(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】車両用空気調和装置
(51)【国際特許分類】
B60H 1/22 20060101AFI20220412BHJP
B60H 1/32 20060101ALI20220412BHJP
B60H 1/00 20060101ALI20220412BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20220412BHJP
F25B 5/02 20060101ALI20220412BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20220412BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20220412BHJP
H01M 10/6563 20140101ALI20220412BHJP
H01M 10/663 20140101ALI20220412BHJP
H01M 10/635 20140101ALI20220412BHJP
H01M 10/6564 20140101ALI20220412BHJP
【FI】
B60H1/22 651C
B60H1/32 624F
B60H1/00 101F
B60H1/00 101K
B60H1/00 101Z
B60H1/22 611D
B60H1/32 623Z
B60H1/32 624A
B60H1/00 101L
B60H1/00 103S
B60H1/22 651A
B60H1/32 626E
F25B1/00 321K
F25B1/00 399Y
F25B5/02 B
F25B5/02 C
F25B5/02 530D
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/6563
H01M10/663
H01M10/635
H01M10/6564
(21)【出願番号】P 2018122154
(22)【出願日】2018-06-27
【審査請求日】2021-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】515134276
【氏名又は名称】サンデン・オートモーティブクライメイトシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】特許業務法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮腰 竜
【審査官】奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-43741(JP,A)
【文献】特開2013-129353(JP,A)
【文献】特開2014-88153(JP,A)
【文献】特開2015-16801(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00-3/06
F25B 1/00-49/04
H01M 4/00-50/77
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両走行用の電動モータに電力を供給するバッテリを冷却するバッテリ冷却機能を有する車両用空気調和装置であって、
冷媒を圧縮する圧縮機と、
バッテリから放出される熱を吸収するバッテリ冷却用吸熱器と、
車室外の空気と冷媒とを熱交換する室外熱交換器と、
圧縮機から吐出された冷媒を、室外熱交換器において放熱させるとともに、バッテリ冷却用吸熱器において吸熱させるバッテリ冷却回路と、
圧縮機から吐出された冷媒を室外熱交換器において放熱させ、室外熱交換器から流出した冷媒を圧縮機に吸入させる除霜回路と、
バッテリの冷却が必要であるか否かを判定するバッテリ冷却判定手段と、
室外熱交換器の除霜が必要であるか否かを判定する除霜判定手段と、
バッテリ冷却判定手段によってバッテリの冷却が必要と判定されるとともに、除霜判定手段によって室外熱交換器の除霜が必要と判定された場合に、圧縮機から吐出された冷媒をバッテリ冷却回路に流通させる回路設定手段と、を備えた
車両用空気調和装置。
【請求項2】
車室内に供給する空気と冷媒とを熱交換させる室内熱交換器と、
圧縮機から吐出された冷媒を、室外熱交換器において放熱させ、バッテリ冷却用吸熱器において吸熱させ、室内熱交換器において放熱または吸熱させるバッテリ冷却空調回路と、
車室内の温度または湿度の調整が必要であるか否かを判定する空調判定手段と、を備え、
回路設定手段は、バッテリ冷却判定手段によってバッテリの冷却が必要と判定されるとともに、除霜判定手段によって室外熱交換器の除霜が必要と判定され、空調判定手段によって車室内の温度または湿度の調整が必要であると判定された場合に、圧縮機から吐出された冷媒をバッテリ冷却空調回路に流通させる
請求項1に記載の車両用空気調和装置。
【請求項3】
車室内に供給する空気を加熱する空気加熱ヒータと、
バッテリ冷却空調回路によって車室内の空調及びバッテリの冷却を行っている状態で、室内熱交換器における放熱量が不足する場合に、不足する放熱量を空気加熱ヒータによって補う不足熱量補償手段と、を備えた
請求項2に記載の車両用空気調和装置。
【請求項4】
バッテリ冷却回路において、室外熱交換器と直列に接続された室内熱交換器としての放熱器を備え、
空調判定手段によって車室内の除湿の必要がないと判定された場合に、バッテリ冷却回路において、放熱器から放出される熱、または、放熱器及び空気加熱ヒータから放出される熱によって車室内の暖房を行う
請求項3に記載の車両用空気調和装置。
【請求項5】
バッテリが充電中であるか否かを判定する充電判定手段と、
充電判定手段によってバッテリが充電中であると判定された状態で、バッテリ冷却判定手段によってバッテリの冷却が必要と判定されず、除霜判定手段によって室外熱交換器の除霜が必要と判定されるとともに、空調判定手段によって車室内の空調の温度または湿度の調整が必要であると判定された場合に、車室内の温度または湿度の調整を実行することなく、除霜回路によって室外熱交換器の除霜を行う空調規制手段と、を備えた
請求項2乃至4のいずれかに記載の車両用空気調和装置。
【請求項6】
室内熱交換器としての吸熱器の冷媒流通方向上流側には、冷媒流通路を開閉する流路開閉弁と、冷媒を減圧する膨張弁と、が接続され、
圧縮機から吐出された冷媒をバッテリ冷却空調回路に流通させる際に、バッテリ冷却用吸熱器によって冷却されるバッテリの温度を圧縮機の回転数の調整によって制御し、吸熱器において冷却される空気の温度を、流路開閉弁の開度の全開と全閉との切り替えによって制御する
請求項2乃至5のいずれかに記載の車両用空気調和装置。
【請求項7】
