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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-11
(45)【発行日】2022-04-19
(54)【発明の名称】インナバルコニーを備えた建物ユニット
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/348 20060101AFI20220412BHJP
【FI】
E04B1/348 L
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018052767
(22)【出願日】2018-03-20
(65)【公開番号】P2019163653
(43)【公開日】2019-09-26
【審査請求日】2020-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】木和田 康聖
【審査官】新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-145175(JP,A)
【文献】特開平10-008660(JP,A)
【文献】特開2002-054226(JP,A)
【文献】米国特許第04545159(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/348
E04B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
立設された外柱と、前記外柱の上端部間に架設された天井大梁により矩形枠状に形成された天井フレームと、前記外柱の下端部間に架設された床大梁により矩形枠状に形成された床フレームと、を含んで構成された建物ユニットの躯体フレームと、
一体に形成され、一方の桁側の前記床大梁に一方の端部が接合されると共に他方の桁側の前記床大梁に他方の端部が接合され前記床フレームを構成する床小梁と、
前記建物ユニットの内部に構成され、屋外側において前記床小梁の上面に配置され前記床小梁と平面視で略直交する境界部根太と、当該境界部根太に対して屋内側に配置されると共に当該境界部根太の延在方向に延在する第1床根太と、当該境界部根太及び当該第1床根太の両端部側にそれぞれ配置され、当該延在方向と直交する方向に延在する一対の第2床根太を含む床根太が前記床フレームの上面に配置されて外周部が形成された居室部と、
前記建物ユニットの内部かつ前記居室部の外側に構成され、前記床フレームの上面にバルコニー床板が配置されたインナバルコニーと、
を備えたインナバルコニーを備えた建物ユニット。
【請求項2】
前記インナバルコニーには、前記居室部と反対側の部分において、前記床根太の上面より低い位置に排水ピット部が設けられている請求項1に記載のインナバルコニーを備えた建物ユニット。
【請求項3】
前記インナバルコニーは、周縁部に立設された壁部と、前記壁部の内部に設けられ、一方の端部が前記インナバルコニー側へ向けて開放され、他方の端部が屋外へ向けて開放された排水部と、前記バルコニー床板の上面に配設され、上面側が前記排水部へ向けて建物下方側に傾斜されたバルコニー床材と、を含んで構成された請求項1又は請求項2に記載のインナバルコニーを備えた建物ユニット。
【請求項4】
前記バルコニー床板は、前記排水部側の端部が前記排水部の前記インナバルコニー側の端部よりも前記建物ユニットの内側に位置するように配置された請求項に記載のインナバルコニーを備えた建物ユニット。
【請求項5】
前記床フレームに、前記排水部が設けられた前記壁部側の妻側の前記床大梁と当該床大梁と隣り合う前記床小梁との間に架設された第1下地材と、前記第1下地材と前記インナバルコニー側の桁側の前記床大梁との間に架設された第2下地材と、を含んで構成された下地フレームが接合された請求項又は請求項に記載のインナバルコニーを備えた建物ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インナバルコニーを備えた建物ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、床大梁、天井大梁及びこれらの大梁を結ぶ柱により構成される建物ユニットの躯体フレーム内部にインナバルコニーを備えた建物ユニットが開示されている。