(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】ミキサーアセンブリ及び歯科材料を分注するための装置
(51)【国際特許分類】
B01F 25/42 20220101AFI20220412BHJP
A61C 5/64 20170101ALI20220412BHJP
A61C 19/00 20060101ALI20220412BHJP
【FI】
B01F5/00 F
A61C5/64
A61C19/00 C
(21)【出願番号】P 2019515401
(86)(22)【出願日】2017-09-19
(86)【国際出願番号】 US2017052241
(87)【国際公開番号】W WO2018057503
(87)【国際公開日】2018-03-29
【審査請求日】2020-09-18
(32)【優先日】2016-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ベーム
【審査官】塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05443183(US,A)
【文献】特開昭63-287535(JP,A)
【文献】特開2002-253941(JP,A)
【文献】特表2011-507573(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 21/00-25/90
A61C 5/64
A61C 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合チャネルを形成するハウジングと、前記混合チャネル内に配置された静的混合要素と、を備えるミキサーアセンブリであって、
物質の2種の成分を受け入れるための入口端と、前記成分の混合物を分注するための分注端とを更に有し、
前記入口端は、各成分ごとに1つの入口と、関連する逆止弁とを備え、
前記の各入口は、前記の各逆止弁を介して前記混合チャネルと流体連通して接続可能であり、
前記成分ごとに、第1端部において前記の各入口を形成し、第2端部において前記混合チャネルへのオリフィスを形成する各通路を更に備え、
前記の各通路は、前記入口と前記逆止弁との間に入口側ダクト、及び前記逆止弁と前記オリフィスとの間にミキサー側ダクトを有し、
前記逆止弁は、弾性フラップを備え、
前記弾性フラップは、前記入口側ダクト及び前記ミキサー側ダクトの共通する壁部分を形成
し、
前記入口端に隣接する前記ハウジングは2つの止まり穴を備え、前記の各弾性フラップが各止まり穴内に延びる、
ミキサーアセンブリ。
【請求項2】
前記の各逆止弁は、前記入口から前記分注端に向かう方向の前記成分の流れは許容するが、反対方向の流れは遮断する、請求項1に記載のミキサーアセンブリ。
【請求項3】
前記の各逆止弁は、前記の各入口と前記オリフィスとの間に配置されている、請求項1又は2に記載のミキサーアセンブリ。
【請求項4】
前記混合要素は1つの一体構造部品で形成されており、複数の混合パドルを備える、請求項1~3のいずれか一項に記載のミキサーアセンブリ。
【請求項5】
前記通路は、前記止まり穴によって画定される空間を前記弾性フラップが分割することで形成される、請求項1~4のいずれか一項に記載のミキサーアセンブリ。
【請求項6】
前記止まり穴は挿入軸に沿って延び、内向き階段状端面を有し、
前記階段状端面は、第1の部分端面と、第2の部分端面と、前記第1の部分端面と前記第2の部分端面との間の側方封止面とを有し、
前記側方封止面は前記挿入軸に対して略平行であり、
前記弾性フラップは前記側方封止面に当接し、
前記弾性フラップは前記側方封止表面から離れる方向に移動可能であり、
前記弾性フラップが前記側方封止表面に当接している第1の位置では、前記入口側ダクトと前記ミキサー側ダクトとは、互いに流体連通から分離されており、前記弾性フラップが前記側方封止表面から離れる方に湾曲している第2の位置では、前記入口側ダクトと前記ミキサー側ダクトとは、互いに流体連通して接続されている、請求項4又は5に記載のミキサーアセンブリ。
【請求項7】
前記ハウジングは前記入口端において、前記入口を取り囲む環状のスカートを形成し、
