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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】ユニット建物
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/348 20060101AFI20220412BHJP
【FI】
E04B1/348 G
E04B1/348 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017211079
(22)【出願日】2017-10-31
(65)【公開番号】P2019082079
(43)【公開日】2019-05-30
【審査請求日】2020-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】冨安 正史
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-336752(JP,A)
【文献】特開平10-061022(JP,A)
【文献】特開平11-117399(JP,A)
【文献】特開2001-090199(JP,A)
【文献】特開平08-302821(JP,A)
【文献】特開2011-179308(JP,A)
【文献】特開2006-028790(JP,A)
【文献】特開2013-091975(JP,A)
【文献】特開平05-086650(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/348
E04B 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物本体の上部を構成し、第1屋根部に第1カット面を有すると共に下側に配置された下階ユニットに対して立面でセットバックされたカットユニットと、
前記下階ユニットと前記カットユニットを含んで形成されたセットバック部と、
を備え、
前記セットバック部に設けられ、室内空間を形成する壁部と、
前記セットバック部に設けられ、前記壁部及び前記第1屋根部の水平面と繋がる第2カット面と、前記第2カット面と前記壁部と前記第1カット面と繋がる第3カット面と、を含んで構成された第2屋根部と、
を有し、
前記第3カット面を有する屋根パネルは、前記第1カット面を有する屋根パネル及び前記第2カット面を有する屋根パネルに対して斜め梁を用いることなく結合されているユニット建物。
【請求項2】
前記第2屋根部の第2カット面は、前記カットユニットの第1カット面よりも起立している請求項1に記載のユニット建物。
【請求項3】
前記壁部は、前記カットユニットの床部から張り出したキャンチ床に支持されている請求項1又は請求項2に記載のユニット建物。
【請求項4】
前記カットユニットに隣接して標準ユニットが設けられ、
前記壁部は当該カットユニット及び前記標準ユニットに亘って設けられ、当該壁部側に位置して前記カットユニットと前記標準ユニットとで互いに隣接する柱部が取除かれている請求項1~請求項3の何れか1項に記載のユニット建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユニット建物に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、ユニット建物の屋根部において、水平面に対して傾斜するカット面が形成されたユニット構造に関する技術が開示されている。この先行技術では、屋根部において、3本の短寸法の柱が用いられており、カット面が2面形成されている。これにより、2面の斜線規制が対応可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許2634716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記先行技術では、カット面を形成するために、柱及び水平梁に対して斜め梁が3次元的に配置され接合されている。このため、各部材間の接合作業が難しくなる。
【0005】
本発明は上記問題を考慮し、簡単な構造で2面の斜線規制の対応が可能なユニット建物を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、第1の態様に係るユニット建物は、建物本体の上部を構成し、第1屋根部に第1カット面を有すると共に下側に配置された下階ユニットに対して立面でセットバックされたカットユニットと、前記下階ユニットと前記カットユニットを含んで形成されたセットバック部と、を備え、前記セットバック部に設けられ、室内空間を形成する壁部と、前記セットバック部に設けられ、前記壁部及び前記第1屋根部の水平面と繋がる第2カット面と、前記第2カット面と前記壁部と前記第1カット面と繋がる第3カット面と、を含んで構成された第2屋根部と、を有している。
