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特許7056796燃料電池セパレータ用前駆体シートおよび燃料電池セパレータ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】燃料電池セパレータ用前駆体シートおよび燃料電池セパレータ
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0228 20160101AFI20220412BHJP
   H01M 8/0213 20160101ALI20220412BHJP
   H01M 8/0221 20160101ALI20220412BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20220412BHJP
【FI】
H01M8/0228
H01M8/0213
H01M8/0221
H01M8/10 101
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2021205641
(22)【出願日】2021-12-20
【審査請求日】2021-12-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】309012122
【氏名又は名称】日清紡ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】特許業務法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒木 孝将
(72)【発明者】
【氏名】岩井 美帆
(72)【発明者】
【氏名】大慶 岳洋
(72)【発明者】
【氏名】安田 光介
【審査官】守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-122884(JP,A)
【文献】特開2007-280725(JP,A)
【文献】特開2007-042326(JP,A)
【文献】特開2006-127812(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性の基材シートと、第1の黒鉛粒子を含む緻密層と、第2の黒鉛粒子を含む導電層とを備え、
前記緻密層および前記導電層が樹脂を含み、
前記第1の黒鉛粒子が、30MPaで圧縮したときの嵩密度1.7g/cm3以上かつ体積抵抗率20mΩ・cm以上であり、
前記第2の黒鉛粒子が、30MPaで圧縮したときの嵩密度1.5g/cm3以上かつ体積抵抗率20mΩ・cm未満であることを特徴とする燃料電池セパレータ用前駆体シート。
【請求項2】
前記基材シートの片側表面に前記導電層が積層され、この導電層の表面に前記緻密層が積層されている請求項1記載の燃料電池セパレータ用前駆体シート。
【請求項3】
前記基材シートの両側表面にそれぞれ前記導電層が積層され、これらの導電層の表面のそれぞれに前記緻密層が積層されている請求項2記載の燃料電池セパレータ用前駆体シート。
【請求項4】
前記第1の黒鉛粒子が、平均粒径1~30μmの扁平状黒鉛である請求項1~3のいずれか1項記載の燃料電池セパレータ用前駆体シート。
【請求項5】
前記第1の黒鉛粒子が、30MPaで圧縮したときの嵩密度1.7~1.9g/cm3かつ体積抵抗率20~30mΩ・cmの扁平状黒鉛である請求項4記載の燃料電池セパレータ用前駆体シート。
【請求項6】
前記第2の黒鉛粒子が、平均粒径5~50μmの等方性の形状を有する黒鉛である請求項1~5のいずれか1項記載の燃料電池セパレータ用前駆体シート。
【請求項7】
前記第2の黒鉛粒子が、30MPaで圧縮したときの嵩密度1.5~1.9g/cm3かつ体積抵抗率10mΩ・cm以下の球状黒鉛である請求項6記載の燃料電池セパレータ用前駆体シート。
【請求項8】
前記緻密層の厚みが、5~30μmである請求項1~7のいずれか1項記載の燃料電池セパレータ用前駆体シート。
【請求項9】
前記導電層の厚みが、10~200μmである請求項1~8のいずれか1項記載の燃料電池セパレータ用前駆体シート。
【請求項10】
前記導電層および前記緻密層のいずれか一方または両方の樹脂が、熱硬化性樹脂を含む請求項1~9のいずれか1項記載の燃料電池セパレータ用前駆体シート。
【請求項11】
前記導電層の樹脂が、水性樹脂を含む請求項1~10のいずれか1項記載の燃料電池セパレータ用前駆体シート。
【請求項12】
前記基材シートが、樹脂を含む請求項1~11のいずれか1項記載の燃料電池セパレータ用前駆体シート。
【請求項13】
前記基材シートの樹脂が、熱硬化性樹脂を含む請求項12記載の燃料電池セパレータ用前駆体シート。
【請求項14】
前記熱硬化性樹脂が、燃料電池セパレータ用前駆体シート全体中に10~25質量%含まれる請求項10または13記載の燃料電池セパレータ用前駆体シート。
【請求項15】
前記基材シートが、有機繊維および黒鉛を含む抄造シートである請求項1~14のいずれか1項記載の燃料電池セパレータ用前駆体シート。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項記載の燃料電池セパレータ用前駆体シートを成形してなる燃料電池セパレータ。
【請求項17】
前記緻密層の成形後の緻密層全体の厚みが、総厚の15%以下である請求項16記載の燃料電池セパレータ。
【請求項18】
前記導電層の成形後の1層あたりの厚みが、20~150μmである請求項16または17記載の燃料電池セパレータ。
【請求項19】
請求項16~18のいずれか1項記載の燃料電池セパレータを備える燃料電池。
【請求項20】
導電性の基材シートと、第1の黒鉛粒子を含む緻密層と、第2の黒鉛粒子を含む導電層とを備える燃料電池セパレータ用前駆体シートの製造方法であって、
前記基材シートの少なくとも一方の表面または前記緻密層の表面に、前記第2の黒鉛粒子と樹脂とを含む導電層形成用組成物を塗布して前記導電層を形成する工程と、
前記基材シートの少なくとも一方の表面または前記導電層の表面に、前記第1の黒鉛粒子と樹脂とを含む緻密層形成用組成物を塗布して前記緻密層を形成する工程とを備え、
前記第1の黒鉛粒子が、30MPaで圧縮したときの嵩密度1.7g/cm3以上かつ体積抵抗率20mΩ・cm以上であり、
前記第2の黒鉛粒子が、30MPaで圧縮したときの嵩密度1.5g/cm3以上かつ体積抵抗率20mΩ・cm未満であることを特徴とする燃料電池セパレータ用前駆体シートの製造方法。
【請求項21】
前記基材シートの両表面に、前記導電層形成用組成物を塗布して2層の導電層を形成する工程と、
前記2層の導電層のそれぞれの表面に、前記緻密層形成用組成物を塗布して2層の緻密層を形成する工程とを備える請求項20記載の燃料電池セパレータ用前駆体シートの製造方法。
【請求項22】