インナバルコニーを構成する側の床大梁には、インナバルコニーの手摺支柱が当該床大梁に設けられた補強ブラケットを介して固定されているため、インナバルコニーの屋外に開放する側の腰壁部分の強度を向上させると共に手摺の支持強度を向上させることができる。さらに、インナバルコニーの手摺支柱を床大梁上に固定することによって腰壁が建物ユニットから屋外側へはみ出すことを抑制することができるため建物ユニットの全体寸法は増加しない。このため、制約を生じさせることなく建物ユニットを施工現場へ運搬することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-214321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された建物ユニットによれば、インナバルコニーと居室部との境界部分となる一対の妻側(短辺側)の床大梁の長手方向の略中間部には、溝部が居室部側に開放された溝形鋼の中間梁が桁側(長辺側)の床大梁と平行に架け渡されている。中間梁は、その建物上方側のフランジ部が床大梁の建物上方側のフランジ部と同じ高さとなるように架け渡されている。また、中間梁の溝部側と居室部を構成する桁側の床大梁との間及び中間梁の溝部の反対側(ウェブの外側面側)とインナバルコニーを構成する桁側の床大梁との間には、床小梁がそれぞれ架け渡されている。
【0005】
インナバルコニーに入り込んだ水が居室部へ浸入することを抑制及び防止するために、インナバルコニーと居室部との間には段差を設ける必要がある。このため、中間梁とインナバルコニーを構成する桁側の床大梁との間に架け渡された床小梁は、中間梁と居室部を構成する桁側の床大梁との間に架け渡された床小梁よりも低い位置で架け渡されている。これにより、一対の桁側の床大梁の間に中間梁を設けることなく床小梁が一体で架け渡される建物ユニットと比べて、桁側の床大梁間に架け渡される床小梁の本数が増えて構造が複雑になるため部品点数及び作業工数が増加する。さらに、居室部側の床小梁とインナバルコニー側の床小梁は、それぞれ溝形鋼の異なる個所に異なる方法で接合されるため、この点も作業工数の増加の要因となる。以上の事から、建物ユニットの躯体フレームへの影響を抑制した上で、建物ユニットの内部にインナバルコニーを構成することができるインナバルコニーを備えた建物ユニットについて改善の余地がある。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮し、建物ユニットの躯体フレームへの影響を抑制した上で、建物ユニットの内部にインナバルコニーを構成することができるインナバルコニーを備えた建物ユニットを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様に係るインナバルコニーを備えた建物ユニットは、立設された外柱と、前記外柱の上端部間に架設された天井大梁により矩形枠状に形成された天井フレームと、前記外柱の下端部間に架設された床大梁により矩形枠状に形成された床フレームと、を含んで構成された建物ユニットの躯体フレームと、一体に形成され、一方の桁側の前記床大梁に一方の端部が接合されると共に他方の桁側の前記床大梁に他方の端部が接合され前記床フレームを構成する床小梁と、前記建物ユニットの内部に構成され、前記床小梁の上面に配置され前記床小梁と平面視で略直交する境界部根太を含む床根太が前記床フレームの上面に配置されて外周部が形成された居室部と、前記建物ユニットの内部かつ前記居室部の外側に構成され、前記床フレームの上面にバルコニー床板が配置されたインナバルコニーと、を備える。
【0008】
第1の態様に係るインナバルコニーを備えた建物ユニットによれば、床小梁の上面に配置され床小梁と平面視で略直交する境界部根太を含む床根太が床フレームの上面に配置されることによって居室部の外周部が形成されている。このため、居室部の床高さを床フレームの上面にバルコニー床板が配置されたインナバルコニーよりも高い位置に設けることができ、インナバルコニーと居室部の境界部における防水のための段差を確保することができる。
【0009】
