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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】軸受構造
(51)【国際特許分類】
   F16C 17/10 20060101AFI20220412BHJP
   F02B 39/00 20060101ALI20220412BHJP
【FI】
F16C17/10 Z
F02B39/00 H
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019570336
(86)(22)【出願日】2019-01-07
(86)【国際出願番号】 JP2019000116
(87)【国際公開番号】W WO2019155797
(87)【国際公開日】2019-08-15
【審査請求日】2020-07-06
(31)【優先権主張番号】P 2018021039
(32)【優先日】2018-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】特許業務法人青海特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上田 朗弘
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0003175(US,A1)
【文献】国際公開第2017/082166(WO,A1)
【文献】特開2014-51898(JP,A)
【文献】特開2007-23858(JP,A)
【文献】実開昭52-85054(JP,U)
【文献】特開昭55-112418(JP,A)
【文献】国際公開第2015/166806(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/031013(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0023620(US,A1)
【文献】国際公開第2018/091629(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 17/10
F02B 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンおよびコンプレッサを含む過給機で使用される軸受構造であって、
油路が開口する軸受孔が形成されたハウジングと、
前記軸受孔に設けられ、シャフトが挿通される本体部を有する軸受部材と、
前記本体部の内周面に設けられ、前記油路の開口に対して前記シャフトの軸方向のタービン側およびコンプレッサ側にそれぞれ位置する一対のラジアル軸受面と、
前記本体部における前記軸方向の両端面に設けられた一対のスラスト軸受面と、
前記本体部において前記タービン側および前記コンプレッサ側の各々に形成される複数の連通孔であって各連通孔は、一端が前記本体部の外周面に開口し、他端が前記スラスト軸受面と前記ラジアル軸受面との間に開口する、複数の連通孔と、
前記シャフトの軸方向に交差する方向に前記ハウジングの挿通孔に挿通され、一端側が前記本体部のうち一対の前記ラジアル軸受面の間に挿通され、他端側が前記挿通孔に挿通され、一端から他端まで貫通する貫通孔が形成された挿通部材と、
前記ラジアル軸受面に形成され、一端が前記スラスト軸受面に位置し、他端が前記ラジアル軸受面のタービンインペラ側の端とコンプレッサインペラ側の端との間に位置し、前記軸方向に延在する溝と、
を備え
前記タービン側に設けられる前記連通孔の数は、前記コンプレッサ側に設けられる前記連通孔の数よりも多い、軸受構造。
【請求項2】
前記本体部は、前記スラスト軸受面に形成され、前記本体部の径方向に延在する溝を有する請求項1に記載の軸受構造。
【請求項3】
前記本体部は、前記スラスト軸受面および前記ラジアル軸受面に連続して形成され、前記本体部の径方向および前記シャフトの軸方向に延在し、前記連通孔の他端が開口する溝をさらに備える請求項1または2に記載の軸受構造。
【請求項4】
前記本体部は、前記スラスト軸受面と前記ラジアル軸受面との間に形成され、前記本体部の周方向に延在し、前記連通孔の他端が開口する溝をさらに備える請求項1から3のいずれか1項に記載の軸受構造。
【請求項5】
前記挿通部材は、弾性体で構成される請求項1から4のいずれか1項に記載の軸受構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シャフトを軸支する軸受構造に関する。本出願は2018年2月8日に提出された日本特許出願第2018-021039号に基づく優先権の利益を主張するものであり、その内容は本出願に援用される。
【背景技術】
【0002】
軸受構造は、ベアリングハウジングと、セミフローティング軸受とを備える。セミフローティング軸受は、ベアリングハウジングの軸受孔に収容される。特許文献1のセミフローティング軸受は、環状の本体部を有する。本体部の内周面には、2つのラジアル軸受面が形成される。2つのラジアル軸受面は、軸方向に離隔する。本体部は、2つのラジアル軸受面の間に、油孔が形成される。
【0003】
油孔は、本体部の外周面側から内周面側に潤滑油を導入させる。本体部の内周面側に導入された潤滑油は、ラジアル軸受面を潤滑する。本体部は、軸方向の両端面に、スラスト軸受面が形成される。ラジアル軸受面を潤滑した後の潤滑油は、スラスト軸受面を潤滑する。
【0004】
また、本体部には、連通孔が形成される。連通孔の入口端は、本体部の外周面に開口する。連通孔の出口端は、本体部のスラスト軸受面のうちシャフトの径方向の最も内側に開口する。連通孔は、本体部の外周面側からスラスト軸受面側に潤滑油を導入させる。これにより、ラジアル軸受面側からスラスト軸受面側に移動する潤滑油の量が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2017/082166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
潤滑油は、油孔を通ってラジアル軸受面を潤滑する。ラジアル軸受面を潤滑した後の潤滑油は、スラスト軸受面を潤滑する。また、潤滑油は、連通孔を通ってスラスト軸受面を潤滑する。この場合、ラジアル軸受面およびスラスト軸受面の双方に、最適な油量および油温の潤滑油を供給して軸受の性能を向上させるための設計が煩雑となる。
【0007】