【0007】
第1の態様に係るユニット建物では、建物本体の上部を構成するカットユニットは、第1屋根部に第1カット面を有すると共に下側に配置された下階ユニットに対して立面でセットバックされている。当該下階ユニットとカットユニットを含んで形成されたセットバック部には、壁部と第2屋根部が設けられており、壁部及び第2屋根部によって室内空間が形成されると共に、壁部及び第1屋根部の水平面と繋がる第2屋根部によって第2カット面が形成されている。
【0008】
そして、セットバック部の第2屋根部は、第2カット面と第3カット面とを含んで構成されており、カットユニットの第1屋根部の第1カット面とセットバック部の第2屋根部の第2カット面とが、第2屋根部の第3カット面によって繋がるようになっている。
【0009】
つまり、このユニット建物の屋根部(第1屋根部、第2屋根部)では、第1カット面と第2カット面及び第3カット面が形成されることとなり、ユニット建物の2面において斜線規制の対応が可能となる。
【0010】
比較例として、例えば、第1屋根部の第1カット面と第2屋根部の第2カット面とを互いに接合させるために、柱と水平梁とを接合する斜め梁を用いた場合、第1カット面と第2カット面を3次元的に接合させることとなり、各部材間の接合作業が難しくなる。
【0011】
これに対して、本態様では、カットユニットや標準ユニット等の建物ユニットとは別にセットバック部において別途壁部と第2屋根部とで室内空間を作っている。つまり、本態様では、ユニットを形成する柱及び水平梁を用いることなく、いわゆる屋根パネルでの接合が可能であり、柱と水平梁とを3次元で接合するための斜め梁は不要となる。
【0012】
したがって、本態様では、簡単な構造で、ユニット建物の屋根部(第1屋根部、第2屋根部)に第1カット面、第2カット面、第3カット面が形成されることとなり、建物ユニット自体の生産性を損なうことはなく、作業性が良い。
【0013】
ここで、「第1カット面」、「第2カット面」とは、道路斜線や北側斜線の斜線規制等に対応するため、屋根部に形成され水平面に対して傾斜した面のことである。また、「下階ユニット」は、カットユニットが2階の場合、1階部分を構成するユニットとなり、カットユニットが3階の場合は、2階部分を構成するユニットとなる。さらに、「立面」は、妻面側(短辺側)の面であってもよいし、桁面側(長辺側)の面であってもよい。
【0014】
なお、本態様における「標準ユニット」は、ユニットの屋根部にカット面が設けられたカットユニットに対して、当該カット面が設けられていない略箱形を成すユニット全般を指すものである。このため、例えば、補強梁を備えることにより一部の柱をなくしたユニットやバスユニットが設けられたユニット等も本態様における標準ユニットに含まれる。
【0015】
第2の態様に係るユニット建物は、第1の態様に係るユニット建物において、前記第2屋根部の第2カット面は、前記カットユニットの第1カット面よりも起立している。
【0016】
例えば、北側の隣地境界線が真北に面している場合、隣地境界線から離れることで、北側斜線による制限により設定される屋根部のカット面を起立させることができる。また、北側の隣地境界線が東西を結ぶ仮想線に対して傾斜している場合は、北側の隣地境界線が真北に面している場合に比べて北側斜線による制限により設定される屋根部のカット面を起立させることができる。
【0017】
このため、第2の態様に係るユニット建物では、第2屋根部の第2カット面をカットユニットの第1カット面よりも起立させている。これにより、第2カット面の勾配が緩やかな場合と比べ、斜め天井により室内空間が圧迫される範囲を少なくすることができる。
【0018】
第3の態様に係るユニット建物は、第1の態様又は第2の態様に係るユニット建物において、前記壁部は、前記カットユニットの床部から張り出したキャンチ床に支持されている。
【0019】
第3の態様に係るユニット建物では、壁部が、カットユニットの床部から張り出したキャンチ床に支持されるようにすることで、工場でセットバック部の壁部をカットユニットに組付けることができる。このため、現場で、セットバック部の壁部を床部と共に当該セットバック部に組付ける必要がなくなり、その分現場での施工性が向上する。
【0020】