また、第1の態様に係るインナバルコニーを備えた建物ユニットによれば、床フレームを構成する床小梁をインナバルコニー側と居室部側とに分割することなくインナバルコニーを構成することができる。このため、部品点数及び作業工数の増加を抑制することができる。これにより、躯体フレームへの影響を抑制した上で、建物ユニットの内部にインナバルコニーを構成することができる
【0010】
第2の態様に係るインナバルコニーを備えた建物ユニットは、第1の態様において、前記インナバルコニーは、周縁部に立設された壁部と、前記壁部の内部に設けられ、一方の端部が前記インナバルコニー側へ向けて開放され、他方の端部が屋外へ向けて開放された排水部と、前記バルコニー床板の上面に配設され、上面側が前記排水部へ向けて建物下方側に傾斜されたバルコニー床材と、を含んで構成されている。
【0011】
第2の態様に係るインナバルコニーを備えた建物ユニットによれば、インナバルコニーの周縁部に立設された壁部の内部に排水部が設けられると共にバルコニー床板の上面には上面側が排水部へ向けて建物下方側に傾斜されたバルコニー床材が配設されている。このため、インナバルコニーに入り込んだ水は、バルコニー床材の上面側に設けられた傾斜に沿って排水部へ向けて流下され、排水部の他方の端部から屋外に排出される。これにより、水をインナバルコニーの階下の建物ユニット側に流下させる必要がなくなるため、インナバルコニーの階下の建物ユニット内部にインナバルコニーではなく居室部を形成することができる。
【0012】
第3の態様に係るインナバルコニーを備えた建物ユニットは、第2の態様において、前記バルコニー床板は、前記排水部側の端部が前記排水部の前記インナバルコニー側の端部よりも前記建物ユニットの内側に位置するように配置されている。
【0013】
第3の態様に係るインナバルコニーを備えた建物ユニットによれば、バルコニー床板の排水部側の端部が、排水部のインナバルコニー側の端部よりも建物ユニットの内側に位置するように配置されているため、排水部のインナバルコニー側の端部の建物下側にはバルコニー床板が配置されない。このため、排水部のインナバルコニー側の端部を比較的低い位置に配置することができる。これにより、上面側が前記排水部へ向けて建物下方側に傾斜されたバルコニー床材の居室部側における高さ位置が高くなることを抑制することができ、インナバルコニーに入り込んだ水が居室部へ浸入することを抑制及び防止することができる。
【0014】
第4の態様に係るインナバルコニーを備えた建物ユニットは、第2の態様又は第3の態様において、前記床フレームに、前記排水部が設けられた前記壁部側の妻側の前記床大梁と当該床大梁と隣り合う前記床小梁との間に架設された第1下地材と、前記第1下地材と前記インナバルコニー側の桁側の前記床大梁との間に架設された第2下地材と、を含んで構成された下地フレームが接合されている。
【0015】
第4の態様に係るインナバルコニーを備えた建物ユニットによれば、下地フレームを設けることにより、床フレームの剛性を向上させることができると共に、バルコニー床板の下面側からバルコニー床板の端部を安定して支持することができる。これにより、大幅な改良や設備の追加をすることのない最小限の追加部材により、インナバルコニーを構成することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、第1の態様に係るインナバルコニーを備えた建物ユニットは、建物ユニットの躯体フレームへの影響を抑制した上で、建物ユニットの内部にインナバルコニーを構成することができるという優れた効果を有する。
【0017】
第2の態様に係るインナバルコニーを備えた建物ユニットは、インナバルコニーに入り込んだ水を、インナバルコニーの階下の建物ユニット側に流下させることなく直接屋外へ排出させることができるため、インナバルコニーの真下の建物ユニットに居室部を形成することができるという優れた効果を有する。
【0018】
第3の態様に係るインナバルコニーを備えた建物ユニットは、排水部を比較的低い位置に配置することができ、インナバルコニーに入り込んだ水が居室部へ浸入することを抑制及び防止することができるという優れた効果を有する。
【0019】
第4の態様に係るインナバルコニーを備えた建物ユニットは、床フレームに最小限の追加部材として下地フレームを設けることにより、インナバルコニーを構成することができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施形態に係るインナバルコニーを備えた建物ユニットが設けられた建物の概略斜視図である。