本開示の目的は、軸受の性能を向上させることが可能な軸受構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る軸受構造は、タービンおよびコンプレッサを含む過給機で使用される軸受構造であって、油路が開口する軸受孔が形成されたハウジングと、軸受孔に設けられ、シャフトが挿通される本体部を有する軸受部材と、本体部の内周面に設けられ、油路の開口に対してシャフトの軸方向のタービン側およびコンプレッサ側にそれぞれ位置する一対のラジアル軸受面と、本体部における方向の両端面に設けられた一対のスラスト軸受面と、本体部においてタービン側およびコンプレッサ側の各々に形成される複数の連通孔であって各連通孔は、一端が本体部の外周面に開口し、他端がスラスト軸受面とラジアル軸受面との間に開口する、複数の連通孔と、シャフトの軸方向に交差する方向にハウジングの挿通孔に挿通され、一端側が本体部のうち一対のラジアル軸受面の間に挿通され、他端側が挿通孔に挿通され、一端から他端まで貫通する貫通孔が形成された挿通部材と、ラジアル軸受面に形成され、一端がスラスト軸受面に位置し、他端がラジアル軸受面のタービンインペラ側の端とコンプレッサインペラ側の端との間に位置し、軸方向に延在する溝と、を備え、タービン側に設けられる連通孔の数は、コンプレッサ側に設けられる連通孔の数よりも多い
【0010】
本体部は、スラスト軸受面に形成され、本体部の径方向に延在する溝を有してもよい。
【0011】
本体部は、スラスト軸受面およびラジアル軸受面に連続して形成され、本体部の径方向およびシャフトの軸方向に延在し、連通孔の他端が開口する溝をさらに備えてもよい。
【0012】
本体部は、スラスト軸受面とラジアル軸受面との間に形成され、本体部の周方向に延在し、連通孔の他端が開口する溝をさらに備えてもよい。
【0013】
挿通部材は、弾性体で構成されてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、軸受の性能を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、過給機の概略断面図である。
図2図2は、図1の一点鎖線部分を抽出した図である。
図3図3は、図2の破線部分を抽出した図である。
図4図4は、図2の二点鎖線部分を抽出した図である。
図5A図5Aは、第2実施形態における図3に対応する部位の抽出図である。
図5B図5Bは、第2実施形態の変形例における図3に対応する部位の抽出図である。
図6A図6Aは、第3実施形態における図3に対応する部位の抽出図である。
図6B図6Bは、第3実施形態の変形例における図3に対応する部位の抽出図である。
図7A図7Aは、第4実施形態における図2に対応する部位の抽出図である。
図7B図7Bは、第4実施形態の変形例における図2に対応する部位の抽出図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本開示を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。また本開示に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0018】
図1は、過給機Cの概略断面図である。以下では、図1に示す矢印L方向を過給機Cの左側とする。図1に示す矢印R方向を過給機Cの右側とする。図1に示すように、過給機Cは、過給機本体1を備える。過給機本体1は、ベアリングハウジング2(ハウジング)と、タービンハウジング4と、コンプレッサハウジング6とを含んで構成される。タービンハウジング4は、締結機構3によってベアリングハウジング2の左側に連結される。コンプレッサハウジング6は、締結ボルト5によってベアリングハウジング2の右側に連結される。ベアリングハウジング2、タービンハウジング4、コンプレッサハウジング6は一体化されている。
【0019】
ベアリングハウジング2の外周面には、突起2aが設けられている。突起2aは、タービンハウジング4側に設けられる。突起2aは、ベアリングハウジング2の径方向に突出する。タービンハウジング4の外周面には、突起4aが設けられている。突起4aは、ベアリングハウジング2側に設けられる。突起4aは、タービンハウジング4の径方向に突出する。ベアリングハウジング2とタービンハウジング4は、突起2a、4aを締結機構3によってバンド締結される。締結機構3は、例えば、突起2a、4aを挟持するGカップリングで構成される。
【0020】
ベアリングハウジング2には、軸受孔2bが形成されている。軸受孔2bは、過給機Cの左右方向に貫通する。軸受孔2bには、セミフローティング軸受7(軸受部材)が設けられる。セミフローティング軸受7は、シャフト8を回転自在に軸支する。シャフト8の左端部には、タービンインペラ9が設けられる。タービンインペラ9は、タービンハウジング4内に回転自在に収容されている。シャフト8の右端部には、コンプレッサインペラ10が設けられる。コンプレッサインペラ10は、コンプレッサハウジング6内に回転自在に収容されている。
【0021】
コンプレッサハウジング6には、吸気口11が形成されている。吸気口11は、過給機Cの右側に開口する。吸気口11は、不図示のエアクリーナに接続される。締結ボルト5によってベアリングハウジング2とコンプレッサハウジング6が連結された状態では、ディフューザ流路12が形成される。ディフューザ流路12は、ベアリングハウジング2とコンプレッサハウジング6の対向面によって形成される。ディフューザ流路12は、空気を昇圧する。ディフューザ流路12は、シャフト8の径方向(以下、単に径方向と称す)内側から外側に向けて環状に形成されている。ディフューザ流路12は、径方向内側において、コンプレッサインペラ10を介して吸気口11に連通している。
【0022】
コンプレッサハウジング6には、コンプレッサスクロール流路13が設けられている。コンプレッサスクロール流路13は、環状である。コンプレッサスクロール流路13は、例えば、ディフューザ流路12よりも径方向外側に位置する。コンプレッサスクロール流路13は、不図示のエンジンの吸気口と、ディフューザ流路12とに連通している。コンプレッサインペラ10が回転すると、吸気口11からコンプレッサハウジング6内に空気が吸気される。吸気された空気は、コンプレッサインペラ10の翼間を流通する過程において加圧加速される。加圧加速された空気は、ディフューザ流路12およびコンプレッサスクロール流路13で昇圧される。昇圧された空気は、エンジンの吸気口に導かれる。
【0023】
タービンハウジング4には、吐出口14が形成されている。吐出口14は、過給機Cの左側に開口する。吐出口14は、不図示の排気ガス浄化装置に接続される。また、タービンハウジング4には、接続路15と、タービンスクロール流路16とが設けられている。タービンスクロール流路16は、環状である。タービンスクロール流路16は、例えば、接続路15よりもタービンインペラ9の径方向外側に位置する。タービンスクロール流路16は、不図示のガス流入口と連通する。ガス流入口には、不図示のエンジンの排気マニホールドから排出される排気ガスが導かれる。接続路15は、タービンスクロール流路16と吐出口14とを接続する。したがって、ガス流入口からタービンスクロール流路16に導かれた排気ガスは、接続路15およびタービンインペラ9を介して吐出口14に導かれる。吐出口14に導かれる排気ガスは、その流通過程においてタービンインペラ9を回転させることとなる。
