(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】人工衛星用アンテナ
(51)【国際特許分類】
B64G 1/66 20060101AFI20220412BHJP
B64G 1/44 20060101ALI20220412BHJP
H01Q 1/28 20060101ALI20220412BHJP
H01Q 19/10 20060101ALI20220412BHJP
【FI】
B64G1/66 C
B64G1/44 Z
H01Q1/28
H01Q19/10
(21)【出願番号】P 2020559742
(86)(22)【出願日】2019-09-20
(86)【国際出願番号】 JP2019036981
(87)【国際公開番号】W WO2020121621
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-03-17
(31)【優先権主張番号】P 2018233556
(32)【優先日】2018-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】川添 悠子
(72)【発明者】
【氏名】杉村 伸雄
(72)【発明者】
【氏名】泉山 卓
【審査官】姫島 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-221876(JP,A)
【文献】特開2014-019238(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64G 1/66
B64G 1/44
H01Q 1/28
H01Q 19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
衛星本体を備える人工衛星に搭載される人工衛星用アンテナであって、
太陽電池パネルと、
輻射器と、
前記太陽電池パネルに機械的かつ電気的に接続される導体と、を備え、
前記太陽電池パネルは、一方向に延びる形状を有し、
前記導体は、弾性材を介して前記太陽電池パネルに接続されているとともに、前記太陽電池パネルの展開時に前記一方向の延長線上に前記太陽電池パネルから突出し、
前記太陽電池パネル及び前記導体を反射器として用いる人工衛星用アンテナ。
【請求項8】
前記太陽電池パネル及び前記導体は、前記人工衛星に放射された電波を、前記輻射器に向けて反射する反射器である請求項1,3,4,5,6,7のいずれか一項に記載の人工衛星用アンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、人工衛星用アンテナに関する。
本願は、2018年12月13日に日本国に出願された特願2018-233556号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、第1、第2のアンテナを備える人工衛星が開示されている。第1、第2のアンテナは、一対のユニポールアンテナあるいはダイポールアンテナと思われる人工衛星用アンテナである。
特許文献2と特許文献3にも人工衛星が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本国特開2007-221303号公報
【文献】日本国特開2015-168422号公報
【文献】日本国特開2008-221876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
比較的小型の人工衛星つまり小型衛星や超小型衛星では、軽量化や収納容積の削減等の必要性から上記ユニポールアンテナあるいはダイポールアンテナが地上(移動局をも含む地上局)との通信用アンテナとして採用されている。しかしながら、これらユニポールアンテナあるいはダイポールアンテナは、アンテナ性能が必ずしも十分ではない。比較的大型の衛星では性能がより優れた人工衛星用アンテナを採用することができるが、小型衛星や超小型衛星等の比較的小型な人工衛星では、必ずしも性能が十分でないユニポールアンテナあるいはダイポールアンテナが使用されている。
【0005】
本開示は、上述した事情に鑑みてなされ、重量や容積の増大を抑制しつつアンテナ性能を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様は、衛星本体を備える人工衛星に搭載される人工衛星用アンテナであって、太陽電池パネルと、輻射器と、前記太陽電池パネルに機械的かつ電気的に接続される導体と、を備え、前記太陽電池パネル及び前記導体を反射器として用いるように構成されている。
