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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】液体クロマトグラフィー分取システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/80 20060101AFI20220412BHJP
   G01N 30/82 20060101ALI20220412BHJP
   G01N 30/86 20060101ALI20220412BHJP
【FI】
G01N30/80 F
G01N30/80 E
G01N30/82
G01N30/86 E
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020552987
(86)(22)【出願日】2019-09-20
(86)【国際出願番号】 JP2019037080
(87)【国際公開番号】W WO2020080041
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-03-01
(31)【優先権主張番号】P 2018194271
(32)【優先日】2018-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【弁理士】
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【弁理士】
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】舎川 知広
(72)【発明者】
【氏名】吉野 早紀
(72)【発明者】
【氏名】大友 伊織
【審査官】大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-185558(JP,A)
【文献】特開2010-008047(JP,A)
【文献】特開平04-134262(JP,A)
【文献】特表2004-508566(JP,A)
【文献】国際公開第18/008114(WO,A1)
【文献】特開平03-175355(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0196020(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/80
G01N 30/82
G01N 30/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動相の流れる分析流路上に試料注入部、分離カラム及び検出器が設けられ、前記試料注入部により前記分析流路中に注入された試料を成分ごとに分離する分離部と、
1つ以上のサンプルループを有し、前記サンプルループを前記分離部の下流に接続して前記分離部において分離された目的成分を含む溶出液を前記サンプルループに捕集するための捕集部と、
前記分離部の下流に前記サンプルループを接続する第1の状態と前記分離部の下流に前記サンプルループを接続しない第2の状態との間で切り替えるための切替バルブと、
前記検出器の信号に基づいて前記目的成分のピークの開始点及び/又は頂点を検出し、検出した前記開始点及び/又は前記頂点を基準に前記切替バルブの切替え動作を制御し、前記目的成分を含む前記溶出液の量が、前記サンプルループの容量よりも大きいとき、前記目的成分を含む溶出液のうち、前記目的成分のピークの開始点を含む前記サンプルループの容量以下である量、又は、前記目的成分のピークの前記頂点の前後を含む前記サンプルループの容量以下である量を前記サンプルループに捕集するように構成された捕集制御部と、を備えた液体クロマトグラフィー分取システム。
【請求項2】
前記捕集部は、前記サンプルループを複数有するとともに、前記複数のサンプルループの中から前記分離部に接続するサンプルループを選択的に切り替えるための切替機構を有し、
前記捕集制御部は前記捕集部の前記切替機構の動作も制御して前記分離部において分離された複数の目的成分を別々の前記サンプルループに捕集するように構成されている、請求項1に記載の液体クロマトグラフィー分取システム。
【請求項3】
前記サンプルループに当該サンプルループの容量以下の所定量の溶出液を捕集するために前記切替バルブを前記第1の状態にする時間であるループ接続時間を、前記分析流路を流れる移動相の流量に基づいて計算するように構成されたループ接続時間計算部を備え、
前記捕集制御部は、前記サンプルループに目的成分のピークの開始点が当該サンプルループに到達してから前記ループ接続時間計算部によって計算された前記ループ接続時間だけ、前記切替バルブを前記第1の状態にするように構成されている、請求項1に記載の液体クロマトグラフィー分取システム。
【請求項4】
前記ループ接続時間計算部は、前記所定量を前記移動相の流量で除することによって前記ループ接続時間を計算するように構成されている、請求項3に記載の液体クロマトグラフィー分取システム。