図2】本実施形態に係るインナバルコニーを備えた建物ユニットの間取り図である。
図3】本実施形態に係る建物ユニットの躯体フレームを建物上方側から見た斜視図である。
図4】本実施形態に係る床フレームの平面図である。
図5】本実施形態に係るインナバルコニーを備えた建物ユニットを図2のA-A線に沿って切断した状態を建物内側から建物外側へ向けて見た断面図である。
図6】本実施形態に係るインナバルコニーを備えた建物ユニットを図2のB-B線に沿って切断した状態を建物内側から建物外側へ向けて見た断面図である。
図7】本実施形態に係るインナバルコニーを備えた建物ユニットを図2のC-C線に沿って切断した状態を建物内側から建物外側へ向けて見た断面図である。
図8】本実施形態に係るインナバルコニーを備えた建物ユニットを図2のD-D線に沿って切断した状態を建物外側から建物内側へ向けて見た断面図である。
図9A】下地フレームを取り付ける前の床フレームを建物上方側から見た斜視図である。
図9B図9Aに示される床フレームに下地フレームが取り付けられた状態を示す斜視図である。
図9C図9Bに示される床フレームに床根太が取り付けられた状態を示す斜視図である。
図9D図9Cに示される床フレームにバルコニー床板及び居室部床板が取り付けられた状態を示す斜視図である。
図10】本実施形態の変形例に係る建物ユニットの躯体フレームを建物上方側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図1図9Dを用いて、本発明に係るインナバルコニーを備えた建物ユニットの一実施形態について説明する。
【0022】
(建物ユニットの構成)
図1に示されるように、インナバルコニーを備えた建物ユニットが設けられた建物10は、基礎12上に固定され、建物10の上方側を覆うように設置された図示しない屋根を備えた2階建てユニット式建物として構成されている。建物10は、複数の建物ユニット16が互いに連結されることによって構成されており、一階部分16Aと二階部分16Bとを有している。インナバルコニー20は、二階部分16Bを構成する一つの建物ユニット16B1の内部に構成されている。また、インナバルコニー20が構成された建物ユニット16B1の階下の建物ユニット16A1の内部には、バルコニーではなく、居室部60が構成されている。
【0023】
図2には、建物10の二階部分16Bを構成する一つの建物ユニット16B1の間取り図が示されている。インナバルコニー20は、一つの建物ユニット16B1を短手方向に二分割した略半分の空間に構成されている。また、インナバルコニー20に隣接する空間には、居室部60が構成されている。このため、当該建物ユニット16B1には、後述する一つの躯体フレーム18の内側にインナバルコニー20と居室部60の両方が構成されている。
【0024】
インナバルコニー20と居室部60との境界には、正面壁22が配設されている。正面壁22には例えば図示しないサッシ等が設けられることにより、人がインナバルコニー20と居室部60との間を移動可能とされている。
【0025】
インナバルコニー20の側方部分となる正面壁22の左右両側(建物ユニット16B1の長手方向の両側)には壁部としての袖壁24が立設されている。また、図1に示されるように、屋外に対向した袖壁24の建物下方側の内部には、インナバルコニーへ入り込んだ水を屋外へ排出するための排水部としてのドレン管26が設けられている。ドレン管26は、インナバルコニー20側の端部が一方の端部としての第1端部26A(図8参照)とされており、屋外側の端部が他方の端部としての第2端部26Bとされている。
【0026】
インナバルコニー20の屋外へ向けて開放された側には、建物ユニット16B1の長手方向に沿って壁部としての腰壁28が配設されている。また、腰壁28の建物上方側には図示しない手摺が建物ユニット16B1の長手方向に沿って設けられている。
【0027】
図3には、ユニット式建物を構成する建物ユニット16B1の躯体フレーム18が示されている。躯体フレーム18は、四隅に立設された4本の外柱32と、外柱32の上端部間に架設された天井大梁34により矩形枠状に形成された天井フレーム36と、外柱32の下端部間に架設された床大梁44により矩形枠状に形成された床フレーム46と、により箱型に構成されている。また、外柱32には、方形の鋼管柱が用いられている。
