50のX方向外側に配置し、挿通孔66を通してボルト68を第2ボルト孔53に締め付けることで、拘束板62がエンドプレート50に固定される。
【0045】
このように構成したエンドプレート50と拘束板62を電池モジュール24に配置する構成は、従来の蓄電装置にも用いられている。この電池モジュール24では、拘束板62によって個々の電池セル26のX方向の位置が拘束されているため、電池セル26のX方向外向きの膨張を効果的に抑制できる。また、電池モジュール24のX方向は、電池セル26の積層方向であり、電極シート37,38の積層方向である。よって、電池モジュール24に加わるX方向の外力に対する強度は高い。
【0046】
しかし、拘束板62は、拘束板本体63に交差するZ方向の外力には弱く、リブの形成による剛性向上にも限界がある。Z方向の外力による拘束板62の変形は、X方向の中央部分が最も大きい。また、拘束板62が変形すると、個々の電池セル26にも外力が加わるため、特に中央部分の電池セル26が破損する可能性がある。この際の電池セル26の破損としては、例えば容器本体28と蓋34の接合部分が変形し、溶接が剥がれることが挙げられる。
【0047】
多孔部材70は、外装体12に加わるZ方向の外力に対する耐圧壊性を向上し、内部の電池セル26を保護するものである。多孔部材70は、XY平面に沿って延びる平板状であり、拘束板62に隣接するように、拘束板本体63に対向して固定されている。多孔部材70のX方向の寸法は、拘束板62の一対の固定部65,65間に位置する全長である。拘束板本体63への多孔部材70の固定は、エポキシ系接着剤、ブラインドリベット、又はネジ等の固着手段によって行われている。固着手段は、電池モジュール24の拘束に耐えることが可能であれば、必要に応じて変更が可能である。
【0048】
図5を参照すると、多孔部材70は、シート状の一対の表面材71,71の間に、多孔質状のコア材72を挟み込んで配置したものである。表面材71には、貫通孔等は何も設けられていない。コア材72は、断面正六角形状の空洞部を有する筒状部73を、X方向とY方向へ二次元的に配置した構成である。コア材72のZ方向の両側に表面材71を固着することで、多孔部材70が形成されている。表面材71とコア材72の材質は、金属(例えば、アルミニウム)製であってもよいし、硬質な樹脂製であってもよい。但し、表面材71が樹脂製でコア材72が金属製であってもよいし、表面材71が金属製でコア材72が樹脂製であってもよい。
【0049】
図6を参照すると、筒状部73は、X方向における1個の容器27の短側壁30に1個以上配置される大きさである。つまり、筒状部73の軸線Lに直交するX方向の寸法Sは、一対の長側壁29,29間の幅W1よりも小さく、長側壁29と短側壁30との間の面取り部32を除く、短側壁30の実質的なX方向の幅W2よりも小さい。これにより、縦横に配列された多数の筒状部73のうち、同一の行でX方向に並ぶ複数の筒状部73のうちの1個以上が、短側壁30と交差するように設定されている。また、縦横に配列された多数の筒状部73のうち、同一の列でY方向に並ぶ複数の筒状部73が、短側壁30と交差するように設定されている。なお、1つの筒状部73の軸線Lと短側壁30のX方向の中心とは、一致しないことの方が多い。つまり、短側壁30に1個以上の筒状部73が配置されるとは、1個分以上の筒状部73が短側壁30に配置されることを意味する。
【0050】
この多孔部材70は、筒状部73の軸線Lが延びる方向の剛性が非常に強い。よって、筒状部73の軸線LがZ方向に延びる姿勢で、多孔部材70を電池モジュール24(拘束板本体63)に配置することで、外装体12の外部からの負荷に対する電池セル26の耐圧壊性を効果的に向上できる。つまり、外装体12に瞬間的又は継続的に圧力が加わっても、拘束要素60の変形を抑制し、内部の電池セル26の圧壊も効果的に抑制できる。また、筒状部73は、単なる格子構造ではなくハニカム構造であるため、筒状部73の軸線Lが延びるZ方向だけでなく、X方向とY方向の強度も向上できる。また、多孔部材70は、複数の筒状部からなるため軽量である。よって、複数の電池セル26を備える蓄電装置10の軽量化と強度向上の両立を図ることができる。