【請求項5】
前記ループ接続時間計算部は、前記検出器の検出信号に基づいて目的成分のピークの開始点を検出したときに前記ループ接続時間を計算するように構成されている、請求項3に記載の液体クロマトグラフィー分取システム。
【請求項6】
前記ループ接続時間計算部は、前記移動相の流量が設定された後であって前記分離部の前記分析流路に試料が注入される前に前記ループ接続時間を計算するように構成されている、請求項3に記載の液体クロマトグラフィー分取システム。
【請求項7】
前記捕集制御部は、目的成分を含む溶出液を前記サンプルループに捕集している途中で当該目的成分のピークの終了点を検出したときは、前記切替バルブを前記第2の状態に切り替えて当該サンプルループへの溶出液の捕集を終了するように構成されている、請求項1に記載の液体クロマトグラフィー分取システム。
【請求項8】
前記捕集制御部は、前記目的成分のピークの前記頂点が前記サンプルループに到達してから前記サンプルループの容量よりも少ない所定量の前記溶出液が前記サンプルループに導入されたときに、前記切替バルブを前記第1の状態から前記第2の状態へ切り替え、それによって前記溶出液のうち前記目的成分のピークの前記頂点の前後の部分を前記サンプルループに捕集するように構成されている、請求項1に記載の液体クロマトグラフィー分取システム。
【請求項9】
前記捕集制御部は、前記目的成分のピークの傾きの符号が反転した位置を前記頂点として検出するように構成されている、請求項8に記載の液体クロマトグラフィー分取システム。
【請求項10】
前記所定量は、前記サンプルループの容量の半分の量である、請求項8に記載の液体クロマトグラフィー分取システム。
【請求項11】
目的成分のピークの前記頂点が前記サンプルループに到達してから当該サンプルループの容量の半分の量の前記溶出液が前記サンプルループに導入されるまでの時間であるループ接続時間を、前記サンプルループの容量及び前記移動相の流量を用いて計算するループ接続時間計算部を備え、
前記捕集制御部は、目的成分のピークの前記頂点が前記サンプルループに到達してから前記ループ接続時間計算部によって算出された前記ループ接続時間が経過したときに、前記切替バルブを前記第1の状態から前記第2の状態へ切り替えるように構成されている、請求項8に記載の液体クロマトグラフィー分取システム。
【請求項12】
前記捕集制御部は、前記目的成分のピークの開始点が前記サンプルループに到達するタイミングで前記切替バルブを前記第2の状態から前記第1の状態へ切り替えるように構成されている、請求項8に記載の液体クロマトグラフィー分取システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体クロマトグラフィーにより分離された試料成分をサンプルループに捕集する機能を備えた液体クロマトグラフィー分取システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体クロマトグラフィーにより分離した成分をサンプルループに捕集する機能を備えたシステム(以下、液体クロマトグラフィー分取システムという。)がある。
【0003】
液体クロマトグラフィー分取システムは、分離カラムや検出器が設けられている分析流路の下流に切替バルブを介してサンプルループが接続されており、検出器の信号に基づいて切替バルブの状態を切り替えることで、検出器で検出された所望の成分(目的成分)を含む溶出液をサンプルループに捕集する。その後、サンプルループに溶媒が送液されることでサンプルループに捕集された目的成分が2次元目の工程、例えば、さらなる液体クロマトグラフィー分析やフラクションコレクタに移送される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
目的成分をサンプルループに捕集する手法としては、同じ試料について予め取得したクロマトグラムから目的成分のピークが検出される時間を把握しておき、それに基づいて目的成分がサンプルループに捕集されるように切替バルブの切替えタイミングを設定しておく手法、クロマトグラムのピークの傾斜等のパラメータから自動で目的成分のピークを検出し、それに基づいて切替バルブを自動的に切り替える手法のほか、ユーザがボタンを押下することで切替バルブの切替えを行なう手法などがある。
【0005】
ところで、サンプルループの容量には限りがあり、目的成分を含む溶出液の量がサンプルループの容量よりも大きい場合がある。この場合に、目的成分のピークの開始点から終了点までをサンプルループに捕集するように切替バルブを切り替えても、実際には目的成分のピークの前半部分はサンプルループから流出しており、目的成分のピークの後半部分のみがサンプルループに捕集されることになる。一般的にクロマトグラムのピークは後ろ側へ伸びることが多く、目的成分のピークの後半部分のみがサンプルループに捕集されると、捕集された目的成分の濃度が非常に薄くなるという問題があった。