【0028】
躯体フレーム18の建物上方側を構成する天井フレーム36は、長辺側に配置された一対の桁側の天井大梁34Aと、短辺側に配置された一対の妻側の天井大梁34Bと、一対の桁側の天井大梁34A間に架け渡された複数本の天井小梁38と、を含んで構成されている。なお、桁側の天井大梁34A、床側天井大梁34Bはいずれも溝形鋼とされている。また、天井小梁38は、角形鋼管とされている。天井小梁38の下面側には、図示しない矩形平板状の天井面材が取り付けられている。
【0029】
躯体フレーム18の建物下方側を構成する床フレーム46は、長辺側に配置された一対の桁側の床大梁44Aと、短辺側に配置された一対の妻側の床大梁44Bと、一対の桁側の床大梁44A間に架け渡された複数本の床小梁48と、を含んで構成されている。なお、桁側の床大梁44A、妻側の床大梁44Bはいずれも溝形鋼とされており、両者を区別する必要がない場合は「床大梁44」と総称する。
【0030】
また、桁側の床大梁44A間には、角形鋼管により一体に形成され、端部を桁側の床大梁44Aの溝部の内側に溶接されたブラケット50に接合された床小梁48が、架け渡されている。
【0031】
図4に示されるように、床フレーム46の妻側の床大梁44Bと当該床大梁44Bと隣り合う床小梁48との間に、角形鋼管により構成された下地フレーム52が接合されている。下地フレーム52は、妻側の床大梁44Bと当該床大梁44Bと隣り合う床小梁48との間に架設された第1下地材52Aと、第1下地材52Aとインナバルコニー20側の桁側の床大梁44Aとの間に架設された第2下地材52Bと、第2下地材52Bと妻側の床大梁44Bとの間に架設された第3下地材52Cと、を含んで構成されている。下地フレーム52は、溝形鋼により形成された桁側の床大梁44A及び妻側の床大梁44Bの溝部の内側に溶接されたブラケット50を介して床大梁44に溶接等により接合されている。また、下地フレーム52は、図示しない床小梁用ブラケットを介して床小梁48に溶接等により接合されている。
【0032】
なお、本実施形態では、下地フレーム52は、第1下地材52A、第2下地材52B及び第3下地材52Cにより構成されているとして説明したが、これに限らず、第1下地材と上面の幅(桁側の床大梁44Aの長手方向の長さ)がバルコニー床板の端部を配置できる程度に広く(長く)された第2下地材だけの簡単な構成とされてもよい。
【0033】
(居室部の構成)
図5には、インナバルコニー20と建物内側に構成された居室部60の構成を示す断面図が示されており、図2のA-A線断面図に相当する。
【0034】
建物ユニット16B1を短手方向に二分割した屋内側の空間には、居室部60が構成されている。居室部60側の床小梁48の上面には、床小梁48と平面視で略直交した床根太としての境界部根太64が配置されている。また、居室部60が構成されている側の桁側の床大梁44Aの上面には、当該桁側の床大梁44Aの長手方向に沿って床根太としての第1床根太66が配置されている。第1床根太66は、その上面の高さ位置が、境界部根太64の上面の高さ位置と略同一となるように配置されている。後述するように、居室部60側の床フレーム46の上面に、境界部根太64と第1床根太66とを含む床根太が配置されることにより、居室部60の外周部60Aが形成されている。
【0035】
外周部60Aの内側には、ウレタンフォーム製の床下断熱材68が配置されている。また、外周部60Aの上面側には、床下断熱材68を覆うように外周部60Aの上面全体に亘って居室部床板70が配置されている。これにより、居室部60内の床部が形成されている。
【0036】
居室部60が構成されている側の桁側の床大梁44Aの溝部の内側には、グラスウール等の床梁内断熱材72が配置されている。また、境界部根太64の建物下方側には、下地フレーム52の第1下地材52Aが、床小梁48とこれと隣り合う妻側の床大梁44B(図4参照)の間に境界部根太64の長手方向に沿って架け渡されている。
【0037】