請求項20または21記載の燃料電池セパレータ用前駆体シートの製造方法で得られた前駆体シートを圧縮成形する燃料電池セパレータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池セパレータ用前駆体シートおよび燃料電池セパレータに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池セパレータは、各単位セルに導電性を持たせる役割、並びに単位セルに供給される燃料および空気(酸素)の通路を確保するとともに、それらの分離境界壁としての役割を果たすものである。
一般に、燃料電池セパレータに要求される特性として、ガス(水素および酸素)不透過性、導電性、機械的強度、耐久性(耐熱、耐水、耐酸性)、薄肉軽量、賦形性等が挙げられる。
従来の燃料電池セパレータの製法として、カーボン粒子と樹脂を混合し圧縮成形する方法(いわゆるコンパウンド)が知られているが、この製法で得られたセパレータは、導電性、耐久性、賦形性に優れ軽量である一方、ガス不透過性や機械的強度という点で問題がある。
【0003】
これを解決する手段として、金属メッシュを内包する方法、繊維質材料を混合する方法、繊維質材料を含む抄造シートを利用する方法などが考案されている。
例えば、特許文献1では、膨張黒鉛に繊維質充填材を添加した原料を抄造して得られる第1シートの一対の間に、黒鉛に熱硬化性樹脂を塗してなる第2シートを介装して構成した予備成形体をプレス成形して得られた燃料電池セパレータが開示されている。
特許文献2には、膨張黒鉛に繊維質充填材が加えられた原料を抄造して得られる第1シートを、黒鉛に熱硬化性樹脂を塗して得られた第2シートの一対の間に介装して得られた予備積層体をプレス成形して得られた燃料電池セパレータが開示されている。
特許文献3には、マトリックス樹脂、導電性繊維および導電性粉末を含む抄造シートの少なくとも片面に、マトリックス樹脂および導電性粉末を含み、導電性繊維を含まない樹脂層が積層された構造を有する導電性シートを成形して得られる燃料電池セパレータが開示されている。
【0004】
また、特定の形状や物性の黒鉛粒子を利用する方法も考案され、例えば、特許文献4には、黒鉛粉粒体を含み、それぞれ金属不純物含有量が所定範囲に調整された第1の層と第2の層とを有し、第1の層の厚みが、黒鉛粉粒体の平均粒子径の1.5倍以上であり、第1の層に含まれる黒鉛粉粒体が、球状またはアスペクト比が2.0未満の外形を有し、第2の層に含まれる黒鉛粉粒体が、アスペクト比が2.0以上の外形を有する燃料電池用セパレータが開示されている。
特許文献5には、平均粒径25~100μm、かつ、30MPaの圧力下での粉体抵抗が3.0mΩcm以下である粒子群を少なくとも一種含有し、真比重が2.24~2.27の範囲内である黒鉛粒子と樹脂成分とを含有し、黒鉛粒子全体における30MPaの圧力下での粉体抵抗が3.0mΩcm以下であり、黒鉛粒子の固形分割合が70~80質量%である組成物を成形して得られる燃料電池セパレータが開示されている。
特許文献6には、炭素材および樹脂材を含む第1導電層および第2導電層からなり、第2導電層は樹脂材から露出した粒径の異なる2種の炭素粒子を含むことを特徴とする燃料電池用セパレータが開示されている。
【0005】
しかし、特許文献1の燃料電池セパレータでは、表層にガス不透過性と機械的強度を高めるために膨張黒鉛と繊維質充填剤を抄造したシートが用いられているが、繊維質が表面に露出する可能性があり、高度な表面平滑性といった賦形性や導電性の実現は困難である。
特許文献2の燃料電池セパレータでは、賦形性を高めるため黒鉛と熱硬化性樹脂からなる層を表層に用いているが、そのための具体的な要件の記載はなく、この構成のみで高度な賦形性を実現できるとは言えない。
特許文献3の燃料電池セパレータでは、外観を良好にし、表面の接触抵抗を低減すべく、マトリックス樹脂および導電性粉末を含み、導電性繊維を含まない樹脂層が表面となるように成形されているが、この構造のみでは十分なガス不透過性が確保できるとは言えない。
【0006】
特許文献4の燃料電池セパレータでは、アスペクト比の異なる黒鉛で黒鉛層を形成するとともに、アスペクト比の小さい球状黒鉛を最表面とすることで流動性を高め、内層の露出および金属成分の流出を抑制している。しかし、この構成によるガス不透過性については何ら言及されておらず、黒鉛の粒径が50~500μmであることからも十分なガス不透過性を有する緻密層ができるとは考えにくい。
特許文献5の燃料電池セパレータでは、30MPaの圧力下での粉体抵抗が3.0mΩ・cm以下である粒子群を少なくとも一種含有する黒鉛粒子を用いて導電性の向上が図られているが、ガス不透過性については何ら言及されていない。
特許文献6の燃料電池セパレータでは、2層構造により導電性の低下を抑制し、表層に形成した凹凸により排水性を高められるとしているものの、具体的な効果やガス不透過性については何ら言及されていない。
【0007】
さらに、特許文献1~4の技術では、いずれも一旦各層ごとにシート成形したものを積層するため工程が煩雑で生産性が低く、しかも、成形金型形状(凹凸形状)への追従性(賦形性)について十分な検討はなされていない。
【0008】
以上のとおり、上記各特許文献で得られる燃料電池セパレータは、良好な機械的強度を有するものの、ガス不透過性等の点で改良の余地があるうえ、賦形性が低いという点でも問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2007-280725号公報
【文献】特開2007-311061号公報
【文献】特開2007-122884号公報
【文献】特開2008-311176号公報
【文献】特開2014-032906号公報
【文献】特開2021-180150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、賦形性に優れ、機械的強度、導電性およびガス不透過性が良好な燃料電池セパレータを与える燃料電池用前駆体シートおよび燃料電池セパレータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、導電性の基材シートと、所定の嵩密度および体積抵抗率を有する黒鉛粒子および樹脂を含む緻密層と、所定の嵩密度および体積抵抗率を有する黒鉛粒子を含む導電層との少なくとも3層を備える燃料電池セパレータ用前駆体シートが賦形性に優れ、機械的強度、導電性およびガス不透過性が良好な燃料電池セパレータを与えることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明は、
1. 導電性の基材シートと、第1の黒鉛粒子を含む緻密層と、第2の黒鉛粒子を含む導電層とを備え、
前記緻密層および前記導電層が樹脂を含み、
前記第1の黒鉛粒子が、30MPaで圧縮したときの嵩密度1.7g/cm3以上かつ体積抵抗率20mΩ・cm以上であり、