【0007】
本開示の第2の態様は、上記第1の態様において、前記太陽電池パネルは、一方向に延びる形状を有し、前記導体は、弾性材を介して前記太陽電池パネルに接続されているとともに、前記太陽電池パネルの展開時に前記一方向の延長線上に前記太陽電池パネルから突出するように構成されている。
【0008】
本開示の第3の態様は、上記第1または第2の態様において、前記導体は、前記太陽電池パネルの非展開時において前記太陽電池パネルに対して屈曲した状態で収容され、保持部によって衛星本体に保持されているように構成されている。
【0009】
本開示の第4の態様は、上記第3の態様において、前記保持部は、前記太陽電池パネルの展開時に溶断されるように構成されている。
【0010】
本開示の第5の態様は、上記第1~第4のいずれかの態様において、前記太陽電池パネルが一対設けられる場合、前記導体は、各々の前記太陽電池パネルに設けられるように構成されている。
【0011】
本開示の第6の態様は、上記第1~第4のいずれかの態様において、前記導体は棒状部材である。
【0012】
本開示の第7の態様は、上記第1~第4のいずれかの態様において、前記太陽電池パネルの展開時に、前記導体が延びる方向に直交し、かつ、前記太陽電池パネルに平行な方向から見ると、前記太陽電池パネルと前記導体とが直線状となるように構成されている。
【0013】
本開示の第8の態様は、上記第1~第4のいずれかの態様において、前記太陽電池パネル及び前記導体は、前記人工衛星に放射された電波を、前記輻射器に向けて反射する反射器である。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、重量や容積の増大を抑制しつつアンテナ性能を向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1A】本開示の一実施形態において、小型衛星の太陽電池パネルの展開前の状態を示す模式図である。
【
図1B】本開示の一実施形態において、小型衛星の太陽電池パネルの展開後の状態を示す模式図である。
【
図2A】本開示の一実施形態において、小型衛星の太陽電池パネルの展開前の状態を示す模式図である。
【
図2B】本開示の一実施形態において、小型衛星の太陽電池パネルの展開前の状態を示す模式図である。
【
図3A】本開示の一実施形態において、小型衛星の太陽電池パネルの展開後の状態を示す模式図である。
【
図3B】本開示の一実施形態において、小型衛星の太陽電池パネルの展開後の状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本開示の一実施形態について説明する。
最初に、本実施形態に係る人工衛星用アンテナが搭載される人工衛星(超小型衛星S)について、
図1A,
図1Bを参照して説明する。この超小型衛星Sは、
図1Aに示すように、太陽電池パネル2A,2Bの展開前の状態では略箱型であり、数kg~100kg程度の重量を持つ。
【0017】
また、この超小型衛星Sは、外形的な構成要素として衛星本体1と一対の太陽電池パネル2A,2Bを備える。衛星本体1は、図示するように略箱型(略直方体)であり、超小型衛星Sの用途によって内蔵機器が異なるが、通信機器や各種の計測機器等を内蔵している。なお、
図1A,
図1Bに示す衛星本体1(超小型衛星S)において、下側(底面)は超小型衛星Sが例えば地球の周回軌道上を飛行している状態において地上(地球)を向く側(面)である。
【0018】
一対の太陽電池パネル2A,2Bは、このような衛星本体1の左右に分散して設けられている。すなわち、一対の太陽電池パネル2A,2Bのうち、太陽電池パネル2Aは衛星本体1の左側面(略平面)に設けられ、太陽電池パネル2Bは衛星本体1の右側面(略平面)に設けられている。このような太陽電池パネル2A,2Bは、平板状の支持板の表面に複数の太陽電池が設けられており、衛星本体1に対して電力を供給する。なお、上記支持板は導電性材料から形成されている。
【0019】