インナバルコニー20と居室部60との境界に配設された正面壁22は、正面壁ブラケット74を介して床小梁に固定されている。正面壁22の内側部分には、図示しないガラス戸用のサッシ枠が固定されており、サッシ枠によりガラス戸が開閉可能に支持されている。このため、ガラス戸を開けることにより、インナバルコニー20側と居室部60側との人の移動が可能とされている。また、インナバルコニー20の床面の高さ位置は、サッシ枠の下端の高さ位置よりも低い位置に設定されていることから、インナバルコニー20側から居室部60側への水の浸入が抑制されている。
【0038】
(インナバルコニーの構成)
図5から図7には、インナバルコニー20を建物ユニット16B1の短手方向に沿って切断した断面図が示されている。インナバルコニー20の周縁部には、腰壁28及び袖壁24が設けられている。腰壁28は、建物下側に取り付けられた金属製の取付ブラケット40を介して桁側の床大梁44Aに設けられたウェルドナット42にボルト締結されている。
【0039】
図8に示されるように、内部にドレン管26が設けられた袖壁24は、妻側の床大梁44Bの建物上側に配置され建物上下方向に延在された袖壁面材24A、24Bにより構成されている。インナバルコニー20側の袖壁面材24Aの裏面側(屋外側)と屋外24側の袖壁面材24Bの裏面側(屋内側)との間に形成された空間部24Cに躯体フレーム18を構成する外柱32が収容されるように形成されている。
【0040】
図5に示されるように、インナバルコニー20の床部には、インナバルコニー20と居室部60の境界部分となる正面壁22の建物下方側から腰壁28側にかけて床敷設部80が形成され、腰壁28側の端部に建物ユニット16B1の長手方向に沿って溝樋部82が形成されている。床敷設部80及び溝樋部82の上面(床面)は、インナバルコニー20に入り込んだ水を流下させるためにドレン管26側へ向けて傾斜されている。
【0041】
床敷設部80及び溝樋部82は、インナバルコニー20側の床フレーム46の上面に配置されたバルコニー床板84の上面に形成されている。図5に示されるように、バルコニー床板84は、インナバルコニー20と居室部60の境界部分となる正面壁22の建物下方側から腰壁28側の床大梁44Aにかけて配置されている。また、図8に示されるように、バルコニー床板84は、ドレン管26側の端部がドレン管26の第1端部26Aよりも建物ユニット20の内側に位置するように配置されている。
【0042】
図5に示されるように、床敷設部80の建物下方側は、バルコニー床板84の上面に配置されたバルコニー床材としての第1断熱材86と第1断熱材86の上面に配置されたバルコニー床材としての第2断熱材88とにより形成されている。第1断熱材86は、上面側がドレン管26側へ向けて建物下方側に傾斜して形成されている。傾斜が形成された第1断熱材86の上面に第2断熱材88が配置されることにより、床敷設部80は、上面側がドレン管26側へ向けて建物下方側に傾斜して形成されている。
【0043】
図6及び図7に示されるように、溝樋部82の建物下方側は、バルコニー床板84の上面に配置された第1断熱材86により形成されている。第1断熱材86は、上面側がドレン管26側へ向けて建物下方側に傾斜されている。また、第1断熱材86の上面側は、床敷設部80と溝樋部82との境界部から腰壁28側へ向けて建物下方側に傾斜されている。これにより、溝樋部82は、床敷設部80側から流下してきた水を、床敷設部80側へ逆流させることを抑制及び防止すると共にドレン管26側へ向けて流下させるように形成されている。
【0044】
図5に示されるように、床敷設部80と溝樋部82に配置された第1断熱材86及び第2断熱材88の上面側の全面に亘って図示しないナイロンフィルム等の絶縁シートが均一の厚さで敷設され、さらに絶縁シートの上面側を覆うように正面壁22の建物下側から腰壁28の建物下側に亘って均一の厚さのDN鋼板90が敷設されている。これにより、床敷設部80と溝樋部82が形成されている。
【0045】
図8に示されるように、床敷設部80のドレン管26側の端部とドレン管26の第1端部26Aとの間には、排水ピット部92が設けられている。排水ピット部92は、バルコニー床板84の上面側に配置された第3断熱材94と、第3断熱材94の上面側に敷設されたDN鋼板90とにより形成されている。
【0046】