【0024】
タービンインペラ9の回転力は、シャフト8を介してコンプレッサインペラ10に伝達される。上記のとおりに、空気は、コンプレッサインペラ10の回転力によって昇圧されて、エンジンの吸気口に導かれる。
【0025】
図2は、図1の一点鎖線部分を抽出した図である。図2は、第1実施形態における軸受構造Sの構成を表している。図2に示すように、軸受構造Sは、ベアリングハウジング2と、セミフローティング軸受7と、シャフト8とを含んで構成される。ベアリングハウジング2には、油路2cが形成される。油路2cには、不図示のオイルポンプから送出された潤滑油が導入される。油路2cは、軸受孔2bに開口する。油路2cから軸受孔2bに潤滑油が流入する。軸受孔2bに流入した潤滑油は、軸受孔2bに設けられたセミフローティング軸受7に供給される。
【0026】
セミフローティング軸受7は、環状の本体部7aを有する。本体部7aは、外周面7b、内周面7c、2つの端面7dを有する。2つの端面7dは、シャフト8の軸方向(以下、単に軸方向と称す)の端面である。2つの端面7dは、軸方向に離隔している。本体部7aの内部(内周面7c側)には、シャフト8が挿通されている。
【0027】
本体部7aは、2つの大径部7e1、7e2と、小径部7fとを有する。2つの大径部7e1、7e2は、軸方向に離隔している。大径部7e1は、本体部7aのタービンインペラ9側の端部に設けられる。大径部7e2は、本体部7aのコンプレッサインペラ10側の端部に設けられる。2つの大径部7e1、7e2は、外径が第1の径を有し、内径が第2の径を有する。
【0028】
小径部7fは、2つの大径部7e1、7e2の間に配される。小径部7fは、2つの大径部7e1、7e2を接続する。小径部7fは、外径が第1の径より小さい第3の径を有し、内径が第2の径より大きい第4の径を有する。大径部7e1と小径部7fの間には、傾斜部7g1が形成される。大径部7e2と小径部7fの間には、傾斜部7g2が形成される。
【0029】
本体部7aの内周面7cには、2つのラジアル軸受面7h1、7h2が形成されている。2つのラジアル軸受面7h1、7h2は、シャフト8の軸方向に離隔している。ラジアル軸受面7h1は、大径部7e1の内周面7cに形成される。ラジアル軸受面7h2は、大径部7e2の内周面7cに形成される。油路2cが軸受孔2bと連通する開口は、2つのラジアル軸受面7h1、7h2の間に位置する。換言すれば、一対のラジアル軸受面7h1、7h2は、油路2cの開口よりもシャフト8の軸方向の一方側および他方側にそれぞれ位置する。2つのラジアル軸受面7h1、7h2は、それぞれ円筒形状を有する。
【0030】
本体部7aの外周面7bには、2つのダンパ部7i1、7i2が形成されている。2つのダンパ部7i1、7i2は、シャフト8の軸方向に離隔している。ダンパ部7i1は、大径部7e1の外周面7bに形成される。ダンパ部7i2は、大径部7e2の外周面7bに形成される。油路2cが軸受孔2bと連通する開口は、2つのダンパ部7i1、7i2の間に位置する。2つのダンパ部7i1、7i2は、それぞれ円筒形状を有する。
【0031】
油路2cは、軸受孔2bの内周面のうち、小径部7fの外周面7bと対向する位置(領域)に開口する。油路2cは、小径部7fと軸受孔2bの間の空間S1に連通する。油路2cは、シャフト8よりも鉛直上方で軸受孔2bに開口している。
【0032】
本体部7aの2つの端面(両端面)7dには、2つのスラスト軸受面7j1、7j2がそれぞれ形成されている。2つのスラスト軸受面7j1、7j2は、シャフト8の軸方向に離隔している。スラスト軸受面7j1は、大径部7e1の端面7dに形成される。スラスト軸受面7j2は、大径部7e2の端面7dに形成される。2つのスラスト軸受面7j1、7j2は、それぞれ円環形状を有する。
【0033】
本体部7aには、貫通孔7kが設けられる。貫通孔7kは、小径部7fに設けられる。すなわち、貫通孔7kは、一対のラジアル軸受面7h1、7h2の間に設けられる。貫通孔7kは、シャフト8を挟んで油路2cと反対側に配される。貫通孔7kは、油路2cと軸方向の位置が一部重なる。ただし、貫通孔7kは、油路2cに対して、軸方向に完全にずれた位置に設けられてもよい。貫通孔7kは、小径部7fを内周面7cから外周面7bまで貫通する。貫通孔7kは、小径部7fを径方向に貫通している。ベアリングハウジング2には、ピン孔(挿通孔)2dが形成されている。ピン孔2dは、軸受孔2bを挟んで油路2cと反対側に配される。ピン孔2dは、貫通孔7kとシャフト8の径方向に対向する位置に形成される。ピン孔2dは、軸受孔2bを形成する壁部を貫通している。
【0034】
位置決めピン20(挿通部材)は、ベアリングハウジング2のピン孔2dに挿通される。位置決めピン20は、シャフト8の軸方向に交差する方向に挿通される。位置決めピン20の一端側は、貫通孔7kに挿通される。位置決めピン20の他端側は、ピン孔2dに挿通される。位置決めピン20の少なくとも一部は、ピン孔2dに配される。位置決めピン20は、図2中、下側からピン孔2dに圧入される。しかし、これに限定されず、例えば、位置決めピン20は、ピン孔2dにネジ締結されるボルトで構成されてもよい。位置決めピン20の先端は、貫通孔7k内、あるいは、シャフト8と小径部7fの間の空間S2内に位置する。位置決めピン20によって、セミフローティング軸受7の周方向の回転、および、軸方向の移動が規制される。位置決めピン20と貫通孔7kとの間には、僅かな隙間が形成されてもよい。本実施形態では、位置決めピン20の先端は、本体部7aの内周面7cと面一である。ただし、位置決めピン20の先端は、内周面7cよりも径方向内側に突出してもよい。また、位置決めピン20の先端は、内周面7cよりも径方向外側に位置してもよい。
【0035】
位置決めピン20は、一端から他端まで貫通する貫通孔20aを有する。貫通孔20aは、位置決めピン20の長手方向に延在する。位置決めピン20の長手方向は、ピン孔2d、および、貫通孔7kに位置決めピン20が挿入される方向である。貫通孔20aの一端は、小径部7fとシャフト8の間の空間S2に連通(開口)する。貫通孔20aの他端は、軸受孔2bを形成する壁部の外側(外部)の空間S3に連通(開口)する。
【0036】
本実施形態では、本体部7aは、小径部7fの内周面7cから外周面7bまでを貫通する単一の貫通孔7kを有する。すなわち、本体部7aは、小径部7fの内周面7cから外周面7bまでを貫通する貫通孔として、貫通孔7kのみが形成される。つまり、本体部7aには、特許文献1に開示されるような油孔が形成されていない。
【0037】