第4の態様に係るユニット建物は、第1の態様~第3の態様のいずれか1の態様に係るユニット建物において、前記カットユニットに隣接して標準ユニットが設けられ、前記壁部は当該カットユニット及び前記標準ユニットに亘って設けられ、当該壁部側に位置して前記カットユニットと前記標準ユニットとで互いに隣接する柱部が取除かれている。
【0021】
第4の態様に係るユニット建物では、カットユニットに隣接して標準ユニットが設けられている。そして、セットバック部の壁部は、当該カットユニット及び標準ユニットに亘って設けられており、当該壁部側に位置してカットユニットと標準ユニットとで互いに隣接する柱部が取除かれている。これにより、2方向斜線規制を受けるユニットの互いに隣接する角部において、柱のない広い室内空間を確保できる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本態様に係るユニット建物は、簡単な構造で2面の斜線規制が対応できる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本実施の形態に係るユニット建物を北側斜め上方側から見た概略斜視図である。
図2】本実施の形態に係るユニット建物の構成する各建物ユニットを示す概略斜視図である。
図3】本実施の形態に係るユニット建物の要部の概略分解斜視図である。
図4】本実施の形態に係るユニット建物の要部を示す図5に対応する概略分解断面図である。
図5図1の5-5線に沿って切断した状態を示す概略断面図である。
図6】本実施の形態に係るユニット建物の変形例(1)を示す図5に対応する概略断面図である。
図7】本実施の形態に係るユニット建物の変形例(2)を示す図5に対応する概略断面図である。
図8】本実施の形態に係るユニット建物の変形例(3)を示す図2に対応する概略斜視図である。
図9】本実施の形態に係るユニット建物の変形例(4)を示す図2に対応する概略斜視図である。
図10】比較例としてのユニット建物を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を用いて、本発明に係るユニット建物の一実施形態について説明する。
(ユニット建物の構成)
【0025】
まず、本実施の形態に係るユニット建物の構成について説明する。
図1には、本実施の形態に係るユニット建物10を北側斜め上方側から見た概略斜視図が示されている。図1に示されるように、このユニット建物10は、例えば、2階建ての住宅となっており、一階部分を構成し居住空間を構成する下階ユニット12と、二階部分を構成し居住空間を構成する上階ユニット14と、を含んで構成されている。
【0026】
下階ユニット12は、それぞれ略箱形を成す標準ユニット16、18を含んで構成されており、標準ユニット16と標準ユニット18は、ユニット建物10の妻面方向(矢印A方向)に沿って隣接して配置されている。一方、上階ユニット14は、カットユニット20及び標準ユニット22を含んで構成されている。カットユニット20及び標準ユニット22は略箱形を成しており、カットユニット20は、桁面側に後述するカット面(第1カット面)21を有する形状とされている。そして、カットユニット20と標準ユニット22は、ユニット建物10の妻面方向に沿って隣接して配置されている。
【0027】
また、ユニット建物10では、カットユニット20及び標準ユニット22と標準ユニット16、18とは、桁面サイズが異なっており、カットユニット20及び標準ユニット22は、標準ユニット16、18よりも桁面サイズが小さくなっている。このため、カットユニット20及び標準ユニット22を含んで構成される上階ユニット14は、標準ユニット16、18を含んで構成される下階ユニット12に対して、妻面側の立面でセットバック(セットバック部24)された状態で配置されている。
【0028】
ここで、標準ユニット16、18、22の構成について説明する。
当該標準ユニット16、18と標準ユニット22とは、桁面サイズは異なるものの基本構成は略同じであるため、これらを代表して標準ユニット22について説明する。なお、標準ユニット22において、図面の角度上部材が見えない場合は、他の標準ユニット16、18を参照する場合もある。
【0029】
図2には、ユニット建物10の構成する各建物ユニット11(標準ユニット16、18、カットユニット20、標準ユニット22)を示す概略斜視図が示されている。この図に示されるように、標準ユニット22は、四隅にそれぞれ同じ長さを有する柱26が立設されている。
【0030】
そして、桁方向(矢印B方向)に沿って隣り合う柱26の下端部には、床大梁28(標準ユニット16参照)がそれぞれ結合されている。なお、標準ユニット22の桁方向の床大梁28の長さと標準ユニット16、18の桁方向の床大梁28の長さは、厳密にいえば異なるが、説明の便宜上、同じ符号を用いて説明する。後述する天井大梁32においても、当該床大梁28と同様である。