前記入口は、前記スカートの端部から、前記スカートによって画定される空間の内側の方向にオフセットされている、請求項1~6のいずれか一項に記載のミキサーアセンブリ。
【請求項8】
歯科材料を分注するための装置であって、
2種の成分を保持するための2つのチャンバを有するカートリッジを備え、
請求項1~7のいずれか一項に記載のミキサーアセンブリを備える、
装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミキサーアセンブリに関し、特に、ミキサーアセンブリ内で混合される構成成分のための、逆止弁下流に関連する入口を有するミキサーアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
歯科材料は、使用直前に混合される2種以上の構成成分から調製されることが多い。個々の構成成分は、大きなパッケージ、例えば、チューブ、袋、又はカートリッジからポーションとして得られることが多い。市場には、2種以上の構成成分を所望の量及び適切な混合比率で手動又は自動分注することができるパッケージがある。更に、すぐに混合される材料のポーションを、個々に保管された構成成分から分注することができるパッケージがある。
【0003】
二構成成分歯科用材料を保管及び混合するために二重バレルシリンジが用いられることが多い。このような二重バレルシリンジは、2つの並列バレルを典型的には有し、2つの並列バレルから、歯科材料の構成成分を、バレルにピストンを押し込むことにより押し出すことができる。複数回の歯科治療に十分な量の歯科材料を保管する二重バレルシリンジがある。これらシリンジのいくつかは、シリンジから押し出される際に2種の構成成分を混合するために、静的ミキサーを取り付けることができるように構成されている。典型的には、静的ミキサーは、使用後、シリンジに取り付けられたままであり、したがって、シリンジ内に保管された残りの歯科材料のためのクロージャとして機能する。このミキサーは、新たな歯科治療のために、同一種類の新たな静的ミキサーに交換される。
【0004】
国際出願PCT/US2016/037342号は、歯科材料の分注デバイスを開示している。このデバイスは静的ミキサーを有し、歯科材料を含む。デバイスは、2つの別々の構成成分の形態の歯科材料を保持するための2つのチャンバを有するカートリッジを有する。このデバイスは更に、歯科材料を混合要素に向かって移動させるためのプランジャを有する。
【0005】
既存のシリンジは特定の利点を提供するが、使用が簡単で、歯科材料の適切な混合品質を提供するシステムを設けることに対する需要が依然としてある。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、混合チャネルを形成するハウジングを備えるミキサーアセンブリに関する。ミキサーアセンブリは、混合チャネル内に配置された静的混合要素を更に備える。
【0007】
ミキサーアセンブリは、物質の少なくとも2種の構成成分を受け入れるための入口端と、構成成分の混合物を分注するための分注端とを有する。
【0008】
このようなミキサーアセンブリは、例えば、入口端に少なくとも一時的に連続的に供給される2種以上の構成成分を混合するために使用してもよい。ミキサーアセンブリは、構成成分が入口端から分注端に向かって流れる際に構成成分を混合させるように構成されていることが好ましい。特に、静的混合要素が配置された混合チャネル内を構成成分が流れる際、典型的には静的混合要素は構成成分を混合させる。
【0009】
入口端は、各構成成分ごとに、入口と関連する逆止弁とを備える。入口のそれぞれは、関連する逆止弁を介して混合チャネルと流体連通して接続可能である。
【0010】
本発明は、ミキサーアセンブリの外での、混合される構成成分間の望ましくない交差汚染の防止に役立つという点で有利である。これは、混合アセンブリ内に供給された構成成分が入口に逆流するのを阻止することによって達成される。更に、本発明は、混合すべき構成成分を保管するカートリッジを交換でき、交差汚染のリスクを最小限にするミキサーアセンブリを提供するという点で有利である。
【0011】