室内熱交換器としての吸熱器の冷媒流通方向上流側には、冷媒流通路を開閉する流路開閉弁と、冷媒を減圧する膨張弁と、が接続され、
圧縮機から吐出された冷媒をバッテリ冷却空調回路に流通させる際に、バッテリ冷却用吸熱器によって冷却されるバッテリの温度を圧縮機の回転数の調整によって制御し、吸熱器において冷却される空気の温度を、流路開閉弁の開度の互いに異なる二種類の開度の切り替えによって制御する
請求項2乃至5のいずれかに記載の車両用空気調和装置。
【請求項8】
室外熱交換器において冷媒と熱交換する空気を流通させるための室外送風機と、
室外熱交換器から流出する冷媒の温度を検出する冷媒温度センサと、
除霜判定手段によって室外熱交換器の除霜が必要と判定されている状態で、圧縮機から吐出された冷媒を、バッテリ冷却回路、除霜回路またはバッテリ冷却空調回路に流通させる際に、冷媒温度センサの検出温度が所定温度よりも大きくなるまで、室外送風機の駆動を制限する室外送風機駆動制限手段と、を備えた
請求項1乃至7のいずれかに記載の車両用空気調和装置。
【請求項9】
除霜回路による室外熱交換器の除霜は、充電判定手段によってバッテリが充電中であると判定した場合、または、車両のキースイッチがオフの状態で実行される
請求項1乃至8のいずれかに記載の車両用空気調和装置。
【請求項10】
室外熱交換器の除霜、車室内の空調及びバッテリの冷却に関する情報を報知する報知手段を備えた
請求項2乃至9のいずれかに記載の車両用空気調和装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、電気自動車やハイブリッド車等、走行用の電動モータに電力を供給するバッテリを備えた車両に適用される車両用空気調和装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の車両用空気調和装置では、圧縮機、室内熱交換器、室外熱交換器及び膨張弁を有する冷媒回路を備え、室内熱交換器において冷媒と熱交換した空気を車室内に供給することによって車室内の冷房、暖房、除湿等を行っている。
【0003】
また、前記車両用空気調和装置が搭載される車両としては、電気自動車やハイブリッド車等、駆動源としての電動モータに電力を供給するための走行用バッテリを備えているものがある。走行用バッテリは、車両の走行を継続したり急速充電を行ったりした場合に、熱を放出して高温となる場合がある。
【0004】
このため、前記車両では、走行用バッテリを冷却するために、走行用バッテリを冷却水回路に接続するとともに、冷却水回路を水―冷媒熱交換器を介して冷媒回路に接続したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。前記車両では、冷却水回路を流通する冷却水によって走行用バッテリを冷却するとともに、走行用バッテリを冷却して熱を吸収した冷却水を、冷媒回路を流通する冷媒と熱交換させることで放熱させるバッテリ冷却運転を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記車両用空気調和装置では、外気温が低温度の環境下において車両が走行する場合に、車室内の暖房を行うと、室外熱交換器に着霜が生じる場合がある。前記車両用空気調和装置では、室外熱交換器に着霜が生じた場合に、圧縮機から吐出された高温高圧の冷媒を室外熱交換器に流入させて室外熱交換器に付着した霜を融解させる除霜運転を行うものがある。
【0007】
前記車両用空気調和装置では、除霜運転を行う際に、同時に車室内の暖房運転を行うことができないため、車両が走行していない状態であるキースイッチがオフの状態で除霜運転を実行している。また、バッテリ冷却運転についても、バッテリの充電中に実行する場合には、停車中に実行されることになる。
【0008】
このため、前記車両用空気調和装置では、除霜運転とともに、バッテリ冷却運転を実行する必要性が生じ得る。
【0009】
本発明の目的とするところは、バッテリの冷却及び室外熱交換器に付着した霜の除去を同時に行うことのできる車両用空気調和装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の車両用空気調和装置は、前記目的を達成するために、車両走行用の電動モータに電力を供給するバッテリを冷却するバッテリ冷却機能を有する車両用空気調和装置であって、冷媒を圧縮する圧縮機と、バッテリから放出される熱を吸収するバッテリ冷却用吸熱器と、車室外の空気と冷媒とを熱交換する室外熱交換器と、圧縮機から吐出された冷媒を、室外熱交換器において放熱させるとともに、バッテリ冷却用吸熱器において吸熱させるバッテリ冷却回路と、圧縮機から吐出された冷媒を室外熱交換器において放熱させ、室外熱交換器から流出した冷媒を圧縮機に吸入させる除霜回路と、バッテリの冷却が必要であるか否かを判定するバッテリ冷却判定手段と、室外熱交換器の除霜が必要であるか否かを判定する除霜判定手段と、バッテリ冷却判定手段によってバッテリの冷却が必要と判定されるとともに、除霜判定手段によって室外熱交換器の除霜が必要と判定された場合に、圧縮機から吐出された冷媒をバッテリ冷却回路に流通させる回路設定手段と、を備えている。
【0011】
これにより、バッテリ冷却回路に設定することで室外熱交換器が放熱器として機能し、室外熱交換器において冷媒が放熱することから、バッテリの冷却と同時に室外熱交換器に付着した霜を融解させることが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、バッテリ冷却回路に設定することで、バッテリの冷却と同時に室外熱交換器に付着した霜を融解させることができるので、バッテリ冷却運転と除霜運転をそれぞれ別個に行う場合と比較して消費電力量の低減を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態を示す車両用空気調和装置の概略構成図である。
【
図3】バッテリ冷却運転のみを行う車両用空気調和装置の概略構成図である。
【
図4】空調運転及びバッテリ冷却運転を同時に行う車両用空気調和装置の概略構成図である。
【
図5】除霜運転を行う車両用空気調和装置の概略構成図である。
【
図6】運転切替制御処理を示すフローチャートである。
【
図7】運転切替制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1乃至
図7は、本発明の一実施形態を示すものである。
【0015】
本発明の車両用空気調和装置1は、例えば電気自動車やハイブリッド車等、電動モータの駆動力によって走行可能な車両に適用されるものである。
【0016】
車両は、走行用の電動モータと、電動モータに供給する電力が蓄えられる走行用のバッテリBと、を有している。
