(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】印判スタンド
(51)【国際特許分類】
B41K 1/58 20060101AFI20220412BHJP
B41K 1/36 20060101ALI20220412BHJP
【FI】
B41K1/58 B
B41K1/36 A
(21)【出願番号】P 2018120940
(22)【出願日】2018-06-26
【審査請求日】2021-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】390017891
【氏名又は名称】シヤチハタ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】寺井 拓麻
【審査官】亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-246824(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0075067(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41K 1/58
B41K 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外筒と、
該外筒より小径で上端が開口した、印判を収納可能な内筒と、
前記外筒と内筒を上端で連結する天壁と、
を備えた印判スタンドであって、
前記外筒及び前記内筒の下端には、外筒下端開口部、内筒下端開口部をそれぞれ有しており、前記内筒の上端または下端より前記印判のキャップを挿脱着可能とする嵌合部を前記内筒に形成し
、前記篏合部は前記内筒の内側又は外側に向けて形成されるフランジを含む事を特徴する印判スタンド。
【請求項2】
前記キャップに印判本体を装着したことを特徴とする請求項
1に記載の印判スタンド。
【請求項3】
前記外筒下端開口部の内径と前記キャップの外径の間に指が入る程度の隙間を設けたことを特徴とする請求項1
又は2に記載の印判スタンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印判のキャップを嵌合保持することができ、且つ前記キャップの取外しが容易な印判スタンドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、印判のキャップを圧入嵌合して保持する有底筒状の捕捉部と、前記捕捉部の側面に設けた開口部と、前記捕捉部の下端面に吸盤体を取り付けた印判スタンドの開示がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、捕捉部で保持されたキャップを取り外す際、側面の開口部から、キャップ底面部の下に棒状部材を挿入し、テコの原理を利用してキャップを持ち上げる必要があった。その場合、キャップには斜め上方向に力が加わり、キャップ周面は捕捉部の内壁に当接しながら上昇する。その為、キャップ周面と捕捉部との間で摩擦力が大きくなり、キャップを取り外す際、必要以上の力を要する。捕捉部がエラストマー等、摩擦係数の大きい素材である場合、その力は更に大きなものとなる。
【0005】
本発明は、印判のキャップを嵌合保持することができ、且つ最低限の力でキャップの取外しを行うことができる印判スタンドを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために完成された第1の発明は、外筒と、該外筒より小径で上端が開口した、印判を収納可能な内筒と、前記外筒と内筒を上端で連結する天壁と、を備えた印判スタンドであって、前記外筒及び前記内筒の下端には、外筒下端開口部、内筒下端開口部をそれぞれ有しており、前記内筒の上端または下端より前記印判のキャップを挿脱着可能とする嵌合部を前記内筒に形成し、前記篏合部は前記内筒の内側又は外側に向けて形成されるフランジを含む事を特徴する印判スタンドである。
【0007】
【0008】
上記の課題を解決するために完成された第2の発明は、前記キャップに印判本体を装着したことを特徴とする第1の発明に記載の印判スタンドである。
【0009】
【0010】
上記の課題を解決するために完成された第3の発明は、前記外筒下端開口部の内径と前記キャップの外径の間に指が入る程度の隙間を設けたことを特徴とする第1又は2の発明に記載の印判スタンドである。