また、一対の太陽電池パネル2A,2Bは、同一形状に形成されており、所定長さの長辺と短辺とを有する長方形かつ平板状の部材である。即ち、一対の太陽電池パネル2A,2Bは、長辺の延びる1方向に延びる形状を有すると言える。太陽電池パネル2A,2Bの収納時に、一対の太陽電池パネル2A,2Bのうち、太陽電池パネル2Aは、衛星本体1の左側面に平行に対峙する状態で設けられ、太陽電池パネル2Bは、衛星本体1の右側面に平行に対峙する状態で設けられている。
【0020】
図1Bに示すように、このような超小型衛星Sは、太陽電池パネル2A,2Bの展開後の状態では衛星本体1の左右に一対の太陽電池パネル2A,2Bが突出すると共に、同じく衛星本体1の左右に一対の輻射器3A,3Bが突出する。一対の太陽電池パネル2A,2Bは、衛星本体1の地球側(下側)を前方とした場合に衛星本体1の後方側に位置する。
【0021】
これに対して、一対の輻射器3A,3Bは、導電性材料から形成された棒状部材であり、衛星本体1の前方側に位置する。すなわち、太陽電池パネル2A,2Bの展開状態における一対の太陽電池パネル2A,2Bは、衛星本体1(超小型衛星S)において一対の輻射器3A,3Bよりも後方側に位置する。
【0022】
また、一対の太陽電池パネル2A,2Bは、太陽電池パネル2A,2Bの展開状態において衛星本体1に対して略直交する姿勢である。すなわち、太陽電池パネル2Aは、衛星本体1の左側面に対して略90°の角度で左方に突出し、太陽電池パネル2Bは、衛星本体1の右側面に対して略90°の角度で右方に突出する。したがって、一対の太陽電池パネル2A,2Bのそれぞれは、衛星本体1に対して略直交する姿勢で左右に突出すると共に、衛星本体1を挟んで略直線状に配置されている。
ここで、略90°の角度とは、必ずしも完全に90°の角度である必要はなく、概略90°の角度であるという意味である。
【0023】
このような一対の太陽電池パネル2A,2Bのそれぞれには、先端部に棒状部材4A,4Bが直線状に接続されている。これら棒状部材4A,4Bは、導電性材料から形成されると共に太陽電池パネル2A,2Bの展開時において一対の太陽電池パネル2A,2Bの延長線上に突出する導体である。このような棒状部材4A,4Bは、一対の太陽電池パネル2A,2Bの導体としての長さを調節するための補助部品である。
ここで、棒状部材4A,4Bは、
図1Bに示すように、太陽電池パネル2A,2Bの長辺の延長線上に設けられていても良いが、
図2Aや
図3Aに示すように、棒状部材4A,4Bが、太陽電池パネル2A,2Bの長辺の延長線上に設けられていなくても良い。
【0024】
すなわち、太陽電池パネル2Aの先端部には棒状部材4Aが直線状に接続されており、太陽電池パネル2A及び棒状部材4Aの導体としての合計長さが所定長さに設定されている。また、太陽電池パネル2Bの先端部には棒状部材4Bが直線状に接続されており、太陽電池パネル2B及び棒状部材4Bの導体としての合計長さが所定長さに設定されている。
【0025】
棒状部材4A,4Bのそれぞれの一端が太陽電池パネル2A,2Bのそれぞれの支持板に機械的かつ電気的に接続されている。棒状部材4A,4Bは、太陽電池パネル2A,2Bの支持板と共に一対の反射器Ra,Rbを構成している。すなわち、太陽電池パネル2A及び棒状部材4Aは、所定長さを有する反射器Raを構成し、太陽電池パネル2B及び棒状部材4Bは、同じく所定長さを有する反射器Rbを構成している。一対の反射器Ra,Rbは、一対の輻射器3A,3Bと共に本実施形態に係る人工衛星用アンテナを構成しており、一対の輻射器3A,3Bを補助する。
ここで、太陽電池パネル2A,2Bの厚さと棒状部材4A,4Bの直径が略同一の場合、一対の反射器Ra,Rbは、棒状部材4A又は4Bの延びる方向に直交し、かつ、太陽電池パネル2A又は2Bに平行な方向から見ると、略線状(略直線状)に構成されている。ここで、略線状(略直線状)とは、必ずしも完全に線状(直線状)である必要はなく、概略線状(概略直線状)であればよいという意味である。
【0026】
一対の輻射器3A,3Bの各々はユニポールアンテナであり、衛星本体1内の通信機器にそれぞれ接続されている。すなわち、一対の輻射器3A,3Bのうち、輻射器3Aは、一方のユニポールアンテナであり、反射器Raに平行に対峙している。輻射器3Bは、他方のユニポールアンテナであり、反射器Rbに平行に対峙している。
【0027】