【0017】
バッテリBは、車両の走行時において電動モータに電力を供給したり、充電したりする際に熱を放出する。バッテリBは、供給を受ける電力の電圧及び電流の一方または両方を上昇させることによって充電を短時間で行う急速充電が可能であり、急速充電の際に特に放熱量が大きくなる。バッテリBは、例えば、10℃~30℃の範囲での使用が望ましく、50℃以上の高温となると劣化が促進されることになる。このため、バッテリBは、必要に応じて冷却し、所定の温度T1(例えば、50℃)未満を維持する必要がある。
【0018】
この車両用空気調和装置1は、バッテリBを冷却するためのバッテリ冷却機能を有している。車両用空気調和装置1は、
図1に示すように、車両の車室内に設けられる空調ユニット10と、車室内および車室外にわたって設けられる冷媒回路20と、バッテリBから放出された熱を吸収する熱媒体を流通させるための熱媒体回路30と、を備えている。
【0019】
空調ユニット10は、車室内に供給する空気を流通させるための空気流通路11を有している。空気流通路11の一端側には、車室外の空気を空気流通路11に流入させるための外気吸入口11aと、車室内の空気を空気流通路11に流入させるための内気吸入口11bと、が設けられている。また、空気流通路11の他端側には、空気流通路11を流通した空気を、搭乗者の足元に向かって吹き出させる図示しないフット吹出口、搭乗者の上半身に向かって吹き出させる図示しないベント吹出口、及び、車両のフロントガラスの車室内側の面に向かって吹き出させる図示しないデフ吹出口、が設けられている。
【0020】
空気流通路11内の一端側には、空気流通路11の一端側から他端側に向かって空気を流通させるためのシロッコファン等の室内送風機12が設けられている。
【0021】
空気流通路11の一端側には、外気吸入口11a及び内気吸入口11bの一方を開放して他方を閉鎖することが可能な吸入口切換えダンパ13が設けられている。吸入口切換えダンパ13は、内気吸入口11bを閉鎖して外気吸入口11aが開放する外気供給モードと、外気吸入口11aを閉鎖して内気吸入口11bを開放する内気循環モードと、外気吸入口11aと内気吸入口11bとの間に位置させることで外気吸入口11aと内気吸入口11bとをそれぞれ開放する内外気吸入モードと、を切換えることが可能である。
【0022】
空気流通路11における室内送風機12の空気流通方向下流側には、空気流通路11を流通する空気を冷却及び除湿するための室内熱交換器としての吸熱器14が設けられている。また、空気流通路11における吸熱器14の空気流通方向下流側には、空気流通路11を流通する空気を加熱するための室内熱交換器としての放熱器15が設けられている。
【0023】
放熱器15は、空気流通路11の直交方向一方側に配置され、空気流通路11の直交方向他方側には、放熱器15を迂回する放熱器バイパス流通路11cが形成される。空気流通路11における放熱器15の空気流通方向下流側には、車室内に供給する空気を加熱するための空気加熱ヒータ16が設けられている。
【0024】
空気流通路11における吸熱器14と放熱器15との間には、吸熱器14を通過した空気のうち、放熱器15によって加熱される空気の割合を調整するためのエアミックスダンパ17が設けられている。エアミックスダンパ17は、放熱器15及び放熱器バイパス流通路11cの空気流通方向上流側において、放熱器バイパス流通路11c及び放熱器15の一方の空気流通方向上流側を閉鎖して他方を開放したり、放熱器バイパス流通路11c及び放熱器15の両方を開放し、放熱器15の空気流通方向上流側の開度を調整したりする。エアミックスダンパ17は、空気流通路11における放熱器15の空気流通方向上流側を閉鎖して放熱器バイパス流通路11cを開放した状態で開度が0%となり、空気流通路11における放熱器15の空気流通方向上流側を開放し、放熱器バイパス流通路11cを閉鎖した状態で開度が100%となる。
【0025】
冷媒回路20は、前記吸熱器14、前記放熱器15、冷媒を圧縮するための圧縮機21、冷媒と車室外の空気とを熱交換するための室外熱交換器22、吸熱器14に流入する冷媒と吸熱器14から流出する冷媒とを熱交換するための内部熱交換器23、冷媒回路20を流通する冷媒と熱媒体回路30を流通する熱媒体とを熱交換するためのバッテリ冷却用吸熱器としての熱媒体熱交換器24、全閉と全開との間で弁開度の調整が可能な電子式の第1膨張弁25a、吸熱器14及び熱媒体熱交換器24の出口における冷媒の温度変化に応じて弁開度が調整される機械式の第2及び第3膨張弁25b,25c、冷媒の流路を開閉するための流路開閉弁としての第1乃至第5電磁弁26a,26b,26c,26d,26e、冷媒の流路における冷媒の流通方向を規制するための逆止弁27、気体の冷媒と液体の冷媒を分離して液体の冷媒が圧縮機21に吸入されることを防止するためのアキュムレータ28を有し、これらは例えばアルミニウム管や銅管によって接続されている。冷媒回路20を流通する冷媒としては、例えば、R-134a等が用いられる。
【0026】
室外熱交換器22は、冷媒と熱交換する空気の流通方向が車両の前後方向となるように、エンジンルーム等の車室外に配置されている。室外熱交換器22の近傍には、車両の停止時に車室外の空気を前後方向に流通させるための室外送風機22dが設けられている。室外熱交換器22は、冷媒を放熱または吸熱させるための本体部22aと、放熱させた冷媒を流入させて液体状の冷媒から気体状の冷媒を分離するためのレシーバ部22bと、レシーバ部22bから流出した液体の冷媒を過冷却の状態とするための過冷却部22cと、を有している。
【0027】
冷媒回路20の構成について具体的に説明すると、圧縮機21の冷媒吐出側には、放熱器15の冷媒流入側を接続することにより、冷媒流通路20aが形成されている。放熱器15の冷媒流出側には、室外熱交換器22の冷媒流入側を接続することにより、冷媒流通路20bが形成されている。冷媒流通路20bには、第1膨張弁25aが設けられている。室外熱交換器22における本体部22aの冷媒流出側には、レシーバ部22bの冷媒流入側を接続することにより冷媒流通路20cが形成されている。冷媒流通路20cには、第1電磁弁26aが設けられている。また、室外熱交換器22におけるレシーバ部22bの冷媒流出側には、過冷却部22cの冷媒流入側が接続されている。過冷却部22cの冷媒流出側には、内部熱交換器23の高圧冷媒流入側を接続することにより、冷媒流通路20dが形成されている。内部熱交換器23の高圧冷媒流出側には、吸熱器14の冷媒流入側を接続することにより、冷媒流通路20eが形成されている。冷媒流通路20eには、内部熱交換器23側から順に、逆止弁27、第2電磁弁26b、第2膨張弁25bが設けられている。