一実施形態では、逆止弁のそれぞれは、入口から混合チャネルに向かう方向の各構成成分の流れを可能にすることが好ましい。更に、逆止弁のそれぞれは、入口から混合チャネルに向かう方向の各構成成分の流れを遮断することが好ましい。したがって、各逆止弁は、典型的には、入口から出口端に向かう方向の構成成分の流れは可能にするが、反対方向の流れは遮断する。更に、逆止弁は、構成成分の流れの方向に対して、入口の下流に位置することが好ましい。
【0012】
一実施形態では、ミキサーアセンブリは、各構成成分ごとに通路を更に備え、この通路は、第1端部において各入口を形成し、第2端部において混合チャネルへのオリフィスを形成する。このため、好ましくは各通路は、各入口と各オリフィスとの間にチャネルを形成し、逆止弁は、入口からオリフィスに向かう方向での各構成成分の一方向の流れのみを許容にする。
【0013】
更なる実施形態では、逆止弁は、入口とオリフィスとの間に配置されている。したがって、逆止弁はミキサーアセンブリ内に配置されているため、ミキサーアセンブリは、例えば、使用後、逆止弁を含む新たなミキサーアセンブリと交換することができる。これは、逆止弁が、混合チャネルに達した1種以上の構成成分のいかなる部分も入口に逆流しないようにするという点で有利である。したがって、入口には、あらゆる構成成分、すなわち以前に混合チャンバに到達していた混ざり合った構成成分又は構成成分の混合物は存在しない。したがって、ミキサーアセンブリと組み合わせて使用されるカートリッジに保管された多量の構成成分を、構成成分の互いの交差汚染から防止することができる。
【0014】
一実施形態では、各通路は、入口と逆止弁との間に入口側ダクトを、逆止弁とオリフィスとの間にミキサー側ダクトを有する。入口側ダクト及びミキサー側ダクトは、通路の一部を更に構成する。
【0015】
更なる実施形態では、各逆止弁は弾性フラップを備える。フラップは、入口側ダクト及びミキサー側ダクトの壁部分を形成することが好ましい。したがって、構成成分中に形成された圧力がフラップを越えて流れ、フラップに力を掛け、フラップを偏向させることにより通路を開放する。好ましくは、通路は、フラップが所定の位置を越えて偏向するのを阻止するためのスペーサを有する。したがって、フラップは、通路が再閉鎖される極端な位置へと偏向することが阻止される。通路は、好ましくは略U字形であり、入口側ダクト及び出口側ダクトがU字の脚を形成する。当業者であれば、逆止弁の代替的な構成を認識するであろう。
【0016】
一実施形態では、混合要素は1つの一体構造部品に形成されており、複数の混合パドルと少なくとも2つのフラップとを備える。混合パドルは、一列に連続して配置されていることが好ましい。混合要素は、入口を更に備えることが好ましい。好ましくは、混合要素は閉鎖板を備え、混合パドルの列が閉鎖板の第1の側から延びる。各入口は、閉鎖板を通って延びる入口チャネルを形成することが好ましい。好ましくは、各入口は、入口チャネルが中を引き続き通って延びるコネクタソケットを更に備え、コネクタソケットは第1の側とは反対側の、閉鎖板の第2の側から突出する。コネクタソケットは、外向き円筒形状を有してもよい。このコネクタソケットは、カートリッジの関連する出口に受け入れることができる。混合要素は、閉鎖板の第1の側から突出した第1及び第2のプラグを有することが好ましい。第1及び第2のプラグは、略半月形の断面を有してもよい。
【0017】
一実施形態において、入口端に隣接するハウジングは、少なくとも2つの止まり穴を備える。フラップのうちの1つが各止まり穴内に延びることが好ましい。止まり穴は、ミキサーアセンブリの入口端に配置された凹部の一部を形成することが好ましい。混合要素の閉鎖板は凹部を閉鎖することが好ましい。凹部は、混合チャネルの端部と閉鎖板との間に空間が設けられるような寸法である。したがって、その空間内の各入口を通って(及び更に逆止弁を通って)流れる構成成分は、混合チャネルに流れることができる。混合要素及び凹部は、混合チャネルと閉鎖板との間の空間が各構成成分のためのオリフィスを画定するような形状であることが好ましい。
【0018】