【発明の効果】
【0011】
第1の発明では、外筒と、該外筒より小径で上端が開口した、印判を収納可能な内筒と、前記外筒と内筒を上端で連結する天壁と、を備えた印判スタンドであって、前記外筒及び前記内筒の下端には、外筒下端開口部、内筒下端開口部をそれぞれ有しており、前記内筒の上端または下端より前記印判のキャップを挿脱着可能とする嵌合部を前記内筒に形成している為、キャップを印判スタンド内に固定して収納でき、且つキャップを取り外す際には内筒上下端開口部から、棒状物或いは指を挿入し、押し込むことによりキャップを真上又は真下方向に移動させることができる為、キャップの取外しが容易である。また、前記嵌合部は、前記内筒の内側又は外側に向けて形成されるフランジを含む為、印判スタンド内にキャップを挿入嵌合する際、前記フランジがストッパーとして働き、キャップを適切な位置に装着できる。
【0012】
【0013】
第2の発明では、前記キャップに印判本体を装着している為、キャップが印判の収容部分を兼用できる。その為、印判収容部を別途設ける必要がなく、印判スタンドを小型化することができる。更に、印判スタンドを、印判を収納した状態で倒したり、逆さ向きにしても、印判とキャップとの嵌合力により、印判が印判スタンドから脱離することがない。
【0014】
【0015】
第3の発明では、前記外筒下端開口部の内径と前記キャップの外径の間に指が入る程度の隙間を設けている為、印判スタンドの内筒に嵌合したキャップを指で摘まんで取り外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1の実施形態による印判スタンドの斜視図である。
【
図3】
図2の状態からキャップを嵌合保持した状態を示す印判スタンドの断面図である。
【
図4】
図3の状態から印判を挿入した状態を示す印判スタンドの断面図である。
【
図5】本発明の第2の実施形態による印判スタンドの断面図である。
【
図6】
図5の状態からキャップを嵌合保持した状態を示す印判スタンドの断面図である。
【
図7】本発明の第3の実施形態による印判スタンドの斜視図である。
【
図9】
図8の状態からキャップを嵌合保持した状態を示す印判スタンドの断面図である。
【
図10】
図9の状態から印判を挿入した状態を示す印判スタンドの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に図面を参照して、本発明の第1の実施形態による印判スタンドを
図1~
図4に基づいて説明する。
尚、本発明において「上端」「上方」とは、前記天壁側を指し、「下端」「下方」とは、その反対側を指す。
図1~
図4に示すように印判スタンド1は、上端・下端が開口した丸型の外筒2と、該外筒2より小径で上端・下端が開口した、印判を収納可能な丸型の内筒3と、前記外筒2と内筒3を上端で連結する天壁4とを備えた樹脂製のものである。前記内筒3の下端には内筒下端開口部3aを有しており、前記内筒下端開口部3aの内径は印判5のキャップ6の外径よりも大きく成形している。前記内筒3の下端より前記印判5のキャップ6を、キャップ開口部を上向きにした状態で前記内筒3に挿脱着可能とする嵌合部3bを前記内筒3の内周壁に形成している。ここで挿脱着とは、挿入させて取り付けたり、外したりする事と定義する。
【0018】
前記嵌合部3bは、
図2に示すように、前記内筒3の内周壁に形成された複数の凸部で構成されている。また、前記嵌合部3bの上方には、
図2、
図3に示すように、前記内筒3の内側に向けてフランジ3cが形成されている。前記フランジ3cの突起部の張り出しは、前記キャップ6の厚みと同程度か、それより短く設定している。
【0019】
図4に示すように、前記キャップ6を前記内筒3に装着した状態で、前記キャップ6は印判収納部を兼用している。尚、前記キャップ6と前記印判5は互いに嵌合するように構成されている。
【0020】
前記外筒2の下端には、
図3、
図4に示すように、外筒下端開口部2aを有しており、前記外筒下端開口部2aの内径と前記キャップ6の外径の間に指が入る程度の隙間を設けている。
【0021】
前記外筒2は、
図2~
図4に示すように、外周全体を覆う透明のカバー体7で覆ってもよい。前記カバー体7は、前記印判スタンド1の形状と同様の形状をしており、前記外筒2の上から被せ、前記外筒2と嵌合して固定することができる。前記外筒2と前記カバー体7の間には収納部を設け、収納片(図示せず)を収納する。収納片は、写真、フィルム、印刷物、布、デザイン画等の装飾を目的とするものや、文字や絵等を書き留めた紙片等、その内容、材質、大きさは使用者の所望のものでよい。