【0051】
図7は、比較例(従来例)の拘束板62’を示す。第1実施形態の拘束板62と比較例の拘束板62’とは、開口部64,64’の総開口面積が異なっており、第1実施形態の拘束板62の総開口面積よりも、比較例の拘束板62’の総開口面積の方が狭い。拘束板62に多孔部材70を加えた第1実施形態の拘束要素60の総重量は、220gである。一方、比較例の拘束板62’の重量は、210gである。つまり、第1実施形態の拘束要素60の総重量と、比較例の拘束板62’の重量とは、概ね同じである。
【0052】
比較例の拘束板62’の拘束板本体63’(X方向の全長が200mm)に対して、Z方向に150kNの負荷を加えた場合、拘束板本体63’の変形量は約70mmであった。これに対して、第1実施形態の拘束要素60に対して、Z方向に150kNの負荷を加えた場合、拘束板本体63の変形量は約15mmであった。つまり、第1実施形態の拘束要素60の重量は、比較例の拘束板62’よりも5%増加しているが、第1実施形態の拘束要素60の変形量は、比較例の拘束板62’よりも約77%減少できる。このように、多孔部材70を用いた拘束要素60は、重量を過剰に大きくすることなく、効果的に耐圧壊性を向上できる。また、拘束要素60の総重量は、拘束板62の開口部64の開口面積、及び/又は多孔部材70の筒状部73の大きさを調整することで、軽くすることができる。
【0053】
また、本実施形態の蓄電装置10では、短側壁30がX方向に並ぶように配置され、この短側壁30側に多孔部材70が配置されている。よって、長側壁がX方向に並ぶように配置され、この長側壁側に多孔部材を配置する場合と比較して、多孔部材70の全長を短くすることができる。その結果、蓄電装置10を軽量化と強度向上の両立を図ることができる。
【0054】
(第2実施形態)
図8から
図10は第2実施形態の蓄電装置10を示す。この第2実施形態では、第1実施形態の一対の拘束板62,62の代わりに、複数(本実施形態では4個)の固定部材75が用いられている。つまり、第2実施形態の1個の拘束要素60は、一対の固定部材75,75と1枚の多孔部材70によって構成されている。
【0055】
固定部材75は、エンドプレート50に固定するための固定部76と、多孔部材70を固定するための取付部(突出部)78とを備える。
【0056】
固定部76には、エンドプレート50の第2ボルト孔53に一致する一対の挿通孔77,77が設けられている。
【0057】
取付部78は、XY平面に沿って延び、外装体12の短側壁(対向面)17に向けて突出するように、固定部76に対して屈曲されている。固定部材75は、取付部78が電池モジュール24に対してX方向外側に突出するように、エンドプレート50に対して固定されている。また、取付部78は、電池モジュール24のZ方向の両側面、つまりスペーサ45のXY平面に沿って延びる面に対して、概ね面一に配置されている。
【0058】
多孔部材70は、電池モジュール24のX方向両側に位置する一対の取付部78,78のうち、一方のX方向外端から他方のX方向外端にかけて延びる全長である。この多孔部材70は、第1実施形態と同様に、電池モジュール24の拘束に耐えることが可能な固着手段によって、電池モジュール24への固定部材75の取付前に、予め取付部78に固定されている。なお、拘束要素60を電池モジュール24に取り付ける際には、各電池セル26に圧迫荷重をかけて拘束した状態で、多孔部材70を取り付けた固定部材75を嵌め込んで固定する。
【0059】
この第2実施形態の蓄電装置10では、第1実施形態と同様に、Z方向の外力に対する耐圧壊性を効果的に向上できる。また、拘束板62の代わりに一対の固定部材75を用いているため、拘束板本体63分の重量を削減できる。その結果、蓄電装置10の軽量化と強度向上を両立できる。