【0006】
従来の液体クロマトグラフィー分取システムでは、目的成分のピークのうちのどの部分をサンプルループに捕集するかということを設定することはできなかった。
【0007】
そこで、本発明は、試料成分を低濃度にしか含まない溶出液がサンプルループに捕集されることを防止することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る液体クロマトグラフィー分取システムは、移動相の流れる分析流路上に試料注入部、分離カラム及び検出器が設けられ、前記試料注入部により前記分析流路中に注入された試料を成分ごとに分離する分離部と、1つ以上のサンプルループを有し、前記サンプルループを前記分離部の下流に接続して前記分離部において分離された目的成分を含む溶出液を前記サンプルループに捕集するための捕集部と、前記分離部の下流に前記サンプルループを接続する第1の状態と前記分離部の下流に前記サンプルループを接続しない第2の状態との間で切り替えるための切替バルブと、前記検出器の信号に基づいて前記目的成分のピークの開始点及び/又は頂点を検出し、検出した前記開始点及び/又は前記頂点を基準に前記切替バルブの切替え動作を制御し、前記目的成分を含む溶出液のうち、前記開始点又は前記頂点を含む部分を前記サンプルループに捕集するように構成された捕集制御部と、を備えている。
【0009】
すなわち、本発明に係る液体クロマトグラフィー分取システムは、目的成分を含む溶出液を、当該目的成分のピークの開始点及び/又は頂点を含むようにサンプルループに捕集するように動作する。したがって、目的成分を含む溶出液の量がサンプルループの容量よりも多い場合でも、当該目的成分のピークの後半部分のみがサンプルループに捕集されるという事態が生じず、目的成分を低濃度にしか含まない溶出液がサンプルループに捕集されることを防止できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、目的成分を含む溶出液を当該目的成分のピークの開始点及び/又は頂点を含むようにサンプルループに捕集するので、目的成分を含む溶出液の量がサンプルループの容量よりも多い場合でも、目的成分を低濃度にしか含まない溶出液がサンプルループに捕集されることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】液体クロマトグラフィー分取システムの一実施例を示す概略構成図である。
図2】同実施例により捕集される成分をクロマトグラム上で説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら液体クロマトグラフィー分取システムの一実施例について説明する。
【0013】
この実施例の液体クロマトグラフィー分取システムは、主として、分離部2、捕集部4、切替バルブ6及び制御装置8を備えている。
【0014】
分離部2は、液体クロマトグラフィーによって試料を成分ごとに分離するためのものであり、移動相の流れる分析流路10上に試料注入部14、分離カラム16及び検出器18を備えている。送液ポンプ12は分析流路10中において移動相を送液するためのものである。試料注入部14は分析流路10中に試料を注入するものであり、試料注入部14によって分析流路10中に注入された試料は移動相によって分離カラム16へ移送され、成分ごとに分離される。分離カラム16において分離された成分は検出器18により検出される。分析流路10の下流端は切替バルブ6の1つのポートに接続されている。
【0015】
捕集部4は、分離部2において分離された成分のうちの所望の成分(目的成分)を含む溶出液を分画して捕集するための複数のサンプルループ20と、分離部2からの溶出液を導くサンプルループ20を選択的に切り替えるための2つのバルブ22、24からなる切替機構を備えている。バルブ22は流路26を介して切替バルブ6の1つのポートに接続されており、バルブ24は流路28を介して切替バルブ6の別の1つのポートに接続されている。
【0016】
切替バルブ6は6つのポートを備えた2ポジションバルブである。切替バルブ6のポートには、分析流路10の下流端、バルブ22に通じる流路26、バルブ24に通じる流路28のほか、溶媒供給流路30、2次元目流路34、ドレインが接続されている。切替バルブ6は、分離部2の分析流路10の下流に捕集部4を接続した第1の状態(図1の状態)と、溶媒供給流路30の下流に捕集部4を接続した第2の状態(分析流路10の下流に捕集部4を接続しない状態)との間で切り替えるものである。
【0017】
溶媒供給流路30は、送液ポンプ32によって捕集部4のサンプルループ20へ溶媒を供給してサンプルループ20に捕集された成分を2次元目流路34に導くためのものである。2次元目流路34はフラクションコレクタ38に接続されており、フラクションコレクタ38の上流側に検出器36が設けられている。
【0018】