袖壁24の内部に配置され、インナバルコニー20へ入り込んだ水を屋外へ排出させるためのドレン管26の第1端部26Aは、インナバルコニー20側の袖壁面材24AとDN鋼板90とに設けられた開口に溶着により固定されている。また、屋外側の端部である第2端部26Bは、その外周部に巻き付けられた発泡剤を介して屋外側の袖壁面材24Bに固定されると共に建物ユニット16の屋外側に建物上下方向に沿って配置された図示しない縦樋に連結されている。これにより、第1端部26Aからドレン管26に流入した水は第2端部26B側へ流下し、縦樋を経由して屋外に排出される。
【0047】
次に、本実施形態に係るインナバルコニー20を備えた建物ユニット16の床フレーム46部分の製造方法の説明を通じて作用並びに効果について説明する。
【0048】
図9Aに示される床大梁44と角形鋼管により一体に形成された床小梁48とにより構成された床フレーム46のベース部分に、図9Bに示されるように、下地フレーム52が接合される。下地フレーム52は、建物上方側に袖壁24が設けられる妻側の床大梁44Bと当該床大梁44Bと隣り合う床小梁48との間に配置される。このように、下地フレーム52は、床大梁44と床小梁48に溶接等により接合されるため、床フレーム46の剛性を向上させることができる。
【0049】
図9Cに示されるように、下地フレーム52が接合された床フレーム46の居室部60側の上面に床根太が配置される。一方の妻側の床大梁44Bに下地フレーム52を構成する第1下地材52Aが接合されている位置から他方の妻側の床大梁44Bに第1下地材52Aが接合されている位置までの間に、境界部根太64が下地フレーム52の第1下地材52Aの上面に沿って桁側の床大梁44Aに略平行に架け渡される。これにより、境界部根太64は、床小梁48と平面視で略直交した状態で床小梁48の上面側に配置されている。
【0050】
居室部60側の桁側の床大梁44Aの上面には、当該床大梁44Aの上面に沿って第1床根太66が配置される。第1床根太66は、その上面の高さ位置が、境界部根太64の上面の高さ位置と略同一となるように配置されている。また、境界部根太64と第1床根太66の端部の間に位置する妻側の床小梁48の上面には、床根太としての第2床根太67が配置されている。第2床根太67は、その上面の高さ位置が、境界部根太64及び第1床根太66の上面の高さ位置と略同一となるように配置されている。これらの床根太は、床小梁48及び床大梁に図示しないビスにより固定される。これらの床フレーム46の上面側に配置された床根太により、居室部60の外周部60Aが形成される。
【0051】
また、床フレーム46の上面側に床根太が配置されて居室部60が構成されることにより、居室部60の床部分を、床フレーム46の上面にバルコニー床板84が配置されたインナバルコニー20よりも高い位置に設けることができる。これにより、インナバルコニー20と居室部60との境界部における防水のための段差を確保することができる。
【0052】
また、床根太が配置されることにより、居室部60の床高さをインナバルコニー20の床高さよりも高くするために、床小梁48を分割し、居室部60側とインナバルコニー20側の桁側の床大梁44Aに高さを変えて接合する必要がない。このため、部品点数及び作業工数の増加を抑制することができる。これにより、躯体フレーム18への影響を抑制した上で、建物ユニット16の内部にインナバルコニー20を構成することができる。
【0053】
図9Dに示されるように、外周部60Aの上面側に居室部床板70が配置されることにより、居室部60内の床部が形成される。また、インナバルコニー20側の床フレーム46の上面にバルコニー床板84が配置されることにより、インナバルコニー20側の床部が形成される。ここで、バルコニー床板84は、ドレン管26側の端部がドレン管26の第1端部26Aよりも建物ユニット20の内側に位置するように配置される。
【0054】
下地フレーム52は、ドレン管26側の端部がドレン管26の第1端部26Aよりも建物ユニット20の内側に位置するように配置されたバルコニー床板84の下面側からバルコニー床板84を支持することにより、バルコニー床板84を安定させることができる。このように、大幅な改良や設備の追加をすることのない最小限の追加部材により、インナバルコニー20を構成することができる。
【0055】
なお、本実施形態では、下地フレーム52によりバルコニー床板84の端部を支持するとして説明したが、これに限らず、下地フレーム52を設けずに、床小梁の本数又は配置を変更することにより、床小梁でバルコニー床板84の端部を支持する構成とされてもよい。