前記第2の黒鉛粒子が、30MPaで圧縮したときの嵩密度1.5g/cm3以上かつ体積抵抗率20mΩ・cm未満であることを特徴とする燃料電池セパレータ用前駆体シート、
2. 前記基材シートの片側表面に前記導電層が積層され、この導電層の表面に前記緻密層が積層されている1の燃料電池セパレータ用前駆体シート、
3. 前記基材シートの両側表面にそれぞれ前記導電層が積層され、これらの導電層の表面のそれぞれに前記緻密層が積層されている2の燃料電池セパレータ用前駆体シート、
4. 前記第1の黒鉛粒子が、平均粒径1~30μmの扁平状黒鉛である1~3のいずれかの燃料電池セパレータ用前駆体シート、
5. 前記第1の黒鉛粒子が、30MPaで圧縮したときの嵩密度1.7~1.9g/cm3かつ体積抵抗率20~30mΩ・cmの扁平状黒鉛である4の燃料電池セパレータ用前駆体シート、
6. 前記第2の黒鉛粒子が、平均粒径5~50μmの等方性の形状を有する黒鉛である1~5のいずれかの燃料電池セパレータ用前駆体シート、
7. 前記第2の黒鉛粒子が、30MPaで圧縮したときの嵩密度1.5~1.9g/cm3かつ体積抵抗率10mΩ・cm以下の球状黒鉛である6の燃料電池セパレータ用前駆体シート、
8. 前記緻密層の厚みが、5~30μmである1~7のいずれかの燃料電池セパレータ用前駆体シート、
9. 前記導電層の厚みが、10~200μmである1~8のいずれかの燃料電池セパレータ用前駆体シート、
10. 前記導電層および前記緻密層のいずれか一方または両方の樹脂が、熱硬化性樹脂を含む1~9のいずれかの燃料電池セパレータ用前駆体シート、
11. 前記導電層の樹脂が、水性樹脂を含む1~10のいずれかの燃料電池セパレータ用前駆体シート、
12. 前記基材シートが、樹脂を含む1~11のいずれかの燃料電池セパレータ用前駆体シート、
13. 前記基材シートの樹脂が、熱硬化性樹脂を含む12の燃料電池セパレータ用前駆体シート、
14. 前記熱硬化性樹脂が、燃料電池セパレータ用前駆体シート全体中に10~25質量%含まれる10または13の燃料電池セパレータ用前駆体シート、
15. 前記基材シートが、有機繊維および黒鉛を含む抄造シートである1~14のいずれかの燃料電池セパレータ用前駆体シート、
16. 1~15のいずれかの燃料電池セパレータ用前駆体シートを成形してなる燃料電池セパレータ、
17. 前記緻密層の成形後の緻密層全体の厚みが、総厚の15%以下である16の燃料電池セパレータ、
18. 前記導電層の成形後の1層あたりの厚みが、20~150μmである16または17の燃料電池セパレータ、
19. 16~18のいずれかの燃料電池セパレータを備える燃料電池、
20. 導電性の基材シートと、第1の黒鉛粒子を含む緻密層と、第2の黒鉛粒子を含む導電層とを備える燃料電池セパレータ用前駆体シートの製造方法であって、
前記基材シートの少なくとも一方の表面または前記緻密層の表面に、前記第2の黒鉛粒子と樹脂とを含む導電層形成用組成物を塗布して前記導電層を形成する工程と、
前記基材シートの少なくとも一方の表面または前記導電層の表面に、前記第1の黒鉛粒子と樹脂とを含む緻密層形成用組成物を塗布して前記緻密層を形成する工程とを備え、
前記第1の黒鉛粒子が、30MPaで圧縮したときの嵩密度1.7g/cm3以上かつ体積抵抗率20mΩ・cm以上であり、
前記第2の黒鉛粒子が、30MPaで圧縮したときの嵩密度1.5g/cm3以上かつ体積抵抗率20mΩ・cm未満であることを特徴とする燃料電池セパレータ用前駆体シートの製造方法、
21. 前記基材シートの両表面に、前記導電層形成用組成物を塗布して2層の導電層を形成する工程と、
前記2層の導電層のそれぞれの表面に、前記緻密層形成用組成物を塗布して2層の緻密層を形成する工程とを備える20の燃料電池セパレータ用前駆体シートの製造方法、
22. 20または21の燃料電池セパレータ用前駆体シートの製造方法で得られた前駆体シートを圧縮成形する燃料電池セパレータの製造方法
を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の燃料電池セパレータ用前駆体シートは、導電性の基材シートを備えているため機械的強度と導電性を向上でき、流動性が高い黒鉛からなる導電層を備えているため賦形性と導電性を向上でき、緻密層を備えているためガス不透過性と表面平滑性を向上でき、さらに基材シートの露出を防止できる。
また、導電性の基材シート上に導電層、緻密層を塗布法により形成可能であるため、ロールトゥロールで前駆体シートを作製でき、生産性が高い。
さらに、導電性の基材シート、導電層、緻密層を形成することで、機械的強度、導電性、ガス不透過性、賦形性等の高度な特性を有するセパレータを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
本発明に係る燃料電池セパレータ用前駆体シートは、導電性の基材シートと、第1の黒鉛粒子を含む緻密層と、第2の黒鉛粒子を含む導電層とを備え、緻密層および導電層が樹脂を含み、第1の黒鉛粒子が、30MPaで圧縮したときの嵩密度1.7g/cm3以上かつ体積抵抗率20mΩ・cm以上であり、第2の黒鉛粒子が、30MPaで圧縮したときの嵩密度1.5g/cm3以上かつ体積抵抗率20mΩ・cm未満であることを特徴とする。
【0015】
[1]緻密層
本発明の燃料電池セパレータ用前駆体シート(以下、「前駆体シート」と略記する。)を構成する緻密層は、第1の黒鉛粒子と樹脂とを含み、主としてガス不透過層として機能するものである。
本発明の前駆体シートでは、第1の黒鉛粒子として、30MPaで圧縮したときの嵩密度が1.7g/cm3以上、好ましくは1.7~1.9g/cm3かつ体積抵抗率20mΩ・cm以上、好ましくは20~30mΩ・cm、より好ましくは22~28mΩ・cmのものを用いる。この範囲内の黒鉛粒子は、適度な異方性、充填性、流動性を有することから、これを含む緻密層を備える燃料電池セパレータに、ガス不透過性、導電性、表面平滑性(接触抵抗の低減)等の特性を付与できる。
【0016】
第1の黒鉛粒子の形状に特に制限はないが、緻密層の形成には一定以上の異方性を有する粒子が好適であることから、球状ではなく、扁平状の黒鉛粒子が好ましい。扁平状の黒鉛粒子は、炭素六角網面が現れるベーサル面と、炭素六角網面の端部が現れるエッジ面と、を有するものである。この扁平形状の黒鉛粒子としては、鱗片状黒鉛、鱗状黒鉛、土状黒鉛、薄片状黒鉛、キッシュグラファイト、熱分解黒鉛、高配向熱分解黒鉛等が挙げられる。これら扁平状の黒鉛粒子の中でも異方性や表面平滑性に優れる薄片状黒鉛やキッシュグラファイトが好ましく、薄片状黒鉛がより好ましい。
また、第1の黒鉛粒子の平均粒径に特に制限はないが、緻密層の形成には小粒径の粒子が好適であることから、1~30μmが好ましく、1~15μmがより好ましい。なお、本発明において平均粒径とは、レーザー回折法による粒度分布測定におけるメジアン径(d50)である(以下、同様)。
なお、第1の黒鉛粒子は、上記特性を満たす限り、天然黒鉛でも人造黒鉛でもよい。