吸熱器14の冷媒流出側には、内部熱交換器23の低圧冷媒流入側を接続することにより、冷媒流通路20fが形成されている。内部熱交換器23の低圧冷媒流出側には、圧縮機21の冷媒吸入側を接続することにより、冷媒流通路20gが形成されている。冷媒流通路20gには、アキュムレータ28が設けられている。また、冷媒流通路20bにおける放熱器15と第1膨張弁25aとの間には、室外熱交換器22を迂回し、冷媒流通路20eにおける逆止弁27と第2電磁弁26bとの間を接続することにより、冷媒流通路20hが形成されている。冷媒流通路20hには、第3電磁弁26cが設けられている。冷媒流通路20cにおける室外熱交換器22の本体部22aと第1電磁弁26aとの間には、冷媒流通路20gにおける内部熱交換器23とアキュムレータ28との間を接続することにより、冷媒流通路20iが形成されている。冷媒流通路20iには、第4電磁弁26dが設けられている。また、冷媒流通路20eにおける逆止弁27と第2電磁弁26bとの間には、熱媒体熱交換器24の冷媒流入側を接続することにより、冷媒流通路20jが形成されている。冷媒流通路20jには、冷媒流通路20e側から順に、第5電磁弁26e、第3膨張弁25cが設けられている。熱媒体熱交換器24の冷媒流出側には、冷媒流通路20gにおけるアキュムレータ28と圧縮機21の冷媒吸入側との間を接続することにより、冷媒流通路20kが形成されている。
【0028】
熱媒体回路30は、前記熱媒体熱交換器24、熱媒体を圧送するための熱媒体ポンプ31、バッテリB、を有し、これらは例えばアルミニウム管や銅管によって接続されている。熱媒体回路30を流通する熱媒体としては、例えば、エチレングリコール等の不凍液が用いられる。
【0029】
具体的に説明すると、熱媒体ポンプ31の熱媒体吐出側には、熱媒体熱交換器24の熱媒体流入側を接続することにより、熱媒体流通路30aが形成されている。熱媒体熱交換器24の熱媒体流出側には、バッテリBの熱媒体流入側を接続することにより、熱媒体流通路30bが形成されている。バッテリBの熱媒体流出側には、熱媒体ポンプ31の熱媒体吸入側を接続することにより、熱媒体流通路30cが形成されている。
【0030】
また、この車両用空気調和装置1は、車室内の温度及び湿度を設定された温度及び湿度とする制御、バッテリBを所定の温度以下に冷却するための制御を行うためのコントローラ40を備えている。
【0031】
コントローラ40は、CPU、ROM,RAMを有している。コントローラ40は、入力側に接続された装置からの入力信号を受信すると、CPUが、入力信号に基づいてROMに記憶されたプログラムを読み出すとともに、入力信号によって検出された状態をRAMに記憶したり、出力側に接続された装置に出力信号を送信したりする。
【0032】
コントローラ40の入力側には、
図2に示すように、圧縮機21、車室外の温度Tamを検出するための外気温度センサ41、車室内の温度Trを検出するための内気温度センサ42、空気流通路11に流入する空気の温度Tiを検出するための吸気温度センサ43、吸熱器14において冷却された後の空気の温度Teを検出するための冷却空気温度センサ44、放熱器15において加熱された後の空気の温度Tcを検出するための加熱空気温度センサ45、車室内の湿度Rhを検出するための内気湿度センサ46、室外熱交換器22において熱交換した後の冷媒の温度Thexを検出するための冷媒温度センサ47、日射量Tsを検出するための例えばフォトセンサ式の日射センサ48、車両の速度Vを検出するための速度センサ49、冷媒回路20の高圧側の圧力Pdを検出するための圧力センサ50、熱媒体回路30において熱媒体熱交換器24から流出した熱媒体の温度を検出するための熱媒体温度センサ51、搭乗者による車室内の設定温度Tsetの設定や空調の運転内容の切換えに関する設定を行うための設定操作部52、バッテリB、が接続されている。
【0033】
コントローラ40の出力側には、
図2に示すように、空気加熱ヒータ16、圧縮機21、第1膨張弁25a、第1乃至第5電磁弁26a,26b,26c,26d,26e、車室内の温度や運転状態等の情報を表示するための液晶ディスプレイ等の報知手段としての表示部53が接続されている。
【0034】
以上のように構成された車両用空気調和装置1では、空調ユニット10及び冷媒回路20を用いて車室内の空気の温度及び湿度を調節する。具体的には、車両用空気調和装置1は、車室内の温度を低下させる冷房運転と、車室内の湿度を低下させると共に温度を低下させる除湿冷房運転と、車室内の温度を上昇させる暖房運転と、車室内の湿度を低下させると共に温度を上昇させる除湿暖房運転と、を行う。
【0035】
例えば、冷房運転を行う場合には、空調ユニット10において、室内送風機12を駆動させるとともに、エアミックスダンパ17を0%の開度に設定する。また、冷媒回路20においては、第1膨張弁25aを全開、第1及び第2電磁弁26a,26bを開放、第3乃至第5電磁弁26c,26d,26eを閉鎖した状態で圧縮機21を駆動させる。さらに、熱媒体回路30においては、熱媒体ポンプ31を駆動させる。
【0036】
これにより、冷媒回路20において、圧縮機21から吐出された冷媒は、
図1の実線の矢印で示すように、冷媒流通路20a、放熱器15、冷媒流通路20b、室外熱交換器22の本体部22a、冷媒流通路20c、レシーバ部22b、過冷却部22c、冷媒流通路20d、内部熱交換器23の高圧側、冷媒流通路20e、吸熱器14、冷媒流通路20f、内部熱交換器23の低圧側、冷媒流通路20gの順に流通して圧縮機21に吸入される。
【0037】
また、熱媒体回路30において、熱媒体ポンプ31から吐出された熱媒体は、
図1の破線の矢印で示すように、熱媒体流通路30a、熱媒体熱交換器24、熱媒体流通路30b、バッテリB、熱媒体流通路30cの順に流通して熱媒体ポンプ31に吸入される。
【0038】
冷媒回路20を流通する冷媒は、エアミックスダンパ17の開度が0%であるため放熱器15において放熱することなく、室外熱交換器22において放熱し、吸熱器14において吸熱する。
【0039】
空気流通路11を流通する空気は、吸熱器14において吸熱する冷媒と熱交換することによって目標吹出温度TAOまで冷却されて車室内に吹き出される。
【0040】
また、熱媒体回路30を流通する熱媒体は、熱媒体熱交換器24において冷媒と熱交換することなく、バッテリBにおいてバッテリBから放出された熱を受けて加熱される。
【0041】
また、例えば、車室内の温度及び湿度を低下させる除湿冷房運転では、冷房運転時における冷媒回路20の冷媒の流路において、空調ユニット10のエアミックスダンパ17の開度を0%よりも大きい開度に設定する。
【0042】
これにより、冷媒回路20を流通する冷媒は、放熱器15及び室外熱交換器22において放熱し、吸熱器14において吸熱する。