【0056】
以上を総括すると、本実施形態に係るインナバルコニー20を備えた建物ユニット16によれば、建物ユニット16の躯体フレーム18への影響を抑制した上で、建物ユニット16の内部にインナバルコニー20を構成することができる。
【0057】
さらに、本実施形態によれば、インナバルコニー20の周縁部に立設された袖壁24の内部にドレン管26が設けられている。また、バルコニー床板84の上面には、上面側が排水部へ向けて建物下方側に傾斜された床敷設部80及び溝樋部82が形成されている。このため、インナバルコニー20に入り込んだ水は、床敷設部80及び溝樋部82の上面側に形成された傾斜に沿ってドレン管26へ向けて流下され、ドレン管26の第2端部26Bから屋外に排出される。これにより、水をインナバルコニー20の階下の建物ユニット16側に流下させる必要がなくなるため、インナバルコニー20の階下の建物ユニット16内部にインナバルコニー20ではなく居室部60を構成することができる。
【0058】
また、本実施形態によれば、バルコニー床板84のドレン管26側の端部が、ドレン管26の第1端部26Aよりも建物ユニット16の内側に位置するように配置されているため、ドレン管26の第1端部26Aの建物下側にはバルコニー床板84が配置されない。このため、ドレン管26の第1端部26Aを比較的低い位置に配置することができる。これにより、上面側がドレン管26へ向けて建物下方側に傾斜された床敷設部80の居室部60側の高さ位置が高くなることを抑制することができ、インナバルコニー20に入り込んだ水が居室部60へ浸入することを抑制及び防止することができる。
【0059】
(実施形態の第1変形例)
次に、図10を用いて、本実施形態の変形例について説明する。なお、前述した本実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0060】
本変形例に係るインナバルコニー100は、建物ユニット16の躯体フレーム18内に部分的に構成されているため、インナバルコニー100の一方の袖壁24は、妻側の床大梁44Bよりも建物内側に設けられている。このため、建物内側に設けられた袖壁24側のバルコニー床板84の端部を支持するための下地フレーム52は、建物上方側に当該袖壁24が設けられた床小梁48とこれに建物内側に隣り合う床小梁48との間に設けられる。下地フレーム52の第1下地材52Aは、図示しない床小梁用ブラケットを介してこれらの床小梁48に溶接等により接合されている。
【0061】
本変形例によれば、床大梁44と床小梁48に溶接等により接合された下地フレーム52が設けられることにより、床フレーム102の剛性を向上させることができる。また、バルコニー床板84の下面側からバルコニー床板84を支持することにより、バルコニー床板84を安定させることができる。これにより、大幅な改良や設備の追加をすることのない最小限の追加部材により、建物ユニット16の躯体フレーム18への影響を抑制した上で、インナバルコニー100を構成することができる。
【0062】
なお、本実施形態では、ドレン管26は、袖壁24の内部に設けられるとして説明したが、これに限らず、腰壁の内部に設けられてもよい。
【0063】
また、本実施形態では、インナバルコニー20、100は、二階部分の建物ユニットに構成されるとして説明したが、これに限らず、一階部分の建物ユニットに設けられてもよい。
【符号の説明】
【0064】
16 建物ユニット
18 躯体フレーム
20 インナバルコニー
24 袖壁(壁部)
26 ドレン管(排水部)
26A 第1端部(一方の端部)
26B 第2端部(他方の端部)
28 腰壁(壁部)
32 外柱
34 天井大梁
36 天井フレーム
44 床大梁
44A 桁側の床大梁
44B 妻側の床大梁
46 床フレーム
48 床小梁
52 下地フレーム
52A 第1下地材
52B 第2下地材
60 居室部
60A 外周部
64 境界部根太(床根太)
66 第1床根太(床根太)
67 第2床根太(床根太)
84 バルコニー床板
86 第1断熱材(バルコニー床材)
88 第2断熱材(バルコニー床材)
100 インナバルコニー
102 床フレーム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図10