【0017】
緻密層が含む樹脂は、熱可塑性樹脂でも熱硬化性樹脂でもよいが、熱硬化性樹脂を含むことが好ましく、熱硬化性樹脂のみであることがより好ましい。
熱可塑性樹脂は、特に限定されるものではないが、耐熱性の点から、融点またはガラス転移点が100℃以上の樹脂が好ましい。
その具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリアミド、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン、ポリエーテルケトン、液晶ポリマー、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリフェニルサルフォン、ポリエーテルイミドおよびポリスルフォン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ABS樹脂、ポリシクロオレフィンおよびポリエーテルスルホン、並びにこれらの誘導体のうち融点が100℃以上であるものや、ポリカーボネート、ポリスチレンおよびポリフェニレンオキシド、並びにこれらの誘導体のうちガラス転移点が100℃以上であるもの等が挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。なお、融点またはガラス転移点の上限は特に限定されないが、前駆体シートおよび燃料電池セパレータの生産性の点から、300℃以下が好ましい。
【0018】
熱硬化性樹脂は、特に限定されるものではなく、従来、カーボンセパレータ等のバインダ樹脂として汎用されているものから適宜選択することができる。
その具体例としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フラン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ビスマレイミド樹脂、ポリカルボジイミド樹脂、シリコーン樹脂、ビニルエステル樹脂、ベンゾオキサジン樹脂等が挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、耐熱性および機械的強度に優れていることから、エポキシ樹脂が好ましい。
【0019】
第1の黒鉛粒子と樹脂との含有比率は、特に限定されるものではないが、得られる燃料電池セパレータにガス不透過性、導電性、表面平滑性(接触抵抗の低減)等の特性を付与するという点から、第1の黒鉛粒子100質量部に対し、樹脂5~50質量部が好ましく、10~35質量部がより好ましいが、熱硬化性樹脂の場合、熱硬化性樹脂が前駆体シート全体中に10~25質量%含まれることが好適である。
【0020】
緻密層は、得られる燃料電池セパレータの抵抗を小さくするために、さらに導電助剤を含んでいてもよい。
導電助剤としては、カーボンブラック、グラフェン、炭素繊維、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、各種金属繊維、無機繊維や有機繊維に金属を蒸着あるいはメッキさせた繊維等が挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上併用してもよい。これらの中でも、カーボンブラック、グラフェン等の粒径の微小な炭素材料が表面平滑性を保つ観点から好ましい。
【0021】
カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック等が挙げられるが、ファーネスブラックがコストの観点から好ましい。
炭素繊維としては、ポリアクリロニトリル(PAN)繊維を原料とするPAN系炭素繊維、石油ピッチ等のピッチを原料とするピッチ系炭素繊維、フェノール樹脂を原料とするフェノール系炭素繊維等が挙げられるが、PAN系炭素繊維がコストの観点から好ましい。
繊維状の導電助剤の平均繊維長は、成形性と導電性を両立する観点から、0.1~10mmが好ましく、0.1~7mmがより好ましく、0.1~5mmがより一層好ましい。また、その平均繊維径は、成形性の観点から、3~50μmが好ましく、3~30μmがより好ましく、3~15μmがより一層好ましい。
導電助剤の含有量は、緻密層中、0.1~10質量%が好ましく、0.5~7質量%がより好ましい。
【0022】
緻密層は、前述した成分以外に、燃料電池セパレータに通常使用されるその他の成分を含んでもよい。
その他の成分としては、ステアリン酸系ワックス、アマイド系ワックス、モンタン酸系ワックス、カルナバワックス、ポリエチレンワックス等の内部離型剤;アニオン系、カチオン系、またはノニオン系の界面活性剤;強酸、強電解質、塩基、ポリアクリルアミド系、ポリアクリル酸ソーダ系、ポリメタクリル酸エステル系等の界面活性剤に合わせた公知の凝集剤;カルボキシメチルセルロース、デンプン、酢酸ビニル、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリエチレンオキシド等の増粘剤等が挙げられる。
【0023】
緻密層は、下地層(基材シートまたは導電層)上に、第1の黒鉛粒子、樹脂、並びに必要に応じて用いられる導電助剤等のその他の添加物および溶媒を含む緻密層形成用組成物を塗布して形成することができる。また、下地層上に第1の黒鉛粒子および溶媒を含む組成物を塗布して形成した層に、樹脂を含浸させて緻密層を形成することもできる。
溶媒としては、塗工可能な組成物を調製できる限り特に限定されるものではないが、水;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;トルエン、p-キシレン、o-キシレン、m-キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルn-ブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸n-プロピル、酢酸イソブチル、酢酸n-ブチル等のエステル系溶媒、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、t-ブタノール、1-ペンタノール、1-ヘキサノール、シクロヘキサノール等の脂肪族アルコール系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチルピロリドン等のアミド系溶媒;1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-2(1H)-ピリミジノン等の環状ウレア系溶媒、ジメチルスルホキシドなどが挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上混合して用いてもよい。
【0024】
塗布法としては、特に限定されるものではなく、スピンコート法、ディップ法、フローコート法、インクジェット法、ジェットディスペンサー法、スプレー法、バーコート法、グラビアコート法、ロールコート法、転写印刷法、刷毛塗り、ブレードコート法、エアーナイフコート法、ダイコート法等の公知の方法から適宜選択すればよい。