【0043】
空気流通路11を流通する空気は、吸熱器14において吸熱する冷媒と熱交換することによって除湿されるとともに冷却され、放熱器15において目標吹出温度TAOまで加熱されて車室内に吹き出される。
【0044】
また、例えば、車室内の湿度を低下させるとともに温度を上昇させる除湿暖房運転では、冷房運転時における冷媒回路20の冷媒の流路において、第1膨張弁25aを全開よりも小さい所定の弁開度とする。また、空調ユニット10のエアミックスダンパ17の開度を0%よりも大きい開度に設定する。
【0045】
これにより、冷媒回路20を流通する冷媒は、放熱器15において放熱し、室外熱交換器22及び吸熱器14において吸熱する。
【0046】
空調ユニット10の空気流通路11を流通する空気は、吸熱器14において吸熱する冷媒と熱交換することによって除湿されるとともに冷却され、放熱器15において目標吹出温度TAOまで加熱されて吹出される。
【0047】
また、この車両用空気調和装置1は、冷媒回路20及び熱媒体回路30を用いてバッテリBを冷却するバッテリ冷却運転を行う。
【0048】
車室内の温度及び湿度の調整を行うことなく、バッテリBの冷却のみを行うバッテリ冷却単独運転を行う場合には、空調ユニット10において室内送風機12の駆動を停止させるとともに、エアミックスダンパ17を0%の開度に設定する。また、冷媒回路20においては、第1膨張弁25aを全開、第1及び第5電磁弁26a,26eを開放、第2乃至第4電磁弁26b,26c,26dを閉鎖した状態で圧縮機21を駆動させる。さらに、熱媒体回路30においては、熱媒体ポンプ31を駆動させる。
【0049】
これにより、冷媒回路20において、圧縮機21から吐出された冷媒は、バッテリ冷却回路として、
図3の実線の矢印に示すように、冷媒流通路20a、放熱器15、冷媒流通路20b、室外熱交換器22の本体部22a、冷媒流通路20c、レシーバ部22b、過冷却部22c、冷媒流通路20d、内部熱交換器23の高圧側、冷媒流通路20e,20j、熱媒体熱交換器24、冷媒流通路20k,20gの順に流通して圧縮機21に吸入される。
【0050】
また、熱媒体回路30において、熱媒体ポンプ31から吐出された熱媒体は、
図3の破線の矢印で示すように、熱媒体流通路30a、熱媒体熱交換器24、熱媒体流通路30b、バッテリB、熱媒体流通路30cの順に流通して熱媒体ポンプ31に吸入される。
【0051】
冷媒回路20を流通する冷媒は、室内送風機12が停止していると共にエアミックスダンパ17の開度が0%であるため放熱器15において放熱することなく、室外熱交換器22において放熱し、熱媒体熱交換器24において吸熱する。
【0052】
また、熱媒体回路30を流通する熱媒体は、熱媒体熱交換器24において吸熱する冷媒と熱交換することによって冷却され、バッテリBにおいてバッテリBから放出された熱を受けて加熱される。
【0053】
バッテリBは、熱媒体熱交換器24において冷却された熱媒体によって冷却される。
【0054】
また、冷房運転と同時にバッテリ冷却運転を行う場合には、空調ユニット10において、室内送風機12を駆動させるとともに、エアミックスダンパ17を0%の開度に設定する。また、冷媒回路20においては、第1膨張弁25aを全開、第1及び第2電磁弁26a,26bを開放、第3及び第4電磁弁26c,26dを閉鎖、第5電磁弁26eを開放した状態で圧縮機21を駆動させる。さらに、熱媒体回路30においては、熱媒体ポンプ31を駆動させる。
【0055】
これにより、冷媒回路20において、圧縮機21から吐出された冷媒は、バッテリ冷却空調回路として、
図4の実線の矢印で示すように、冷媒流通路20a、放熱器15、冷媒流通路20b、室外熱交換器22の本体部22a、冷媒流通路20c、レシーバ部22b、過冷却部22c、冷媒流通路20d、内部熱交換器23の高圧側、冷媒流通路20eの順に流通する。冷媒流通路22eを流通する冷媒の一部は、吸熱器14、冷媒流通路20f、内部熱交換器23の低圧側、冷媒流通路20gの順に流通して圧縮機21に吸入される。また、冷媒流通路22eを流通するその他の冷媒は、冷媒流通路20j、熱媒体熱交換器24、冷媒流通路20k,20gの順に流通して圧縮機21に吸入される。
【0056】
また、熱媒体回路30において、熱媒体ポンプ31から吐出された熱媒体は、
図4の破線の矢印で示すように、熱媒体流通路30a、熱媒体熱交換器24、熱媒体流通路30b、バッテリB、熱媒体流通路30cの順に流通して熱媒体ポンプ31に吸入される。
【0057】
冷媒回路20を流通する冷媒は、エアミックスダンパ17の開度が0%であるため放熱器15において放熱することなく、室外熱交換器22において放熱し、吸熱器14及び熱媒体熱交換器24において吸熱する。
【0058】
空気流通路11を流通する空気は、吸熱器14において吸熱する冷媒と熱交換することによって目標吹出温度TAOまで冷却されて車室内に吹き出される。
【0059】
また、熱媒体回路30を流通する熱媒体は、熱媒体熱交換器24において吸熱する冷媒と熱交換することによって冷却され、バッテリBにおいてバッテリBから放出された熱を受けて加熱される。
【0060】
バッテリBは、熱媒体熱交換器24において冷却された熱媒体によって冷却される。
【0061】
また、室外熱交換器22に着霜が生じた場合には、室外熱交換器22に付着した霜を除去する除霜運転を行う。除霜運転を行う場合には、空調ユニット10において室内送風機12の駆動を停止するとともに、エアミックスダンパ17を0%の開度に設定する。また、冷媒回路20においては、第1膨張弁25aを全開、第4電磁弁26dを開放し、第1乃至第3電磁弁26a,26b,26c及び第5電磁弁26eを閉鎖した状態で圧縮機21を駆動させる。さらに、熱媒体回路30においては、熱媒体ポンプ31を駆動させる。
【0062】
これにより、冷媒回路20において、圧縮機21から吐出された冷媒は、除霜回路として、
図5の実線の矢印で示すように、冷媒流通路20a、放熱器15、冷媒流通路20b、室外熱交換器22の本体部22a、冷媒流通路20c,20i,20gの順に流通して圧縮機21に吸入される。
【0063】
また、熱媒体回路30において、熱媒体ポンプ31から吐出された熱媒体は、
図5の破線の矢印で示すように、熱媒体流通路30a、熱媒体熱交換器24、熱媒体流通路30b、バッテリB、熱媒体流通路30cの順に流通して熱媒体ポンプ31に吸入される。
【0064】
冷媒回路20を流通する冷媒は、室内送風機12が停止していると共にエアミックスダンパ17の開度が0%であるため放熱器15において放熱することなく、室外熱交換器22において放熱する。
【0065】
室外熱交換器22に付着した霜は、室外熱交換器22において冷媒から放出される熱によって融解される。