このような一対の輻射器3A,3Bは、太陽電池パネル2A,2Bの非展開時には衛星本体1の側面と一対の太陽電池パネル2A,2Bとの間に収容され、太陽電池パネル2A,2Bの展開時には一対の太陽電池パネル2A,2Bの展開方向と同一方向に展開する。すなわち、太陽電池パネル2A,2Bの非展開時において、輻射器3Aは、衛星本体1の左側面と太陽電池パネル2Aとの間に収容され、輻射器3Bは、衛星本体1の右側面と太陽電池パネル2Bとの間に収容される。
【0028】
太陽電池パネル2A,2Bの展開時において、輻射器3Aは、太陽電池パネル2Aの展開方向と同一方向に展開し、輻射器3Bは、太陽電池パネル2Bの展開方向と同一方向に展開する。すなわち、一対の反射器Ra,Rbと一対の輻射器3A,3Bとは、太陽電池パネル2A,2Bの展開時において平行に対峙する位置関係にある。輻射器3Aは、反射器Raと平行に対峙し、輻射器3Bは、反射器Rbと平行に対峙する。すなわち、反射器Raを、棒状部材4Aの延びる方向に直交し、かつ、太陽電池パネル2Aに平行な方向から見ると、反射器Raと輻射器3Aとは、互いに略平行な線状となる。同様に、反射器Rbを、棒状部材4Bの延びる方向に直交し、かつ、太陽電池パネル2Bに平行な方向から見ると、反射器Rbと輻射器3Bとは、互いに略平行な線状となる。なお、上記関係は、太陽電池パネル2A、2Bの厚さと、棒状部材4A、4Bの直径が略同一の場合に成り立つ。
従って、一対の太陽電池パネル2A,2Bが、衛星本体1に対して略直交する姿勢で左右に突出すると共に、衛星本体1を挟んで略直線状に配置されているため、一対の反射器Ra,Rbと一対の輻射器3A,3Bとは、互いに略平行な線状となる。
なお、このような一対の輻射器3A,3Bと衛星本体1との間には、非展開状態の一対の輻射器3A,3Bを展開状態とする一対の展開装置(図示略)が個別に設けられている。ここで、略平行とは、必ずしも完全に平行である必要はなく、概略平行であれば良いという意味である。
【0029】
続いて、
図2A,
図2B及び
図3A,
図3Bを参照して一対の反射器Ra,Rbと衛星本体1との接続構造について説明する。ここで、
図2A,
図2Bは、衛星本体1の太陽電池パネル2A,2Bの展開前の状態を示す模式図であり、
図3A,
図3Bは、衛星本体1の太陽電池パネル2A,2Bの展開後の状態を示す模式図である。
【0030】
なお、一対の反射器Ra,Rbは、衛星本体1との同一の接続構造を有しているので、
図2A及び
図3A,
図3Bでは、一対の反射器Ra,Rbを代表して反射器Rbのみを示している。このような
図2A,
図2B及び
図3A,
図3Bにおいて、
図2Aは反射器Rbの展開前の状態を示し,
図2Bは、一対の反射器Ra,Rbの展開前の状態を示している。
図2Aは反射器Rbの正面図であり、
図2Bは一対の反射器Ra,Rbの側面図である。また、
図3A,
図3Bは、反射器Rbの展開後の状態を示しており、
図3Aは反射器Rbの正面図、
図3Bは反射器Rbの側面図である。
【0031】
一対の反射器Ra,Rbの構成要素である一対の太陽電池パネル2A,2Bは、
図2A,
図2B及び
図3A,
図3Bに示すように、衛星本体1(超小型衛星S)の後方側に位置する太陽電池パネル2A,2Bの端部が一対のヒンジ5A,5Bによって回動自在に衛星本体1の側面に接続されている。これら一対のヒンジ5A,5Bは、衛星本体1の後端面及び一対の太陽電池パネル2A,2Bの後端辺に平行な回転軸を備え、所定の回動範囲で一対の太陽電池パネル2A,2Bを回動自在に衛星本体1の側面に連結させる連結具である。
【0032】
すなわち、ヒンジ5A,5Bのうち、ヒンジ5Aは、衛星本体1の後端面及び太陽電池パネル2Aの後端辺に平行な回転軸を備え、太陽電池パネル2Aを回動自在に衛星本体1の左側面に連結させる。ヒンジ5Bは、衛星本体1の後端面及び太陽電池パネル2Bの後端辺に平行な回転軸を備え、太陽電池パネル2Bを回動自在に衛星本体1の右側面に連結させる。
【0033】
ヒンジ5A,5Bは、太陽電池パネル2A、2Bの非展開時において太陽電池パネル2A,2Bを衛星本体1の側面に平行な姿勢で収納させる。また、ヒンジ5A,5Bの回転軸にはバネ等の付勢部材が組み込まれている。ヒンジ5A,5Bは、この付勢部材の付勢力が起動力として作用することにより、最大回動角が略90°つまり太陽電池パネル2A,2Bが衛星本体1の側面に対して略直交する姿勢となるように太陽電池パネル2A,2Bを展開させる。
【0034】