溶媒を用いる場合、その除去の温度は、使用溶媒によって変動するため一概には規定できず、また、熱可塑性樹脂の融点等や、熱硬化性樹脂の硬化開始温度より低温であることが要求されるが、一般に室温~150℃程度とすることができ、50~130℃程度がより好ましい。
【0025】
前駆体シートを構成する緻密層の厚みは、特に限定されるものではないが、ガス不透過性および平滑性と、導電性とのバランスを考慮すると、1層あたり5~30μmが好ましく、5~20μmがより好ましい。
【0026】
[2]導電層
本発明の前駆体シートを構成する導電層は、第2の黒鉛粒子と樹脂とを含み、主として前駆体シートに賦形性(金型形状追従性)を付与するとともに、燃料電池セパレータに導電性を付与するものである。
本発明の前駆体シートでは、第2の黒鉛粒子として、30MPaで圧縮したときの嵩密度1.5g/cm3以上、好ましくは1.5~1.9g/cm3、より好ましくは1.6~1.9g/cm3かつ体積抵抗率20mΩ・cm未満、好ましくは10mΩ・cm以下、より好ましくは9mΩ・cm以下のものを用いる。この範囲内の黒鉛粒子は、高度な等方性、流動性、導電性を有することから、前駆体シートに賦形性を付与でき、また、燃料電池セパレータに良好な導電性等の特性を付与できる。
一方で高度な流動性を付与し、導電層内の均一性を高める観点から体積抵抗率は3.5mΩ・cm以上が好ましく、5mΩ・cm以上がより好ましい。この範囲内の黒鉛粒子は、適度な粒子径と粒度分布を有することから前駆体シートの賦形性と導電性をより高めることができる。
【0027】
第2の黒鉛粒子の形状に特に制限はないが、導電層の形成には流動性を有する粒子が好適であることから、等方性の形状を有する黒鉛粒子が好ましく、球状の黒鉛粒子がより好ましい。
また、第2の黒鉛粒子の平均粒径に特に制限はないが、5~50μmが好ましく、5~30μmがより好ましく、緻密層を構成する黒鉛粒子よりも大きな平均粒径であることが好適である。
なお、第2の黒鉛粒子は、上記特性を満たす限り、天然黒鉛でも人造黒鉛でもよい。
【0028】
導電層が含む樹脂は、熱可塑性樹脂でも熱硬化性樹脂でもよいが、熱硬化性樹脂を含むことが好ましい。熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂の具体例としては、上記緻密層で例示した樹脂と同様のものが挙げられる。
【0029】
導電層は、下地層(基材シートまたは緻密層)上に、第2の黒鉛粒子、樹脂、並びに必要に応じて用いられる導電助剤等のその他の添加物および溶媒を含む導電層形成用組成物を塗布して形成することができる。また、下地層上に第2の黒鉛粒子および溶媒を含む組成物を塗布して形成した層に、樹脂を含浸させて導電層を形成することもできる。
導電層形成時にも、上記緻密層で説明した溶媒、塗布法、溶媒の除去温度を採用することができる。
【0030】
導電層形成用組成物は、塗布する際に所定の厚みと均一性を得る観点から、増粘性と接着性を有するバインダ樹脂を含むことが好ましい。バインダ樹脂としては少量で増粘性と接着性が得られ、かつ溶媒除去も容易であることから水性樹脂がより好ましい。
水性樹脂としては特に制限はなく、その具体例としては、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリビニル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアリルアミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、カルボキシメチルセルロース等の多糖類等の水性樹脂や、乳化重合などで得られた水性エマルション、ディスパージョン等が挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上併用してもよい。これらの中でも、特に少量で十分な接着性が得られるアクリル樹脂、ポリビニル樹脂、ポリエーテル樹脂、カルボキシメチルセルロース等の多糖類が好ましい。バインダ樹脂の含有量は特に制限はないが、導電層中、0.1~10質量%が好ましく、0.5~7質量%がより好ましい。0.1質量%未満では増粘性と接着性が不足する虞があり、10質量%以上では導電性が低下する虞がある。
【0031】
第2の黒鉛粒子と樹脂との含有比率は、特に限定されるものではないが、上述した前駆体シートの賦形性や、燃料電池セパレータの導電性等を考慮すると、第2の黒鉛粒子100質量部に対し、樹脂5~50質量部が好ましく、10~35質量部がより好ましい。熱硬化性樹脂の場合、熱硬化性樹脂が前駆体シート全体中に10~25質量%含まれることが好適である。
【0032】
導電層は、得られる燃料電池セパレータの抵抗を小さくするために、さらに導電助剤を含んでいてもよい。導電助剤の具体例としては、上記緻密層で例示したものと同様のものが挙げられる。
導電助剤の含有量は、導電層中、0.1~10質量%が好ましく、0.5~7質量%がより好ましい。
また、導電層は、上記緻密層で例示したその他の成分を含んでいてもよい。
【0033】
前駆体シートを構成する導電層の厚みは、特に限定されるものではないが、賦形性と導電性とのバランスを考慮すると、1層あたり10~200μmが好ましく、30~150μmがより好ましい。
【0034】
[3]基材シート
本発明の前駆体シートを構成する導電性の基材シートに特に制限はなく、導電性フィラーおよび有機繊維を含む抄造シート、炭素繊維シート、炭素繊維強化炭素複合材料シート、金属箔、金属メッシュ等の燃料電池セパレータ用前駆体シートとして従来用いられているものから適宜選択すればよいが、導電性フィラーおよび有機繊維を含む抄造シートが好ましい。
【0035】
基材シートを構成する導電性フィラーは特に限定されず、燃料電池セパレータ用として従来公知のものを使用することができる。
その具体例としては、炭素材料、金属粉末、無機粉末や有機粉末に金属を蒸着あるいはメッキした粉末等が挙げられるが、炭素材料が好ましい。
炭素材料としては、天然黒鉛、針状コークスを焼成した人造黒鉛、塊状コークスを焼成した人造黒鉛、天然黒鉛を化学処理して得られる膨張黒鉛等の黒鉛、炭素電極を粉砕したもの、石炭系ピッチ、石油系ピッチ、コークス、活性炭、ガラス状カーボン、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等が挙げられるが、これらの中でも、導電性の観点から、黒鉛が好ましい。
なお、導電性フィラーは、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0036】
導電性フィラーの形状に制限はなく、球状、鱗片状、塊状、箔状、板状、針状、無定形のいずれでもよいが、セパレータのガス不透過性の観点から、鱗片状が好ましい。
