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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】ジョイントコネクタ
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/16 20060101AFI20220412BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20220412BHJP
   H01R 13/66 20060101ALI20220412BHJP
   H01R 31/06 20060101ALI20220412BHJP
【FI】
H02G3/16
B60R16/02 621J
H01R13/66
H01R31/06 M
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020559276
(86)(22)【出願日】2019-12-11
(86)【国際出願番号】 JP2019048431
(87)【国際公開番号】W WO2020122106
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-05-21
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2018/045388
(32)【優先日】2018-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】安則 裕通
(72)【発明者】
【氏名】中條 充
【審査官】石坂 知樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/222074(WO,A1)
【文献】特開2013-25917(JP,A)
【文献】特開2017-191610(JP,A)
【文献】特開2018-196084(JP,A)
【文献】特開2014-146868(JP,A)
【文献】特開2017-73765(JP,A)
【文献】国際公開第2011/074401(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/16
B60R 16/02
H01R 13/66
H01R 31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のワイヤーハーネスが接続され、前記複数のワイヤーハーネスを結合するジョイントコネクタであって、
前記複数のワイヤーハーネスのコネクタが挿入されるサブコネクタと、
前記サブコネクタが内部に設けられたハウジングと、
前記サブコネクタ内にて突出した状態で並列し、前記複数のワイヤーハーネスのコネクタ夫々に接続される複数のジョイント端子と、
前記ハウジング内に設けられ、前記複数のジョイント端子と接続される中継部とを備え、
前記中継部は、前記複数のワイヤーハーネスに接続される車載ECU又は車載センサから送信されるデータに含まれる情報に基づき、前記複数のジョイント端子間において、前記データの中継制御を行い、
前記車載ECU又は車載センサは、CAN又はイーサネットの少なくとも一つの通信プロトコルによって通信し、
前記中継部は、CANゲートウェイ又はレイヤー2イーサスイッチの少なくとも一つを含み、
前記複数のワイヤーハーネスのコネクタには、CANトランシーバ又はイーサネットPHY部が設けられており、
前記中継部は、前記ジョイント端子を介して、前記CANトランシーバ又は前記イーサ ネットPHY部に接続され、
前記中継部には、前記複数のワイヤーハーネスに接続される車載ECU又は車載センサの内のいずれかの車載ECU又は車載センサから出力される電力が入力される電力用端子が、接続され、
前記複数のジョイント端子の内、少なくとも1つのジョイント端子は、前記電力用端子と、前記サブコネクタの仕切り板又はソケット部によって仕切られる空間内で一対となって設けられている
ジョイントコネクタ。
【請求項4】
前記車載ECU又は車載センサは、CAN又はイーサネットの少なくとも一つの通信プロトコルによって通信し、
前記中継部は、CANゲートウェイ及びレイヤー2イーサスイッチを含み、CAN及びイーサネットの通信プロトコル間においてプロトコル変換を行う
請求項1に記載のジョイントコネクタ。
【請求項5】
前記中継部には、前記複数のワイヤーハーネスに接続される車載ECU又は車載センサの内のいずれかの車載ECU又は車載センサから出力される電力が入力される電力用端子 が接続される、又は、
前記ジョイント端子は、前記中継部により中継制御される前記データが流れると共に、前記複数のワイヤーハーネスに接続される車載ECU又は車載センサの内のいずれかの車載ECU又は車載センサから出力される電力が入力される電力通信共用端子である
請求項1又は請求項4に記載のジョイントコネクタ。
【請求項6】
前記ハウジング内に設けられ、前記複数のジョイント端子夫々に接続される前記複数のワイヤーハーネス夫々の異常検出を行う異常検出部を備える請求項1、請求項4又は請求項5のいずれか1項に記載のジョイントコネクタ。
【請求項7】
前記ハウジング内に設けられ、前記複数のワイヤーハーネスに接続される車載ECU又は車載センサから送信されるデータに対するセキュリティ判定を行うセキュリティ判定部を備える請求項1又は、請求項4から請求項6のいずれか1項に記載のジョイントコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジョイントコネクタに関する。
本出願は、2018年12月11日出願の国際出願第PCT/JP2018/045388号に基づく優先権を主張し、前記国際出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等に搭載された複数の電子機器から配策された複数の電線を一括して接続するコネクタとしてジョイントコネクタと呼ばれるコネクタ形式が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1のジョイントコネクタは、サブハーネスを構成する相手方コネクタとしての狭ピッチコネクタの端子に電気的に接続される端子金具と、端子金具を収容して狭ピッチコネクタと嵌合されるコネクタハウジングを備えており、CAN(Control Area Network)を用いた通信を行うための複数のワイヤーハーネスに接続され、当該複数のワイヤーハーネス夫々を結合している。これら複数のワイヤーハーネス夫々には、車載装置を制御するための車載ECU(Electronic Control Unit)が接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-25917号公報