太陽電池パネル2A,2Bの先端部には、弾性材(接続バネ)6A,6Bを介して棒状部材4A,4Bが接続されている。すなわち、弾性材6A,6Bのうち、弾性材6Aは、太陽電池パネル2Aの先端部に設けられ、棒状部材4Aを屈曲自在に太陽電池パネル2Aに接続する。弾性材6Bは、太陽電池パネル2Bの先端部に設けられ、棒状部材4Bを屈曲自在に太陽電池パネル2Bに接続する。
【0035】
弾性材6A,6Bは、例えばコイルバネあるいは板バネであり、太陽電池パネル2A,2Bの非展開時において棒状部材4A,4Bを太陽電池パネル2A,2Bに対して屈曲させた状態とすることにより、太陽電池パネル2A,2Bの裏側つまり太陽電池パネル2A,2Bと衛星本体1の側面との間に棒状部材4A,4Bを収容させる。また、弾性材6A,6Bは、太陽電池パネル2A,2Bの展開時において棒状部材4A,4Bを太陽電池パネル2A,2Bに対して略一直線に延伸させた状態に展開させる。なお、略一直線とは、必ずしも完全に一直線である必要はなく、概略一直線であればよいという意味である。
【0036】
また、衛星本体1の側面には、棒状部材4A,4Bに対応して保持部材7A,7Bが設けられている。すなわち、衛星本体1の左側面には、棒状部材4Aに対応して保持部材7Aが設けられ、衛星本体1の右側面には、棒状部材4Bに対応して保持部材7Bが設けられている。このような保持部材7A,7Bは、棒状部材4A,4Bの収納時における位置決めを行う部材であり、棒状部材4A,4Bの一部を挟持する。
【0037】
また、衛星本体1の側面と太陽電池パネル2A,2Bとの間には、溶断自在な保持線8A,8Bが設けられている。すなわち、衛星本体1の左側面と太陽電池パネル2Aとの間には、太陽電池パネル2Aに対応して保持線8Aが設けられ、衛星本体1の右側面と太陽電池パネル2Bとの間には、太陽電池パネル2Bに対応して保持線8Bが設けられている。
【0038】
このような保持線8A,8Bは、太陽電池パネル2A,2B及び棒状部材4A,4Bを非展開状態に維持するための接続線である。このような保持線8A,8Bは、衛星本体1の側面に個別に設けられた切断装置9A,9Bによって個々に溶断される。切断装置9A,9Bのうち、切断装置9Aは、保持線8Aを所定温度(溶断温度)まで加熱することにより溶断させ、切断装置9Bは、保持線8Bを所定温度(溶断温度)まで加熱することにより溶断させる。
【0039】
なお、保持部材7A,7B、保持線8A,8B及び切断装置9A,9Bは、本開示の保持部を構成している。
【0040】
次に、本実施形態における超小型衛星S及び本実施形態に係る人工衛星用アンテナの作用効果について詳しく説明する。
【0041】
超小型衛星Sは軌道上に投入されると、一対の切断装置9A,9Bが作動することにより一対の太陽電池パネル2A,2B及び棒状部材4A,4Bが非展開状態から展開状態となる。すなわち、一対の切断装置9A,9Bが作動して一対の保持線8A,8Bが溶断することにより、一対のヒンジ5A,5Bの回転軸に組み込まれた付勢部材の付勢力が起動力として一対の太陽電池パネル2A,2Bに作用する。
【0042】
非展開状態において衛星本体1の側面と平行に対峙する一対の太陽電池パネル2A,2Bは、上記付勢力(起動力)によって衛星本体1の側面と略直交する状態に展開する。また、これと同時に一対の弾性材6A,6Bの弾性力が起動力として一対の棒状部材4A,4Bに作用することにより、太陽電池パネル2A,2Bの非展開状態において一対の太陽電池パネル2A,2Bに対して屈曲状態にある一対の棒状部材4A,4Bは、上記弾性力(起動力)によって一対の太陽電池パネル2A,2Bと同一方向に展開する。
【0043】
また、このように一対の太陽電池パネル2A,2B及び棒状部材4A,4Bの展開が完了すると、一対の輻射器3A,3Bと衛星本体1との間に設けられた一対の展開装置が作動を開始することによって、一対の輻射器3A,3Bが一対の太陽電池パネル2A,2B及び棒状部材4A,4Bの展開方向と同一方向に展開する。
【0044】
このような超小型衛星Sの太陽電池パネル2A,2Bの展開状態において、一対の太陽電池パネル2A,2B及び棒状部材4A,4Bによって構成される一対の反射器Ra,Rbは、一対の輻射器3A,3Bと平行に対峙する状態となる。また、太陽電池パネル2A及び棒状部材4Aによって構成される反射器Raは一体として導体であり、太陽電池パネル2B及び棒状部材4Bによって構成される反射器Rbも一体として導体である。