導電性フィラーの平均粒径は、5~200μmが好ましく、10~80μmがより好ましい。導電性フィラーの平均粒径がこの範囲であれば、ガス不透過性を確保しながら必要な導電性を得ることができる。
【0037】
導電性フィラーの含有量は、基材シート中、50~96質量%が好ましく、60~90質量%がより好ましい。導電性フィラーの含有量がこの範囲であれば、賦形性を損なわない範囲で、必要な導電性を得ることができる。
【0038】
一方、有機繊維は、その融点が燃料電池セパレータ製造時の加熱温度よりも高いものが好ましい。このような有機繊維(以下、第1の有機繊維ともいう。)を用いることで、前駆体シートおよびこれから得られる燃料電池セパレータの機械的強度を向上させることができる。
第1の有機繊維の材質としては、ポリp-フェニレンテレフタルアミド(分解温度500℃)、ポリm-フェニレンイソフタルアミド(分解温度500℃)等のアラミド、ポリアクリロニトリル(融点300℃)、セルロース(融点260℃)、アセテート(融点260℃)、ナイロンポリエステル(融点260℃)ポリフェニレンサルファイド(PPS)(融点280℃)、ポリエーテルエーテルケトン(融点340℃)、ポリフェニルサルフォン(融点なし)、ポリアミドイミド(融点300℃)、ポリエーテルイミド(融点210℃)およびこれらの材質を主材料としたコポリマー等が挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上併用してもよい。これらは、前駆体シートの賦形性、セパレータの機械的強度、導電性、耐久性を考慮し適宜選択することができる。
【0039】
また、有機繊維は、燃料電池セパレータ製造時の加熱温度よりも融点が低い第2の有機繊維を含んでいてもよい。
第2の有機繊維としては、緻密層および導電層に含まれる樹脂と親和性を有するものが好ましい。第2の有機繊維の材質としては、ポリエチレン(PE)(融点120~140℃(HDPE)、95~130℃(LDPE))、ポリプロピレン(PP)(融点160℃)、ポリフェニレンサルファイド等が好ましく、これらは単独で用いても、2種以上併用してもよい。
【0040】
第2の有機繊維を含む場合、第1の有機繊維の融点は、耐衝撃性付与のため、繊維形態で確実に保持させる観点から、上述した加熱温度よりも10℃以上高いことが好ましく、20℃以上高いことがより好ましく、30℃以上高いことがより一層好ましい。
一方、第2の有機繊維の融点は成形性の観点から、加熱温度よりも10℃以上低いことが好ましく、20℃以上低いことがより好ましく、30℃以上低いことがより一層好ましい。
なお、第1の有機繊維と第2の有機繊維の融点の温度差は、40℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましい。
【0041】
第2の有機繊維を含む場合、第1の有機繊維としては、アラミド、ポリアクリロニトリル、セルロース、アセテート、ナイロンポリエステルが好ましく、第2の有機繊維としては、PE、PP、PPSが好ましい。ただし、第2の有機繊維としてPEまたはPPを用いる場合は、アラミド、ポリアクリロニトリル、セルロース、アセテート、ナイロンポリエステルのほか、PPSを第1の有機繊維として用いることもできる。
【0042】
有機繊維の平均繊維長は、抄造時の坪量の安定化と得られる抄造シートの機械的強度確保の観点から、0.1~10mmが好ましく、0.1~6mmがより好ましく、0.5~6mmがより一層好ましい。
また、第1の有機繊維および第2の有機繊維の平均繊維径は、成形性の観点から、0.1~100μmが好ましく、0.1~50μmがより好ましく、1~50μmがより一層好ましい。
なお、本発明において平均繊維長および平均繊維径は、光学顕微鏡または電子顕微鏡を用いて、任意の100本の繊維について測定した繊維長および繊維径の算術平均値である。
【0043】
有機繊維の含有量は、基材シート中、1~20質量%が好ましく、3~15質量%がより好ましい。
また、第2の有機繊維を含む場合、その含有量は、有機繊維中、10~80質量%が好ましく、50~80質量%がより好ましい。
【0044】
抄造シートは、これから得られる燃料電池セパレータの抵抗を小さくするために、さらに導電助剤を含んでいてもよい。導電助剤の具体例としては、上記緻密層で例示したものと同様のものが挙げられるが、炭素繊維が好ましく、PAN系炭素繊維がより好ましい。
導電助剤の含有量は、抄造シート中、1~20質量%が好ましく、2~10質量%がより好ましい。
また、抄造シートは、上記緻密層で例示したその他の成分を含んでいてもよい。
【0045】
抄造シートは、前述した各成分を含む組成物を抄造して得ることができる。
抄造方法は、特に限定されず、従来公知の方法でよい。例えば、前述した各成分を含む組成物をこれらの成分を溶解しない、水等の溶媒中に分散させ、得られた分散液中の各成分を基材上に堆積させ、得られた堆積物を乾燥させることで、抄造シートを製造することができる。
抄造シートの坪量は150~300g/m2が好ましい。
【0046】
本発明で用いる基材シートの厚みは、特に限定されるものではないが、燃料電池セパレータの機械的強度等を考慮すると、10μm~1.0mmが好ましい。
【0047】
また、基材シートが、抄造シート等の多孔シートの場合、樹脂を含んでいてもよい。
基材シートが含む樹脂は、熱可塑性樹脂でも熱硬化性樹脂でもよいが、熱硬化性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂の具体例としては、上記緻密層で例示した樹脂と同様のものが挙げられるが、熱硬化性樹脂の場合、熱硬化性樹脂が前駆体シート全体中に10~25質量%含まれることが好適である。
基材シートに樹脂を含有させる手法としては、樹脂フィルムを加熱して溶融させて含浸させる方法や、液状の樹脂に基材シートを浸漬し、含浸させる方法などが挙げられる。
なお、緻密層、導電層および基材シートのすべてを積層した後に、樹脂を含浸させることもでき、緻密層および導電層を形成するための組成物中に樹脂を含ませておき、当該組成物を塗布する際に、その下層に樹脂を含浸させることもできる。例えば、緻密層を最表面に形成する場合、基材シートおよび導電層の積層体を作製した後、樹脂を含む緻密層形成用組成物を当該積層体に塗布し、積層体全体に樹脂を含浸させることができる。
【0048】
[4]前駆体シート
本発明の前駆体シートにおいて、基材シート、導電層、緻密層の積層順序に特に制限はなく、任意の順序とすることができ、また、導電層および緻密層それぞれの層数にも特に制限はなく、任意の層数とすることができるが、上述した緻密層および導電層の機能を効果的に発揮させることを考慮すると、最表面が緻密層で構成されていることが好ましい。
すなわち、基材シートの片側表面に導電層が積層され、この導電層の表面に緻密層が積層されている3層構成が好適な態様の1つである。
【0049】