シャフト8は、小径部8aと、大径部8bと、縮径部8cとを備える。小径部8aは、本体部7aに挿通される。大径部8bは、小径部8aよりも径が大きく、小径部8aと一体成形される。縮径部8cは、小径部8aよりも径が小さく、小径部8aと一体成形される。大径部8bは、図2中、小径部8aの左側(タービンインペラ9側)に位置する。縮径部8cは、図2中、小径部8aの右側(コンプレッサインペラ10側)に位置する。大径部8bと縮径部8cは、小径部8aとは別部材で構成されてもよい。大径部8bと縮径部8cは、小径部8aに着脱可能に構成されてもよい。
【0038】
大径部8bは、本体部7aに軸方向に対向している。大径部8bの外径は、本体部7aの大径部7e1の内径よりも大きい。大径部8bの外径は、本体部7aの大径部7e1の外径と大凡等しい。なお、大径部8bの外径は、大径部7e1の外径より小さくてもよいし、大径部7e1の外径よりも大きくてもよい。
【0039】
縮径部8cには、油切り部材21が設けられている。油切り部材21は、本体部7aに軸方向に対向している。油切り部材21は、環状部材である。油切り部材21は、シャフト8を伝ってコンプレッサインペラ10側に流れる潤滑油を径方向外側に飛散させる。つまり、油切り部材21により、コンプレッサインペラ10側への潤滑油の漏出が抑制される。
【0040】
油切り部材21のうち、本体部7aと対向する面の外径は、大径部7e2の内径よりも大きい。油切り部材21のうち、本体部7aと対向する面の外径は、大径部7e2の外径と大凡等しい。なお、油切り部材21のうち、本体部7aと対向する面の外径は、大径部7e2の外径より小さくてもよいし、大径部7e2の外径よりも大きくてもよい。
【0041】
図3は、図2の破線部分を抽出した図である。図3では、潤滑油の流れを矢印で示す。また、スラスト軸受面7j1側とスラスト軸受面7j2側の構造は実質的に等しい。説明の重複を避けるため、スラスト軸受面7j1側の構造について詳述する。
【0042】
本体部7aには、連通孔22が設けられている。連通孔22は、本体部7aの周方向に離隔して複数(例えば、3つ)設けられる。複数の連通孔22は、本体部7aの周方向に等間隔に配される。ただし、連通孔22の数は、2つでもよいし、4つ以上あってもよい。また、連通孔22の数は、複数ではなく、1つであってもよい。連通孔22は、本体部7aの一部を貫通する。連通孔22は、軸方向に対して傾斜した方向に延在する。
【0043】
連通孔22の入口端22aは、本体部7aの外周面7bに開口している。連通孔22の入口端22aは、外周面7bのうちダンパ部7i1と小径部7fとを接続する傾斜部7g1に開口している。ただし、連通孔22の入口端22aは、小径部7fの外周面7bに開口してもよい。すなわち、連通孔22の入口端22aは、2つのダンパ部7i1、7i2の間に開口してもよい。また、連通孔22の入口端22aは、ダンパ部7i1に開口してもよい。なお、本実施形態において、傾斜部7g1、7g2は、小径部7fから大径部7e1、7e2に向かって外径が漸次大きくなるテーパ形状である。しかし、これに限定されず、傾斜部7g1、7g2は、軸方向に対して垂直な面を有する段差形状であってもよい。連通孔22の出口端22bは、スラスト軸受面7j1とラジアル軸受面7h1との間に開口している。すなわち、連通孔22の出口端22bは、スラスト軸受面7j1とラジアル軸受面7h1とに跨って開口している。
【0044】
本体部7aには、油溝23が設けられている。油溝23は、本体部7aの周方向に離隔して複数(例えば、3つ)設けられる。複数の油溝23は、本体部7aの周方向に等間隔に配される。ただし、油溝23の数は、2つでもよいし、4つ以上あってもよい。また、油溝23の数は、複数ではなく、1つであってもよい。本実施形態では、油溝23は、連通孔22と同数設けられる。また、油溝23は、本体部7aの周方向において、連通孔22と同じ位置に配される。油溝23は、ラジアル軸受面7h1に形成される。油溝23は、軸方向と平行な方向に延在する。
【0045】
油溝23の基端23aは、本体部7aのスラスト軸受面7j1に開口している。油溝23の基端23aは、スラスト軸受面7j1のうち径方向の最も内側の位置に開口している。油溝23の基端23aは、連通孔22の出口端22bに接続される。つまり、連通孔22は、油溝23と連続している。換言すれば、連通孔22は、油溝23に開口している。なお、本実施形態では、連通孔22は、本体部7aの周方向において、油溝23と互いに等しい位置に配される。しかし、これに限定されず、連通孔22は、本体部7aの周方向において、油溝23と互いに異なる位置に配されてもよい。例えば、連通孔22は、軸方向における周方向位置が変化するように傾斜して延在してもよい。その場合においても、連通孔22の出口端22bは、油溝23と連続していてもよい。油溝23の終端23bは、軸方向において、傾斜部7g1からタービンインペラ9側に所定距離離隔した位置に形成される。油溝23の終端23bは、軸方向において、ラジアル軸受面7h1のタービンインペラ9側の端とコンプレッサインペラ10側の端の間に形成される。
【0046】
本実施形態において、油溝23は、大径部7e1を軸方向に貫通しない。ただし、油溝23は、大径部7e1を軸方向に貫通してもよい。例えば、油溝23は、シャフト8の周方向の幅、径方向の高さを、大径部7e1を軸方向に貫通しない場合よりも小さくして、軸方向に長くしてもよい。油溝23は、幅や高さに合わせて、軸方向の長さを変更(調整)すればよい。したがって、油溝23は、幅または高さを小さくすることで、軸方向の長さを大きくし、大径部7e1の軸方向に貫通させてもよい。
【0047】
なお、連通孔22の出口端22bは、スラスト軸受面7j1のみに開口してもよい。この場合、スラスト軸受面7j1は、連通孔22の出口端22bと油溝23の基端23aを接続する溝を別途備えるとよい。また、連通孔22の出口端22bは、ラジアル軸受面7h1のみに開口してもよい。この場合、油溝23により、連通孔22の出口端22bとスラスト軸受面7j1とが接続される。
【0048】
図4は、図2の二点鎖線部分を抽出した図である。図4では、潤滑油の流れを矢印で示す。潤滑油は、油路2cから軸受孔2bに供給される。潤滑油は、軸受孔2bの内周面と本体部7aの外周面との間の空間S1に供給される。上述したように、本体部7aは、小径部7fに貫通孔7kが1つだけ形成されている。貫通孔7kには、位置決めピン20が挿入される。貫通孔7kは、位置決めピン20によって閉塞される。そのため、潤滑油は、空間S1から貫通孔7kを通って空間S2に進入することが困難になる。
【0049】