一実施形態では、各通路は、止まり穴によって画定される空間をフラップが分割することで形成される。特に、止まり穴は、好ましくは、挿入軸に沿って延び、内向き階段状端面を有してもよい。階段状端面は、第1の部分端面と、第2の部分端面と、第1の部分端面と第2の部分端面との間の側方封止面とを有してもよい。側方封止面は挿入軸に略平行であってもよい。側方封止面は平面であってもよい。フラップは階段の側方封止面に当接することが好ましい。フラップは、側方封止表面から離れる方向に移動可能であることが好ましい。更に、フラップが側方封止表面に当接している第1の位置では、入口側とミキサー側ダクトは、互いに流体連通から分離されており、フラップが側方封止表面から離れる方に曲がっている又は偏向している第2の位置では、入口側ダクトとミキサー側ダクトは、互いに流体連通して接続されている。
【0019】
一実施形態では、ハウジングは入口端において、入口を取り囲む環状スカートを形成している。入口は、スカートの端部から、スカートによって画定される空間の内側の方向にオフセットされていることが好ましい。スカートは、2種の構成成分を保管するカートリッジ上に端部を受け入れるように構成していてもよい。このようなカートリッジは、各構成成分ごとにそれぞれ1つの出口を有してもよい。
【0020】
更なる態様では、本発明は、歯科材料を分注するためのデバイスに関する。デバイスは、2種の構成成分を保持するための少なくとも2つのチャンバを有するカートリッジを備えてもよい。デバイスは、本発明によるミキサーアセンブリを更に含んでもよい。ミキサーアセンブリは、カートリッジに着脱可能に取り付けてもよい。特に、混合アセンブリは、ミキサーアセンブリの入口をカートリッジの出口と接続するようにカートリッジに取り付けてもよい。カートリッジは、カートリッジの出口を選択的に開閉するためのバルブを有してもよい。このようなバルブは、回転可能なバルブ部材を有するロータリースライドバルブであってもよい。回転可能なバルブ部材は、ミキサーアセンブリをカートリッジに対して回転させることによってバルブを開閉することができるように、ミキサーアセンブリと係合可能であってもよい。デバイスは、各チャンバ内に配設されたピストンを有してもよい。ピストンは、構成成分を混合するためにミキサーアセンブリに向かって付勢するために用いることができる。ピストンは、各プランジャに接続してもよく又は接続可能であってもよい。プランジャは、共通の推力受け板又は指板に接続してもよい。
【0021】
カートリッジは、歯科材料、特に、硬化可能な歯科材料の構成成分を含んでもよい。歯科材料は、個々の構成成分の混合の結果、硬化するように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態による、歯科材料を分注するためのデバイスの斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態で使用される混合要素の側面図である。
【
図3】第1の動作段階における、本発明の一実施形態による混合アセンブリの断面図である。
【
図4】第2の動作段階における、
図3に示される混合アセンブリの断面図である。
【
図5】
図3に示される混合アセンブリの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、歯科材料を分注するためのデバイス1を示す。デバイス1は、ミキサーアセンブリ100と、カートリッジ20と、プランジャ30とを有する。カートリッジ20は、2種の構成成分の形態の歯科材料を別々に保管するための2つのチャンバ(この図では見えない)を形成する。プランジャ30は、2種の構成成分をミキサーアセンブリ100に向かって移動させるための2つのプランジャロッド31、32を有する。ミキサーアセンブリ100は、ミキサーアセンブリ100の分注端104に分注開口部11を形成している。デバイス1は歯科材料を分注するために手で作動することができる。このため、デバイス1は、カートリッジ20に配置された指板23と、プランジャ30の後端を形成している圧力板33とを有する。この例の指板23はカートリッジ20の後端に配置されている。本発明は、手動デバイスに限定されないことに留意されたい。むしろ、記載されるミキサーアセンブリ100は、同様に、分注銃又はモータ駆動式分注装置において動作する適切なカートリッジとともに使用してもよい。