【0045】
さらに、一対の反射器Ra,Rbの長さは、一対の輻射器3A,3Bが地球と通信する際の電波の波長に対して最適化されている。すなわち、太陽電池パネル2A及び棒状部材4Aの合計長さは、輻射器3Aが送受信する電波の1/4波長に相当する長さに設定されており、太陽電池パネル2B及び棒状部材4Bの合計長さは、輻射器3Bが送受信する電波の1/4波長に相当する長さに設定されている。
【0046】
すなわち、本実施形態における超小型衛星Sでは、地球から超小型衛星Sに放射された電波を反射器Raが輻射器3Aに向けて効果的に反射するので、反射器Raと輻射器3Aとによって構成される人工衛星用アンテナのアンテナ利得が反射器Raが存在しない従来の人工衛星用アンテナよりも向上する。反射器Raは、後方から飛来するノイズ電波を遮蔽するので、輻射器3Aが地球から受信する受信波のSN比を向上させる。
【0047】
また、地球から放射された電波を反射器Rbが輻射器3Bに向けて効果的に反射するので、反射器Rbと輻射器3Bとによって構成される人工衛星用アンテナのアンテナ利得が反射器Rbが存在しない従来の人工衛星用アンテナよりも向上する。反射器Rbは、後方から飛来するノイズ電波を遮蔽するので、輻射器3Bが地球から受信する受信波のSN比を向上させる。
【0048】
したがって、本実施形態によれば、人工衛星用アンテナは、衛星本体1を備える人工衛星(超小型衛星S)に搭載される人工衛星用アンテナであって、太陽電池パネル2A,2Bと、輻射器3A,3Bと、太陽電池パネル2A,2Bに機械的かつ電気的に接続される導体(棒状部材4A,4B)と、を備え、太陽電池パネル2A,2B及び導体(棒状部材4A,4B)を反射器Ra,Rbとして用いている。つまり、一対の太陽電池パネル2A,2Bに一対の棒状部材4A,4Bを付加するだけで一対の太陽電池パネル2A,2Bを一対の反射器Ra,Rbとして機能させるので、重量や容積の増大を抑制しつつアンテナ性能を向上させることが可能である。
【0049】
なお、本開示は上記実施形態に限定されず、例えば以下のような変形例であっても良い。
(1)上記実施形態では、一対の輻射器3A,3Bをユニポールアンテナとして構成したが、本開示はこれに限定されない。例えば一対の輻射器3A,3Bをバイポールアンテナとして構成してもよい。
【0050】
(2)上記実施形態では、本開示を超小型衛星Sに適用した場合について説明したが、本開示はこれに限定されない。本開示が適用される人工衛星の重量は、超小型衛星Sに限定されず、例えば100kg~1000kgの重量を有する小型衛星、また小型衛星よりも重量が重い人工衛星にも適用可能である。
【0051】
(3)上記実施形態では、一対のヒンジ5A,5Bの回転軸を衛星本体1の後端面に平行な姿勢に設定したが、本開示はこれに限定されない。例えば、一対のヒンジ5A,5Bの回転軸を衛星本体1の後端面に非平行、例えば略直交する姿勢に設定してもよい。
【0052】
(4)上記実施形態では、一対の太陽電池パネル2A,2Bのそれぞれに棒状部材4A,4Bを付加することにより一対の太陽電池パネル2A,2Bを一対の反射器Ra,Rbとしたが、本開示はこれに限定されない。
【0053】
すなわち、上述した超小型衛星Sでは太陽電池パネル2A,2Bが一対設けられるので、各太陽電池パネル2A,2Bに棒状部材4A,4Bを設けたが、例えば1つの太陽電池パネルが設けられる人工衛星については、1つの棒状部材が設けられる。また、一対の太陽電池パネル2A,2Bが設けられる場合に、一対の棒状部材4A,4Bのいずれか一方だけを設けることにより一対の反射器Ra,Rbのいずれか一方だけを設けてもよい。
【0054】
(5)さらに、一対の反射器Ra,Rbと衛星本体1との接続構造は、
図2、
図3に示す構造に限定されず、衛星本体と反射鏡との公知の接続構造を適宜採用しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本開示の人工衛星用アンテナによれば、重量や容積の増大を抑制しつつアンテナ性能を向上させるが可能である。
【符号の説明】
【0056】
S 超小型衛星
1 衛星本体
2A,2B 太陽電池パネル
3A,3B 輻射器
4A,4B 棒状部材
5A,5B ヒンジ
6A,6B 接続バネ
7A,7B 保持部材(保持部)
8A,8B 保持線(保持部)
9A,9B 切断装置(保持部)
Ra,Rb 反射器