【0022】
次に、本発明の第1の実施形態の作用・効果について説明する。
前記キャップ6を前記印判スタンド1に収納する前の状態(
図2)において、前記キャップ6を前記内筒下端開口部3aより、キャップ開口部を上向きにして挿入することで、前記キャップ6が前記内筒3の内側に挿入され、前記嵌合部3bの凸部と、前記キャップ6の外周壁が当接し、その摩擦力により前記キャップ6を前記内筒3に嵌合保持する事ができる(
図3)。
また、前記印判5に前記キャップ6を装着した状態で、前記印判5を、キャップ側を下向きにして前記内筒下端開口部3aより挿入し、前記キャップ6を嵌合保持する事も可能である。
また、前記内筒3に嵌合された前記キャップ6を取り外す際には、
図3の状態において、前記内筒3の上端開口部から棒状物或いは指を挿入し、前記キャップ6を挿入した方向とは逆方向(下方向)へ押し込むことにより前記キャップ6を真下方向に移動させることができる。その為、前記キャップ6と前記内筒内周壁との間で余計な摩擦力が生じず最低限の力で前記キャップ6の取外しが可能である。
【0023】
更に、前記嵌合部3bには前記内筒2の内側に向けて前記フランジ3cが形成されている為、前記印判スタンド1内に前記キャップ6を挿入嵌合する際、前記フランジ3cがストッパーとして働き、前記キャップ6を適切な位置に装着できると同時に、押し込み過ぎによる前記キャップ6の前記印判スタンド1からの脱離を防止できる。
【0024】
前記印判5を収納する際は、前記キャップ6を前記内筒3に装着した状態で、前記内筒3の上端開口部から前記印判5を挿入し、前記キャップ6と嵌合することができる為、印判収容部を別途設ける必要がなく、前記印判スタンド1を小型化することができる。更に、前記印判スタンド1を、前記印判5を収納した状態で倒したり、逆さ向きにしても、前記印判5と前記キャップ6との嵌合力により、前記印判5が前記印判スタンド1から脱離することがない。
【0025】
前記外筒2の下端には外筒下端開口部2aを有しており、前記外筒下端開口部2aの内径と前記キャップ6の外径の間に指が入る程度の隙間を設けている為、前記印判スタンド1の前記内筒3に嵌合した前記キャップ6を指で摘まんで取り外すことができる。
【0026】
前記外筒2には、外周全体を覆う透明のカバー体7で覆ってもよく、その場合、前記外筒2と前記カバー体7の間に収納片を収納することができる為、前記収納片を前記外筒2と前記カバー体7の間に収納保持したとき、前記外筒2を外側から見た場合に、表面に収納片が透けて見えることになる。よって、収納片を使用者の好みの写真やデザイン画等にした場合、前記外筒2外周面にその写真等が透けて見え、使用者オリジナルの外観をもった印判スタンドができる。
【0027】
ここで、前記内筒3及び外筒2は丸型に限らず、三角型、四角型、多角形型、楕円型等任意の形状を採用する事ができ、またその材質は樹脂以外に金属、ガラス、セラミック等、摩擦係数の小さい材質であれば適宜採用できる。
また、前記内筒3に設けた嵌合部3bは、圧入嵌合以外に凹凸嵌合等も採用可能である。
【0028】
前記カバー体7と前記外筒2との嵌合方法は凹凸嵌合、圧入嵌合等、ネジ嵌合等、種々採用できる。但し、前記カバー体7は、必ずしも前記外筒2と嵌合する必要はなく、前記外筒2の上から被せるだけで構成してもよい。
【0029】
次に、本発明の第2の実施形態の印判スタンドを
図5、
図6に基づいて説明する。ここでは、前記した第1の実施形態と異なる点のみを説明する。
前記内筒3の上端より前記印判5の前記キャップ6を、キャップ開口部を上向きにした状態で挿入し前記内筒3に脱着可能とする嵌合部3bを前記内筒3の内周壁に形成している。
【0030】
前記嵌合部3bは、
図5、
図6に示すように、前記内筒3の内周壁上方に形成された複数の凸部で構成されている。また、前記内筒下端開口部3aには、内側に向けてフランジ3cが形成されている。
【0031】
次に、本発明の第2の実施形態の作用・効果について説明する。ここでは、前記した第1の実施形態と異なる点のみを説明する。
前記キャップ6を前記印判スタンド1に収納する前の状態(