【発明の概要】
【0005】
本開示の一態様に係るジョイントコネクタは、複数のワイヤーハーネスが接続され、前記複数のワイヤーハーネスを結合するジョイントコネクタであって、前記複数のワイヤーハーネスのコネクタが挿入されるサブコネクタと、前記サブコネクタが内部に設けられたハウジングと、前記ハウジング内にて突出した状態で並列し、前記ジョイントコネクタの一面に設けられ、前記一面において前記複数のワイヤーハーネスのコネクタ夫々に接続される複数のジョイント端子と、前記ハウジング内に設けられ、前記複数のジョイント端子と接続される中継部とを備え、前記中継部は、前記複数のワイヤーハーネスに接続される車載ECU又は車載センサから送信されるデータに含まれる情報に基づき、前記複数のジョイント端子間において、前記データの中継制御を行う。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態1のジョイントコネクタを搭載した車両の模式図である
図2】ジョイントコネクタを模式的に例示する側断面図である。
図3】ジョイントコネクタの中継部の内部構成を例示するブロック図である。
図4】実施形態2のジョイントコネクタの中継部の構成を例示するブロック図である。
図5】実施形態3のジョイントコネクタの中継部の構成を例示するブロック図である。
図6】実施形態4のジョイントコネクタの中継部の構成を例示するブロック図である。
図7】実施形態5のジョイントコネクタの中継部の構成を例示するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[本開示が解決しようとする課題]
近年の車両の高機能化に伴い、搭載される車載ECUの数が増加し、又これら車載ECU間において送受信されるデータは増加する傾向にあるところ、特許文献1のジョイントコネクタは、これら車載ECU間で送受信されるデータを中継制御する点については考慮されてない。
【0008】
本開示の目的は、接続されるワイヤーハーネスに流れるデータを中継制御することができるジョイントコネクタを提供する。
【0009】
[本開示の効果]
本開示の一態様によれば、接続されるワイヤーハーネスに流れるデータを中継制御することができるジョイントコネクタを提供することができる。
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列挙して説明する。また、以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0011】
(1)本開示の一態様に係るジョイントコネクタは、複数のワイヤーハーネスが接続され、前記複数のワイヤーハーネスを結合するジョイントコネクタであって、前記複数のワイヤーハーネスのコネクタが挿入されるサブコネクタと、前記サブコネクタが内部に設けられたハウジングと、前記ハウジング内にて突出した状態で並列し、前記ジョイントコネクタの一面に設けられ、前記一面において前記複数のワイヤーハーネスのコネクタ夫々に接続される複数のジョイント端子と、前記ハウジング内に設けられ、前記複数のジョイント端子と接続される中継部とを備え、前記中継部は、前記複数のワイヤーハーネスに接続される車載ECU又は車載センサから送信されるデータに含まれる情報に基づき、前記複数のジョイント端子間において、前記データの中継制御を行う。
【0012】
本態様にあたっては、ジョイントコネクタのハウジングの内部には、中継部が設けられており、当該中継部は、ワイヤーハーネスに接続される車載ECUから送信されたデータに含まれる情報に基づき、複数のジョイント端子間において前記データの中継制御を行う。従って、ジョイントコネクタに接続される複数のワイヤーハーネスにて送信されるデータを、必要とする車載ECU又は車載センサに対し適切に中継することができる。当該中継制御を行う中継部を備えるジョイントコネクタを用いることにより、車両内におけるハイヤーハーネスの配策の自由度を向上させることができる。更に、複数のジョイント端子夫々は、矩形状を成すジョイントコネクタの一面に設けられており、当該一面において前記複数のワイヤーハーネスのコネクタ夫々は、複数のジョイント端子夫々に接続される。従って、ジョイントコネクタと、複数のワイヤーハーネスとは、ジョイントコネクタの一面にて接続されるものとなり、ジョイントコネクタと、複数のワイヤーハーネスとの接続箇所を一つの面(一面)に集約でき、車両の製造段階におけるジョイントコネクタの組付けを容易化し、製造効率を向上させることができる。
【0013】
(2)本開示の一態様に係るジョイントコネクタは、前記車載ECU又は車載センサは、CAN又はイーサネット(登録商標)での少なくとも一つの通信プロトコルによって通信し、前記中継部は、CANゲートウェイ又はレイヤー2イーサスイッチの少なくとも一つを含む。
【0014】
本態様にあたっては、中継部は、CANゲートウェイ又はレイヤー2イーサスイッチの少なくとも一つを含み、これらのいずれか一つの機能を発揮するため、車載ECU又は車載センサが接続されるワイヤーハーネスにより構成される車内LANの通信プロトコルがCAN又はイーサネットである場合、効率的に中継制御を行うことができる。
【0015】
(3)本開示の一態様に係るジョイントコネクタは、前記複数のワイヤーハーネスのコネクタには、CANトランシーバ又はイーサネットPHY部が設けられており、前記中継部は、前記ジョイント端子を介して、前記CANトランシーバ又は前記イーサネットPHY部に接続される。
【0016】
本態様にあたっては、複数のワイヤーハーネスのコネクタには、CANトランシーバ又はイーサネットPHY部が設けられている。従って、中継部は、CANゲートウェイ又はレイヤー2イーサスイッチの少なくとも一つの機能を発揮するにあたり、ワイヤーハーネスとの間における物理的なインターフェイスとして機能することを不要とし、当該中継部の処理負荷を低減すると共に、ジョイントコネクタのサイズを小さくすることができる。