【0066】
また、熱媒体回路30を流通する熱媒体は、熱媒体熱交換器24において冷媒と熱交換することなく、バッテリBにおいてバッテリBから放出された熱を受けて加熱される。
【0067】
ここで、冷房運転または除湿冷房運転と同時にバッテリ冷却運転を行う場合等、吸熱器14及び熱媒体熱交換器24において同時に冷媒に吸熱させる場合には、冷媒が吸収した熱を確実に放出させるため、室外熱交換器22を放熱器として機能させる。
【0068】
また、コントローラ40は、空調ユニット10及び冷媒回路20による空調運転の開始および停止、冷媒回路20及び熱媒体回路30によるバッテリ冷却運転の開始及び停止を切り換える運転切替制御処理を行う。この時のコントローラ40の動作を
図6及び
図7のフローチャートを用いて説明する。
【0069】
(ステップS1)
ステップS1においてCPUは、充電判定手段として、バッテリBが充電中であるか否か、または、車両のキースイッチがオフであるか否かを判定する。バッテリBが充電中、または、車両のキースイッチがオフであると判定した場合にはステップS2に処理を移し、バッテリBが充電中、または、車両のキースイッチがオフであると判定しなかった場合には運転切替制御処理を終了する。
ここで、バッテリBが充電中、または、車両のキースイッチがオフである状態とは、車両が走行を行わない状態であることを意味する。また、バッテリBが充電中であるか否かは、バッテリBに供給される電力の電圧や電流の検出値に基づいて判定される。
【0070】
(ステップS2)
ステップS1においてバッテリBが充電中、または、車両のキースイッチがオフであると判定した場合に、ステップS2においてCPUは、バッテリ冷却判定手段として、バッテリBの冷却が必要であるか否かを判定する。バッテリBの冷却が必要であると判定した場合にはステップS3に処理を移し、バッテリBの冷却が必要であると判定しなかった場合にはステップS12に処理を移す。
ここで、バッテリBの冷却が必要であるか否かは、熱媒体温度センサ51によって検出される熱媒体回路30を流通する熱媒体の温度Twに基づいて判定される。
【0071】
(ステップS3)
ステップS2においてバッテリBの冷却が必要であると判定した場合に、ステップS3においてCPUは、除霜判定手段として、室外熱交換器22に付着した霜を除去する必要があるか否かを判定する。室外熱交換器22に付着した霜を除去する必要があると判定した場合にはステップS4に処理を移し、室外熱交換器22に付着した霜を除去する必要があると判定しなかった場合にはステップS9に処理を移す。
ここで、室外熱交換器22に付着した霜を除去する必要があるか否かの判定は、冷媒温度センサ47によって検出された室外熱交換器22から流出した冷媒の温度Thexに基づいて行う。
【0072】
(ステップS4)
ステップS3において室外熱交換器22に付着した霜を除去する必要があると判定した場合に、ステップS4においてCPUは、空調判定手段として、除湿暖房運転等の車室内の空調が必要であるか否かを判定する。車室内の空調が必要であると判定した場合にはステップS5に処理を移し、車室内の空調が必要であると判定しなかった場合にはステップS10に処理を移す。
ここで、車室内の空調が必要であるか否かは、搭乗者によって設定された設定温度Tsetと内気温度センサ42によって検出された温度Trとの差異や、内気湿度センサ46によって検出された湿度Rhに基づいて判定される。
【0073】
(ステップS5)
ステップS4において車室内の空調が必要であると判定した場合に、ステップS5においてCPUは、車室内の除湿が必要であるか否かを判定する。車室内の除湿が必要であると判定した場合にはステップS6に処理を移し、車室内の除湿が必要であると判定しなかった場合にはステップS7に処理を移す。
【0074】
(ステップS6)
ステップS5において車室内の除湿が必要であると判定した場合に、ステップS6においてCPUは、回路設定手段として、車室内の空調に対してバッテリBの冷却を優先する二種類のバッテリ冷却優先モードのうち第1バッテリ冷却優先モードで空調運転及びバッテリ冷却運転を行う。
ここで、第1バッテリ冷却優先モードでは、第5電磁弁26eを開放し、熱媒体温度センサ51によって検出された熱媒体の温度Twが目標熱媒体温度TWOとなるように圧縮機21の回転数を制御する。
また、第1バッテリ冷却優先モードでは、室内送風機12を駆動するとともに、第2電磁弁26bの開閉によって吸熱器14における冷媒の流通を調整することによって吸熱器14における冷媒の温度を制御する。第1バッテリ冷却優先モードにおいて、第2電磁弁26bは、冷却空気温度センサ44によって検出された空気の温度Teが目標吹出温度TAOよりも所定温度γ高くなると冷媒流通路20eを開放し、冷却空気温度センサ44によって検出された空気の温度Teが下限値(例えば、3℃)以下になった時に冷媒流通路20eを閉鎖する。
また、第1バッテリ冷却優先モードでは、室外送風機駆動制限手段として、ステップS3において室外熱交換器22に付着した霜を除去する必要があると判定した場合に、冷媒温度センサ47の検出温度Thexが所定温度よりも大きくなるまで、室外送風機22dの駆動を制限する。
【0075】
(ステップS7)
ステップS5において車室内の除湿が必要であると判定しなかった場合に、ステップS7においてCPUは、回路設定手段として、車室内の空調に対してバッテリBの冷却を優先する二種類のバッテリ冷却優先モードのうち第2バッテリ冷却優先モードで空調運転及びバッテリ冷却運転を行う。
ここで、第2バッテリ冷却優先モードでは、第5電磁弁26eを開放し、熱媒体温度センサ51によって検出された熱媒体の温度Twが目標熱媒体温度TWOとなるように圧縮機21の回転数を制御する。
また、第2バッテリ冷却優先モードでは、室内送風機12を駆動するとともに、第2電磁弁26bを閉鎖する。第2バッテリ冷却優先モードでは、車室内に供給する空気の除湿を行わないが、エアミックスダンパ17の開度を0%よりも大きくすることによって空気流通路11を流通する空気を放熱器15において加熱して車室内に供給する暖房が可能である。第2バッテリ冷却優先モードでは、放熱器15における放熱量が不足する場合に、空気加熱ヒータ16によって空気流通路11を流通する空気を加熱して車室内に供給する。
また、第2バッテリ冷却優先モードでは、ステップS3において室外熱交換器22に付着した霜を除去する必要があると判定した場合に、冷媒温度センサ47の検出温度Thexが所定温度よりも大きくなるまで、室外送風機22dの駆動を制限する。
【0076】
(ステップS8)
ステップS8においてCPUは、空調運転に対してバッテリ冷却運転を優先するバッテリ冷却優先運転を行っている旨の表示を表示部53に行い、ステップS20に処理を移す。