【0024】
ミキサーアセンブリ100はカートリッジ20の前端に受け入れられる。ミキサーアセンブリ100とカートリッジ20は互いに相対的に回転可能である。特に、ミキサーアセンブリ100とカートリッジ20とを組み合わせることで、カートリッジ20のチャンバを選択的に開閉するためのロータリーバルブを形成する。したがって、ミキサーアセンブリ100とカートリッジ20は、チャンバが閉鎖する閉位置と、チャンバがミキサーアセンブリ100と流体連通する開位置との間で互いに相対的に回転させることができる。
【0025】
開位置においてプランジャ30を前方に(ミキサーアセンブリ100に向かう方向に)動かすと歯科材料の個々の構成成分がミキサーアセンブリ100を通って流れる。ミキサーアセンブリ100は、歯科材料の構成成分がミキサーアセンブリ100を通って流れる際にこれらを混合させる静的混合要素(この図では見えない)を有する。このため、歯科材料は2種の構成成分の混合物の形態で分注開口部11から分注される。
【0026】
図2は、
図1に示されるミキサーアセンブリ100内に配置された静的混合要素40を示す。静的混合要素40は、長手方向軸Aに沿って配置された一連の混合パドル41を有する。各混合パドル41は螺旋形状又は螺旋体に基づく。このような螺旋混合パドルの構造は、反対側の両端を保持されて、180度ねじった又は巻いた平坦な材料シートであると基本的に想定することができるが、このような構造の製造には他の方法(例えば、射出成形)が典型的には使用される。このような混合パドル41の全体的な外形は円柱螺旋に基づく。混合パドルは、典型的には、2種の構成成分で形成された材料のストランドを分割し、再結合させ、混合アセンブリ100を通して流すことによって構成成分を混合させる。混合パドル41は、典型的には右巻き又は左巻きであり、これは、混合パドル41が基にする螺旋の巻き方向が異なることを意味する。右巻き及び左巻き混合パドル41は、典型的には、長手方向軸Aに沿って交互の順序で連続的に配置されている。
【0027】
この例の混合パドル41は、1.5mm~1.6mmの外径Dを有する。更に、各混合パドル41は、0.6mm~1.2mm、好ましくは0.78mmの長さLを有する。直径D及び長さLは、静的混合要素40の全ての混合パドル41において同一であることが好ましい。
【0028】
図3は、ミキサーアセンブリ100をより詳細に示す。ミキサーアセンブリ100は、混合チャネル102を形成するハウジング101を有する。混合チャネルを形成しているハウジング101の部分は中空の円筒形管である。静的混合要素40は混合チャネル102内に配置されている。特に、静的混合要素の混合パドル41(静的混合要素40の前部によって形成される)は混合チャネル102内に配置されている。
【0029】
ミキサーアセンブリ100は、例えば、
図1に示されるカートリッジから2種の構成成分を受け入れるための入口端103を有する。ミキサーアセンブリ100は、構成成分を混合した混合物を分注するための分注端104を更に有する。入口端103は、第1の入口110a及び第2の入口110bを備える。入口端103は、第1の入口110aに関連する第1の逆止弁105aと、第2の入口110bに関連する第2の逆止弁105bとを更に備える。第1の入口110a及び第2の入口110bは静的混合要素40の後部によって形成されている。静的混合要素40の後部は混合チャネル102の外側に配置されている。特に、ハウジング101は入口端103に凹部106を備える。静的混合要素40の閉鎖板116は、凹部106を封止するように、ハウジング101に配置されている。静的混合要素40を位置決めし、保持するために、第1及び第2のプラグ119a、119bが閉鎖板116に設けられている。第1及び第2のプラグ119a、119bは閉鎖板から混合パドル41と同一方向に突出し、凹部106内に摩擦嵌合によって受け入れられている。第1の入口110a及び第2の入口110bは、(そうでなければ封止されている)凹部106と流体連通する。