【0017】
(4)本開示の一態様に係るジョイントコネクタは、前記車載ECU又は車載センサは、CAN又はイーサネットの少なくとも一つの通信プロトコルによって通信し、前記中継部は、CANゲートウェイ及びレイヤー2イーサスイッチを含み、CAN及びイーサネットの通信プロトコル間においてプロトコル変換を行う。
【0018】
本態様にあたっては、CANゲートウェイ及びレイヤー2イーサスイッチを含み、これらの機能を発揮し、CAN及びイーサネットの通信プロトコル間においてプロトコル変換を行う中継部を備えるジョイントコネクタを用いることにより、車両内にてCAN及びイーサネットの通信プロトコルが混在するハイヤーハーネスの配策の自由度を向上させることができる。
【0019】
(5)本開示の一態様に係るジョイントコネクタは、前記中継部には、前記複数のワイヤーハーネスに接続される車載ECU又は車載センサの内のいずれかの車載ECU又は車載センサから出力される電力が入力される電力用端子が接続される、又は、前記ジョイント端子は、前記中継部により中継制御される前記データが流れると共に、前記複数のワイヤーハーネスに接続される車載ECU又は車載センサの内のいずれかの車載ECU又は車載センサから出力される電力が入力される電力通信共用端子である。
【0020】
本態様にあたっては、中継部には、複数のワイヤーハーネスに接続される車載ECU又は車載センサの内のいずれかの車載ECU又は車載センサから出力される電力が入力される電力用端子が設けられているため、ジョイントコネクタへの電力線の配策を簡易化することができる。又は、ジョイント端子は、中継部により中継制御される前記データが流れると共に、複数のワイヤーハーネスに接続される車載ECU又は車載センサの内のいずれかの車載ECU又は車載センサから出力される電力が入力される電力通信共用端子であるため、通信及び電力供給用のケーブルを共用化し、車内のケーブルの配策を簡易化することができる。当該電力通信共用端子とは、例えばPOE(Power over Ethernet)に対応した端子である。
【0021】
(6)本開示の一態様に係るジョイントコネクタは、前記ハウジング内に設けられ、前記複数のジョイント端子夫々に接続される前記複数のワイヤーハーネス夫々の異常検出を行う異常検出部を備える。
【0022】
本態様にあたっては、複数のジョイント端子夫々に接続される複数のワイヤーハーネス夫々の異常検出を行う異常検出部を備えるため、当該ワイヤーハーネスに対する異常検出の精度を向上させることができる。
【0023】
(7)本開示の一態様に係るジョイントコネクタは、前記ハウジング内に設けられ、前記複数のワイヤーハーネスに接続される車載ECU又は車載センサから送信されるデータに対するセキュリティ判定を行うセキュリティ判定部を備える。
【0024】
本態様にあたっては、複数のワイヤーハーネスに接続される車載ECU又は車載センサから送信されるデータに対するセキュリティ判定を行うセキュリティ判定部を備えるため、当該ワイヤーハーネス上に流れるデータに対するセキュリティ判定の精度を向上させることができる。
【0025】
(8)本開示の一態様に係るジョイントコネクタは、前記中継部には、前記複数のワイヤーハーネスに接続される車載ECU又は車載センサの内のいずれかの車載ECU又は車載センサから出力される電力が入力される電力用端子が、接続され、前記複数のジョイント端子の内、少なくとも1つのジョイント端子は、前記電力用端子と一対となって設けられている。
【0026】
本態様にあたっては、中継部には、複数のワイヤーハーネスに接続される車載ECUから出力される電力が入力される電力用端子が、少なくとも1つのジョイント端子と一対となって設けられているため、ジョイントコネクタへの電力線の配策を簡易化することができる。ジョイント端子及び電力用端子とを一対として設けることにより、複数のジョイント端子及び電力用端子を、矩形状を成すジョイントコネクタの一面に集約して設けることができる。従って、電力線を含む複数のワイヤーハーネスと、ジョイントコネクタとを接続するにあたり、容易に接続することができ、ジョイントコネクタの組付けを効率的に行うことができる。
【0027】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施態様に係るジョイントコネクタ2の具体例を以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0028】
(実施形態1)
図1は、実施形態1のジョイントコネクタ2を搭載した車両1の模式図である。車両1には、アクチュエータ等の各種車載装置(図示せず)を制御するための複数の車載ECU5又は、カメラ、Lidar(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)等の各種センサを含む車載センサ51が搭載されており、これら複数の車載ECU5又は車載センサ51は、ジョイントコネクタ2によって相互に通信可能に接続されている。ジョイントコネクタ2は、図1に示すごとく、車内LAN6を複数のセグメント(図1では、5つのセグメント)に分割し、各セグメント間にて、セグメント夫々に接続される車内ECU5又は車載センサ51間の通信の中継の制御(中継制御)を行う。
【0029】
車内LAN6における車内ECUが用いる通信プロトコルは、例えばCAN(Control Area Network/登録商標)又は、イーサネット(Ethernet/登録商標)によるTCP/IPであり、ジョイントコネクタ2は、これら通信プロトコルに準拠して、中継経路を決定し、各セグメント間における中継を行う。又、ジョイントコネクタ2は、異なる通信プロトコル間、例えばCANとTCP/IP(イーサネット)との間における中継制御を行うゲートウェイとして機能するものであってもよい。
【0030】
図2は、ジョイントコネクタ2を模式的に例示する側断面図である。ジョイントコネクタ2は、ハウジング21、サブコネクタ22及び中継部25を備え、中継部25には、ジョイント端子23及び電力用端子24が設けられている。図示するとおり、ジョイントコネクタ2は、矩形状を成し、ジョイント端子23夫々は、ジョイントコネクタ2の一面に設けられている。すなわち、ジョイント端子23夫々は、ジョイントコネクタ2の同じ面(一面)に集約して設けられている。