制御装置8は、例えば、この液体クロマトグラフィー分取システム全体の動作を管理する専用のコンピュータ又は汎用のパーソナルコンピュータによって実現されるものである。制御装置8は、捕集制御部40及びループ接続時間計算部42を備えている。捕集制御部40及びループ接続時間計算部42は、制御装置8に設けられたCPU等の演算素子がプログラムを実行することによって得られる機能である。
【0019】
捕集制御部40は、検出器18の信号に基づいて切替バルブ6と捕集部4のバルブ22、24の切替え動作を制御し、目的成分を含む溶出液のうち、クロマトグラム上における当該目的成分のピークの開始点を含む所定量の溶出液をサンプルループ20に捕集するようにように構成されている。サンプルループ20に溶出液を捕集すべき「所定量」とは、サンプルループ20の容量以下に設定された量であり、サンプルループ20の容量と略同一の量であってよい。
【0020】
サンプルループ20に所定量の溶出液を捕集するために分離部2の分析流路10の下流にサンプルループ20を接続すべき時間(ループ接続時間)は、サンプルループ20に捕集すべき溶出液の量(例えばサンプルループ20の容量)を分析流路10を流れる移動相の流量で除することによって求めることができる。ループ接続時間計算部42は、例えば、送液ポンプ12に対して移動相の流量が設定された後で試料注入部14が分析流路10中に試料を注入する前のタイミングで、又は目的成分のピークの開始点を検出したタイミングで、移動相の流量に基づいてループ接続時間を計算するように構成されている。試料成分のクロマトグラム上におけるピークの開始点は、例えば、検出器信号の強度の時間変化率、すなわちピーク波形の傾きが予め設定されたしきい値を超えたか否かによって検出することができる。
【0021】
捕集制御部40は、検出器18の信号に基づいて検出した目的成分のピークの開始点に相当する部分が捕集部4に到達するタイミングで、分析流路10の下流に所定のサンプルループ20を接続し、ループ接続時間計算部42によって計算されたループ接続時間が経過したときに、切替バルブ6を第2の状態に切り替えて捕集部4を分離部2から切り離すように構成されている。なお、試料成分のピークの開始点を検出器18で検出してから、試料成分のピークの開始点がサンプルループ20に到達するまでの時間は、予め実験や計算等により求めて設定することができる。
【0022】
目的成分が複数ある場合、捕集制御部40は、各目的成分を含む所定量の溶出液が別々のサンプルループ20に捕集されるように、切替バルブ6及び捕集部4のバルブ22、24の切替え動作を制御する。
【0023】
これにより、図2に示されているように、目的成分を含む溶出液の量がサンプルループ20の容量を超える場合でも、試料成分の開始点側を含む一定量の溶出液を確実にサンプルループ20に捕集することができる。
【0024】
なお、捕集制御部40は、目的成分のピークの終了点を検出器信号の強度の時間変化率等から検出することができる。そして、捕集制御部40は、目的成分のピークの開始点がサンプルループ20に到達してから当該サンプルループ20内に所定量の溶出液が導入される前に当該ピークの終了点を検出したときは、切替バルブ6を第2の状態に切り替えて当該サンプルループ20への溶出液の捕集を終了するように構成されている。
【0025】
この実施例の液体クロマトグラフィー分取システムの動作について説明すると、試料注入部14により分析流路10中に注入された試料は分離カラム16において成分ごとに分離され、検出器18により検出される。捕集制御部40は、目的成分が検出器18により検出されたときに、分析流路10の下流端を捕集部4の所定のサンプルループ20に接続するように切替バルブ6、バルブ22及び24を切り替え、目的成分のピークの開始点がサンプルループ20に到達してからループ接続時間が経過するまでその状態を維持する。これにより、目的成分を含む所定量の溶出液がサンプルループ20に捕集される。目的成分が複数ある場合には、分析流路10の下流端に接続するサンプルループ20を切り替えながら同様の動作を繰り返し実行する。
【0026】
サンプルループ20への目的成分の捕集が完了した後、溶媒供給流路30の下流に目的成分が捕集されたサンプルループ20が接続されるように切替バルブ6、バルブ22及び24を切り替え、溶媒供給流路30から溶媒を供給してサンプルループ20に捕集された目的成分を2次元目流路34へ導く。つまり、溶媒供給流路30、バルブ22、サンプルループ20、バルブ24、2次元目流路34の順に流路が接続されるように、図1の状態からバルブの接続位置が変更される。2次元目流路34に導入された成分は検出器36によって検出され、検出器36の信号に基づいて動作するフラクションコレクタ38が各成分を個別の容器へ分画して捕集する。
【0027】
次に、液体クロマトグラフィー分取システムの他の実施例について、図3を用いて説明する。
【0028】