更に、凹部106(又は凹部106の少なくとも一部)は、混合チャネル102と流体連通する(図示されている状況では、閉鎖板116はハウジング101を封止している)。混合要素40は、第1の弾性フラップ115a及び第2の弾性フラップ115bを更に有し、そのそれぞれは、閉鎖板116から凹部106へと突出している。凹部106は第1の止まり穴106a及び第2の止まり穴106bを形成し、第1の止まり穴106a及び第2の止まり穴106b内に、第1のフラップ115a及び第2のフラップ115bがそれぞれ延びる。第1の止まり穴106aは関連する第1のフラップ115aと組み合わせて第1の通路107aを形成し、第2の止まり穴106bは関連する第2のフラップ115bと組み合わせて第2の通路107bを形成する。第1の通路107a及び第2の通路107bのそれぞれは、それぞれ第1の入口側ダクト108a及び第2の入口側ダクト108bと、それぞれミキサー側ダクト109a、109bとを有する。第1の入口側ダクト108a及び第2の入口側ダクト108bのそれぞれは、それぞれ第1の入口110a及び第2の入口110bと流体連通する。第1のミキサー側ダクト109a及び第2のミキサー側ダクト109bは、それぞれ混合チャネル102への第1のオリフィス117a及び第2のオリフィス117bと流体連通する。
図3に示される状況では、第1の入口側ダクト108aと第1のミキサー側ダクト109aは第1の逆止弁105aによって互いに流体連通から分離されている。更に、第2の入口側ダクト108bと第2のミキサー側ダクト109bは第2の逆止弁105bによって互いに流体連通から分離されている。
【0030】
第1の逆止弁105a及び第2の逆止弁105bはそれぞれ、ハウジング101を第1のフラップ115a及び第2のフラップ115bと組み合わせることで形成されている。特に、第1の止まり穴106aを形成しているハウジング101の壁部分は、第1の入口側ダクト108aと第1のミキサー側ダクト109aとの間の移行部に第1の開放ゲートを形成し、第1の開放ゲートは第1のフラップ115aによって開放自在に閉鎖される。同様に、第2の止まり穴106bを形成しているハウジング101の壁部分は第2の入口側ダクト108bと第2のミキサー側ダクト109bとの間の移行部に第2の開放ゲートを形成し、第2の開放ゲートは第2のフラップ115bによって開放自在に閉鎖される。
【0031】
第1の止まり穴106a及び第2の止まり穴106bのそれぞれは、挿入軸Iに沿って延びている。第1の止まり穴106a及び第2の止まり穴106bのそれぞれは、それぞれ第1及び第2の内向き階段状端面111a、111bを形成する。この例では、第1の端面111aは、第1の部分端面112aと、第2の部分端面113aと、側方封止面114aとを有する。第1のフラップ115aは第1の位置において、側方封止面111aに当接する。更に、第2の端面111bは、第1の部分端面112bと、第2の部分端面113bと、側方封止面114bとを有する。第2のフラップ115bは第1の位置において、側方封止面111bに当接する。第1の位置において、側方封止表面114a、114bは、第1のミキサー側ダクト109a及び第2のミキサー側ダクト109bから第1の入口側ダクト108a及び第2の入口側ダクト108bに向かう構成成分の流れの方向における、それぞれ第1のフラップ115a及び第2のフラップ115bの動きを妨げる。したがって、第1の位置から、第1のミキサー側ダクト109aから第1の入口側ダクト108aに向かう構成成分の流れ、及び第2の入口側ダクト108bに向かう第2のミキサー側ダクト109bの流れが阻止される。図示される状況では、第1のフラップ115a及び第2のフラップ115bは、側方封止面114a、114bに向かって偏向するために、予張力が掛けられていても掛けられていなくてもよい。例えば、第1のフラップ115a及び第2のフラップ115bは、第1のフラップ115a及び第2のフラップ115bにいかなる(少なくとも顕著な)予張力も掛からないように、図示されるような状態で射出成形してもよく、又は第1のフラップ115a及び第2のフラップ115bが、第1のフラップ115a及び第2のフラップ115bの材料及び構造により与えられる自然な復帰力によって側方封止面114a、114bに向かって付勢されるように、混合要素40とハウジング101との組み立て前に湾曲された形状で射出成形してもよい。