【0031】
ハウジング21は、一方に開口部を有する箱状(有底矩形筒)を成しており、例えば樹脂性である。ハウジング21の内部には、中継部25が設けられている。
【0032】
中継部25は、矩形状の直方体を成し、例えば樹脂モールド等により防水処理が施された電子部品である。中継部25は、ハウジング21の他方側に位置する底板部の内面に、当該中継部25の一面を対向して設けられている。中継部25の一面と、ハウジング21の底板部の内面とは、接着又は固着等されており、中継部25は、ハウジング21の内部にて固定されている。中継部25の他面には、複数のジョイント端子23が並列して設けられている。中継部25の一面は、ハウジング21の底板部側に位置している。中継部25の他面は、ハウジング21の開口部側に位置している。
【0033】
ジョイント端子23は、後述する中継部25に含まれる中継制御部251と電気的に接続している導電部材である。ジョイント端子23夫々は、中継部25の他面から、ハウジング21の開口部に向かって突設しており、後述するワイヤーハーネス3のメスコネクタ31に篏合し、メスコネクタ31内のメス端子311と電気的に接触するオス端子として機能する。
【0034】
サブコネクタ22は、複数の仕切り板221により区画された複数のソケット部222を備えた筒状をなす。ソケット部222は、ワイヤーハーネス3のメスコネクタ31が挿入されるメスコネクタ用開口部と、ジョイント端子23が挿入されるジョイント端子用孔部を備えており、メスコネクタ用開口部とジョイント端子用孔部とは、ソケット部222の内部空間(キャビティ)を介して連通している。
【0035】
サブコネクタ22は、ジョイント端子用孔部が設けられている端部側を、中継部25に向けて、ハウジング21の内部に設けられている。すなわち、サブコネクタ22は、ジョイント端子用孔部が設けられている端部を中継部25に向けて、ハウジング21の開口部から挿入されることにより、サブコネクタ22はハウジング21に篏合するようにしてあり、ハウジング21に対し着脱可能に設けられている。
【0036】
サブコネクタ22とハウジング21とが篏合することにより、中継部25に設けられたジョイント端子23夫々は、配置上にて対応するジョイント端子用孔部夫々に挿入される。ジョイント端子用孔部にジョイント端子23が挿入されることにより、ジョイント端子23の先端部から基端部の近傍に至るまで部位は、ソケット部222の内部空間(キャビティ)に位置するものとなる。
【0037】
中継部25に設けられているジョイント端子23の内、少なくとも1つのジョイント端子23は、電力用端子24と一対となって設けられている。電力用端子24は、後述する中継部25に含まれる中継制御部251と電気的に接続している導電部材であり、中継制御部251が駆動するための電力を供給するための端子である。なお、中継制御部251が駆動するための電力を供給するための端子は電力用端子24に限定されず、例えばPOE(Power over Ethernet)に対応した端子を用いるものであってもよい。
【0038】
サブコネクタ22とハウジング21とが篏合した際、電力用端子24は、一対となるジョイント端子23が挿入されるジョイント端子用孔部に挿入される。又は、配置上、電力用端子24に対応するソケット部222には、ジョイント端子用孔部とは別個に、電力用端子24が挿入される電力用端子24用孔部が設けられていてもよい。この様に一対となって設けられたジョイント端子23及び電力用端子24に対応するソケット部222には、ジョイント端子23に接触するメス端子311及び、電力用端子24に接触するメス端子311が設けられたメスコネクタ31が接続される。
【0039】
この様に構成されたジョイントコネクタ2には、複数のワイヤーハーネス3が接続される。ワイヤーハーネス3は、一つ又は複数の車載ECU5又は車載センサ51が接続されるケーブル32及び、当該ケーブル32の先端部に設けられるメスコネクタ31を含む。ケーブル32の先端部は、メスコネクタ31の内部に挿入されて、リテーナー(図示せず)等により保持されており、メスコネクタ31の内部に設けられているメス端子311と電気的に接続されている。
【0040】
メスコネクタ31夫々に対応するジョイント端子23の個数は、図面上、一つとして表記してあるが、これに限定されない。メスコネクタ31夫々に対応するジョイント端子23の個数は、2つ以上であってもよく、車載ECU5等との通信に用いられる通信プロトコルに依拠して決定されるものであり、例えば通信プロトコルがCANの場合、メスコネクタ31夫々に対応するジョイント端子23の個数は、2つである。
【0041】
本実施形態において、サブコネクタ22は、ハウジング21とは別体とし、ハウジング21に対し着脱可能に設けられているとしたが、これに限定されない。サブコネクタ22は、例えば樹脂成型等により、ハウジング21と一体となって形成されたものであってもよい。
【0042】
図3は、ジョイントコネクタ2の中継部25の内部構成を例示するブロック図である。ジョイントコネクタ2のハウジング21内に設けられる中継部25は、中継制御部251、記憶部252及び、通信プロトコルに基づき決定される物理層I/F(インターフェイス)であるCANトランシーバ41(Tr)及びイーサネットPHY部42(PHY)を含む。なお、各部位の説明上、図3においてサブコネクタ22は省略してある。
【0043】
記憶部252及び物理層I/F(CANトランシーバ41及びイーサネットPHY部42)は、中継制御部251と内部バス253により通信可能に接続されている。又、中継制御部251と電力用端子24とは、内部バス253を介して電気的に接続されており、電力用端子24から供給された電力は、内部バス253を介して中継制御部251に供給される。
【0044】
記憶部252は、RAM(Random Access Memory)等の揮発性のメモリ素子又は、ROM(Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)若しくはフラッシュメモリ等の不揮発性のメモリ素子により構成してあり、制御プログラム及び処理時に参照するデータがあらかじめ記憶してある。記憶部252に記憶された制御プログラムは、中継部25が読み取り可能な記録媒体(図示せず)から読み出された制御プログラムを記憶したものであってもよい。また、図示しない通信網に接続されている図示しない外部コンピュータから制御プログラムをダウンロードし、記憶部252に記憶させたものであってもよい。更に、記憶部252には、中継制御を行うにあたり、通信プロトコルに基づき規定される経路情報(ルーティングテーブル)に関する情報が、記憶される。