【0077】
(ステップS9)
ステップS3において室外熱交換器22に付着した霜を除去する必要があると判定しなかった場合に、ステップS9においてCPUは、空調判定手段として、除湿暖房運転等の車室内の空調が必要であるか否かを判定する。車室内の空調が必要であると判定した場合にはステップS5に処理を移し、車室内の空調が必要であると判定しなかった場合にはステップS10に処理を移す。
ここで、車室内の空調が必要であるか否かは、搭乗者によって設定された設定温度Tsetと内気温度センサ42によって検出された温度Trとの差異や、内気湿度センサ46によって検出された湿度Rhに基づいて判定される。
【0078】
(ステップS10)
ステップS4またはステップS9において車室内の空調が必要であると判定しなかった場合に、ステップS10においてCPUは、空調運転を行うことなくバッテリ冷却運転のみを実行するバッテリ冷却単独モードでバッテリ冷却運転のみを行う。
ここで、バッテリ冷却単独モードでは、熱媒体温度センサ51によって検出される熱媒体の温度Twが目標熱媒体温度TWOとなるように圧縮機21の回転数を制御し、室内送風機12の駆動を停止するとともに、第2電磁弁26bを閉鎖した状態を保持する。
また、バッテリ冷却単独モードでは、室外送風機駆動制限手段として、ステップS3において室外熱交換器22に付着した霜を除去する必要があると判定した場合に、冷媒温度センサ47の検出温度Thexが所定温度よりも大きくなるまで、室外送風機22dの駆動を制限する。
【0079】
(ステップS11)
ステップS11においてCPUは、バッテリ冷却運転のみを行うバッテリ冷却単独運転を行っている旨の表示を表示部53に行い、運転切替制御処理を終了する。
【0080】
(ステップS12)
ステップS2においてバッテリBの冷却が必要であると判定しなかった場合に、ステップS12においてCPUは、除霜判定手段として、室外熱交換器22に付着した霜を除去する必要があるか否かを判定する。室外熱交換器22に付着した霜を除去する必要があると判定した場合にはステップS13に処理を移し、室外熱交換器22に付着した霜を除去する必要があると判定しなかった場合にはステップS15に処理を移す。
ここで、室外熱交換器22に付着した霜を除去する必要があるか否かの判定は、冷媒温度センサ47によって検出された室外熱交換器22から流出した冷媒の温度Thexに基づいて行う。
【0081】
(ステップS13)
ステップS12において室外熱交換器22に付着した霜を除去する必要があると判定した場合に、ステップS13においてCPUは、除霜モードで除霜運転のみを実行する。
ここで、除霜モードでは、圧力センサ50によって冷媒回路20における高圧側の圧力Pdに基づいて圧縮機21の回転数を制御し、室内送風機12の駆動を停止するとともに、第2及び第5電磁弁を閉鎖した状態を保持する。また、ステップS13においては、空調規制手段として、車室内の空調が必要な条件下においても、空調運転を行うことなく、除霜モードで除霜運転のみを行う。
また、除霜モードでは、ステップS12において室外熱交換器22に付着した霜を除去する必要があると判定した場合に、冷媒温度センサ47の検出温度Thexが所定温度よりも大きくなるまで、室外送風機22dの駆動を制限する。
【0082】
(ステップS14)
ステップS14においてCPUは、除霜運転を行っている旨の表示を表示部53に行い、運転切替制御処理を終了する。
【0083】
(ステップS15)
ステップS12において室外熱交換器22に付着した霜を除去する必要があると判定しなかった場合に、ステップS15においてCPUは、空調判定手段として、車室内の空調が必要であるか否かを判定する。車室内の空調が必要であると判定した場合にはステップS16に処理を移し、車室内の空調が必要であると判定しなかった場合にはステップS18に処理を移す。
ここで、車室内の空調が必要であるか否かは、搭乗者によって設定された設定温度Tsetと内気温度センサ42によって検出された温度Trとの差異や、内気湿度センサ46によって検出された湿度Rhに基づいて判定される。
【0084】
(ステップS16)
ステップS15において車室内の空調が必要であると判定した場合に、ステップS16においてCPUは、バッテリ冷却運転を行うことなく空調運転のみを行う空調単独モードで空調運転のみを行う。
ここで、空調単独モードでは、冷却空気温度センサ44によって検出される空気の温度Teが目標冷却空気温度TEOとなるように圧縮機21の回転数を制御し、第5電磁弁26eを閉鎖した状態を保持する。
【0085】
(ステップS17)
ステップS17においてCPUは、空調運転のみを行う空調単独運転を行っている旨の表示を表示部53に行い、ステップS20に処理を移す。
【0086】
(ステップS18)
ステップS15において車室内の空調が必要であると判定しなかった場合に、ステップS18においてCPUは、空調運転、バッテリ冷却運転及び除霜運転を停止し、ステップS19に処理を移す。
ここで、空調運転、バッテリ冷却運転及び除霜運転の停止とは、室内送風機12及び圧縮機21の駆動を停止し、第2及び第5電磁弁26b,26eを閉鎖する。
【0087】
(ステップS19)
ステップS19においてCPUは、空調運転、バッテリ冷却運転及び除霜運転を停止している旨の表示を表示部53に行い、運転切替制御処理を終了する。
【0088】
(ステップS20)
ステップS20においてCPUは、放熱器15における放熱量が不足しているか否かを判定する。放熱器15における放熱量が不足していると判定した場合にはステップS21に処理を移し、放熱器15における放熱量が不足していると判定しなかった場合にステップS22に処理を移す。
ここで、放熱器15における放熱量が不足しているとは、加熱空気温度センサ45によって検出された放熱器15において加熱された後の空気の温度Tcが目標加熱空気温度TCOよりも所定温度α低い状態が所定時間継続している状態である。
【0089】
(ステップS21)
ステップS20において放熱器15における放熱量が不足していると判定した場合に、ステップS21においてCPUは、不足熱量補償手段として、空気加熱ヒータ16を駆動し、運転切替制御処理を終了する。
【0090】
(ステップS22)
ステップS20において放熱器15における放熱量が不足していると判定しなかった場合に、ステップS22においてCPUは、空気加熱ヒータ16の駆動を停止し、運転切替制御処理を終了する。
【0091】
このように、本実施形態の車両用空気調和装置によれば、バッテリBの冷却が必要と判定されるとともに、室外熱交換器22の除霜が必要と判定された場合に、第1バッテリ冷却モード、第2バッテリ冷却モードまたはバッテリ冷却単独モードで運転を行う。