【0031】
また、妻方向(矢印A方向)に沿って隣り合う柱26の下端部には、床大梁30がそれぞれ結合されている。さらに、互いに対向する一対の床大梁28間には、複数の床小梁29(図5参照)が架け渡されており、この複数の床小梁29は所定の間隔で配設されている。
【0032】
なお、本実施形態において用いられる「結合」について、溶接や締結などで部材間が直接結合される場合以外に、金属製のブラケット等を介して部材間が間接的に結合される場合も含まれる。
【0033】
一方、桁方向に沿って隣り合う柱26の上端部には、天井大梁32がそれぞれ結合されている。また、妻方向に沿って隣り合う柱26の上端部には、天井大梁34がそれぞれ結合されている。そして、互いに対向する一対の天井大梁32間には、複数の天井小梁36が架け渡されており、当該複数の天井小梁36は所定の間隔で配設されている。さらに、標準ユニット16、18、22には、柱26の下端側に床パネル38が設けられており、柱26の上端側には天井パネル39が設けられている。
【0034】
これに対して、カットユニット20は、標準ユニット22側に配置され標準ユニット22の柱26と同じ長さを有する一対の標準柱40と、屋外42側に立設され当該標準柱40よりも短い一対の短柱44と、を含んで構成されている。
【0035】
そして、桁方向に沿って隣り合う短柱44、標準柱40の下端部には、床大梁28がそれぞれ結合されている。また、妻方向に沿って隣り合う短柱44と標準柱40の下端部には、床大梁30がそれぞれ結合されている。
【0036】
一方、桁方向に沿って隣り合う短柱44の上端部には、天井大梁52が結合されており、標準柱40の上端部には、天井大梁54が結合されている。そして、天井大梁52と天井大梁54の間には、桁方向に沿って中間小梁56が配置されている。
【0037】
また、妻方向に沿って隣り合う短柱44の上端部と中間小梁56の桁方向の両端部には、天井大梁58がそれぞれ配置されており、当該天井大梁58は、短柱44の上端部から中間小梁56側へ向かうにつれて上方側へ向かって傾斜して配置されている。また、妻方向に沿って隣り合う中間小梁56の桁方向の両端部と標準柱40の上端部には、天井大梁60がそれぞれ配置されている。また、天井大梁58と天井大梁60は、中間小梁56を介さずに結合されている。
【0038】
そして、天井大梁52と中間小梁56の間には、複数の天井小梁62が架け渡されており、当該複数の天井小梁62は所定の間隔で配置されている。また、中間小梁56と天井大梁54の間には、天井小梁62と同様に、複数の天井小梁64が架け渡されており、当該複数の天井小梁64は所定の間隔で配置されている。さらに、カットユニット20には、短柱44及び標準柱40の下端側に床パネル38が設けられており、短柱44及び標準柱40の上端側には天井パネル68が設けられている。
【0039】
当該天井パネル68は、妻方向に沿ってカット部70と水平部72とを含んで構成されている。水平部72は、略水平面に沿って配置され、天井大梁54、60及び中間小梁56を含んで構成されている。一方、カット部70は、当該水平部72に対して傾斜した状態で配置され、天井大梁52、58及び中間小梁56を含んで構成されている。そして、当該カット部70によって、図1に示されるように、カットユニット20の屋根部98において、水平面に対して起立するカット面(第1カット面)21が形成される。
【0040】
前述のように、図2に示されるカットユニット20、標準ユニット22は、標準ユニット16、18よりも桁面サイズが小さくなっている。このため、上階ユニット14は、下階ユニット12に対して、立面でセットバックされた状態で配置され、下階ユニット12側にはセットバック部24が設けられている。
【0041】
ここで、図3には、ユニット建物10の要部の概略分解斜視図が示されている。また、図5には、図1で示される5-5線に沿って切断した状態を示す概略断面図が示されており、図4には、図5に対応する概略分解断面図が示されている。
【0042】
図3図5に示されるように、本実施形態では、当該セットバック部24に室内空間80が形成されるようになっている(セットバック量;L1)。このため、当該セットバック部24には、床部76、壁部74及び屋根部(第2屋根部)78が設けられており、当該床部76、壁部74及び屋根部78によって室内空間80が形成されるようになっている。
【0043】
なお、本実施形態では、床部76は、下階ユニット12で形成されるセットバック部24に結合可能とされており、床パネル96を含んで構成されている。そして、当該床部76に壁部74が結合されている。