空間S1に供給された潤滑油は、図4に示す左右方向(大径部7e1側および大径部7e2側)へと移動する。大径部7e1側に移動した潤滑油は、ダンパ部7i1と軸受孔2bの間の隙間に流入する。大径部7e2側に移動した潤滑油は、ダンパ部7i2と軸受孔2bの間の隙間に流入する。潤滑油は、ダンパ部7i1をコンプレッサインペラ10側からタービンインペラ9側に向かって流れる。潤滑油は、ダンパ部7i2をタービンインペラ9側からコンプレッサインペラ10側に向かって流れる。
【0050】
ダンパ部7i1、7i2に供給された潤滑油の油膜圧力によってシャフト8の振動が吸収(抑制)される。ダンパ部7i1を通過した潤滑油は、大径部8bと軸受孔2bとの間の隙間を通過し、軸受孔2bの外部に排出される。ダンパ部7i2を通過した潤滑油は、油切り部材21と軸受孔2bとの間の隙間を通過し、軸受孔2bの外部に排出される。
【0051】
また、空間S1に供給された潤滑油の一部は、連通孔22に流入する。以下、連通孔22に流入する潤滑油の流れについて、再び図3を用いて説明する。
【0052】
図3に示すように、空間S1に供給された潤滑油の一部は、連通孔22の入口端22aから連通孔22の内部に流入する。潤滑油は、連通孔22の内部を通って出口端22bから排出される。出口端22bから排出された潤滑油は、シャフト8の軸方向と、シャフト8の軸方向と垂直な方向とに分岐して流れる。
【0053】
軸方向に流れる潤滑油は、ラジアル軸受面7h1を潤滑する。軸方向と垂直な方向に流れる潤滑油は、スラスト軸受面7j1を潤滑する。このように、本実施形態では、スラスト軸受面7j1の潤滑とラジアル軸受面7h1の潤滑とが別個に行われる。なお、本体部7aのスラスト軸受面7j1側とスラスト軸受面7j2側の構造は実質的に等しい。そのため、スラスト軸受面7j2の潤滑とラジアル軸受面7h2の潤滑も別個に行われる。
【0054】
軸方向と垂直な方向に流れる潤滑油は、大径部8bとスラスト軸受面7j1との隙間を流れる。潤滑油は、スラスト軸受面7j1の内径側から外径側に向かって流れる。スラスト軸受面7j1を通過した潤滑油は、大径部8bと軸受孔2bとの隙間を通過し、軸受孔2bの外部に排出される。同様に、スラスト軸受面7j2を通過した潤滑油は、油切り部材21と軸受孔2bとの隙間を通過し、軸受孔2bの外部に排出される。
【0055】
本体部7aは、油切り部材21および大径部8bによって軸方向に挟まれている。本体部7aと大径部8bとの隙間には、潤滑油が供給されている。本体部7aと油切り部材21との隙間には、潤滑油が供給されている。本体部7aは、位置決めピン20によって軸方向の移動が規制される。シャフト8が軸方向に移動すると、油切り部材21または大径部8bが本体部7aとの間の油膜圧力によって支持される。これにより、シャフト8は、軸方向の移動が規制される。すなわち、本体部7aの軸方向の両端面は、スラスト軸受面7j1、7j2として機能する。スラスト軸受面7j1、7j2は、スラスト荷重を受ける。
【0056】
軸方向に流れる潤滑油は、シャフト8の外周面とラジアル軸受面7h1との隙間を流れる。潤滑油は、ラジアル軸受面7h1をタービンインペラ9側からコンプレッサインペラ10側に向かって流れる。同様に、シャフト8の外周面とラジアル軸受面7h2との隙間に導かれる潤滑油は、ラジアル軸受面7h2をコンプレッサインペラ10側からタービンインペラ9側に向かって流れる。シャフト8は、シャフト8の外周面とラジアル軸受面7h1、7h2の間に供給された潤滑油の油膜圧力によって回転自在に軸支される。ラジアル軸受面7h1を通過した潤滑油は、空間S2に排出される。同様に、ラジアル軸受面7h2を通過した潤滑油は、空間S2に排出される。
【0057】
図4に戻り、ラジアル軸受面7h1、7h2から空間S2に排出された潤滑油は、空間S2内をシャフト8の周方向に沿って鉛直下側(図4中、下側)に向かって移動する。図4中、下側に移動した潤滑油は、空間S2から位置決めピン20に形成された貫通孔20aに流入する。貫通孔20aに流入した潤滑油は、空間S2から空間S3に排出される。
【0058】
本実施形態のセミフローティング軸受7は、小径部7fの外周面7b側から内周面7c側に潤滑油を導入するための油孔が設けられていない。ここで、小径部7fには、貫通孔7kが設けられている。しかし、貫通孔7kには、位置決めピン20が挿入されている。そのため、潤滑油は、貫通孔7kを介して外周面7b(空間S1)側から内周面7c(空間S2)側に進入することが困難になる。
【0059】
また、位置決めピン20には、貫通孔20aが形成されている。貫通孔20aにより、空間S2に供給(蓄積)された潤滑油が軸受孔2bの外部に排出される。そのため、潤滑油は、空間S2から一対のスラスト軸受面7j1、7j2が離隔する方向(以下、単に離隔方向という)に向かって流れ難くなる。換言すれば、潤滑油は、ラジアル軸受面7h1、7h2を離隔方向に向かって流れ難くなる。
【0060】
潤滑油がラジアル軸受面7h1、7h2を離隔方向に向かって流れると、スラスト軸受面7j1、7j2に供給される潤滑油の温度が高くなる。その結果、スラスト軸受面7j1、7j2の負荷容量が小さくなる。また、スラスト軸受面7j1、7j2に必要な潤滑油の油量を供給するため、ラジアル軸受面7h1、7h2に供給する潤滑油の油量は、ラジアル軸受面7h1、7h2に最適な潤滑油の油量よりも多く必要になる。そのため、ラジアル軸受面7h1、7h2の油膜温度が小さくなる。その結果、ラジアル軸受面7h1、7h2のメカロスが大きくなる。スラスト軸受面7j1、7j2の最適な油量および油温は、ラジアル軸受面7h1、7h2の最適な油量および油温と異なる。そのため、潤滑油を、ラジアル軸受面7h1、7h2を経由してスラスト軸受面7j1、7j2に供給した場合、それぞれの軸受面に供給する油量および油温の最適化が困難になる。その結果、軸受性能の向上が困難になる。潤滑油を、スラスト軸受面7j1、7j2を経由してラジアル軸受面7h1、7h2に供給した場合も同様である。
【0061】
これに対し、本実施形態では、潤滑油は、連通孔22の出口端22bから、シャフト8の軸方向と、シャフト8の軸方向と垂直な方向とに分岐して流れる。換言すれば、潤滑油は、連通孔22の出口端22bから、スラスト軸受面7j1、7j2と、ラジアル軸受面7h1、7h2とに分岐して流れる。すなわち、連通孔22は、潤滑油を、スラスト軸受面7j1、7j2と、ラジアル軸受面7h1、7h2とに別個に供給にしている。そのため、セミフローティング軸受7は、スラスト軸受面7j1、7j2に供給される潤滑油の温度を、ラジアル軸受面7h1、7h2を潤滑した後の潤滑油が供給される場合よりも、小さくできる。その結果、セミフローティング軸受7は、スラスト軸受面7j1、7j2の負荷容量を大きくすることができる。
【0062】