さらに、前駆体シートの賦形性をより高め、得られる燃料電池セパレータの導電性をより高めることを考慮すると、基材シートの両側表面に導電層が形成されていることが好ましい。
すなわち、基材シートの両側表面にそれぞれ導電層が積層され、これらの導電層の表面のそれぞれに緻密層が積層されている5層構成が好適な態様の他の1つである。
【0050】
[5]燃料電池セパレータ
本発明の前駆体シートを、加熱して成形することで、燃料電池セパレータを製造することができる。
成形方法としては、特に限定されないが、圧縮成形が好ましい。
圧縮成形の条件は、特に限定されないが、型温度150~190℃が好ましい。なお、基材シートとして、抄造シートを用いた場合は、金型温度が有機繊維(第1の有機繊維)の融点よりも10℃以上低いことが好ましく、20℃以上低いことがより好ましい。
また、成形圧力は1~100MPaが好ましく、1~60MPaがより好ましい。
圧縮成形時間は、特に限定されるものではなく、3秒から1時間程度で適宜設定することができる。
【0051】
圧縮成形後の緻密層の厚みは、特に制限はないが、1層あたり0.5~20μmが好ましく、また、緻密層全体でセパレータ総厚の15%以下が好ましい。
圧縮成形後の導電層の厚みは、1層あたり20~150μmが好ましい。
【0052】
一般的に固体高分子型燃料電池は、固体高分子膜を挟む一対の電極と、これらの電極を挟んでガス供給排出用流路を形成する一対のセパレータとから構成される単位セルが多数併設されてなるものであるが、これら複数個のセパレータの一部または全部として本発明の燃料電池セパレータを用いることができる。
【実施例
【0053】
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。なお、実施例における各物性は以下の方法によって測定した。
(1)黒鉛粒子の圧縮密度および体積抵抗率
直径12mmの円筒に黒鉛粉0.2gを入れ軽くタッピングし、表面を均し、次いで円筒の両端に設置した同径の円柱型金メッキ銅電極で30N/secの一定速度で徐々に圧縮し、3395N(30MPa)到達時点の電極間抵抗と充填高さを測定した。圧縮にはオートグラフ((株)島津製作所製、AG-X 10kN)を用いた。電極間抵抗は金メッキ銅電極間に1A/cm2の定電流を通電した際の電極間電圧から換算し、これを体積抵抗率(単位:mΩ・cm)とした。また、黒鉛粉重量と充填高さから圧縮密度(単位:g/cm3)を算出した。
(2)燃料電池セパレータのガス不透過性
平板のセパレータを成形し、JIS K7126-1:2006(プラスチック及びシート―ガス透過度試験方法-第1部:差圧法)に準拠し、水素ガス透過係数(単位:cm3・cm/(cm2・sec・cmHg))を測定した。なお、試験の種類はガスクロマトグラフ法であり、条件は23℃、高圧側の試験ガス(水素ガス)は150.3kPaで測定した。
(3)燃料電池セパレータの導電性
平板のセパレータを成形し、1辺が2cmの金メッキ銅電極で挟みこみ、2.5MPaで10秒間加圧後、1.0MPaまで降圧し、金メッキ銅電極間に1A/cm2の定電流を通電した際の電極間電圧を測定した。得られた電極間電圧を抵抗に換算してこれをセパレータの貫通抵抗(単位:mΩ・cm2)とし、導電性を評価した。
(4)燃料電池セパレータの賦形性
波型、凸型の形状を有する金型を用いてセパレータを成形し、断面のSEM画像を撮影した。画像から寸法および内部空隙率を測定し、金型形状との一致性および空隙の有無を確認した。
(5)燃料電池セパレータの機械的強度
平板のセパレータを成形し、25℃環境下でJIS K 7171に準拠した3点曲げ試験により測定した。
【0054】
[1]基材シートの作製
[製造例1]
黒鉛87質量部、PAN系炭素繊維3質量部、およびセルロース繊維10質量部を水中に入れて撹拌し、繊維質スラリーを得た。このスラリーを抄造し、カーボン担持抄造シートを作製した。得られた抄造シートの坪量は190g/m2であった。
【0055】
[2]前駆体シートの作製
[実施例1-1]
以下、密度および体積抵抗率は、黒鉛粉体を30MPaで圧縮したときの値を表す。
密度1.69g/cm3かつ体積抵抗率5.8mΩ・cmである平均粒径15μmの球状黒鉛95質量部、バインダ樹脂として水性樹脂であるポリアクリル酸(分子量100万)5質量部、および溶媒である水を混合し、固形分濃度45質量%の導電層形成用スラリーを調製した。このスラリーを、製造例1で得られた基材シートの両表面に塗布し、基材シートの両側表面のそれぞれに導電層を形成した。得られた導電層1層あたりの厚みは110μmであった。
次いで、密度1.75g/cm3かつ体積抵抗率24.5mΩ・cmである平均粒径5μmの薄片状黒鉛15質量部、エポキシ樹脂85質量部、およびアセトンを混合し、固形分濃度50質量%の緻密層形成用スラリーを調製した。このスラリーを、先に形成した2つの導電層のそれぞれの表面に塗布し、緻密層を形成すると共に導電層にエポキシ樹脂を含浸させ、緻密層/導電層/基材シート/導電層/緻密層の5層構成の前駆体シートを得た。この前駆体シート全体中に含まれる熱硬化性樹脂は20質量%であった。得られた緻密層1層あたりの厚みは10μmであった。
【0056】
[実施例1-2]
導電層に含まれる黒鉛として密度1.82g/cm3かつ体積抵抗率7.6mΩ・cmである平均粒径10μmの球状黒鉛を用いた以外は、実施例1-1と同様にして5層構成の前駆体シートを得た。
【0057】
[実施例1-3]
緻密層に含まれる黒鉛として密度1.72g/cm3かつ体積抵抗率26.1mΩ・cmである平均粒径4μmの薄片状黒鉛を用いた以外は、実施例1-1と同様にして5層構成の前駆体シートを得た。
【0058】
[実施例1-4]
緻密層に含まれる黒鉛として密度1.88g/cm3かつ体積抵抗率27.6mΩ・cmである平均粒径13μmの薄片状黒鉛を用いた以外は、実施例1-1と同様にして5層構成の前駆体シートを得た。
【0059】
[実施例1-5]
導電層に含まれる黒鉛として密度1.63g/cm3かつ体積抵抗率8.2mΩ・cmである平均粒径10μmの球状黒鉛を用いた以外は、実施例1-1と同様にして5層構成の前駆体シートを得た。
【0060】
[実施例1-6]
導電層に含まれる黒鉛として密度1.88g/cm3かつ体積抵抗率5.2mΩ・cmである平均粒径13μmの球状黒鉛を用いた以外は、実施例1-1と同様にして5層構成の前駆体シートを得た。
【0061】
[実施例1-7]
導電層に含まれる黒鉛として密度1.62g/cm3かつ体積抵抗率17mΩ・cmである平均粒径5μmの球状黒鉛を用いた以外は、実施例1-1と同様にして5層構成の前駆体シートを得た。
【0062】
[実施例1-8]
導電層に含まれる黒鉛として密度1.58g/cm3かつ体積抵抗率8mΩ・cmである平均粒径10μmの球状黒鉛を用いた以外は、実施例1-1と同様にして5層構成の前駆体シートを得た。
【0063】