【0060】
(第3実施形態)
図11から
図13は第3実施形態の蓄電装置10を示す。この第3実施形態では、第2実施形態の平面視L字状の固定部材75の代わりに、四角筒状の固定部材80A,80Bが用いられている。また、第3実施形態では、電池モジュール24のZ方向両側の多孔部材70Aに加え、電池モジュール24のX方向の両側にも多孔部材70Bが配置されている。
【0061】
固定部材80A,80Bは、挿通孔82が形成された固定部81を備える。固定部81に連続する両側部分は、第1の多孔部材70Aを取り付ける第1取付部83,83である。一対の第1取付部83,83のうち、電池モジュール24のZ方向の側面に面一に配置された方に、第1の多孔部材70Aが固定される。固定部81に対向する部分は、第2の多孔部材70Bを取り付ける第2取付部84である。つまり、一対の第1取付部83,83と第2取付部84は、外装体12の短側壁17に向けて突出し、第2の多孔部材70Aを固定するための突出部を構成する。第2取付部84には、固定部81の挿通孔82にボルト68を配置するための貫通孔85が設けられている。
【0062】
固定部材80A,80Bは、第1取付部83,83のX方向の全長が異なる点でのみ、相違している。詳しくは、第1取付部83の全長は、固定部81がエンドプレート50に近接し、第2取付部84が外装体12の短側壁(対向面)17の近接する寸法に設定されている。前述のように、外装体12と電池モジュール24の間には、X方向の一方に電気部品55が配置されている。電気部品55側の固定部材80Aの第1取付部83の全長は、反対側の固定部材80Bの第1取付部83の全長よりも、長い。固定部材80AのX方向外端は、電気部品55(保護ケース56)のX方向外端よりも外方に位置している。
【0063】
第1の多孔部材70Aと第2の多孔部材70Bとは、
図5に示すように、一対の表面材71,71の間にコア材72を備える第1実施形態と同様の構成である。
【0064】
第1の多孔部材70Aは、筒状部73の軸線がZ方向に延びる姿勢で、電池モジュール24に配置される。多孔部材70Aは、電池モジュール24のX方向両側に位置する一対の第1取付部83,83のうち、一方のX方向外端から他方のX方向外端にかけて延びる全長である。多孔部材70Aは、電池モジュール24の拘束に耐えることが可能な固着手段によって、電池モジュール24への固定部材80A,80Bの取付前に、予め第1取付部83に固定される。第1の多孔部材70Aを取り付けた固定部材80A,80Bが、ボルト68を用いてエンドプレート50に取り付けられる。
【0065】
第2の多孔部材70Bは、筒状部73の軸線がX方向に延びる姿勢で、電池モジュール24に配置される。多孔部材70Bは、電池モジュール24のZ方向両側に位置する一対の第2取付部84,84のうち、一方のZ方向外端から他方のZ方向外端にかけて延びる全長である。この多孔部材70Bは、先に電池モジュール24に固定された固定部材80A,80Bの第2取付部84に、多孔部材70Aと同様の固着手段によって固定される。固定部材80A側では、電気部品55と外装体12の短側壁17との間に多孔部材70Bが配置され、固定部材80B側では、エンドプレート50と短側壁17との間に多孔部材70Bが配置される。
【0066】
この第3実施形態の蓄電装置10では、第1の多孔部材70Aによって、Z方向の外力に対する耐圧壊性を向上できるうえ、第2の多孔部材70Bによって、X方向の外力に対する耐圧壊性も向上できる。よって、外装体12自体の剛性や、外装体12とエンドプレート50の間の緩衝空間に依存していた電池セル26や保護を、多孔部材70A,70Bによって効果的に行うことができる。
【0067】
また、固定部材80Aによって、エンドプレート50と第2の多孔部材70Bとの間には空間が形成され、この空間に電気部品55が配置されている。よって、従来では、緩衝空間や保護ケース56の剛性に依存していた電気部品55の保護を、第2の多孔部材70Bによって効果的に行うことができる。しかも、第1の多孔部材70Aと第2の多孔部材70Bとは、同じ固定部材80A,80Bに固定されるため、部品点数の増加を抑制できる。