図5)において、前記キャップ6を前記内筒3の上端開口部より、キャップ開口部を上向きにして挿入することで、前記キャップ6が前記内筒3の内側に挿入され、前記キャップ6の外周壁が前記嵌合部3bの凸部を乗り越え、前記キャップ6開口部端の真上に前記嵌合部3bが位置する事で前記キャップ6を嵌合保持する事ができる(
図6)。
また、前記印判5に前記キャップ6を装着した状態で、前記印判5を、キャップ側を下向きにして前記内筒3の上端開口部より挿入し、前記キャップ6を嵌合保持する事も可能である。この場合、前記印判5と前記キャップ6との嵌合力よりも、前記印判スタンド1と前記キャップ6との嵌合力を大きく設定する必要がある。こうすることで、前記キャップ6は前記印判スタンド1に保持された状態で前記印判5を前記印判スタンド1から引き抜くことができる。
また、前記内筒3に嵌合された前記キャップ6を取り外す際には、
図6の状態において、前記内筒下端開口部3aから棒状物或いは指を挿入し、前記キャップ6を挿入した方向とは逆方向(下方向)から押し込むことにより前記キャップ6を真上方向に移動させ、前記キャップ6を取り外すことができる。
【0032】
ここで、前記フランジ3cの張り出しは、前記内筒下端開口部3aより、指、棒状物などが挿入できる程度の隙間があれば、任意の値に設定して良い。
また、前記内筒3に設けた嵌合部3bは、凹凸嵌合以外に圧入嵌合等も採用可能である。
【0033】
次に、本発明の第3の実施形態の印判スタンドを
図7~
図10に基づいて説明する。ここでは、前記した第1、2の実施形態と異なる点のみを説明する。
前記内筒下端開口部3aの外径は、前記キャップ6の内径よりも小さく成形している。前記内筒3の下端より、前記印判5の前記キャップ6をキャップ開口部を上向きにした状態で挿入し、前記内筒3に脱着可能とする嵌合部3bを前記内筒3の外周壁に形成している。
【0034】
前記嵌合部3bは、
図8、
図9に示すように、前記内筒3の外側に向けて形成されるフランジ3cを含んでいる。また、前記嵌合部3bは、前記内筒3の外周径が、前記内筒3の下端部から上方にいくに従って大きくなるテーパ部で構成されており、前記フランジ3c近傍において前記内筒3の外周径は前記キャップ6の内径よりも少し大きく成形している。
【0035】
また、前記内筒3の内周壁には前記嵌合部3cと対応する位置に、内側に向けて段部3dが形成されていることが好ましい。前記段部3dより上方の前記内筒3の内径は、
図10に示すように、収納する前記印判5の外径より大きく成形している。
前記段部3dの張り出しは、
図10に示すように、前記印判5の印字体枠の厚みと同程度か、それより短く設定されている。
【0036】
次に、本発明の第3の実施形態の作用・効果について説明する。ここでは、前記した第1、2の実施形態と異なる点のみを説明する。
本実施形態の印判スタンド1は、前記キャップ6を前記印判スタンド1に収納する前の状態(
図8)において、前記キャップ6を前記内筒下端部より、キャップ開口部を上向きにして挿入することで、前記キャップ6の開口部内側に前記内筒3が挿入され、前記嵌合部3bのテーパ部と、前記キャップ6の内周壁が当接し、その摩擦力により前記キャップ6を嵌合保持する事ができる(
図9)。
前記印判5を収納する際は、前記内筒3の上端開口部から前記印判5を挿入し、前記印判5の印字体枠が前記段部3dに係止する事で収納可能である。
また、前記段部3dより上方の前記内筒3の内径は収納する前記印判5の外径より大きく成形している為、前記印判スタンド1を設置面に置いたまま、片手で前記印判5を前記印判スタンド1から出し入れすることができ、操作性が優れている。
【0037】
ここで、前記内筒3に設けた嵌合部3bは、圧入嵌合以外に凹凸嵌合等も採用可能である。
【0038】
以上、本発明に係る印判スタンドの好ましい実施形態を説明したが、本発明の技術的思想は、ここで説明された実施形態に限定して解釈されるべきではない。当業者は、本発明の要旨又は技術思想から逸脱しない範囲で、この実施形態を適宜、変更又は改良を加えることができる。そのような変更又は改良を伴う印判スタンド及び関連する周辺技術は、本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【符号の説明】
【0039】
1 印判スタンド
2 外筒
2a 外筒下端開口部
3 内筒
3a 内筒下端開口部
3b 嵌合部
3c フランジ
3d 段部
4 天壁
5 印判
6 キャップ
7 カバー体