この実施例の液体クロマトグラフィー分取システムは、図1を用いて説明した実施例とは基本的構成は同一であるが、制御装置8’の機能が図1の実施例の制御装置8とは異なっている。図1の実施例の制御装置8は、分析流路10から流出した目的成分を含む溶出液のうち、目的成分のピークの「開始点」を含む部分を所定のサンプルループ20に捕集する機能を備えているが、この実施例の制御装置8’は、分析流路10から流出した目的成分を含む溶出液のうち、目的成分のピークの「頂点」を含む部分を所定のサンプルループ20に捕集する機能を備えている。
【0029】
制御装置8’の捕集制御部40’は、検出器18の信号に基づいて切替バルブ6と捕集部4のバルブ22、24の切替え動作を制御し、目的成分を含む溶出液のうち、クロマトグラム上における当該目的成分のピークの頂点を含む部分をサンプルループ20に捕集するようにように構成されている。
【0030】
この実施例では、捕集制御部40’は、図4に示されているように、検出器18の信号に基づいて検出した目的成分のピークの開始点に相当する部分が捕集部4に到達するタイミングt1で、分析流路10の下流に所定のサンプルループ20を接続する。そして、目的成分のピークの頂点を検出し、その頂点に相当する部分が当該サンプルループ20に到達したタイミングt2から、当該サンプルループ20の容量よりも少ない所定量の溶出液が当該サンプルループ20に導入されたタイミングt3で、切替バルブ6を第2の状態に切り替えて、当該目的成分の捕集を終了する。サンプルループ20の容量をVとすると、前記所定量はV/2であってよい。そうすれば、ピークの頂点よりも前側のV/2の量の溶出液と、ピークの頂点の後側のV/2の量の溶出液をサンプルループ20に捕集することができる。
【0031】
目的成分のピークの頂点とは、ピークの傾きが増加から減少に転換した点、すなわち、ピークの傾きの符号が反転した点である。捕集制御部40’は、目的成分のピークの開始点を検出した後、検出器18から信号を取得するたびに、その信号強度の変化率(傾き)を求め、傾きの符号が反転した点をピークの頂点として検出するように構成されている。
【0032】
目的成分のピークの頂点がサンプルループ20に到達してから所定量の溶出液が当該サンプルループ20に導入されるまでの時間(ループ接続時間)は、前記所定量を移動相の流量で除することによって求めることができる。所定量がV/2(ml)であり、移動相の流量がP(ml/min)である場合、ループ接続時間Tは、
T=V/2P
により求めることができる。
【0033】
ループ接続時間計算部42’は、移動相の流量が設定されたタイミングで、又は、目的成分のピークの開始点が検出されたタイミングで、ループ接続時間を算出するように構成されている。捕集制御部40’は、目的成分のピークの頂点が所定のサンプルループ20に到達してからループ接続時間計算部42’によって計算されたループ接続時間が経過したときに、その目的成分のサンプルループ20への捕集を完了する。
【0034】
なお、目的成分のピークの頂点が所定のサンプルループ20に到達してからループ接続時間計算部42’によって計算されたループ接続時間が経過する前にピークの終了点を検出したときは、その時点で当該目的成分のサンプルループ20への捕集を完了する。
【0035】
なお、以上において説明した実施例では、2次元目流路34がフラクションコレクタ38へ通じているものであるが、本発明はこれに限定されるものではなく、2次元目流路34上に分離カラムを備え、捕集部4に分画捕集された目的成分のさらなる液体クロマトグラフィー分析を実施することができるものであってもよい。
【0036】
また、以上の実施例では、1つの切替バルブ6によって、分離部2の下流に捕集部4を接続する第1の状態と分離部2の下流に捕集部4を接続しない第2の状態との間で切り替えるようになっているが、2つ以上の切替バルブを用いて同様の機能を実現してもよい。
【0037】
さらには、捕集部4の各サンプルループ20に対して希釈液を供給する機構を備えていてもよい。
【0038】
なお、上記実施例では、捕集部4が複数のサンプルループ20を備えているが、本発明はこれに限定されるものではなく、1つ以上のサンプルループ20が設けられていればよい。
【0039】
以上において説明した実施例は、本発明に係る液体クロマトグラフィー分取システムの実施形態の一例を示したに過ぎない。本発明に係る液体クロマトグラフィー分取システムの実施形態は以下のとおりである。
【0040】
本発明に係る液体クロマトグラフィー分取システムの実施形態では、移動相の流れる分析流路上に試料注入部、分離カラム及び検出器が設けられ、前記試料注入部により前記分析流路中に注入された試料を成分ごとに分離する分離部と、1つ以上のサンプルループを有し、前記サンプルループを前記分離部の下流に接続して前記分離部において分離された目的成分を含む溶出液を前記サンプルループに捕集するための捕集部と、前記分離部の下流に前記サンプルループを接続する第1の状態と前記分離部の下流に前記サンプルループを接続しない第2の状態との間で切り替えるための切替バルブと、前記検出器の信号に基づいて前記目的成分のピークの開始点及び/又は頂点を検出し、検出した前記開始点及び/又は前記頂点を基準に前記切替バルブの切替え動作を制御し、前記目的成分を含む溶出液のうち、前記開始点又は前記頂点を含む部分を前記サンプルループに捕集するように構成された捕集制御部と、を備えている。