また、潤滑油を別個に供給していることから、スラスト軸受面7j1、7j2とラジアル軸受面7h1、7h2に最適な油量、油温、メカロス等をそれぞれ独立して設計することができる。例えば、図3に示される油溝23の幅、高さ、あるいは、長さを調整することで、ラジアル軸受面7h1、7h2に最適な油量、油温、メカロス等を調整することができる。また、スラスト軸受面7j1、7j2に径方向に延在する油溝を形成し、形成した油溝の幅、高さ、あるいは、長さを調整することで、スラスト軸受面7j1、7j2に最適な油量、油温、メカロス等を調整するようにしてもよい。
【0063】
このように、本実施形態では、連通孔22は、スラスト軸受面7j1、7j2とラジアル軸受面7h1、7h2とに潤滑油を別個に供給する。そのため、セミフローティング軸受7は、スラスト軸受面7j1、7j2およびラジアル軸受面7h1、7h2の設計を独立して容易に行うことができる。これにより、スラスト軸受面7j1、7j2およびラジアル軸受面7h1、7h2を流れる潤滑油の油量、油温、および、メカロスの最適化がしやすくなる。その結果、セミフローティング軸受7の軸受性能を向上させることができる。
【0064】
図5Aは、第2実施形態における図3に対応する部位の抽出図である。図5Bは、第2実施形態の変形例における図3に対応する部位の抽出図である。第2実施形態では、スラスト軸受面7j1側とスラスト軸受面7j2側の構造は実質的に等しい。説明の重複を避けるため、スラスト軸受面7j1側の構造について詳述する。
【0065】
第2実施形態は、スラスト軸受面7j1およびラジアル軸受面7h1に連続する油溝30が形成されている点で、上記実施形態と異なる。また、連通孔22の出口端22bが油溝30に開口している点で、上記実施形態と異なる。
【0066】
図5Aおよび図5Bに示すように、本体部7aには、油溝30が形成される。油溝30は、シャフト8の中心軸を含む断面の形状が略L字形状である。油溝30は、本体部7aの周方向に離隔して複数(例えば、3つ)設けられる。複数の油溝30は、本体部7aの周方向に等間隔に配される。ただし、油溝30の数は、2つでもよいし、4つ以上あってもよい。また、油溝30の数は、複数ではなく、1つであってもよい。第2実施形態では、油溝30は、連通孔22と同数設けられる。また、油溝30は、本体部7aの周方向において、連通孔22と同じ位置に配される。油溝30は、スラスト軸受面7j1とラジアル軸受面7h1とに連続して形成される。油溝30は、第1の油溝30aと、第2の油溝30bを備える。
【0067】
第1の油溝30aは、スラスト軸受面7j1に形成される。第1の油溝30aは、本体部7aの径方向に延在する。第2の油溝30bは、ラジアル軸受面7h1に形成される。第2の油溝30bは、シャフト8の軸方向に延在する。第1の油溝30aと第2の油溝30bは、スラスト軸受面7j1とラジアル軸受面7h1の間で連続している。
【0068】
第1の油溝30aの端部は、本体部7aの外周面7bから径方向の内側に所定距離離隔した位置に形成される。すなわち、第1の油溝30aの端部は、径方向において、スラスト軸受面7j1の径方向外側の端と径方向内側の端の間に形成される。第1の油溝30aは、大径部7e1を径方向に貫通しない。ただし、第1の油溝30aは、幅や高さを小さく調整して、大径部7e1を径方向に貫通してもよい。
【0069】
第2の油溝30bの端部は、軸方向において、傾斜部7g1からタービンインペラ9側に所定距離離隔した位置に形成される。第2の油溝30bの端部は、軸方向において、ラジアル軸受面7h1のタービンインペラ9側の端とコンプレッサインペラ10側の端の間に形成される。第2の油溝30bは、大径部7e1を軸方向に貫通しない。ただし、第2の油溝30bは、幅や高さを小さく調整して、大径部7e1を軸方向に貫通してもよい。
【0070】
図5Aに示すように、連通孔22の出口端22bは、油溝30に開口している。具体的に、連通孔22の出口端22bは、第1の油溝30aに開口している。ただし、図5Bに示すように、連通孔22の出口端22bは、第2の油溝30bに開口してもよい。また、図示していないが、連通孔22の出口端22bは、第1の油溝30aと第2の油溝30bとが接続する接続部に開口してもよい。この場合、連通孔22の出口端22bは、第1の油溝30aと第2の油溝30bとの間に跨って開口する。
【0071】
第2実施形態では、連通孔22の出口端22bは、油溝30に接続されている。これにより、連通孔22は、出口端22bと油溝30の接続位置に関わらず、潤滑油を油溝30の内部に供給することができる。例えば、図5Aに示すように、連通孔22の出口端22bが第1の油溝30aに接続されている場合でも、連通孔22は、潤滑油を第2の油溝30bに供給することができる。その結果、セミフローティング軸受7は、スラスト軸受面7j1、7j2の潤滑とラジアル軸受面7h1、7h2の潤滑を別個に行うことができる。また、連通孔22は、出口端22bと油溝30の接続位置を変更することで、潤滑油の油量や油温等の調整が可能である。その結果、セミフローティング軸受7の軸受性能を容易に向上させることができる。なお、第2実施形態において、連通孔22の入口端22aは、本体部7aの外周面7bに開口している。入口端22aは、ダンパ部7i1、7i2と、傾斜部7g1、7g2と、小径部7fのいずれに開口していてもよい。
【0072】
図6Aは、第3実施形態における図3に対応する部位の抽出図である。図6Bは、第3実施形態の変形例における図3に対応する部位の抽出図である。第3実施形態では、スラスト軸受面7j1側とスラスト軸受面7j2側の構造は実質的に等しい。説明の重複を避けるため、スラスト軸受面7j1側の構造について詳述する。
【0073】
第3実施形態は、スラスト軸受面7j1およびラジアル軸受面7h1が、全周に亘って面取りされた面取部(あるいは溝)によって接続されている点で、上記実施形態と異なる。
【0074】
図6Aに示すように、本体部7aには、面取部(溝)40が形成される。面取部40は、スラスト軸受面7j1とラジアル軸受面7h1の間に形成される。面取部40は、本体部7aの周方向に延在する。第3実施形態では、面取部40は、本体部7aの全周に亘って延在する。しかし、これに限定されず、面取部40は、本体部7aの全周に亘って延在しなくてもよい。例えば、面取部40は、本体部7aの周方向の一部に延在してもよい。具体的に、面取部40は、本体部7aの周方向において、複数の連通孔22が設けられる領域にのみ形成される。これにより、面取部40は、本体部7aの全周に亘って延在せずとも、本体部7aの周方向に設けられた複数の連通孔22のすべての出口端22bと連通することができる。ただし、面取部40を本体部7aの全周に亘って形成する方が機械加工性や製作性が向上するため、面取部40は、本体部7aの全周に亘って形成されることが好ましい。面取部40は、ラジアル軸受面7h1からスラスト軸受面7j1に近づくほど、径方向外側となる向きに傾斜する。面取部40の面取り面(傾斜面)のうち周方向と直交する方向の幅は、連通孔22の径(直径)よりも大きい。面取部40は、シャフト8の中心軸を含む断面の形状が、直線状であってもよいし、湾曲していてもよい。連通孔22の出口端22bは、面取部40(面取り面)に開口している。