【0045】
中継制御部251は、CPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processing Unit)等により構成してあり、記憶部252に予め記憶された制御プログラム及びデータを読み出して実行することにより、種々の制御処理及び演算処理等を行うようにしてある。又、中継制御部251は、FPGA(Field Programmable Gate Array)又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)等によるICチップにより構成され、FPGA等の回路構成(中継回路)に基づき中継制御を行うものであってもよい。または、中継制御部251及び記憶部252は、これらが一体となってパッケージ化されたマイクロコンピュータによって構成されるものであってもよい。
【0046】
CANトランシーバ41及びイーサネットPHY部42は、通信プロトコルに基づき決定される物理層I/Fであり、ワイヤーハーネス3のケーブル32と、中継制御部251との間のインターフェイスを行う。物理層I/F(CANトランシーバ41及びイーサネットPHY部42)は、ケーブル32上に伝送される波形を、ジョイント端子23を介して受信し、受信した波形を1と0のビット列で表される信号に復号し、内部バス253を介して中継制御部251に出力する。
【0047】
CANトランシーバ41は、CANバス32a上にて伝送されるCANメッセージに対応するものであり、ハイ側及びロー側の2本の配線により構成されるCANバス32a上の差動電圧の電位差による波形を受信し、受信した波形を1と0のビット列で表される信号に復号し、内部バス253を介して中継制御部251に出力する。
【0048】
イーサネットPHY部42は、100BASE-T1又は1000BASE-T1等のイーサケーブル32b上にて伝送されるTCP/IPのパケットに対応するものであり、例えばマンチェスター型の波形を1と0のビット列で表される信号に復号し、内部バス253を介して中継制御部251に出力する。CANトランシーバ41及びイーサネットPHY部42は、ICチップ又は回路基板によって構成される。
【0049】
中継制御部251は、制御プログラムを実行することにより、CANゲートウェイ251a及びレイヤー2イーサスイッチ251bとして機能する。図3に示すごとく、ジョイントコネクタ2の中継制御部251には、複数のCANバス32a及びイーサケーブル32bが接続されている。CANゲートウェイ251aは、CANコントローラの機能を含む。中継制御部251は、レイヤー2イーサスイッチ251bに加え、レイヤー3イーサスイッチとして機能するものであってもよい。
【0050】
CANバス32a夫々には、複数の車載ECU5又は車載センサ51が接続されており、これら車載ECU5等は、通信プロトコルとしてCANを用いて通信を行う。CANバス32aに接続される車載ECU5夫々から送信されるCANのデータ(CANメッセージ)には、CAN-IDが含まれている。CAN-IDは、11bit長さで表され、CANメッセージ(データフレーム)のCAN-IDフィールド内に格納される。中継制御部251は、ジョイント端子23及びCANトランシーバ41を介して受信したCANメッセージから、CAN-IDを抽出し、記憶部252に記憶してあるCAN用の経路情報(CAN用経路情報)を参照して、中継する。CAN用経路情報は、CAN-IDと、中継先となるCANトランシーバ41との対応関係を含むものであり、例えばCAN-IDと、当該CAN-IDを含むCANメッセージの中継先となるCANトランシーバ41との対応表(テーブル)の形式で、記憶部252に記憶される。CANトランシーバ41夫々には、例えば、物理ポート番号が設定されており、当該物理ポート番号により、いずれかのCANトランシーバ41に接続されるCANバス32a(セグメント)が特定される。
【0051】
中継制御部251は、CANメッセージから抽出したCAN-IDに基づき、当該CAN-IDに対応する一つ又は複数のCANトランシーバ41、すなわち中継先となるCANトランシーバ41の物理ポート番号を特定する。中継制御部251は、特定したCANトランシーバ41から、受信したCANメッセージを送信し、当該CANメッセージの中継処理(中継制御)を行うことにより、CANゲートウェイ251aとして機能する。
【0052】
イーサケーブル32b夫々には、車載ECU5又は車載センサ51が接続されており、これら車載ECU5等は、中間層の通信プロトコルとしてTCP/IPを用いて通信を行う。なお、下層の通信プロトコルは、イーサネットである。イーサケーブル32bに接続される車載ECU5夫々から送信されるTCP/IPのパケットのヘッダー部には、送信先の車載ECU5(ノード)を示すMAC(Media Access Control Address)アドレス及びIPアドレスが含まれている。MACアドレスは、OSI(Open System Interconnect)の7階層モデルにおけるデータリンク層(レイヤ2)に対応するアドレスであり、車載ECU5等の製造者により決定されるベンダーコード及び連番により構成されるアドレスである。IPアドレスは、OSIの7階層モデルにおけるネットワーク層(レイヤ3)に対応するアドレスであり、ネットワークアドレス及びホストアドレスにより構成される。
【0053】
中継制御部251は、ジョイント端子23及びイーサネットPHY部42を介して受信したTCP/IPのパケットから、MACアドレスを抽出し、記憶部252に記憶してあるイーサネット用の経路情報(イーサネット用経路情報)を参照して、中継する。TCP/IPのパケットにMACアドレスが含まれていない場合、中継制御部251はTCP/IPのパケットからIPアドレスを抽出し、ARP(Address Resolution Protocol)を用いることにより、当該IPアドレスからMACアドレスを導出してもよい。イーサネット用経路情報は、MACアドレステーブルとも称され、例えば、イーサネットPHY部42と、当該イーサネットPHY部42に接続されている車載ECU5のMACアドレスとの対応関係を含む。MACアドレステーブルは、MACアドレスと、当該MACアドレスの車載ECU5が接続されているイーサネットPHY部42、すなわち中継先となるイーサネットPHY部42との対応表(テーブル)の形式で、記憶部252に記憶される。イーサネットPHY部42夫々には、例えば、物理ポート番号が設定されており、当該物理ポート番号により、いずれかのイーサネットPHY部42に接続されるイーサケーブル32b(セグメント)が特定される。