【0092】
これにより、バッテリ冷却運転によってバッテリBの冷却と同時に室外熱交換器22に付着した霜を融解させることができるので、バッテリ冷却運転と除霜運転をそれぞれ別個に行う場合と比較して消費電力量の低減を図ることが可能となる。
【0093】
また、バッテリBの冷却が必要と判定されるとともに、室外熱交換器22の除霜が必要と判定され、車室内の温度または湿度の調整が必要であると判定された場合に、第1バッテリ冷却優先モードまたは第2バッテリ冷却優先モードで運転を行う。
【0094】
これにより、バッテリ冷却運転及び空調運転によってバッテリBの冷却及び車室内の空調と同時に室外熱交換器22に付着した霜を融解させることができるので、除霜運転を単独で行う場合と比較して消費電力量の低減を図ることが可能となる。
【0095】
また、車室内の空調及びバッテリBの冷却を行っている状態で、放熱器15における放熱量が不足する場合に、不足する放熱量を空気加熱ヒータ16によって補う。
【0096】
これにより、車室内に供給する空気を必要な温度まで確実に加熱することが可能となる。
【0097】
また、車室内の除湿の必要がないと判定された場合に、第2バッテリ冷却優先モードにおいて、放熱器15から放出される熱、または、放熱器15及び空気加熱ヒータ16から放出される熱によって車室内の暖房を行う。
【0098】
これにより、冷媒を吸熱器14において吸熱させることなく熱媒体熱交換器24においてのみ吸熱させることが可能となるので、バッテリBを確実に冷却することが可能となる。
【0099】
また、バッテリBが充電中であると判定された状態で、バッテリBの冷却が必要と判定されず、室外熱交換器22の除霜が必要と判定されるとともに、車室内の空調の温度または湿度の調整が必要であると判定された場合に、車両の走行前に車室内の温度及び湿度を調整するプレ空調としての空調運転を実行することなく、室外熱交換器22の除霜を行う。
【0100】
これにより、室外熱交換器22の除霜を優先することによって、車両が走行を開始する前に室外熱交換器22に付着した霜を確実に除去することが可能となるので、車両の走行時における搭乗者の快適性を向上させることが可能となる。
【0101】
また、吸熱器14の冷媒流通方向上流側には、冷媒流通路20eを開閉する第2電磁弁26bと、冷媒流通路20eを流通する冷媒を減圧する第2膨張弁25bと、が接続され、第1及び第2バッテリ冷却優先モードでの吸熱器14において冷却される空気の温度Teは、第2電磁弁26bの全開と全閉との切り替えによって制御される。
【0102】
これにより、第2電磁弁26bの切り替えのみで吸熱器14において冷却される空気の温度Teを制御することができ、温度Teの制御が簡単な構成となるので、製造コストの低減を図ることが可能となる。
【0103】
また、室外熱交換器22の除霜が必要と判定している状態で、第1及び第2バッテリ冷却優先モード、バッテリ冷却単独モード及び除霜モードで運転する際に、冷媒温度センサ47の検出温度Thexが所定温度よりも大きくなるまで、室外送風機22dの駆動を制限する。
【0104】
これにより、室外送風機22dを駆動する場合と比較して室外熱交換器22に付着した霜の融解を短時間で行うことが可能となる。
【0105】
また、除霜モードでの除霜運転は、バッテリBが充電中であると判定した場合、または、車両のキースイッチがオフの状態で実行される。
【0106】
これにより、室外熱交換器22の除霜が、車室内に搭乗者が搭乗していない状態で行われるので、搭乗者が搭乗している車両の走行中に車室内の温度及び湿度の調整ができない状態となることがない。
【0107】
また、室外熱交換器22の除霜、車室内の空調及びバッテリの冷却に関する情報を報知する表示部53を備えている。
【0108】
これにより、車両用空気調和装置1の運転状態に関する正確な情報を使用者に報知することができるので、誤って機器が故障している判断が使用者によってなされることを防止することが可能となる。
【0109】
尚、前記実施形態では、第1バッテリ冷却優先モードにおいて、吸熱器14によって冷却される空気の温度Teの制御を、機械式の第2膨張弁25bの冷媒流通方向上流側に設けられた第2電磁弁26bの開度の全開と全閉との切り替えによって行うものを示したが、これに限られるものではない。例えば、機械式の第2膨張弁25bと第2電磁弁26bの代りに、吸熱器14の冷媒流通方向上流側に弁開度が可変の電子膨張弁を設け、バッテリ冷却優先モードにおいて、吸熱器14によって冷却される空気の温度Teの制御を、電子膨張弁の弁開度の調整によって行ってもよい。
【0110】
また、前記実施形態では、第1バッテリ冷却優先モードにおいて、吸熱器14によって冷却される空気の温度Teの制御を、第2電磁弁26bの全開と全閉との切り替えによって行うものを示したが、第2電磁弁26bの全開と全閉の切り替えに限られるものではない。例えば、電磁弁の弁開度の全開及び全閉を除く異なる二種類の弁開度を互いに切り替えることによって吸熱器14によって冷却される空気の温度Teの制御を行ってもよい。
【0111】
また、前記実施形態では、空調運転及びバッテリ冷却運転のそれぞれの運転状態を表示部53に表示することによって、空調運転及びバッテリ冷却運転のそれぞれの運転状態を搭乗者に報知するようにしたものを示したが、これに限られるものではない。例えば、スピーカからの音声によって、空調運転及びバッテリ冷却運転のそれぞれの運転状態を搭乗者に報知するようにしてもよい。
【0112】
また、前記実施形態では、熱媒体回路30を流通する熱媒体を介して、冷媒回路20を流通する冷媒によってバッテリBを冷却するものを示したが、これに限られるものではない。例えば、冷媒回路20を流通する冷媒によって直接的にバッテリBを冷却するようにしてもよい。
【0113】
また、前記実施形態では、空気加熱ヒータ16を、空気流通路11における放熱器15の冷媒流通方向下流側に配置し、放熱器15において加熱した後の空気を空気加熱ヒータ16によって加熱するようにしたものを示したが、これに限られるものではない。空気加熱ヒータは、空気流通路11における放熱器15の冷媒流通方向上流側に配置し、放熱器15において加熱される前の空気を空気加熱ヒータによって加熱するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0114】
1…車両用空気調和装置、11…空気流通路、14…吸熱器、15…放熱器、16…空気加熱ヒータ、20…冷媒回路、21…圧縮機、22…室外熱交換器、22d…室外送風機、24…熱媒体熱交換器、25b…第2膨張弁、25c…第3膨張弁、26b…第2電磁弁、26e…第5電磁弁、30…熱媒体回路、40…コントローラ、47…冷媒温度センサ、53…表示部、B…バッテリ。