【0044】
当該壁部74は、図3に示されるように、標準ユニット16、18の妻面82と略面一となる略矩形状を成す外壁部84と、標準ユニット16及びカットユニット20の桁面86と略面一となる略矩形状を成す外壁部88と、標準ユニット18、22の桁面90と略面一となる略矩形状を成す外壁部92と、を含んで構成されている。さらに、壁部74は、外壁部92の上端部に結合されると共に標準ユニット22の桁面90と略面一となる略三角形状を成す外壁部94を含んでいる。なお、当該外壁部94は外壁部92と一体に形成されてもよい。
【0045】
また、屋根部78は、屋根パネル104及び屋根パネル110を備えている。屋根パネル104は、カットユニット20の屋根部(第1屋根部)98の水平屋根パネル(水平面)100及び標準ユニット22の屋根部101の水平屋根パネル102と結合されると共に、壁部74の外壁部84の上端部に結合されるようになっている。一方、屋根パネル110は、外壁部88の上端部に結合されると共に、屋根パネル104及びカットユニット20の傾斜屋根パネル108に結合される。これにより、屋根部78では、カット面(第3カット面)111が形成される。
【0046】
本実施形態では、屋根パネル104が、水平屋根パネル100及び水平屋根パネル102に結合されることによって、屋根部78では、カット面(第2カット面)105が形成される。なお、このカット面105は、水平面に対して起立しており、カットユニット20の屋根部98のカット面21と略同じ勾配とされている。つまり、このユニット建物10は、建物屋根13の2面(屋根部98、屋根部78)において、カット面21、105がそれぞれ形成され、斜線規制を受ける建物となっている。
【0047】
ここで、本実施形態におけるユニット建物10の組付け手順について説明する。
図2及び図4に示されるように、基礎(図示省略)上に下階ユニット12(標準ユニット16、18)が据え付けられた後、当該下階ユニット12上に上階ユニット14(カットユニット20、標準ユニット22)が据え付けられる。この状態で、上階ユニット14は、下階ユニット12に対して、立面でセットバックされた状態で配置され、下階ユニット12側にはセットバック部24が設けられる。
【0048】
このセットバック部24、つまり、下階ユニット12(標準ユニット16、18)の天井大梁32、34にセットバック部24の床パネル96が結合される(据え付けられる)。本実施形態では、セットバック部24の床パネル96には、壁部74が予め一体化されている。このため、下階ユニット12の天井大梁32、34にセットバック部24の床パネル96が据え付けられた状態で、セットバック部24に、当該セットバック部24の床パネル96及び壁部74が据え付けられたこととなる。
【0049】
なお、セットバック部24の床パネル96と壁部74とは、分割されていてもよい。この場合、下階ユニット12の天井大梁32、34にセットバック部24の床パネル96を結合させた後、当該床パネル96に壁部74が結合されることとなる。また、壁部74の両袖に位置する外壁部88、92(図3参照)は、カットユニット20の短柱44(図2参照)、標準ユニット22の柱26(図2参照)側にそれぞれ結合される。
【0050】
次に、図3及び図4に示されるように、壁部74の外壁部84及び水平屋根パネル100及び水平屋根パネル102に屋根パネル104が結合される。そして、図3に示す外壁部92の上端部及び標準ユニット22の桁面90側に外壁部94が結合される。さらに、外壁部88の上端部と屋根パネル104とカットユニット20の傾斜屋根パネル108に屋根パネル110が結合される。
【0051】
そして、図4に示されるように、各建物ユニット11に各継材(床継材112、屋根継材114、壁継材116、天井継材118)を組付ける。具体的には、上階ユニット14の床パネル38とセットバック部24の床パネル96の間に床継材112を組付け、水平屋根パネル100と屋根パネル104の間に屋根継材114を組付ける。
【0052】
次に、屋根パネル104の室内空間80側において、当該屋根パネル104とセットバック部24の外壁部84の間に壁継材116を組付け、当該屋根パネル104と天井パネル39の間に天井継材118を組付ける。なお、各建物ユニット11の外観側には、各外装材(胴差120、板金122)を組付ける。具体的には、上階ユニット14と下階ユニット12の間に胴差120を組付け、屋根継材114と屋根パネル104の間に板金122を組付ける。
【0053】
(ユニット建物の作用及び効果)
次に、本実施の形態に係るユニット建物の作用及び効果について説明する。