【0054】
中継制御部251は、TCP/IPのパケットから抽出したMACアドレスに基づき、当該MACアドレスに対応するイーサネットPHY部42、すなわち中継先となるイーサネットPHY部42の物理ポート番号を特定する。中継制御部251は、特定したイーサネットPHY部42から、受信したTCP/IPのパケットを送信し、当該パケットの中継処理を行うことにより、レイヤー2イーサスイッチ251bとして機能する。
【0055】
中継制御部251は、制御プログラムを実行することにより、CANとTCP/IP(イーサネット)との間においてプロトコル変換を行い、CANとTCP/IP(イーサネット)との間にて中継制御を行う異プロトコル間ゲートウェイとして機能するものであってもよい。
【0056】
記憶部252には、CAN-IDとMACアドレス等との変換に関する情報が、例えば表形式(プロトコル変換テーブル)で記憶されている。中継制御部251は、当該プロトコル変換テーブルを参照し、CANメッセージから抽出したCAN-IDに基づき、送信先となるMACアドレスに変換する。中継制御部251は、変換したMACアドレス及び、記憶部252に記憶されているMACアドレスとIPアドレスとの対応を示すARPテーブルを参照して逆引きしたIPアドレスを、送信先アドレスとしてTCP/IPのパケットを生成する。中継制御部251は、生成したTCP/IPのパケットのDATAフィールドに、CANメッセージのDATAフィールドに格納されたコンテンツデータを格納し、当該パケットを、イーサネット用経路情報を参照して特定したイーサネットPHY部42から送信し、中継する。
【0057】
同様に中継制御部251は、例えば受信したマルチキャストによるTCP/IPのパケットのマルチキャストアドレスを抽出し、記憶部252に記憶されているマルチキャストアドレスとCAN-IDとの変換に関する情報を参照し、当該マルチキャストアドレスに対応するCAN-IDを特定する。中継制御部251は、特定したCAN-IDを含むCANメッセージを生成し、生成したCANメッセージのDATAフィールドに、受信したTCP/IPのパケットのDATAフィールドに格納されたコンテンツデータを格納し、当該CANメッセージを、CAN用経路情報を参照して特定したCANトランシーバ41から送信し、中継する。
【0058】
ジョイントコネクタ2が含む中継部25によって、ジョイントコネクタ2に接続される複数のワイヤーハーネス3に接続される車載ECU5から送信されたデータに含まれる情報に基づき、複数のジョイント端子23間において前記データの中継制御を行い、ワイヤーハーネス3夫々のトラフィックの増加を抑制することができる。当該中継制御を行う中継部25を備えるジョイントコネクタ2を用いることにより、車両1内におけるワイヤーハーネス3の配策の自由度を向上させることができる。
【0059】
中継制御部251は、CANゲートウェイ251a、レイヤー2イーサスイッチ251b又は、CANゲートウェイ251a及びレイヤー2イーサスイッチ251bとしての機能を発揮するため、車内LAN6の通信プロトコルがCAN又はイーサネットである場合、効率的に中継制御を行うことができる。又、中継制御部251は、CAN及びイーサネットの通信プロトコル間においてプロトコル変換して中継制御を行うため、CAN及びイーサネットの通信プロトコルが混在する車内LAN6におけるハイヤーハーネスの配策の自由度を向上させることができる。
【0060】
中継部25には、複数のワイヤーハーネス3に接続される車載ECU5の内のいずれかの車載ECU5から出力される電力が入力される電力用端子24が設けられているため、ジョイントコネクタ2への電力線33の配策を簡易化することができる。
【0061】
ジョイント端子23夫々は、矩形状を成すジョイントコネクタ2の一面、すなわち同じ面に集約して設けられている。すなわち、ジョイント端子23夫々は、ジョイントコネクタ2の同じ面(一面)に集約して設けられている。従って、ジョイントコネクタ2に対し複数のワイヤーハーネスを組み付ける際、これら複数のワイヤーハーネスを、ジョイント端子23が設けられているジョイントコネクタ2の一面のみに向けて容易に組み付けることができる。すなわち、ジョイントコネクタと、複数のワイヤーハーネスとの接続箇所を一つの面(同じ面)に集約でき、車両の製造段階等におけるジョイントコネクタの組付けを容易化し、製造効率を向上させることができる。
【0062】
本実施形態において、中継制御部251は、CANゲートウェイ251a及びレイヤー2イーサスイッチ251bとして機能するとしたが、これに限定されない。中継制御部251は、CANゲートウェイ251aのみの機能を発揮するものであってもよい。又、中継制御部251は、レイヤー2イーサスイッチ251bのみの機能を発揮するものであってもよい。すなわち、中継制御部251は、CANゲートウェイ251a、レイヤー2イーサスイッチ251b又は、CANゲートウェイ251a及びレイヤー2イーサスイッチ251bとして機能するものであってもよい。
【0063】
(実施形態2)
図4は、実施形態2のジョイントコネクタ2の中継部25の構成を例示するブロック図である。実施形態2のジョイントコネクタ2は、中継部25が物理層I/F(CANトランシーバ41及びイーサネットPHY部42)を備えず、ワイヤーハーネス3のメスコネクタ31の内部に設けられた物理層I/F(CANトランシーバ41及びイーサネットPHY部42)と、中継制御部251とを、ジョイント端子23で接続する点で実施形態1と異なる。
【0064】
実施形態2のジョイントコネクタ2は、実施形態1(図2参照)と同様にサブコネクタ22、ハウジング21及びハウジング21内に設けられた中継部25を備える。中継部25は、記憶部252及び中継制御部251を含む。これら記憶部252及び中継制御部251の構成は、実施形態1と同様である。中継部25の他面には、実施形態1と同様に複数のジョイント端子23が並列して設けられている。