【0032】
第1の位置において、側方封止表面114a、114bは、第1のミキサー側ダクト109a及び第2のミキサー側ダクト109bから第1の入口側ダクト108a及び第2の入口側ダクト108bに向かう構成成分の流れの方向における、第1のフラップ115a及び第2のフラップ115bのあらゆる動きを停止させるが、第1の入口側ダクト108a及び第2の入口側ダクト108bから第1のミキサー側ダクト109a及び第2のミキサー側ダクト109bに向かう構成成分の流れの方向における、それぞれ第1のフラップ115a及び第2のフラップ115bの動きは許容する。したがって、第1の位置から、第1のフラップ115aは、第1の側方封止表面114aから離れる方に湾曲することができ、第1のゲートを開き、それにより、第1の入口側ダクト108aから第1のミキサー側ダクト109aに向かう構成成分の流れを可能にする。更に、第1の位置から、第2のフラップ115bは、第2の側方封止表面114bから離れる方に湾曲することができ、第2のゲートを開き、第2の入口側ダクト108bから第2のミキサー側ダクト109bに向かう構成成分の流れを可能にする。
【0033】
図4は、第1のフラップ115a及び第2のフラップ115bが第2の位置にあるミキサーアセンブリ100を示す。この第2の位置では、第1のフラップ115a及び第2のフラップ115bが各側方封止表面114a、114bから離れる方に湾曲されている。第1のフラップ115a及び第2のフラップ115bは、第1のフラップ115a及び第2のフラップ115bの材料及び構造により与えられる自然な復帰力に抗して第2の位置に付勢されている。このことは、好ましくは、第1のフラップ115a及び第2のフラップ115bは第1の位置に関連する形状に対応する形状で設けられており、第1のフラップ115a及び第2のフラップ115bを、第2の位置に関連する形状に対応する形状に偏向するためには力が必要であることを意味する。更に、このため、第1のフラップ115a及び第2のフラップ115bもまた、第1のフラップ115a及び第2のフラップ115bの材料及び構造により与えられる自然な復帰力によって、第1の位置へと典型的には復帰する。第1のフラップ115a及び第2のフラップ115bを偏向させる又は曲げるための力は、第1の入口側ダクト108a及び第2の入口側ダクト108bからそれぞれ第1のミキサー側ダクト109a及び第2のミキサー側ダクト109bに向かう方向に付勢されて流れる構成成分によって典型的には与えられる。このような構成成分の流れは、第1及び第2の矢印118a、118bによって示される。流れを反転させるべき場合、逆流が、相応に、第1のフラップ115a及び第2のフラップ115bを第2の位置から第1の位置にリセットさせ、これにより第1の通路107a及び第2の通路107bが遮断され、かくて逆流は、第1の位置が確立するとすぐに阻止される。したがって、第1の入口110a及び第2の入口110bの領域における構成成分間のあらゆる交差汚染を防止することができる。構成成分の逆流は、例えば、カートリッジ20から混合アセンブリ100を取り外した結果、例えば、第1の入口110a及び第2の入口110bをカートリッジ20に設けられた各出口から取り外す最中に真空が発生することにより発生する可能性があることが認められている。更に、交差汚染は、2種の構成成分を混合アセンブリ100に向かって非同時的に付勢することにより、又は2種の構成成分間の温度の相違又は粘度差の結果として発生する可能性がある。本発明では、このような交差汚染は回避することができる。このため、硬化可能な材料、例えば、歯科材料の調製に使用した場合、カートリッジに保管された個々の構成成分を交差汚染から効果的に保護することができる。したがって、カートリッジ内の構成成分の保管寿命を最大化することができる。
【0034】