【0054】
図3に示されるように、本実施の形態に係るユニット建物10では、カットユニット20、標準ユニット22を含んで構成される上階ユニット14は、標準ユニット16、18を含んで構成される下階ユニット12に対して、立面でセットバックされた状態で配置されている。
【0055】
そして、下階ユニット12側に設けられたセットバック部24には、床部76、壁部74及び屋根部78によって室内空間80が形成されると共に、当該屋根部78の屋根パネル104が、屋根部98の水平屋根パネル100及び屋根部101の水平屋根パネル102に結合されることによって、屋根部78にはカット面105が形成される。
【0056】
つまり、ユニット建物10の建物屋根13において、屋根部98にはカット面21が形成され、屋根部78には2カット面105が形成されることとなり、前述のように、当該ユニット建物10は、2面において斜線規制の対応が可能となる。
【0057】
さらに、本実施形態では、カットユニット20の屋根部98のカット面21とセットバック部24の屋根部78のカット面105とは、屋根パネル110のカット面111によって繋がるようになっている。
【0058】
比較例として、例えば、図10に示されるように、ユニット建物200において、屋根部201と屋根部202とを互いに接合させるために斜め梁204を用いた場合、当該斜め梁204は柱206及び水平梁208、210に対して3次元的に配置されることとなり、接合する際の作業が複雑になる。
【0059】
これに対して、本実施形態では、図3に示されるように、カットユニット20や標準ユニット22等の建物ユニット11とは別にセットバック部24において別途壁部74や屋根部78等で室内空間80を作っている。つまり、本実施形態では、図10に示す柱206及び水平梁208、210を用いることなく、図3に示す屋根パネル110を介して傾斜屋根パネル108と屋根パネル104との接合が可能であり、図10示す柱206及び水平梁208、210に対して3次元的に接合するための斜め梁204は不要となる。
【0060】
したがって、本実施形態では、簡単な構成で、ユニット建物10の建物屋根13の2面において斜線規制の対応が可能となり、建物ユニット11自体の生産性を損なうことはなく、作業性が良い。
【0061】
また、前述のように、図10に示される斜め梁204は、柱206及び水平梁208、210に対して3次元的に接合されるため、ユニット建物200において、応力の伝達経路が複雑になってしまい、その分荷重伝達の際にロスが生じてしまう。
【0062】
これに対して、図2に示す本実施形態では、前述のように、セットバック部24以外は、建物ユニット11で構成されるため、斜め梁204(図10参照)を用いた場合と比較して、構造架構が単純であり、応力の伝達経路が単純化され、ユニット建物10における応力伝達効率が向上する。
【0063】
(本実施形態の変形例)
(1)本実施形態では、図1に示されるユニット建物10の建物屋根13において、屋根部78のカット面105は、屋根部98のカット面21と略同じ勾配とされているが、ユニット建物10の建物屋根13の2面において、斜線規制の対応が可能となっていればよいため、これに限るものではない。
【0064】
例えば、ユニット建物10において、北側の隣地境界線Pが真北に面している場合、隣地境界線Pから離れることで、北側斜線による制限により設定される屋根パネル104の勾配は、傾斜屋根パネル108よりもさらに起立させることが可能となる。つまり、屋根パネル104の勾配は、傾斜屋根パネル108の勾配よりきつくすることができる。また、北側の隣地境界線Pが東西を結ぶ仮想線Qに対して傾斜角θを有する場合(北側の隣地境界線Pが真北に面していない場合)は、当該隣地境界線Pが真北に面している場合に比べて、北側斜線による制限により設定される屋根パネル104のカット面105の勾配をよりきつくすることができる。
【0065】
この場合、図6に示されるように、セットバック量L2を、図5に示すセットバック量L1よりも小さくすることができる(L2<L1)。このように、セットバック量L2を小さくすると、カットユニット20及び標準ユニット22の桁方向の長さを長くすることができる。すなわち、カットユニット20、標準ユニット22で構成される室内空間124を広くすることができる。
【0066】
そして、屋根パネル104の勾配が緩やかな場合(図5参照)と比べ、斜め天井により室内空間124が圧迫される範囲を少なくすることができる。また、セットバック量L2が小さくなることにより、セットバック部24の床パネル96の面積も小さくなり、床パネル96の簡易化も可能となる。つまり、壁部74を下階ユニット12の天井大梁32、34(図2参照)に接続させ、床パネル96は継材タイプの床材としてもよい。また、壁部74を低くすることで傾斜屋根パネル104の勾配を傾斜屋根パネル108の勾配よりもきつくすることができ、室内空間124を広くすることができる。