【0065】
ジョイント端子23と中継制御部251とは、内部バス253を介して接続されている。すなわち、ジョイント端子23及び内部バス253は直接接続される。従って、中継部25は、CANトランシーバ41又はイーサネットPHY部42を含まない構成となっている。
【0066】
ジョイントコネクタ2には、実施形態1と同様にワイヤーハーネス3のメスコネクタ31が接続される。このワイヤーハーネス3のメスコネクタ31の内部には、CANトランシーバ41又はイーサネットPHY部42が設けられている。実施形態1と同様にワイヤーハーネス3のメスコネクタ31が、サブコネクタ22のソケット部222に挿入されることにより、メスコネクタ31のメス端子311と、ジョイントコネクタ2のジョイント端子23とが電気的に接触する。ワイヤーハーネス3のケーブル32(CANバス32a又はイーサケーブル32b)上に伝送される波形は、メスコネクタ31内に設けられるCANトランシーバ41又はイーサネットPHY部42により、1と0のビット列で表される信号に復号される。復号された信号は、メスコネクタ31のメス端子311から出力され、メス端子311に接触するジョイント端子23を介して中継制御部251に入力される。
【0067】
中継制御部251が中継制御を行うにあたり参照する経路情報において、中継先を特定するための物理ポート番号は、ジョイント端子23夫々に設定される。中継制御部251は、抽出したCAN-ID又はMACアドレスに基づき、中継先となるジョイント端子23を特定し、特定したジョイント端子23からCANメッセージ又はTCP/IPのパケットを送信することにより、中継制御を行う。
【0068】
物理層I/F(CANトランシーバ41及びイーサネットPHY部42)を、ワイヤーハーネス3のメスコネクタ31の内部に設けることにより、中継部25が物理層I/F(CANトランシーバ41及びイーサネットPHY部42)を含むことを不要とし、中継部25を小型化することができる。従って、中継部25を内包するハウジング21が大型化することを抑制することができる。
【0069】
(実施形態3)
図5は、実施形態3のジョイントコネクタ2の中継部の構成を例示するブロック図である。実施形態3のジョイントコネクタ2は、車載ECU5又は車載センサ51からイーサケーブル32bを介して電力を受電(POE/Power over Ethernet)する点で、実施形態1と異なる。
【0070】
実施形態3のジョイントコネクタ2は、実施形態1(図2参照)と同様にサブコネクタ22、ハウジング21及びハウジング21内に設けられた中継部25を備える。中継部25は、記憶部252、中継制御部251及びイーサネットPHY部42を含む。これら記憶部252及び中継制御部251の構成は、実施形態1と同様である。
【0071】
実施形態3のジョイントコネクタ2は、電力通信共用端子241を備える。電力通信共用端子241は、中継部25に含まれる中継制御部251と電気的に接続している導電部材である。電力通信共用端子241は、中継部25の他面から、ハウジング21の開口部に向かって突設しており、後述するワイヤーハーネス3のメスコネクタ31に篏合し、メスコネクタ31内のメス端子311と電気的に接触するオス端子として機能する。
【0072】
電力通信共用端子241に接続されたワイヤーハーネス3には、ワイヤーハーネス3に接続された車載ECU5から送信されるデータが流れると共に、車載ECU5から供給される電力が送電される。当該ワイヤーハーネス3のケーブル32は、イーサケーブル32b(Ethernet用通信ケーブル)であり、当該車載ECU5とジョイントコネクタ2とは、電力通信共用端子241を介し、POE(Power over Ethernet/IEEE 802.3af及び802.3at)を用いることにより、イーサケーブル32bを用いて通信及び電力の送電を併せて行う。すなわち、電力通信共用端子241はPOEに対応した端子であり、通信のためのジョイント端子23及び受電のための電力用端子24の双方の機能を含む端子である。
【0073】
電力通信共用端子241には、例えばフィルタ回路等を含む分岐部が設けられている。電力通信共用端子241は、当該分岐部により、イーサネットPHY部42に接続される通信用ラインと、中継制御部251に接続される電力用内部バス254とに分岐される。当該通信用ラインには、イーサネットのプロトコルに準拠したデータが流れる。電力用内部バス254には、中継制御部251に電力を給電するための電流が流れる。
【0074】
POEに対応した電力通信共用端子241を用いることにより、電力線及び通信線による別個のケーブルを配策することを不要とし、単一のイーサケーブル32bにより、車載ECU5又は車載センサ51と、ジョイントコネクタ2とを通信可能に接続すると共に、ジョイントコネクタ2は、当該車載ECU5等から送電された電力を受電することができる。従って、車内におけるワイヤーハーネス3等のケーブルの配策を簡易化することができる。
【0075】
(実施形態4)
図6は、実施形態4のジョイントコネクタ2の中継部25の構成を例示するブロック図である。実施形態4のジョイントコネクタ2は、メスコネクタ31を介してジョイント端子23に接続されるケーブル32の異常を検出する異常検出部255を含む点で、実施形態1と異なる。
【0076】
実施形態4のジョイントコネクタ2は、実施形態1(図2参照)と同様にサブコネクタ22、ハウジング21及びハウジング21内に設けられた中継部25を備える。中継部25は、記憶部252、中継制御部251及びイーサネットPHY部42を含む。これら記憶部252及び中継制御部251の構成は、実施形態1と同様である。
【0077】
実施形態4のジョイントコネクタ2は、異常検出部255を備える。異常検出部255は、中継部25に含まれ、内部バス253により中継制御部251と通信可能に接続されている。異常検出部255は、信号線256によってセンサ257と通信可能に接続されており、当該センサ257は、例えば、ジョイント端子23の先端部と、CANトランシーバ41又はイーサネットPHY部42との間に設けられている。
【0078】