[実施例1-9]
導電層に含まれる黒鉛として密度1.87g/cm3かつ体積抵抗率17mΩ・cmである平均粒径25μmの球状黒鉛を用いた以外は、実施例1-1と同様にして5層構成の前駆体シートを得た。
【0064】
[実施例1-10]
導電層に含まれる黒鉛として密度1.93g/cm3かつ体積抵抗率14.5mΩ・cmである平均粒径40μmの球状黒鉛を用いた以外は、実施例1-1と同様にして5層構成の前駆体シートを得た。
【0065】
[実施例1-11]
導電層に含まれる黒鉛として密度1.71g/cm3かつ体積抵抗率12.4mΩ・cmである平均粒径15μmの球状黒鉛を用いた以外は、実施例1-1と同様にして5層構成の前駆体シートを得た。
【0066】
[実施例1-12]
導電層に含まれる黒鉛として密度1.8g/cm3かつ体積抵抗率3.8mΩ・cmである平均粒径35μmの球状黒鉛を用いた以外は、実施例1-1と同様にして5層構成の前駆体シートを得た。
【0067】
[実施例1-13]
緻密層に含まれる黒鉛として密度1.92g/cm3かつ体積抵抗率26mΩ・cmである平均粒径20μmの扁平状黒鉛を用いた以外は、実施例1-1と同様にして5層構成の前駆体シートを得た。
【0068】
[実施例1-14]
導電層に含まれる黒鉛として密度1.69g/cm3かつ体積抵抗率5.8mΩ・cmである平均粒径15μmの球状黒鉛92質量部、バインダ樹脂としてポリフッ化ビニリデン8質量部と、溶媒としてN-メチルピロリドン(NMP)を用いた以外は、実施例1-1と同様にして5層構成の前駆体シートを得た。
【0069】
[比較例1-1]
導電層および緻密層を形成することなく、製造例1で得られた抄造シートにエポキシ樹脂を含浸させて前駆体シートを得た。この前駆体シート全体中に含まれる熱硬化性樹脂は20質量%であった。
【0070】
[比較例1-2]
製造例1で得られた抄造シートの両表面に、実施例1-1で用いた緻密層形成用スラリーを塗布して2つの緻密層を形成し、緻密層/基材シート/緻密層の3層構成の前駆体シートを得た。この前駆体シート全体中に含まれる熱硬化性樹脂は20質量%であった。
【0071】
[比較例1-3]
緻密層を形成しなかった以外は、実施例1-1と同様にして、導電層/基材シート/導電層の3層構成を形成した後、比較例1-1と同様にエポキシ樹脂を含浸して前駆体シートを得た。この前駆体シート全体中に含まれる熱硬化性樹脂は20質量%であった。
【0072】
[比較例1-4]
緻密層に含まれる黒鉛として密度1.62g/cm3かつ体積抵抗率17mΩ・cmである平均粒径5μmの球状黒鉛を用いた以外は、実施例1-1と同様にして5層構成の前駆体シートを得た。
【0073】
[比較例1-5]
緻密層に含まれる黒鉛として密度1.76g/cm3かつ体積抵抗率8.5mΩ・cmである平均粒径8μmの球状黒鉛を用いた以外は、実施例1-1と同様にして5層構成の前駆体シートを得た。
【0074】
[比較例1-6]
導電層に含まれる黒鉛として密度1.75g/cm3かつ体積抵抗率24.5mΩ・cmである平均粒径5μmの薄片状黒鉛を用いた以外は、実施例1-1と同様にして5層構成の前駆体シートを得た。
【0075】
[比較例1-7]
緻密層に含まれる黒鉛として密度1.62/cm3かつ体積抵抗率26.7mΩ・cmである平均粒径2μmの薄片状黒鉛を用いた以外は、実施例1-1と同様にして5層構成の前駆体シートを得た。
【0076】
[比較例1-8]
密度1.69g/cm3かつ体積抵抗率5.8mΩ・cmである平均粒径15μmの球状黒鉛80質量部、エポキシ樹脂20質量部、および溶媒であるアセトンを混合した後、真空乾燥および粉砕し黒鉛とエポキシ樹脂の混合粉体を得た。この混合粉体を板状に加圧成形し、前駆体シートを得た。
【0077】
上記各実施例および比較例のまとめを表1に示す。
【0078】
【表1】
【0079】
[3]燃料電池セパレータの作製
[実施例2-1]
実施例1-1で得られた前駆体シートを、平面形状の金型と、波型および凸型の形状を有する金型を用いて180℃、60MPaで1分間圧縮成形して燃料電池セパレータを得た。平面形状で成形したセパレータの厚みは250μmであった。このうち、緻密層厚みは1層あたり5μm、導電層厚みは1層あたり70μmであった。
【0080】
[実施例2-2~2-14]
実施例1-2~1-14で作製した前駆体シートに変更した以外は、実施例2-1と同様にして燃料電池セパレータを得た。
【0081】
[比較例2-1]
比較例1-1で得られた前駆体シートを2枚重ね、波型および凸型の形状を有する金型を用いて180℃、60MPaで1分間圧縮成形して燃料電池セパレータを得た。
【0082】
[比較例2-2~2-8]
比較例1-2~1-8で作製した前駆体シートに変更した以外は、実施例2-1と同様にして燃料電池セパレータを得た。
【0083】
得られた燃料電池セパレータについて、上記の手法にてガス不透過性、導電性、賦形性および機械的強度を測定し、下記基準により評価した。結果を表2に示す。
〔ガス不透過性〕
○:水素ガス透過係数が5.0×10-9cm3・cm/(cm2・sec・cmHg)未満
×:それ以上の場合
〔導電性〕
◎:貫通抵抗が10mΩ・cm2未満
○:貫通抵抗が10mΩ・cm2以上13mΩ・cm2未満
△:貫通抵抗が13mΩ・cm2以上15mΩ・cm2未満
×:貫通抵抗が15mΩ・cm2以上の場合
〔賦形性〕
○:任意の3点で金型形状との寸法誤差5%以下かつ内部空隙率1%未満
△:任意の3点で金型形状との寸法誤差5%以下かつ内部空隙率1%以上3%以下
×:それ以上の場合
〔機械的強度〕
○:3点曲げ試験における曲げ応力が60MPa以上
△:3点曲げ試験における曲げ応力が50MPa以上60MPa未満
×:それ以下の場合
【0084】
【表2】
【0085】
表2に示されるように、実施例2-1~2-14で得られた燃料電池セパレータは、ガス不透過性および導電性に優れ、賦形性も良好であるのに対し、緻密層および/または導電層がない比較例2-1~2-3で得られた燃料電池セパレータ、並びに黒鉛の特性が本発明の範囲外である比較例2-4~2-7で得られた燃料電池セパレータ、並びに導電層のみからなる比較例2―8で得られた燃料電池用セパレータは、上記いずれかのセパレータ特性または全ての特性に劣ることがわかる。
【要約】
【課題】 賦形性に優れ、機械的強度、導電性およびガス不透過性が良好な燃料電池セパレータを与える燃料電池用前駆体シートを提供すること。
【解決手段】 導電性の基材シートと、第1の黒鉛粒子を含む緻密層と、第2の黒鉛粒子を含む導電層とを備え、前記緻密層および前記導電層が樹脂を含み、前記第1の黒鉛粒子が、30MPaで圧縮したときの嵩密度1.7g/cm3以上かつ体積抵抗率20mΩ・cm以上であり、前記第2の黒鉛粒子が、30MPaで圧縮したときの嵩密度1.5g/cm3以上かつ体積抵抗率20mΩ・cm未満である燃料電池セパレータ用前駆体シート。
【選択図】 なし