図5は、第1のフラップ115a及び第2のフラップ115bが第1の位置にあるミキサーアセンブリ100の断面図を示す。ハウジング101は、第1の止まり穴106a及び第2の止まり穴106b内に、特に、それぞれ第1のミキサー側ダクト109a及び第2のミキサー側ダクト109b内に配置された第1及び第2のスペーサ120a、120bを有する。第1及び第2のスペーサ120a、120bは、第1のフラップ115a及び第2のフラップ115bの第2の位置における第1のフラップ115a及び第2のフラップ115bの移動を制限し、第1のフラップ115a及び第2のフラップ115bが第2の位置にある第1のミキサー側ダクト109a及び第2のミキサー側ダクト109bを閉じるのを阻止する。図示されるように、第1及び第2のスペーサ120a、120bは、第1のフラップ115a及び第2のフラップ115bの第2の位置において構成成分の流路(参照番号121a、121bとして示される)を維持する。
なお、以上の各実施形態に加えて以下の態様について付記する。
(付記1)
混合チャネルを形成するハウジングと、前記混合チャネル内に配置された静的混合要素と、を備えるミキサーアセンブリであって、
物質の2種の成分を受け入れるための入口端と、前記成分の混合物を分注するための分注端とを更に有し、
前記入口端は、各成分ごとに1つの入口と、関連する逆止弁とを備え、
前記入口のそれぞれは、前記関連する逆止弁を介して前記混合チャネルと流体連通して接続可能である、
ミキサーアセンブリ。
(付記2)
各逆止弁は、前記入口から前記出口端に向かう方向の前記成分の流れは許容にするが、反対方向の流れは遮断する、付記1に記載のミキサーアセンブリ。
(付記3)
各成分ごとに、第1端部において前記各入口を形成し、第2端部において前記混合チャネルへのオリフィスを形成する通路を更に備える、付記1又は2に記載のミキサーアセンブリ。
(付記4)
前記逆止弁は、前記入口と前記オリフィスとの間に配置されている、付記3に記載のミキサーアセンブリ。
(付記5)
前記通路は、前記入口と前記逆止弁との間に入口側ダクト、及び前記逆止弁と前記オリフィスとの間にミキサー側ダクトを有する、付記3又は4に記載のミキサーアセンブリ。
(付記6)
前記逆止弁は弾性フラップを備える、付記5に記載のミキサーアセンブリ。
(付記7)
前記フラップは、前記入口側ダクト及び前記ミキサー側ダクトの壁部分を形成する、付記5又は6に記載のミキサーアセンブリ。
(付記8)
前記混合要素は1つの一体構造部品で形成されており、複数の混合パドルと2つのフラップとを備える、付記6又は7に記載のミキサーアセンブリ。
(付記9)
前記混合要素は前記入口を更に備える、付記8に記載のミキサーアセンブリ。
(付記10)
前記入口端に隣接する前記ハウジングは2つの止まり穴を備え、前記フラップのうちの1つが各止まり穴内に延びる、付記6~9のいずれか一項に記載のミキサーアセンブリ。
(付記11)
前記通路は、前記止まり穴によって画定される空間を前記フラップが分割することで形成される、付記9に記載のミキサーアセンブリ。
(付記12)
前記止まり穴は挿入軸に沿って延び、内向き階段状端面を有し、
前記階段状端面は、第1の部分端面と、第2の部分端面と、前記第1の部分端面と前記第2の部分端面との間の側方封止面とを有し、
前記側方封止面は前記挿入軸に対して略平行であり、
前記フラップは階段の前記側方封止面に当接する、付記6~11のいずれか一項に記載のミキサーアセンブリ。
(付記13)
前記フラップは前記側方封止表面から離れる方向に移動可能であり、
前記フラップが前記側方封止表面に当接している第1の位置では、前記入口側ダクトと前記ミキサー側ダクトとは、互いに流体連通から分離されており、前記フラップが前記側方封止表面から離れる方に湾曲している第2の位置では、前記入口側ダクトと前記ミキサー側ダクトとは、互いに流体連通して接続されている、付記12に記載のミキサーアセンブリ。
(付記14)
前記ハウジングは前記入口端において、前記入口を取り囲む環状のスカートを形成し、
前記入口は、前記スカートの端部から、前記スカートによって画定される空間の内側の方向にオフセットされている、付記1~13のいずれか一項に記載のミキサーアセンブリ。
(付記15)
歯科材料を分注するための装置であって、
2種の成分を保持するための2つのチャンバを有するカートリッジを備え、
付記1~14のいずれか一項に記載のミキサーアセンブリを備える、
装置。