【0068】
なお、本発明の蓄電装置10は、前記実施形態の構成に限定されず、種々の変更が可能である。
【0069】
多孔部材70のコア材72は、四角筒状をなす多数の筒状部からなる格子状であってもよく、筒状部の断面形状は必要に応じて変更が可能である。また、多孔部材70を配置するための固定部材の構成も、必要に応じて変更が可能である。
【0070】
拘束要素は、上述したようなZ方向の両側に1つずつ配置した一対の拘束要素60とするだけでなく、Z方向の両側または片側に2つ以上の拘束要素を配置してもよい。具体的には、Z方向の片側において、Y方向に間隔を空けて配置した2つ以上の拘束要素をそれぞれエンドプレート50に固定してもよい。この場合は、Z方向の片側に配置した2つ以上の拘束要素の全てに多孔部材70を隣接して配置することも可能であるし、2つ以上の拘束要素のいずれかに多孔部材70を隣接して配置することも可能である。具体的には、Y方向に間隔を空けて配置した2つ以上の拘束要素のうち、電池セル26の正極端子43Aおよび負極端子43Aに最も近い拘束要素にのみ、多孔部材70を隣接して配置することも可能である。
【0071】
電気部品55は、一対のエンドプレート50,50の両方に配置してもよい。また、電池モジュール24のZ方向の端部と外装体12の長側壁16との間にも、電気部品55が配置されてもよい。
【0072】
電池セル26に用いる電極体36は、巻回軸を容器27の長手方向(Z方向)に沿う姿勢で容器27に収容する所謂「縦巻き式」に限られず、巻回軸を容器27の高さ方向(Y方向)に沿う姿勢で容器27内に収容する所謂「横巻き式」であってもよい。また、電極体36は、巻回型に限られず、略四角形のシート形状に形成された複数の正極体、負極体、及びセパレータを容器27の短手方向(X方向)に積層した積層型であってもよい。また、電極体を収容する容器は、アルミニウムやステンレスを用いた金属製の角形容器や、フィルム状の材質で電極体を包装したパウチ型であってもよい。
【0073】
蓄電装置10は、電池セル26を横方向(X方向)に積層配置した横積み式に限られず、
図14に示すように、電池セル26を縦方向(Y方向)に積層配置した横積み式であってもよい。また、多孔部材70は、電池セル26の端子43A,43Bを配置した面や、端子43A,43Bとは反対側に位置する面に配置してもよい。
【0074】
蓄電装置10は、第1実施形態において、多孔部材70は拘束要素60に固定されている態様を示したが、多孔部材70は拘束要素60に固定されていなくてもよい。例えば、多孔部材70は、拘束板62に隣接するように、拘束板本体63に対向して配置される。
【符号の説明】
【0075】
10…蓄電装置
12…外装体
12a…絞り部
12b…拡開部
14…本体
15…開口部
16…長側壁
17…短側壁
18…底壁
20…蓋体
22A…正極外部端子
22B…負極外部端子
24…電池モジュール
26…電池セル
27…容器
28…容器本体
29…長側壁
30…短側壁
31…底壁
32…面取り部
34…蓋
36…電極体
37…正極電極シート
38…負極電極シート
39…セパレータ
41A…正極集電体
41B…負極集電体
43A…正極端子
43B…負極端子
45…スペーサ
46…段部
48,48A,48B…バスバー
50…エンドプレート
51…固定部
52…第1ボルト孔
53…第2ボルト孔
55…電気部品
56…保護ケース
60…拘束要素
62…拘束板
63…拘束板本体
64…開口部
65…固定部
66…挿通孔
68…ボルト
70,70A,70B…多孔部材
71…表面材
72…コア材
73…筒状部
75…固定部材
76…固定部
77…挿通孔
78…取付部
80A,80B…固定部材
81…固定部
82…挿通孔
83…第1取付部
84…第2取付部
85…貫通孔