センサ257は、例えば、ホール素子又はシャント抵抗等の電気素子により構成され、車載ECU5とジョイントコネクタ2とを接続するワイヤーハーネス3上に流れる電流値又はワイヤーハーネス3のインピーダンス等に関する検出値を検出する。センサ257は、例えば、ジョイント端子23の先端部と、CANトランシーバ41又はイーサネットPHY部42との間等に設けられ、ジョイント端子23に流れる電流に関する検出値を効率的に検出することができる。
【0079】
異常検出部255は、センサ257によって検出されたワイヤーハーネス3(ケーブル32)に流れる電流の電流値又は当該ケーブル32のインピーダンス等、検出値を取得し、検出値に基づき、ケーブル32の断線の予兆又はワイヤーハーネス3(メスコネクタ31)とジョイント端子23との接触不良等の物理的な異常を検出する。異常検出部255は、センサ257から取得した検出値に基づき、ワイヤーハーネス3上に流れる電流の方形波の崩れ度合(通信なまり)に関する情報を導出するものであってもよい。異常検出部255は、例えば、所定期間におけるインピーダンスの変化量、所定値以上となる電流値(ピーク電流)の回数等に基づき、ワイヤーハーネス3に関する異常を検出する。異常検出部255は、中継制御部251による中継制御を開始する際に、中継制御部251に対し疑似信号の送信要求を行い、中継制御部251から送信された疑似信号の反射に関する情報を取得することにより、ワイヤーハーネス3に関する異常を検出するものであってもよい。
【0080】
本実施形態において、センサ257はジョイント端子23の先端部と、CANトランシーバ41又はイーサネットPHY部42との間に設けられるとしたが、これに限定されない。ジョイント端子23夫々に対し設けられるセンサ257夫々は、CANトランシーバ41又はイーサネットPHY部42の内部に実装(内蔵)されているものであってもよい。又は、センサ257及び異常検出部255の双方が、CANトランシーバ41又はイーサネットPHY部42の内部に実装(内蔵)されているものであってもよい。
【0081】
本実施形態によれば、ジョイントコネクタ2は、当該ジョイントコネクタ2に直接、接続されるワイヤーハーネス3の断線の予兆又は接触不良等の物理的な異常を検出する異常検出部255を含むため、当該ワイヤーハーネス3に対する異常検出の精度を向上させることができる。又、異常検出部255はジョイントコネクタ2に含まれるため、当該異常検出部255がいずれかの車載ECU5に搭載される場合と比較して簡易に交換できるため、交換性を向上させることができる。
【0082】
(実施形態5)
図7は、実施形態5のジョイントコネクタ2の中継部25の構成を例示するブロック図である。実施形態5のジョイントコネクタ2は、ワイヤーハーネス3上に流れるデータに対するセキュリティに関する事項を判定するセキュリティ判定部258を含む点で、実施形態1と異なる。
【0083】
実施形態5のジョイントコネクタ2は、実施形態1(図2参照)と同様にサブコネクタ22、ハウジング21及びハウジング21内に設けられた中継部25を備える。中継部25は、記憶部252、中継制御部251及びイーサネットPHY部42を含む。これら記憶部252及び中継制御部251の構成は、実施形態1と同様である。
【0084】
実施形態5のジョイントコネクタ2は、セキュリティ判定部258を備える。セキュリティ判定部258は、中継部25に含まれ、内部バス253により中継制御部251と通信可能に接続されている。セキュリティ判定部258は、例えば、HSM(Hardware Security Module)又は、IDS(Intrusion Detection System)がエンベデットプログラムとして実装されたMCU(Micro Controller Unit)により構成されるものであってもよい。
【0085】
セキュリティ判定部258は、CANトランシーバ41又はイーサネットPHY部42を介して中継制御部251が取得(受信)したデータ(ワイヤーハーネス3上に流れるデータ)を監視し、当該データに含まれる不正なメッセージ等が含まれるか否かの判定を行う。セキュリティ判定部258は、例えば、中継制御部251が取得(受信)したデータに対し、暗号化された処理に関する適正性の判定、診断プログラム(ダイアグプロセス)の実行、又はIDSの機能を発揮することにより、当該メッセージを解析し正否を判定する。又は、セキュリティ判定部258は、データ(メッセージ)を送信するにあたり規定されている送信周期とは、異なる周期で送信されているメッセージを不正なメッセージとして判定してもよい。セキュリティ判定部258は、このような手法により中継制御部251が取得(受信)したデータ(メッセージ)を監視及び解析等して正否を判定し、例えば、正当(正常)な車載ECU5になりすました不正(異常)な車載ECU5から送信されたデータ(メッセージ)を、不正なメッセージとして判定するものであってもよい。
【0086】
本実施形態によれば、ジョイントコネクタ2は、当該ジョイントコネクタ2に直接、接続されるワイヤーハーネス3上に流れるデータに対するセキュリティに関する事項を判定するセキュリティ判定部258を含むため、当該ワイヤーハーネス3上に流れるデータに対するセキュリティ判定の精度を向上させることができる。又、セキュリティ判定部258はジョイントコネクタ2に含まれるため、当該セキュリティ判定部258がいずれかの車載ECU5に搭載される場合と比較して簡易に交換できるため、交換性を向上させることができる。
【0087】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0088】
1 車両
2 ジョイントコネクタ
21 ハウジング
22 サブコネクタ
221 仕切り板
222 ソケット部
23 ジョイント端子
24 電力用端子
241 電力通信共用端子
25 中継部
251 中継制御部
251a CANゲートウェイ
251b レイヤー2イーサスイッチ
252 記憶部
253 内部バス
254 電力用内部バス
255 異常検出部
256 信号線
257 センサ
258 セキュリティ判定部
3 ワイヤーハーネス
31 メスコネクタ(コネクタ)
311 メス端子
32 ケーブル
32a CANバス
32b イーサケーブル
33 電力線
41 CANトランシーバ
42 イーサネットPHY部
5 車載ECU
51 車載センサ
6 車内LAN
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7