【0067】
(2)また、上記とは逆に、図7に示されるように、セットバック量L3を、図5に示すセットバック量L1よりも大きくすることができる(L3<L1)。つまり、ここでは当該セットバック部126の屋根パネル128において、傾斜部130とフラット部132を一体化させた構成としてもよい。この場合、フラット部132の範囲を変えることより、屋根パネル128を任意の勾配とすることができる。
【0068】
このように、屋根パネル128にフラット部132を設け、セットバック量L3を大きくすることで、標準ユニット22、カットユニット20に影響を与えることなく、当該セットバック部126を吹抜け部133とすることができる。そして、この吹き抜け部133に階段等を設けることもできる。また、バリアフリータイプの浴室等、部分的に床梁を下げる特殊構造の空間を配置することもできる。つまり、設計の自由度が広がり、ユニット建物10の汎用性が向上する。
【0069】
(3)また、本実施形態では、図4に示されるように、下階ユニット12側に設けられたセットバック部24に、床部76、壁部74及び屋根部(第2屋根部)78が設けられており、当該床部76、壁部74及び屋根部78によって室内空間80が形成されるようになっている。しかし、セットバック部24に室内空間80を形成することができればよいため、これに限るものではない。
【0070】
例えば、図8に示されるように、カットユニット20及び標準ユニット22において、キャンチ床134を備えた構成であってもよい。なお、図8では、一例として、カットユニット20側にキャンチ床134が組付けられた図が示されている。
【0071】
このキャンチ床134が、セットバック部24の床部136となる。ここで、床部136は、カットユニット20の床大梁30に結合されたブラケット138を介して、カットユニット20に組付けられており、壁部140は当該キャンチ床134によって支持される。
【0072】
一般に、キャンチ床134は、工場内でカットユニット20、標準ユニット22に組付けられるため、カットユニット20及び標準ユニット22がキャンチ床134を備えた場合、セットバック部24の床部136及び壁部140は、カットユニット20、標準ユニット22の組付けと共に工場内で組付けられることとなる。したがって、現場では、当該セットバック部24の床部136及び壁部140をカットユニット20、標準ユニット22に組付ける必要がなくなるため、その分施工性が向上する。
【0073】
(4)さらに、本実施形態では、図2に示されるように、上階ユニット14を構成する標準ユニット22の柱26とカットユニット20の標準柱40が、互いに隣接して配置されているが、これに限るものではない。例えば、図9に示されるように、セットバック部24側の柱26、標準柱40を取除いてもよい。
【0074】
これにより、2方向斜線規制を受ける標準ユニット22とカットユニット20とで、互いに隣接する角部(A)において、柱26、標準柱40のない広い室内空間124を確保できる。但し、この場合、標準ユニット22の天井大梁34とカットユニット20の天井大梁60とは、補強梁142によって接続される。
【0075】
なお、本実施形態では、2階建てのユニット建物10について説明したが、本発明は、3階建て以上のユニット建物についても適用可能である。
【0076】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、一実施形態及び各種の変形例を適宜組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0077】
10 ユニット建物(建物本体)
11 建物ユニット
12 下階ユニット
16 標準ユニット
18 標準ユニット
20 カットユニット
21 カット面(第1カット面)
22 標準ユニット
24 セットバック部
26 柱(柱部)
38 床パネル(床部)
40 標準柱(柱部)
74 壁部
78 屋根部(第2屋根部)
80 室内空間
98 屋根部(第1屋根部)
100 水平屋根パネル(第1屋根部の水平面)
105 カット面(第2カット面、第2屋根部)
111 カット面(第3カット面、第2屋根部)
124 室内空間
126 セットバック部
134 キャンチ床
140 壁部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10