【0041】
本発明に係る液体クロマトグラフィー分取システムの上記実施形態の第1態様では、前記捕集部は、前記サンプルループを複数有するとともに、前記複数のサンプルループの中から前記分離部に接続するサンプルループを選択的に切り替えるための切替機構を有し、前記捕集制御部は前記捕集部の前記切替機構の動作も制御して前記分離部において分離した複数の目的成分を別々の前記サンプルループに捕集するように構成されている。
【0042】
本発明に係る液体クロマトグラフィー分取システムの上記実施形態の第2態様では、前記捕集部は、前記サンプルループに当該サンプルループの容量以下の所定量の溶出液を捕集するために前記切替バルブを前記第1の状態にする時間であるループ接続時間を、前記分析流路を流れる移動相の流量に基づいて計算するように構成されたループ接続時間計算部を備え、前記捕集制御部は、前記サンプルループに捕集すべき試料成分のピークの開始点が当該サンプルループに到達してから前記ループ接続時間計算部によって計算された前記ループ接続時間だけ、前記切替バルブを前記第1の状態にするように構成されている。
【0043】
上記第2態様において、前記ループ接続時間計算部は、前記所定量を前記移動相の流量で除することによって前記ループ接続時間を計算するように構成することができる。
【0044】
上記第2態様において、前記ループ接続時間計算部は、前記検出器の検出信号に基づいて目的成分のピークの開始点を検出したときに前記ループ接続時間を計算するように構成されていてもよい。
【0045】
上記第2態様において、前記ループ接続時間計算部は、前記移動相の流量が設定された後であって前記分離部の前記分析流路に試料が注入される前に前記ループ接続時間を計算するように構成されていてもよい。
【0046】
本発明に係る液体クロマトグラフィー分取システムの上記実施形態の第3態様では、前記捕集制御部は、目的成分を含む溶出液を前記サンプルループに捕集している途中で当該目的成分のピークの終了点を検出したときは、前記切替バルブを前記第2の状態に切り替えるように構成されている。このような態様により、目的成分を含まない余分な溶出液がサンプルループに捕集されることを防止でき、捕集した目的成分の濃度の低下を抑制できる。
【0047】
本発明に係る液体クロマトグラフィー分取システムの上記実施形態の第4態様では、前記捕集制御部は、前記目的成分のピークの前記頂点が前記サンプルループに到達してから前記サンプルループの容量よりも少ない所定量の前記溶出液が前記サンプルループに導入されたときに、前記切替バルブを前記第1の状態から前記第2の状態へ切り替え、それによって前記目的成分のピークの前記頂点の前後の前記所定量を前記サンプルループに捕集するように構成されている。このような態様により、前記分離部から流出した溶出液のうち、目的成分を高濃度に含む部分を捕集することができる。
【0048】
上記第4態様において、前記捕集制御部は、前記目的成分のピークの傾きの符号が反転した位置を前記頂点として検出するように構成することができる。
【0049】
上記第4態様において、前記所定量は、前記サンプルループの容量の半分の量であってよい。そうすれば、前記目的成分のピークの頂点の前後の溶出液を均等にサンプルループに捕集することができる。
【0050】
上記第4態様において、目的成分のピークの前記頂点が前記サンプルループに到達してから前記所定量の前記溶出液が前記サンプルループに導入されるまでの時間であるループ接続時間を、前記所定量及び前記移動相の流量を用いて計算するループ接続時間計算部を備え、前記捕集制御部は、目的成分のピークの前記頂点が前記サンプルループに到達してから前記ループ接続時間計算部によって算出された前記ループ接続時間が経過したときに、前記切替バルブを前記第1の状態から前記第2の状態へ切り替えるように構成されていてもよい。
【0051】
上記第4態様において、前記捕集制御部は、前記目的成分のピークの開始点が前記サンプルループに到達するタイミングで前記切替バルブを前記第2の状態から前記第1の状態へ切り替えるように構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0052】
2 分離部
4 捕集部
6 切替バルブ
8 制御装置
10 分析流路
12,32 送液ポンプ
14 試料注入部
16 分離カラム
18,36 検出器
20 サンプルループ
22,24 バルブ(切替機構)
26,28 流路
30 溶媒供給流路
34 2次元目流路
38 フラクションコレクタ
40 捕集制御部
42 ループ接続時間計算部
図1
図2
図3
図4