【0075】
図6Bに示すように、第3実施形態の変形例では、本体部7aには、溝41が形成される。溝41は、スラスト軸受面7j1とラジアル軸受面7h1の間に形成される。溝41は、本体部7aの周方向に延在する。第3実施形態の変形例では、溝41は、本体部7aの全周に亘って延在する。しかし、これに限定されず、溝41は、本体部7aの全周に亘って延在しなくてもよい。例えば、溝41は、本体部7aの周方向の一部に延在してもよい。具体的に、溝41は、本体部7aの周方向において、複数の連通孔22が設けられる領域にのみ形成される。これにより、溝41は、本体部7aの全周に亘って延在せずとも、本体部7aの周方向に設けられた複数の連通孔22のすべての出口端22bと連通することができる。ただし、溝41を本体部7aの全周に亘って形成する方が機械加工性や製作性が向上するため、溝41は、本体部7aの全周に亘って形成されることが好ましい。溝41は、シャフト8の中心軸を含む断面の形状が、矩形状である。溝41の軸方向の幅は、連通孔22の径(直径)よりも大きい。溝41の径方向の幅は、連通孔22の径(直径)よりも大きい。ただし、溝41は、シャフト8の中心軸を含むの断面の形状が、多角形状であってもよいし、円弧形状であってもよい。連通孔22の出口端22bは、溝41に開口している。
【0076】
本体部7aは、図6Aおよび図6Bにおいて破線で示す油溝23を有する。第3実施形態では、連通孔22は、本体部7aの周方向において、油溝23と互いに異なる位置に配される。油溝23は、面取部40または溝41と連通する。連通孔22から排出された潤滑油は、面取部40または溝41により本体部7aの周方向に沿って流れる。周方向に流れた潤滑油は、油溝23に導入される。つまり、油溝23には、面取部40または溝41を介して連通孔22から排出された潤滑油が流入する。このように、油溝23は、連通孔22と周方向において互いに異なる位置に配されていてもよい。ただし、第3実施形態においても、図3に示すように、油溝23は、連通孔22と本体部7aの周方向において同じ位置に配されてもよい。
【0077】
連通孔22の出口端22bから排出された潤滑油は、面取部40または溝41に供給される。面取部40または溝41は、本体部7aの全周に亘って延在する。面取部40または溝41に供給された潤滑油は、スラスト軸受面7j1およびラジアル軸受面7h1のそれぞれに分岐して流れる。その結果、セミフローティング軸受7は、スラスト軸受面7j1の全面の潤滑とラジアル軸受面7h1の全面の潤滑を別個に行うことができる。
【0078】
面取部40および溝41の幅は、連通孔22の径(直径)より大きい。そのため、連通孔22の中心軸がスラスト軸受面7j1とラジアル軸受面7h1の接続部から僅かにずれている場合でも、連通孔22は、潤滑油を面取部40または溝41に供給できる。
【0079】
第3実施形態では、本体部7aには、面取部40または溝41が形成される。これにより、連通孔22の出口端22bの開口位置のばらつきをある程度許容することができる。連通孔22の出口端22bの開口位置の精度が高精度でなくても、連通孔22は、面取部40または溝41と連通することができる。そのため、セミフローティング軸受7の製造が容易になる。
【0080】
図7Aは、第4実施形態における図2に対応する部位の抽出図である。図7Bは、第4実施形態の変形例における図2に対応する部位の抽出図である。第4実施形態は、潤滑油を排出する位置決めピン50または中空部材60が弾性体で構成される点で、上記実施形態と異なる。
【0081】
位置決めピン50(挿通部材)は、ベアリングハウジング2のピン孔(挿通孔)2dに挿通される。位置決めピン50は、シャフト8の軸方向に交差する方向に挿通される。位置決めピン50の一端側は、貫通孔7kに挿通される。位置決めピン50の他端側は、ピン孔2dに挿通される。位置決めピン50の少なくとも一部は、ピン孔2dに配される。位置決めピン50の先端は、貫通孔7k内、あるいは、シャフト8と小径部7fの間の空間S2内に位置する。位置決めピン50によって、セミフローティング軸受7の周方向の回転、および、軸方向の移動が規制される。
【0082】
位置決めピン50は、一端から他端まで貫通する貫通孔50aを有する。貫通孔50aは、位置決めピン50の長手方向に延在する。位置決めピン50の長手方向は、ピン孔2d、および、貫通孔7kに位置決めピン50が挿入される方向である。貫通孔50aの一端は、小径部7fとシャフト8の間の空間S2に連通(開口)する。貫通孔50aの他端は、軸受孔2bを形成する壁部の外側(外部)の空間S3に連通(開口)する。位置決めピン50は、図7A中、下側からピン孔2dに圧入される。位置決めピン50は、図7A中、下側から貫通孔7kに圧入される。位置決めピン50は、弾性体で構成される。位置決めピン50は、例えば、圧入時に弾性変形することが可能なゴムなどの部材で構成される。
【0083】
位置決めピン50が貫通孔7kに圧入されることにより、貫通孔7kと位置決めピン50の隙間が小さくなる。そのため、第4実施形態は、上記実施形態よりも、潤滑油が空間S1から空間S2に進入しにくい。これにより、セミフローティング軸受7は、スラスト軸受面7j1、7j2とラジアル軸受面7h1、7h2に潤滑油を別個に供給しやすくなる。そのため、スラスト軸受面7j1、7j2およびラジアル軸受面7h1、7h2の設計をより容易に行うことができる。その結果、セミフローティング軸受7の軸受性能を向上させることができる。
【0084】
図7Aでは、位置決めピン50が弾性体により構成される例について説明した。しかし、これに限定されず、軸受構造Sは、位置決めピン50に代えて、図7Bに示すように、中空部材60(挿通部材)を備えてもよい。その場合、位置決めピン20は、弾性体により構成されなくてもよい。また、位置決めピン20には、貫通孔20aが形成されなくてもよい。
【0085】
図7Bに示すように、本体部7aには、貫通孔61が設けられる。貫通孔61は、小径部7fに設けられる。貫通孔61は、シャフト8を挟んで油路2cと反対側に配される。貫通孔61は、小径部7fを内周面7cから外周面7bまで貫通する。ベアリングハウジング2には、挿通孔62が形成される。挿通孔62は、軸受孔2bを挟んで油路2cと反対側に配される。挿通孔62は、貫通孔61とシャフト8の径方向に対向する位置に形成される。挿通孔62は、軸受孔2bを形成する壁部を貫通している。
【0086】
中空部材60は、ベアリングハウジング2の挿通孔62に挿通される。中空部材60は、シャフト8の軸方向に交差する方向に挿通される。中空部材60の一端側は、貫通孔61に挿通される。中空部材60の他端側は、挿通孔62に挿通される。中空部材60の少なくとも一部は、挿通孔62に配される。中空部材60は、図7中、下側から挿通孔62に圧入される。中空部材60は、図7中、下側から貫通孔61に圧入される。中空部材60は、弾性体で構成される。中空部材60は、例えば、圧入時に弾性変形することが可能なゴムなどの部材で構成される。
【0087】
中空部材60は、一端から他端まで貫通する貫通孔60aを有する。貫通孔60aは、中空部材60の長手方向に延在する。中空部材60の長手方向は、挿通孔62、および、貫通孔61に中空部材60が圧入される方向である。貫通孔60aの一端は、小径部7fとシャフト8の間の空間S2に連通(開口)する。貫通孔60aの他端は、軸受孔2bを形成する壁部の外側の空間S3に連通(開口)する。
【0088】
中空部材60に形成された貫通孔60aにより、空間S2に供給(蓄積)された潤滑油が軸受孔2bの外部に排出される。このように、排油用の貫通孔は、位置決めピン20とは別に設けられた中空部材60に形成されてもよい。また、中空部材60および位置決めピン20の双方に貫通孔が形成されてもよい。なお、ここでは中空部材60が弾性体である場合について説明したが、中空部材60の材質は特に限定されるものではない。
【0089】
以上、添付図面を参照しながら実施形態について説明したが、本開示はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に技術的範囲に属するものと了解される。
【0090】
上述した実施形態および変形例では、連通孔22が、本体部7aのうち、図中、上側(油路2c側)に設けられる場合について説明した。ただし、連通孔22は、本体部7aの周方向のいずれの位置に設けられてもよい。また、連通孔22について、配置、大きさ、配置数は、エンジンの運転状況などに応じて、適宜設定してもよい。例えば、連通孔22の配置は、1か所のみでもよい。この場合、連通孔22の加工に要する作業時間を低減することができる。また、例えば、連通孔22を、2か所、3か所、または、6か所など、本体部7aの周方向に複数、等間隔に配置してもよい。この場合、スラスト軸受面7j1、7j2側の潤滑油の油膜厚さについて、周方向の均一性を向上することができる。また、例えば、スラスト軸受面7j1、7j2側の潤滑油の油膜厚さが極力均一となるように、シャフト8の回転方向や遠心力を考慮して、複数の連通孔22を周方向に不等間隔に配置してもよい。例えば、複数の連通孔22を周方向に等間隔に配置したとき、スラスト軸受面7j1、7j2側の潤滑油の油膜厚さが周方向に不均一になる場合に、油膜厚さが薄くなる領域に対し新たな連通孔22を追加してもよい。その場合、複数の連通孔22は、周方向に不等間隔で配置される。また、複数の連通孔22は、周方向における一部の領域に偏って配置されてもよい。また、連通孔22の流路断面形状(潤滑油の流れに垂直な断面形状)は、円形状に限らず、例えば、楕円形状でも多角形状でもよい。
【0091】
上述した実施形態および変形例では、本体部7aのスラスト軸受面7j1側とスラスト軸受面7j2側の構造は実質的に等しいものと説明した。しかし、これに限定されず、本体部7aのスラスト軸受面7j1側とスラスト軸受面7j2側の構造が異なってもよい。例えば、本体部7aにおけるタービンインペラ9側に設けられる連通孔22の数は、コンプレッサインペラ10側に設けられる連通孔22の数よりも多くてもよい。ベアリングハウジング2のうち、コンプレッサインペラ10側よりもタービンインペラ9側の方が高温になりやすい。そのため、タービン側の連通孔22の数をコンプレッサ側の連通孔22の数よりも多くすることで、タービン側に供給された潤滑油の油温を低下させることができる。また、連通孔22は、スラスト軸受面7j1側およびスラスト軸受面7j2側のいずれか一方に設けられるようにしてもよい。
【0092】
上述した実施形態および変形例では、スラスト軸受面7j1、7j2は、本体部7aの両端面7dに設けられると説明した。しかし、これに限定されず、スラスト軸受面7j1、7j2は、本体部7aにおける両端面7dの少なくとも一方に設けられてもよい。例えば、本体部7aの大径部7e2と油切り部材21の間に、スラスト軸受を別途設けてもよい。スラスト軸受は、セミフローティング軸受7とは別部材で構成される。その場合、本体部7aの大径部7e1の端面7dは、スラスト軸受面7j1として機能する。一方、本体部7aの大径部7e2の端面7dは、スラスト軸受面7j2として機能しない。
【0093】
また、上述した実施形態と変形例とを組み合わせてもよい。例えば、第4実施形態に第2実施形態を適用して、第4実施形態の本体部7aに油溝30を設けてもよい。また、第2実施形態の本体部7aにおけるタービンインペラ9側に設けられる連通孔22の数を、コンプレッサインペラ10側に設けられる連通孔22の数よりも多くしてもよい。また、第4実施形態の本体部7aにおけるタービンインペラ9側に設けられる連通孔22の数を、コンプレッサインペラ10側に設けられる連通孔22の数よりも多くしてもよい。また、第2実施形態に第3実施形態を適用して、第2実施形態の本体部7aに面取部40または溝41を設けてもよい。例えば、本体部7aの油溝30の第1の油溝30aと第2の油溝30bとが接続する接続部は、面取部40または溝41を有してよい。また、第4実施形態に第3実施形態を適用して、第4実施形態の本体部7aに面取部40または溝41を設けてもよい。例えば、位置決めピン50は、弾性体で構成され、本体部7aは、面取部40または溝41を有してよい。または、中空部材60は、弾性体で構成され、本体部7aは、面取部40または溝41を有してよい。または、位置決めピン50および中空部材60は、弾性体で構成され、本体部7aは、面取部40または溝41を有してよい。
【0094】
上記実施形態および変形例では、ラジアル軸受面やスラスト軸受面に油溝(例えば、油溝23)が形成される例について説明した。しかし、これに限定されず、例えば、連通孔22の形状や、本体部7aの形状を設計することで、スラスト軸受面とラジアル軸受面に最適な油量を供給することができれば、ラジアル軸受面およびスラスト軸受面に油溝が形成されなくともよい。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本開示は、シャフトを軸支する軸受構造に利用することができる。
【符号の説明】
【0096】
S:軸受構造 2:ベアリングハウジング(ハウジング) 2b:軸受孔 2c:油路 7:セミフローティング軸受(軸受部材) 7a:本体部 7h1:ラジアル軸受面 7h2:ラジアル軸受面 7j1:スラスト軸受面 7j2:スラスト軸受面 8:シャフト 20、50:位置決めピン(挿通部材) 20a:貫通孔 22:連通孔 30:油溝 40:面取部(溝) 41:溝 60:中空部材(挿通部材)
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B